(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/60 20060101AFI20221219BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20221219BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B29C45/60
B29C45/76
B29C45/50
(21)【出願番号】P 2021019549
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 光広
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-131511(JP,A)
【文献】特開平06-071706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 48/00
B29B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機のスクリュの後端部とこの後端部の後方に配した軸方向位置が固定されたスクリュ支持部間に介在させたスクリュライナの減耗を検出する射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法であって、前記スクリュを回転させて所定量の樹脂材料の計量動作を行う計量動作工程と、この計量動作工程後、前記スクリュを所定距離だけ後退させるデコンプ動作を行うデコンプ動作工程と、このデコンプ動作工程後、前記スクリュを所定距離だけ前進させる前進動作工程と、前記前進動作工程の開始から前記スクリュに付加される負荷圧を監視し、当該負荷圧が予め設定した所定の負荷圧閾値に達した時点におけるスクリュの前進距離を求め、この前進距離に基づいてスクリュライナの減耗量を検出する検出処理工程とを備えることを特徴とする射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法。
【請求項2】
前記前進動作工程の開始から予め設定した所定の圧力検出距離に達しても前記負荷圧閾値に達しないときは所定のエラー処理を行うことを特徴とする請求項1記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法。
【請求項3】
前記前進距離は、初回に求めた前進距離を基準値として設定し、この後に求めた前記前進距離と前記基準値の差分に基づいて前記減耗量を検出することを特徴とする請求項1記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法。
【請求項4】
前記前進距離と前記基準値の差分に対する交換判断値を設定し、当該差分が、当該交換判断値に達したことに基づき、所定の報知手段により交換時期であることを報知することを特徴とする請求項3記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法。
【請求項5】
射出成形機のスクリュの後端部とこの後端部の後方に配した軸方向位置が固定されたスクリュ支持部間に介在させたスクリュライナの減耗を検出する射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置であって、成形機コントローラに、前記スクリュを回転させて所定量の樹脂材料の計量動作を行う計量動作制御機能と、この計量動作制御機能による計量動作後に前記スクリュを所定距離だけ後退させるデコンプ動作を行うデコンプ動作制御機能と、このデコンプ動作制御機能によるデコンプ動作後に前記スクリュを所定距離だけ前進させる前進動作制御機能と、この前進動作制御機能による前進動作の開始から前記スクリュに付加される負荷圧を監視し、前記負荷圧が予め設定した所定の負荷圧閾値に達した時点における当該スクリュの前進距離を求め、この前進距離に基づいてスクリュライナの減耗量を検出する検出処理機能とを実行するライナ減耗検出モードを設けたことを特徴とする射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置。
【請求項6】
前記ライナ減耗検出モードは、前記射出成形機の自動パージ処理モードの一部として実行することを特徴とする請求項5記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置。
【請求項7】
前記減耗量は、前記成形機コントローラにおけるディスプレイの表示部により表示することを特徴とする請求項5記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置。
【請求項8】
前記スクリュの後端部と前記スクリュ支持部は、スクリュライナを含むスクリュ結合部により結合するとともに、当該スクリュ結合部の前記スクリュライナは、交換可能に構成することを特徴とする請求項5記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置。
【請求項9】
前記スクリュライナは、形成素材として、当該スクリュライナの前面及び後面に当接する部位の素材よりも硬度の小さい素材を用いることを特徴とする請求項5又は8記載の射出成形機のスクリュライナ減耗検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機のスクリュの後端部を支持するスクリュライナの減耗量を検出する際に用いて好適な射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機は、成形材料(樹脂材料)を可塑化するスクリュを加熱筒に内蔵した射出装置を備えており、スクリュは、通常、後端部を所定のスクリュ結合手段を介して、スクリュ回転機構及びスクリュ進退機構を含むスクリュ駆動部の駆動出力軸に結合している。
【0003】
従来、こ種のスクリュ結合手段としては、特許文献1に記載されるインラインスクリュ式射出装置,及び特許文献2に記載される射出成形機用のスクリュとスクリュ駆動装置の組合わせにより知られている。特許文献1の射出装置に開示されるスクリュ結合手段は、射出スクリュを射出駆動部材に回転自在に連結するとともに、連結部材となる射出駆動部材側のスクリュ保持リングと、射出スクリュ側のスプラインリングのフランジとの対向面に、側面を互いに接して位置する複数の係合突部を交互に突設し、この係合突部により回転が伝達され、また射出スクリュ側が自由状態となって射出開始と同時に射出スクリュ側が逆回転するように射出スクリュ側と射出駆動部材とを接続するように構成されたものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されるスクリュとスクリュ駆動装置の組合わせは、加熱シリンダとスクリュの芯合わせができる射出成形機のスクリュとスクリュ駆動装置の組み合わせの提供を目的としたものであり、具体的には、スクリュ駆動装置を、加熱シリンダを固定する前プレートと、後プレートと、前プレートと後プレートの間で軸方向に駆動される中間プレートとから構成し、スクリュは取付軸部を中間プレートに取付けるとともに、取付軸部は後端にテーパ面を形成し、中間プレートの取付挿入穴にも、着座面を形成し、スクリュを中間プレートに取付けるとき、テーパ面が着座面に押しつけられて芯合わせされ、前プレートに固定されている加熱シリンダと、中間プレートに取付けられているスクリュが芯合わせされるように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-71706号公報
【文献】特開2017-71085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に射出成形機は、スクリュに対して軸方向の負荷が付加された状態で回転動作を行うため、スクリュ結合手段における摩耗が避けられないとともに、摩耗が発生した場合、樹脂材料の計量値や射出終了位置等の誤差要因になる。したがって、減耗が大きくなった場合には、部品交換等のメンテナンスが必要になるが、スクリュやこのスクリュを結合する駆動出力軸などは比較的大型の部品となり、交換が容易でないとともに、交換する場合であっても大幅なコストアップや作業時間が強いられる。
【0007】
このため、従来では、スクリュの後端部と駆動出力軸側のスクリュ支持部間に、円盤状のスクリュライナ(スペーサ)を介在させることにより、このスクリュライナに減耗が生じるようにするとともに、スクリュの交換時や定期的なメンテナンス時に、スクリュライナの減耗状態を確認し、減耗が進行していた場合には、新しいものと交換する方法を採用していた。
【0008】
しかし、このような従来の手法では、未だ余裕があると判断して使用を継続しても、生産途中の減耗過多により成形不良が発生したり、成形条件が正しく設定されないなどの不具合を招いてしまうとともに、他方、早めの交換を行った場合には、資源の無駄を招いたり、無駄な交換作業を強いられるなど、ランニングコスト削減の観点からもマイナス要因となる難点があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機のスクリュライナ減耗検出方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る射出成形機Mのスクリュライナ減耗検出方法は、射出成形機Mのスクリュ2の後端部2rとこの後端部2rの後方に配した軸方向Ds位置が固定されたスクリュ支持部3間に介在させたスクリュライナ4の減耗を検出するに際し、スクリュ2を回転させて所定量の樹脂材料Rの計量動作を行う計量動作工程(S2)と、この計量動作工程(S2)後、スクリュ2を所定距離だけ後退させるデコンプ動作を行うデコンプ動作工程(S3)と、このデコンプ動作工程(S3)後、スクリュ2を所定距離Lfだけ前進させる前進動作工程(S4)と、前進動作工程(S4)の開始からスクリュ2に付加される負荷圧Pを監視し、当該負荷圧Pが予め設定した所定の負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求め、この前進距離Lに基づいてスクリュライナ4の減耗量Xを検出する検出処理工程(S8)とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る射出成形機Mのスクリュライナ減耗検出装置1は、射出成形機Mのスクリュ2の後端部2rとこの後端部2rの後方に配した軸方向Ds位置が固定されたスクリュ支持部3間に介在させたスクリュライナ4の減耗を検出するスクリュライナ減耗検出装置を構成するに際して、成形機コントローラ10に、スクリュ2を回転させて所定量の樹脂材料Rの計量動作を行う計量動作制御機能Fmと、この計量動作制御機能Fmによる計量動作後にスクリュ2を所定距離だけ後退させるデコンプ動作を行うデコンプ動作制御機能Fdと、このデコンプ動作制御機能Fdによるデコンプ動作後にスクリュ2を所定距離だけ前進させる前進動作制御機能Ffと、この前進動作制御機能Ffによる前進動作の開始からスクリュ2に付加される負荷圧Pを監視し、負荷圧Pが予め設定した所定の負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求め、この前進距離Lmに基づいてスクリュライナ4の減耗量Xを検出する検出処理機能Fcとを実行するライナ減耗検出モードmcを設けたことを特徴とする。
【0012】
一方、本発明は、好適な発明の態様により、ライナ減耗検出モードmcは、射出成形機Mの自動パージ処理モードmpの一部として実行することができる。また、前進動作工程(S4)の開始から予め設定した所定の圧力検出距離Lcに達しても負荷圧閾値Psに達しないときは所定のエラー処理(S9)を行うことができる。一方、前進距離Lmは、初回に求めた前進距離Lmを基準値Lmsとして設定し、この後に求めた前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに基づいて減耗量Xを検出することができる。さらに、前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに対する交換判断値Lsを設定し、当該実測量Ldが、交換判断値Lsに達したことに基づき、所定の報知手段13により交換時期であることを報知することができる。他方、減耗量Xは、成形機コントローラ10におけるディスプレイ11の表示部11xにより表示することができる。また、スクリュ2の後端部2rとスクリュ支持部3は、スクリュライナ4を含むスクリュ結合部Jsにより結合するとともに、当該スクリュ結合部Jsのスクリュライナ4を、交換可能に構成することができる。なお、スクリュライナ4は、形成素材として、当該スクリュライナ4の前面及び後面に当接する部位の素材よりも硬度の小さい素材を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る射出成形機Mのスクリュライナ減耗検出方法及びスクリュライナ減耗検出装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 成形機コントローラ10にライナ減耗検出モードmcを設けたため、スクリュライナ4の減耗量Xを絶対量として正確に検出することができる。この結果、スクリュライナ4の適切な交換時期を容易に把握することが可能になり、減耗過多により成形不良が発生したり成形条件が正しく設定されないなどの不具合を排除して成形品質を高めることができる。
【0015】
(2) 資源の無駄や無駄な交換作業を強いられるなどのランニングコストの上昇を排除し、メンテナンスの廃止又は簡略化による全体の経済性を高めることができる。しかも、成形機コントローラ10の制御機能を利用できるため、実施の容易化を図れるとともに、部品点数を増加させることなく実施することができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、ライナ減耗検出モードmcを、射出成形機Mの自動パージ処理モードmpの一部として実行するようにすれば、別途の独立した検出処理モードの構築が不要になるため、工数低減による生産能率の向上に寄与できる。
【0017】
(4) 好適な態様により、前進動作工程(S4)の開始から予め設定した所定の圧力検出距離Lcに達しても負荷圧閾値Psに達しないときに所定のエラー処理を行うようにすれば、センサ機能の故障等の何らかの異常が考えられるため、異常をいち早く検出することにより異常に対して迅速に対処することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、前進距離Lmを求めるに際して、初回に求めた前進距離Lmを基準値Lmsとして設定し、この後に求めた前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに基づいて減耗量Xを検出するようにすれば、求めた前進距離Lmに対して、いわばゼロリセットできるため、スクリュライナ4に対する正確な減耗量Xを安定に得ることができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに対する交換判断値Lsを設定し、当該実測量Ldが、交換判断値Lsに達したことに基づき、所定の報知手段13により交換時期であることを報知するようにすれば、スクリュライナ4の的確な交換時期を確実に知ることができるため、例えば、経験の浅いオペレータであってもスクリュライナ4の正確な交換時期に必要な対応を行うことができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、得られた減耗量Xを、成形機コントローラ10におけるディスプレイ11の表示部11xにより表示するようにすれば、必要に応じて減耗量Xに対する監視を常に行うことが可能になるため、例えば、交換用のスクリュライナ4を事前に準備することができるなど、オペレータによる減耗量Xの監視の容易化及び利便性に寄与できる。
【0021】
(8) 好適な態様により、スクリュ2の後端部2rとスクリュ支持部3は、スクリュライナ4を含むスクリュ結合部Jsにより結合するとともに、当該スクリュ結合部Jsのスクリュライナ4を、交換可能に構成すれば、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法及び装置1を利用できる望ましい構造を有するため、スクリュライナ4の減耗状態を監視する観点から良好なパフォーマンスを得ることができる。
【0022】
(9) 好適な態様により、スクリュライナ4の形成素材として、当該スクリュライナ4の前面及び後面に当接する部位の素材よりも硬度の小さい素材を用いれば、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法及び装置1を利用できる望ましい素材レイアウトとなるため、良好なパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法の処理手順を示すフローチャート、
【
図2】同スクリュライナ減耗検出方法を実施できる射出成形機の概略構成図、
【
図3】同射出成形機のスクリュ結合部を構成する部品を示す分解断面図、
【
図5】同スクリュライナ減耗検出方法の原理説明図、
【
図6】同スクリュライナ減耗検出装置における設定画面を示す表示画面図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
まず、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出装置1の理解を容易にするため、同装置1を備える射出成形機Mの概略構成について、
図2-
図4を参照して説明する。
【0026】
図2は、射出成形機M、特に、射出装置Mi,及びこの射出装置Miから溶融した樹脂材料Rが射出充填される成形用金型Cを示すとともに、この射出成形機Mの各種アクチュエータを駆動制御する駆動制御系Msを示す。したがって、この金型Cの型締を行う型締装置は省略されている。
【0027】
射出装置Miにおいて、21は加熱筒であり、この加熱筒21の前端部にはヘッド部21eを介してノズル21nを取付ける。また、加熱筒21の後端部には、成形材料(樹脂)Rを収容するホッパ21hを備えるとともに、このホッパ21hの下端開口と加熱筒21の内部間は、材料落下通路を介して連通する。これにより、ホッパ21h内の成形材料(樹脂材料)Rは材料落下通路を通して加熱筒21の内部に供給される。さらに、加熱筒21の内部にはスクリュ2を回動自在及び進退自在に装填し、このスクリュ2の後端部2rは、スクリュ結合部Jsを介して、スクリュ駆動部22における駆動出力軸22oの前端面に結合する。
【0028】
図3及び
図4に、スクリュ結合部Jsの具体的構成を示す。スクリュ結合部Jsは、
図3に示すように、主要部品として、スクリュ保持リング31、スプラインリング32、スクリュライナ4、スクリュ自動調心軸受33を備える。
【0029】
この場合、特に、スクリュライナ4には、形成素材として、当該スクリュライナ4の前面及び後面に当接する部位の素材よりも硬度の小さい素材を用いる。例示の場合、スクリュライナ4の前面に当接する部位は、スクリュ2の後端部2rの後端面となり、スクリュライナ4の後面に当接する部位は、スクリュ自動調心軸受33となるため、スクリュライナ4の形成素材には、スクリュ2及びスクリュ自動調心軸受33よりも硬度の小さい素材を用いる。このように、スクリュライナ4の形成素材として、当該スクリュライナ4の前面及び後面に当接する部位の素材よりも硬度の小さい素材を用いれば、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法及び装置1を利用できる望ましい素材レイアウトとなるため、良好なパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施することができる。
【0030】
そして、スクリュ2の後端部2rを、駆動出力軸22oの前端面に結合する際には、まず、スクリュ保持リング31の内側開孔にスプラインリング32を挿入する。この場合、スプラインリング32の外周面には、フランジ32fを一体に有し、かつフランジ32fの前面には嵌合用凹凸部32fsを一体に有するとともに、スクリュ保持リング31の後面には嵌合用凹凸部31sを一体に有するため、スクリュ保持リング31の内側開孔にスプラインリング32を挿入すれば、嵌合用凹凸部31sと嵌合用凹凸部32fsが相互に嵌合する。これにより、スプラインリング32はスクリュ保持リング31に対して周方向の変位が規制される。
【0031】
次いで、スプラインリング32の内部に、スクリュ2の後端部2rを挿入する。この場合、スプラインリング32は、内周面に軸受側スプライン係合部32iを有するとともに、スクリュ2の後端部2rは、外周面に軸側スプライン係合部2roを有するため、軸受側スプライン係合部32iと軸側スプライン係合部2roはスプライン係合する。これにより、スクリュ2は、スプラインリング32に対して周方向の変位が規制される。なお、スクリュ2の後端部2rの外周面における後端面付近には周方向のリング溝2rsが形成されるため、後端部2rを、スプラインリング32の内部に挿通させた際は、
図4に示すように、スプラインリング32の後端から突出したリング溝2rsに、止リング34を嵌込むことにより離脱を防止する。
【0032】
この後、駆動出力軸22oの前端面に形成した支持凹部22dの内部に、スクリュ自動調心軸受33,スクリュライナ4の順に収容するとともに、さらに、スクリュ2の後端部2rを挿入する。そして、この状態で、スクリュ保持リング31を、複数の固定ボルト35…を用いて駆動出力軸22oの前端面にボルト止めにより固定する。これにより、
図4に示すスクリュ結合部Jsを組付けることができる。即ち、スクリュ2の後端部2rと駆動出力軸22oの前端面をスクリュ結合部Jsにより結合することができる。
【0033】
スクリュ結合部Jsは、このような構造を有するため、固定ボルト35…を取外すことにより、スクリュ2の後端部2rを駆動出力軸22oの前端面から抜き取れば、スクリュライナ4の交換を容易に行うことができる。このように、スクリュ2の後端部2rとスクリュ支持部3を、スクリュライナ4を含むスクリュ結合部Jsにより結合するとともに、当該スクリュ結合部Jsのスクリュライナ4を、交換可能に構成すれば、本実施形態に係
るスクリュライナ減耗検出方法及び装置1を利用できる望ましい構造となるため、スクリュライナ4の減耗状態を監視する観点から良好なパフォーマンスを得ることができる。
【0034】
一方、スクリュ駆動部22は、スクリュ2を回転させるスクリュ回転機構22rを備えるとともに、スクリュ2を前進及び後退させるスクリュ進退機構22mを備える。なお、スクリュ回転機構22r及びスクリュ進退機構22mの駆動方式は、例示の場合、電動モータを用いた電気駆動方式であるが、油圧回路を用いた油圧駆動方式等であってもよく、その駆動方式は問わない。
【0035】
他方、スクリュ回転機構22r及びスクリュ進退機構22mは、給電ドライバ23に接続するとともに、この給電ドライバ23は、成形機コントローラ10に備えるコントローラ本体10mに接続する。これにより、コントローラ本体10mから給電ドライバ23に、スクリュ回転機構22r及びスクリュ進退機構22mを駆動制御するための制御指令が付与されるとともに、スクリュ2の速度及び位置等の物理量は、図示を省略した速度センサ及び位置センサ等により検出され、この検出信号は、給電ドライバ23及びコントローラ本体10mに付与される。
【0036】
また、成形機コントローラ10は、射出成形機Mの全体制御を司る機能を備えており、コントローラ本体10mは、CPU及び内部メモリ15等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有する。この場合、内部メモリ15には、データベースを含む各種データ類を書込可能なデータエリア15dが含まれるとともに、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため包括的な制御プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア15pが含まれる。したがって、成形機コントローラ10は、HMI制御系及びPLC制御系を包含し、内部メモリ15には、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納する。PLCプログラムにより、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等が実行されるとともに、HMIプログラムにより、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等が実行される。さらに、成形機コントローラ10には、ディスプレイ11が付属する。ディスプレイ11は、必要な情報表示を行うことができるとともに、タッチパネル11tが付設され、このタッチパネル11tを用いて、入力,設定,選択等の各種入力操作を行うことができる。
【0037】
次に、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出装置1の構成について、
図2-
図6を参照して具体的に説明する。
【0038】
前述したように、射出成形機Mの場合、スクリュ2に対して負荷が付加された状態で回転動作を行うため、スクリュ結合部Jsにおける摩耗が避けられない。このため、負荷が付加される部位にスクリュライナ4を介在させ、このスクリュライナ4を摩耗させることにより他の部位の摩耗を回避するとともに、スクリュライナ4の減耗が進行した際は、新しいスクリュライナ4と交換している。
【0039】
このように、スクリュライナ4は、いわば消耗品として交換を行っているが、スクリュライナ4の交換時期を的確に把握することは容易でない。そこで、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出装置1は、スクリュライナ4の減耗量Xを正確に検出し、最適なタイミングで交換できるようにしたものである。
【0040】
このため、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出装置1では、
図2に示すように、成形機コントローラ10における内部メモリ15のプログラムエリア15pに、ライナ減耗検出モードmcを実行するアプリケーションプログラムを設けるとともに、特に、成形機コントローラ10に備える自動パージ処理モードmpの一部として実行できるようにした。このように、ライナ減耗検出モードmcを、射出成形機Mの自動パージ処理モードmpの一部として実行するようにすれば、別途の独立した検出処理モードの構築が不要になる。即ち、自動パージ処理モードmpは、射出成形機Mに必要な基本的な機能となるため、別途の独立した検出処理モードは不要になり、工数低減による生産能率の向上に寄与できる。
【0041】
このライナ減耗検出モードmcは、
図2に示すように、スクリュ2を回転させて所定量の樹脂材料Rの計量動作を実行する計量動作制御機能Fmと、この計量動作制御機能Fmによる計量動作後にスクリュ2を所定距離だけ後退させるデコンプ動作を実行するデコンプ動作制御機能Fdと、このデコンプ動作制御機能Fdによるデコンプ動作後にスクリュ2を所定距離だけ前進させる動作を実行する前進動作制御機能Ffと、この前進動作制御機能Ffによる前進動作の開始からスクリュ2に付加される負荷圧Pを監視し、負荷圧Pが予め設定した所定の負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求め、この前進距離Lmに基づいてスクリュライナ4の減耗量Xを検出する検出処理機能Fcとを備える。なお、スクリュ2の前進距離Lm(及び後退距離)は、移動時間を監視し、移動時間と移動速度から求められる。
【0042】
また、
図6は、スクリュライナ減耗検出装置1に備える設定画面Vsを示す。この設定画面Vsにより設定した制御条件に基づいて、上述した各動作制御機能Fm,Fd,Ff,及び検出処理機能Fcが実行される。同図における主要な設定部及び表示部は次のようになる。
【0043】
41は、凹監視キーであり、「ON」にすることにより、ライナ減耗検出モードmcを実行させることができる。42は凹単独キーであり、「ON」にすることにより、ライナ減耗検出モードmcを単独で実行させることができる。本実施形態におけるライナ減耗検出モードmcは、上述したように、自動パージ処理モードmpの一部として実行される。したがって、凹単独キー42を「ON」にした場合、自動パージ処理モードmpから切離すことによりライナ減耗検出モードmcのみを単独で実行させることができるとともに、凹単独キー42を「OFF」にした場合、自動パージ処理の実行時に、自動パージ処理モードmpの処理の一部としてライナ減耗検出モードmcも自動で実行される。
【0044】
43は、計量位置設定キーであり、計量動作制御機能Fmの実行により計量動作を行う際のスクリュ2の計量位置を設定する。44は、デコンプ距離設定キーであり、デコンプ動作制御機能Fdの実行によりデコンプ動作を行う際のスクリュ2のデコンプ距離を設定する。45は、デコンプ速度設定キーであり、デコンプ動作時のスクリュ2の速度を設定する。46は、射出TMGキーであり、前進動作制御機能Ffの実行により前進動作を開始するタイミングを設定する。47は、パージ速度設定キーであり、前進動作時のスクリュ2の速度を設定する。
【0045】
さらに、本実施形態では、前進動作時におけるスクリュ2に付加される負荷圧Pを監視し、負荷圧Pが予め設定した所定の負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求めるため、監視圧設定キー48により、負荷圧閾値Psを設定する。また、49は、圧力検出距離設定キーであり、所定の圧力検出距離Lcを設定する。即ち、この圧力検出距離Lcは、スクリュ2の前進動作が開始した後、少なくとも圧力検出距離Lc内であれば、負荷圧閾値Psに達すると思われる所定の距離を設定する。したがって、前進動作の開始から負荷圧Pを監視し、当該圧力検出距離Lcに達しても、スクリュ2に付加される負荷圧Pが負荷圧閾値Psに達しないときは、異常の発生が考えられるため、射出成形機Mの動作を停止するなどの所定のエラー処理を行う。即ち、この場合、センサ機能の故障等の何らかの異常が考えられるため、異常をいち早く検出することにより異常に対して迅速に対処することができる。
【0046】
一方、50は凹初回設定キーであり、「ON」にすることにより、初回に求めた前進距離Lmを基準値Lmsとして設定する。これにより、この後に求めた前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに基づいて正確な減耗量Xを検出することができる。このように、前進距離Lmを求めるに際し、初回に求めた前進距離Lmを基準値Lmsとして設定し、この後に求めた前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに基づいて減耗量Xを検出するようにすれば、求めた前進距離Lmに対して、いわばゼロリセットできるため、スクリュライナ4に対する正確な減耗量Xを安定に得ることができる。また、得られた減耗量Xは、
図6における表示部11xにより凹実測量として表示される。このように、減耗量Xを、成形機コントローラ10におけるディスプレイ11の表示部11xにより表示するようにすれば、必要に応じて減耗量Xに対する監視を常に行うことが可能になるため、例えば、交換用のスクリュライナ4を事前に準備することができるなど、オペレータによる減耗量Xの監視の容易化及び利便性に寄与できる。
【0047】
さらに、検出処理機能Fcでは、上述したように、前進動作時における負荷圧Pを監視し、負荷圧Pが負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求め、この前進距離Lmに基づいてスクリュライナ4の減耗量Xを検出するため、このときの前進距離Lmを監視(判断)するための凹警報距離設定キー51を備える。この凹警報距離設定キー51により、得られた実測量Ldに対する警報距離Ljが設定される。これにより、実測量Ldが警報距離Ljに達したか否かを判定し、実測量Ldが警報距離Ljに達した場合には、「1」としてカウントする。また、52は凹警報カウンタ設定キーを示す。警報距離Ljが「1」回のみでは、周囲温度等による誤差が含まれるため、凹警報カウンタ設定キー52により、交換時期として判断するための「凹警報カウンタ」の数値(回数)設定を行う。例えば、「5」を設定すれば、上述した前進距離Lmが警報距離Ljを「5」回越えることにより、スクリュライナ4の交換時期であることを判定することができる。したがって、この「凹警報カウンタ」の設定数値は、減耗量Xに対する交換判断値Lsとなる。
【0048】
そして、「凹警報カウンタ」の設定数値(例示は、「5」)に達したなら、所定の報知手段13により報知を行う。この場合、「凹警報カウンタ」の表示部の色を変更することにより行うことができる。一例として、「凹警報カウンタ」の色を、通常は、白色又は青色表示とし、「3」になったときに黄色表示にし、さらに、「5」になったときに赤色表示又は赤色の点滅表示などにより報知することができる。このように、前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに対する交換判断値Lsを設定し、当該実測量Ldが、交換判断値Lsに達したことに基づき、所定の報知手段13により交換時期であることを報知するようにすれば、スクリュライナ4の的確な交換時期を確実に知ることができるため、例えば、経験の浅いオペレータであってもスクリュライナ4の正確な交換時期に必要な対応を行うことができる。その他、
図6に示す設定画面Vsには、監視初回日の検出テータ表示部53、監視最新日の検出テータ表示部54等を備えている。
【0049】
次に、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出装置1を用いた減耗検出方法の処理手順について、各図を参照しつつ、
図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0050】
まず、設定画面Vsにより、凹監視キー41を「ON」,凹単独キー42を「OFF」に設定する。これにより、自動パージ処理モードmpにおいて、ライナ減耗検出モードmcが自動で行われる。
【0051】
今、所定ロットの生産処理が終了し、次の生産処理に使用する樹脂材料Rの入替を行う場合を想定する。この場合、オペレータは、最初に「自動パージ」をONにする(ステップS1)。これにより、通常は「自動パージ」が行われるが、凹監視キー41を「ON」にすることにより、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法に基づく計量動作工程が行われる(ステップS2)。計量動作工程では、計量動作制御機能Fmが実行され、設定画面Vsの設定条件によりスクリュ2が回転することにより樹脂材料Rの計量動作が行われる。したがって、基本的には、パージ処理の計量動作と同様の処理動作となる。計量動作工程が終了したならデコンプ動作工程が行われる(ステップS3)。即ち、設定画面Vsの設定条件によりスクリュ2を所定距離だけ後退させるデコンプ動作が行われる。
【0052】
そして、デコンプ動作工程が終了したなら、スクリュ2が所定距離Lfだけ前進する前進動作工程が行われるとともに、この前進動作の開始により、計時処理が開始される(ステップS4)。この場合の所定距離Lfは、設定画面Vsで設定した圧力検出距離Lcとなる。また、前進動作の開始によりスクリュ2の前進距離と負荷圧Pが監視される(ステップS5)。なお、前進距離は、経過時間とスクリュ2の前進速度(パージ速度)により算出される。前進動作が開始すれば、スクリュ2による樹脂材料Rの排出動作(パージ動作)が行われ、スクリュ2に対する負荷圧Pが上昇する。そして、負荷圧Pが負荷圧閾値Psに達したならスクリュ2の前進距離Lmを求める(ステップS6,S7,S8)。
【0053】
この際、正常の場合には、設定画面Vsにより設定した圧力検出距離Lcに達する前に負荷圧閾値Psに達する。これに対して、負荷圧閾値Psに達することなく圧力検出距離Lcに達した場合には、エラー処理が行われる(ステップS6,S9)。この場合、センサ機能の故障等の何らかの異常が考えられるため、射出成形機Mの動作を停止するなどの所定のエラー処理が行われる。
【0054】
また、得られた前進距離Lmは初回となるため、この前進距離Lmは、基準値Lmsとして設定される(ステップS10,S11)。初回の場合、新しいスクリュライナ4が使用されるため、基本的に減耗は存在しない。したがって、この後は、通常のパージ処理が行われる(ステップS12)。この場合、通常実行される一連のパージ処理は、一回のパージ動作が複数回(N回)行われるが、上述したスクリュライナ減耗検出方法に基づく一連の動作は、一回のパージ動作に相当するため、これ以後のパージ動作は、一回分少ない(N-1)回行うことができる(ステップS12,S13)。これにより、全てのパージ動作が行われたなら「自動パージ」をOFFにする(ステップS14)。
【0055】
次に、射出成形機Mが複数回にわたり生産稼働し、スクリュライナ4の減耗が進行した状態を想定する。この場合も、上述した工程と同様、オペレータは、最初に「自動パージ」をONにする(ステップS1)。これにより、まず、計量動作工程が行われる(ステップS2)。
【0056】
そして、計量動作工程が終了したならデコンプ動作工程が行われる(ステップS3)。この場合、デコンプ動作工程では、
図5(a)に示すように、駆動出力軸22oに対して矢印Drで示す後方への圧力が作用する。この際、スクリュ2は計量した樹脂材料Rによりほぼ固定された状態にあるため、スクリュライナ4が減耗した状態にあれば、デコンプ動作が終了した時点では、スクリュライナ4の前後に隙間Soが生じた状態となる。この隙間Soの軸方向Ds長さは、スクリュライナ4が減耗して薄くなるほど長くなる。なお、
図5(a)において、4fは、スクリュライナ4の前面を示しており、仮想線の前面4fは摩耗前の位置、実線の前面4fは摩耗後の位置をそれぞれ示している。
【0057】
デコンプ動作工程の終了により、スクリュ2が所定距離Lf(圧力検出距離Lc)だけ前進する前進動作工程が行われるとともに、前進動作の開始により、計時処理が開始される(ステップS4)。前進動作の開始により、検出処理機能Fcの監視機能によりスクリュ2の前進距離と負荷圧Pが監視される(ステップS5)。
【0058】
この場合、前進動作工程では、
図5(b)に示すように、駆動出力軸22oに対して矢印Dfで示す前方への圧力が作用する。この際、最初に隙間Soが無くなった後、スクリュ2による樹脂材料Rの排出動作(パージ動作)が行われ、スクリュ2に対する負荷圧Pが上昇する。そして、負荷圧Pが負荷圧閾値Psに達したならスクリュ2の前進距離Lmを求める(ステップS6,S7,S8)。前進距離Lmに達した状態が
図5(b)の状態となる。この場合も負荷圧閾値Psに達することなく圧力検出距離Lcに達した場合には、エラー処理が行われる(ステップS6,S9)。
【0059】
一方、得られた前進距離Lmは、初回ではないため、この前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldを算出する(ステップS10,S15)。この実測量Ldは、実質的な減耗量Xとなるため、設定画面Vsの表示部11xに凹実測量として表示される。また、検出処理機能Fcにより、実測量Ldと凹警報距離キー50により設定された警報距離Ljが比較され、実測量Ldが警報距離Ljに達したか否かの判定が行われる(ステップS16)。この際、実測量Ldが警報距離Ljを越えていないときは、前述と同様の通常のパージ処理が行われる(ステップS12…)。
【0060】
これに対して、実測量Ldが警報距離Ljを越えたときは、凹警報カウンタ52pのカウントアップを行う。即ち、カウンタの数値に「1」を加算する(ステップS17)。この時点でカウンタの数値が、設定した凹警報カウンタ52の設定数値(交換判断値Ls)に達しない場合は、前述と同様の通常のパージ処理が行われる(ステップS18,S12…)。
【0061】
他方、カウンタの数値が、設定した凹警報カウンタ52の設定数値(交換判断値Ls)に達した場合は、減耗の報知処理を行う(ステップS18,S19)。即ち、「凹警報カウンタ」の設定数値(例示は、「5」)に達したなら、所定の報知手段13により報知を行う。例示の報知手段13は、「凹警報カウンタ」の表示部の色を変更することにより行うことができるため、前述のように、例えば、「凹警報カウンタ」の色を、通常は、白色又は青色表示とし、「3」になったときに黄色表示にし、さらに、「5」になったときに赤色表示又は赤色の点滅表示などにより報知することができる。
【0062】
このように、本実施形態に係るスクリュライナ減耗検出方法(及び装置1)は、基本的な手法(構成)として、スクリュ2を回転させて所定量の樹脂材料Rの計量動作を行う計量動作工程と、この計量動作工程後、スクリュ2を所定距離だけ後退させるデコンプ動作を行うデコンプ動作工程と、このデコンプ動作工程後、スクリュ2を所定距離Lfだけ前進させる前進動作工程と、前進動作工程の開始からスクリュ2に付加される負荷圧Pを監視し、当該負荷圧Pが予め設定した所定の負荷圧閾値Psに達した時点におけるスクリュ2の前進距離Lmを求め、この前進距離Lに基づいてスクリュライナ4の減耗量Xを検出する検出処理工程とを備えるため、スクリュライナ4の減耗量Xを絶対量として正確に検出することができる。この結果、スクリュライナ4の適切な交換時期を容易に把握することが可能になり、減耗過多により成形不良が発生したり成形条件が正しく設定されないなどの不具合を排除して成形品質を高めることができるとともに、資源の無駄や無駄な交換作業を強いられるなどのランニングコストの上昇を排除し、メンテナンスの廃止又は簡略化による全体の経済性を高めることができる。しかも、成形機コントローラ10の制御機能を利用できるため、実施の容易化を図れるとともに、部品点数を増加させることなく実施できる。
【0063】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0064】
例えば、スクリュライナ4は、リング状のタイプを示したが円盤状であってもよい。また、スクリュ支持部3は、例示の場合、スクリュ自動調心軸受33を示したが、直接、支持凹部22dに当接させてもよい。したがって、スクリュ結合部Jsは、スクリュライナ4を含むことを条件として各種構成により実施可能である。一方、ライナ減耗検出モードmcは、射出成形機Mの自動パージ処理モードmpの一部として実行することが望ましいが、実施形態で示したように、生産途中などにおいて、単独のモードとして実行してもよい。さらに、前進距離Lmは、初回に求めた前進距離Lmを基準値Lmsとして設定し、この後に求めた前進距離Lmと基準値Lmsの差分となる実測量Ldに基づいて減耗量Xを検出する場合を示したが、基準値Lmsを0点として設定し、前進距離Lmを直接実測量Ldとして用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るスクリュライナ減耗検出方法及び装置はスクリュの後端部をスクリュライナにより支持する構成を備える各種の射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1:スクリュライナ減耗検出装置,2:スクリュ,2r:スクリュの後端部,3:スクリュ支持部,4:スクリュライナ,10:成形機コントローラ,11:ディスプレイ,11x:表示部,13:報知手段,(S2):計量動作工程,(S3):デコンプ動作工程,(S4):前進動作工程,(S8):検出処理工程,(S9):エラー処理,M:射出成形機,Ds:軸方向,R:樹脂材料,X:減耗量,Fr:計量動作制御機能,Fm:計量動作制御機能,Fd:デコンプ動作制御機能,Ff:前進動作制御機能,Fc:検出処理機能,Lm:前進距離,mc:ライナ減耗検出モード,mp:自動パージ処理モード,Js:スクリュ結合部