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特許7196142薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング
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  • 特許-薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング 図1
  • 特許-薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング 図2a
  • 特許-薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング 図2b
  • 特許-薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング 図3a
  • 特許-薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】薄いガラスの外側シート、及び流れ分離ラインを有する加熱層を有している加熱グレージング
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221219BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221219BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20221219BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C03C27/12 L
B32B9/00 A
B32B17/10
B32B27/28 101
B32B27/30 A
B32B27/30 102
B32B27/36 102
B32B27/40
B64D47/00
C03C27/12 Q
C03C27/12 R
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020182669
(22)【出願日】2020-10-30
(62)【分割の表示】P 2017568238の分割
【原出願日】2016-06-30
(65)【公開番号】P2021046351
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】1556269
(32)【優先日】2015-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】トマ トンデュ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ショサード
(72)【発明者】
【氏名】バンサン ルゴワ
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-72315(JP,A)
【文献】特表2009-500271(JP,A)
【文献】特開平8-119065(JP,A)
【文献】特表2006-500754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接着性中間層(3)によって0.5mm~1.5mmの厚さの第1ガラスシート(2)に組み合わされている第1構造層(4)を有している積層グレージング(1)であって、
前記第1ガラスシート(2)が、前記積層グレージング(1)の、外部雰囲気と接触することが意図されている第1外側面(21)を形成していること、
前記第1ガラスシート(2)の、前記第1接着性中間層(3)の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第1伝導性加熱層(11)を保持していること、
前記第1伝導性加熱層(11)が、8mm~20mmの間隔をあけて配置されている0.05mm~0.2mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、前記ラインが、エッチングによって形成されており、それによって、前記グレージング(1)の2つの対向端部に沿って配置されている2つの電流供給ストリップの間で電流を誘導すること、
前記第1構造層(4)が、5mm~20mmの厚さのポリマーからなること、及び、
前記第1接着性中間層(3)が、0.5mm~20mmの厚さの、好ましくは1mm~16mmの厚さの、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)又はエチレンビニルアセテート(EVA)の層からなること、
を特徴とする、
積層グレージング(1)。
【請求項2】
第2接着性中間層(5)によって前記第1構造層に組み合わされている第2構造層(6)を有していることを特徴とする、請求項1に記載の積層グレージング(1)。
【請求項3】
第3接着性中間層によって前記第1構造層(4)又は前記第2構造層(6)に組み合わされている0.5mm~1.5mmの厚さの第2ガラスシートを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層グレージング(1)。
【請求項4】
前記第2ガラスシートが、前記積層グレージング(1)の第2外側面(22)を形成していること、及び、
前記第2ガラスシートの、前記第3接着性中間層の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第2伝導性加熱層を保持していること、
を特徴とする、請求項3に記載の積層グレージング(1)。
【請求項5】
前記第2伝導性加熱層が、0.05mm~0.2mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、前記ラインが、8mm~20mmの間隔をあけて配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の積層グレージング(1)。
【請求項6】
前記第2構造層(6)が、4mm~10mmの厚さのガラスシートからなり、又は、5mm~20mmの厚さのポリマーからなることを特徴とする、請求項に記載の積層グレージング(1)。
【請求項7】
前記第1構造層(4)が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネート(PC)からなり、前記第2構造層(6)が、化学的に強化された若しくは半熱強化されたガラスシートからなり、又は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはポリカーボネート(PC)からなることを特徴とする、請求項6に記載の積層グレージング(1)。
【請求項8】
0.5mm~1.5mmの厚さの前記第1ガラスシート(2)及び0.5mm~1.5mmの厚さの前記第2ガラスシートが、化学的に強化されていることを特徴とする、請求項1又は3に記載の積層グレージング(1)。
【請求項9】
前記第1接着性中間層(3)、前記第2接着性中間層(5)、及び前記第3接着性中間層が、互いに独立に、0.5mm~20mmの厚さの、好ましくは1mm~16mmの厚さの、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)又はエチレンビニルアセテート(EVA)の層からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング(1)。
【請求項10】
前記第1伝導性加熱層(11)及び前記第2伝導性加熱層が、互いに独立に、20nm~500nmの厚さの伝導性酸化物の層、例えば、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)の層、フッ素でドープされた酸化スズ(SnO:F)の層、若しくはアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)の層、又は、2オングストローム~100オングストロームの厚さの金属の層、例えば金の層、からなることを特徴とする、請求項1又は4に記載の積層グレージング(1)。
【請求項11】
前記流れ分離ラインが、実質的に平行な線で配置されており、これらの平行な線が、それらの2つのそれぞれの電流供給ストリップに対して実質的に直交して接続しており、かつ、前記2つの対向するストリップ又は前記2つのストリップの部分が互いに対して又はそれぞれに対して角度を形成している場合には、曲率を有しており又は屈曲していることを特徴とする、請求項1又は5に記載の積層グレージング(1)。
【請求項12】
前記第1伝導性加熱層(11)又は前記第2伝導性加熱層が、厚さの勾配を有していることを特徴とする、請求項1又は4に記載の積層グレージング(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層グレージング()の、ヘリコプター又は航空機の操縦室グレージングとしての使用。
【請求項14】
霜防止グレージングとしての、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
曇り防止グレージングとしての、請求項13又は14に記載の積層グレージング()の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性層を用いた加熱(霜防止機能)グレージングに関し、特には、航空分野(航空機及びヘリコプター)を対象とするこのタイプのグレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱航空グレージングは、2又は3の有機層若しくはガラス層の積層体である。航空グレージングにおける霜の発生は、透明電気伝導性層によって達成されるジュール加熱を介して、防ぐことができる。加熱層は、シート抵抗の非均一性を伴って堆積され、それによって、各単位面積に伝わる電力における非均一性を制限する(矩形を均一に加熱する方法だけが知られている)。典型的には、加熱層は、3mmの厚さのガラス材上に堆積される。加熱は、加熱層の平均温度を代表する温度を計測する温度プローブによって、制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在使用されている加熱層の担体は、慣用的には半強化ガラス製であるので、典型的に3mmの厚さのガラスでできており(非常に薄いガラス材を熱強化することは不可能である)、たいていの場合には、過剰な加熱を必要とすることを意味する。これは、なぜかといえば、ガラスの厚さは、0℃よりも高くに維持される必要があるグレージングの外層の実際の温度に関する情報の質を、大幅に低下させるからである。その上、(0℃未満でガラスに接触すると凍結する過冷却水滴の均一な流れを仮定したときに)最も霜が発生しやすい区域が、伝えられる電力が最も少ない区域であり、加熱システムは、この区域のために、設計される必要がある。したがって、加熱が比較的良好な区域においては、電力消費量が、不必要に高くなっている。
【0004】
したがって、本発明の主要な目的は、加熱グレージングによって必要とされる電力を低減し、それによって、グレージングの全面積にわたって、霜の形成が生じないことを保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明の一の主題は、第1接着性中間層によって0.5mm~1.5mmの厚さの第1ガラスシートに組み合わされている構造層を有している積層グレージングであって、
上述の第1ガラスシート(第1ガラス板)が、積層グレージングの第1の外側面を形成していること、上述の第1ガラスシートの、上述の第1接着性中間層の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第1伝導性加熱層を保持していること、及び、上述の第1伝導性加熱層が、8mm~20mmの間隔をあけて配置されている厚さ0.05mm~0.2mmの流れ分離ラインを有しており、上述のラインが、エッチングによって形成されており、それによって、グレージングの2つの対向している端部に沿って配置されている2つの電流供給ストリップの間に電流を誘導すること、
を特徴とする、積層グレージングである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、積層グレージングの、外部雰囲気と接触しているガラスシートの様々な厚さに関して、最適な設定温度の曲線を、低温点における加熱電力の、制御点における加熱電力に対する比(この比は、Kcで表される)の関数として、示している。
図2a図2aは、既知の加熱積層グレージングの模式図を表している。
図2b図2bは、本発明に係るグレージングユニットの模式図を表している。
図3a図3aは、積層グレージングの種々の構成に関して、加熱電力の曲線を示している。
図3b図3bは、積層グレージングの種々の構成に関して、加熱電力の減少を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
表現「構造層」は、本発明に関して、所望の機械的強度を確保するのに十分な厚さである透明なシートであって、かつ、さらなる詳細について以下で記載される透明なシートを意味するものと理解される。本発明の積層グレージングは、それらを、1又は複数、特には3又はそれ以上含んでいる。
【0008】
上述の第1ガラスシートの形成のためには、アルミノケイ酸ガラスマトリックスのシートが、1mm未満の薄さで市販されている;このガラスは、化学的に(かつ熱的にではなく)強化されていてよく、そのようにして、特には正面側のグレージング面において、機械的に強固な加熱層を達成することができる。薄いガラスを使用することは、設定値の温度を下げることを可能とし、これは、多くの利点を有する:
- 霜が降りない飛行段階における比較的低い電力消費量、及び、利用可能な電力が限られているときの地上における比較的低い電力消費量、
- 比較的低い熱機械的応力、したがって比較的高い信頼性、
- 地上における、比較的短い除霜時間、
- 寒冷条件下の地上での、スイッチオンサージによる局所的な過剰加熱のおそれの、実質的な低減。
【0009】
流れ分離ライン(流れラインとも呼ばれる)を含むグレージングを使用することによって、より均一な加熱を達成することが可能となり、これは:
- 最も低温の場所に伝えられる所与の電力量に対して、全体の電力を低減し;
- 発電機の仕様(スペック)を下げることを可能とし;
- グレージングを経年劣化させる可能性のある、最も高温の区域の温度を、低減し;
- さらに容易に温度プローブを配置することを可能とし;かつ
- 寒冷条件下での地上において、スイッチオンサージによる局所的な過剰加熱のおそれを実質的に低減する。
【0010】
したがって、本発明の技術的な手段によって、加熱の均一性を大幅に向上させつつ、グレージングの、グレージングのすべての領域において霜が形成されないことを確実にすることを可能にする総電力消費量を、低減することができる。
【0011】
本発明の積層グレージングの他の好ましい特徴によると:
- 本発明の積層グレージングが、第2接着性中間層によって第1構造層に組み合わされている第2構造層を有している;
- 本発明の積層グレージングが、第3接着性中間層によって上述の第1構造層又は上述の第2構造層に組み合わされている、0.5mm~1.5mmの厚さの第2ガラスシートを有している;
- 上述の第2ガラスシートが、積層グレージングの第2外側面を形成しており、かつ、上述の第2ガラスシートの、上述の第3接着性中間層の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第2伝導性加熱層を保持している;
- 上述の第2伝導性加熱層が、0.05mm~0.2mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、上述のラインが、8mm~20mmの間隔をあけて配置されている;
- 上述の第1構造層及び上述の第2構造層が、それぞれ、互いに独立に、4mmと10mmとの間の厚さのガラスシートからなり、又は5mmと20mmとの間の厚さのポリマーからなる;特に輸送乗り物を対象とする場合には、積層グレージングの重量を制限することが推奨される:すべての構造層がポリマー製である場合に、例えば、すべての構造層の厚さの合計が、30mmを超えない;
- 上述の第1構造層及び上述の第2構造層が、それぞれ、互いに独立に、化学的に強化された若しくは半熱強化されたガラスシートからなり、又は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはポリカーボネート(PC)からなる;
- 0.5mm~1.5mmの厚さの上述の第1ガラスシート及び0.5mm~1.5mmの厚さの上述の第2ガラスシートが、化学的に強化されている;
- 上述の第1接着性中間層、上述の第2接着性中間層、及び上述の第3接着性中間層が、互いに独立に、0.5mm~20mmの厚さの、好ましくは1mm~16mmの厚さの、ポリビニルブチラール(PVB)の層、ポリウレタン(PU)の層、又はエチレンビニルアセテート(EVA)の層からなる;
- 上述の第1伝導性加熱層及び上述の第2伝導性加熱層が、互いに独立に、20nm~500nmの厚さの、伝導性酸化物の層、例えば、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)の層、フッ素でドープされた酸化スズ(SnO:F)の層、若しくはアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)の層、又は、2オングストローム~100オングストロームの厚さの金属の層、例えば金の層、からなる;
- 流れ分離ラインが、実質的に平行なラインで配置されており、これらのラインが、それらの2つのそれぞれの電流供給ストリップに対して実質的に直交して接続されており、かつ、上述の2つの向かい合っているストリップ又は上述の2つのストリップの部分が互いに対して又はそれぞれに対して角度を形成している場合には、これらのラインが、曲率を有しており又は屈曲している;この構成は、加熱された積層グレージングの全面積にわたって、温度の均一性の程度を増大させる:低温領域若しくは低温点が回避され、かつ/又は、高温点と低温点との間の差異が減少する;
- 上述の第1伝導性加熱層又は上述の第2伝導性加熱層が、厚さの勾配を有している;伝導性加熱層の全面積にわたって、電気抵抗における差異をもたらすことが課題であり、ここで再び、寒冷条件下において、加熱グレージングの全面積にわたって温度の均一性を向上させることが目的である。
【0012】
本発明の他の主題は:
- 上記の積層グレージングの、ヘリコプター又は航空機の操縦席グレージングとしての使用;
- 霜防止グレージングとしての、そのような使用;「霜防止」という用語は、外部雰囲気側において、積層グレージングの外側の面での霜の形成を防止する機能を意味している;その場合には、この面を形成しているガラスシートが、本発明に係る伝導性加熱層を保持している;
- 曇り防止グレージングとしての、そのような使用;これが意味するのは、乗り物の内部側において、積層グレージングの外側の面で、曇りの形成を防止する(実際の曇り防止機能)ということであり、又は、さらには、曇りを消す(曇り除去機能)ということである;その場合には、この面を形成しているガラスシートが、本発明に係る伝導性加熱層を保持している。
【0013】
本発明は、添付の図面の記載を参照して、より良く理解することができるであろう。
【0014】
図1に関しては、外側ガラスシートの各厚さについて、加熱されたグレージングの全面積にわたってグレージングの温度が比較的均一であるほど、すなわち、低温点/センサーでの加熱電力の比が1に近いほど、(センサーの場所において計測される)最適な設定温度が、比較的低くなることを見てとることができる。
【0015】
本質的に、外側ガラスシートが比較的薄いほど、最適な設定温度が比較的低くなる。低温点/センサーでの電力の比Kc0.7に関して、最適な設定温度が、3mmの厚さの外側ガラスシートについての31℃から、0.8mmの厚さの外側ガラスシートについての最適な設定温度である17℃にまで減少する。
【0016】
図1の曲線は、グレージング上での対流及び水の蓄積についての仮定に基づく計算から得られており、仮定は、無論、図の3つの曲線すべてに関して同一であった。
【0017】
図2a及び図2bは、断面図での、2つの航空機ウィンドシールドグレージングの構成を示しており、図2aにおける構成は、慣用的な構成であり、かつ、図2bの構成は、「薄いガラス」の構成である。
【0018】
2つの積層グレージング1は、それぞれ、第1構造層4及び第2構造層6を有しており、それぞれ、完全な熱強化(約150MPaの圧縮表面応力)を受けたか又は化学的に強化された、8mm厚のソーダ石灰シリカガラスシートから形成されている。ガラスは、必ずしもソーダ石灰シリカガラスではなく、アルミノケイ酸又はリチウムアルミノケイ酸ガラスなどであってよい。層4,6は、2mmの厚さのポリビニルブチラールの層5によって接着的に結合されている。層6は、キャビン内部側において、積層グレージング1の外側面22を形成している。
【0019】
半熱強化を受けた若しくは化学的に強化された3mmの厚さのガラスシート2(図2aの場合)、又は化学的に強化された0.8mmの厚さのガラスシート(図2bの場合)が、8mmの厚さのポリビニルブチラール層3によって、第1構造層4に接着的に結合している。ガラスシート2は、キャビン外部側において、積層グレージング1の外側面21を形成している。ガラスシート2の、積層体の内部の方向に向いている面が、200nmの厚さの、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)の伝導性加熱層11を保持しており、この伝導性加熱層11は、随意に、サンプルに応じて、10mmの間隔をあけて配置されている0.08mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、上述のラインは、レーザーエッチングによって形成されている。
【0020】
流れ分離ライン又は流れラインの存在又は不存在は、様々な加熱電力の均一性を得ることを可能とし、これらの均一性は、グレージングの最も低温の区域に伝えられる電力の、制御プローブにおいて伝えられる電力に対する比によって特徴付けられる:本件では、流れラインなしで0.6であり、流れラインありで0.8である。
【0021】
次に、周囲雰囲気温度の関数としてのグレージングの電力消費量を、乾燥条件下で、飛行の対流条件下で計算した(150W/m/℃)。ここでは、プローブがグレージングの平均電力を代表していると仮定している。
【0022】
これらの計算に関して、設定温度を、グレージングに適合させた。
【0023】
結果を、図3a及び図3bにおいて曲線の形で示す。図3a及び図3bの曲線は、同等のものである。これらの曲線によって示されるのは、流れラインを有しておらず図2の比較的厚いガラスを有しているグレージングに対して、(W/mで表される)平均供給電力の減少が、それぞれの解決策について、増加しているということである。それぞれの解決策では:
- ガラスが、0.8mmの厚さ(図2b)であり、かつ流れラインが存在していない;
- ガラスが、3mmの厚さ(図2a)であり、かつ流れラインが存在している;
- ガラスが、0.8mmの厚さであり、かつ流れラインが存在している。
【0024】
改善は、-10℃と30℃の間の飛行条件に頻繁に遭遇するヘリコプターに関して、特に大きい。
【0025】
図2a及び2bにおいて示されている2つの組み立て構成の一定部分を、合計の厚さが典型的には5mm~30mmであるPMMA又はPCの1つの又は2つの層で、置き換えてもよい。これらの小さい厚みは、どちらかといえば、ヘリコプター用途に対応する。ポリマー製の2つの構造層は、ポリウレタンの層によって互いに接着的に結合されていてよい。
本開示は、下記の態様を含む:
<態様1>
第1接着性中間層(3)によって0.5mm~1.5mmの厚さの第1ガラスシート(2)に組み合わされている第1構造層(4)を有している積層グレージング(1)であって、
前記第1ガラスシート(2)が、前記積層グレージング(1)の第1外側面(21)を形成していること、
前記第1ガラスシート(2)の、前記第1接着性中間層(3)の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第1伝導性加熱層(11)を保持していること、及び、
前記第1伝導性加熱層(11)が、8mm~20mmの間隔をあけて配置されている0.05mm~0.2mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、前記ラインが、エッチングによって形成されており、それによって、前記グレージング(1)の2つの対向端部に沿って配置されている2つの電流供給ストリップの間で電流を誘導すること、
を特徴とする、
積層グレージング(1)。
<態様2>
第2接着性中間層(5)によって前記第1構造層に組み合わされている第2構造層(6)を有していることを特徴とする、態様1に記載の積層グレージング(1)。
<態様3>
第3接着性中間層によって前記第1構造層(4)又は前記第2構造層(6)に組み合わされている0.5mm~1.5mmの厚さの第2ガラスシートを有していることを特徴とする、態様1又は2に記載の積層グレージング(1)。
<態様4>
前記第2ガラスシートが、前記積層グレージング(1)の第2外側面(22)を形成していること、及び、
前記第2ガラスシートの、前記第3接着性中間層の方向に向いている面が、2オングストローム~500nmの厚さの第2伝導性加熱層を保持していること、
を特徴とする、態様3に記載の積層グレージング(1)。
<態様5>
前記第2伝導性加熱層が、0.05mm~0.2mmの厚さの流れ分離ラインを有しており、前記ラインが、8mm~20mmの間隔をあけて配置されていることを特徴とする、態様4に記載の積層グレージング(1)。
<態様6>
前記第1構造層(4)及び前記第2構造層(6)が、それぞれ、互いに独立に、4mm~10mmの厚さのガラスシートからなり、又は、5mm~20mmの厚さのポリマーからなることを特徴とする、態様1又は2に記載の積層グレージング(1)。
<態様7>
前記第1構造層(4)及び前記第2構造層(6)が、それぞれ、互いに独立に、化学的に強化された若しくは半熱強化されたガラスシートからなり、又は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)若しくはポリカーボネート(PC)からなることを特徴とする、態様6に記載の積層グレージング(1)。
<態様8>
0.5mm~1.5mmの厚さの前記第1ガラスシート(2)及び0.5mm~1.5mmの厚さの前記第2ガラスシートが、化学的に強化されていることを特徴とする、態様1又は3に記載の積層グレージング(1)。
<態様9>
前記第1接着性中間層(3)、前記第2接着性中間層(5)、及び前記第3中間接着層が、互いに独立に、0.5mm~20mmの厚さの、好ましくは1mm~16mmの厚さの、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)又はエチレンビニルアセテート(EVA)の層からなることを特徴とする、態様1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング(1)。
<態様10>
前記第1伝導性加熱層(11)及び前記第2伝導性加熱層が、互いに独立に、20nm~500nmの厚さの伝導性酸化物の層、例えば、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)の層、フッ素でドープされた酸化スズ(SnO :F)の層、若しくはアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)の層、又は、2オングストローム~100オングストロームの厚さの金属の層、例えば金の層、からなることを特徴とする、態様1又は4に記載の積層グレージング(1)。
<態様11>
前記流れ分離ラインが、実質的に平行な線で配置されており、これらの平行な線が、それらの2つのそれぞれの電流供給ストリップに対して実質的に直交して接続しており、かつ、前記2つの対向するストリップ又は前記2つのストリップの部分が互いに対して又はそれぞれに対して角度を形成している場合には、曲率を有しており又は屈曲していることを特徴とする、態様1又は5に記載の積層グレージング(1)。
<態様12>
前記第1伝導性加熱層(11)又は前記第2伝導性加熱層が、厚さの勾配を有していることを特徴とする、態様1又は4に記載の積層グレージング(1)。
<態様13>
態様1~12のいずれか一項に記載の積層グレージング(11)の、ヘリコプター又は航空機の操縦室グレージングとしての使用。
<態様14>
霜防止グレージングとしての、態様13に記載の使用。
<態様15>
曇り防止グレージングとしての、態様13又は14に記載の積層グレージング(11)の使用。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b