(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】細胞の選択された部分集団中の複数エピトープを識別するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20221219BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20221219BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20221219BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20221219BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20221219BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20221219BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6816 Z
C12Q1/70
C12Q1/6888 Z
(21)【出願番号】P 2020186442
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2017532096の分割
【原出願日】2015-12-21
【審査請求日】2020-11-19
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン, ゲイリー ピー.
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513916(JP,A)
【文献】国際公開第2014/026032(WO,A2)
【文献】特表2003-524419(JP,A)
【文献】国際公開第2005/123963(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/099744(WO,A1)
【文献】特表2014-507141(JP,A)
【文献】特表2012-502625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0203543(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0240101(US,A1)
【文献】Nat. Biotechnol., 2002, Vol.20, pp.473-477
【文献】Nuc. Acids Res., 2005, Vol.33, No.18 e162,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の混合集団内の部分集団中の標的を検出するための方法であって、該方法は、
a)前記細胞の混合集団を、前記細胞の混合集団内の部分集団を同定する少なくとも1の第1のユニーク結合物質(UBA)及び前記部分集団に限られない少なくとも1の第2のUBAと接触させ;ここで前記UBAが、エピトープ特異的バーコード(ESB)オリゴヌクレオチドを含み;
b)結合した各UBA上のESBに、複数のアッセイ可能ポリマーサブユニット(APS)オリゴヌクレオチドを、スプリットプール合成の連続的なラウンドのあいだ順番に、連続的に付加し、ここで、最初のAPSは前記ESBに隣接してアニーリングし、各ラウンドにおいて全ての連続するAPSは、前回のラウンド由来の前記APSにアニーリング領域を介して隣接し、そして最初のAPSをESBに共有結合し、連続して隣接してアニーリングされたAPSを互いに共有結合して、UBAが結合している個々の細胞のアイデンティティを表すユニークな細胞起源バーコード(COB)を作成する、
c)COBを配列決定し、それによって前記部分集団特異的ESBを含むCOBを、部分集団特異的COBとして同定すること;
d)少なくとも1対の増幅プライマーを設計し、ここで、1のプライマーは第2のUBAのESBにハイブリダイズする配列を含み、もう一方のプライマーは、ステップc)で同定された部分集団特異的COB中のAPSにハイブリダイズする配列を含み;そして
e)第2のUBAのESBを含むCOBを増幅し、それによって細胞の部分集団中の標的を検出する、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記部分集団が、前記細胞の混合集団の1%未満を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のUBAが、CD1、CD3、CD8、CD4およびHIVウイルス配列から選択される部分集団マーカーに特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのUBAが抗体であり、そして前記ESBが前記抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1のUBAがオリゴヌクレオチドプローブであり、前記ESBがオリゴヌクレオチドプローブ配列の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)における増幅プライマーの前記対のうちの1のプライマーが、最も外側のAPSから始まる部分集団特異的COB中の一連のAPSにハイブリダイズする一連のネステッド増幅プライマーを含み;そして、ステップe)における増幅が、一連の連続ラウンドであり、その各々が次のネステッドプライマーで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップe)で増幅されたCOBの配列決定をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1又は複数の追加
の標的について、細胞の混合集団内の部分集団をリサンプリングするための方法であって、以下を含む方法:
a)検出される追加
の標的
に結合する非特異的結合物質(BA)及び前記細胞の混合集団内の部分集団を同定する少なくとも1のユニーク結合物質(UBA)を、前記細胞の混合集団と接触し;ここで、前記BA及びUBAが、エピトープ特異的バーコード(ESB)オリゴヌクレオチドを含み;
b)結合したBA及びUBAのそれぞれのESBに、複数のアッセイ可能ポリマーサブユニット(APS)オリゴヌクレオチドを、スプリットプール合成の連続的なラウンドのあいだ順番に、連続的に付加し、ここで、最初のAPSは前記ESBに隣接してアニーリングし、各ラウンドにおいて全ての連続するAPSは、前回のラウンド由来の前記APSにアニーリング領域を介して隣接し、そして最初のAPSをESBに共有結合し、隣接してアニーリングされたAPSを互いに共有結合して、BA及びUBAが結合している個々の細胞のアイデンティティを表すユニークな細胞起源バーコード(COB)を作成する;
c)COBを配列決定し、それによって部分集団特異的ESBを含むCOBを部分集団特異的COBとして同定する;
d) 前記集合の一定量を接触検出されるべき追加の標的分子に対する特異的結合物質と接触させることによって、前記細胞の混合集団を再サンプリングし;ここで、前記特異的結合物質が、固体支持体に結合し、
そしてここで、該特異的結合物質は固体支持体に結合し、そしてさらに追加の標的分子を同定するコード配列およびステップc)で同定された部分集団特異的COBにハイブリダイズする配列を含む第1のオリゴヌクレオチドプライマーにさらに結合すること、および
前記追加の標的分子が、ステップb)においてその上に組み立てられたCOBとともにステップa)の非特異的結合物質(BA)にさらに結合し;
e)前記固体支持体を捕獲することによって追加の標的分子を捕獲すること;および
f)ステップd)の第1のオリゴヌクレオチドプライマーと、ステップc)で同定された部分集団特異的COBに特異的な第2のプライマーで、前記追加の標的分子に付随するCOBを増幅し、それにより前記細胞の部分集団における追加の標的分子を検出する
を含む、前記方法。
【請求項9】
結合物質(BA)が、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートおよび塩化スルホニルから選択されるタンパク質結合物質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
結合物質(BA)がポリ-dTオリゴヌクレオチドである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップe)で増幅されたCOBの配列決定をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ステップf)における第2の増幅プライマーが、最外側APSから始まる部分集団特異的COBにおける一連のAPSにハイブリダイズする一連のネステッド増幅プライマーを含み、そしてステップf)における増幅が、一連の連続したラウンドの増幅であり、その各々が次のネステッドプライマーを用いる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2014年12月19日に出願された米国仮出願番号第62/094,917号;2014年12月19日に出願された米国仮出願番号第62/094,919号;および2014年12月19日に出願された米国仮出願番号第62/094,924号の利益を主張しており、これら出願のすべては、すべての目的のためにそれらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヒトの体内のすべての細胞は、同じ遺伝物質を含むが、それらの全細胞において同じ遺伝子セットが活性であるわけではない。遺伝子発現パターンの変化は、生物学的機能に重大な影響を及ぼし得る。遺伝子産物(タンパク質)の産生および制御のダイナミクスならびにそれらの相互作用の理解は、例えば、遺伝的障害および/または環境によって誘導される健康障害の根底にある機序の理解に不可欠であり、新しい診断標的および治療標的の発見の根拠を提供する可能性がある。ゆえに、遺伝子発現プロファイルをモニタリングするための手法、および個々の細胞において全タンパク質の特定のバリアント(例えば、スプライスバリアント、点変異、翻訳後修飾、および環境によって、または治療によって誘導される改変)を検出するための手法、およびそれらのレベルを経時的に定量するための手法が、新しい診断法および治療手順の開発に役立つ可能性がある。さらに、単一細胞においてただ1つの標的分子ではなく複数の標的分子に対してこれらの解析を同時に行うことはますます重要になってきている。
【0003】
現在のところ利用可能な方法は、かなりの量の生物学的サンプルを必要とすることが多く、かつ/または細胞特異的情報を提供しない。さらに、複雑なサンプルの解析に固有の難題に起因して、測定を多重化して実施することが特に求められることが多い。したがって、複雑な細胞集団の個々の細胞において標的分子を正確かつ高感度で検出、識別および定量することが可能な方法が必要とされている。さらに、サンプル内の選択された細胞部分集団の個々の細胞に対してこれらの解析を行うこと、および1つまたはそれを超える標的分子の存在に関する細胞特異的情報を保持することが望ましいことが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本開示は、単一細胞における複数の標的核酸配列を検出するための方法、組成物およびキットを記載する。開示される方法は、核酸標的分子全般の検出に適しており、特に、細胞の混合物中に存在する単一細胞におけるmRNA標的分子の検出にふさわしく、その個々の細胞起源情報が保持される。
【0005】
単一細胞における標的核酸分子を識別するための方法が、本明細書中に開示され、その方法は、a)エピトープ特異的バーコード配列、および標的核酸配列の第1のセグメントにハイブリダイズすることができる第1の標的認識配列を含む第1のオリゴヌクレオチド近接プローブを提供する工程;b)標的核酸配列の第2のセグメントにハイブリダイズすることができる第2の標的認識配列を含む第2のオリゴヌクレオチド近接プローブを提供する工程(ここで、その標的核酸配列の第1および第2のセグメントは、異なるものであり、特定の数のヌクレオチドNによって互いに分断されている);ならびにc)2つのプローブ認識配列を含む架橋オリゴヌクレオチドを提供する工程(ここで、第1のプローブ認識配列は、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができ、第2のプローブ認識配列は、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができる)を含み、それによって、エピトープ特異的バーコードを含む標的特異的プローブ複合体が作製される。
【0006】
いくつかの実施形態において、第1および第2の近接プローブならびに架橋オリゴヌクレオチドは、リガーゼまたはポリメラーゼ反応を用いて共有結合により連結される。いくつかの実施形態において、上記方法は、2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットを標的特異的プローブ複合体に順序づけられた様式で付着させる工程であっ、単一細胞の同一性を代表するユニーク細胞起源バーコードを形成する工程をさらに含む。
いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットは、連続したラウンドのスプリットプール合成において標的特異的プローブ複合体に付着される。いくつかの実施形態において、その付着は、オリゴヌクレオチド鋳型分子へのハイブリダイゼーションを含み、ここで、その鋳型分子の一端は、標的特異的プローブ複合体に相補的であり、アッセイ可能ポリマーサブユニットおよび標的特異的プローブ複合体は、リガーゼ反応を用いたハイブリダイゼーションの後に共有結合によって連結される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド鋳型分子は、アッセイ可能ポリマーサブユニットがハイブリダイズする鋳型分子配列のセクションの間に位置する停止コード配列を含み、それによって、増幅反応中のオリゴヌクレオチド鋳型分子の増幅が阻害される。いくつかの実施形態において、停止コード配列は、ポリ-dT配列を含む。いくつかの実施形態において、停止コード配列は、ポリ-T配列を含む。いくつかの実施形態において、停止コード配列は、3炭素リンカーを含む。いくつかの実施形態において、第1または第2のオリゴヌクレオチド近接プローブの少なくとも1つは、1つまたはそれを超えるプライマー配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞起源バーコードは、1つまたはそれを超えるプライマー配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、プライマー配列の少なくとも1つは、増幅プライマー配列である。いくつかの実施形態において、開示される方法は、細胞起源バーコード一式の全部または一部およびそれらと会合したエピトープ特異的バーコードを増幅しかつ、配列決定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、プライマー配列の少なくとも1つは、配列決定プライマー配列である。いくつかの実施形態において、標的核酸分子は、DNA分子である。いくつかの実施形態において、標的核酸分子は、RNA分子である。いくつかの実施形態において、そのRNA分子は、mRNA分子である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド近接プローブは、DNA分子である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド近接プローブは、10~200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、標的認識配列は、5~50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードは、5~50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、Nは、1~20である。いくつかの実施形態において、Nは、20~40である。いくつかの実施形態において、Nは、40~100である。いくつかの実施形態において、架橋オリゴヌクレオチドは、DNA分子である。いくつかの実施形態において、架橋分子のプローブ認識配列は、5~50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、アッセイ可能ポリマーサブユニットは、核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、多重化される。いくつかの実施形態において、上記方法は、細胞起源バーコードの末端へのさらなるプライマーの付着をさらに含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド近接プローブのうちの1つは、架橋オリゴヌクレオチドをさらに含む。
いくつかの実施形態において、架橋オリゴヌクレオチドは、1つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットの付着のための鋳型分子として機能する。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超える鋳型分子は、細胞起源バーコードを構築する(assembly)ために使用される。
【0007】
標的mRNA配列を検出するための方法も本明細書中に開示され、その方法は、(a)mRNAを放出させるために細胞サンプルを溶解する工程;(b)溶解した細胞サンプルを複数のビーズと接触させる工程(ここで、1つのビーズは、放出されたmRNA分子にハイブリダイズすることができる複数の繋ぎ止められたオリゴヌクレオチド配列を含む);(c)ハイブリダイズしたmRNA分子と第1のオリゴヌクレオチド近接プローブを複数のビーズ上でアニーリングさせる工程(ここで、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブは、エピトープ特異的バーコード配列、および標的核酸配列の第1のセグメントにハイブリダイズすることができる第1の標的認識配列を含む);(d)ハイブリダイズしたmRNA分子と第2のオリゴヌクレオチド近接プローブを複数のビーズ上でアニーリングさせる工程(ここで、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブは、標的核酸配列の第2のセグメントにハイブリダイズすることができる第2の標的認識配列を含み、その標的核酸配列の第1および第2のセグメントは、異なるものであり、特定の数のヌクレオチドNによって互いに分断されている);(e)ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド近接プローブと架橋オリゴヌクレオチドを複数のビーズ上でアニーリングさせ(ここで、その架橋オリゴヌクレオチドは、2つのプローブ認識配列を含み、第1のプローブ認識配列は、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができ、第2のプローブ認識配列は、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができる)る工程であって、それによって、エピトープ特異的バーコードを含む標的特異的プローブ複合体が形成される工程;ならびに(f)アニールしたオリゴヌクレオチド近接プローブと架橋オリゴヌクレオチドとをライゲートする工程であって、共有結合により連結された標的特異的プローブ複合体が形成される工程を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、複数の繋ぎ止められたオリゴヌクレオチド配列は、1つまたはそれを超えるプライマー配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、複数の繋ぎ止められたオリゴヌクレオチド配列は、ポリ-dT標的認識配列を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、1つまたはそれを超える標的特異的プライマーを用いた、エピトープ特異的バーコードを含む標的特異的プローブ複合体の増幅をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、増幅産物を配列決定する工程であって、1つまたはそれを超えるmRNA配列の存在を検出するかまたは定量する工程をさらに含む。
【0009】
(a)エピトープ特異的バーコードおよび第1の標的認識配列を含む第1のオリゴヌクレオチド近接プローブ(ここで、その第1の標的認識配列は、標的核酸分子配列の第1のセグメントにハイブリダイズすることができる);(b)第2の標的認識配列を含む第2のオリゴヌクレオチド近接プローブ(ここで、その第2の標的認識配列は、標的核酸分子配列の第2のセグメントにハイブリダイズすることができる);および(c)第1および第2のプローブ認識配列を含む架橋オリゴヌクレオチド(ここで、その第1のプローブ認識配列は、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズされ、第2のプローブ認識配列は、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズされる)を含む組成物が、本明細書中に開示される。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、標的核酸分子をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、少なくとも1つのアッセイ可能ポリマーサブユニットを含む細胞起源バーコードをさらに含み、ここで、その少なくとも1つのアッセイ可能ポリマーサブユニットは、一つのオリゴヌクレオチド近接プローブに付着されている。いくつかの実施形態において、第1および第2の標的認識配列は各々、10~30塩基対の範囲にわたって、それぞれの第1および第2の標的配列セグメントと少なくとも80%相補的である。いくつかの実施形態において、架橋オリゴヌクレオチドの第1および第2のプローブ認識配列は各々、10~30塩基対の範囲にわたって、第1および第2のオリゴヌクレオチド近接プローブの対応するセグメントと少なくとも80%相補的である。いくつかの実施形態において、第1および第2のオリゴヌクレオチド近接プローブならびに架橋オリゴヌクレオチドは、共有結合により接続されている。いくつかの実施形態において、上記組成物は、1つまたはそれを超えるプライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、それらのプライマーの少なくとも1つは、増幅プライマーである。いくつかの実施形態において、それらのプライマーの少なくとも1つは、配列決定プライマーである。
【0011】
(a)エピトープ特異的バーコード、および標的核酸配列の第1のセグメントにハイブリダイズすることができる第1の標的認識配列を含む第1のオリゴヌクレオチド近接プローブ;(b)標的核酸配列の第2のセグメントにハイブリダイズすることができる第2の標的認識配列を含む第2のオリゴヌクレオチド近接プローブ;および(c)2つのプローブ認識配列を含む架橋オリゴヌクレオチド(ここで、第1のプローブ認識配列は、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができ、第2のプローブ認識配列は、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができる)を含むキットも、本明細書中に開示され、ここで、そのキットは、個々の細胞中または細胞の混合物中の標的核酸分子の検出および定量のための手段を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記キットは、細胞起源バーコードのスプリットプール合成のための複数のアッセイ可能ポリマーサブユニットをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、アッセイ可能ポリマーサブユニットの酵素的または化学的カップリングのための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド近接プローブの少なくとも1つは、1つまたはそれを超えるプライマーをさらに含む。
いくつかの実施形態において、それらの複数のアッセイ可能ポリマーサブユニットから合成された細胞起源バーコードは、1つまたはそれを超えるプライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、それらのプライマーの少なくとも1つは、増幅プライマーである。いくつかの実施形態において、それらのプライマーの少なくとも1つは、配列決定プライマーである。
【0013】
本開示はまた、細胞の複合混合物を含む生物学的サンプル中の選択された細胞部分集団内の単一細胞における複数の標的分子を検出するための方法、組成物およびキットも記載する。
【0014】
細胞の混合集団内の部分集団を識別するための方法、組成物およびキットが、本明細書中に開示され、その方法は、(a)細胞の混合集団をユニーク結合物質と接触させる工程(ここで、そのユニーク結合物質は、その部分集団に存在する標的分子に結合するようにデザインされており、そのユニーク結合物質は、標的分子の同一性を代表するエピトープ特異的バーコードに付着されている);(b)2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットをエピトープ特異的バーコードに連続的に付着させる工程であって、ユニーク結合物質が結合した個々の細胞の同一性を代表するユニーク細胞起源バーコードを作製する工程;ならびに(c)エピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードを解読する工程であって、細胞の混合集団内の部分集団を識別する工程を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよびアッセイ可能ポリマーサブユニットは、オリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットは、スプリットプールコンビナトリアル合成法を用いてエピトープ特異的バーコードに付着される。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよび会合した細胞起源バーコードの2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットの各存在を連結させることにより、増幅および配列決定され得る結合体を形成する。いくつかの実施形態において、開示される方法は、エピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体を増幅する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、解読する工程は、増幅されたエピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体の全部または一部を配列決定する工程を含む。いくつかの実施形態において、混合集団中の、部分集団と会合した細胞起源バーコードの数と細胞総数との比は、標的分子を含む混合集団内の細胞の割合の尺度を提供する。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるユニーク結合物質を用いることにより、部分集団が識別される。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるユニーク結合物質を用いることにより、2つまたはそれを超える部分集団が識別される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質は、DNA、ヒストン、ハウスキーピングタンパク質およびタンパク質全般からなる群より選択される標的分子に結合するようにデザインされている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質と会合したエピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体を解読する工程は、死細胞、細胞片、細胞塊またはそれらの組み合わせを含む部分集団を識別するために用いられる。いくつかの実施形態において、その部分集団は、バーコード化された実体において検出される、DNAの量、タンパク質の量またはDNAとタンパク質との比に基づいて識別される。いくつかの実施形態において、開示される方法は、死細胞、細胞片、細胞塊またはそれらの組み合わせを含む部分集団に対する細胞起源バーコードをさらなる解析から排除しつつ、少なくとも第2のユニーク結合物質と会合したエピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体を解読することにより、細胞の混合集団の個々の細胞に存在する少なくとも第2の標的分子を識別する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質は、DNA、ヒストンおよびハウスキーピングタンパク質からなる群より選択される標的分子に対して向けられた抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質は、ベルベリン、エチジウムブロマイド、プロフラビン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびサリドマイドからなる群より選択されるDNA挿入分子である。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのユニーク結合物質は、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートおよび塩化スルホニルからなる群より選択されるアミン反応性プローブを含む。
【0016】
細胞部分集団中の1つまたはそれを超える標的分子を検出するための方法、組成物およびキットも本明細書中に開示され、その方法は、(a)細胞の複合混合物を含むサンプルを2つまたはそれを超えるユニーク結合物質と接触させる工程(ここで、その2つまたはそれを超えるユニーク結合物質は、異なる標的分子に結合するようにデザインされており、その2つまたはそれを超えるユニーク結合物質は、標的分子の同一性を代表するエピトープ特異的バーコードに付着されている);(b)2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットをエピトープ特異的バーコードに連続的に付着させることにより、1つまたはそれを超えるユニーク結合物質が結合した個々の細胞の同一性を代表するユニーク細胞起源バーコードを作製する工程;(c)少なくとも第1のユニーク結合物質と会合したエピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードを選択的に増幅し、かつ配列決定する工程であって、細胞部分集団を識別する工程;ならびに(d)工程(c)において識別されたものと一致する細胞起源バーコードに付着した少なくとも第2のユニーク結合物質と会合したエピトープ特異的バーコードを選択的に増幅し、かつ配列決定する工程であって、特定の細胞部分集団の個々の細胞における少なくとも第2の標的分子の存在を検出する工程を含む。
【0017】
開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよびアッセイ可能ポリマーサブユニットは、オリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットは、スプリットプールコンビナトリアル合成法を用いてエピトープ特異的バーコードに付着される。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよび会合した細胞起源バーコードの2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットの各存在を連結させることにより、増幅および配列決定され得る結合体を形成する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質は、細胞内の核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのユニーク結合物質は、ウイルスゲノム核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのユニーク結合物質は、HIVウイルスゲノム核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのユニーク結合物質は、細胞表面マーカーに対して向けられた抗体または抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、工程(d)の選択的増幅は、連続的な2回またはそれを超えるラウンドの多重化ネステッド増幅反応を行うことを含む。いくつかの実施形態において、連続した各ラウンドの増幅は、工程(c)において識別された細胞起源バーコードを構成する2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニット位置の配列内の異なる位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを使用する。いくつかの実施形態において、1回目の増幅において使用されるプライマーセットは、エピトープ特異的バーコードから最も遠い細胞起源バーコード内の位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズし、連続した各回の増幅は、エピトープ特異的バーコードに1工程分より近い位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズするプライマーセットを使用する。
【0018】
選択された細胞部分集団内の1つまたはそれを超える標的タンパク質分子を検出するための方法、組成物およびキットが本明細書中に開示され、その方法は、(a)細胞の複合混合物を含むサンプルを、タンパク質を非特異的に標識するためのアミン反応性プローブを含む非特異的結合物質と接触させる工程(ここで、その非特異的結合物質は、非特異的タンパク質バーコードに付着されている);(b)その部分集団内に存在する標的分子に結合するようにデザインされている第1のユニーク結合物質とそのサンプルを接触させる工程(ここで、その第1のユニーク結合物質は、標的分子の同一性を代表するエピトープ特異的バーコードに付着されている);(c)2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットを非特異的バーコードおよびエピトープ特異的バーコードに連続的に付着させる工程であって、個々の細胞の同一性を代表するユニーク細胞起源バーコードを作製する工程;(d)細胞が溶解されたサンプルの一部から、ビーズセットを用いて、1つまたはそれを超える標的タンパク質分子を免疫沈降させる工程(ここで、各ビーズは、標的タンパク質分子のうちの1つに結合する固定化された抗体および抗体特異的バーコードを含む固定化されたプライマーを含み、その固定化されたプライマーは、その抗体に対する標的タンパク質分子と会合した非特異的バーコード-細胞起源バーコード複合体の一端にハイブリダイズすることができる);(e)プライマー伸長反応を行う工程であって、抗体特異的バーコード-非特異的バーコード-細胞起源バーコード複合体を作製する工程;(f)抗体特異的バーコード-非特異的バーコード-細胞起源バーコード複合体のコレクションを増幅し、かつ配列決定する工程;ならびに(g)1つまたはそれを超える標的タンパク質分子に対する細胞起源バーコードのリストを少なくとも第1のユニーク結合物質と会合した細胞起源バーコードのリストと比較することによって、目的の1つまたはそれを超える標的タンパク質分子が、少なくとも第1のユニーク結合物質によって定義される個々の細胞の部分集団内に存在するかを判定する工程を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、非特異的バーコード、エピトープ特異的バーコードおよびアッセイ可能ポリマーサブユニットは、オリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、非特異的バーコードまたはエピトープ特異的バーコード、および会合した細胞起源バーコードの2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットの各存在を連結させることにより、増幅かつ配列決定され得る結合体が形成される。いくつかの実施形態において、アミン反応性プローブは、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートおよび塩化スルホニルを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、第1のユニーク結合物質は、抗体、抗体フラグメントまたは核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、アミン反応性プローブを含む非特異的結合物質は、mRNA分子との非特異的なハイブリダイゼーションのためのポリ-dTオリゴヌクレオチドプローブ配列を含む非特異的結合物質と置き換えられ、その非特異的結合物質は、非特異的mRNAバーコードに付着されている。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法、組成物およびキットは、目的の1つまたはそれを超えるmRNA分子の全部または一部およびmRNA特異的バーコードを含む固定化されたプライマーに相補的な固定化されたプローブ配列を含むビーズ(ビーズ1つあたり1つのユニークプローブ配列)と工程(d)のビーズを置き換えることをさらに含み、その固定化されたプライマーは、その固定化されたプローブ配列に対する標的mRNA分子と会合した非特異的バーコード-細胞起源バーコード複合体の一端にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法、組成物およびキットは、工程(g)において、1つまたはそれを超える標的mRNA分子に対する細胞起源バーコードのリストを少なくとも第1のユニーク結合物質と会合した細胞起源バーコードのリストと比較することによって、目的の1つまたはそれを超える標的mRNA分子が、少なくとも第1のユニーク結合物質によって定義される細胞部分集団内に存在するかを判定することをさらに含む。
【0020】
細胞の混合物を含むサンプル中の個々の細胞において標的分子を検出する際に細胞部分集団をさらなる解析から排除するための方法、組成物およびキットも本明細書中に開示され、その方法は、(a)細胞の混合物を第1のユニーク結合物質セットと接触させる工程(ここで、各ユニーク結合物質は、標的分子に結合するようにデザインされており、各ユニーク結合物質は、そのセットの中のユニーク結合物質のすべてに対して同じであるエピトープ特異的バーコードに付着されている);(b)細胞の混合物を第2のユニーク結合物質セットと接触させる工程(ここで、第2のセットの各ユニーク結合物質は、第1のユニーク結合物質セットとは異なる標的分子に結合するようにデザインされており、第2のセットの各ユニーク結合物質は、標的分子の同一性を代表するユニークなエピトープ特異的バーコードに付着されている);(c)2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットを連続的に付着させる工程であって、少なくとも1つのユニーク結合物質が結合した個々の細胞の同一性を代表するユニーク細胞起源バーコードセットを作製する工程;(d)第1のユニーク結合物質セットと会合したエピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードを選択的に増幅し、かつ配列決定する工程であって、部分集団を識別する工程;(e)第2のユニーク結合物質セットと会合したエピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードを選択的に増幅し、かつ配列決定する工程;ならびに(f)工程(d)および(e)において生成された細胞起源バーコードのリストを比較することによって、第2のユニーク結合物質セットに対する標的分子が、工程(d)において識別された細胞を排除した後のサンプル中に残存する個々の細胞に存在するかを判定する工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、工程(e)の選択的増幅は、連続的な2回またはそれを超えるラウンドの多重化ネステッド増幅を行うことを含む。いくつかの実施形態において、連続した各回の増幅は、工程(d)において識別された細胞起源バーコードを構成する2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニット位置の配列における異なる位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズするようにデザインされたプライマーセットを使用する。いくつかの実施形態において、1回目のラウンドの増幅において使用されるプライマーセットは、エピトープ特異的バーコードから最も遠い細胞起源バーコード内の位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズし、連続した各ラウンドの増幅は、エピトープ特異的バーコードに1工程分より近い位置に配置されたアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズするプライマーセットを使用する。いくつかの実施形態において、細胞起源バーコードは、4つのアッセイ可能ポリマーサブユニットを含む。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードは、増幅プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードは、配列決定プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、エピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードは、Illumina配列決定プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、アッセイ可能ポリマーサブユニットは、約15~35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、アッセイ可能ポリマーサブユニットは、6~12ヌクレオチドのアニーリング領域によっていずれかの末端と隣接した、3~10ヌクレオチド長の可変コード領域を有するオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、アッセイ可能ポリマーサブユニットは、9ヌクレオチド長のアニーリング領域によっていずれかの末端と隣接した可変7ヌクレオチドコード領域を有するオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、その7ヌクレオチドコード領域は、エラー検出および訂正能力を提供し得るようにデザインされている。
いくつかの実施形態において、開示される方法、組成物およびキットは、細胞の混合物を含むサンプル中の個々の細胞に存在する1つまたはそれを超える標的分子の量を定量することをさらに含む。
【0022】
(a)単一細胞に存在する標的分子の同一性をコードする増幅されたオリゴヌクレオチドバーコード産物を含む組成物も本明細書中に開示され、ここで、そのオリゴヌクレオチドバーコードは、(i)エピトープ特異的バーコード配列;および(ii)細胞起源バーコード配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、1つまたはそれを超える増幅プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、1つまたはそれを超える配列決定プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える配列決定プライマーは、Illumina配列決定プライマーである。
【0024】
(a)目的の標的分子に結合またはハイブリダイズすることができるユニーク結合物質;および(b)共有結合により付着されたオリゴヌクレオチド配列を含む組成物も本明細書中に開示され、ここで、そのオリゴヌクレオチド配列は、エピトープ特異的バーコードおよび1つまたはそれを超えるリンカー配列を含み、そのリンカー配列は、さらなるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることまたは共有結合により付着することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、ユニーク結合物質は、抗体または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、ユニーク結合物質は、目的の標的配列にハイブリダイズするようにデザインされたオリゴヌクレオチドプローブである。
【0026】
(a)アッセイ可能ポリマーサブユニットを含む組成物も本明細書中に開示され、ここで、そのアッセイ可能ポリマーサブユニットは、(i)可変コード領域;および(ii)1つまたはそれを超えるリンカー配列を含むオリゴヌクレオチドであり、そのリンカー配列は、さらなるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることまたは共有結合により付着することができる。
【0027】
(a)エピトープ特異的バーコードをさらに含む1つまたはそれを超えるユニーク結合物質;(b)細胞起源バーコードのコンビナトリアル合成のためのアッセイ可能ポリマーサブユニットセット;(c)酵素的または化学的カップリング試薬;および(d)アッセイ可能ポリマーサブユニットセットの各々個々のアッセイ可能ポリマーサブユニットにハイブリダイズするようにデザインされたプライマーを含むPCR増幅プライマーセットを含むキットも本明細書中に開示され、ここで、そのキットは、細胞の混合物を含むサンプルに対して個々の細胞における標的分子を検出かつ定量するための指示書および方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超えるユニーク結合物質は、抗体または抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超えるユニーク結合物質は、ウイルスゲノム核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超えるユニーク結合物質は、HIVウイルスゲノム核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。
【0029】
エピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体のセットに対する配列決定データを解読かつグループ化するための解析能力を提供するプログラムを格納している非一時的コンピュータ可読媒体も開示される。いくつかの実施形態において、そのプログラムは、データ可視化ツールをさらに提供する。
【0030】
本開示は、標的RNA配列を検出するための方法、組成物およびキットも記載し、それらは、(a)複数のRNA配列を含むサンプルをオリゴヌクレオチドプローブと接触させること(ここで、そのオリゴヌクレオチドプローブは、標的RNA配列にハイブリダイズすることができる標的認識領域および標的特異的バーコードを含む);(b)1つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットをそのオリゴヌクレオチドプローブに連続的な様式で付着させることであって、細胞起源バーコードを作製すること;(c)逆転写反応を行うことであって、細胞起源バーコード、標的特異的バーコード、標的認識領域、および標的RNA配列の全部または一部のcDNAコピーを含む分子複合体を作製すること;(d)増幅反応を行うことであって、その分子複合体を増幅すること;ならびに(e)増幅された分子複合体を配列決定することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、標的RNA配列は、mRNA配列である。いくつかの実施形態において、標的認識領域は、標的RNA配列の一部と相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、標的認識領域は、ポリ-dT配列を含む。いくつかの実施形態において、上記分子複合体は、1つまたはそれを超えるプライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、その1つまたはそれを超えるプライマーは、増幅プライマーである。いくつかの実施形態において、その1つまたはそれを超えるプライマーは、配列決定プライマーである。いくつかの実施形態において、増幅反応は、PCR反応である。いくつかの実施形態において、そのPCR反応は、標的RNA配列の全部または一部のcDNAコピーに相補的な認識領域と配列決定プライマーとの両方を含む少なくとも1つの増幅プライマーを使用する。いくつかの実施形態において、それらの方法は、逆転写反応後のcDNAコピーの3’末端にポリ-dGテイルを付加する工程をさらに含み、ここで、そのPCR反応は、ポリ-dC認識領域と配列決定プライマーとの両方を含む少なくとも1つの増幅プライマーを使用する。いくつかの実施形態において、そのPCR反応は、標的RNA配列の全部または一部のcDNAコピーに相補的なセミランダム認識配列と配列決定プライマーとの両方を含む少なくとも1つの増幅プライマーを使用する。いくつかの実施形態において、そのセミランダム認識配列は、標的RNA配列の3’末端に対応するcDNA分子における点から32~128ヌクレオチド以内にプライミング事象が生じる確率を最大にするようにデザインされている。いくつかの実施形態において、そのセミランダム認識配列のデザインは、cDNA配列に基づき、NNNXXXという一般形をとり、ここで、NNNは、3つのヌクレオチドの任意のランダムなセットであり、XXXは、標的RNA配列の3’末端に対応するcDNA分子における点から約64ヌクレオチドの位置におけるcDNA配列を相補するように選択される特定の3ヌクレオチドのセットである。いくつかの実施形態において、開示される方法は、PCR増幅を行う前に1つまたはそれを超えるブロッキングオリゴヌクレオチド配列の付加をさらに含み、ここで、そのブロッキングオリゴヌクレオチドは、ハウスキーピング遺伝子に対応するmRNA配列または他の望まれない標的RNA配列に相補的であり、それによって、望まれない増幅産物の形成が妨げられる。いくつかの実施形態において、サンプルは、単一細胞を含む。
【0032】
標的オリゴヌクレオチド配列の増幅において使用するためのセミランダムなプライマーも本明細書中に開示され、そのプライマーは、(M)i(X)j(N)kという形態のオリゴヌクレオチド配列を含み、ここで、(M)iおよび(N)kは、それぞれ長さiおよびkの任意のランダムなオリゴヌクレオチドヌクレオチド配列であり、(X)jは、標的オリゴヌクレオチド配列の3’末端に対して特定の位置における標的オリゴヌクレオチド配列を相補するように選択された長さjの特定のオリゴヌクレオチド配列である。
【0033】
いくつかの実施形態において、(X)jは、増幅反応において使用されるとき、セミランダムなプライマーが、特定の位置において標的オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズし、その増幅反応によって、およそZヌクレオチド長の産物がもたらされるように、選択される。いくつかの実施形態において、Zは、50~1000である。いくつかの実施形態において、Zは、100~300である。いくつかの実施形態において、Zは、250である。いくつかの実施形態において、iは、0~6の範囲の値を有する。いくつかの実施形態において、jは、3~6の範囲の値を有する。いくつかの実施形態において、kは、0~6の範囲の値を有する。
【0034】
(参照による援用)
本明細書中で述べられるすべての刊行物、特許および特許出願は、各々個々の刊行物、特許または特許出願が、参照により援用されているのと明確かつ個別に示されたのと同一程度に参照により本明細書中に援用される。
本発明の新規の特徴は、添付の請求項に特定して示されている。本発明の特徴および利点のさらなる理解は、本発明の原理を用いた例証的な実施形態を説明している以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより得られる:
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、ユニーク結合物質(UBA)、エピトープ特異的バーコード(ESB)、および細胞起源バーコード(COB)を形成するように構築された一連のアッセイ可能ポリマーサブユニット(APS)を含む分子複合体の一実施形態の略図を示している。
【0036】
【
図2】
図2は、ユニーク結合物質(UBA)、9ヌクレオチドコード(下図)を含むエピトープ特異的バーコード(ESB)、および4つのAPSコード(SC1~SC4)を含む細胞起源バーコード(COB)を含む分子複合体の一実施形態の略図を示している。この非限定的な例では、ESBは、UBAに共有結合により付着されたオリゴヌクレオチドリンカーの相補的領域にアニーリングすることによってUBAに付着されている(上図)。各APSコードは、それ自体がESBの相補的領域にアニールされるスプリント(splint)オリゴヌクレオチド(スプリント6)に相補的な配列とアニーリングすることによって、いずれかの末端において隣接する7ヌクレオチドコード(下図)を含む。スプリントオリゴヌクレオチドへのアニーリングによるCOBのコンビナトリアル構築の後、APSサブユニットがライゲートされる(矢印で示されている位置において)ことにより、ESBおよびCOBを含む単一の共有結合的分子複合体が形成される。
【0037】
【
図3】
図3は、開示される方法および組成物のエピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードの分子構成要素、ならびに分子バーコード化複合体を形成するためのそれらの構築のグラフィカル表示を示している。
【0038】
【
図4】
図4は、開示される方法および組成物、ならびに個々の細胞における複数のエピトープの検出におけるそれらの使用の一実施形態におけるUBA-ESB構成要素の略図を示している。いくつかの実施形態において、UBA-ESB複合体は、細胞起源バーコードの構築のために使用される共通リンカー(CL)をさらに含む。
【0039】
【
図5】
図5は、ユニーク細胞起源バーコードを形成するための第1のラウンドのスプリットプール合成経路を図示している。細胞サンプルを複数のUBA-ESB複合体で処理した後、そのサンプルを一連のアリコートに分割し、第1のAPSを、個々の細胞内の結合したUBA-ESB複合体にカップリングさせる(ここで、各サンプルアリコートは、異なるAPSで処理される)。
【0040】
【
図6】
図6は、ユニーク細胞起源バーコードを形成するためのその後のラウンドのスプリットプール合成経路を図示している。
図5に図示された第1のAPSのカップリングラウンドの後、サンプルアリコートをプールし、混合し、新しい一連のアリコートに再分配する。次いで、第2のAPS単位を、第1のカップリング工程において生成された結合したUBA-ESB-APS複合体にカップリングする(ここで、各サンプルアリコートは、再度、異なるAPSで処理される)。サンプルをアリコートにし、カップリング反応を行い、細胞サンプルスプリットプールをプールするというラウンドの反復を実施することによって、実質的にユニークな細胞起源バーコードのセットが合成される。
【0041】
【
図7】
図7は、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの一例を図示しており、そのプローブセットは、オリゴヌクレオチド近接プローブ15および19の対を含み、その各近接プローブは、標的mRNA配列に相補的な配列領域を含み、架橋オリゴヌクレオチド20を用いて連結され得、それらの近接プローブは、1つまたはそれを超えるプライマー配列、エピトープ特異的バーコード領域、ならびに本開示の組成物および方法を用いるユニーク細胞起源バーコードの作製において使用するための共通リンカー領域をさらに含み得る。
【0042】
【
図8】
図8は、特定のmRNA分子を標的にするための近接プローブセットの別の例を図示している。
【0043】
【
図9】
図9は、ユニーク細胞起源バーコードを有する細胞内の標的mRNA分子の各存在を標識するために使用されるプロセスの一例を図示している。この例では、UBAは、CD4 mRNAにハイブリダイズする配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0044】
【
図10】
図10は、2つの近接プローブ配列に加えて2つのスプリント分子および架橋オリゴヌクレオチドを使用する、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の例を図示している。
【0045】
【
図11】
図11は、
図10に図示された近接プローブセットの作製において使用されるオリゴヌクレオチド配列の非限定的な例を図示している。
【0046】
【
図12】
図12は、2つの近接プローブを連結するために、組み合わされた単一のスプリント-架橋オリゴヌクレオチドを使用する、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の非限定的な例を図示している。
【0047】
【
図13】
図13は、
図12に図示された近接プローブセットの作製において使用されるオリゴヌクレオチド配列の非限定的な例を図示している。
【0048】
【
図14】
図14は、2つの近接プローブを連結するために、組み合わされた単一のスプリント-架橋オリゴヌクレオチドを使用する、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の非限定的な例を図示している。
【0049】
【
図15】
図15は、コード領域SC1~SC4を含むAPSを構築してユニーク細胞起源バーコードにするために使用されるスプリントオリゴヌクレオチドの非限定的な例を図示している。下図は、抗体または抗体フラグメントを含むUBAをバーコード化するためのオリゴヌクレオチドの一例を示している。
【0050】
【
図16】
図16は、コード領域SC1~SC3を含むAPSを構築してユニーク細胞起源バーコードにするために使用されるスプリントオリゴヌクレオチド分子の非限定的な例を図示している。開示される方法および組成物のいくつかの例では、UBAは、抗体であり得る。他の例では、UBAは、オリゴヌクレオチドプローブ配列、例えば、RNAまたはmRNA配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。構築された細胞起源バーコードは、1つまたはそれを超える増幅プライマーおよび/または配列決定プライマー配列をさらに含み得る。
【0051】
【
図17】
図17は、コード領域SC1~SC3を含むAPSを構築して、PCR増幅プライマーおよび配列決定プライマーを含み得るユニーク細胞起源バーコードにするために使用されるスプリントオリゴヌクレオチド分子の非限定的な例を図示している。
【0052】
【
図18】
図18は、一般的ポリTプライマー配列を用いてmRNA分子をバーコード化するための方法の非限定的な例を図示している。
【0053】
【
図19】
図19は、標的mRNA配列特異的プライマーを用いてmRNA分子をバーコード化するための方法の非限定的な例を図示している。
【0054】
【
図20】
図20は、コード領域SC1~SC3を含むAPSを構築して、特定のmRNA標的分子に対するユニーク細胞起源バーコード(またはオリゴヌクレオチドでタグ化された抗体)にするために使用される、近接プローブセットおよびスプリントオリゴヌクレオチド分子の非限定的な例を図示している。
【0055】
【
図21】
図21は、第1のスプリント分子(スプリントSP-V4)を用いて構築された伸長中のCOBの5’末端に第2のスプリント分子(スプリントSP-V5)をハイブリダイズさせることによってCOBの長さ(すなわち、サブコード領域の数)を延長する非限定的な例を図示している。
【0056】
【
図22】
図22は、APSを構築して標的mRNA分子に対するユニーク細胞起源バーコードを作製するために使用される近接プローブセット(「架橋」配列をさらに含み得る標的特異的プローブの対および1つまたはそれを超える「スプリント」オリゴヌクレオチド分子を含む)の非限定的な例を図示しており、ここで、相補的配列の認識事象の数とその近接要件とが組み合わさることにより、標的検出の特異性が高まる。
【0057】
【
図23】
図23は、APSを構築して標的mRNA分子に対するユニーク細胞起源バーコードを作製するために使用される近接プローブセット(架橋配列をさらに含み得る標的特異的プローブの対および1つまたはそれを超えるスプリントオリゴヌクレオチド分子を含む)のさらなる非限定的な例を図示しており、ここで、相補的配列の認識事象の数とその近接要件とが組み合わさることにより、標的検出の特異性が高まる。
【0058】
【
図24】
図24は、細胞の混合集団を含むサンプル内の稀な細胞、例えば、HIVウイルス核酸配列を含む細胞の部分集団を識別するため、および識別された部分集団の個々の細胞における特定の標的分子のセット、例えば、タンパク質Xを検出するために、開示される組成物およびバーコード化方法を使用するための一実施形態を図示している。
【0059】
【
図25】
図25は、特定の標的分子のセット、例えば、タンパク質Xを個々の細胞ベースで検出するために、稀な細胞、例えば、HIVウイルス核酸配列を含む細胞のバーコード化された集団をリサンプリングするために開示される組成物および方法を使用するための一実施形態を図示しており、ここで、それらの目的の標的分子は、バーコード化が行われた時点では未知のものであった。
【0060】
【
図26】
図26は、自己環状化オリゴヌクレオチドバーコードを抗体または抗体フラグメントに付着するための方法を図示しており、ここで、そのオリゴヌクレオチドは、リンカーを介して(左)または接続オリゴヌクレオチドへのアニーリングを介して(右)、タンパク質分子に付着されている。オリゴヌクレオチドでタグ化された抗体は、イムノPCR反応を使用することによって低含量のタンパク質の検出を可能にし、ここで、結合した抗体に対応するオリゴヌクレオチドバーコードが、定量的PCRまたは配列決定を用いて、増幅され、かつ検出される。
【0061】
【
図27】
図27は、光切断可能な結合を含むヘアピンオリゴヌクレオチド構造を用いて、結合した抗体-EST(エピトープ特異的タグ)複合体の各存在をユニーク細胞起源バーコードでバーコード化するためのプロセスの非限定的な例を図示している。
【0062】
【
図28】
図28は、
図27に図示されたCOB構築プロセスにおいて使用される、ヘアピンを形成するオリゴヌクレオチド配列の非限定的な例を図示している。
【0063】
【
図29】
図29は、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子を含む個々の細胞を識別するための開示される方法の一実施形態を図示している。標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ配列またはポリ-dTオリゴヌクレオチドプローブ配列のいずれかを含むUBAは、UBAコード配列(すなわちESB)に付着されている。固定され、透過処理された細胞における標的RNA配列とのハイブリダイゼーションの後、逆転写およびバーコード化の反応を行うことにより、細胞起源を識別するためのユニーク細胞特異的バーコードを含むUBA-ESB-COB結合体が形成される。開示される方法のいくつかの実施形態において、配列決定プライマーをもた含む標的特異的プライマーを用いて、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子と会合した細胞起源バーコードを選択的に増幅することによって、そのRNA標的の同一性および標的RNA分子が検出された個々の細胞の同一性を解読するために配列決定され得る増幅産物が形成される。
【0064】
【
図30】
図30は、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子を含む個々の細胞を識別するための開示される方法の代替の実施形態を図示している。標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ配列またはポリ-dTオリゴヌクレオチドプローブ配列のいずれかを含むUBAは、UBAコード配列(すなわちESB)に付着されている。固定され、透過処理された細胞における標的RNA配列とのハイブリダイゼーションの後、逆転写、ポリ-dG付加およびバーコード化の反応を行うことにより、細胞起源を識別するためのユニーク細胞特異的バーコードを含むUBA-ESB-COB結合体が形成される。この非限定的な実施形態では、配列決定プライマーも必要に応じて含むポリ-dCプライマーを用いて、すべてのUBA-ESB-COB結合体が増幅される。その後、配列決定プライマーをさらに含む標的特異的プライマーを用いて、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子と会合した細胞起源バーコードを選択的に増幅することによって、RNA標的の同一性および標的RNA分子が検出された個々の細胞の同一性を解読するために配列決定され得る増幅産物が形成され得る。
【0065】
【
図31】
図31は、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子を含む個々の細胞を識別するための開示される方法のなおも別の実施形態を図示している。標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ配列またはポリ-dTオリゴヌクレオチドプローブ配列のいずれかを含むUBAは、UBAコード配列(すなわちESB)に付着されている。固定され、透過処理された細胞における標的RNA配列とのハイブリダイゼーションの後、逆転写およびバーコード化の反応を行うことにより、細胞起源を識別するためのユニーク細胞特異的バーコードを含むUBA-ESB-COB結合体が形成される。開示される方法のいくつかの実施形態において、配列決定プライマーをもまた含むセミランダムプライマー(例えば、配列NNNGAGを有する)を用いて、1つまたはそれを超える目的の標的RNA分子と会合した細胞起源バーコードを選択的に増幅することによって、そのRNA標的の同一性および標的RNA分子が検出された個々の細胞の同一性を解読するために配列決定され得る増幅産物が形成される。そのセミランダムプライマーの非ランダム部分は、そのプライマーが、標的RNAをプロービングするために使用されたポリ-dTまたは標的特異的配列の位置から32~128ヌクレオチドの位置においてUBA-ESB-COB結合体に相補的であり、UBA-ESB-COB結合体とハイブリダイズする確率を最大するように選択され、それによって、増幅産物が、現代のハイスループット配列決定システムの配列決定容量の効率的な使用を最適化するのに適切な長さになることが保証される。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(詳細な説明)
本開示は、参照により本明細書中に援用される公開された特許出願PCT/US2012/023411およびPCT/US2013/054190において以前に説明された方法、組成物およびキットを発展させたものである。特に、本開示は、非特異的なハイブリダイゼーションおよびバックグラウンドシグナルの増幅を最小にするようにデザインされた近接プローブを用いて、単一細胞において複数の標的核酸配列を検出し、より詳細には、単一細胞において複数の標的mRNA配列を検出し、それによって、検出の感度および特異性を改善するための方法、組成物およびキットを記載する。いくつかの実施形態において、開示される方法は、細胞の複合混合物を含む生物学的サンプル中の選択された細胞部分集団内の複数の標的mRNA配列の検出に適用される。特に、本開示は、細胞の複合混合物を含む生物学的サンプル中の選択された細胞部分集団内の単一細胞において複数の標的分子を検出するための方法、組成物およびキットを記載する。
【0067】
本開示は、開示される方法が、(i)細胞集団内の死細胞、細胞片または細胞塊を識別し、それらをさらなる解析から排除することによって、細胞の複合混合物に対して収集された細胞特異的データの質を改善するための手段、および(ii)特定の細胞内マーカーまたは細胞外マーカーの存在に基づいて細胞の複合混合物内の稀な細胞または選択された細胞部分集団を識別し、その後の解析を選択された細胞セットに限定することによって、収集されるデータの特異性を改善するための手段を提供する点において、以前に開示された手法に対する改善を提供する。
【0068】
単一細胞レベルでの試験の多重化は、開示される方法の鍵となる利点であり、個々の細胞内の生理学的プロセスの理解の改善、低減されたサンプル品質の要求(多重化される測定の数に比例)、試験の精度の改善(反復試験に伴うサンプルの取扱いおよび測定誤差の排除によって)ならびに労力およびコストに関する大幅な節約をはじめとしたいくつかの潜在的な利益を提供する。
【0069】
I.定義
本明細書中で使用されるとき、句「ユニーク結合物質」(UBA)とは、開示される方法において使用するための種々の検出試薬のうちの1つのことを指す。各UBAは、単一種の標的分子に結合すること、またはハイブリダイズすることができる。この結合またはハイブリダイゼーションの特異性こそが、所与の個々の細胞における標的分子の検出を可能にする。
【0070】
本明細書中で使用されるとき、用語「エピトープ」は、標的分子(タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物および小分子を含むがこれらに限定されない)またはユニーク結合物質によって認識される標的分子の一部のことを指すために、より一般的な意味で使用される。上で言及した公開された特許出願と同様に、用語「エピトープ」および「標的分子」は、本明細書中に記載される方法によって検出および/または定量される目的の分子(またはその一部)のことを指すために本明細書中で交換可能に使用される。
【0071】
本明細書中で使用されるとき、句「エピトープ特異的バーコード」(ESB)とは、特定のエピトープまたは標的分子と会合されるユニークなコードのことを指す。いくつかの実施形態において、ESBは、標的分子の同一性をコードすることができる分子または分子集合体である。好適なESB分子または分子集合体の例としては、ペプチド配列、オリゴヌクレオチド配列、共有結合または非共有結合により連結されているが識別可能な一連のナノ粒子などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
本明細書中で使用されるとき、句「アッセイ可能ポリマーサブユニット」(APS)とは、別個の情報パケットを含む分子基本単位のことを指し、ここで、その分子基本単位は、細胞起源バーコードを作製するために、順序づけられた様式で連結されることができる。好適なアッセイ可能ポリマーサブユニットの例としては、アミノ酸、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
本明細書中で使用されるとき、句「細胞起源バーコード」(COB)とは、個々の細胞の同一性をコードする分子または分子集合体を形成する、アッセイ可能ポリマーサブユニットの順序づけられた集合体のことを指す。好適なCOB分子または分子集合体の例としては、ペプチド配列、オリゴヌクレオチド配列、共有結合または非共有結合により連結されているストリングであるが識別可能な一連のナノ粒子などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
本明細書中で使用されるとき、句「共通リンカー」(CL)とは、分子バーコードの構築において使用するための、UBA、ESBまたはAPSサブユニットに直接または間接的に付着され得るリンカー部分のことを指す。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、用語「スプリント」とは、細胞起源バーコードを形成するためのAPSの構築において使用される鋳型分子のことを指す。いくつかの実施形態において、スプリント(または鋳型またはアニーリングプライマー)分子は、オリゴヌクレオチドである。
【0076】
本明細書中で使用されるとき、用語「サブコード」(SC)とは、APS内に含まれるユニークなコード領域および/または検出可能な分子のことを指し、ここで、2つまたはそれを超えるAPSの連続的な組み合わせによって、他のすべてのCOBと区別する検出可能なコードまたはシグナルを有する個々のCOBが形成される。
【0077】
本明細書中で使用されるとき、句「停止コード」とは、スプリントまたは鋳型分子の複製または増幅を妨げるようにデザインされた、スプリントまたは鋳型分子のセグメントのことを指す。
【0078】
本明細書中で使用されるとき、句「コンビナトリアル合成」とは、最小数の化学的カップリング工程を含む単一プロセスにおいて多数の化合物(数万(tens to thousands)から数十万個またはそれを超える)を合成することを可能にする合成方法のことを指す。
【0079】
本明細書中で使用されるとき、句「スプリットプール合成」とは、カップリング反応を行う前に反応混合物をいくつかの異なるアリコートに分割し、カップリングされるべき異なるモノマーまたは構成要素を各アリコートに加える、コンビナトリアル合成プロセスの一例のことを指す。カップリング反応の後、それらのアリコートを合わせ(プールし)、混合し、次のカップリングラウンドを行う前に新しいアリコートセットに分割(スプリット)する。
【0080】
本明細書中で使用されるとき、句「近接プローブ」とは、同じ標的分子の異なるセグメントにハイブリダイズすることができるプローブ分子対の各々のことを指す。いくつかの実施形態において、近接プローブは、同じ標的オリゴヌクレオチド分子の異なるセグメントにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブの対であり得る。いくつかの実施形態において、それらのプローブによって認識される標的オリゴヌクレオチドの異なるセグメントは、互いに密に近接して存在する。
【0081】
本明細書中で使用されるとき、句「架橋分子」(または「架橋」)とは、2つの対応する近接プローブがそれらのそれぞれの標的分子に結合またはハイブリダイズされたときだけ、その2つの対応する近接プローブに結合またはハイブリダイズすることができる接続分子のことを指す。いくつかの実施形態において、架橋分子は、オリゴヌクレオチド近接プローブの対の各々に同時にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドである。
【0082】
II.アッセイ方法の概要
本開示の方法、組成物およびキットは、新規の検出試薬およびバーコード化試薬のセットを用いて、単一細胞(選択された細胞の部分集団を含む)において複数の標的分子を検出するための手段を提供する。開示される方法のいくつかの実施形態において、選択された細胞部分集団からの単一細胞における複数の標的分子の検出が可能になる。一般に、そのアプローチは、目的の標的分子を検出するためのユニーク結合物質(UBA)、UBAによって認識される標的分子の同一性をコードするエピトープ特異的バーコード(ESB)、および個々の細胞を識別するユニーク細胞起源バーコード(COB)を作製するためのアッセイ可能ポリマーサブユニット(APS)の使用を含み、それによって、特定のバイオマーカーのセットに基づいて、細胞の複合混合物を含むサンプル内の選択された細胞部分集団を定義することが可能になり、その後、1つまたはそれを超える標的分子の検出が、選択された細胞部分集団における個々の細胞との相関関係を示す。
【0083】
ユニーク結合物質は、開示される方法において使用するための検出試薬を含む。各UBAは、単一の標的分子種に特異的であり、所与の個々の細胞における標的分子の検出を可能にする結合特異性またはハイブリダイゼーション特異性を提供する。開示される方法の多くの実施形態では、細胞サンプルを、1つまたはそれを超えるUBAとともにインキュベートし(細胞の固定および/または透過処理の前または後のいずれかにおいて)、その後、未結合のUBAを洗い流す。次いで、サンプルの細胞上または細胞内の標的分子に結合したこれらのUBAは、その後、エピトープ特異的バーコード(ESB)を用いて識別され得る。各ESBは、特定の標的分子に対するUBAに関連するユニークなコードを含む(
図1)。開示される方法の他の実施形態において、ESBは、アッセイを行う前にUBAに付着される(直接または間接的に)。いくつかの実施形態において、ESBは、サンプルとUBAとのインキュベーションの後に、例えば、アッセイ手順の一部として、UBAに付着される。
【0084】
特定の標的分子を識別するために使用されるESBに加えて、開示される方法、組成物およびキットは、検出される標的分子を特定の個々の細胞に割り当てるための手段を提供する細胞起源バーコードを作製するための構成要素を提供する。各々の個々のCOBは、特定の起源細胞に関連するユニークなコードを含む。したがって、個々の細胞に対するUBAのコレクションは、それらの会合したESBによって識別されるとき、サンプル中の他のすべての細胞に対するCOBとは異なる共通のCOBを共有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、COBは、結合したUBA-ESB複合体に付着される2つまたはそれを超えるアッセイ可能ポリマーサブユニットから構成され(
図1)、ここで、APSのセットは、サブコード(SC)のセットをさらに含む(
図2)。各SCは、ユニークなコード領域および/または検出可能な分子を含み、ここで、2つまたはそれを超えるAPSの連続的な組み合わせによって、それをCOBの全セットにおける他のすべてのCOBと区別する検出可能なコードまたはシグナルを有する個々のCOBが作製される。本開示のある特定の態様は、スプリットプール合成法を介して一連のAPSを一緒に連結することによるCOBのコンビナトリアル合成に関し(
図3~6)、ここで、特定のAPSのセットおよび規定の数のスプリットプールカップリングラウンドを用いて合成され得るユニークなCOBの総数は、サンプル中の個々の細胞の数より有意に多く、それによって、任意の2つの個々の細胞が同じCOBを有する確率は極端に低くなることが保証される。
【0086】
サンプルの個々の細胞に存在する標的分子を識別するためのESB-COB複合体を解読することは、上で言及した公開された特許出願に記載されているような種々の手法を用いて行われ得る。いくつかの実施形態において、ESB-COB複合体は、増幅および配列決定によって解読される。したがって、本開示のある特定の態様は、複数のUBA-ESB複合体およびAPSセットを用いて細胞をバーコード化するための方法を提供し、ここで、各APSは、ユニークなSCを含み、各UBA-ESB-COB複合体のためのCOBは、所与の細胞に対して同じであって、他のすべての細胞に対するCOBとは異なり、ESB-COB複合体の全セットの増幅および配列決定は、サンプル中または選択された細胞部分集団内の各々の個々の細胞に関連する標的分子の全セットのカタログを作成することを可能にする。開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態において、目的のUBA-ESB-COB複合体の選択的増幅は、現代のハイスループット配列決定システムの配列決定容量の効率的な使用を最適にするのに適切な長さの目的の配列だけを含む増幅産物を生成する標的特異的増幅プライマーまたはセミランダム増幅プライマーのデザインおよび使用によって可能になる。
【0087】
III.組成物
A.ユニーク結合物質(UBA)
UBAは、少なくとも1つの標的分子またはその一部に結合するかまたはハイブリダイズするようにデザインされた分子または分子集合体であり、適切な条件下において、UBAおよび標的分子を含む分子複合体を形成することができる。標的分子の例としては、タンパク質、ペプチド、核酸、DNA、RNA、mRNA、脂質、炭水化物、有機小分子、薬物分子、有機モノマーおよびイオンが挙げられるがこれらに限定されない。便宜上、本明細書中に記載される方法、組成物およびキットの大部分が、標的タンパク質または標的mRNAに結合するUBAの文脈において説明される。しかしながら、これらの方法、組成物およびキットはまた、他の標的分子にも適用することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、UBAは、それらを、少なくとも1つの標的分子、少なくとも1つの標的分子の少なくとも一部分、少なくとも1つの標的分子代替物、標的分子代替物の少なくとも一部またはそれらの組み合わせと結合するかまたは相互作用することを可能にする少なくとも1つの認識エレメントを含む。UBAは、代表的には、配列特異的様式、立体配座特異的様式またはその両方の組み合わせで標的分子と結合または相互作用する。好適な分子認識相互作用の例としては、抗体-抗原結合、レセプター-リガンド結合、アプタマー-標的結合、酵素-基質認識、オリゴヌクレオチドプローブ-標的配列ハイブリダイゼーションなどが挙げられるがこれらに限定されない。したがって、UBAの組み立てにおいて使用するための好適な認識エレメントとしては、抗体、レセプター、酵素、ペプトイド、アプタマー、ペプチドアプタマー、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチドプローブ配列などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態において、UBAは、それらを、標的分子の同一性をコードするESBおよび/または特定の個々の細胞の同一性をコードするCOBに付着またはハイブリダイズすることを可能にする少なくとも1つの共通リンカー(CL)エレメントを含む。
その共通リンカーは、UBAに直接または間接的に付着され得る。いくつかの実施形態において、その共通リンカーエレメントは、オリゴヌクレオチド分子であり得る。いくつかの実施形態において、共通リンカーエレメントは、UBAに共有結合により付着されるオリゴヌクレオチド配列であり得るが、いくつかの実施形態では、共通リンカーエレメントは、UBAに非共有結合により付着され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、UBAは、UBAの単離および/または表面上へのUBAの固定化のために使用され得る捕捉領域をさらに含む。いくつかの実施形態において、捕捉領域は、親和性タグ、ビーズ、スライドまたはアレイであり得る。いくつかの実施形態において、捕捉領域は、会合したESBであり、例えば、そのESBは、検出可能なビーズ、例えば、ユニークなスペクトルシグネチャを有するビーズ(例えば、可視線、近赤外線または赤外線において放射する特定のフルオロフォアを組み込むビーズ)であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、UBAは、認識エレメントとして抗体を含む(
図2)。
本明細書中で使用されるとき、用語「抗体」は、インタクトな抗体分子(免疫グロブリンA、免疫グロブリンGおよび免疫グロブリンMを含むがこれらに限定されない)だけでなく、少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗体分子の任意の免疫反応性の構成要素も含むように広い意味で使用される。そのような免疫反応性の構成要素としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、Fab’
2フラグメント、一本鎖抗体フラグメント(scFv)、ミニ抗体、ダイアボディ、架橋抗体フラグメント、Affibody(商標)分子、シクロチド分子などが挙げられるがこれらに限定されない。抗体工学またはタンパク質工学の手法を用いて得られる免疫反応性の産物も明確に、本明細書中で使用される用語「抗体」の意味の範囲内に含まれる。関連するプロトコルを含む抗体工学および/またはタンパク質工学の詳細な説明は、例えば、J.Maynard and G.Georgiou,Ann.Rev.Biomed.Eng.2:339 76(2000);Antibody Engineering,R.Kontermann and S.Dubel,eds.,Springer Lab Manual,Springer Verlag(2001);米国特許第5,831,012号;およびAntibody Engineering Protocols,S.Paul,Humana Press(1995)に見られる。
【0092】
当業者は、抗体が、種々の供給源(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、組換え的に発現された抗体、ヒト化抗体、植物抗体などを含むがこれらに限定されない)から得ることができること;および種々の動物種(ウサギ、マウス、ヤギ、ラット、ヒト、ウマ、ウシ、モルモット、ニワトリ、ヒツジ、ロバ、ヒトなどを含む)から得ることができることを認識する。多種多様の抗体が、種々の供給業者から商業的に入手可能であり、特注の抗体をいくつかの契約研究所から得ることができる。作製および使用についての関連するプロトコルを含む、抗体の詳細な説明は、とりわけ、Current Protocols in Immunology,Coliganら編,John Wiley & Sons(1999、2003年8月からの改訂を含む);The Electronic Notebook:Basic Methods in Antibody Production and Characterization,G.Howard and D.Bethel,eds.,CRC Press(2000);Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,3d Ed.,J.Goding,Academic Press(1996);Using Antibodies,E.Harlow and D.Lane,Cold Spring Harbor Lab Press(1999);およびMonoclonal Antibodies:A Practical Approach,P.Shepherd and C.Dean,Oxford University Press(2000)に見られる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、核酸、例えば、共通リンカーオリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド配列を含むESBに付着される。
リンカーとESBの両方を含むオリゴヌクレオチド配列の1つの非限定的な例は、
5’-GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT NNNNNNNNN CGTCAGACAGGGAGC-3’
であり、ここで、NNNNNNNNN配列は、付着される抗体に特異的な9ヌクレオチドコードである。核酸を抗体に付着するための方法は、当該分野で周知であり、任意の好適なアプローチが、ここに開示されている方法、組成物およびキットに包含される。例えば、いくつかの実施形態において、抗体は、Gullbergら(2004),PNAS 101(22):228420-8424およびBoozerら(2004),Analytical Chemistry 76(23):6967-6972(この両方が参照により本明細書中に援用される)に記載されている方法を用いて核酸分子に付着され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、遊離アミンへのランダムなカップリングによって核酸分子に付着され得る。いくつかの実施形態において、それらの抗体は、10対1の比の核酸と抗体を用いる遊離アミンへのランダムなカップリングによって核酸分子に付着され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、参照により本明細書中に援用されるKozlovら(2004),Biopolymers 5:73(5):621-630に記載されている方法を用いて核酸分子に付着され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒドラジン化学を用いて核酸分子に付着され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、参照により本明細書中に援用されるNolan(2005),Nature Methods 2:11-12に記載されているような「タドポール(tadpoles)」を用いて核酸分子に付着され得る。一般に、抗体は、本明細書中に記載される方法を含む、操作された抗体を作製するための当該分野で公知の任意の好適な方法を用いて核酸分子に付着され得る。
【0094】
開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態において、UBAは、認識エレメントとして核酸配列を含む。核酸認識エレメントは、標的特異的認識配列または一般的な標的認識配列を含み得る。好適な標的認識配列の例としては、mRNA分子全般とのハイブリダイゼーションにおいて使用するためのポリ-dTプローブ配列;特定の標的mRNAとのハイブリダイゼーションのためのアンチセンスDNAプローブ配列、HIVウイルス配列にハイブリダイズするようにデザインされたオリゴヌクレオチド配列などが挙げられるがこれらに限定されない。その核酸配列は、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチド長、より好ましくは、少なくとも20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、標的特異的認識配列は、約10~500、20~400、30~300、40~200または50~100ヌクレオチド長である。他の実施形態において、標的特異的配列は、約30~70、40~80、50~90または60~100、30~120、40~140または50~150ヌクレオチド長である。
【0095】
開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態において、UBAは、オリゴヌクレオチドプローブのセット、例えば、近接プローブの対を架橋オリゴヌクレオチド配列とともに含み、それらのオリゴヌクレオチド配列は、単一のオリゴヌクレオチド認識配列を用いて達成され得る特異性よりも高い特異性で、目的の標的核酸分子、例えば、mRNA分子にハイブリダイズするようにデザインされている。架橋分子(例えば、架橋オリゴヌクレオチド分子)を使用する本開示の近接オリゴヌクレオチドプローブセットの例を
図7、8、10および12に図示する。本開示のオリゴヌクレオチドプローブセットのさらなる例を
図22および23に図示する。開示される方法および組成物のいくつかの実施形態において、架橋分子は、COBの構築に使用されるスプリント分子に組み込まれ得、1つまたはそれを超えるプライマー配列も同様に組み込み得る。
【0096】
一例を図示している
図7を参照すると、本開示の近接プローブセットを含むUBAは、2つのオリゴヌクレオチド配列15および19を含み、その各々が、標的mRNA分子の相補的なセグメントにハイブリダイズするようにデザインされている。代表的には、その2つの近接プローブは、互いに密に近接して存在する標的mRNAのセグメント、例えば、N個のヌクレオチドによって分断された2つの標的配列領域にハイブリダイズするようにデザインされており、ここで、Nは、1~200ヌクレオチドの範囲である。多くの実施形態において、一方または他方の近接プローブが、エピトープ特異的バーコード配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、架橋オリゴヌクレオチド20は、個々の近接プローブの各々の上の相補的な配列領域にハイブリダイズするようにデザインされており、それによって、標的mRNAを特異的に認識する分子複合体が形成され、それは、増幅プライマー配列および配列決定プライマー配列ならびに/またはユニーク細胞起源バーコードの構築において使用するための共通リンカーをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、2つの近接プローブは、架橋分子とのアニーリングの後にライゲーションによって連結され、それによって、増幅および配列決定され得る共有結合により連結された分子複合体が形成される。いくつかの実施形態において、スプリント分子およびAPSを構築してCOBを形成するために使用される共通リンカーは、プローブ複合体の5’末端に配置される(
図7)。いくつかの実施形態において、共通リンカーは、プローブ複合体の3’末端に配置される(
図8)。いくつかの実施形態において、標的特異的プローブセットは、2つの標的特異的近接プローブ、SCを含むAPSをユニークなCOBに構築する際に使用するための2つのスプリント分子、および架橋分子を含む(
図10)。いくつかの実施形態において、標的特異的プローブセットは、2つの標的特異的近接プローブ、およびそれ自体がスプリントとして機能する架橋分子を含む(
図12)。
【0097】
いくつかの実施形態において、UBAは、1つまたはそれを超えるプライマーを含む核酸配列をさらに含み得、ここで、それらのプライマーは、特定のUBAプローブ配列、ESBコード配列、COB配列またはそれらの組み合わせの増幅および/または配列決定のために使用される。任意の好適なプライマー配列を、増幅および/または配列決定のために使用してよく、例えば、Illuminaプライマーを、UBA-ESB-COB集合体もしくは結合体またはそれらの一部を配列決定するために使用してよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、UBAは、ゲノムDNAまたは染色体DNA構造(例えば、ESBが付着され得る、DNAもしくはヒストンまたはDNA挿入分子(例えば、ベルベリン、エチジウムブロマイド、プロフラビン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシンまたはサリドマイド)を結合する抗体を含むがこれらに限定されない)の認識およびそれらへの結合のための非特異的結合物質を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、UBAは、ESBが付着され得るタンパク質に対する非特異的結合物質を含み得、その非特異的結合物質としては、例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートおよび塩化スルホニルからなる群より選択されるアミン反応性プローブが挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
B.エピトープ特異的バーコード(ESB)
本開示のエピトープ特異的バーコードは、特定の標的分子と会合するユニークなコードを提供する。ESBは、UBAまたはその一部に付着するかまたは結合するようにデザインされた分子または分子集合体であり、適切な条件下において、ESB、UBAおよび標的分子を含む分子複合体を形成することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、ESBは、それらを、少なくとも1つのUBAおよび/または少なくとも1つのAPSと、代表的には配列特異的様式、立体配座特異的様式またはその両方の組み合わせで結合するかまたは相互作用することを可能にする少なくとも1つの共通リンカー領域を含む。ESBとそれらと会合したUBAおよび/またはAPSとの間の好適な分子結合相互作用の例としては、抗体-抗原結合、レセプター-リガンド結合、アプタマー-標的結合、酵素-基質相互作用、オリゴヌクレオチドプローブ-標的配列ハイブリダイゼーションなどが挙げられるがこれらに限定されない。ESBとそれらの会合したUBAおよび/またはAPSとの間の相互作用は、代表的には、イオン結合、水素結合またはファンデルワールス力によって駆動される。いくつかの実施形態において、ESBと会合したUBAおよび/またはAPSとの間の付着は、共有結合であり得る。いくつかの実施形態において、その付着は、非共有結合である。いくつかの実施形態において、ESBは、アッセイを行う前にUBAに付着される(直接または間接的に)。他の実施形態において、ESBは、サンプルとUBAとのインキュベーションの後に、すなわち、アッセイ手順の一部として、UBAに結合するかまたは付着される。
【0102】
開示される方法および組成物のいくつかの実施形態において、ESBは、付着したUBAの同一性をコードする少なくとも1つのコード領域を含む。いくつかの実施形態において、ESBは、オリゴヌクレオチド配列であり、コード領域は、5~15ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、コード領域は、9ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド配列である(
図2)。
【0103】
多くの実施形態において、ESBは、1つまたはそれを超えるプライマーをさらに含むオリゴヌクレオチド配列であり、ESB核酸配列および/または会合したCOBの全部または一部は、当該分野で周知であるような、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、分岐連鎖反応またはローリングサークル増幅アプローチを含むがこれらに限定されない任意の核酸増幅方法を用いて増幅され得る。
【0104】
図26は、自己環状化オリゴヌクレオチドバーコードを抗体または抗体フラグメントに付着するための方法の非限定的な例を図示しており、ここで、そのオリゴヌクレオチドは、リンカーを介して(左)または接続オリゴヌクレオチドへのアニーリングを介して(右)、タンパク質分子に付着されている。オリゴヌクレオチドでタグ化された抗体は、イムノPCR反応を使用することによって少量のタンパク質の検出を可能にし、ここで、結合した抗体に対応するオリゴヌクレオチドバーコードが、定量的PCRまたは配列決定を用いて、増幅され、検出される。
【0105】
いくつかの実施形態において、ESBは、UBA-ESB複合体の単離および/または固体表面上へのUBA-ESB複合体の固定化のために使用され得る捕捉領域をさらに含む。いくつかの実施形態において、捕捉領域は、親和性タグ、ビーズ、スライドまたはアレイであり得る。いくつかの実施形態において、捕捉領域は、ESBであり、例えば、そのESBは、検出可能なビーズ、例えば、ユニークなスペクトルシグネチャを有するビーズ(例えば、可視線、近赤外線または赤外線において放射する特定のフルオロフォアを組み込むビーズ)であり得る。いくつかの実施形態において、UBAは、ESBの捕捉領域に直接または間接的に付着される。
【0106】
C.細胞起源バーコード(COB)
ここに開示されている方法、組成物およびキットは、細胞起源バーコードを作製するための手段をさらに提供し、ここで、各COBは、特定の起源細胞に関連し得るユニークなコードを提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える結合したUBA-ESB複合体へのCOBの付着(例えば、共通リンカーオリゴヌクレオチドを用いた付着)によって、UBA/ESB複合体が結合している標的分子に対する起源細胞が識別される。いくつかの実施形態において、本開示のCOBは、(i)UBA-ESB複合体と会合した共通リンカーオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる共通リンカー配列、(ii)特定の起源細胞に関連するユニークなコード、および(iii)1つもしくはそれを超えるプライマー配列、またはそれらの組み合わせを含み得る分子実体(または集合体、複合体または結合体)である。
【0107】
いくつかの実施形態において、COBは、2つまたはそれを超えるAPSを含むモジュラー構造である。いくつかの実施形態において、COBは、直鎖状の組み合わせで付着された2つまたはそれを超えるAPSを含むモジュラー構造である。いくつかの実施形態において、COBは、直鎖状の組み合わせで付着された複数のAPSを含み、ここで、そのAPSは、決定論的重量(deterministic weight)の小分子を含む。いくつかの実施形態において、COBは、直鎖状の組み合わせで付着された2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるユニークなAPSを含む。いくつかの実施形態において、COBは、先に参照した公開された特許出願により十分に説明されているようなスプリットプールコンビナトリアル合成法(
図4~6)を用いて構築されたいくつかのAPSの直鎖状の組み合わせ、例えば、4つのAPSの直鎖状の組み合わせを含む。隣接するAPSの直鎖状の付着は、種々の手法を用いて、例えば、隣接するAPSを化学的にカップリングし、または個々のAPS上の相補的な配列領域とアニールするようにデザインされた2つまたはそれを超える配列領域セットを含む鋳型(スプリント)核酸分子に個々のAPSをハイブリダイズし、続いて、隣接するAPSをライゲーションすることによって、達成され得る。鋳型核酸分子、すなわちスプリントは、少なくとも1つの核酸配列、例えば、直鎖状のウイルスゲノムまたは直鎖化可能なウイルスゲノム、例えば、アデノウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ロタウイルスなどのゲノム;バクテリオファージ、例えば、ラムダ、M13、φX-174、Tシリーズバクテリオファージなど(クローニングカセット、ポリリンカーなどを含むそれらの誘導体を含む);プラスミド、例えば、pBR322およびpUCシリーズプラスミドなど(クローニングカセット、ポリリンカーなどを含むそれらの誘導体を含む);合成鋳型;人工配列を含む鋳型;などの少なくとも一部を含み得る。当業者は、核酸の実質的に任意の片が、少なくとも2個のAPSに対するアニーリング領域を含むのに十分大きいか、または組み合わされた配列が少なくとも2個のAPSに対するアニーリング領域を含むのに十分大きいように少なくとも1つの他の核酸配列と組み合わされ得るならば、その片がCOBを作製するための鋳型として役立ち得ることを理解する。
【0108】
いくつかの実施形態において、鋳型またはスプリント分子のAPS認識配列のセットは各々、1、2、3個またはそれを超える炭素原子を含むリンカーによって分断され、そのリンカーは、ポリメラーゼ活性に対する「停止」シグナルまたは停止コードとして作用し、それによって、核酸増幅工程中に完全な鋳型分子の望まれない増幅を妨げる。
【0109】
いくつかの実施形態において、複数のAPSは、1つまたはそれを超えるサブコード(SC)領域を含むユニークにデザインされた核酸配列のセットを含み得、ここで、そのサブコード配列は、複数のAPSにおける個々の各APS分子に対してユニークである。いくつかの実施形態において、SC領域またはSC配列は、約3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド長であるかまたは10ヌクレオチド長より長い。いくつかの実施形態において、サブコードは、規定の長さ、例えば、7ヌクレオチドの核酸配列のユニークなセットを含み(
図2)、それらの核酸配列は、エラー訂正能力を提供できるようにデザインされている。いくつかの実施形態において、サブコードのセットは、そのセット内の配列の任意の対組み合わせが、規定の「遺伝距離」またはミスマッチの塩基の数、例えば、3という距離を示すようにデザインされた、7ヌクレオチド配列を含む。この場合、アッセイの最終工程において識別されるCOBのセットにおけるサブコードの検討によって、アッセイデータの最終解析を行う前にハイブリダイゼーションエラーまたは増幅エラーを検出することが可能になる。
【0110】
いくつかの実施形態において、APSは、互いへのまたはESBへのまたはCOBの構築に用いられる鋳型分子へのAPSの付着を促進する目的で、1つまたはそれを超える共通リンカー(CL)領域または配列(例えば、共通リンカーオリゴヌクレオチド)をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態において、共通リンカー領域は、鋳型分子上の相補的な配列にハイブリダイズするようにデザインされたアニーリング領域を含む。共通リンカーは、APS分子の残りの部分に直接または間接的に付着され得、COBへのAPSの共有結合または非共有結合による構築を促進する。いくつかの実施形態において、共通リンカー配列は、約10~約25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド配列またはタンデムリピート配列を含み得る。いくつかの実施形態において、APSは、SC領域に隣接する2つの共通リンカー配列を含む。いくつかの実施形態において、共通リンカー配列は、COBの5’末端または3’末端のいずれかで付着され得、検出またはイメージングの目的で、例えば、共通リンカー配列に相補的な配列を固体支持体または基材に付着することによる、表面上へのCOBの捕捉および固定化のために使用され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、APSまたはCLは、検出されたCOBの数を後に定量できるようにするランダムタグ領域をさらに含む。そのようなランダムタグ領域を作製および使用するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Casbonら(2011),Nucleic Acids Research 39(12):e81を参照のこと。そのランダムタグ領域は、各配列バリアントと会合した鋳型分子の数を推定する分子カウンターとして機能し得る。いくつかの実施形態において、分子カウンターは、増幅反応、例えば、PCR増幅を行う前に、ESB、APS、CLまたは構築されたCOBに組み込まれる。縮重塩基領域(DBR)を含む分子カウンターのライブラリーが、ESB、APS、CLまたは構築されたCOBに組み込まれ得る。ライブラリー内のユニークなDBRの数は、一般に、そのDBRの長さおよび塩基組成によって限定される。例えば、単一ヌクレオチドを含むDBRは、各塩基に対して1つにつき、可能性のある4つの異なるカウンターを可能にさせ得る。より長いDBRを使用することによって、ユニークなカウンター配列のより大きなライブラリーが達成され得、例えば、8ヌクレオチドDBRは、48=65,536個のユニーク配列に対応する。分子カウンターは、ある配列バリアントが単一の鋳型分子あるいは複数の鋳型分子に会合しているか否かを判定するために使用され得る。したがって、1つの配列バリアントと会合した異なるDBR配列の数は、最初の鋳型分子の数の直接的な尺度として役立ち得る。この情報は、各配列バリアントのリード数(例えば、PCR増幅反応を行った後に得られるリード数を含む)によって提供される情報を補い得るかまたは置き換え得る。DBRは、配列バリアントが、増幅反応中のポリメラーゼエラーに由来する確率またはPCR増幅反応を行う前に存在した真の元のバリアントである確率を決定するためにも使用され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、COBのエレメントは、単一の分子実体(1つだけのCOB)または2つの異なる分子実体(二連COB)において見られ得る。各分子実体は、1つの分子、または共有結合もしくは非共有結合手段によって互いに付着された1つより多い分子から構成され得る。いくつかの実施形態において、二連COBの各構成要素は、同じ標的分子上の異なる部位に結合する標的分子特異的UBA-EBS複合体を有する。
二連COBの系を用いるとき、そのCOBのうちの1つは、下記に記載されるように標識されてもよいし、未標識であってもよい。いくつかの実施形態において、未標識のCOBは、捕捉領域を含み得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、SCにハイブリダイズするようにデザインされた相補的なオリゴヌクレオチド配列は、検出可能な分子、例えば、標識または標識モノマーをCOBの各SCに付着するために役立つ。それらの相補的なオリゴヌクレオチド配列は、例えば、それらの相補的なオリゴヌクレオチド配列への1つまたはそれを超える検出可能な標識分子の共有結合による組み込みによって、直接標識され得る。あるいは、それらの相補的なオリゴヌクレオチド配列は、例えば、その相補的なオリゴヌクレオチド配列へのビオチンまたは特異的な高親和性リガンド相互作用を提供することができる他の分子の組み込みによって、間接的に標識され得る。そのような場合、そのリガンド(例えば、ビオチンの組み込みの場合、アビジンまたはストレプトアビジン)は、検出可能な分子に共有結合により付着され得る。SCに付着された検出可能な分子が、相補的なオリゴヌクレオチド配列に直接組み込まれない場合、その相補的な配列は、検出可能な分子とSCとの間の架橋として役立ち、架橋分子、例えば、架橋核酸と呼ばれることがある。
【0114】
本開示のCOB、およびそれを構成するAPS分子は、種々の標識または標識モノマー、例えば、放射性同位体、フルオロフォア、色素、酵素、ナノ粒子、質量タグ、化学発光マーカー、ビオチン、または直接(例えば、発光によって)もしくは間接的に(例えば、蛍光標識された抗体の結合によって)検出され得る当該分野で公知の他の標識もしくは標識モノマーのいずれかで標識され得る。いくつかの実施形態において、COBにおける1つまたはそれを超えるSCは、1つまたはそれを超える標識モノマーで標識され、COBのSCに付着された標識モノマーによって提供されるシグナルは、UBA(またはUBA-ESB-COB)が結合する標的(または細胞)を識別する検出可能なコードを構成する。いくつかの実施形態において、SBから所与のシグナルが無いこと(例えば、ダークスポット)も、検出可能なコードの一部を構成し得る。本明細書中に記載されるCOBとともに使用され得る標識モノマーの他の例および標識モノマーをCOBに組み込む方法の他の例は、米国特許第7,473,767号;ならびに米国特許出願第10/542,458号、同第12/324,357号、同第11/645,270号および同第12/541,131号(これらはその全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0115】
D.プライマー
開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態では、個々の細胞における標的分子の検出および定量のために使用される配列決定反応の費用対効果および処理量を最適化するために、標的特異的プライマー、一般的プライマー、セミランダムプライマーまたはそれらの組み合わせを使用して、目的の標的に対するUBA-ESB-COB複合体が選択的に増幅される。
【0116】
開示される方法、組成物およびキットの標的特異的プライマーの例は、
図29に概略的に図示されており、当該分子の5’末端近傍に配置された配列決定プライマー領域(「プライマー1」)ならびに当該分子の3’末端近傍に配置された標的特異的配列領域を含む。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、Illumina配列決定プライマー配列を含む。代表的には、配列決定プライマー領域は、約18~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、20~25ヌクレオチド長である。標的特異的配列領域は、目的の標的配列に相補的であるようにデザインされる。代表的には、標的特異的配列領域は、6~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、標的特異的配列領域は、18~22ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域および標的特異的配列領域は、0~30ヌクレオチド長のリンカー領域によって分断される。
【0117】
開示される方法、組成物およびキットの一般的プライマーの例は、
図30に概略的に図示されており、当該分子の5’末端近傍に配置された配列決定プライマー領域(「プライマー1」ならびに当該分子の3’末端近傍に配置されたポリC配列領域を含む。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、Illumina配列決定プライマー配列を含む。代表的には、配列決定プライマー領域は、約18~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、20~25ヌクレオチド長である。ポリC配列領域は、標的RNA配列の逆転写後に標的-UBA-ESB-COB複合体の3’末端に付加されたポリG配列に相補的であるようにデザインされる。いくつかの実施形態において、ポリC配列領域は、4~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、ポリC配列領域は、6~20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、ポリC配列領域は、6~12ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域およびポリC配列領域は、0~30ヌクレオチド長のリンカー領域によって分断される。
【0118】
開示される方法、組成物およびキットのセミランダムプライマーの例は、
図31に概略的に図示されており、当該分子の5’末端近近傍に配置された配列決定プライマー領域(「プライマー1」)ならびに当該分子の3’末端近傍に配置されたセミランダム配列領域(例えば、「NNNGAG」)を含み、ここで、NNNは、ランダムな3ヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、Illumina配列決定プライマー配列を含む。代表的には、配列決定プライマー領域は、約18~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域は、20~25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、セミランダムな配列は、(M)
i(X)
j(N)
kの形態であり、ここで、(M)
iおよび(N)
kは、それぞれ長さiおよびkの任意のランダムなオリゴヌクレオチドヌクレオチド配列であり、(X)
jは、標的オリゴヌクレオチド配列の3’末端に対して特定の位置において標的オリゴヌクレオチド配列を相補するように選択された長さjの特定のオリゴヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態において、iおよびkの値は、0~6の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、jの値は、3~6の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、セミランダムプライマーは、標的配列の3’末端から特定の位置における標的オリゴヌクレオチド配列に相補的であるようにデザインされており、それによって、およそZヌクレオチド長の増幅産物がもたらされ、ここで、Zの値は、50~1000の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、セミランダムな配列は、標的RNA配列のcDNAコピーとUBAプローブ配列との間の接合点からおよそ64ヌクレオチドの位置におけるcDNA配列に部分的に相補的であるようにデザインされている。いくつかの実施形態において、セミランダムな配列は、標的RNA配列のcDNAコピーと元のUBAプローブ配列との間の接合点から128~32ヌクレオチドの位置におけるcDNA配列に部分的に相補的であるようにデザインされている。いくつかの実施形態において、セミランダム配列の非ランダム部分は、2~10ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、セミランダム配列の非ランダム部分は、3~6ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、セミランダム配列のランダム部分は、2~10ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、セミランダム配列のランダム部分は、3~6ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、配列決定プライマー領域およびセミランダム配列領域は、0~30ヌクレオチド長のリンカー領域によって分断される。
【0119】
IV.方法
A.細胞とUBA-ESB複合体とのインキュベーション
開示される方法の多くの実施形態では、細胞懸濁液またはサンプルを、個々の細胞の表面上または個々の細胞内の特定の分子標的との結合またはハイブリダイゼーションに適した条件下において、1つまたはそれを超えるUBA-ESB複合体とともにインキュベートする。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える目的の標的は、細胞内の標的であり得、それらの細胞は、当該分野で公知の任意の方法を用いて、例えば、冷メタノールを細胞サンプルに加え、短時間インキュベートした後、メタノールを吸引し、すすぎ、UBA-ESBとのインキュベーションの前にウシ血清アルブミンまたはカゼイン溶液でブロッキングすることによって、固定および透過処理され得る。
【0120】
B.細胞起源バーコード(COB)の構築
単一細胞をバーコード化し、会合した細胞起源バーコードを構築するための方法は、参照により本明細書中に援用される公開された特許出願PCT/US2012/023411およびPCT/US2013/054190にすでに記載されている。COBの構築または合成は、本明細書中に簡潔に記載される方法を含む当該分野で公知の任意の好適な方法によって行うことができる。いくつかの実施形態において、COBは、オリゴヌクレオチドを含むアッセイ可能ポリマーサブユニット(APS)の段階的な付加によって構築され得る。いくつかの実施形態において、COBは、共通リンカー(CL)を介してUBA-ESB複合体に付着され、その共通リンカーは、それ自体がオリゴヌクレオチドであり得、APS自体の一部または別個の分子構成要素であり得る。いくつかの実施形態において、ESB、APSおよびCLはすべて、オリゴヌクレオチド配列を含み得る。したがって、ESB、APSおよびCL上の相補的または実質的に相補的なアニーリング領域間のハイブリダイゼーションによる構築の後、構築されたオリゴヌクレオチドは、ライゲートされることにより、ESB-APS単位、隣接APS単位または隣接APS-CL単位の間に共有結合を形成し得る。アニーリング領域は、オリゴヌクレオチドESB、APSまたはCLの片端または両端に提供され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、APSは、1またはそれを超えるラウンドのスプリットプール合成を行うことによって、結合したUBA-ESBに付加され、ここで、各ラウンドは、細胞サンプルを複数のアリコートに分割し、各アリコートを異なるAPS(異なるSCを含む)とインキュベートすることにより、APSと伸長中のUBA-ESB-APS鎖との間の相補的な配列をアニーリングさせ、ライゲーション(オリゴヌクレオチドESBおよびAPSの場合)を行い、すすぎ、アリコートをプールすることを含む。APSが、組み込まれたCL領域を含まない場合、そのサイクルは、CLを伸長中のUBA-ESB-APS鎖にアニールさせるインキュベーション工程も含み得る。いくつかの実施形態において、段階的な合成の各工程に特異的なアニーリング領域が、その反応のオリゴヌクレオチド構成要素に組み込まれ得る。この場合、工程特異的アニーリング領域を使用することにより、その前の付加工程が失敗した任意の細胞に対するCOBのさらなる構築が停止する可能性がある。
【0122】
段階的なスプリットプール構築および合成を行うことによって達成され得るCOBライブラリーの多様性(すなわち、理論的に可能なユニークCOBの数)は、各ラウンドにおいて使用するために利用可能なユニークAPSの数およびCOBを構築するために使用される総ラウンド数に依存する。例えば、2ラウンドの構築/合成(すなわち、2つのAPS位置を有するCOBの場合)および10個のユニークAPSを用いて作製されたCOBの場合、考えられるユニークCOB配列の総数は、210=1,024である。あるいは、4ラウンドの構築/合成(すなわち、4つのAPS位置を有するCOBの場合)および10個のユニークAPSを用いて作製されたCOBの場合、考えられるユニークCOB配列の総数は、410=1,048,576である。一般に、利用可能な(vailable)ユニークバーコードの総数が、標識されるべき個々の細胞の数よりも有意に多くなるように、COBライブラリーをデザインすることが望ましく、それによって任意の2つの細胞が同じ細胞起源バーコードで標識される確率が極端に低くなることが保証される。
【0123】
いくつかの実施形態において、APSは、互いにつなぎ合わされ、かつ/またはアニーリングプライマー(すなわち、鋳型分子または「スプリント」)を用いてCLとつなぎ合わされる。アニーリングプライマーは、段階的な合成の、前のラウンドの間に付加されたCLまたはAPSに対する第1の相補的領域を含み得る。アニーリングプライマーは、現在のラウンドの間に付加されているAPSに対する第2の相補的な領域も含み得る。したがって、アニーリングプライマーは、連続的なラウンドの2つのオリゴヌクレオチドサブユニットにハイブリダイズし得、それによって、それらを互いにつなぎ合わせ得る。いくつかの実施形態において、各ラウンドのアニーリングプライマーの第1の相補的領域は、他のラウンドのアニーリングプライマーの第1の相補的領域とは異なる。いくつかの実施形態において、各ラウンドのアニーリングプライマーの第2の相補的領域は、他のラウンドのアニーリングプライマーの第2の相補的領域とは異なる。いくつかの実施形態において、異なるラウンドのアニーリングプライマーの第1または第2の相補的領域は、ラウンドの間で共有される。いくつかの実施形態において、鋳型または「スプリント」(すなわち、伸長したCL分子)が、APSの構築のために使用され、ここで、そのスプリントは、完成したCOBを作製するために個々のAPSの段階的なハイブリダイゼーションおよびライゲーションを可能にするようにデザインされたアニーリング領域の複数のセットを含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、CLまたは「スプリント」オリゴヌクレオチドは、ループアニーリング領域の1つまたはそれを超える対を含む。したがって、APSは、ループの形状を形成するため、すなわち、CLの各末端においてループアニーリング領域にハイブリダイズすることによって、CLまたはスプリントにハイブリダイズするようにデザインされ得る。いくつかの実施形態において、ループアニーリング領域は、付加およびハイブリダイゼーションの連続的なラウンドによって、スプリントに沿ってAPS位置が追加されるように、スプリットプール合成のラウンドに特異的であるようにデザインされ得る。次いで、それらのAPSは、当該分野で公知の任意の方法を用いて、例えば、ライゲーションによって、一緒に連結され得る。いくつかの実施形態において、APSは、それらが、他の合成ラウンドに特異的なループアニーリング領域ではスプリントに効率的にハイブリダイズしないことを保証するようにデザインされ得る。その結果として、特定のラウンドからのAPSが何らかの理由で欠ける場合、その後のラウンドで付加されるAPSは、適切にライゲートされる可能性は低いので、下流の解析エラーの可能性が低下する。あるいは、COBは、時折、APSなしで合成されることがあり、その位置は、ループアニーリング領域の対に隣接する。次いで、得られたCOBは、従って解析され得、処分され得るか、またはその代わりに、検索された情報が処理され得る。
【0125】
図15は、コード領域SC1~SC4を含むユニーク細胞起源バーコードにAPSを構築するために使用されたスプリントオリゴヌクレオチド分子の一例を図示している。下の図は、抗体または抗体フラグメントをバーコード化するためのオリゴヌクレオチドの一例を示しているが、これは、オリゴヌクレオチドプローブを含むUBAとの使用に等しく適用可能である。
【0126】
図16~19は、コード領域SC1~SC3を含み、さらに増幅プライマーおよび/または配列決定プライマーを含む、ユニーク細胞起源バーコードになるようにAPSを構築するために使用されたスプリントオリゴヌクレオチド分子の例を図示している。いくつかの実施形態において、配列決定プライマーは、Illumina配列決定プライマーを含み得る。オリゴヌクレオチドを抗体に付着するための、そして9ヌクレオチドのエピトープ特異的バーコード領域をさらに含む、オリゴヌクレオチドリンカー配列の例も図示されている(
図17)。いくつかの実施形態において、細胞起源バーコード配列の全部または一部が、フルオロフォアを含むオリゴヌクレオチド検出プローブへのハイブリダイゼーションによって検出され得る(
図17、上図)。
【0127】
図21は、第1のスプリント分子(スプリントSP-V4)を用いて構築された伸長中のCOBの5’末端に第2のスプリント分子(スプリントSP-V5)をハイブリダイズさせることによってCOBの長さ(すなわち、サブコード領域の数)を延長する例を図示している。この例では、SC領域と配列決定プライマー(SeqP1)との両方を含む改変されたAPSを用いて、第3のコード領域(SC3’)が作製されており、それによって、第2のスプリント(スプリントSP-V5)がハイブリダイズする5’配列が提供された。より多数のサブコード領域を使用することにより、個々の細胞由来のmRNAまたはタンパク質標的分子のタグ化において使用するためのさらにより多数のユニーク細胞起源バーコードを作製することが可能になる。いくつかの実施形態において、より長い単一のスプリントオリゴヌクレオチドを用いて、より多数のAPSを構築することにより、COBが作製される。
【0128】
図27は、光切断可能な結合を含むヘアピンオリゴヌクレオチド構造を含むAPSを用いて、結合した抗体-EST(エピトープ特異的タグ、すなわちエピトープ特異的バーコード)複合体の各存在をユニーク細胞起源バーコードでバーコード化するためのプロセスの非限定的な例を図示している。第1のコード領域SC1を含むヘアピン構造を含むAPSをアニールさせ、結合した抗体に付着されたESTにライゲートさせる。アニーリングおよびライゲーションの後、サンプルをUV(300nm)光に曝露して、光切断可能な結合を切断し、それによって、次のAPSヘアピンとのハイブリダイゼーションに利用可能な遊離5’-リン酸末端配列を作製する。アニーリング、ライゲーションおよびUV光への曝露のラウンドを反復することによって、上に記載されたスプリットプール合成法を用いてユニークCOBのセットを作製する。
図27に図示されている非限定的な例では、最後のAPSヘアピン構造は、Illuminaプライマー配列を含んでいる。
図27に図示されている方法のヘアピン構造を作製するために使用されたオリゴヌクレオチド配列のセットの非限定的な例は、
図28に示されている。
【0129】
C.バーコードを検出するための方法
エピトープ特異的バーコードおよび細胞起源バーコードを増幅および検出するための方法は、参照により本明細書中に援用される公開された特許出願PCT/US2012/023411およびPCT/US2013/054190に十分に記載されている。いくつかの実施形態において、構築されたUBA-ESB-COBまたはESB-COB産物を増幅し、必要に応じて、その結果を参照サンプル由来の類似の標的核酸の増幅と比較する。核酸増幅は、当該分野で公知の任意の手段によって行われ得る。いくつかの場合では、ライゲートされた産物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅する。使用され得るPCRの手法の例としては、定量的PCR、定量的蛍光PCR(QF-PCR)、多重蛍光PCR(MF-PCR)、リアルタイムPCR(RT-PCR)、単一細胞PCR、制限酵素断片長多型PCR(PCR-RFLP)、リアルタイム制限酵素断片長多型PCR(RT-PCR-RFLP)、ホットスタートPCR、ネステッドPCR、インサイチュポロニー(in situ polonony)PCR、インサイチュローリングサークル増幅(RCA)、ブリッジPCR、ピコタイターPCRおよびエマルジョンPCRが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。他の好適な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅、自家持続配列複製法、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅、コンセンサス配列プライム(consensus sequence primed)ポリメラーゼ連鎖反応(CP-PCR)、任意プライム(arbitrarily primed)ポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、縮重オリゴヌクレオチドプライムPCR(DOP-PCR)および核酸ベース配列増幅(nucleic acid based sequence amplification)(NABSA)が挙げられる。本明細書中で使用され得る他の増幅方法としては、米国特許第5,242,794号;同第5,494,810号;同第4,988,617号;および同第6,582,938号に記載されている方法が挙げられる。いくつかの実施形態において、増幅は、細胞内で行われる。
【0130】
開示される方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態では、個々の細胞における標的分子の検出および定量のために使用される配列決定反応を行うための処理量を最適化するためおよび費用を減少させるために、標的特異的プライマーまたはセミランダムプライマーを使用して、目的の標的に対するUBA-ESB-COB複合体が選択的に増幅される。
【0131】
いくつかの実施形態において、
図29に概略的に図示されるような標的特異的プライマーを用いて、目的の標的または標的セットと会合した細胞起源バーコードが選択的に増幅され、それによって、例えば、ハウスキーピング遺伝子転写物および他の共通の転写物と会合したバーコード化された材料の配列決定において費やされる配列決定容量の量が減少される。
【0132】
いくつかの実施形態において、
図30に概略的に図示されているような一般的プライマーを用いて、バーコード化されたすべての材料を予め増幅した後、1つまたはそれを超える標的特異的プライマーを用いた選択的増幅を行うことにより、目的の標的または標的セットと会合した細胞起源バーコードが増幅され、それによって、例えば、ハウスキーピング遺伝子転写物および他の共通の転写物と会合したバーコード化された材料の配列決定において費やされる配列決定容量の量が減少される。
【0133】
いくつかの実施形態において、
図31に概略的に図示されるようなセミランダムプライマーを用いて、目的の標的または標的セットと会合した細胞起源バーコードが選択的に増幅され、それによって、例えば、ハウスキーピング遺伝子転写物および他の共通の転写物と会合したバーコード化された材料の配列決定において費やされる配列決定容量の量が減少される。セミランダム配列は、標的RNA配列のcDNAコピーと元のUBAプローブ配列との間の接合点からおよそ64ヌクレオチドの位置におけるcDNA配列に部分的に相補的である(その配列の非ランダム部分を介して)ようにデザインされ、それによって、増幅産物が、市販のハイスループット配列決定システムのリード長とほぼ同じ長さであることが保証されることにより、配列決定容量および処理量の最適な使用が保証される。
いくつかの実施形態において、セミランダム配列は、標的RNA配列のcDNAコピーと元のUBAプローブ配列との間の接合点から128~32ヌクレオチドの位置におけるcDNA配列に部分的に相補的であるようにデザインされる。
【0134】
上記実施形態のいずれかにおいて、UBA-ESB-COB、ESB-COBまたはCOBライブラリーの検出または定量的解析は、配列決定によって達成され得る。APSサブユニットまたはCOB全体は、当該分野で公知の任意の好適な方法またはシステムによって、例えば、Illumina HiSeq 2000配列決定システムを使用することによって、すべてのオリゴヌクレオチドタグの完全な配列決定によって検出され得る。
配列決定は、当該分野で周知の伝統的なSanger配列決定法によって達成され得る。
配列決定は、ハイスループット配列決定システムおよび/または次世代配列決定システムを用いても達成され得、それらの配列決定システムのいくつかは、配列決定されるヌクレオチドが伸長中の鎖に組み込まれた直後または組み込まれるときにそのヌクレオチドの検出を可能にし、すなわち、リアルタイム(red time)または実質的にリアルタイムに配列の検出を可能にする。いくつかの場合において、ハイスループット配列決定は、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも30,000、少なくとも40,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000または少なくとも500,000配列リード/時を生成し;各リードは、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも200または少なくとも250塩基/リードである。
【0135】
D.多重化された試験
ある特定の実施形態において、検出方法は、多重アッセイにおいて行われ、ここで、複数の標的分子が、同じアッセイ(すなわち、単一の反応混合物)において検出される。いくつかの実施形態において、そのアッセイは、複数の標的分子が同時に検出される、ハイブリダイゼーションアッセイまたは親和性結合アッセイである。いくつかの実施形態において、そのアッセイは、複数の標的分子が単一細胞において同時に検出される、ハイブリダイゼーションアッセイまたは親和性結合アッセイである。ある特定の実施形態において、同じアッセイにおいて検出される複数の標的分子は、少なくとも2つの異なる標的分子、少なくとも5個の異なる標的分子、少なくとも10個の異なる標的分子、少なくとも20個の異なる標的分子、少なくとも50個の異なる標的分子、少なくとも75個の異なる標的分子、少なくとも100個の異なる標的分子、少なくとも200個の異なる標的分子、少なくとも500個の異なる標的分子、少なくとも750個の異なる標的分子または少なくとも1,000個の異なる標的分子である。他の実施形態において、同じアッセイにおいて検出される複数の標的分子は、最大5個の異なる標的分子、最大10個の異なる標的分子、最大20個の異なる標的分子、最大50個の異なる標的分子、最大100個の異なる標的分子、最大150個の異なる標的分子、最大200個の異なる標的分子、最大500個の異なる標的分子、最大750個の異なる標的分子、最大1,000個の異なる標的分子、最大2,000個の標的分子または最大5,000個の標的分子である。なおも他の実施形態では、検出される複数の標的分子は、前述の数の間の任意の範囲の異なる標的分子であり、例えば、20~50個の異なる標的分子、50~200個の異なる標的分子、100~1000個の異なる標的分子、500~5000個の異なる標的分子などであるがこれらに限定されない。
【0136】
E.定量的検出
本開示のUBA-ESB-COB複合体およびそれに基づく分析技術によって提供される定性的な分析能力に加えて、いくつかの実施形態において、UBA-ESB-COBは、定量的解析を行うのにユニークに好適であり得る。UBA-ESB-COBとそれらに会合する標的分子との間に1対1の結合化学量論を提供することによって、例えば、UBA-ESB複合体が、各場合の標的分子をユニークにタグ化する短いランダムな配列(
図10)を含む実施形態では、サンプル中に存在する標的分子の全部または代表的な一部が、識別され、カウントされ得る。様々な分子種のこの個々のカウントは、生物学的サンプル中の標的分子の絶対濃度または相対濃度を測定するための正確かつ直接的な方法を提供する。さらに、単一分子をアドレス指定およびカウントできると、アッセイの小型化の利点(高感度、最小のサンプル必要量、少量の液相の動態によってもたらされる速い反応速度および最終的には非常に低い試薬コストを含む)を高めることが可能になる。
【0137】
F.mRNA標的分子の検出
特定のmRNA標的分子を検出するため、および各存在をユニーク細胞起源バーコードで標識するために使用されるプロセスの非限定的な例が、CD4 mRNAの検出について
図9に図示されている。CD4逆方向プライマーを、固定および透過処理された細胞サンプルに加え、アニールさせた後、逆転写(RT)反応を行うことにより、CD4 mRNA分子の一部のcDNAコピーを作製する。mRNA分子を除去した後(例えば、RNase Hで処理することによって)、スプリントアダプターをそのcDNAにアニールさせる。そのスプリントアダプターは、スプリント分子をアニールさせるために使用され、次いでそれを用いて、SC領域を含む2つまたはそれを超えるAPS(コードSC1~SC3を含む3つのAPSが
図9に図示されている)をコンビナトリアル様式で構築することにより、ユニークCOBを作製する。いくつかの実施形態において、標的分子とハイブリダイズさせるために使用される逆方向プライマーは、標的核酸分子に特異的な配列認識領域を含む(
図18)。いくつかの実施形態において、配列認識領域は、10~20ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの実施形態において、配列認識領域は、ヘキサマーである(
図19)。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブは、例えば、ポリ-T配列認識領域を用いることによって、mRNA分子全般と非特異的にハイブリダイズするようにデザインされる(
図17)。いくつかの実施形態において、スプリント分子は、1つまたはそれを超える増幅プライマーおよび/または配列決定プライマーを付加するためにも使用される。いくつかの実施形態において、アニールした分子複合体は、ライゲーションに供されることにより、増幅および配列決定され得る共有結合した分子集合体が形成される。
【0138】
図18は、一般的ポリ-T(またはポリ-dT)プライマー配列を用いてmRNA分子をバーコード化するための方法の非限定的な例を図示している。ポリ-Tプライマー配列を細胞サンプルに加えた後、逆転写反応を行い、その後、「スプリント」オリゴヌクレオチドを、アニールさせ、そしてコード領域SC1~SC3を含むAPSを構築して、Illuminaプライマーを用いて増幅および配列決定され得るユニーク細胞起源バーコードにするために用いた。
【0139】
図19は、標的mRNA配列特異的プライマー、例えば、
GCTCCCTGTCTGACG XXXXXXXXXXX
を用いてmRNA分子をバーコード化するための方法の非限定的な例を図示している。その配列特異的プライマーを細胞サンプルに加えた後、逆転写反応を行い、その後、「スプリント」オリゴヌクレオチドを、アニールさせ、コード領域SC1~SC3を含むAPSを構築して、Illuminaプライマーを用いて増幅および配列決定され得るユニーク細胞起源バーコードにするために用いた。いくつかの実施形態において、Illuminaプライマーを用いる増幅および配列決定の前に、内部プライマーを用いて、1回またはそれを超えるラウンドのネステッドPCR増幅が行われ得る。いくつかの実施形態において、標的mRNA分子とハイブリダイズするために、ヘキサマープライマー、例えば、
GCTCCCTGTCTGACG NNNNNN
が用いられる。
【0140】
いくつかの実施形態において、標的mRNA分子は、近接プローブセット(その組成は上に記載されている)を用いて検出される。近接オリゴヌクレオチドプローブの対(各々は、同じ標的mRNAの、重複しないが近接して配置された配列領域に相補的な標的認識配列を含む)の使用は、2つの配列認識事象が同時かつ互いに密に近接して生じるという要件を作り出すことによって、非特異的なプローブハイブリダイゼーションを減少させ、標的検出の特異性を高める。
【0141】
図7は、標的mRNA分子(またはRNA分子全般)を検出およびバーコード化するための近接プローブセット(すなわちUBA)の一実施形態を図示しており、そのプローブセットは、オリゴヌクレオチド近接プローブ15および19の対を含み、その各近接プローブは、標的mRNA配列に相補的な配列領域を含み、その後、架橋オリゴヌクレオチド(20)を用いて連結され得る。それらの近接プローブは、本開示の組成物および方法を用いるユニーク細胞起源バーコードの作製において使用するための、1つもしくはそれを超えるプライマー配列、エピトープ特異的バーコード領域および/または共通リンカー領域をさらに含み得る。その近接プローブセットを、固定および透過処理された細胞サンプルに加え、それらのプローブを標的mRNA分子にアニールさせ、次いで、ライゲートすることにより、エピトープ特異的バーコード(すなわち標的特異的バーコード)および複合体全体の増幅を可能にするプライマーを含む分子複合体が形成される。未結合のプローブ分子は、洗い流され得、そしてサンプルの個々の細胞は、上に記載されたスプリットプール合成方法を用いてバーコード化され得る。細胞のバーコード化手順の後、UBA-ESB-COPを含む分子複合体は、PCR増幅または他の任意の好適な核酸増幅手法を用いて増幅され、配列決定されることにより、どのmRNA分子がサンプル中に存在したかを個々の細胞ベースで識別され、定量される。
【0142】
図8は、特定の標的mRNA分子をユニークCOBでバーコード化するための近接プローブセットの使用の別の実施形態を図示している。この実施形態では、COBが、
図7の例に図示されたような5’末端ではなく、プローブ複合体の3’末端に付着されるように、プライマーおよび共通リンカーのポジショニングが定められている。
【0143】
図10は、2つの近接プローブ配列に加えて2つのスプリント分子および架橋オリゴヌクレオチドを使用して標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の実施形態を図示している。各スプリント分子は、一方の近接プローブに相補的な配列領域および架橋オリゴヌクレオチドの一部に相補的な配列領域を含む。この例では、エピトープ特異的バーコードが、近接プローブによって認識されるmRNA配列を識別するための7ヌクレオチドコードを含むRNA特異性コード(RSC)領域(2つの近接プローブの各々に対して1つ)によって置き換えられている。近接プローブは、増幅および配列決定において使用するためのプライマー配列をさらに含み得る。各近接プローブは、配列決定および増幅のバイアス補正において使用するための短いランダムな配列領域も含み得る。
図10の近接プローブセットの作製において使用されるオリゴヌクレオチド配列の例が、
図11に図示されている。
【0144】
図12は、2つの近接プローブを連結するために、組み合わされた単一のスプリント-架橋オリゴヌクレオチドを使用して、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の実施形態を図示している。
図12の近接プローブセットの作製において使用されるオリゴヌクレオチド配列の非限定的な例が、
図13に図示されている。
【0145】
図14は、2つの近接プローブを連結するために、組み合わされた単一のスプリント-架橋オリゴヌクレオチドを使用して、標的mRNA分子を検出およびバーコード化するための近接プローブセットの別の実施形態を図示している。
【0146】
図20は、コード領域SC1~SC3を含むAPSを構築して、特定のmRNA標的分子(またはオリゴヌクレオチドでタグ化された抗体)に対するユニーク細胞起源バーコードにするために使用される、近接プローブセットおよびスプリントオリゴヌクレオチド分子の別の例を図示している。この例では、一方の近接プローブ分子(プローブ2)が、プローブ1の短い配列領域へのハイブリダイゼーションが可能である内部の「架橋」オリゴヌクレオチド配列をさらに含むように延長され、それによって、その後の増幅および配列決定工程に含められる標的mRNA配列領域の長さを低減する。
【0147】
図22および23は、標的mRNA分子に対するユニーク細胞起源バーコードを作製するためのAPSの構築に使用される近接プローブセット(架橋配列をさらに含み得る標的特異的プローブの対および1つまたはそれを超えるスプリントオリゴヌクレオチド分子を含む)の例を図示しており、ここで、相補的配列の認識事象の数とその近接要件とが組み合わさることにより、標的検出特異性が高まる。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される近接プローブセットは、さらなる細胞起源バーコード化工程の非存在下で特定のmRNA配列の検出に使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、細胞サンプルを溶解することにより、mRNAが放出され得、その後、そのサンプルを複数のビーズと接触させる(ここで、ビーズは、例えば、ポリ-T配列認識領域を使用することによって、放出されたmRNA分子にハイブリダイズすることができる複数の繋ぎ止められたオリゴヌクレオチド配列を含む)。細胞サンプルから放出されたmRNAのハイブリダイゼーションの後、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブを、複数のビーズ上のハイブリダイズしたmRNA分子とアニールさせる(ここで、その第1のオリゴヌクレオチド近接プローブは、エピトープ特異的バーコード配列、および標的核酸配列の第1のセグメントにハイブリダイズすることができる第1の標的認識配列を含む)。同時にまたはその後、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブを、それらのビーズ上のハイブリダイズしたmRNA分子とアニールさせる(ここで、その第2のオリゴヌクレオチド近接プローブは、標的核酸配列の第2のセグメントにハイブリダイズすることができる第2の標的認識配列を含み、標的核酸配列の第1のセグメントと第2のセグメントとは、異なるものであり、特定の数のヌクレオチドNによって互いに分断されている)。次いで、同時にまたはその後、架橋オリゴヌクレオチドを、複数のビーズ上のハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド近接プローブとアニールさせる(ここで、その架橋オリゴヌクレオチドは、2つのプローブ認識配列を含み、第1のプローブ認識配列は、第1のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができ、第2のプローブ認識配列は、第2のオリゴヌクレオチド近接プローブのセグメントにハイブリダイズすることができ、それによって、エピトープ特異的バーコードを含む標的特異的プローブ複合体が形成される)。いくつかの実施形態において、アニールした構成要素(すなわち、オリゴヌクレオチド近接プローブと架橋オリゴヌクレオチドとの対)がライゲートされることにより、共有結合により連結された標的特異的プローブ複合体が形成される。多くの実施形態において、複数の繋ぎ止められたオリゴヌクレオチド配列は、1つまたはそれを超えるプライマー配列、例えば、増幅プライマーまたは配列決定プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態において、標的特異的プローブ複合体は、PCR反応および1つまたはそれを超える標的特異的プライマーを用いて増幅される。いくつかの実施形態において、PCR増幅産物は、サンプル中の1つまたはそれを超えるmRNA配列の存在を検出または定量するために、配列決定される。
【0149】
F.全細胞と死細胞、細胞片または細胞塊との区別
細胞の複合混合物を含むサンプル中の個々の細胞において複数の標的分子を識別するためのアッセイを行うとき、死細胞、細胞片または細胞塊に対するデータが、その後の解析から排除されることによって、データの質が向上し得るように、全細胞と死細胞、細胞片または細胞塊とを区別することが所望され得る。各細胞が個別にバーコード化されている数百万個の細胞を含むサンプルが関わる研究において、細胞片、細胞対(cell doublets)またはより大きな細胞塊の存在は、有するはずのないマーカーを有する細胞の存在を示唆する誤ったデータの形の「ノイズ」の一因になり得る。したがって、本開示の方法、組成物およびキットは、目的の単一細胞と、サンプル中に存在する死細胞、細胞片または細胞塊とを区別するための手段を提供する。
【0150】
いくつかの実施形態において、目的の単一細胞と、サンプル中に存在する死細胞、細胞片または細胞塊との区別は、各「細胞」に対するDNAとタンパク質との比を解析することによって達成される。いくつかの実施形態において、目的の単一細胞と、死細胞、細胞片または細胞塊との区別は、「細胞」1つあたりの検出されるDNAの量を解析することによって達成される。なおも他の実施形態において、区別は、「細胞」1つあたりの検出されるタンパク質の量を解析することによって達成される。
【0151】
いくつかの実施形態において、「細胞」1つあたりのDNAの量は、ゲノムDNAまたは染色体DNA構造に対して向けられた1つまたはそれを超えるUBA、例えば、結合物質(DNAもしくはヒストンに結合する抗体またはDNA挿入分子(例えば、ベルベリン、エチジウムブロマイド、プロフラビン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシンまたはサリドマイド)を含むがこれらに限定されない)を、特定の標的分子セットを識別するために選択されたUBAのセットに含めるように選択することによって測定され得る。アッセイが完了した後、「細胞」1つあたりのDNAの量は、細胞起源バーコード(COB)によって識別される各細胞に対して検出されたDNA特異的UBA-ESB複合体の数から決定される。いくつかの実施形態において、DNA特異的UBAとゲノムDNAまたは染色体DNA構造との間の結合化学量論が1対1ではない場合、結合化学量論を訂正するために類似のインキュベーション条件下において、回収されたDNA特異的UBA-ESB複合体の数と、DNAに向けられた同じセットのUBAおよび既知濃度のゲノムDNAまたは染色体DNAを用いて作成された検量線とを比較することは、有用であり得る。いくつかの実施形態において、同じアプローチを用いることにより、細胞サンプルの固定および透過処理の前に、ゲノムDNAまたは染色体DNA構造に対して向けられた1つまたはそれを超えるUBAとのインキュベーションを行うことによって、全細胞と「死」細胞が区別される。
【0152】
いくつかの実施形態において、「細胞」1つあたりのタンパク質の量は、タンパク質に対して非特異的に向けられた1つまたはそれを超えるUBA(例えば、アミン反応性部分(例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートまたは塩化スルホニル)を含むがこれらに限定されない)、または共通のタンパク質に対して特異的に向けられた1つもしくはそれを超えるUBA、例えば、アクチンもしくは他のハウスキーピングタンパク質に対して向けられた抗体を、特定の標的分子のセットを識別するために選択されたUBAのセットに含めるように選択することによって測定され得る。アッセイが完了した後、「細胞」1つあたりのタンパク質の量は、細胞起源バーコード(COB)によって識別されるような、各細胞について検出された非特異的なタンパク質UBA-ESB複合体の数から決定される。いくつかの実施形態において、非特異的なタンパク質UBAとタンパク質との間の結合化学量論が1対1でない場合、結合化学量論を訂正するために類似のインキュベーション条件下において、回収された非特異的なタンパク質UBA-ESB複合体(またはアクチンもしくは他のハウスキーピングタンパク質に対する抗体が使用される場合、特異的なタンパク質UBA-ESB複合体)の数を、タンパク質に向けられた同じセットのUBAおよび既知濃度のタンパク質を用いて作成された検量線とを比較することは、有用であり得る。あるいは、いくつかの実施形態において、所与のタンパク質またはタンパク質セットの表面上の接近可能なアミン基の平均数が、タンパク質構造データに基づいて算出され、続いて、それを使用し、各細胞について回収された非特異的なタンパク質UBA-ESB複合体の数に基づいて細胞1つあたりのタンパク質の量が決定される。
【0153】
G.稀な細胞を識別するための方法
細胞の複合混合物を含むサンプル中の個々の細胞において複数の標的分子を識別するためのアッセイを行うとき、その複合混合物内の特定の細胞部分集団を識別し、その部分集団についてのその後の解析に焦点を当て、それによって、データの特異性を向上させることが望ましいことが多い。各細胞が個別にバーコード化された数百万個の細胞を含むサンプルが関わる研究において、稀な細胞の存在は、全細胞集団のわずか0.01%しか構成しないことがある。したがって、本開示の方法、組成物およびキットは、目的の細胞のサブセットとサンプル中に存在する細胞の大部分とを区別するための手段を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態において、特定の細胞内マーカーまたは細胞表面マーカーに対して向けられた1つまたはそれを超えるUBA(例えば、ウイルスゲノム配列、例えば、HIVウイルス配列にハイブリダイズするようにデザインされたオリゴヌクレオチドプローブ配列またはCD1、CD3、CD8もしくはCD4に対して向けられた抗体を含むがこれらに限定されない)を、特定の標的分子のセットを識別するために選択されたUBAのセットに含めることによって、特定の細胞のサブセットが識別され得る。細胞部分集団を識別するために使用されたUBA-ESB複合体に付着したようなCOBを選択的に増幅し、かつ配列決定することによって、その後の解析が、選択された細胞部分集団に限定され、それによって、部分集団を定義するために使用された選択基準を満たすすべての細胞(それらのそれぞれのCOBによって識別される)のリストが生成される。
【0155】
選択された細胞部分集団と会合したさらなるUBA-ESBの完全なリストは、その部分集団に対するCOBのリストを用いて確定され得る。いくつかの実施形態において、COBのリストは、ネステッドセットの多重化されたPCRラウンドを行うためのプライマーセット、例えば、COBを組み立てるために4つのAPS(各々がSCを含む)を使用する場合、4セットのプライマー(
図24を参照のこと)をデザインするために使用される。UBA(またはUBAが付着されているESB-COB結合体の末端)から最も遠いAPSの位置から出発し、第1のプライマーセットが、第1の(最外側の)セットのAPSのSCに隣接する、すなわち、APS
1位置のSC
1配列のセットに隣接するアニーリング領域にハイブリダイズするようにデザインされ、第2のプライマーセットは、APS
2-APS
1セットの配列に相補的であり、第3のプライマーセットは、APS
3-APS
2-APS
1セットの配列に相補的であり、第4のプライマーセットは、APS
4-APS
3-APS
2-APS
1セットの配列に相補的である。各工程において、数ラウンドのPCRを用い、ESBの反対側(far side)に隣接するプライマー配列、例えば、Illuminaプライマー配列に相補的な第2のプライマーを使用して、COBのコレクションのサブセットが選択的に増幅される。したがって、各プライマーセットを用いて数ラウンドのPCR増幅を連続して行うと、目的のエピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体、すなわち、選択された細胞部分集団と会合したエピトープ特異的バーコードだけが選択的に増幅される。いくつかの実施形態において、アニーリング工程は、温度を98℃からゆっくり低下させることにより、「最善の」プライマーが正しい相補鎖を見つけることを可能にすることを含む。いくつかの実施形態において、使用されるポリメラーゼおよびリガーゼは、ホモ二重鎖形成が最大になるように選択される。いくつかの実施形態において、アニーリング工程に続いて、適切なアッセイ条件下でヘテロ二重鎖DNAを切断するヌクレアーゼ、例えば、EcoR1で処理した後、次の増幅サイクルを行うことによって、鋳型によって引き起こされる偶然のアニーリング事象が除去される。得られたPCR産物を当該分野で公知の任意の配列決定方法または配列決定システムによって配列決定するか、またはその後に配列特異的定量的PCRを実施することによって、どの標的分子が、選択された細胞部分集団の個々の細胞内に存在するかを特定することが可能になる。
【0156】
H.選択された細胞部分集団をさらなる解析から除外するための方法
細胞の複合混合物を含むサンプル中の個々の細胞において複数の標的分子を識別するためのアッセイを行うとき、その複合混合物内の特定の細胞部分集団を除外し、その後の解析を残りの細胞に集中させることによって、データの特異性を向上させることが望ましいことが多い。例えば、いくつかの用途では、細胞集団内の成熟B細胞を識別し(CD19、CD38、BCMAなどのような細胞表面マーカーに対して向けられた抗体を用いて)、それらをさらなる考慮すべき事柄から排除して、その後の解析が、存在する任意の幹細胞に集中し得ることが望ましいことがある。したがって、本開示の方法、組成物およびキットは、特定の細胞集団をさらなる解析から排除するための手段も提供する。いくつかの実施形態において、これは、複数のUBA(例えば、抗体セット)を同じESBで標識することによって達成され、その結果、アッセイの結合工程の後、特定のUBAセットに対するESB-COB結合体の選択的増幅および配列決定によって、さらなる解析から排除されるべき細胞のリストが提供される。選択的増幅および配列決定は、上に記載されたように行われ得る。
【0157】
I.選択された細胞部分集団内のさらなる標的分子を検出するためのリサンプリング
細胞の複合混合物を含むサンプル中の個々の細胞において複数の標的分子を識別するためのアッセイを行うとき、さらなる標的分子がまた、選択された部分集団内に存在するか否かを判定するために、バーコード化された細胞懸濁液をリサンプリングすることが望ましいことが多い。したがって、本開示の方法、組成物およびキットはまた、最初の細胞バーコード化手順を行った時点より後の時点において、1つまたはそれを超える目的の標的分子を検出するためにリサンプリングするための手段も提供する。いくつかの実施形態において、タンパク質に対して非特異的に向けられた1つまたはそれを超えるUBA(例えば、アミン反応性部分(例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネートまたは塩化スルホニル)を含むがこれらに限定されない)を、最初の細胞バーコード化を行うために使用される元のUBAセットに含めることによって、バーコード化された細胞懸濁液の個々の細胞における1つまたはそれを超える目的の標的分子の検出が可能になる。選択された部分集団の細胞と会合した細胞起源バーコードのリストを得るために上に記載されたように行われた選択的増幅および配列決定の後、バーコード化された細胞懸濁液のアリコートを、溶解し、例えば、さらなる目的の標的分子のうちの1つに対して向けられた固定化された抗体、および所与のビーズ上に固定化された抗体を識別するためのコード配列をプライマー配列の下流に含む繋ぎ止められた二次プライマーを含むビーズ(
図25)とともにインキュベートする。複数のビーズを使用してよいが、ここで、その複数のビーズは、例えば、複数の標的分子に対して向けられた固定化された抗体を、それらの対応する二次プライマーとともに含み、任意の単一のビーズは、単一タイプの固定化された抗体を含む。標的分子(例えば、標的タンパク質)の免疫沈殿の後、二次プライマーの伸長反応を、適切なポリメラーゼ、例えば、Taq DNAポリメラーゼ、Klenow DNAポリメラーゼIなどを用いて行った後、抗体コード配列および細胞起源バーコード配列を含む増幅産物を生成する増幅を行う。次いで、細胞起源バーコードと、選択された目的の部分集団について識別されたCOBのリストとを比較することによって、選択された部分集団におけるさらなる目的の標的分子の存在を個々の細胞ベースで識別および定量することが可能になる。
【0158】
いくつかの実施形態において、類似のアプローチを用いることにより、細胞バーコード化工程において、mRNA分子全般に対して向けられた非特異的なUBA、例えば、ポリ-T(またはポリ-dT)配列を含むUBA、および目的のmRNA分子に特異的な固定化されたオリゴヌクレオチドプローブを、固定化された二次プライマーとともに含むビーズのセットを使用することによって、選択された細胞の部分集団内の目的のmRNA分子が検出される。
【0159】
V.キット
本開示はまた、分子および細胞をバーコード化するためのキットも記載し、ここで、そのキットは、上に記載された1つまたはそれを超える組成物を含む。いくつかの実施形態において、そのキットは、1つもしくはそれを超える標的特異的UBA-ESB複合体、またはユーザーによって供給されるUBAに予め合成されたESBを付着するための試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、ここに開示されているキットのUBAは、会合した抗体の同一性をコードする付着されたESBをさらに含み得る1つまたはそれを超える抗体を含む。いくつかの実施形態において、ここに開示されているキットのUBAは、選択された核酸標的にハイブリダイズするようにデザインされ、会合した標的プローブの同一性をコードする付着したESBをさらに含み得る、1つまたはそれを超えるオリゴヌクレオチドプローブを含む。いくつかの実施形態において、開示されるキットは、APSのセットおよび細胞起源バーコードにそれらを構築するために必要とされ得る任意のさらなる酵素または試薬をさらにまたはスタンドアロンの製品として含み得る。いくつかの実施形態において、そのAPSのセットは、解析の配列決定工程においてエラーを検出し、かつ訂正することができるようにデザインされたサブコード領域のセットを含む。いくつかの実施形態において、開示されるキットは、選択された細胞部分集団に対するエピトープ特異的バーコードの選択的増幅のためのプライマーのセットをさらに、またはスタンドアロンの製品として含み得る。
【0160】
VI.用途
本明細書中に開示される組成物、方法およびキットは、診断、予後診断、治療、患者の層別化、薬物の開発、処置の選択およびスクリーニングの目的のために使用され得る。開示される組成物、方法およびキットは、多くの異なる標的分子が、単一の生物学的サンプルから単一細胞レベルで一度に解析することができるという利点を提供する。このことにより、例えば、いくつかの診断検査を1つのサンプルにおいて行うことが可能になる。
【0161】
用途の例としては、バイオマーカーの発見、創薬のための標的の検証、遺伝子発現プロファイリング、タンパク質発現プロファイリング、プロテオーム解析、メタボロミクス研究、翻訳後修飾の研究(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化および他のアミノ酸修飾をモニタリングするための研究)、薬物動態学的研究(例えば、薬物代謝、ADMEプロファイリングおよび毒性研究)、特定の血清抗体レベルまたは粘膜抗体レベルの解析;非核酸診断指標の評価、病原体の検出、外来抗原の検出などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0162】
VII.コンピュータソフトウェア
エピトープ特異的バーコード-細胞起源バーコード結合体のセットに対して得られた配列決定データを解読およびグループ化するための解析能力を提供する非一時的コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアパッケージも本明細書中に開示される。そのようなソフトウェアパッケージによって提供される能力の例としては、配列アラインメントツールおよび配列比較ツール、階層クラスタリングツール、増幅および/または配列決定のエラーの検出および訂正のツール、データ可視化ツールなどが挙げられる。
【0163】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に示され、記載されてきたが、そのような実施形態は単なる例として提供されていることは当業者には明らかである。当業者には、本発明から逸脱することなく、数多くのバリエーション、変更および置換が生じ得ね。本明細書中に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明を実施する際に用いられ得ることが理解されるべきである。以下の請求項は、本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの請求項およびそれらの等価物の範囲内に入る方法および構造は、それらによって包含されることが、意図されている。
【配列表】