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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ロータ・アセンブリ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
H02K1/22 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020563977
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2018120892
(87)【国際公開番号】W WO2020015287
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】201810805393.1
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517441262
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンス、インコーポレイテッド オブ チューハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フ、ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ビン
(72)【発明者】
【氏名】シ、ジンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、ヨン
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/083639(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108011459(CN,A)
【文献】特開2004-056936(JP,A)
【文献】特開2018-068090(JP,A)
【文献】特開2003-259615(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第1305069(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0108888(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0173861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ本体(1)を有するロータ・アセンブリであって、
前記ロータ本体(1)は、前記ロータ本体(1)の軸線を中心とし且つ前記ロータ本体(1)の周方向に沿って均等に配置された複数の磁極を有し、
前記磁極の各々は、導電性磁気分離材料を内部に備える充填スロット(11)を有し、前記複数の磁極の前記充填スロット(11)は、前記ロータ本体(1)の前記周方向に沿って規則的に配置され、前記ロータ本体(1)の前記周方向に沿った、前記充填スロット(11)の各々の2つの端部は、第1の側壁(111)及び第2の側壁(112)をそれぞれ有し、前記充填スロット(11)の各々の前記第1の側壁(111)及び隣接する充填スロット(11)の前記第2の側壁(112)は、互いに対して平行であり、且つ共同でq軸に平行な磁束チャンネル(12)を形成し、
前記磁極は、前記充填スロット(11)から分離されたスリット・スロット(13)を更に有し、前記充填スロット(11)は第1の充填スロット(113)を有し、
前記ロータ本体(1)の軸線に垂直な断面上で、同一の磁極において、前記スリット・スロット(13)及び前記第1の充填スロット(113)は前記ロータ本体(1)のd軸に沿って配置され、前記スリット・スロット(13)は、前記第1の充填スロット(113)と前記ロータ本体(1)の前記軸線との間に位置し、
前記ロータ本体(1)の前記軸線に垂直な前記断面上で、前記第1の充填スロット(113)及び前記スリット・スロット(13)の両方は、前記d軸を対称軸とする軸対称形状であり、
前記磁極の各々において、前記d軸に沿って間隔を空けて配置された少なくとも2つのスリット・スロット(13)が存在し、また
前記d軸に沿って、前記第1の充填スロット(113)と、隣接するスリット・スロット(13)との間の距離は、隣接する前記スリット・スロット(13)同士の間の距離よりも小さい、ロータ・アセンブリ。
【請求項2】
前記充填スロット(11)と前記ロータ本体(1)の外周壁との間に距離が存在する、請求項1に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項3】
前記磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロット(13)が存在し、隣接する前記スリット・スロット(13)同士の間の距離は、前記ロータ本体(1)の前記軸線から離れる方向に逐次減少している、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項4】
前記充填スロット(11)は、第2の充填スロット(114)を有し、
前記第2の充填スロット(114)の数は、前記スリット・スロット(13)の数の2倍であり、前記ロータ本体(1)の前記軸線に垂直な前記断面上で、2つの充填スロット(114)が、前記スリット・スロット(13)の各々の2つの端部にそれぞれ設けられ、且つ前記d軸を対称軸として互いに対して対称である、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項5】
前記磁極の各々において、前記ロータ本体(1)の前記周方向に沿った、前記第1の充填スロット(113)と、隣接する第2の充填スロット(114)との間の距離は、前記第2の充填スロット(114)の隣接する2つの間の距離よりも小さい、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項6】
前記磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロット(13)が存在し、隣接する前記スリット・スロット(13)同士の間の距離は、前記ロータ本体(1)の前記軸線から離れる方向に逐次減少しており、
前記第2の充填スロット(114)の隣接する2つの間の距離は、前記第1の充填スロット(113)から離れる方向に逐次増加している、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項7】
同一の磁極において、前記ロータ本体(1)の前記軸線に垂直な前記断面上での前記第2の充填スロット(114)の面積は、前記第1の充填スロット(113)から離れる方向に逐次増加している、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項8】
同一の磁極において、前記ロータ本体(1)の外周壁から前記スリット・スロット(13)に向かって延びる前記第2の充填スロット(114)の長さは、前記第1の充填スロット(113)から離れる方向に逐次増加している、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項9】
前記ロータ本体(1)の前記軸線に垂直な前記断面上で、前記ロータ本体(1)の前記周方向に沿った前記第1の充填スロット(113)の2つの端部を前記ロータ本体(1)の中心とそれぞれ結んだ線が角度αを形成し、また0.05τ≦α≦0.3τであり、ここでτ=180°/pであり、pは極の対の数である、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項10】
0.15τ≦α≦0.26τである、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項11】
前記ロータ本体(1)の前記軸線に垂直な前記断面上で、前記スリット・スロット(13)は、直線又は弓状の線に沿って延びている、請求項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項12】
前記ロータ・アセンブリは導電性リング(2)を更に有し、
前記導電性リング(2)は、前記ロータ本体(1)の軸線方向端部に固定的に接続され、且つ前記充填スロット(11)内に設けられた前記導電性磁気分離材料に取り付けられており、全ての前記充填スロット(11)内の前記導電性磁気分離材料は、前記導電性リング(2)を通じて導通する、請求項1から11までのいずれか一項に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項13】
前記導電性リング(2)の材料は、前記充填スロット(11)内に設けられた前記導電性磁気分離材料と同一である、請求項12に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項14】
磁気分離材料が前記スリット・スロット(13)内に設けられる、請求項13に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項15】
前記導電性リング(2)は熱放散孔(21)を有し、
前記スリット・スロット(13)は、前記ロータ本体(1)の前記軸線に沿った突出部上で前記熱放散孔(21)内に位置する、請求項14に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項16】
前記導電性リング(2)の外形は筒状であり、且つ/又は、前記熱放散孔(21)の形状は筒状である、請求項15に記載のロータ・アセンブリ。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載のロータ・アセンブリを有するモータ。
【請求項18】
前記モータは、ステータを更に有し、
前記ステータは、取り付け孔を有し、前記ロータ・アセンブリの前記ロータ本体(1)は、前記取り付け孔を貫通して、且つ前記取り付け孔と同軸に配設され、前記ロータ本体(1)の外壁と前記取り付け孔の内壁との間の距離が、前記ロータ本体(1)の径方向に沿ってHであり、また
前記ロータ本体(1)上で、前記スリット・スロット(13)の各々の2つの端部が、1つの充填スロット(114)をそれぞれ備え、前記スリット・スロット(13)から、その前記2つの端部に対応する前記第2の充填スロット(114)までの最短距離がLであり、且つH≦L≦2Hである、請求項17に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月20日付けで出願した「rotor assembly and motor」と題された出願番号201810805393.1の中国特許出願に基づき、その優先権を主張するものであり、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、モータの技術分野に関し、特にロータ・アセンブリ及びモータに関する。
【背景技術】
【0003】
直接始動同期リラクタンス・モータは、誘導モータ及び同期リラクタンス・モータの構造的特性を組み合わせ、篭形誘導によって生成されるトルクによって始動が実現され、リラクタンス・トルクはロータのインダクタンス差によって生成され、一定の速度での動作を実現するので、直接始動同期リラクタンス・モータは、電源供給装置に直接的に接続されることによって始動し、動作し得る。直接始動永久磁石モータと比べて、直接始動同期リラクタンス・モータは、いかなる希土類永久磁石材料も使用せず、消磁の問題もないので、低コストで信頼性が高い。非同期モータと比べて、直接始動同期リラクタンス・モータは効率性が高く、回転速度が一定である。
【0004】
従来の同期リラクタンス・モータは、始動及び動作制御のためにドライバを必要とし、このことは、高いコストと、制御の困難さとにつながる。加えて、ドライバは、損失の一部をもたらし、全体的なモータ・システムの効率性を低減する。
【0005】
従来技術において、特許番号CN1255925Cの特許は、安価で、始動が簡単な同期誘導モータ、並びにこの同期誘導モータの製造デバイス及び製造方法を提供している。少なくとも1ペアのスリット部分が、磁束が容易く通過する方向、すなわちq軸と、磁束の通過が難しい方向、すなわちd軸とを有する2極の磁極性突出部を形成し、これらの軸線は垂直であり、複数のスロット部分がスリット部分の周辺側に配置され、スリット部分及びスロット部分はその内部を導電材料によって充填される。スリット部分は直線的形状を有し、スロット部分は周方向において均一な間隔で径方向に配置される。
【0006】
しかしながら、この特許においては、スロット部分が均一な間隔で径方向に配置されているので、スロット部分の間の磁束が、径方向に、ロータの表面に垂直な方向に流れ、スロット部分がq軸に沿った磁束の流れをブロックしてしまい、特には、スロット部分がd軸により近くなると、q軸に沿った磁束への抵抗がより明白になる一方、d軸に沿って磁束がより円滑に流れるようになる。故に、d軸及びq軸に沿った磁束の間の差が明白でなくなり、突極比が大きくならず、結果として出力パワー及び効率性が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】CN1255925C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の主な目的は、合理的な設計を有し、低コストで、q軸に沿った磁束をより円滑にし得、d軸及びq軸に沿った磁束の間の差をより明白にし得、それによって出力パワー及び効率性を向上するロータ・アセンブリ及びモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、ロータ本体を含むロータ・アセンブリであって、
ロータ本体は、ロータ本体の軸線を中心とする、ロータ本体の周方向に沿って均等に配置された複数の磁極を含み、
磁極の各々は、導電性磁気分離材料(conductive and magnetic isolation material)を内部に備える充填スロットを含み、複数の磁極の充填スロットは、ロータ本体の周方向に沿って規則的に配置され、ロータ本体の周方向に沿った充填スロットの各々の2つの端部は、第1の側壁及び第2の側壁をそれぞれ有し、充填スロットの各々の第1の側壁及び隣接する充填スロットの第2の側壁は互いに対して平行であり、一緒にq軸に平行な磁束チャンネルを形成する、ロータ・アセンブリを提供する。
【0010】
いくつかの実施例において、充填スロットとロータ本体の外周壁との間には距離が存在する。
【0011】
いくつかの実施例において、磁極は、充填スロットから離間されたスリット・スロットを更に含み、充填スロットは第1の充填スロットを含み、
ロータ本体の軸線に垂直な断面上で、同一の磁極において、スリット・スロット及び第1の充填スロットはロータ本体のd軸に沿って配置され、スリット・スロットは、第1の充填スロットとロータ本体の軸線との間に位置する。
【0012】
いくつかの実施例において、ロータ本体の軸線に垂直な断面上で、第1の充填スロット及びスリット・スロットの両方は、d軸を対称軸とする軸対称形状である。
【0013】
いくつかの実施例において、磁極の各々において、d軸に沿って間隔を空けて配置された少なくとも2つのスリット・スロットが存在する。
【0014】
いくつかの実施例において、d軸に沿って、第1の充填スロットと隣接するスリット・スロットとの間の距離は、隣接するスリット・スロット同士の間の距離よりも小さい。
【0015】
いくつかの実施例において、磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロットが存在し、隣接するスリット・スロット同士の間の距離は、ロータ本体の軸線から離間する方向において連続的に減少する。
【0016】
いくつかの実施例において、充填スロットは第2の充填スロットを含み、
第2の充填スロットの数は、スリット・スロットの数の2倍であり、ロータ本体の軸線に垂直な断面上で、2つの充填スロットは、スリット・スロットの各々の2つの端部にそれぞれ設けられ、d軸を対称軸として互いに対して対称である。
【0017】
いくつかの実施例において、磁極の各々において、ロータ本体の周方向に沿った第1の充填スロットと隣接する第2の充填スロットとの間の距離は、第2の充填スロットのうちの隣接する2つの間の距離よりも小さい。
【0018】
いくつかの実施例において、磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロットが存在し、隣接するスリット・スロット同士の間の距離は、ロータ本体の軸線から離間する方向において連続的に減少し、
第2の充填スロットのうちの隣接する2つの間の距離は、第1の充填スロットから離間する方向において連続的に増加する。
【0019】
いくつかの実施例において、同一の磁極において、ロータ本体の軸線に垂直な断面上の第2の充填スロットの面積は、第1の充填スロットから離間する方向において連続的に増加する。
【0020】
いくつかの実施例において、同一の磁極において、ロータ本体の外周壁からスリット・スロットに向かって延在する第2の充填スロットの長さは、第1の充填スロットから離間する方向において連続的に増加する。
【0021】
いくつかの実施例において、ロータ本体の軸線に垂直な断面上で、ロータ本体の周方向に沿った第1の充填スロットの2つの端部をロータ本体の中心とそれぞれ結ぶ線は、角度αを形成し、0.05τ≦α≦0.3τであり、ここで、τ=180°/pであり、pは極のペア数である。
【0022】
いくつかの実施例において、0.15τ≦α≦0.26τである。
【0023】
いくつかの実施例において、ロータ本体の軸線に垂直な断面上で、スリット・スロットは、直線又は弓状の線に沿って延在する。
【0024】
いくつかの実施例において、ロータ・アセンブリは導電性リングを更に含み、
導電性リングは、ロータ本体の軸線方向端部に固定的に接続されるとともに、充填スロット内に備えられた導電性磁気分離材料に装着され、全ての充填スロット内の導電性磁気分離材料は、導電性リングを通じて導通する。
【0025】
いくつかの実施例において、導電性リングの材料は、充填スロット内に備えられた導電性磁気分離材料と同一である。
【0026】
いくつかの実施例において、磁気分離材料がスリット・スロット内に備えられる。
【0027】
いくつかの実施例において、導電性リングは、熱放散孔を有し、
スリット・スロットは、ロータ本体の軸線に沿った突出部上で熱放散孔内に位置する。
【0028】
いくつかの実施例において、導電性リングの外形は筒状であり、及び/又は、熱放散孔の形状は筒状である。
【0029】
本開示の別の態様は、前述のロータ・アセンブリのうちのいずれかを有するモータを提供する。
【0030】
いくつかの実施例において、モータは、ステータを更に含み、
ステータは、取り付け孔を有し、ロータ・アセンブリのロータ本体は、取り付け孔を貫通するとともにこれと同軸になるように配列され、ロータ本体の外壁と取り付け孔の内壁との間の距離は、ロータ本体の径方向に沿ってHであり、
ロータ本体上で、スリット・スロットの各々の2つの端部は、1つの充填スロットをそれぞれ備え、スリット・スロットからその2つの端部に対応する第2の充填スロットまでの最短距離はLであり、H≦L≦2Hである。
【0031】
本開示によって提供されるロータ・アセンブリは、充填スロットの第1の側壁及び隣接する充填スロットの第2の側壁が互いに対して平行であり、一緒にq軸に平行な磁束チャンネルを形成する技術的解決策を採用する。従って、設計は合理的であり、低コストで、q軸に沿った磁束がより円滑になり得、d軸及びq軸に沿った磁束の間の差がより明白になり得、それによって出力パワー及び効率性を向上する。
【0032】
ここで説明される添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために使用され、本開示の一部を構成する。本開示の例示的な実施例及びその説明は、本開示を説明するために使用されるものであり、本開示の不適当な限定となるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示のロータ・アセンブリの実施例の概略的な構造図である。
図2図1におけるロータ本体の第1の形態の端面の概略図である。
図3図1におけるロータ本体の第2の形態の端面の概略図である。
図4図1における導電性リングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図において、1:ロータ本体、11:充填スロット、111:第1の側壁、112:第2の側壁、113:第1の充填スロット、114:第2の充填スロット、12:磁束チャンネル、13:スリット・スロット、2:導電性リング、21:熱放散孔、である。
【0035】
本開示の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、本開示の技術的解決策が、本開示の特定の実施例及び対応する添付の図面と関連して明確且つ完全に説明される。説明されるものが本開示の実施例の一部にすぎず、その全てでないことは明らかである。本開示における実施例に基づいて当業者によって創造的作業なしに得られる任意の他の実施例は本開示の保護の範囲内にあるべきである。
【0036】
本開示の明細書及び特許請求の範囲並びに上記の添付の図面における「第1の」、「第2の」などの用語は、類似の物体を区別するために使用され、必ずしも特定の順番又は順序を述べるものではないことに留意されるべきである。このように使用される順番の数字は、本明細書において説明される本開示の実施例が、本明細書において示され、又は説明される順番とは異なる順番で実現され得るように、適切な状況において入れ替え可能であることが理解されるべきである。
【0037】
図1図2及び図3は、ロータ本体1を含むロータ・アセンブリを示す。
【0038】
ロータ本体1は、ロータの軸線を中心とする、ロータ本体1の周方向に沿って均等に配置された複数の磁極(不図示)を含み、磁極の各々は、導電性磁気分離材料(不図示)を内部に備える充填スロット11を含み、導電性磁気分離材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であり得るが、これらに限定されるものではない。複数の磁極の充填スロット11は、ロータ本体1の周方向に沿って規則的に配置され、ロータ本体1の周方向に沿った充填スロット11の各々の2つの端部は、第1の側壁111及び第2の側壁112をそれぞれ有し、充填スロット11の各々の第1の側壁111は隣接する充填スロット11の第2の側壁112に対して平行であり、充填スロット11の各々の第1の側壁111及び隣接する充填スロット11の第2の側壁112は一緒にq軸に平行な磁束チャンネル12を形成する。このような技術的解決策を採用することによって、設計は合理的であり、低コストで、従来技術と比べてq軸に沿った磁束がより円滑になり得、d軸及びq軸に沿った磁束の間の差がより明白になり得、それによって出力パワー及び効率性を向上する。
【0039】
実際の製造において、充填スロット11とロータ本体1の外周壁との間には距離が存在するので、導電性磁気分離材料が充填スロット11内に充填されたとき、導電性磁気分離材料がロータ本体1の外周壁からはみ出すことはなく、すなわち、導電性磁気分離材料の充填が終了したとき、ロータ本体1の外周壁は加工される必要がなく、それによって製造コストを減少させる。
【0040】
更に、図1図2及び図3において示されるように、磁極は、充填スロット11から離間されたスリット・スロット13を更に含み、充填スロット11は第1の充填スロット113を含む。ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で、同一の磁極において、スリット・スロット13及び第1の充填スロット113はロータ本体1のd軸に沿って配置され、スリット・スロット13は、第1の充填スロット113とロータ本体1の軸線との間に位置する。このようにして、ロータ本体1がスリット・スロット13を通じて熱を放散し得るように、スリット・スロット13において空気が循環する。これにおいて、図2において示されるように、ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で、スリット・スロット13は直線に沿って延在し、又は、図3において示されるように、スリット・スロット13は弓状の線に沿って延在する。
【0041】
具体的には、図2及び図3において示されるように、ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で、第1の充填スロット113及びスリット・スロット13の両方は、d軸を対称軸とする軸対称形状である。このようにして、d軸に沿った磁束をブロックするための磁気的障壁レイヤが、第1の充填スロット113とスリット・スロット13との間に形成され得、d軸に沿った磁気的抵抗を更に増加させてd軸に沿った磁束を減少させ、それによってd軸及びq軸に沿った磁束の間の差をより明白にし、モータの効率性を更に向上する。実際の製造において、図2及び図3において示されるように、ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で、ロータ本体1の周方向に沿った第1の充填スロット113の2つの端部をロータ本体1の中心とそれぞれ結ぶ線は、角度αを形成し、0.05τ≦α≦0.3τ、好ましくは0.15τ≦α≦0.26τであり、ここで、τ=180°/pであり、pは極のペアの数である。これによって、第1の充填スロット113によって形成される角度αが大きすぎて非同期トルクを小さくし、モータの始動性能が低下されるという問題を回避し得る。
【0042】
更に、図2及び図3において示されるように、磁極の各々において、d軸に沿って間隔を空けて配置された少なくとも2つのスリット・スロット13が存在する。このようにして、d軸に沿った磁束をブロックするための磁気的障壁レイヤが、隣接するスリット・スロット13の間にも形成され得、d軸に沿った磁気的抵抗を更に増加させてd軸に沿った磁束を減少させる。
【0043】
実際の製造において、スリット・スロット13は、ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で直線に沿って延在し、d軸に沿って、第1の充填スロット113と隣接するスリット・スロット13との間の距離は、隣接するスリット・スロット13同士の間の距離よりも小さい。更に、磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロット13が存在し、隣接するスリット・スロット13同士の間の距離は、d軸に沿った、ロータ本体1の軸線から離間する方向において連続的に減少し、すなわち、図2において示されるように、d6>d7>d8>d9である。このようにして、磁束チャンネルの幅は、充填スロット11間に形成される磁気チャンネルに対応し得るので、より多くの磁束がq軸に沿って円滑に流れ得、q軸のインダクタンスを増加させ得、モータの出力及び効率性を向上させる。
【0044】
実施態様のやり方において、図2及び図3において示されるように、充填スロット11は第2の充填スロット114を含み、その数は、スリット・スロット13の数の2倍である。ロータ本体1の軸線に垂直な断面上で、スリット・スロット13の各々の2つの端部は、1つの充填スロット114をそれぞれ備え、スリット・スロット13の各々の2つの端部の備えられた2つの充填スロット114は、d軸を対称軸として互いに対して対称である。
【0045】
実際の製造において、磁極の各々において、ロータ本体1の周方向に沿った第1の充填スロット113と隣接する第2の充填スロット114との間の距離は、第2の充填スロット114のうちの隣接する2つの間の距離よりも小さい。更に、磁極の各々において、少なくとも3つのスリット・スロット13が存在するとき、第2の充填スロット114のうちの隣接する2つの間の距離は、ロータ本体1の周方向に沿った、第1の充填スロット113から離間する方向において連続的に増加する。すなわち、図2及び図3において示されるように、充填スロットのうちの隣接する2つの間に形成される磁束チャンネル12の幅は、q軸から離間する方向において徐々に減少し、すなわち、d1>d2>d3>d4>d5である。q軸に沿った磁束は、磁束チャンネル12がq軸に近いほど大きく影響されるので、q軸に近い磁束チャンネル12の幅は、磁束飽和を回避しつつ、より多くの磁束が流れ込むことを可能とするようにより広く設計され、磁束をより効果的に使用し、q軸に沿ったインダクタンスを増加させ、モータの出力及び効率性を向上させる。
【0046】
その一方で、同一の磁極において、ロータ本体1の軸線に垂直な断面上の第2の充填スロット114の面積は、ロータ本体1の周方向に沿った、第1の充填スロット113から離間する方向において連続的に増加する。すなわち、第2の充填スロット114が対応するq軸により近いほど、q軸に向かって延在する長さが増加し、第2の充填スロット114の面積が増加する。逆に、第2の充填スロット114が対応するq軸から離れるほど、q軸に向かって延在する長さが減少し、第2の充填スロット114の面積が減少する。深く、狭い第2の充填スロット114は表皮効果を有し、これは、モータの始動性能の向上を助ける。同一の磁極において、ロータ本体1の外周壁からスリット・スロット13に向かって延在する第2の充填スロット114の長さは、第1の充填スロット113から離間する方向において連続的に増加する。
【0047】
実施態様のやり方において、図1において示されるように、導電性リング2が更に含まれ、ロータ本体1の軸線方向端部に固定的に接続されるとともに、充填スロット11内に備えられた導電性磁気分離材料に装着される。全ての充填スロット11内の導電性磁気分離材料は、導電性リング2を通じて導通し得、全ての充填スロット11内の導電性磁気分離材料は、非同期始動を達成する篭形を形成し得る。
【0048】
具体的には、導電性リング2の材料は、充填スロット11内に備えられた導電性磁気分離材料と同一である。ここで、導電性リング2上の材料が脱落してスリット・スロット13に入ることを防止するために、磁気分離材料(非導電性材料であってよい)がスリット・スロット13内に備えられる。
【0049】
実施態様のやり方において、図4において示されるように、導電性リング2は、熱放散孔21を有し、スリット・スロット13は、ロータ本体1の軸線に沿った突出部上で熱放散孔21内に位置する。このことは、導電性リング2がスリット・スロット13を覆うことを防止し得、それによって熱放散効果を確保する。実際の製造において、導電性リング2の外形は筒状であり得るが、これに限定されるものではなく、熱放散孔21の形状は筒状であり得るが、これに限定されるものではない。
【0050】
本開示の目的を達成するために、本開示の別の態様は、上記の実施例において説明されたロータ・アセンブリを含むモータを提供する。
【0051】
具体的には、モータは、ステータ(不図示)を更に含む。ステータは、取り付け孔を有する。ロータ・アセンブリのロータ本体1は、取り付け孔を貫通するとともにこれと同軸になるように配列され、ロータ本体1の外壁と取り付け孔の内壁との間の距離は、ロータ本体1の径方向に沿ってHである。図2を参照すると、ロータ本体1上で、スリット・スロット13の各々の2つの端部が、1つの充填スロット114をそれぞれ備えるとき、スリット・スロット13からその2つの端部に対応する第2の充填スロット114までの最短距離はLであり、H≦L≦2Hである。
【0052】
上記の実施例は、本開示が、設計が合理的で、低コストで、q軸に沿った磁束がより円滑になり得、d軸及びq軸に沿った磁束の間の差がより明白になり得、それによって出力パワー及び効率性を向上するという利点を有するようにする。
【0053】
上述されたことは、本開示の単なる実施例であり、本開示に対する限定ではない。当業者によって、本開示に対して様々な修正及び変形がなされ得る。本開示の主旨及び原理の範囲内でなされる任意の修正、等価な入れ替え、改良などは、本開示の特許請求の範囲の範囲内にあるものとされるべきである。
図1
図2
図3
図4