(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】計器内の荷電粒子の生成を確認するための方法、および関連する計器
(51)【国際特許分類】
H01J 49/02 20060101AFI20221219BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20221219BHJP
H01J 49/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01J49/02 200
H01J49/00 360
H01J49/02 500
H01J49/06
H01J49/00 310
(21)【出願番号】P 2020564799
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 US2019017445
(87)【国際公開番号】W WO2019160792
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-16
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502073946
【氏名又は名称】ビオメリュー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンゴードン, ジェームス アーサー
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/065406(WO,A1)
【文献】特開昭50-039995(JP,A)
【文献】特表2002-502084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0272289(US,A1)
【文献】特開2000-088809(JP,A)
【文献】特表平08-501407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0169137(US,A1)
【文献】米国特許第05545304(US,A)
【文献】中国実用新案第205680655(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0155497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0144916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00-49/48
G01N 27/60-27/70
G01N 27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計内の荷電粒子の生成を確認するための方法であって、
荷電粒子光学系がチャンバ内にある間、前記質量分析計の前記荷電粒子光学系への電気接続を提供することと、
前記チャンバ内に生成される荷電粒子電流に、インピーダンスを含む電気部品を結合することと、
前記荷電粒子電流に対する前記電気部品による電気的な応答を測定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記荷電粒子光学系への前記電気接続を提供することは、
前記荷電粒子光学系の隣り合うイオン光学スクリーンもしくはプレートを接地すること、または当該イオン光学スクリーンもしくはプレートに電圧を印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気部品は、前記チャンバの外にある抵抗器を備え、
前記インピーダンスは、10キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の前記抵抗器の抵抗値を含み、
前記荷電粒子光学系の隣り合うイオン光学スクリーンもしくはプレートを接地すること、または当該イオン光学スクリーンもしくはプレートに前記電圧を印加することは、
前記荷電粒子光学系の抽出プレートを接地することと、
バックバイアスプレートが前記チャンバ内にある間、および前記抵抗器が前記チャンバの外にある間、前記抵抗器の第1の側を前記荷電粒子光学系の前記バックバイアスプレートに接続することと、
電源が前記チャンバの外にある間、前記電源を前記抵抗器の第2の側に接続することと、
前記電源が前記チャンバの外にある間、前記電源を介して前記電圧を印加することと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抵抗器の前記抵抗値は、100kΩから100MΩの間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出プレートおよび前記バックバイアスプレート以外の前記荷電粒子光学系の構成要素に取り付けられたケーブルを切り離すことをさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出プレートが接地されている間、前記抵抗器の前記第1の側が前記バックバイアスプレートに、および前記抵抗器の前記第2の側が前記電源にそれぞれ接続されている間、ならびに前記電源が前記電圧を印加している間、前記チャンバ内にある試料プレートに向けて前記質量分析計のレーザーを発射して前記チャンバ内で前記荷電粒子電流を生成することをさらに含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザーを発射することは、前記試料プレート上の試料に向けて前記レーザーを発射することを含み、
前記方法は、
いかなる試料も含まない空のスライドに向けて前記レーザーを発射することと、
前記レーザーを前記空のスライドに向けて発射することによって生成される測定可能な電流が前記抵抗器を通過するかどうかを判定することと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記荷電粒子光学系の下流の荷電粒子光学装置構成要素を取り外すことをさらに含み、前記荷電粒子電流に前記電気部品を結合することは、前記下流の荷電粒子光学装置構成要素が取り外されている間に行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記質量分析計によって信号が生成されていないことを判定することをさらに含み、
前記荷電粒子光学系への前記電気接続を提供することは、前記質量分析計によって信号が生成されていないことの前記判定に応じて、前記電気接続のこれ以前の第2の状態とは異なる前記電気接続の第1の状態を提供することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記荷電粒子電流は、測定されたイオン電流を含み、
前記方法は、前記測定されたイオン電流を所定の値と比較することによって、前記チャンバ内に生成されるイオンの分量を判定することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記荷電粒子電流は、前記チャンバ内で生成された電子ビームの電流を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
結合することは、前記チャンバ内にある標的に向けて前記質量分析計のレーザーを発射して前記荷電粒子電流を生成することを含み、
前記方法は、前記荷電粒子電流に対する前記電気部品による前記電気的な応答の前記測定に応じて、前記レーザーのレーザーエネルギーおよび/またはレーザー焦点を調整することをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気接続を提供することは、前記チャンバが真空圧下にある間に行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
質量分析計内のイオン化を確認するための方法であって、
第1のプレートまたはスクリーンが真空圧下にあるチャンバ内にある間、前記質量分析計のイオン光学系の前記第1のプレートまたはスクリーンを接地することと、
第2のプレートまたはスクリーンが前記チャンバ内にある間、前記イオン光学系の前記第2のプレートまたはスクリーンに、インピーダンスを含む電気部品の第1の側を接続することと、
電源が前記チャンバの外にある間、前記電源を前記電気部品の第2の側に接続することと、
前記電源が前記チャンバの外にある間、前記電源を介して電圧を印加することと、
前記第1のプレートまたはスクリーンが接地されている間、前記電気部品の前記第1の側が第2のプレートまたはスクリーンに、および前記電気部品の前記第2の側が前記電源にそれぞれ接続されている間、ならびに前記電源が前記電圧を印加している間、前記質量分析計の試料プレートに向けて前記質量分析計のレーザーを発射することと、
前記試料プレートが前記チャンバ内にある間、前記電気部品を前記試料プレート上にある試料から生成されるイオン電流に結合することと
を含む方法。
【請求項15】
前記電気部品は、前記チャンバの外にある抵抗器を備え、
前記インピーダンスは、100キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の前記抵抗器の抵抗値を含み、
前記方法は、前記質量分析計によって信号が生成されていないことを判定することをさらに含み、
前記第1のプレートまたはスクリーンは抽出プレートを備え、
前記第2のプレートまたはスクリーンはバックバイアスプレートを備え、
前記第1の側を接地すること、および接続することは、前記質量分析計によって信号が生成されていないことの前記判定に応じて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン電流に対する前記電気部品による第1の電気的な応答を測定することと、
いかなる試料も含まない空のスライドに向けて前記レーザーを発射することと、
前記空のスライドに向けた前記レーザーの前記発射に対する前記電気部品による第2の電気的な応答を測定すること、または第2の電気的な応答がないことを検出することと
をさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン電流を所定の値と比較することによって、生成されるイオンの分量を判定することをさらに含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
チャンバであって、
第1のプレートまたはスクリーンおよび第2のプレートまたはスクリーンを備えるイオン光学系、ならびに
試料プレート
を備えるチャンバと、
前記チャンバの外にある電源と、
前記第2のプレートまたはスクリーンと前記電源との間に接続可能である電気部品と
を備え、前記電気部品は、インピーダンスを含み、前記チャンバ内に生成された荷電粒子電流を受け取るように構成される、質量分析計。
【請求項19】
前記電気部品は、前記チャンバの外にある抵抗器を備え、前記インピーダンスは、10キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の前記抵抗器の抵抗値を含む、請求項18に記載の質量分析計。
【請求項20】
前記抵抗器の第1の側が前記第2のプレートまたはスクリーンに、および前記抵抗器の第2の側が前記電源にそれぞれ接続されている間、ならびに前記電源が電圧を印加している間、前記試料プレートに向けて発射するように構成されたレーザーをさらに備え、
前記抵抗器は、前記試料プレート上にある試料から生成されるイオン電流を受け取るように構成されており、
前記抵抗器の前記抵抗値は、100kΩから100MΩの間の所定の値を含み、
前記第1のプレートまたはスクリーンは抽出プレートを備え、前記第2のプレートまたはスクリーンはバックバイアスプレートを備える、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記抽出プレートを接地に接続することが可能な短絡プラグをさらに備え、前記レーザーは、前記抽出プレートが接地されている間、前記試料プレートに向けて発射するように構成されている、請求項20に記載の質量分析計。
【請求項22】
前記抽出プレートを切り替え式に接地に接続することが可能なスイッチをさらに備え、
前記スイッチは前記チャンバの外にあり、
前記レーザーは、前記抽出プレートが接地されている間、前記試料プレートに向けて発射するように構成されている、請求項20または21に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記抵抗器を、前記バックバイアスプレートと前記電源との間に切り替え式に接続することが可能なスイッチをさらに備え、前記スイッチは前記チャンバの外にある、請求項20から22のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記イオン光学系のそらせ板部分は、前記イオン光学系から取り外し可能である、請求項18から23のいずれか一項に記載の質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年2月13日に提出された、米国仮出願第62/629,854号の利益およびその優先権を主張し、その内容は、あたかも本明細書に完全に列挙されるかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、質量分析計、および荷電粒子を生成する他の計器に関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析計は、試料をイオン化し、その後、形成されたイオンの収集物の質量電荷比を求める装置である。よく知られる質量分析計は、飛行時間型質量分析計(TOFMS)であり、この場合、イオンの質量電荷比は、イオン源から検出器まで電界の影響下でそのイオンを伝達するのに必要とされる時間の量によって求められる。TOFMSにおけるスペクトル品質は、フィールドフリードリフト領域に入るように加速する前のイオンビームの最初の状態を反映する。具体的には、同じ質量のイオンが異なる運動エネルギーを有する、および/または空間内の異なる地点から加速される結果となるいかなる要因も、スペクトル分解能の低下を招く可能性があり、またこれにより質量の精度の損失を招く可能性もある。
【0004】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)は、質量分光分析のために気相生体分子イオンを生成するのによく知られた方法である。MALDI-TOFのための遅延抽出(DE)の開発は、MALDIベースの計器に関する高解像度の分析ルーチンを作成した。DE-MALDIでは、レーザーによってトリガされるイオン化イベントと、TOF源領域への加速パルスの印加との間に短い遅延が加えられる。高速(すなわち高エネルギー)イオンは、低速イオンより遠くに移動することになり、これにより、イオン化におけるエネルギー分布を加速時の空間的分布(抽出パルスの印加より前のイオン化領域における)に変換する。
【0005】
米国特許第5,625,184号、第5,627,369号、第5,760,393号および第9,536,726号を参照されたい。またWileyら、Time-of-flight mass spectrometer with improved resolution、Review of Scientific Instruments vol.26、no.12、pp.1150-1157(2004)、M.L.Vestal、Modern MALDI time-of-flight mass spectrometry、Journal of Mass Spectrometry、vol.44、NO.3、pp.303-317(2009)、Vestalら、Resolution and mass accuracy in matrix-assisted laser desorption ionization-time-of-flight、Journal of the American Society for Mass Spectrometry、vol.9、NO.9、pp.892-911(1998)、およびVestalら、High Performance MALDI-TOF mass spectrometry for proteomics、International Journal of Mass Spectrometry、vol.268、NO.2、pp.83-92(2007)も参照されたい。これらの文献の内容は、あたかも本明細書に完全に列挙されるかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、荷電粒子の生成を確認するための方法を対象としている。計器内の荷電粒子の生成を確認するための方法は、一部の実施形態によると、荷電粒子光学系がチャンバ内にある間、計器の荷電粒子光学系への電気接続を提供することを含んでよい。方法は、チャンバ内に生成された荷電粒子電流に、インピーダンスを有する電気部品を結合することを含んでよい。さらに、方法は、荷電粒子電流に対する電気部品による電気的な応答を測定することを含んでよい。
【0007】
一部の実施形態において、荷電粒子光学系への電気接続を提供することは、荷電粒子光学系の隣り合うイオン光学スクリーンもしくはプレートを接地すること、または当該イオン光学スクリーンもしくはプレートに電圧を印加することを含んでよい。電気部品は、チャンバの外にある抵抗器であってよく、インピーダンスは、10キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の抵抗器の抵抗値であってよい。さらに、荷電粒子光学系の隣り合うイオン光学スクリーンもしくはプレートを接地すること、または当該イオン光学スクリーンもしくはプレートに電圧を印加することは、荷電粒子光学系の抽出プレートを接地することと、バックバイアスプレートがチャンバ内にある間、および抵抗器がチャンバの外にある間、抵抗器の第1の側を荷電粒子光学系のバックバイアスプレートに接続することと、電源がチャンバの外にある間、電源を抵抗器の第2の側に接続することと、電源がチャンバの外にある間、電源を介して電圧を印加することとを含んでよい。
【0008】
一部の実施形態において、抵抗器の抵抗値は、100kΩから100MΩの間であってよい。追加として、または代替として、方法は、抽出プレートおよびバックバイアスプレート以外の荷電粒子光学系の構成要素に取り付けられたケーブルを切り離すことを含んでもよい。さらに、一部の実施形態において、方法は、抽出プレートが接地されている間、抵抗器の第1の側がバックバイアスプレートに、および抵抗器の第2の側が電源にそれぞれ接続されている間、ならびに電源が電圧を印加している間、チャンバ内にある試料プレートに向けて計器のレーザーを発射してチャンバ内で荷電粒子電流を生成することを含んでよい。レーザーを発射することは、試料プレート上の試料に向けてレーザーを発射することを含んでよく、方法は、いかなる試料も含まない空のスライドに向けてレーザーを発射することと、レーザーを空のスライドに向けて発射することによって生成される測定可能な電流が抵抗器を通過するかどうかを判定することとを含んでよい。
【0009】
一部の実施形態において、方法は、荷電粒子光学系の下流の荷電粒子光学装置構成要素を取り外すことを含んでもよい。荷電粒子電流に電気部品を結合することは、下流の荷電粒子光学装置構成要素が取り外されている間に行われてよい。
【0010】
一部の実施形態において、計器は質量分析計を含んでよく、方法は、質量分析計によって信号が生成されていないことを判定することを含んでよい。さらに、荷電粒子光学系への電気接続を提供することは、質量分析計によって信号が生成されていないことの判定に応じて、電気接続のこれ以前の第2の状態とは異なる電気接続の第1の状態を提供することを含んでよい。
【0011】
一部の実施形態において、荷電粒子電流は、測定されたイオン電流であってよく、方法は、測定されたイオン電流を所定の値と比較することによって、チャンバ内に生成されるイオンの分量を判定することを含んでよい。さらに、荷電粒子電流は、チャンバ内で生成された電子ビームの電流であってよい。
【0012】
一部の実施形態において、結合することは、チャンバ内にある標的に向けて計器のレーザーを発射して荷電粒子電流を生成することを含んでよい。方法は、荷電粒子電流に対する電気部品による電気的な応答の測定に応じて、レーザーのレーザーエネルギーおよび/またはレーザー焦点を調整することを含んでよい。追加として、または代替として、電気接続を提供することは、チャンバが真空圧下にある間に行われてよい。
【0013】
計器内のイオン化を確認するための方法は、一部の実施形態によると、第1のプレートまたはスクリーンが、真空圧下にあるチャンバ内にある間、計器のイオン光学系の第1のプレートまたはスクリーンを接地することを含む。方法は、第2のプレートまたはスクリーンがチャンバ内にある間、イオン光学系の第2のプレートまたはスクリーンに、インピーダンスを有する電気部品の第1の側を接続することを含んでよい。方法は、電源がチャンバの外にある間、電源を電気部品の第2の側に接続することを含んでよい。方法は、電源がチャンバの外にある間、電源を介して電圧を印加することを含んでよい。方法は、第1のプレートまたはスクリーンが接地されている間、電気部品の第1の側が第2のプレートまたはスクリーンに、および電気部品の第2の側が電源にそれぞれ接続されている間、ならびに電源が電圧を印加している間、計器の試料プレートに向けて計器のレーザーを発射することを含んでよい。さらに、方法は、試料プレートがチャンバ内にある間、電気部品を試料プレート上にある試料から生成されるイオン電流に結合することを含んでよい。
【0014】
一部の実施形態において、計器は、質量分析計を含んでよく、電気部品は、チャンバの外にある抵抗器であってよく、インピーダンスは、100キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の抵抗器の抵抗値であってよく、方法は、質量分析計によって信号が生成されていないことを判定することを含んでよい。さらに、第1のプレートまたはスクリーンは抽出プレートであってよく、第2のプレートまたはスクリーンは、バックバイアスプレートであってよく、第1の側を接地すること、および接続することは、質量分析計によって信号が生成されていないことの判定に応じて行われてよい。
【0015】
一部の実施形態において、方法は、イオン電流に対する電気部品による第1の電気的な応答を測定することを含んでよい。方法は、いかなる試料も含まない空のスライドに向けてレーザーを発射することを含んでよい。さらに、方法は、空のスライドに向けたレーザーの発射に対する電気部品による第2の電気的な応答を測定すること、または第2の電気的な応答がないことを検出することを含んでよい。追加として、または代替として、方法は、イオン電流を所定の値と比較することによって、生成されるイオンの分量を判定することを含んでもよい。
【0016】
計器は、一部の実施形態によると、第1のプレートまたはスクリーンおよび第2のプレートまたはスクリーンを含むイオン光学系を含むチャンバを含んでよい。チャンバはまた、試料プレートを含んでもよい。計器は、チャンバの外にある電源と、第2のプレートまたはスクリーンと電源との間に接続可能である電気部品とを含んでもよい。電気部品は、インピーダンスを有してよく、チャンバ内に生成された荷電粒子電流を受け取るように構成されてよい。
【0017】
一部の実施形態において、計器は、質量分析計を含んでよく、電気部品は、チャンバの外にある抵抗器であってよく、インピーダンスは、10キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間の抵抗器の抵抗値であってよい。追加として、または代替として、イオン光学系のそらせ板部分が、イオン光学系から取り外されてもよい。
【0018】
一部の実施形態において、計器は、抵抗器の第1の側が第2のプレートまたはスクリーンに、および抵抗器の第2の側が電源にそれぞれ接続されている間、ならびに電源が電圧を印加している間、試料プレートに向けて発射するように構成されたレーザーを含んでよい。抵抗器は、試料プレート上にある試料から生成されるイオン電流を受け取るように構成されてよい。抵抗器の抵抗値は、100kΩから100MΩの間の所定の値であってよい。さらに、第1のプレートまたはスクリーンは抽出プレートであってよく、第2のプレートまたはスクリーンはバックバイアスプレートであってよい。
【0019】
一部の実施形態において、計器は、抽出プレートを接地に接続することが可能な短絡プラグを含んでよい。レーザーは、抽出プレートが接地されている間、試料プレートに向けて発射するように構成されてよい。追加として、または代替として、計器は、抽出プレートを切り替え式に接地に接続することが可能なスイッチを含んでよい。スイッチはチャンバの外にあってよく、レーザーは、抽出プレートが接地されている間、試料プレートに向けて発射するように構成されてよい。さらに、計器はスイッチを含んでよく、スイッチはチャンバの外にあり、これによって、抵抗器を、バックバイアスプレートと電源との間に切り替え式に接続することが可能である。
【0020】
本発明の別の特徴、利点および詳細は、以下に続く図面および一例の実施形態の詳細な説明を読むことで当業者によって理解されると思われ、そのような説明は、本発明の単なる例示である。
【0021】
一実施形態に関して説明される本発明の態様は、異なる実施形態に組み込まれる場合もあるが、それに対しては具体的に説明されていないことに留意されたい。すなわち、すべての実施形態および/または任意の実施形態の特徴は、何らかの方法で組み合わせることができる、および/または何らかの組合せであり得る。出願人は、最初に提出されたクレームを変更する、またはそれに応じて何らかの新たなクレームを提出する権利を保有しており、そこには、そのような方法で最初はクレーム請求していないが、何らかの他のクレームの任意の特徴に従属する、および/またはそのような特徴を組み込むようにいずれの最初に提出したクレームを補正することができる権利も含まれている。本発明のこのような、および他の目的および/または態様は、以下に記載される明細書に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の実施形態による、計器の斜視図である。
【
図1B】本発明の実施形態による、計器と、光源との斜視図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、計器と、光源との概略図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、
図2Aのチャンバのブロック図である。
【
図2C】本発明の実施形態による、
図2Aの計器のプロセッサ制御システムのブロック図である。
【
図2D】本発明の実施形態に従って使用され得る一例のプロセッサと、メモリとのブロック図である。
【
図3A-3E】本発明の実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのチャンバのイオン光学系に結合された外部抵抗器の概略図である。
【
図4A-4E】本発明の実施形態による、計器内のイオン化または他の荷電粒子の生成を確認するための一例の方法のフローチャートである。
【
図5A】本発明の実施形態による、空のスライドに対する計器の発射のためのオシロスコープトレースのグラフである。
【
図5B】本発明の実施形態による、試料スライドに対する計器の発射のためのオシロスコープトレースのグラフである。
【
図6】本発明の実施形態による、
図2Aおよび
図2Bのチャンバの内部の一部の区域の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態による、レーザーエネルギーおよび/またはレーザー集束の較正のためにプロセッサおよびレーザー源に接続された抵抗器のブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態による、レーザーエネルギーおよび/またはレーザー集束の較正のための一例の方法のフローチャートである。
【
図9A】本発明の実施形態による、計器と共に使用することができるSafe High Voltage(SHV)フィードスルーの図である。
【
図9B】本発明の実施形態による、計器と共に使用することができるSHVパッチケーブルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は次に、添付の図面を参照して、以下でより完全に説明され、図面では、本発明の例示の実施形態が示されている。同様の数字は、同様の要素を指しており、同様の要素の異なる実施形態は、上付き文字の指標となるアポストロフィの異なる数字(例えば10、10’、10’’、10’’’)を使用して示すことができる。
【0024】
質量分析計器/システムの組立中、例えばMALDIプロセスによるイオン化の発生を確認するための診断機能を有することが有利な場合がある。本発明の実施形態によると、そのような診断機能は、計器/システムの既存のイオン光学装置を電荷収集プレートとして使用することによって実現されてよい。さらに、外部の直流(DC)電源を使用して、イオン光学装置のプレートの1つにバイアスをかける場合もある。
【0025】
図1Aおよび
図1Bは、質量分析計10Mなどの一例の計器10を例示する。
図1Aに示されるように、計器10は、ユーザインターフェースを備えたディスプレイ10dを有する前面壁10fを備えた筐体10hを含む。筐体10hはまた、スライドを受け入れるようにサイズが決められ、そのように構成され得る少なくとも1つの試料標本の入り口10pも有する。1つまたは複数の出入り口10pが使用されてよい。各出入り口10pは、分析のための標本スライド(例えば
図2Aの試料プレート230)の入り口のみとして、出口のみとして、または入り口と出口の両方として構成される場合がある。
【0026】
図1Bに示されるように、計器10は、本発明の実施形態によって、少なくとも1つの光源20を使用してよい。一部の実施形態において、計器10は、質量分析計10Mであってよく、筐体10hは、質量分析計10Mのためのスライドを受け入れるように構成された少なくとも1つの試料標本入り口10pを含んでよい。例えば質量分析計10Mは、テーブル30によって示されるように、卓上型の質量分析計であってもよい。さらに計器10の1つまたは複数の部分は、真空ポンプ60を介して所望の圧力になるように空気が注入される/空気が汲み出されてもよい。真空ポンプ60および/または光源20は、筐体10hに(例えばその内部に)搭載されてよい、または計器10に対する外部の差し込み式の構成要素として設けられる場合もある。
【0027】
少なくとも1つの光源20は、計器10の内部でイオンを生成するために光を提供することができる。例えば、光源20は、計器10にレーザー光を供給するレーザー20LSを備えてよい。一例として、レーザー20LSは、320ナノメートル(nm)を超える波長を有する紫外線(UV)レーザーなどの固体レーザーであってもよい。一部の実施形態において、固体レーザー20LSは、およそ347nmからおよそ360nmの波長でレーザービームを生成することができる。固体レーザー20LSは、代替として、赤外線レーザーまたは可視光レーザーである場合もある。
【0028】
さらに、用語「光源」および「レーザー」が本明細書の実施例を考察するために使用されるが、光源20は、計器10の内部の標的/装置に光/エネルギーを供給することによって、計器10の内部に荷電粒子を生成する任意のタイプの供給源を備えてもよい。例えば光源20は、計器10内で試料プレート230(
図2A)に種々のタイプの光/エネルギーのパルスの1つを提供して荷電粒子のパルスを生成するように構成されてよい。一部の実施形態において、光源20および試料プレート230は、光源20からの光が試料プレート230に向けられてイオンを生成し得るとき、まとめて(またはさらには個別でも)「イオン源」と呼ばれる場合もある。
【0029】
図2Aは、計器10と、光源20との概略図を示す。計器10は、チャンバ210を含んでおり、これは、「取得チャンバ」、「プロセスチャンバ」、「真空チャンバ」、「減圧下のチャンバ」または「真空のチャンバ」であってよい。チャンバ210の内部には、試料プレート230(または他の標的230T)と、イオン光学系220とがあり、これは、本明細書では、「イオン光学装置」または「イオン光学組立体」と呼ばれる場合もある。
【0030】
イオン光学系220は、光源20から光/エネルギー20Lを受け取り、光/エネルギー20Lを試料プレート230に誘導するように構成されてよい。光/エネルギー20Lは、試料プレート230にイオン電流230Cを生成させることができ、このイオン電流は、イオン光学系220を通過し、フライト管240を通り、検出器250へと進む。イオン電流230Cは、計器10内のイオン化を確認するために診断方法/方式の一部として測定されてよい。したがって、明細書で使用される際、用語「診断」は、患者に対してではなく、計器10に対する診断を指す。
【0031】
イオン電流230Cに加えて、計器10は、一部の実施形態において、光子源260から検出器250に光子260Pを提供する。
図2Aに示されるように、試料プレート230は、取得チャンバ210の第1の端部210Eに隣接してよい。取得チャンバ210の第1の端部210Eおよび検出器250の第2の端部250Eは、計器10の反対の位置にある端部/部分であってよい。
【0032】
図2Bは、
図2Aのチャンバ210のブロック図を示している。チャンバ210の内部のイオン光学系220は、抽出プレート221と、バックバイアスプレート222とを含んでよい。さらに、イオン光学系220は、そらせ板プレート223を含んでもよい。一部の実施形態において、そらせ板プレート223は、イオン光学系220から省略されるか、または取り外される場合もある。
【0033】
チャンバ210の外には、抵抗器201と、電源202がある。抵抗器201は、バックバイアスプレート222と電源202との間に接続可能である(例えばそこに切り替え式に結合される)。一例として、抵抗器201の第1の側/端部はバックバイアスプレート222に、および抵抗器201の第2の側/端部は電源202にそれぞれ接続されてよい。抵抗器201が、試料プレート230上の試料から生成されるイオン電流230Cを受け取るように構成されるように、抵抗器201の抵抗値は、10キロオーム(kΩ)から100メガオーム(MΩ)の間であってよい。したがって、本明細書に記載される測定される電流は、抵抗器201を通過するイオン電流230Cである。チャンバ210の内部でのイオン生成は、抵抗器201の両端にかかる電圧および電流の変化を生じさせるため、例えば、イオン電流230Cは、イオン電流230Cが抵抗器201を通過する際、抵抗器201の両端にかかる電圧応答を測定することによって測定されてよい。さらに、電源202は、試料プレート230と抵抗器201との間に接続可能であってよい。
【0034】
本明細書の一部の例は、試料プレート230上にある試料を記載するが、光20Lは一部の実施形態において、試料プレート230の代わりにテストプレートまたは他の標的230Tに向けられる場合もある。追加として、または代替として、抵抗器201、電源202およびイオン光学系220の組合せ/結合は、一部の実施形態において、診断システムなどの「システム」と呼ばれる場合もある。さらに抵抗器201は、真空チャンバ210の外部にあり、抵抗器201は典型的には大気圧である。しかしながら一部の実施形態において、抵抗器201は、真空チャンバ210の内部にある場合もある。追加として、または代替として、抵抗器201は、インピーダンスを有する電気部品の単なる一例であるため、インピーダンスを有するいずれの電気部品(例えばインダクタまたはコンデンサ)も抵抗器201の代わりに使用することができる。
【0035】
図2Cは、プロセッサ制御システム270Cのブロック図を示す。プロセッサ制御システム270Cは、1つまたは複数のプロセッサ270を含んでよく、これらは、光源20、抵抗器201、検出器250および/または光子源260と通信するように構成されてよい。例えば光源20および/または光子源260の動作は、プロセッサ(複数可)270の制御の下で行われてよい。また、抵抗器201からの信号(例えば抵抗器201に結合されたプローブを介して提供される信号)は、抵抗器201を通過するイオン電流230Cを測定するためにプロセッサ(複数可)270によって処理されてよい。さらに、イオンおよび/または光子260Cを受け取ったことに応じて検出器250によって生成されるデータは、処理のためにプロセッサ(複数可)270に提供されてよい。プロセッサ(複数可)270は、計器10の内部および/または外部にあってよい。
【0036】
図2Dは、本発明の種々の実施形態に従って使用され得る一例のプロセッサ270と、メモリとのブロック図を示す。プロセッサ270は、アドレス/データバス290を介してメモリ280と通信する。プロセッサ270は、例えば市販のプロセッサ、またはカスタムマイクロプロセッサであってよい。さらにプロセッサ270は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ280は、本明細書に記載されるような種々の機能を果たすのに使用させるソフトウェアおよびデータを含むメモリデバイスの総体的な階層を表している。メモリ280は、限定するものではないが、以下のタイプのデバイス、すなわちキャッシュ、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュ、スタティックRAM(SRAM)およびダイナミックRAM(DRAM)を含んでもよい。
【0037】
図2Dに示されるように、メモリ280は、オペレーティングシステム283などのソフトウェアおよびデータの様々なカテゴリを保持してよい。オペレーティングシステム283は、計器10の動作を制御することができる。詳細には、オペレーティングシステム283は、計器10のリソースを管理してもよく、プロセッサ270によって種々のプログラムの実施を調整してもよい。
【0038】
図3A~
図3Eは、
図2Aおよび
図2Bのイオン光学系220に結合された抵抗器201の概略図を示す。
図3Aを参照すると、抵抗器201の第1の側は、イオン光学系220のバックバイアスプレート222に接続され、抵抗器201の第2の側は電源202に接続される。
図2Bに関して考察したように、バックバイアスプレート222は、チャンバ210の内部にあるのに対して、抵抗器201および電源202は、チャンバ210の外にある。試料プレート230もまた、チャンバ210の内部にあり、バックバイアスプレート222に向かって流れるイオン230Iを生成する。このイオン230Iの流れは、イオン電流230Cと本明細書で呼ばれる場合もある。
【0039】
イオン光学系220の抽出プレート221は、接地(すなわち接地電位)GNDに接続されてよい。詳細には、
図3Aは、抽出プレート221が接地GNDに接続されているときのイオンの挙動を例示している。電界方向の逆転は、反対方向/逆方向の速度を提供するのではなく、ゼロに近い速度までのイオンの減速を生じさせてよい。抽出プレート221が代わりに電源に接続された場合、それは、バックバイアスプレート222へのイオンの移動を実現することができ、バックバイアスプレート222が同様に、「荷電収集プレート」と本明細書で呼ばれる場合もある。
【0040】
試料プレート230は、接地GNDと電源202に同時に接続されてよく、電源は、およそ1000ボルト(V)未満の電圧を供給するように構成されてよい。例えば電源202は、およそ200Vの電圧を供給するように構成されてよい。しかしながら、およそ30Vからおよそ1000Vの間のいずれの電圧も供給され得る。試料プレート230は、試料プレート230の表面上の導電性コーティングにより、所与の時間において単一の電圧であってよい。接地GND(0V)の意義は、電圧源202の他方の端部に対してその電圧を基準とすることである。
【0041】
図3Bを参照すると、抵抗器201は、電流表示抵抗器(CVR)として機能し得る。オームの法則に基づいて、抵抗器201の両端にかかる電圧201Vは、電流の大きさに依存する。単一のイオン化イベントの間に小さい電流しか生成されるとき、抵抗器201の抵抗値は、電圧201Vの応答を測定し易くするために十分に大きくなくてはならない。しかしながら抵抗値は、測定された電圧201Vが、バックバイアスプレート222にバイアスをかけるのに使用される電源202を含め、テスト機器を損傷させないように十分に小さくなくてはならない。したがって、およそ10kΩからおよそ100MΩまでの抵抗値が、抵抗器201にとって適切である。例えば抵抗器201は、およそ1MΩの抵抗値を有してよい。一部の実施形態において、抵抗値は、およそ100kΩからおよそ100MΩの間であってよい。さらに、測定されたCVR電圧201Vの十分な信号フィルタリング、処理、および増幅が与えられたとすると、100kΩより低い抵抗値ですら使用される場合がある。したがって、およそ10kΩほどの低い抵抗値が一部の実施形態において使用され得る。抵抗値は、既知の/所定の値であってよい。
【0042】
図3Bはまた、抵抗器201の両端にかかるCVR電圧201Vを測定するのに使用することができるプローブ310を例示している。各プローブ310は、抵抗と静電容量とを有してよい。例えば各プローブ310は、10MΩの抵抗と、11ピコファラド(pF)の静電容量とを有してよい。
【0043】
さらに、試料プレート230からバックバイアスプレート222に提供されるイオン電流230Cは、時間依存性のイオンビーム電流230C’であってよい。また、
図3Bは、時間依存性のイオンビーム電流230C’が生成され、CVR電圧201Vが測定される際、チャンバ210の圧力状態210Sは真空状態にあり得ることも示している。チャンバ210の通気作業は、通気の後に真空圧に戻すために何時間もの空気を押し出す時間が生じることになり得るため、チャンバ210を通気することなく、本明細書に記載される電流/電圧測定(複数可)を実行することは有利であり得る。真空で動作することの別の(およびより重要である可能性がある)理由は、より高い圧力ではイオン230Iの減少した平均自由行路により、イオン230Iが荷電収集プレートに到達しない場合があるためである。さらに、一部の実施形態において、電流/電圧測定(複数可)は、イオン光学系220とは別個のプレートまたは他のハードウェアを用いて行われる場合もある。電流/電圧測定(複数可)は、計器の診断のために使用されてよいが、電流/電圧測定(複数可)は、追加として、または代替として、レーザーエネルギーの調整または焦点などの、較正目的のために使用される場合もある。
【0044】
図3Cを参照すると、チャンバ210の外の一例の電気接続が例示されている。接続はチャンバ210の外にあるため、大幅なハードウェアを追加することなく、計器10のために本明細書に記載される診断モード(複数可)/方法(複数可)を提供することが可能である。例えば、スイッチ221Sおよび222Sは、チャンバ210の外側に示されている。スイッチ221Sおよび222Sは、中継スイッチまたは他のスイッチであってもよく、チャンバ210の内部のプレートをチャンバ210の外側の電源または接地(GND)に接続するのに使用されてよい。一例として、
図3Cは、スイッチ221Sが、抽出プレート221が接地GNDに接続されるか、または3~5キロボルト(kV)のパルス式電源であり得るパルス式電源330に接続されるかどうか(例えば選択的に接続するか)を選択することを例示している。さらに、スイッチ222Sは、バックバイアスプレート222が抵抗器201に接続されるか、または30~100Vの電源であり得る第3の電源320に接続されるかどうかを選択する。したがって、チャンバ210の内部の抽出プレート221およびバックバイアスプレート222は、本明細書では、スイッチ221Sおよび222Sを介して、チャンバ210の外側の電源または接地GNDにそれぞれ「切り替え式に接続可能」であるように表されてよい。
【0045】
図3Cは、抵抗器201を電源202に接続するかどうかを選択するスイッチ201Sもさらに例示している。抵抗器201から切り離される際、電源202は代わりに検出器250に接続されてよい。例えば、計器10が、診断モードではなく、標準モード(例えば試料の分析モード)で動作しているとき、スイッチ201Sおよび222Sは、抵抗器201のそれぞれの端部を電源202およびバックバイアスプレート222から切り離してよい。したがって、抵抗器201は、本明細書では、スイッチ222Sおよび/またはスイッチ201Sによってバックバイアスプレート222と電源202との間で「切り替え式に接続可能である」と表されてよい。
【0046】
CVR電圧201Vは、スイッチ201Sおよび/またはスイッチ222Sが抵抗器201をバックバイアスプレート222と電源202との間に接続する際に測定されてよい。例えばCVR電圧201Vは、外部のオシロスコープを介して(例えば
図3Bのプローブ310を用いて)測定されてよい、または計器10の内部の内部デジタイザ(例えば質量分析計10Mの内部のデジタイザ)に迂回させてもよい。さらに、スイッチ201S、221Sおよび222Sの動作は、
図2Cおよび
図2Dの1つまたは複数のプロセッサ270によって制御されてよい。
【0047】
図3Dを参照すると、抽出プレート221は、
図3Aおよび
図3Bに示されるように接地GNDに接続される代わりに、電源340に接続されてよい。電源340は、抽出プレート221に電圧を印加して、抽出プレート221からバックバイアスプレート222にイオン221Iを伝達するように構成されている。イオン221Iは、試料プレート230から、バックバイアスプレート222にある開口を通って進むことによって抽出プレート221に到達したイオン230Iのうちの1つであってよい。したがって、電源340によって印加される電圧は、イオン221Iをバックバイアスプレート222へと戻すことができる。一部の実施形態において、電源340によって印加される電圧は、電源202によってバックバイアスプレート222に供給される電圧に対して大きさは等しく、極性は反対であってよい。これにより、バックバイアスプレート222上に収集される電流がわずかに増加することが可能になり、これにより抵抗器201の両端にかかる電圧応答をより検出し易くすることができる。
【0048】
例えば、
図3Cに関して本明細書で考察したように、抵抗器201の両端にかかるCVR電圧201Vは、外部のオシロスコープを介して測定されてよいか、または計器内の内部のデジタイザに迂回させてもよい。電源340および抵抗器201は、抽出プレート221を含むチャンバ210の外にある。したがって、電源340が抽出プレート221に電圧を印加している間のCVR電圧201Vの測定は、一部の実施形態において、チャンバ210の内部への、切り替え式および/または手動の/解放可能な接続によってチャンバ210の外のハードウェアを介して行われてもよい。
【0049】
図3Eを参照すると、電源350が抽出プレート221に接続されることで、バックバイアスプレート222に
図3Dのイオン221Iを伝達してよい。一部の実施形態において、電源350は、およそ30Vからおよそ500Vの範囲の電圧を供給してよい。さらに、一部の実施形態において、抽出プレート221およびバックバイアスプレート222は、電源350に切り替え式に接続可能であってよい。例えば、スイッチ221Sおよび222Sは、抽出プレート221およびバックバイアスプレート222をそれぞれ電源350に接続するかどうかを選択してよい。計器10が試料を分析している間、抽出プレート221は、パルス式電源330に接続されてよく、バックバイアスプレート222は、電源350に接続されてよい。一方、計器10が診断方法を実施している間、抽出プレート221は、電源350に接続されてよく、バックバイアスプレート222は、抵抗器201に接続されてよい。
【0050】
一部の実施形態において、測定されたイオン電流230Cは、所定の閾値イオン電流値と比較されてよい。例えば計器10が、質量スペクトル生成に適した所定の閾値イオン電流値を有する場合、本明細書に記載される診断方法(複数可)の応答を使用してイオン化を確認/設定することができる。一例として、MALDIイオン化の場合、レーザーパルスエネルギーは固定されてよく、レーザースポットサイズは、所定の閾値イオン電流値が抵抗器201を介して検出されるまで変更されてよい、またはその逆も同様である。
【0051】
本明細書に記載される方法(複数可)は、質量分析計に対して使用されてよい。しかしながら、イオンビームまたは電子ビームの加速のために荷電粒子光学装置を用いるいかなるシステム/計器もこの方法(複数可)を使用してよい。そのようなシステム/計器には、中でもとりわけ、電子顕微鏡、プラズマ推進機、X線発生器、医学的治療のためのイオンビームおよび半導体製造のためのイオン注入が含まれてよい。したがって、用語「荷電粒子光学系」は本明細書で使用される際、イオンの光学系に限定されるわけではない。同様に本明細書に記載される計器10は、「荷電粒子電流」を測定してよく、これはイオン電流の測定に限定されるわけではない。また、測定(複数可)は、「荷電粒子の生成」を確認するために行われてよく、これは、イオン化の確認に限定されるわけではない。さらに、電子ビーム利用について、イオン利用に関して本明細書に記載される電圧の極性は逆になるであろう。
【0052】
図4A~
図4Eは、計器10内でのイオン化または他の荷電粒子の生成を確認するための方法のフローチャートを例示している。一部の実施形態において、
図2Dのメモリ280は、プロセッサ270によって実行される際、プロセッサ270に、
図4A~
図4Eのいずれかの方法(複数可)を実行させるコンピュータ可読プログラムコードを中に含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であってよい。
【0053】
図4Aを参照すると、方法は、イオン光学系220を提供する/再構成する(ブロック411)ことで、計器10のチャンバ210の内部のイオン電流230Cを測定することができること(例えば真空チャンバ210の外の抵抗器201を介して測定される)を含んでよい。
図4Aに示される方法は、その後イオン電流230Cが測定可能であるかどうかを判定すること(ブロック412)を含んでよい。したがって計器10におけるイオン化は、ブロック411および412の動作に基づいて確認されてよい。
【0054】
さらに、イオン電流230Cが測定可能である場合(ブロック412)、方法は、イオン230Iが検出器250に到達しているかどうかを判定する(ブロック420)ことを含んでよい。一方でイオン電流230Cが測定不能な場合(ブロック412)、イオン化機構(複数可)のトラブルシューティングが行われるべきである(ブロック413)。
【0055】
イオン230Iが検出器250に到達している場合(ブロック420)、方法は、検出器250が適切に動作しているかどうかを判定すること(ブロック430)を含んでよい。一方でイオン230Iが検出器250に到達していない場合、またはその到着が不確実である場合(ブロック420)、イオン230Iの経路に沿った地点でイオン電流230Cを繰り返し測定するために、イオン光学系220が提供される/再構成されてよい(ブロック421)。
【0056】
方法はその後、それが検出器250に到達すべき測定可能なイオン電流230Cを検出するかどうかを判定すること(ブロック422)を含んでよい。そうであるならば、方法は、検出器250が適切に動作しているかどうかを判定すること(ブロック430)を含んでよい。一方で、方法が、検出器250に到達すべき測定可能なイオン電流230Cを検出しない場合(ブロック422)、電圧、機械組立体、および/またはイオン光学系220の設置のトラブルシューティングが行われる(ブロック423)べきである。
【0057】
検出器250が適切に動作している場合(ブロック430)、イオン230Iの経路が適切であると判定されてよい(ブロック440)。さらに、一部の実施形態において、電子機器のトラブルシューティングおよび/または真空のトラブルシューティングを含めた、システム/計器10の他のエリアのトラブルシューティングが行われる場合もある。一方で検出器250が適切に動作していない、または動作が適切であることが不確実である場合(ブロック430)、方法は、UV発光ダイオード(LED)をパルス式動作でオンにすることを含んでよい(ブロック433)。UV LEDをオンにする(ブロック433)前に、方法は、UV LEDが設置されているかどうかを判定すること(ブロック431)を含んでよい。設置されていない場合、UV LEDが設置されてよい(ブロック432)。一部の実施形態において、UV LEDは、
図2Aの光子源260であってよい。
【0058】
UV LEDをオンにした(ブロック433)後、方法は、UV LEDがパルスを出す間、検出器250の信号がパルス状であるかどうかを判定する(ブロック434)ことを含んでよい。そうであるならば、方法は、例えば信号ゲインを閾値信号ゲイン値と比較することによるなどして、検出器250の信号ゲインが予想通りであるかどうかを判定する(ブロック436)を含んでよい。一方で、UV LEDがパルスを出す間、検出器250の信号がパルス状ではない場合(ブロック434)、検出器250のトラブルシューティングが行われてよい(ブロック435)。
【0059】
閾値信号ゲイン値を下回ることによるなど、検出器250の信号ゲインが予測通りでない場合(ブロック436)、方法は、検出器250のゲインを調整すること(ブロック437)を含んでよい。例えば、方法は、(例えばダイオード電流を変えることによって)UV LEDの出力パワーを変えることを含んでよく、その後、測定された応答に基づいて検出器250のゲインを調整してもよい。一方で、検出器250の信号ゲインが予想通りである場合(ブロック436)、動作は、ブロック440に進んでよく、これは本明細書で上記で説明している。
【0060】
再びブロック411を参照すると、イオン光学系220の提供/再構成は、イオン230Iが生成されていないこと、またはその生成が不確実であることの判定(ブロック410)に応じて行われてよい。一方で、イオン230Iが生成されていることが判定された場合(ブロック410)、方法は、イオン230Iが検出器250に到達しているかどうかの判定(ブロック420)に直接進んでよく、ブロック411および412の動作は省略されてもよい。さらに、一部の実施形態において、計器10は、質量分析計10Mであってよく、ブロック410、411および/または412の動作(複数可)は、質量分析計10Mによって信号が生成されていないことの判定(ブロック405)に応じて行われてもよい。
【0061】
図4Bを参照すると、本明細書で記載される方法(複数可)は、イオン化に限定されるわけではない。例えば
図4Aのブロック411および412の動作は、
図4Bのブロック411’および412’によって示されているように、様々なタイプの荷電粒子に関して行われてよい。詳細には、
図4Bは、荷電粒子光学系220が真空圧にある/真空圧下にある真空チャンバ210内にある間、計器10の荷電粒子光学系220への電気接続を提供する/再構成すること(ブロック411’)を含む方法を示している。一部の実施形態において、ブロック411’の提供する/再構成する動作(複数可)は、スイッチ201S、221Sおよび222Sのうちの1つまたは複数を介してこの方法によって自動的に行われてよい。追加として、または代替として、1つまたは複数の電気接続は、抽出プレート221を接地GNDに接続することができる短絡ケーブル/プラグを手動で接続することによって、および/または1つもしくは複数のケーブル/プラグを手動で切り離すことによってなど、手動で提供される/再構成されてもよい。
【0062】
ブロック411’の提供する/再構成する動作(複数可)の後、方法は、真空チャンバ210の外にある抵抗器201を真空チャンバ210内で生成される荷電粒子電流230Cに結合すること(ブロック412’)によって計器10内での荷電粒子の生成を確認してよい。ブロック412’の動作(複数可)はまた、荷電粒子電流230Cに対する抵抗器201による電気的な応答を測定することを含んでもよい。詳細には、抵抗器201を通過する荷電粒子電流230Cは、測定することができる電圧201V応答を提供する。荷電粒子電流230Cの値はその後、オームの法則を用いて判定されてよい。さらに、
図2Bに関して本明細書に記載したように、抵抗器201の抵抗値は、10kΩから100MΩであってよい。
【0063】
図4Bの動作は、チャンバ210が真空内/真空圧下にある間に行われるように限定されていない。むしろ一部の実施形態において、方法は、システムを通気すること、大気圧で電気接続を作成すること、およびその後システムから空気を押し出した後、テストする/測定することを含んでもよい。
【0064】
図4Cを参照すると、
図4Bのブロック411’の提供する/再構成する動作(複数可)は、複数の動作を含んでもよい。例えば、荷電粒子光学系220に電気接続を提供する/再構成する(ブロック411’)ことは、荷電粒子光学系220の隣り合うイオン光学スクリーンもしくはプレートを接地すること、または当該イオン光学スクリーンもしくはプレートに電圧を印加することを含んでもよい。一例として、提供する/再構成する動作は、抽出プレート221が真空チャンバ210内にある間、荷電粒子光学系220の抽出プレート221を接地すること(ブロック411’-2)を含んでもよい。提供する/再構成する動作はまた、バックバイアスプレート222が真空チャンバ210内にある間、および抵抗器201が真空チャンバ210の外にある間、抵抗器201の第1の側を荷電粒子光学系220のバックバイアスプレート222に接続すること(ブロック411’-3)を含んでもよい。さらに提供する/再構成する動作は、電源202が真空チャンバ210の外にある間、電源202を抵抗器201の第2の側に接続すること(ブロック411’-4)を含んでもよい。
【0065】
ブロック411’-2、ブロック411’-3およびブロック411’-4の動作は、任意の順序で行うことができ、その後、方法は、電源202が真空チャンバ210の外にある間、電源202を介して電圧を印加すること(ブロック411’-5)を含んでよい。方法が電圧を印加する(ブロック411’-5)より前、ブロック411’の提供する/再構成する動作は、抽出プレート221およびバックバイアスプレート222以外の荷電粒子光学系220の構成要素に取り付けられたケーブルを切り離すこと(ブロック411’-1)を含んでよい。ブロック411’-1の切り離しは、一部の実施形態において、チャンバ210を真空圧内に置く、または真空圧下に置く前に行われてよい。追加として、または代替として、構成要素(例えば1つまたは複数の下流の荷電粒子光学装置構成要素)が、荷電粒子光学系220から取り外されてもよい。例えば、荷電粒子光学系220のそらせ板部分/構成要素(例えばそらせ板プレート223)が取り外されてもよく、荷電粒子電流230Cは、そらせ板プレート223がない間に測定されてもよい。
【0066】
一部の実施形態において、ブロック411’の提供する/再構成する動作(複数可)は、ブロック411’-1、ブロック411’-2、ブロック411’-3およびブロック411’-4の動作のうちの1つまたは複数を実行することなどによって、荷電粒子光学系220への電気接続の第1の状態を提供することを含んでよい。さらに、ブロック411’の提供する/再構成する動作(複数可)の前の荷電粒子光学系220への電気接続の状態は、ブロック411’-1、ブロック411’-2、ブロック411’-3およびブロック411’-4の動作のうちの1つまたは複数より先に起こる/これらの動作のうちの1つまたは複数がない状態などの異なる第2の状態であってよい。
【0067】
図4Dを参照すると、
図4Bのブロック412’の動作(複数可)は、複数の動作を含んでよい。例えば、動作は、抽出プレート221が接地されている間、抵抗器201の第1の側がバックバイアスプレート222に、および抵抗器201の第2の側が電源202にそれぞれ接続されている間、ならびに電源202が電圧を印加している間、真空チャンバ210内にある試料プレート230に向けて計器10のレーザー20を発射すること(ブロック412’-3)を含んでよい。詳細には、レーザー20は、試料プレート230上にある試料に向けて発射してよい。方法はその後、抵抗器201を介して、試料に向けてレーザー20を発射することによって生成される電流230Cを測定すること(ブロック412’-4)を含んでよい。詳細には、電流230Cは、抵抗器201を通過する電流230Cに対する電圧201V応答の測定に基づいて判定されてよい。
【0068】
さらに、動作は、いかなる試料も含まない空のスライドに向けてレーザー20を発射すること(ブロック412’-1)、および試料に向けてレーザー20を発射する(ブロック412’-3)前に、抵抗器201を介して、空のスライドに向けてレーザー20を発射することによって生成される任意の電流を測定すること(ブロック412’-2)を含んでよい。例えばブロック412’-2の動作(複数可)は、空のスライドに向けてレーザー20を発射すること(ブロック412’-1)によって生成される測定可能な電流が抵抗器201を通過するかどうかを判定することを含んでよい。一部の実施形態において、ブロック412’-4およびブロック412’-2の動作のそれぞれの測定値/結果が比較されて、空のスライドに対する(b)発射に対する試料の(a)イオン化の規模/影響を判定してもよい。例えば、ブロック412’-4およびブロック412’-2の動作は、第1および第2の電気的な応答(例えば電圧応答)をそれぞれ、抵抗器201によって測定してよく、これらはその後、互いに、および/または所定の値(複数可)と比較されてもよい。空のスライドの場合、電気的な応答が測定不能であるとき、測定可能な電気的な応答がないことが検出されてよい。さらに、一部の実施形態において、ブロック412’-1(および/またはブロック412’-2)の動作(複数可)は、ブロック412’-3(および/またはブロック412’-4)の動作(複数可)の後に行われてもよい。
【0069】
図4Eを参照すると、
図4Bに関して記載した荷電粒子は、イオン230Iであってよい。
図4Eに示されるように
図4Bのブロック412’の動作(複数可)は、測定された電流230Cの所定の値との比較(ブロック412’-A)に基づいて、チャンバ210内に生成されるイオン230Iの分量を判定すること(ブロック412’-B)を含んでよい。
図4Eの動作は、
図4Dの動作に加えて、またはその代替としてのいずれかで行われてよい。
【0070】
図5Aは、計器10を空のスライドに対して発射するためのオシロスコープトレースのグラフを示している。
図5Aに示されるように、CVR電圧201Vの応答501Aは、空のスライドに対して発射する際、平坦である(すなわち、測定不能である、または目に見えて分からない)。
【0071】
図5Bは、計器10を上に試料を有する試料スライド230に対して発射するためのオシロスコープトレースのグラフを示している。この例では、計器10は、ATCC 8739大腸菌の試料に対して発射している。
図5Bに示されるように、CVR電圧201Vの応答501Bは、試料に対して発射しているとき、測定可能である/目に見えて分かる。これは、
図5Aでの空のスライドに対して発射する際の平坦な応答501Aとは対照的であることを示している。
【0072】
図6は、
図2Aおよび
図2Bのチャンバ210の内部の斜視図を示している。この図は、試料プレート230、ならびに抽出プレート221およびバックバイアスプレート222を例示している。
【0073】
一部の実施形態において、試料プレート230上の試料(複数可)は、患者からの生体試料を含んでよく、患者の医学的評価のために、既定されたタンパク質または微生物、例えばバクテリアなどが試料中にあるかどうかを識別するために計器10によって試料の分析を実施することができる。例えば、計器10は、質量分析計10Mであってよく、分析は、取得したスペクトルに基づいて、およそ150(またはそれ以上の)の異なる既定されたバクテリアの種のいずれかが試料中にあるかどうかを識別することができる。標的質量範囲は、およそ2,000から20,000ダルトンの間であり得る。
【0074】
図7は、レーザーエネルギーおよび/またはレーザー集束の較正ためにプロセッサ(複数可)270およびレーザー源20LSと通信する抵抗器201のブロック図を示している。プロセッサ(複数可)270は、レーザー20LSからの光によって生成される電流に対する抵抗器201による電気的な応答から結果として生じるデータ/信号を受信/処理してよく、プロセッサ(複数可)270はそれに応答してレーザー20LSを制御して、そのレーザーエネルギーおよび/またはレーザー焦点を調整してよい。レーザー20LSの較正を制御するための、プロセッサ(複数可)270のレーザー20LSおよび抵抗器201との組合せ/通信は、レーザー較正システム770Cを提供してよい。さらに、本明細書に記載されるように、抵抗器201は、電源202に結合されてよく、この電源もまた、プロセッサ(複数可)270によって制御されてよい。
【0075】
図8は、レーザーエネルギーおよび/またはレーザー集束の較正のための一例の方法(複数可)のフローチャートを例示している。方法(複数可)は、真空チャンバ210の外にある抵抗器201を、レーザー20LSからの光20Lによって真空チャンバ210内部に生成される電流(例えば荷電粒子電流230C)に結合すること(ブロック810)を含んでよい。したがって、用語「結合すること」は、抵抗器201および電流に関して本明細書で使用される際、電流を生成するために真空チャンバ210内にある標的230TにレーザーLSを発射することを指してよい。さらに、方法(複数可)は、電流に対する抵抗器201による、電圧201V応答などの電気的な応答の測定(ブロック820)に応じて、レーザー20LSのレーザーエネルギーおよび/またはレーザー焦点を調整すること(ブロック830)を含んでよい。例えば、プロセッサ(複数可)270は、測定された電気的な応答を所定の値(例えば閾値または閾値範囲)と比較し、所定の値からの偏差に応じて調整(ブロック830)を行ってもよい。
【0076】
本発明は有利には、試料から生成されたイオン電流230Cを直接測定することを実行する。従来のシステムは対照的に、質量スペクトルにおけるピークの強度に基づいてイオン電流に関する間接的なフィードバックを単に提供するのみであり得る。したがって、従来のシステムでは、質量スペクトルが生成されていない場合、イオンが生成されているかどうか、検出器に到達しているかどうか、および/または検出器による出力信号が生じているかどうかを判定することが難しい場合がある。しかしながら、本発明による電流230Cの測定は、質量スペクトルが生成されていないときでも行うことができる。
【0077】
本発明はまた有利には、チャンバ210の内部で追加のハードウェア(例えば追加の診断ハードウェア)を必要とせずに、イオン電流230Cを測定することを実現する。むしろ、計器10が本発明の方法を実施する(例えば診断として)のに使用されるいかなる追加のハードウェア(例えば抵抗器201、電源202およびスイッチ201S、221Sおよび222S)も、チャンバ210の外にあり得る。
【0078】
図9Aは、計器10と共に使用することができるSafe High Voltage(SHV)真空フィードスルー910を例示している。例えばSHV真空フィードスルー910は、PASTERNACK(登録商標)PE4500 SHVジャック隔壁密閉封止型ターミナルコネクタであってよい。一部の実施形態において、フィードスルー910の一方は、抽出パルスSHVフィードスルーであってよく、フィードスルー910のもう一方は、バックバイアスSHVフィードスルーであってよい。
【0079】
図9Bは、計器10と共に使用することができるSHVパッチケーブル920を例示している。例えば、SHVパッチケーブル920は、抵抗器測定ボックス201と、バックバイアスSHVフィードスルー910の大気側との間に接続されて、抵抗器201の片側をバックバイアスプレート222に接続してよい。
【0080】
以下は、本明細書に記載される方法/診断の1つの非制限的な例である。質量分析計器/システムのトラブルシューティングを支援するために、試料におけるイオン化の発生をテストするために以下の手順が開発された。この手順の基礎を成す原理は、電荷収集プレートおよびCVRを使用することを伴う。計器/システムの既存の接続が改良されることで、計器/システムのイオン光学装置のより下方の取り外し可能な部分が診断を促進させることができる。診断には、以下の動作が含まれてよい。
【0081】
1.レーザーの光学位置を計器/システムの調整手順で指定されたものに設定する。
【0082】
2.計器10を損傷から保護するために、すべての高圧のスイッチを切る。
【0083】
3.真空システムを通気する。
【0084】
4.真空チャンバ210の内部で、バックバイアスケーブルおよび抽出パルスケーブルを除いて、取り外し可能なイオン光学装置220に取り付けられたすべてのケーブルを切り離す。残りの接続は、真空チャンバ210の内のいかなる分圧器も通過すべきではない。さらに、使用されないケーブルが真空チャンバ210の壁に短絡されないことを保証する。
【0085】
5.イオン光学装置組立体220のそらせ板部分223を取り外す。イオン光学装置組立体220の下方部分は所定の場所に残す。
【0086】
6.ドアを閉め、作動圧力まで(3x10-6トール未満)真空チャンバ210からの空気の押し出しを開始する。
【0087】
7.抽出パルスSafe High Voltage(SHV)フィードスルー910の大気側から抽出パルスケーブルを切り離す。
【0088】
8.抽出パルスSHVフィードスルー910の大気側に短絡プラグを取り付ける。これは抽出プレート221を接地する。
【0089】
9.バックバイアスSHVフィードスルー910の大気側からバックバイアスケーブルを切り離す。
【0090】
10.SHVパッチケーブル920を抵抗器測定ボックス201とバックバイアスSHVフィードスルー910の大気側との間に接続する。これは、抵抗器201(例えば10kV、1ワット、10MΩ±5%の抵抗器)の一方の側をバックバイアスプレート222に接続する。
【0091】
11.-200Vが可能なDC電源202を抵抗器測定ボックス201の残りの側に接続する。内部導体の極性はマイナスであることに留意されたい。グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して制御することができる電源を使用することが望ましい場合がある。しかしながら卓上電源が使用されてもよい。一部の実施形態において、検出器250の電源が使用されてもよい。この電源がMiniature High Voltage(MHV)で終端され得るため、アダプタまたは異なる終端器が検出器250の電源と共に使用されてもよい。
【0092】
12.>300Vの定格の標準的な10xオシロスコーププローブ310を測定ボックス内の抵抗器201のいずれかの側に接続する。オシロスコープ上の対応するチャネルは、交流(AC)結合されてよい。
【0093】
13.オシロスコープにおいて、2つのプローブの電圧を差し引くために数学関数を作り出す。これは、抵抗器201の両端にかかる差動電圧測定(CVR電圧201V)を生み出す。
【0094】
14.レーザー20のレーザー同期出力にケーブルを接続する。これは、回路基板上のテスト地点またはコネクタを介して達成されてよい。例えば、タイミングボードのコネクタが使用されてもよい。
【0095】
15.レーザー同期信号の立ち上がり端でトリガするようにオシロスコープを設定する。これは、
図5Aでは立ち下がり端トリガとして示されるが、電子機器の設計に応じて様々であり得る。
【0096】
16.試料のない空のスライドを計器10に挿入し、作動圧力まで空気を押し出す。
【0097】
17.取得中、計器10内のすべての高圧を0Vに設定することで、計器10を損傷から保護する。
【0098】
18.DC電源202を-200Vに設定する。これにより、オシロスコープを平均化しない状態での設定をし易くすることができる。
【0099】
19.オシロスコープを64個のイベントを平均するように設定する。信号は、平均化しなければ、かなり雑音が多い可能性がある。平均化によって、信号を雑音からより区別し易くする必要がある。
【0100】
20.スライド、および場合によってはラスターに対するレーザー20の発射を開始する。スライドでのレーザーエネルギーは、およそ5マイクロジュール(μJ)であるべきである。これは、レーザー20からの20μJのレーザーパワーで達成された。5μJの値は、レーザー20からの6μJに対する試料での1.5μJの測定に基づいている。空のスライドを使用する際、抵抗器201の両端にかかる差動電圧201Vを表す数学関数は、
図5Aに示されるように、レーザートリガイベントにおいて変化すべきではない。
図5Aでは、チャネル1は、DC電源202の電圧であり、チャネル2は、レーザー同期イベントであり、チャネル3は、抵抗器201の電源202側にある電圧プローブ310であり、チャネル4は、抵抗器201の真空チャンバ210側にある電圧プローブ310である。
【0101】
21.空のスライドに対する発射を中止する。
【0102】
22.空のスライドをATCC 8739大腸菌が充満したスライドと交換し、作動圧力まで空気を押し出す。このような試料は、懸濁または手操作による堆積のいずれかからであってよい。一部の実施形態において、新鮮な試料が、母材の中で懸濁されてもよい。
【0103】
23.取得中、計器10内のすべての高圧を0Vに設定することで、計器10を損傷から保護する。
【0104】
24.DC電源202を-200Vに設定する。これは、オシロスコープを平均化しない状態での設定をし易くすることができる。
【0105】
25.オシロスコープを64個のイベントを平均化するように設定する。信号は、平均化しなければ、かなり雑音が多い可能性がある。平均化によって、信号を雑音からより区別し易くする必要がある。
【0106】
26.スライド、および場合によってはラスターに対するレーザー20の発射を開始する。試料でのレーザーエネルギーは、およそ5マイクロジュール(μJ)であるべきである。これは、レーザー20からの20μJのレーザーパワーで達成された。5μJの値は、レーザー20からの6μJに対する試料での1.5μJの測定に基づいている。試料を含むスライドを使用する際、抵抗器201の両端にかかる差動電圧201Vを表す様々な数学関数は、
図5Bに示されるように、レーザートリガイベント中、およそ10ミリボルト(mV)だけ変化すべきである。
【0107】
CVR201におけるこのような電圧の変化は、オームの法則によって、計器10に収集されたイオン電流230Cに比例している。
図5Bでは、チャネル1は、DC電源202の電圧であり、チャネル2は、レーザー同期イベントであり、チャネル3は、抵抗器201の電源202側にある電圧プローブ310であり、チャネル4は、抵抗器201の真空チャンバ210側にある電圧プローブ310である。
【0108】
27.大腸菌の試料に対する発射を中止する。
【0109】
28.計器10から大腸菌の試料のスライドを取り外す。
【0110】
図面では、特定の層、構成要素または機構が明確にするために誇張される場合があり、点線は、そうでないことが具体的に述べられない限り、オプションの/取り外し可能な機構または動作を例示している。用語「図(FIG.)」および「図(Fig.)」は、出願および/または図面における用語「図(Figure)」と相互に入れ替え可能に使用される。しかしながら本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるように解釈されるべきではなく、むしろ、このような実施形態は、本開示が完全かつ完璧であり、本発明の範囲を当業者により完全に伝えるために提供されている。
【0111】
用語「第1の」、「第2の」などは、様々な要素、構成要素、領域、層および/または区域を記述するために本明細書で使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または区域は、このような用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。このような用語は、1つの要素、構成要素、領域、層および/または区域を別の要素、構成要素、領域、層または区域から区別するのに単に使用されている。よって、以下で考察される「第1の」要素、構成要素、領域、層または区域は、本発明の教示から逸脱することなく、「第2の」要素、構成要素、領域、層または区域と称される場合もある。
【0112】
「真下」、「下」、「底部」、「下部」、「上」、「上部」などの空間に関する用語は、図面に例示されるように、1つの要素または機構の別の要素(複数可)または機構(複数可)に対する関係性を記述するために、記述を容易にするために本明細書で使用されてよい。空間に関する用語は、図面に描かれる配向に加えて、使用中の装置の様々な配向、または動作を包含することが意図されていることを理解されたい。例えば、図面中で装置がひっくり返された場合、他の要素または機構の「下」または「真下」として記述される要素は、他の要素または機構の「上に」配向されることになる。こうして、一例の用語「下の」は、上、下および後ろの配向を包含することができる。装置はそれ以外の方法で(90°回転された、または他の配向で)配向される場合もあり、本明細書で使用される空間に関する記述語はこれに従って解釈されてよい。
【0113】
用語「およそ」は、指摘される値の±20%の範囲内の数字を指している。
【0114】
本明細書で使用される際、単数形の「a」、「an」および「the」は、そうでないことが明白に述べられていなければ、複数形も同様に含むように意図されている。用語「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含んでいる(including)」および/または「備えている(comprising)」は、本明細書で使用される場合、述べられた機構、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の機構、ステップ、動作、要素および/または構成要素および/またはその集合の存在または追加を除外するものではないこともさらに理解されたい。1つの要素が別の要素に「接続されている」、または「結合されている」と称される場合、それは、他の要素に直接接続させる、もしくは結合させることができる、または介在要素が存在する場合もあることを理解されたい。本明細書で使用される際、用語「および/または」は、関連する列記された項目のうちの1つまたは複数のいずれかの組合せ、およびそのすべての組合せを含む。さらに、符号「/」は、用語「および/または」と同じ意味を持つ。
【0115】
そうでないことが規定されなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含めた)は、本発明が属する当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。共通して使用される辞書で定義されるものなどの用語は、本明細書の文脈および関連する分野におけるそれぞれ意味と一致する意味を有するように解釈すべきであり、本明細書で明らかにそのように定義されていなければ、理想化された、または過度に形式的な意味に解釈されないことをさらに理解されたい。
【0116】
一部の実施形態において、質量分析計10Mは、およそ2,000からおよそ20,000ダルトンの質量範囲である試料からイオン信号を取得するように構成される。
【0117】
用語「試料」は、分析を受ける物質を指しており、広い範囲の分子量の中の任意の媒体であり得る。一部の実施形態において、試料は、バクテリアまたは真菌などの微生物の存在に対して評価される。しかしながら試料は、毒素または他の化学物質を含めた他の成分の存在に対して評価される場合もある。
【0118】
用語「卓上用」は、標準的なテーブル面またはカウンタートップに適合することができる、または例えばおよそ1フィート掛ける6フィートの幅と長さの寸法を有し、典型的には1~4フィートの間の高さ寸法を有するテーブル面などのテーブル面に等しい占有面積を占めることができる比較的コンパクトなユニットを指す。一部の実施形態において、計器/システムは、28インチ~14インチ(W)x28インチ~14インチ(D)x38インチ~28インチ(H)のエンクロージャまたは筐体内にある。フライト管240は、およそ0.8メートル(m)の長さを有してよい。一部の実施形態において、これより長い、またはこれより短い長さが使用されてもよい。例えば、フライト管240は、およそ0.4mからおよそ1mの間の長さを有してよい。
【0119】
上述は、本発明の例示であり、その限定として解釈されるべきではない。本発明のいくつかの一例の実施形態が記載されているが、本発明の新規の教示および利点から著しく逸脱することなく、一例の実施形態において多くの変更形態が可能であることを当業者は容易に理解するであろう。したがって、すべてのそのような変更形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。したがって上述は、本発明の例示であり、開示される特有の実施形態に限定されるように解釈されるべきではなく、開示される実施形態ならびに他の実施形態に対する変更形態も本発明の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。