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特許7196147フレキシブルな計時器用コンポーネント及びこのようなコンポーネントを備える計時器用ムーブメント
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  • 特許-フレキシブルな計時器用コンポーネント及びこのようなコンポーネントを備える計時器用ムーブメント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】フレキシブルな計時器用コンポーネント及びこのようなコンポーネントを備える計時器用ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 1/14 20060101AFI20221219BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G04B1/14
G04B17/06 Z
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020197923
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2021099317
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】19218863.9
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・シャルボン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ヘンメリ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・パラット
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・インボーデン
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518965(JP,A)
【文献】特表2007-533973(JP,A)
【文献】特開2018-193607(JP,A)
【文献】特表2015-500474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/14
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメントの発振器機構又はバレルのための、フレキシブルな計時器用コンポーネント(6、7)であって、
当該コンポーネントは、主平面(P)に沿って延在しており、少なくとも一部が複合材料(1)によって作られており、
前記複合材料(1)は、マトリックス(2)と、このマトリックス(2)内にて分布している多数のナノワイヤ(3)とを備え、
前記ナノワイヤ(3)どうしは並置されており、
前記マトリックス(2)は、前記ナノワイヤ(3)の間の間隙(5)を充填して前記ナノワイヤ(3)どうしを連結する充填材(4)を含み、
各ナノワイヤ(3)は、チューブを中実で一体的に形成し、前記ナノワイヤ(3)の内部(16)は、外側シースと同じ材料によって作られ、
前記ナノワイヤ(3)は、当該コンポーネント(6、7)の前記主平面(P)に対して実質的に垂直な軸(A)に対して実質的に平行に配置され
前記ナノワイヤ(3)は、金、パラジウム、ケイ素、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ガリウム、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ヒ化ガリウム、硫化タングステン、銀、銅、ヒ化マンガン、ヒ化インジウム、ニッケル、白金、ゲルマニウム、コバルト-グラフェン、リン-ゲルマニウム、銅-銀、金-銀の合金、リン-インジウム、窒素-ガリウム、窒素-インジウム-ガリウム、窒素-ヒ素-ガリウム、ヒ素-ガリウム、リン-インジウム-ガリウム、硫黄-カドミウム、硫黄-カドミウム-セレン、窒素-アルミニウム-ガリウム、セシウム-鉛、テルル化アンチモン、テルル化ビスマス、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、酸化マンガンの化合物、Li 2 Mo 6 Se 6 又はMo 6 9-x x タイプの無機化合物、アモルファス又は部分的にアモルファスである金属合金からなる群から選択される材料によって作られる
ことを特徴とするコンポーネント(6、7)。
【請求項2】
前記ナノワイヤ(3)は、2~50nmの範囲内の直径(D)を有する
ことを特徴とする請求項に記載のコンポーネント(6、7)。
【請求項3】
前記ナノワイヤ(3)は、100~500μmの範囲内の長さ(L)を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンポーネント(6、7)。
【請求項4】
前記充填材(4)は、タングステン、パリレン、六方晶窒化ホウ素、Al23タイプの多結晶ルビー、多結晶ダイヤモンド、多結晶ケイ素、二硫化タングステン又はモリブデン、黒鉛、鉛、炭化ケイ素、ニッケル、リン化インジウム、酸化チタン、ポリケイ素、アモルファス炭素、DLC(Diamond-like-carbon)タイプのアモルファス炭素、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化カドミウム、フッ化マグネシウム、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ハフニウム、窒化カルシウム、窒化銀、酸化窒化ケイ素、白金、パラジウム、モリブデン、タンタル、硫化亜鉛、硫化モリブデン、ゲルマニウム、ヒドロフルオロカーボン、及びAlP、AlN、AlGaSb、AlGaAs、AlGaInP、AlGaN、AlGaP、GaSb、GaAsP、GaAs、GaN、GaP、InAlAs、InAlP、InSb、InGaSb、InGaN、GaInAlAs、GaInAlN、GaInAsN、GaInAsP、GaInAs、GaInP、InN、InP、InAs、InAsSb、ZnSe、HgCdTe、GeSbTeタイプの化合物からなる群から選択される材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコンポーネント(6、7)。
【請求項5】
渦巻き状のバランスばね(8)である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコンポーネント(6)。
【請求項6】
バレルばね(10)である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコンポーネント(7)。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のフレキシブルな計時器用コンポーネント(6、7)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用コンポーネントに関し、特に、計時器用ムーブメントの発振機構又はバレルのための計時器用コンポーネントに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなコンポーネントを備える計時器用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0003】
機械式の計時器用ムーブメントは、一般的には、バレル、エスケープ機構及び機械式発振機構を備える。バレルは、発振機構にエネルギーを供給するばねを備える。エスケープ機構は、特に、アンカー及びエスケープ車を備え、一方、発振機構は、一般的には、バランスと呼ばれる振動する慣性錘に関連づけられた渦巻きばねを備える。
【0004】
複合材料の技術的進歩によって、革新的で高性能な材料によって作られたコンポーネントをいくらか製造することが可能となり、これによって、少なくとも部分的に純粋な金属性材料を使用しないことができる。今日、例えば、カーボンナノチューブを用いて、コンポーネントを製造する試みがなされている。このような材料には、軽く、強く、製造が単純であるという利点がある。したがって、日本特許文献JP2008-116205Aは、カーボンナノチューブによって強化された、黒鉛及びアモルファス炭素のマトリックスを含む渦巻きばねについて記載している。これらのカーボンナノチューブは、マトリックス内にて分散され、渦巻きの長手方向、すなわち、主弾性応力の方向、に整列している。
【0005】
N. Hutchisonらによる文献(MEMS 2009)において、一方では、多数の垂直方向に整列したカーボンナノチューブ(VACNT)の群によって、他方では、ナノチューブの間に充填される、主に炭素、第2にケイ素、又はさらには窒化ケイ素によって構成する第2の充填材によって、複合材料が形成される。充填材は主に複合材料の機械的性質を決める。
【0006】
しかし、これらの材料は、通常空であるナノチューブの用途に限定される。しかし、炭素ではない材料からナノチューブを製造することは必ずしも容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況で、本発明は、上述の課題を回避するような計時器用コンポーネントを提供することを目的とする。
【0008】
このために、本発明は、特に計時器用ムーブメントの発振器機構又はバレルのための、フレキシブルな計時器用コンポーネントに関する。このコンポーネントは、主平面(P)に沿って延在しており、複合材料によって作られる部分を少なくとも含む。
【0009】
このコンポーネントは、複合材料が、マトリックスと、このマトリックス内にて分布する多数のナノワイヤとを含む点で注目に値する。これらのナノワイヤどうしは並置され、マトリックスは、ナノワイヤの間の間隙を充填してナノワイヤどうしを連結する材料を含む。各ナノワイヤは、中実の一体的なチューブを形成する。
【0010】
したがって、このような複合材料のおかげで、中実の一体的なナノワイヤが得られ、これによって、これらのナノワイヤを製造するためにあらゆる種類の材料を用いることができる。また、何らかの材料によって作られるナノチューブよりも単純な方法で、ナノワイヤを容易に製造することができる。したがって、渦巻き状ばね又はバレルばねのような、撓まなければならない計時器用ムーブメントのいくつかの要素を作ることができる。
【0011】
有利な実施形態の1つにおいて、ナノワイヤは、コンポーネントの平面に対して実質的に垂直な軸に対して実質的に平行に配置される。
【0012】
有利な実施形態の1つにおいて、前記ナノワイヤは、金、パラジウム、ケイ素、多結晶ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ガリウム、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ヒ化ガリウム、硫化タングステン、銀、銅、ヒ化マンガン、ヒ化インジウム、ニッケル、白金、ゲルマニウム、コバルト-グラフェン、リン-ゲルマニウム、銅-銀、金-銀の合金、リン-インジウム、窒素-ガリウム、窒素-インジウム-ガリウム、窒素-ヒ素-ガリウム、ヒ素-ガリウム、リン-インジウム-ガリウム、硫黄-カドミウム、硫黄-カドミウム-セレン、窒素-アルミニウム-ガリウム、セシウム-鉛、テルル化アンチモン、テルル化ビスマス、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、酸化マンガンの化合物、Li2Mo6Se6又はMo69-xxのような無機化合物からなる群から選択される材料によって作られる。また、アモルファス又は部分的にアモルファスな金属合金によってナノワイヤを作ることもできる。
【0013】
有利な実施形態の1つにおいて、前記ナノワイヤは、1~50nm、好ましくは3~15nm、より好ましくは5~10nm、の範囲内の直径を有する。
【0014】
有利な実施形態の1つにおいて、前記ナノワイヤは、100~500μm、好ましくは100~300μm、より好ましくは150~200μm、の範囲内の長さを有する。
【0015】
有利な実施形態の1つにおいて、前記充填材は、タングステン、パリレンのような有機物質、六方晶窒化ホウ素、Al23タイプの多結晶ルビー、ダイヤモンド、二硫化タングステン又はモリブデン、黒鉛、鉛、炭化ケイ素、ニッケル、リン化インジウム、酸化チタン、ポリケイ素、アモルファス炭素、DLC(Diamond-like-carbon)タイプのアモルファス炭素、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、多結晶ケイ素、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化カドミウム、フッ化マグネシウム、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ハフニウム、窒化カルシウム、窒化銀、酸化窒化ケイ素、白金、パラジウム、モリブデン、タンタル、硫化亜鉛、硫化モリブデン、ゲルマニウム、ヒドロフルオロカーボン、及びAlP、AlN、AlGaSb、AlGaAs、AlGaInP、AlGaN、AlGaP、GaSb、GaAsP、GaAs、GaN、GaP、InAlAs、InAlP、InSb、InGaSb、InGaN、GaInAlAs、GaInAlN、GaInAsN、GaInAsP、GaInAs、GaInP、InN、InP、InAs、InAsSb、ZnSe、HgCdTe、GeSbTeタイプの化合物からなる群から選択される材料によって作られる。
【0016】
有利な実施形態の1つにおいて、当該コンポーネントは、発振機構の渦巻きばねである。
【0017】
有利な実施形態の1つにおいて、当該コンポーネントは、バレルばねである。
【0018】
有利な実施形態の1つにおいて、当該コンポーネントは、耐衝撃デバイスである。
【0019】
本発明は、さらに、本発明に係るフレキシブルな計時器用コンポーネントを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0020】
添付の図面を参照しながら例としてのみ与えられるいくつかの実施形態を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る複合材料を部分的に透明にした概略斜視図である。
図2】機械式発振機構の渦巻きばねを備えるバランスの斜視図である。
図3】バレルのばねを備えるバレルの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この説明において、計時器用ムーブメントのためのコンポーネントについて説明する。このコンポーネントは、発振機構の渦巻きばね、バレルばねなどからなる群から選択されるフレキシブルなコンポーネントである。
【0023】
フレキシブルなコンポーネントは、好ましくは、平坦であり、主平面Pに沿って延在している。当該コンポーネントは、図1に示している複合材料1によって作られた部分を少なくとも備える。好ましくは、当該コンポーネント全体が、この複合材料1によって作られる。したがって、上記群のコンポーネントをこの複合材料1によって作ることができる。
【0024】
複合材料1は、充填マトリックス2と、このマトリックス2内に分布する多数のナノワイヤ3とを備える。例えば、マトリックス2は、全体的に、平面A内に延在している平坦な形状である。
【0025】
ナノワイヤ3は、複合材料1の構造を形成し、ナノワイヤ3どうしがこの複合材料1内で並置される。ナノワイヤ3は、マトリックス2内にて互いに均等に離間するように規則的に分布している。「ナノワイヤ」という用語は、一般的には固体である、一体的なチューブを意味する。したがって、ナノワイヤ3の内部16は、外側シースと同じ材料によって作られる。
【0026】
ナノワイヤ3は、互いに実質的に平行に配置されることが好ましい。ナノワイヤ3は、コンポーネントの主面Pに対して実質的に垂直である。ナノワイヤ3は、コンポーネントの主平面Pに垂直な軸Aに対して実質的に平行に配置される。「実質的に平行」とは、ワイヤが実質的に同じ方向を向いていることを意味する。
【0027】
好ましいことに、複合材料は、マトリックス2の質量全体にわたってナノワイヤ3が存在するように作られる。
【0028】
ナノワイヤ3は、例えば、2~50nmの範囲内の直径Dを有する。好ましくは、ナノワイヤ3は、3~15nm、さらには5~10nm、の範囲内の直径を有する。
【0029】
ナノワイヤ3は、100~500μmの範囲内の長さLを有することができる。好ましくは、ナノワイヤ3は、100~300μm、さらには150~200μm、の範囲内の長さを有する。
【0030】
ナノワイヤ3は、金、パラジウム、ケイ素、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化ガリウム、窒化ケイ素、酸化亜鉛、ヒ化ガリウム、硫化タングステン、銀、銅、ヒ化マンガン、ヒ化インジウム、ニッケル、白金、ゲルマニウム、コバルト-グラフェン、リン-ゲルマニウム、銅-銀、金-銀の合金、リン-インジウム、窒素-ガリウム、窒素-インジウム-ガリウム、窒素-ヒ素-ガリウム、ヒ素-ガリウム、リン-インジウム-ガリウム、硫黄-カドミウム、硫黄-カドミウム-セレン、窒素-アルミニウム-ガリウム、セシウム-鉛、テルル化アンチモン、テルル化ビスマス、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、酸化マンガンの化合物、Li2Mo6Se6又はMo69-xxタイプの無機化合物からなる群から選択される材料によって作られる。また、アモルファス又は部分的にアモルファスな金属合金によってナノワイヤを作ることも可能である。この群はすべてを網羅しているわけではなく、他の材料も可能である。
【0031】
マトリックス2は、ナノワイヤ3の間の間隙5を充填するための充填材4を含む。充填材4は、好ましいことに、ナノワイヤ3の間の間隙5に注入されることによって、ナノワイヤ3を囲うことができる。この材料4は、主に、複合材料1の機械的性質を決めて、特に、フレキシブルなマトリックス2を作る。
【0032】
マトリックス2を構成している充填材4は、タングステン、パリレンのような有機物質、六方晶窒化ホウ素、Al23タイプの多結晶ルビー、多結晶ダイヤモンド、二硫化タングステン又はモリブデン、黒鉛、鉛、炭化ケイ素、ニッケル、リン化インジウム、酸化チタン、ポリケイ素、アモルファス炭素、DLC(Diamond-like-carbon)タイプのアモルファス炭素、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、多結晶ケイ素、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化カドミウム、フッ化マグネシウム、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ハフニウム、窒化カルシウム、窒化銀、酸化窒化ケイ素、白金、パラジウム、モリブデン、タンタル、硫化亜鉛、硫化モリブデン、ゲルマニウム、ヒドロフルオロカーボン、及びAlP、AlN、AlGaSb、AlGaAs、AlGaInP、AlGaN、AlGaP、GaSb、GaAsP、GaAs、GaN、GaP、InAlAs、InAlP、InSb、InGaSb、InGaN、GaInAlAs、GaInAlN、GaInAsN、GaInAsP、GaInAs、GaInP、InN、InP、InAs、InAsSb、ZnSe、HgCdTe、GeSbTeタイプの化合物からなる群から選択される材料によって作られる。充填材4は、好ましいことに、炭素によって構成していることもできる。この群は、すべてを網羅しているわけではなく、他の材料も可能である。
【0033】
充填材4はフレキシブルであり、充填材4は、コンポーネントの弾性変形を可能にする機械的性質を有する。このフレキシブル性は、コンポーネントの幾何学的構成、特に、コンポーネントの厚みによって、さらに大きくなる。「フレキシブルな材料」とは、渦巻きやばねのようなフレキシブルな計時器用コンポーネントを形成するために用いることができる材料を意味する。また、フレキシブル性は、コンポーネントの幾何学的構成及び剛性対密度比にも依存する。
【0034】
いくらかの充填材、例えば、金属、の場合、充填材は、100GPaよりも大きい、好ましくは200GPaよりも大きい、大きな弾性率を有し、また、1GPaよりも大きい、好ましくは2GPaよりも大きい、大きな引張強度を有する。
【0035】
充填材の他の例、例えば、パリレン、の場合、充填材は、より小さい0.1MPa~100GPaの弾性率を有し、より小さい200MPa~1GPaの引張強度を有する。
【0036】
コンポーネントは、例えば、計時器用ムーブメントの発振機構8の渦巻きばね6、又は計時器用ムーブメントのバレル10のばね7である。
【0037】
特に有利な性質を有する充填剤材料及びナノワイヤの組み合わせの例を挙げる。
【0038】
第1の例は、銅ナノワイヤ及びアルミナ充填材(ルビー、Al23)に関する。銅は、コンポーネントのためにアルミナの剛性及び高耐久性の性質を保持しつつ、静電気を排出することを可能にする。
【0039】
第2の例において、ナノワイヤは、金属と、Al23の充填材によって作られ、この金属は、コンポーネントの色を変えることを可能にする。
【0040】
ケイ素のナノワイヤ及び酸化ケイ素の充填材によって、弾性の熱依存性を変えることが可能になり、特に、機械式発振器の固有周波数の熱補償を調整することが可能になる。
【0041】
最後に、パリレン又は他のポリマー(テフロン(登録商標)、POMなど)によって作られた充填材によって、乾燥摩擦係数が小さい摺動コンポーネントを得ることが可能になり、このような摺動コンポーネントは、2つの可動部品の間の摩擦を低減しなければならなかったり、及び/又は衝撃防止コンポーネントなどにおいて標準的な潤滑剤を添加すると摩擦を大きくしたり摩耗を早めたりしてしまうようないくらかのアプリケーションにおいて有用である。
【0042】
組み合わせに応じて、複合材料は、特に、ばねの製造を可能にする。図2及び3は、このような腕時計製造のためのばねの例である。他のコンポーネント、例えば、バランス軸のような衝撃防止コンポーネント、又は計時器の打撃機構の共振器の要素、も可能である。
【0043】
図2は、渦巻きばね6とバランス8を備える機械式の計時器用発振器を示している。渦巻きばね6は、前記のようなフレキシブルな複合材料によって作られている。渦巻きばね6は、幅対高さ比が小さい細長材であり、この細長材は、対向する細長材の部分との間に自由空間があるように渦巻き状に巻かれる。したがって、渦巻きの収縮及び変形によって、所望のばね効果が得られる。バランス8は、環状リング9と、リング9の中心を通り抜けてリング9の反対側の2つの側面を接続するまっすぐなアーム11とを備える。アーム11は、リング9の平面に対して実質的に垂直な軸12を維持する。軸12は、リング9の平面に平行な平面内にて渦巻きばね6を第1の端によって支持する。第2の端は、バランスばねスタッドと呼ばれる計時器用ムーブメントの別の固定部分17に固定されるように意図されている。
【0044】
図3は、上述したようなフレキシブルな複合材料によって作られたバレルばね7によって形成されるばねバレル10を示している。バレル10は、実質的に平坦な円形ケース13を備え、このケース13の外側部分上にはギヤ歯15があり、ケース13の平面に垂直方向に軸14がケース13の中心を通り抜ける。ばねは、図2のために上述した渦巻きばねの形状と実質的に同じ渦巻きの形状であるが、機械的エネルギーを保持し機械的エネルギーを計時器用ムーブメントへと供給する機能を果たすように寸法が異なっている。ばね7は、一端によって軸14に固定され、また、他端によってケース13の内周縁に固定されるように、ケース13の内側に配置されている。
【0045】
ナノワイヤの製造については、触媒成長、化学エッチング、電気化学堆積(電着)、又は反応性プラズマによる深掘りエッチングからなる群から選択される材料に関連する伝統的な技術が用いられる。薄層の堆積は、好ましくは、例えば、CVD(化学的蒸着)タイプの化学的堆積又はPVD(物理的蒸着)タイプの物理的堆積が用いられる。第1の実施形態と同様に、フォトリソグラフィ方法が、ナノワイヤが成長されるケイ素などで作られた基材上にコンポーネントの輪郭を形成するように用いられる。ナノワイヤを得た後に、ナノワイヤの間にフレキシブルな材料が挿入される。最後に、コンポーネントは、仕上げられた後に、基材から取り外される。
【0046】
国際特許出願WO2014/172660は、シリカナノワイヤの形態について記載している。
【0047】
ナノワイヤ3は、N. Hutchisonの刊行物(MEMS 2009)に記載されているような触媒成長ではない技術によって製造することもできる。
【0048】
充填材は、ALD(原子層堆積)、LPCVD(低圧化学的蒸着)、MOCVD(中圧CVD)タイプの方法によって、電気化学的堆積(電気的堆積)、CVD、又は液相又は気相にて浸漬させることによって、ナノワイヤの間に挿入される。
【0049】
当然、本発明は、図面を参照して説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく代替形態を検討することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 複合材料
2 マトリックス
3 ナノワイヤ
4 充填材
5 間隙
6、7 コンポーネント
8 バランスばね
9 リング
10 バレルばね
13 ケース
15 ギヤ歯
16 ナノワイヤの内部
図1
図2
図3