(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20221219BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20221219BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20221219BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20221219BHJP
【FI】
B60W50/14
G01C21/28
B60W30/182
B60W40/10
(21)【出願番号】P 2020218247
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】細谷 知之
(72)【発明者】
【氏名】比田勝 翔
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 利和
(72)【発明者】
【氏名】中島 巨樹
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-284830(JP,A)
【文献】特開2020-001668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星から到来する電波に基づいて、車両の位置を計測する第1計測部と、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測する第2計測部と、
前記第1計測部により計測された前記車両の位置である第1位置と、前記第2計測部により計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定する決定部と、
前記第1計測部により計測された前記第1位置、又は前記決定部によって決定された前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行う運転制御部と、を備え、
前記運転制御部は、前記決定部によって前記補正量が決定されていない場合、前記決定部によって前記補正量が決定されている場合と比べて、前記第1計測部によって前記第1位置が計測されていない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下さ
せ、
前記第1計測部は、前記第1位置を繰り返し計測し、
前記第2計測部は、前記第2位置を繰り返し計測し、
前記決定部は、前記第1位置及び前記第2位置が繰り返し計測されるたびに、前記第1位置と前記補正量を基に補正された前記第2位置との差分を算出すること、及び前記算出した差分に基づいて前記補正量を決定すること、を繰り返し、
前記運転制御部は、前記第1計測部によって前記第1位置が計測されていない場合、前記決定部によって繰り返し決定された複数の前記補正量のうち、一番最後に決定された前記補正量、又は前記差分が最も小さくなった前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記自動運転を行う、
車両制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記補正量の決定の繰り返し回数が多くなるほど、前記自動運転の制御レベルを低下させるまでの前記走行距離又は前記走行時間を長くする、
請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転制御部は、更に、前記車両が同一方向に旋回する際の角度が所定角度を超える場合、前記自動運転の制御レベルを低下させる、
請求項
1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
人工衛星から到来する電波に基づいて、車両の位置を計測する第1計測部と、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測する第2計測部と、
前記第1計測部により計測された前記車両の位置である第1位置と、前記第2計測部により計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定する決定部と、
前記第1計測部により計測された前記第1位置、又は前記決定部によって決定された前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行う運転制御部と、を備え、
前記運転制御部は、前記決定部によって前記補正量が決定されていない場合、前記決定部によって前記補正量が決定されている場合と比べて、前記第1計測部によって前記第1位置が計測されていない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させ、
前記運転制御部は、更に、前記車両が同一方向に旋回する際の角度が所定角度を超える場合、前記自動運転の制御レベルを低下させる、
車両制御装置。
【請求項5】
車両に搭載されたコンピュータ
を利用した車両制御方法であって、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測
すること、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測
すること、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定
すること、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行
うこと、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下さ
せること、
前記第1位置を繰り返し計測すること、
前記第2位置を繰り返し計測すること、
前記第1位置及び前記第2位置が繰り返し計測されるたびに、前記第1位置と前記補正量を基に補正された前記第2位置との差分を算出すること、及び前記算出した差分に基づいて前記補正量を決定すること、を繰り返すこと、
前記第1位置が計測されていない場合、繰り返し決定された複数の前記補正量のうち、一番最後に決定された前記補正量、又は前記差分が最も小さくなった前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記自動運転を行うこと、
を含む車両制御方法。
【請求項6】
車両に搭載されたコンピュータを利用した車両制御方法であって、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定すること、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行うこと、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させること、
前記車両が同一方向に旋回する際の角度が所定角度を超える場合、前記自動運転の制御レベルを低下させること、
を含む車両制御方法。
【請求項7】
車両に搭載されたコンピュータに
実行させるためのプログラムであって、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定すること、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行うこと、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させること、
前記第1位置を繰り返し計測すること、
前記第2位置を繰り返し計測すること、
前記第1位置及び前記第2位置が繰り返し計測されるたびに、前記第1位置と前記補正量を基に補正された前記第2位置との差分を算出すること、及び前記算出した差分に基づいて前記補正量を決定すること、を繰り返すこと、
前記第1位置が計測されていない場合、繰り返し決定された複数の前記補正量のうち、一番最後に決定された前記補正量、又は前記差分が最も小さくなった前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記自動運転を行うこと、
を含むプログラム。
【請求項8】
車両に搭載されたコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測すること、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定すること、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行うこと、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させること、
前記車両が同一方向に旋回する際の角度が所定角度を超える場合、前記自動運転の制御レベルを低下させること、
を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車速パルスと車速算出用係数とを用いて算出される自車速度に基づいて、所定区間における自車両の第1の走行距離を算出し、測位衛星から提供されるGPS(Global Positioning System)情報に基づいて、所定区間における自車両の第2の走行距離を算出し、第1の走行距離と第2の走行距離との比較結果に基づいて、車速算出用係数を補正し、車速パルスと補正された車速算出用係数とを用いて算出された自車速度に基づいて、自車両の位置を予測するように構成されたナビゲーションシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、車速パルスのような自車両の挙動を表す指標を補正した後、その補正された指標を用いて自動運転を行う際に、どのような条件で自動運転の制御レベルを変更するのか十分に検討されていなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、適切な条件で自動運転の制御レベルを変更することができる車両制御装置、車両制御方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1)本発明の第1の態様は、人工衛星から到来する電波に基づいて、車両の位置を計測する第1計測部と、前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測する第2計測部と、前記第1計測部により計測された前記車両の位置である第1位置と、前記第2計測部により計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定する決定部と、前記第1計測部により計測された前記第1位置、又は前記決定部によって決定された前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行う運転制御部と、を備え、前記運転制御部は、前記決定部によって前記補正量が決定されていない場合、前記決定部によって前記補正量が決定されている場合と比べて、前記第1計測部によって前記第1位置が計測されていない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させる車両制御装置である。
【0007】
(2)本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第1計測部が、前記第1位置を繰り返し計測し、前記第2計測部が、前記第2位置を繰り返し計測し、前記決定部が、前記第1位置及び前記第2位置が繰り返し計測されるたびに、前記第1位置と前記補正量を基に補正された前記第2位置との差分を算出すること、及び前記算出した差分に基づいて前記補正量を決定すること、を繰り返し、前記運転制御部が、前記第1計測部によって前記第1位置が計測されていない場合、前記決定部によって繰り返し決定された複数の前記補正量のうち、一番最後に決定された前記補正量、又は前記差分が最も小さくなった前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記自動運転を行う車両制御装置である。
【0008】
(3)本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記運転制御部が、前記補正量の決定の繰り返し回数が多くなるほど、前記自動運転の制御レベルを低下させるまでの前記走行距離又は前記走行時間を長くする車両制御装置である。
【0009】
(4)本発明の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のうちいずれか一つにおいて、前記運転制御部が、更に、前記車両が同一方向に旋回する際の角度が所定角度を超える場合、前記自動運転の制御レベルを低下させる車両制御装置である。
【0010】
(5)本発明の第5の態様は、車両に搭載されたコンピュータが、人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測し、前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測し、前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定し、前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行い、前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させる車両制御方法である。
【0011】
(6)本発明の第6の態様は、車両に搭載されたコンピュータに、人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測すること、前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測すること、前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定すること、前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行うこと、前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させること、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、適切な条件で自動運転の制御レベルを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システムの構成図である。
【
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
【
図3】運転モードと自車両の制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
【
図4】車両システム1によるトレーニング処理の一例を表すフローチャートである。
【
図5】補正量の収束判定を説明するための図である。
【
図6】車両システム1による異常時のランタイム処理の一例を表すフローチャートである。
【
図7】自車両Mの旋回角度θが所定角度を越える場面の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0015】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0016】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、慣性航法装置(INU)45と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。車両システム1は「車両制御装置」の一例である。
【0017】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0018】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0019】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0021】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0022】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0023】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。ジャイロセンサには、例えば、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサが含まれてよい。
【0024】
車両センサ40には、上記の種々のセンサに加えて、更に、車輪速センサ42が含まれる。車輪速センサ42は、自車両Mの車輪の回転速度(回転数)を検出し、その検出した回転速度(回転数)に応じたパルス信号を生成する。車輪速センサ42は、生成したパルス信号を自動運転制御装置100に出力する。車輪速センサ42によって検出される車輪の回転速度(回転数)は、「挙動を表す指標」の一例である。
【0025】
慣性航法装置45は、自車両Mに働く慣性力に基づいて、自車両Mの位置を計測又は算出する。例えば、慣性航法装置45は、車両センサ40に含まれるジャイロセンサによって検出された速度を時間積分することで、自車両Mの位置を算出してもよいし、加速度センサによって検出された加速度を時間積分することで速度を算出し、更にその速度を時間積分することで、自車両Mの位置を算出してもよい。慣性航法装置45は、計測又は算出した自車両Mの位置を表す信号を自動運転制御装置100に出力する。ジャイロセンサによって検出される角速度や、加速度センサによって検出される加速度は、「挙動を表す指標」の他の例である。慣性航法装置45は、「第2計測部」の一例である。
【0026】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。
【0027】
GNSS受信機51は、複数のGNSS衛星(人工衛星)の其々から電波を受信し、その受信した電波の信号に基づいて、自車両Mの位置を計測又は特定する。GNSS受信機51は、計測又は特定した自車両Mの位置を、経路決定部53に出力したり、自動運転制御装置100に直接的、又はMPU60を介して間接的に出力したりする。
【0028】
GNSS受信機51は、更に、GNSS衛星の電波の受信状況(受信信号の強度や受信の有無)を表すフラグ信号を、自動運転制御装置100に直接的、又はMPU60を介して間接的に出力したりする。
【0029】
フラグ信号には、測位フラグ信号と非測位フラグ信号とが含まれる。測位フラグ信号は、GNSS受信機51がGNSS衛星から電波を受信できている、又はGNSS受信機51がGNSS衛星から受信した電波の信号強度が閾値以上であることを表したフラグ信号である。非測位フラグ信号は、GNSS受信機51がGNSS衛星から電波を受信できていない、又はGNSS受信機51がGNSS衛星から受信した電波の信号強度が閾値未満であることを表したフラグ信号である。GNSS受信機51は、「第1計測部」の一例である。
【0030】
ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。
【0031】
経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により計測又は特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。
【0032】
更に、経路決定部53は、GNSS受信機51により計測又は特定された自車両Mの位置だけでなく、慣性航法装置45によって計測又は算出された自車両Mの位置や、後述の位置推定部156によって推定された自車両Mの位置に基づいて、地図上経路を決定する。
【0033】
第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。
【0034】
ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0035】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、推奨車線決定部61は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めMPU60の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることでMPU60の記憶装置にインストールされてもよい。
【0036】
推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0037】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報、後述するモードAまたはモードBが禁止される禁止区間の情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0038】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0039】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられている。そのセンサの検出結果は、自動運転制御装置100に出力されたり、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力されたりする。ステアリングホイール82は、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアリングホイールやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置100に出力する。
【0040】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0041】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150とを備える。行動計画生成部140と第2制御部160を合わせたもの、又は行動計画生成部140とモード決定部150と第2制御部160を合わせたものは、「運転制御部」の一例である。
【0042】
第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0043】
認識部130は、自車両Mの周辺の状況或いは環境を認識する。例えば、認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺に存在する物体を認識する。認識部130により認識される物体は、例えば、自転車、オートバイク、四輪自動車、歩行者、道路標識、道路標示、区画線、電柱、ガードレール、落下物などを含む。また、認識部130は、物体の位置や、速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした相対座標上の位置(すなわち自車両Mに対する相対位置)として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」には、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)が含まれてもよい。
【0044】
更に、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(以下、自車線)や、その自車線に隣接した隣接車線などを認識する。例えば、認識部130は、MPU60から第2地図情報62を取得し、その取得した第2地図情報62に含まれる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10の画像から認識された自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、区画線の間の空間を自車線や隣接車線として認識する。
【0045】
認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレール等を含む走路境界(道路境界)を認識することで、自車線や隣接車線といった車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置や慣性航法装置45による処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識してよい。
【0046】
更に、認識部130は、自車線を認識する際に、自車線に対する自車両Mの相対位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央の座標点を連ねた線に対してなす角度を、自車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、自車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、自車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0047】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0048】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0049】
モード決定部150は、自車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。モード決定部150は、例えば、運転者状態判定部152と、モード変更処理部154と、位置推定部156と、補正量決定部158とを備える。これらの個別の機能については後述する。
【0050】
図3は、運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。自車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。制御状態すなわち自車両Mの運転制御の自動化度合い(制御レベル)は、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置100としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0051】
モードAでは、自動運転の状態となり、運転者には前方監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)のいずれも課されない。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置100を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される自車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で自車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部150は、モードBに自車両Mの運転モードを変更する。
【0052】
モードBでは、運転支援の状態となり、運転者には自車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、自車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には自車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0053】
自動運転制御装置100(および運転支援装置(不図示))は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。自動車線変更には、システム要求による自動車線変更(1)と、運転者要求による自動車線変更(2)がある。自動車線変更(1)には、前走車両の速度が自車両の速度に比して基準以上に小さい場合に行われる、追い越しのための自動車線変更と、目的地に向けて進行するための自動車線変更(推奨車線が変更されたことによる自動車線変更)とがある。自動車線変更(2)は、速度や周辺車両との位置関係等に関する条件が満たされた場合において、運転者により方向指示器が操作された場合に、操作方向に向けて自車両Mを車線変更させるものである。
【0054】
自動運転制御装置100は、モードAにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行しない。自動運転制御装置100は、モードBおよびCにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行する。運転支援装置(不図示)は、モードDにおいて、自動車線変更(1)は実行せず自動車線変更(2)を実行する。モードEにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行されない。
【0055】
モード決定部150は、決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに自車両Mの運転モードを変更する。
【0056】
例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、自車両はモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって自車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0057】
運転者状態判定部152は、上記のモード変更のために運転者の状態を監視し、運転者の状態がタスクに応じた状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して姿勢推定処理を行い、運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢であるか否かを判定する。また、運転者状態判定部152は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して視線推定処理を行い、運転者が前方を監視しているか否かを判定する。
【0058】
モード変更処理部154は、モード変更のための各種処理を行う。例えば、モード変更処理部154は、行動計画生成部140に路肩停止のための目標軌道を生成するように指示したり、運転支援装置(不図示)に作動指示をしたり、運転者に行動を促すためにHMI30の制御をしたりする。
【0059】
位置推定部156は、車輪速センサ42によって出力されたパルス信号に基づいて、自車両Mの位置を推定する。例えば、位置推定部156は、車輪速センサ42から出力されたパルス信号をカウントし、そのカウントしたパルス信号の数、つまり車輪の回転速度(回転数)を、自車両Mが走行したであろう走行距離に換算する。そして、位置推定部156は、パルス信号のカウントを開始した地点から走行距離分進んだ位置を、現在の自車両Mの位置として推定する。車輪速センサ42と位置推定部156とを合わせたものは、「第2計測部」の他の例である。
【0060】
補正量決定部158は、GNSS受信機51により計測された自車両Mの位置(以下、「衛星観測位置P1」と称する)と、位置推定部156により推定された自車両Mの位置(以下、「車速観測位置P2」と称する)とに基づいて、車速観測位置P2の補正量を決定する。衛星観測位置P1は「第1位置」の一例であり、車速観測位置P2は「第2位置」の一例である。
【0061】
補正量は、観測値である車速観測位置P2を、同じく観測値である衛星観測位置P1に近づけるために、車速観測位置P2に対して、加算、減算、乗算、又は除算される何らかの値である。例えば、補正量は、車速観測位置P2を説明変数としたときに、その説明変数に対して乗算される重み係数αであってよい。重み係数αは、衛星観測位置P1と車速観測位置P2との比、つまりゲインでもある。補正量には、重み係数αに加えて、更に、説明変数に対して加算されるバイアス成分βなどが含まれてもよい。また、補正量には、指数関数の指数や、対数関数の底が含まれてもよいし、機械学習の各種パラメータ(例えばニューラルネットワークの重み係数やバイアス成分など)が含まれてもよい。
【0062】
例えば、補正量決定部158は、車速観測位置P2を衛星観測位置P1に近づけるため、衛星観測位置P1と車速観測位置P2との差分Δを算出し、その差分Δが小さくなるように車速観測位置P2の補正量を決定する。
【0063】
なお、車速観測位置P2は、位置推定部156により推定された自車両Mの位置に限られず、慣性航法装置45によって計測又は算出された自車両Mの位置であってもよいし、これら2種類の位置の平均などであってもよい。
【0064】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0065】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0066】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0067】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0068】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0069】
[トレーニング処理]
以下、フローチャートを用いて、車両システム1によるトレーニング処理について説明する。トレーニング処理とは、補正量を事前に学習することであり、より具体的には、補正量を繰り返し決定し、その値を一意に同定することである。
図4は、車両システム1によるトレーニング処理の一例を表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、GNSS受信機51がGNSS衛星から電波を受信している期間に、所定の周期で繰り返し実行されてよい。
【0070】
まず、GNSS受信機51は、GNSS衛星から電波を受信し、その受信した電波の信号に基づいて、自車両Mの位置を計測する(ステップS100)。
【0071】
次に、位置推定部156は、車輪速センサ42によって出力されたパルス信号に基づいて、自車両Mの位置を推定する(ステップS102)。
【0072】
次に、補正量決定部158は、位置推定部156により推定された自車両Mの位置である車速観測位置P2の補正量を既に決定したことがあるか否かを判定する(ステップS104)。例えば、補正量決定部158は、自動運転制御装置100の記憶装置(HDDやフラッシュメモリなど)を参照し、そこに補正量が記憶されていた場合、車速観測位置P2の補正量を既に決定したことがあると判定する。
【0073】
補正量決定部158は、車速観測位置P2の補正量を既に決定したことがある場合、自動運転制御装置100の記憶装置に記憶された補正量のうち、最も直近の補正量に基づいて、S102の処理で推定された現在の車速観測位置P2を補正する(ステップS106)。
【0074】
例えば、補正量に重み係数αとバイアス成分βが含まれる場合、補正量決定部158は、車速観測位置P2に重み係数αを乗算し、更にバイアス成分βを加えることで、現在の車速観測位置P2を補正する。
【0075】
補正量決定部158は、車速観測位置P2の補正量を未だ決定したことがない場合、現在の車速観測位置P2を補正せずに(つまりS106の処理を省略し)、次のS108に処理を進める。
【0076】
次に、補正量決定部158は、GNSS受信機51により計測された自車両Mの位置である衛星観測位置P1と、補正済み/未補正の車速観測位置P2との差分Δを算出する(ステップS108)。
【0077】
例えば、補正量決定部158は、S106の処理を省略していれば、衛星観測位置P1と、未補正の車速観測位置P2との差分Δを算出する。補正量決定部158は、S106の処理を実行していれば、衛星観測位置P1と、補正済みの車速観測位置P2との差分Δを算出する。
【0078】
次に、補正量決定部158は、算出した差分Δが小さくなるように、車速観測位置P2の補正量を決定する(ステップS110)。
【0079】
次に、補正量決定部158は、決定した車速観測位置P2の補正量を、自動運転制御装置100の記憶装置に記憶させる(ステップS112)。
【0080】
次に、補正量決定部158は、決定した車速観測位置P2の補正量が収束したか否かを判定する(ステップS114)。
【0081】
例えば、補正量決定部158は、前回までに決定し、記憶装置に記憶させておいた補正量と、今回の処理で決定した補正量とを比較し、それらの補正量の誤差が許容範囲内であれば、補正量が収束したと判定する。許容範囲は、比較対象である2つの補正量が同一だと見做せる程度の誤差を許容した数値範囲である。
【0082】
一方、補正量決定部158は、補正量の誤差が許容範囲外であれば、補正量が収束していないと判定する。
【0083】
補正量決定部158は、補正量が収束したと判定した場合、本フローチャートの処理を終了させる。
【0084】
一方、補正量決定部158は、補正量が収束していないと判定した場合、S100に処理を戻す。これによって、車速観測位置P2の補正量が一定の値に収束するまで、衛星観測位置P1及び車速観測位置P2が繰り返し求められ、更に補正量が繰り返し決定される。
【0085】
例えば、今回の処理をn(nは任意の自然数)とし、前回の処理をn-1としたとする。この場合、補正量決定部158は、n回目の車速観測位置P2を、n-1回目に決定された補正量を基に補正する。補正量決定部158は、その補正したn回目の車速観測位置P2と、n回目の衛星観測位置P1との差分Δを算出し、その差分Δが小さくなるように、すなわち補正したn回目の車速観測位置P2がn回目の衛星観測位置P1に近づくように、n回目の車速観測位置P2の補正量を決定する。このように、補正量決定部158は、前回の補正量を反映させながら、今回の補正量を決定することを繰り返す。
【0086】
図5は、補正量の収束判定を説明するための図である。ここでは補正量が重み係数αのみとする。例えば、補正量を決定するイテレーション回数(繰り返し回数)が、1回、2回、3回、…、n-1回、n回と増えていったとする。補正量決定部158は、イテレーション回数がn回目の場合、n回目に補正量として決定した重み係数α
nと、n-1回目に補正量として決定した重み係数α
n-1との誤差が許容範囲内であるのか、或いはそうでないのかを判定し、その判定結果に応じて補正量が収束したのか否かを判定してよい。
【0087】
また、補正量決定部158は、直近に決定した補正量だけでなく、過去の所定回数分の補正量を加味した移動平均に変化がなくなったときに、補正量が収束したと判定してもよい。例えば、過去の3回分の補正量を加味する場合、補正量決定部158は、重み係数αn-3、αn-2、αn-1、及びαnの移動平均を基に、補正量が収束したか否かを判定してよい。
【0088】
[異常時のランタイム処理]
以下、フローチャートを用いて、車両システム1による異常時のランタイム処理について説明する。異常時のランタイム処理とは、ある特定の異常が発生したときに(その蓋然性が高いときも含む)、トレーニング処理において事前に決定しておいた補正量を用いて自車両Mの自動運転を行うことである。特定の異常とは、例えば、GNSS受信機51が自車両Mの位置を計測できないこという。
図6は、車両システム1による異常時のランタイム処理の一例を表すフローチャートである。
【0089】
まず、行動計画生成部140は、実行条件を満たすまで待機する(ステップS200)。実行条件とは、本フローチャートのランタイム処理を実行するための条件であり、下記のいくつかの諸条件が含まれる。
【0090】
条件(i):特定の異常が発生している(GNSS受信機51が自車両Mの位置を計測できていない)。
条件(ii):自動運転制御装置100がMPU60から第2地図情報62を取得できている。
条件(iii):自車両MがモードA又はモードBの禁止区間を走行していない。
条件(iv):第2地図情報62に異常が生じていない。
【0091】
例えば、行動計画生成部140は、GNSS受信機51から出力されるフラグ信号が測位フラグ信号から非測位フラグ信号に変化してから所定時間(例えば十数秒)が経過するまでの期間内に、測位フラグ信号に戻らない場合、条件(i)を満たすと判定する。
【0092】
これに代えて、或いは加えて、行動計画生成部140は、GNSS受信機51から出力されるフラグ信号が測位フラグ信号から非測位フラグ信号に変化してから、自車両Mが所定距離(例えば数百メートル)を走行するまでの期間内に、測位フラグ信号に戻らない場合、条件(i)を満たすと判定してもよい。
【0093】
このように、行動計画生成部140は、GNSS受信機51がGNSS衛星から電波を受信できていない期間(又はその電波の信号強度が閾値未満である期間)が、所定時間(又は所定距離)にわたって継続する場合、条件(i)を満たすと判定する。つまり、行動計画生成部140は、特定の異常が発生した(GNSS受信機51が自車両Mの位置を計測できない)と判定する。
【0094】
例えば、特定の異常は、トンネルや、高架下、高層ビル群といった、GNSS衛星の電波が遮られやすい又は反射されやすい場所を自車両Mが走行している場合に発生しやすい。更に、特定の異常は、GNSS受信機51にハードウェア的又はソフトウェア的な故障が発生した場合や、GNSS衛星の電波と周波数帯域が同じ他の電波が発信されている場所を自車両Mが走行している場合、GNSS衛星(例えば準天頂衛星等)の障害が生じている場合などにおいても発生し得る。
【0095】
したがって、行動計画生成部140は、上記の種々のケース(シチュエーション)において、条件(i)を満たす、つまり特定の異常が発生したと判定しやすくなる。
【0096】
行動計画生成部140は、実行条件の(i)~(iv)のうち、少なくとも(i)を満たす場合(好ましくは(i)~(iv)の全てを満たす場合)、車速観測位置P2の補正量のトレーニングが完了しているか否かを判定する(ステップS202)。
【0097】
例えば、行動計画生成部140は、トレーニング処理の時点において車速観測位置P2の補正量が収束している場合、補正量のトレーニングが完了していると判定し、トレーニング処理の時点において車速観測位置P2の補正量が収束していない場合、補正量のトレーニングが完了していないと判定する。行動計画生成部140は、トレーニング処理が一度も開始されておらず、自動運転制御装置100の記憶装置内に補正量が一つも格納されていない場合も、補正量のトレーニングが完了していないと判定してよい。
【0098】
行動計画生成部140は、補正量のトレーニングが完了していると判定した場合、自動運転により継続して走行可能な距離の限界を、第1上限値に設定する(ステップS204)。
【0099】
一方、行動計画生成部140は、補正量のトレーニングが完了していないと判定した場合、自動運転により継続して走行可能な距離の限界を、第1上限値よりも小さい第2上限値に設定する(ステップS206)。
【0100】
第1上限値は、例えば、十数[km]程度に設定され、第2上限値は、例えば、数[km]程度に設定される。
【0101】
なお、行動計画生成部140は、補正量のトレーニングが完了しているか否かに応じて、自動運転により継続して走行可能な「距離」の限界を設定することに代えて、或いは加えて、自動運転により継続して走行可能な「時間」の限界を設定してもよい。
【0102】
例えば、行動計画生成部140は、補正量のトレーニングが完了していると判定した場合、自動運転により継続して走行可能な時間の限界を、第3上限値に設定し、補正量のトレーニングが完了していないと判定した場合、自動運転により継続して走行可能な時間の限界を、第3上限値よりも小さい第4上限値に設定してよい。
【0103】
次に、位置推定部156は、車輪速センサ42によって出力されたパルス信号に基づいて、車速観測位置P2を推定する(ステップS208)。
【0104】
例えば、位置推定部156は、GNSS受信機51によって最後に計測された衛星観測位置P1(又はGNSS受信機51によって衛星観測位置P1が計測されなくなった地点)から、車輪速センサ42から出力されたパルス信号をカウントし、そのカウントしたパルス信号の数、つまり車輪の回転速度(回転数)を、自車両Mが走行したであろう走行距離に換算する。そして、位置推定部156は、パルス信号のカウントを開始した地点から走行距離分進んだ位置を、車速観測位置P2として推定する。
【0105】
次に、補正量決定部158は、S208の処理で推定された現在の車速観測位置P2を、補正量に基づいて補正する(ステップS210)。
【0106】
トレーニング処理では、補正量のトレーニングが完了するまで(補正量が収束するまで)、繰り返し決定された補正量が随時記憶装置に記憶される。つまり、記憶装置には、S210の処理で用いられる補正量の候補が複数存在することになる。そのため、補正量決定部158は、補正量のトレーニングが完了するまでの期間に記憶装置に格納された複数の補正量のうち、いずれか一つを記憶装置から読み出し、その読み出した補正量を用いて、S208の処理で推定された現在の車速観測位置P2を補正する。
【0107】
例えば、補正量決定部158は、複数の補正量の中から、トレーニング処理の過程のなかで一番最後に決定された補正量を選択し、その選択した補正量を用いて車速観測位置P2を補正してよい。また、補正量決定部158は、複数の補正量の中から、トレーニング処理の過程のなかで衛星観測位置P1との差分Δが最も小さくなった補正量を選択し、その選択した補正量を用いて車速観測位置P2を補正してもよい。
【0108】
なお、トレーニング処理が一度も開始されておらず、自動運転制御装置100の記憶装置内に補正量が一つも格納されていない場合、S210の処理は省略されてよい。
【0109】
次に、MPU60は、GNSS受信機51によって計測された衛星観測位置P1を用いる代わりに、補正量決定部158によって補正された車速観測位置P2を用いて、第2地図情報62(高精度地図)上において自車両Mが存在している位置を特定する(ステップS212)。
【0110】
具体的には、MPU60は、補正量決定部158によって補正された車速観測位置P2を、第2地図情報62上の自車両Mの位置とする。この際、MPU60は、推奨車線を決定し直してもよい。
【0111】
次に、行動計画生成部140は、MPU60によって第2地図情報62上において特定された自車両Mの位置、つまり補正された車速観測位置P2に基づいて、目標軌道を生成する(ステップS214)。
【0112】
例えば、行動計画生成部140は、補正された車速観測位置P2を起点にし、その起点から自車両Mが到達すべき将来の位置を軌道点として決定し、更に、起点からの目標速度や目標加速度を決定する。そして、行動計画生成部140は、自車両Mが将来到達すべき複数の軌道点を時系列に連ねた軌道に、目標速度や目標加速度を対応付けたものを、自車両Mの目標軌道として生成する。
【0113】
次に、第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道(車速観測位置P2を用いた目標軌道)に基づいて、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御することで、自動運転を行う(ステップS216)。
【0114】
次に、モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離が、S204又はS206の処理で設定された距離の上限値(第1上限値又は第2上限値)を越えたか否かを判定する(ステップS218)。
【0115】
S204又はS206の処理で時間の上限値が設定された場合、モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した時間が、S204又はS206の処理で設定された時間の上限値(第3上限値又は第4上限値)を越えたか否かを判定してよい。
【0116】
モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離(又は時間)が、S204又はS206の処理で設定された上限値以下である場合、更に、自車両Mが同一方向に旋回する際の車輪又は車体の角度(以下、旋回角度)θが所定角度を越えるか否かを判定する(ステップS220)。
【0117】
所定角度は、自車両Mが旋回して一周したと見做せる程度の角度であり、例えば、270度から360度程度の範囲内に収まる角度である。
【0118】
図7は、自車両Mの旋回角度θが所定角度を越える場面の一例を表す図である。図示のように、高速道路のランプウェイや環状交差点などは、その道路の形状が、上方から見て円形又は円弧形状の場合がある。このような道路を自車両Mが走行する場合、その自車両Mの旋回角度θは、時刻t1、t2、t3、…、t6と進むにつれ増加していき、360度に近い角度に達する。従って、モード変更処理部154は、自車両Mが円形又は円弧形状の道路を走行する場合、自車両Mの旋回角度θが所定角度を越えると判定する。
【0119】
図6のフローチャートの説明に戻る。モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離(又は時間)が上限値以下であり、かつ自車両Mの旋回角度θが所定角度以下である場合、S208に処理を戻す。つまり、車速観測位置P2に基づく自動運転が継続される。
【0120】
一方、モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離(又は時間)が上限値を超えた、又は自車両Mの旋回角度θが所定角度を超える場合、より制御レベルの低い自動運転モードに変更する(ステップS222)。つまり、モード変更処理部154は、自動運転の制御レベルを低下させる。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0121】
例えば、モード変更処理部154は、自車両Mの運転モードがモードA又はモードBである場合、モードBよりも制御レベルの低いモードC又はモードDに変更する。言い換えれば、モード変更処理部154は、自車両Mの運転モードがモードA又はモードBである場合、モードBよりも乗員に課される責務(タスク)が重いモードC又はモードDに変更する。
【0122】
上述したとおり、モードA及びモードBは、乗員にステアリングホイール82の把持が責務として課されないモードである。これに対して、モードC又はモードDは、乗員にステアリングホイール82の把持が責務として課されるモードである。従って、モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離(又は時間)が上限値を超えた、又は自車両Mの旋回角度θが所定角度を超える場合、自車両Mの運転モードを、乗員にステアリングホイール82の把持が責務として課されるモードに変更することになる。
【0123】
また、手動運転モードであるモードEは、当然ながら乗員にステアリングホイール82の把持が責務として課される。従って、モード変更処理部154は、自動運転中に自車両Mが走行した距離(又は時間)が上限値を超えた、又は自車両Mの旋回角度θが所定角度を超える場合、いずれかの自動運転モードからモードEに変更してもよい。
【0124】
以上説明した実施形態によれば、モード変更処理部154は、GNSS受信機51が自車両Mの位置を計測できていない条件下において、トレーニング処理において補正量決定部158によって補正量が十分に学習されていない場合、トレーニング処理において補正量決定部158によって補正量が十分に学習された場合と比べて、より短い走行距離又は走行時間で自動運転の制御レベルを低下させる。言い換えれば、モード変更処理部154は、トレーニング処理が一度も実行されていないか、又は回数が足りず補正量が収束していない場合、トレーニング処理が何度も実行され、補正量が収束している場合と比べて、GNSS受信機51が自車両Mの位置を計測できていない条件下において、より短い走行距離又は走行時間で自動運転の制御レベルを低下させる。このように、補正量のトレーニングの実行状況に合わせた適切な条件で自動運転の制御レベルを変更することができる。
【0125】
[その他の実施形態(変形例)]
以下、その他の実施形態(変形例)について説明する。上述した実施形態では、補正量のトレーニングが完了しているか否かという2つの判定結果に応じて、自動運転により継続して走行可能な距離又は時間の限界を設定するものとして説明したがこれに限られない。
【0126】
例えば、行動計画生成部140は、補正量のトレーニング回数(補正量の決定の繰り返し回数)が多くなるほど、距離又は時間の限界を大きくしてよい。言い換えれば、行動計画生成部140は、補正量のトレーニング回数(補正量の決定の繰り返し回数)が多くなるほど、自動運転の制御レベルを低下させるまでの走行距離(第1上限値又は第2上限値)を長くしてよいし、自動運転の制御レベルを低下させるまでの走行時間(第3上限値又は第4上限値)を長くしてもよい。
【0127】
[付記]
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
(表現例1)
プログラムを記憶したメモリと、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記プログラムを実行することにより、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測し、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測し、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定し、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の自動運転を行い、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で前記自動運転の制御レベルを低下させる、
ように構成されている、車両制御装置。
【0128】
(表現例2)
プログラムを記憶したメモリと、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記プログラムを実行することにより、
人工衛星から到来する電波に基づいて、前記車両の位置を計測し、
前記車両の挙動を表す指標に基づいて、前記車両の位置を計測し、
前記電波に基づいて計測された前記車両の位置である第1位置と、前記指標に基づいて計測された前記車両の位置である第2位置との差分を算出し、前記算出した差分に基づいて、前記第2位置の補正量を決定し、
前記第1位置、又は前記補正量を基に補正された前記第2位置に基づいて、前記車両の運転モードを、第1の運転モード(例えばモードC、モードD、又はモードE)と、前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な第2の運転モード(例えばモードA又はモードB)とを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、
前記決定した運転モードに応じて、前記車両の操舵及び加減速の少なくとも一方を制御し、
前記決定した運転モードのタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、
前記補正量を決定していない場合、前記補正量を決定している場合と比べて、前記第1位置を計測していない条件下においてより短い走行距離又は走行時間で、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0129】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0130】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
20 通信装置
30 HMI
40 車両センサ
42 車輪速センサ
45 慣性航法装置
50 ナビゲーション装置
51 GNSS受信機
52 ナビHMI
53 経路決定部
54 第1地図情報
60 MPU
61 推奨車線決定部
62 第2地図情報
70 ドライバモニタカメラ
82 ステアリングホイール
84 ステアリング把持センサ
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
140 行動計画生成部
150 モード決定部
160 第2制御部
162 取得部
164 速度制御部
166 操舵制御部
200 走行駆動力出力装置
210 ブレーキ装置
220 ステアリング装置