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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】温度制御遠心分離機
(51)【国際特許分類】
   B04B 7/06 20060101AFI20221219BHJP
   B04B 15/02 20060101ALI20221219BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B04B7/06 Z
B04B15/02
B04B13/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020534478
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018083335
(87)【国際公開番号】W WO2019120967
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】102017130785.0
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ハイコ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0209874(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0043163(US,A1)
【文献】特開昭49-103260(JP,A)
【文献】特開2006-207928(JP,A)
【文献】特開2001-321699(JP,A)
【文献】特開2015-104701(JP,A)
【文献】特表2015-513447(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第01357010(GB,A)
【文献】国際公開第2016/153021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
B01D 45/12-45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機(10)であって、遠心分離機ローター(20、20’)を収容可能な遠心分離機容器(16)と、前記遠心分離機ローター(20、20’)を駆動するためのモーター(18)と、前記遠心分離機ローター(20、20’)の温度を制御する温度制御手段(24、42、44)と、前記遠心分離機容器(16)、前記遠心分離機ローター(20、20’)、前記温度制御手段(24、42、44)および前記モーター(18)が収容される筐体(12)とを有し、前記温度制御手段(24、42、44)は、温度制御媒体ライン(24)において案内される可燃性温度制御媒体を含み、前記遠心分離機(10)は保護ガスを含み、かつ、前記遠心分離機ローター(20、20’)の衝突の際に前記保護ガスを放出するように適合されており、
前記保護ガスは、少なくとも1つの巻線(36)を有する前記遠心分離機容器(16)の周囲で延在する保護ガスライン(26)内で案内され、
前記保護ガスライン(26)は少なくとも、前記温度制御媒体ライン(24)の隣および/または下方の前記遠心分離機容器(16)に対する領域(36)に配置され、
前記遠心分離容器(16)は前記温度制御媒体ライン(24)の巻線および前記保護ガスライン(26)の巻線に囲まれていることを特徴とする、遠心分離機(10)。
【請求項2】
前記保護ガスは、不活性ガスであることを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離機(10)。
【請求項3】
前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、クリプトン、ネオン、窒素およびキセノンからなる群のうち少なくとも1種類のガスを含むことを特徴とする、請求項2に記載の遠心分離機(10)。
【請求項4】
前記保護ガスライン(26)は、前記保護ガスを含有する保護ガス源(34)に接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項5】
前記保護ガスは、大気圧より高い圧力であることを特徴とする、請求項4に記載の遠心分離機(10)。
【請求項6】
スロットル要素が前記保護ガスライン(26)と前記保護ガス源(34)との間に配置されることを特徴とする、請求項4または5に記載の遠心分離機(10)。
【請求項7】
恒久的に調節された前記スロットル要素が前記保護ガスライン(26)と前記保護ガス源(34)との間に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の遠心分離機(10)。
【請求項8】
前記保護ガスライン(26)の少なくとも2つの部分(28、30)が前記保護ガス源(34)に並行に接続されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項9】
前記保護ガスライン(26)の各巻線が前記保護ガス源(34)に並行に接続されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項10】
前記保護ガスライン(26)および前記温度制御媒体ライン(24)は、少なくとも複数の領域において互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項11】
前記保護ガスライン(26)は、少なくとも複数の領域において、前記温度制御媒体ライン(24)と比較して薄い肉厚を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項12】
前記保護ガスライン(26)および/または前記温度制御媒体ライン(24)は、前記遠心分離機容器(16)に直接配置される、または少なくとも複数の領域で前記遠心分離機容器(16)の壁の構成要素であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項13】
前記保護ガス用の1つのチャネルおよび前記可燃性温度制御媒体用の1つのチャネルが存在するように、マルチチャネルシステムが設けられていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項14】
前記保護ガスの状態に関する監視手段(38)が設けられ、前記監視手段(38)は、前記保護ガスの状態に関して所定の値に到達しない場合に、前記遠心分離機ローター(20、20’)の回転速度を、前記遠心分離機ローター(20、20’)の衝突について臨界でない値に制限するように適合されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項15】
前記遠心分離機(10)の動作中に、空気を前記筐体の内部から前記遠心分離機(10)の環境内に連続して案内するファンが設けられていることを特徴とする、請求項1~1のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項16】
前記保護ガスは、少なくとも前記複数の巻線(36)を有する前記遠心分離機容器(16)の周囲で延在する保護ガスライン(26)内で案内されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項17】
遠心分離機ローター(20、20’)の衝突の後に遠心分離機(10)における可燃性温度制御媒体の発火を防止するための方法であって、前記遠心分離機(10)は、前記遠心分離機ローター(20、20’)を収容可能な遠心分離機容器(16)と、前記遠心分離機ローター(20、20’)を駆動するためのモーター(18)と、前記遠心分離機ローター(20、20’)の温度を制御する温度制御手段(24、42、44)と、前記遠心分離機容器(16)、前記遠心分離機ローター(20、20’)、前記温度制御手段(24、42、44)および前記モーター(18)が収容される筐体(12)とを含み、前記温度制御手段(24、42、44)は、温度制御媒体ライン(24)内で案内される可燃性温度制御媒体を含み、前記遠心分離機ローター(20、20’)の衝突の際に保護ガスが放出されることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項1~1のいずれか1項に記載の前記遠心分離機(10)が用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の一般名称に係る遠心分離機、および請求項14に記載の一般名称に係る可燃性焼戻し媒体の発火を防ぐための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機ローターが、質量慣性を利用することによってそれらにおいて遠心分離された試料の成分を分離するために、遠心分離機、特に実験用遠心分離機で用いられる。その際に、高分離速度を実現するためにさらに速い回転速度が用いられる。実験用遠心分離機は、好ましくは少なくとも3000、好ましくは少なくとも10000、特に少なくとも15000毎分回転数でそれらのローターが動作する遠心分離機であり、通常、台に置かれる。作業台に置くことができるように、遠心分離機は、1m×1m×1m未満のフォームファクタを有する。そのため、遠心分離機の設置スペースは制限されている。その際に、装置の奥行きは、最大で70cmに制限されていることが好ましい。
【0003】
そのような遠心分離機は、医学、薬学、生物学および化学などの分野で使用されている。
【0004】
遠心分離される試料は試料容器に貯蔵され、そのような試料容器は、遠心分離機ローターによる回転で駆動される。その際に、遠心分離機ローターは通常、電動機によって駆動される垂直駆動シャフトによる回転でセットされる。用途に応じて使用される異なる遠心分離機ローターが存在する。それによって、複数の試料を同時に1つの試料容器で遠心分離することができるように、試料容器は直接試料を収容し得る、または、試料容器は試料を収容するそれら自体の試料入れを有し得る。一般に、固定角ローターおよびスイングアウトローターの形状の遠心分離機ローターが知られている。
【0005】
ほとんどの場合、試料は定義された温度で遠心分離されるものである。たとえば、そのような試料の温度制御についての上限が通常+40℃の範囲であるように、タンパク質および類似の有機物質を含有する試料を過熱してはならない。他方で、特定の試料は、デフォルトで+4℃(水の変態は3.98℃で開始する)の範囲で冷却される。
【0006】
たとえば約+40℃のそのような所定最高温度およびたとえば+4℃の標準試験温度に加えて、そのような温度で遠心分離機の冷凍システムが室温より低い温度で制御された態様で動作しているかどうかを調べるために、たとえば11℃でさらに別の標準試験温度が設けられている。他方で、職業上の安全目的から、+60℃以上の温度を有する要素に接触するのを防ぐことが必要である。
【0007】
原則として、温度制御のために能動的および受動的なシステムを用いることが可能である。受動的なシステムは、空気補助換気に基づく。この空気は遠心分離機ローターを越えて直接案内されて、温度制御が行われる。その際に、空気は遠心分離機内へ開口部を通って、およびさらに別の開口部を介して吸入され、加熱された空気が遠心分離機容器の別の地点において再び排出されて、遠心分離機ローターの回転によって吸入および排出が独立して行われる。
【0008】
他方で、能動的な冷却システムは、遠心分離機ローターおよびその内部に収容された試料容器を間接的に冷却する遠心分離機容器の温度を調整する冷媒回路を有する。冷却または焼戻し媒体として、多くの異なる媒体が使用されている。原則として、特に遠心分離中は冷却(すなわち、熱還元)だけでなく熱の上昇も求められることがあるため、本発明は、温度の制御および温度制御媒体に言及する。クロロジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタンまたはジフルオロメタンおよびその他多くなどの、遠心分離機用に通常用いられる焼戻し媒体に加えて、ブタンまたはプロパンなどの可燃性焼戻し媒体、またはさまざまな合成混合物もある。
【0009】
そのような可燃性焼戻し媒体はきわめて良好な伝熱特性を有するが、遠心分離機ローターの衝突の際に焼戻し手段の漏れおよび発火が発生することがあるため、通常は安全上の理由から使用されない。そのような衝突の際は、遠心分離機ローターの破片が高速で、それゆえ遠心分離機内できわめて高いエネルギーで作動することがあり、これによって、蒸発器および温度制御媒体を保持しているラインが壊れる。漏れている可燃性焼戻し媒体はその後、衝突の際に放出されたエネルギーによって、および遠心分離機内のまたはその付近の電気もしくは電子構成要素によって発火しやすくなり、深刻な損害、特に人身傷害を引き起こすことがある。
【0010】
遠心分離機ローターの衝突が遠心分離機の外側で損害を招くのを防ぐために、遠心分離機内部の補強および強化手段が既に提案されている。しかしながら、これは焼戻し媒体が漏れることを防げないであろう。なぜなら、蒸発器を形成する焼戻し手段のラインは、遠心分離機ローターと強化手段との間のそのような強化手段に対して、遠心分離機容器の周囲で動作するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、遠心分離機ローターの衝突の際の安全上のリスクを提起することなく、可燃性焼戻し媒体についても使用可能な遠心分離機を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の遠心分離機、および請求項14に記載の、可燃性焼戻し媒体の発火を防止するための方法で達成される。有利なさらに別の形態が、下位クレームにおいておよび図面と共に以下の説明において示される。
【0013】
発明者の側では、酸素温度媒体混合物が発火しやすくならないように遠心分離機ローターの衝突の際に保護ガスを放出することによって、驚くほど簡単な態様でそのような目的を達成できることが認識されている。より正確には、放出された保護ガスは、遠心分離機の内側または外側のいずれかで発火が発生しないような態様で、酸素に置換し、漏れている焼戻し媒体を分散させ、かつ、焼戻し媒体に対する酸素の一時的な濃度比を根本的に変化させる流れを形成する。
【0014】
そのため、本発明に係る遠心分離機、特に実験用遠心分離機は、遠心分離機ローターを収容可能な遠心分離機容器と、遠心分離機ローターを駆動するためのモーターと、遠心分離機ローターの温度を制御する温度制御手段と、遠心分離機容器、遠心分離機ローター、温度制御手段およびモーターが収容される筐体とを有し、温度制御手段は、温度制御媒体ラインにおいて案内される可燃性温度制御媒体を含み、遠心分離機は保護ガスを含み、かつ、遠心分離機ローターの衝突の際に保護ガスを放出するように適合されていることを特徴とする。
【0015】
有利なさらに別の形態では、保護ガスは、好ましくはアルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、クリプトン、ネオン、窒素およびキセノンからなる群のうち少なくとも1種類のガスを含む不活性ガスとする。このようなガスは、特に効果的な保護ガスである。
【0016】
有利なさらに別の形態では、保護ガスは、少なくとも1つの、好ましくは複数の巻線を有する遠心分離機容器の周囲で延在する保護ガスライン内で案内されるものとする。これによって、保護ガスは、遠心分離機容器内の遠心分離機ローターが衝突の際に保護ガスラインを常に即座に破壊し、そのため自動的に保護ガスを放出するように、遠心分離機容器に可能な限り近接して案内される。
【0017】
有利なさらに別の形態では、保護ガスラインは、好ましくは大気圧より高い圧力で保護ガスを含有する保護ガス源に接続されているものとする。これによって、多量の保護ガスが、遠心分離機ローターの衝突の際に継続して放出される。大気圧より高い圧力の場合、保護ガスの流れは外部エネルギーには依存せず、遠心分離機内の空気の酸素が置換されるだけでなく、環境において移動する大気を作り出しそれゆえ生成された混合物をさらに希釈する遠心分離機外部の気流があり、発火を防止する。
【0018】
有利なさらに別の形態では、スロットル要素、特に恒久的に調節されたスロットル要素が、保護ガスラインと保護ガス源との間に配置されるものとする。これにより、保護ガスの突然の膨張が防止され、かつ、保護ガスの流出時間が長くなって、周囲空気が長時間置換され、かつ、漏れている焼戻し媒体が漏れている保護ガスと混合され、これによって拡散される。
【0019】
有利なさらに別の形態では、少なくとも2つの部分、好ましくはそれより多くの部分が、特に保護ラインの各巻線が保護ガス源に並行に接続されているものとする。これにより、保護ガスラインのどの部分が衝突によって開口しているかにかかわらず、十分な量の保護ガスが放出される。
【0020】
有利なさらに別の形態では、保護ガスラインは少なくとも、温度制御媒体ラインの隣および/または下方の遠心分離機容器に対する複数の領域に配置されているものとする。そうすると、保護ガスラインは常に、最初にまたは少なくとも温度制御媒体ラインと同時に開かれる。さらに、保護ガスラインは、温度制御媒体ラインが開くことを防止できるように、さらに別の衝突緩衝体を形成する。
【0021】
有利なさらに別の形態では、保護ガスラインおよび温度制御媒体ラインは、それぞれの巻線長さの好ましくは少なくとも4分の1にわたって、最も好ましくは少なくとも3分の1にわたって、特に少なくとも2分の1にわたって、少なくとも複数の領域において外部接続されている、好ましくは半田付けされているものとする。これは、特に良好な熱伝導を好む。半田付け接続が温度制御媒体ラインと比較して裂けやすいことが好ましい場合、保護ガスラインは温度制御媒体ラインと比較して早く開かれる。
【0022】
有利なさらに別の形態では、保護ガスラインは、少なくとも複数の領域において、温度制御媒体ラインと比較して薄い肉厚を有するものとする。これによって確実に、保護ガスは焼戻し媒体の前に優先して放出される。
【0023】
有利なさらに別の形態では、保護ガスラインおよび/または温度制御媒体ラインは、遠心分離機容器に直接配置される、または少なくとも複数の領域で遠心分離機容器の壁の構成要素であるものとする。これによっても、熱伝導が特に効果的になり、設置スペースは必要であればさらに小さく維持可能である。
【0024】
有利なさらに別の形態では、保護ガス用の1つのチャネルおよび焼戻し媒体用の1つのチャネルが存在するように、マルチチャネルシステムが形成されるものとする。これによっても、熱伝導が特に効果的になり、必要であれば設置スペースをさらに小さく維持可能である。
【0025】
有利なさらに別の形態では、保護ガスの状態、好ましくは保護ガスの圧力および/または量に関する監視手段が存在し、監視手段は、保護ガスの状態に関して所定の値に到達しない場合に、各場合において使用される遠心分離機ローターの回転速度を、遠心分離機ローターの衝突について臨界でない値に制限するように適合されている、たとえば、圧力および量が所定の値を下回るものとする。これによって、十分な保護ガスを提供可能である場合、危険を伴うローター動作のみが行われることが確実になる。
【0026】
有利なさらに別の形態では、遠心分離機の動作中に、空気を筐体の内部から遠心分離機の環境内に常に案内するファンが設けられているものとする。これによって、遠心分離機内の可燃性媒体の濃度が減少し、そのため、発火しやすい混合物が形成されるリスクを低下させる。
【0027】
遠心分離機ローターの衝突の後に遠心分離機内の可燃性焼戻し媒体の発火を防止するための本発明に係る方法について、独立した保護が請求される。特に実験用遠心分離機として設計される遠心分離機は、遠心分離機ローターを収容可能な遠心分離機容器と、遠心分離機ローターを駆動するためのモーターと、遠心分離機ローターの温度を制御する温度制御手段と、遠心分離機容器、遠心分離機ローター、温度制御手段およびモーターが収容される筐体とを備え、温度制御手段は、温度制御媒体ライン内で案内される可燃性温度制御媒体を含み、この方法は、遠心分離機ローターの衝突の際に保護ガスが放出されることを特徴とする。
【0028】
有利なさらに別の形態では、本発明に係る遠心分離機が使用される。
本発明の特徴およびさらに他の利点は、図面と共に好ましい例示的な実施形態を説明することによって、以下で明らかになるであろう。図面は単に模式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る遠心分離機の斜視図である。
図2図1の本発明に係る遠心分離機を右から見た第1の部分断面図である。
図3図1の本発明に係る遠心分離機を左から見た第2の部分断面図である。
図4図2の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図4では、本発明に係る遠心分離機10がさまざまな図で単に模式的に示されている。
【0031】
遠心分離機10は、カバー14および動作前部15を有する筐体12を有する実験用遠心分離機として設計されていることが分かる。遠心分離機10の遠心分離機容器16には、遠心分離機モーター18の駆動シャフト(図示せず)上に遠心分離機ローター20が配置され、遠心分離機ローター20は、遠心分離機ビーカー22を有するスイングアウトローターとして設計されている。
【0032】
図2では、遠心分離機容器16が温度制御媒体ライン24の巻線および保護ガスライン26の巻線によって囲まれていることが分かる。(図2では、本発明が遠心分離機ローター20、20’のまさにその種類に依存しないことを示すために、遠心分離機ローター20’は固定角ローターとして示されている)。
【0033】
保護ガスライン26の2つの端部28、30は一緒にされ、それゆえ、保護ガス容器34の供給ライン32と並行に接続されている。保護ガス容器34は、大気圧より高い圧力で保護ガス、たとえば液化ガスとして、多量(たとえば、1000g)の二酸化炭素を収容する。
【0034】
保護ガス容器34から保護ガスライン26の全ての可能なポイントまでのライン長さを短く維持するために、代替として、交差接続(図示せず)によって個々の巻線36が互いに接続されていてもよい。
【0035】
圧力スイッチ38が保護ガス容器34上に配置され、この圧力スイッチは、プラグ40を介して遠心分離機10の制御システム(図示せず)に接続されている。
【0036】
温度制御媒体ライン24は(筐体12の換気スロット43の背後の)圧縮機42およびフィルタ乾燥機44に通常の態様で接続されている。
【0037】
図2ではまた、遠心分離機10は、遠心分離機ローター20’の衝突の際にその部品が遠心分離機10から外に出ることが可能になるのを防ぐように設けられた、ベースプレート46の隣の保護カバー48を有していることが分かる。それゆえ、そのような保護カバー48は、衝突エネルギーを十分吸収できるような態様で材料の観点から大きさを決められ、設計される。保護カバー48と遠心分離機容器16との間には、断熱体49が存在する。
【0038】
温度制御媒体ライン24の巻線、特に巻線部分50、52は、蒸発器を形成する。これによって、巻線部分50は保護ガスライン26の巻線36上に位置し、巻線部分52は保護ガスライン26の巻線36の隣に位置する。
【0039】
保護ガスライン26の巻線36の外装面は、半田付け接続54(図4を参照)によってそれらの上に配置された温度制御媒体ライン24の巻線部分50に外部接続され、保護ガスライン26および保護ガスライン26の隣に配置された温度制御媒体ライン24の巻線52は、遠心分離機容器16に選択的に半田付けされている(図示せず)。これによって、温度制御媒体ライン24は、遠心分離機容器16に向かう巻線50、52の全ての領域において十分な熱伝導を有し、そのため確実に、遠心分離機ローター20’およびその内部に収容された試料(図示せず)が十分積極的および間接的に焼戻しされる。その際に、半田付け接続の強度は、温度制御媒体ライン24自体がここで裂ける前に巻線部分50の領域において温度制御媒体ライン24に対する接続が裂けるようになっている。
【0040】
通常その長さがそれらの断面の直径よりはるかに大きく、任意の材料、好ましくは銅またはアルミニウムで構成された長尺中空体の形状のチューブが、温度制御媒体ライン24および保護ガスライン26として用いられる。
【0041】
これによって、保護ガスライン26と温度制御媒体ライン24とは異なる直径および/または異なる肉厚を有するようにすることができる。肉厚が薄いと、保護ガスライン26は確実に温度制御媒体ライン24よりも裂けやすくなる。直径が小さいと、保護ガスライン26は、遠心分離機容器16と温度制御媒体ライン24の巻線50との間の自由空間に配置されることになる。
【0042】
代替的に、保護ガスライン26および温度制御媒体ライン24の巻線36、50は、温度制御媒体ライン24が遠心分離機容器16に直接配置されるように、たとえばマルチチャネル解決策(図示せず)として互いに隣に平行に延在し得る。
【0043】
さらに、温度制御媒体ライン24および/または保護ガスライン26は、少なくとも部分的に遠心分離機容器16(図示せず)を形成し、これによって、必要とされる設置スペースが減少するとしてもよい。
【0044】
動作中、遠心分離機10のこのような設計は、遠心分離機ローター20の衝突の際であっても可燃性焼戻し媒体の発火を効果的に予防する。なぜなら、そのような衝突の際には、遠心分離機容器16が壊れた後で遠心分離機ローター20の構成要素が保護ガスライン26を損傷させて、保護ガスを逃がすからである。
【0045】
保護ガスは大気圧より高い圧力であるため、保護ガスは遠心分離機10の内部全体に流入し、内部の空気内の酸素に置換し、漏れている可能性のある焼戻し剤を希釈する。遠心分離機10外への生成された流れのために、発生している混合物はさらにかき混ぜられ、周囲空気でさらに希釈される。これによって、発火しやすい混合物の形成が防止される。
【0046】
この安全機能を監視するために、遠心分離機10の動作中に保護ガス容器34内の保護ガスの量および/または圧力を継続して監視する圧力モニター38が設けられている。圧力モニター38が、特定の遠心分離機10に適合させた、事前に定義された値より低い保護ガスの状態を検出する場合、遠心分離機10が遠心分離機ローター20、20’を全く始動させないように、必要であればエラーメッセージを出すような態様、または衝突が温度制御媒体ライン24を損傷させるようなエネルギーを放出できないような非臨界最高速度まで遠心分離機ローター20、20’を動作可能な態様のいずれかで、遠心分離機10の制御システム(図示せず)において介在する。この最高速度は、一連の試験で前もって決められる。
【0047】
周囲空気およびそれゆえ大気酸素が長時間置換されるように保護ガス容器34と保護ガスライン26との間のスロットル要素(図示せず)を用いて流出時間が調整され、漏れている焼戻し媒体は、漏れている保護ガスと混合され、これによって拡散される。
【0048】
DIN EN 378に係る遠心分離機10の動作中に継続して動作するファン(図示せず)を設けることによって、温度制御媒体ライン24内の漏れから発火しやすい混合物が形成されるリスクが、さらに筐体12内で回避される。
【0049】
上記の説明から、本発明が、それを用いて可燃性焼戻し媒体を焼戻しプロセスの枠内で安全上の懸念を生じることなく使用することも可能な遠心分離機10を提供することは明らかである。
【0050】
他に記載がない限り、本発明の全ての特徴は自由に組合せ得る。さらに、図面の説明で記載された特徴は、記載がない限り、本発明の特徴として他の特徴と自由に組合わせることができる。このため、遠心分離機の本質的な特徴は、方法の特徴として別の形で表現された方法の枠内でも使用可能であり、遠心分離機の枠内の方法の特徴は、遠心分離機の特徴として別の形で表現可能である。
【符号の説明】
【0051】
参照符号のリスト
10 本発明に係る遠心分離機、実験用遠心分離機
12 筐体
14 カバー
15 動作前部
16 遠心分離機容器
18 遠心分離機モーター
20 遠心分離機ローター、スイングアウトローター
20’ 遠心分離機ローター、固定角ローター
22 遠心分離機ビーカー
24 温度制御媒体ライン
26 保護ガスライン
28、30 保護ガスライン26の端部
32 保護ガス容器34の供給ライン
34 保護ガス容器
36 保護ガスライン26の巻線
38 圧力スイッチ
40 プラグ
42 圧縮機
44 フィルタ乾燥機
46 ベースプレート
48 保護カバー
49 断熱体
50 保護ガスライン26の巻線36の上方に位置する、温度制御媒体ライン24の巻線
52 保護ガスライン26の隣に配置された温度制御媒体ライン24の巻線52
54 保護ガスライン26の巻線36と温度制御媒体ライン24の巻線50との間の半田付け接続
図1
図2
図3
図4