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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】重水素化されたCFTR増強剤の投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K31/47 ZMD
A61K9/20
A61K9/16
A61P3/06
A61P11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021034591
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2018534496の分割
【原出願日】2016-09-21
(65)【公開番号】P2021091723
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/221,531
(32)【優先日】2015-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/348,855
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/238,511
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518094083
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ (ヨーロッパ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バージニア ブラマン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288122(US,A1)
【文献】PRODUCT INFORMATION KALYDECOTM(ivacaftor),Vertex Pharmaceuticals Incorporated,2013年,p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00
A61P 3/00
A61P 11/00
A61P 25/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mgから140mgの化合物I:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を含む、被験体における嚢胞性線維症を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、前記被験体に1日に1回の投与のために製剤化されたものであることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
25mg~75mgの化合物I
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を含む、被験体における嚢胞性線維症を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、前記被験体に1日に1回の投与のために製剤化されたものであることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項3】
50mgの化合物Iまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、経口投与のために製剤化されたものであることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、錠剤の形態に製剤化されたものであることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、顆粒剤の形態に製剤化されたものであることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
化合物Iまたはその薬学的に許容される塩において重水素として指定されていない任意の原子が、その天然の同位体存在度で存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年9月21日に出願された米国仮特許出願第62/221,531号;201
5年10月7日に出願された米国仮特許出願第62/238,511号;および2016年6月10
日に出願された米国仮特許出願第62/348,855号の利益およびこれらに対する優先権を主張
する。前述の出願の内容は、それらの全体が本明細書において参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの現代の薬は、そのより広範な使用を妨げるか、またはある特定の適応症にその使
用を制限する、不十分な吸収、分布、代謝および/または排泄(ADME)特性に悩まさ
れている。不十分なADME特性は、治験における薬物候補の失敗の主要な理由でもある
。ある特定のADME特性を改善するために、製剤技術およびプロドラッグ戦略を用いる
ことができる場合もあるが、これらの手法は、多くの薬物および薬物候補に存在する、根
底にあるADMEの課題に対処することができないことが多い。1つのこのような課題は
、急速な代謝であり、これは、そうでなければ疾患を処置するのに非常に有効であるいく
つかの薬物が、身体からあまりに急速に排除される原因となる。急速な薬物クリアランス
に対する可能な解決策は、十分に高い薬物の血漿レベルを達成するための、高頻度または
高用量での投薬である。しかし、このことにより、患者の投薬レジメン遵守が不十分であ
ること、高用量に伴いより急性になる副作用、および処置コストの増加などのいくつかの
潜在的な処置課題が誘導される。急速に代謝された薬物は、望ましくない毒性または反応
性の代謝物に患者をさらす場合もある。
多くの薬に影響を及ぼす別のADME制限は、毒性または生体反応性代謝物の形成であ
る。結果として、薬物を受ける一部の患者は毒性を経験する場合があり、またはこのよう
な薬物の安全な投与が制限され、その結果患者が最適以下の量の活性剤を受けることにな
る場合がある。ある特定の場合には、投与間隔または製剤手法を改変することが臨床上の
有害作用を低減させる助けとなりうるが、このような望ましくない代謝物の形成は、化合
物の代謝に固有のものである場合が多い。
【0003】
一部の選択された場合には、代謝阻害剤が、あまりに急速に排除される薬物と共投与さ
れることになる。HIV感染を処置するために使用されるプロテアーゼ阻害剤のクラスの
薬物がこのような場合である。FDAは、これらの薬物が、典型的に、これらの薬物の代
謝を担う酵素である、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)の阻害剤である、
リトナビルと共投薬されることを推奨している(Kempf、D.J.ら、Antimicrobial agents
and chemotherapy、1997年、41巻(3号):654~60頁を参照のこと)。
しかし、リトナビルは有害作用の原因となり、すでに異なる薬物の組合せを摂取しなけれ
ばならないHIV患者に錠剤数の負担を付加する。同様に、CYP2D6阻害剤であるキ
ニジンが、情動調節障害の処置において、デキストロメトルファンの急速なCYP2D6
の代謝を低減させる目的で、デキストロメトルファンに添加されてきた。しかし、キニジ
ンは、潜在的な併用療法におけるその使用を大いに制限する望ましくない副作用を有する
(Wang, Lら、Clinical Pharmacology and Therapeutics、1994年、56巻(6
Pt 1):659~67頁;およびwww.accessdata.fda.govにおけるキニジンのFD
Aラベルを参照のこと)。
【0004】
一般に、薬物をシトクロムP450阻害剤と組み合わせることは、薬物クリアランスを
低下させるための十分な戦略ではない。CYP酵素の活性の阻害は、その同じ酵素によっ
て代謝された他の薬物の代謝およびクリアランスに影響を及ぼすことができる。CYP阻
害は、他の薬物が毒性レベルまで身体に蓄積する原因となる可能性がある。
【0005】
薬物の代謝特性を改善するための潜在的に魅力のある戦略は重水素修飾である。この手
法では、薬物のCYP媒介性代謝を遅くするか、または1つもしくは複数の水素原子を重
水素原子で置き換えることによって望ましくない代謝物の形成を低減させることが試みら
れる。重水素は、水素の安全で、安定な、非放射性同位体である。水素と比較して、重水
素は、炭素とのより強い結合を形成する。選択された場合には、重水素によって付与され
る結合強度の増加によって、薬物のADME特性にプラスの影響が与えられ、それにより
、薬効、安全性、および/または忍容性に対する改善の可能性を引き起こすことができる
。同時に、重水素の大きさおよび形状が水素のものと本質的に同一であるため、水素を重
水素で置き換えることによって、水素のみを含有する元の化学実体と比較して、薬物の生
化学的効力および選択性に影響を与えることは予期されていない。
【0006】
過去35年にわたって、代謝速度に対する重水素置換の影響は、非常に低い割合の承認
薬に対して報告されている(例えば、Blake, MIら、J Pharm Sci、1975年、64
巻:367~91頁;Foster、AB、Adv Drug Res 1985年、14巻:1~40頁(
「Foster」);Kushner, DJら、Can J Physiol Pharmacol 1999年、79
~88頁;Fisher, MBら、Curr Opin Drug Discov Devel、2006年、9巻:10
1~09頁(「Fisher」)を参照のこと)。結果は変動的であり、予測不可能であ
った。一部の化合物では、重水素化によってin vivoでの代謝クリアランスが減少
した。他の化合物では、代謝における変化はなかった。さらに他の化合物は、代謝クリア
ランスの増加を実証した。また、重水素の影響の変動性によって、専門家は、有害な代謝
を阻害するための実行可能な薬物設計戦略としての重水素修飾を疑問視し、却下している
(Fosterの35頁およびFisherの101頁を参照のこと)。
【0007】
重水素原子が公知の代謝部位に組み込まれる場合でさえ、薬物の代謝特性に関する重水
素修飾の影響は予測不可能である。重水素化薬物を実際に調製および試験することによっ
てのみ、代謝速度が重水素化されていないカウンターパートの代謝速度と異なるか否かお
よびどのように異なるのかを決定することができる。例えば、Fukutoら(J. Med. Chem
.、1991年、34巻、2871~76頁)を参照されたい。多くの薬物は代謝可能な
複数の部位を有する。重水素置換が必要とされる部位(単数または複数)および代謝に関
する影響を認めるのに必要な重水素化の程度は、存在する場合、各薬物で異なる。
【0008】
本発明は、新規なアイバカフトールの誘導体、およびその薬学的に許容される塩に関す
る。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、およびCFTR(嚢胞性線維症膜コンダク
タンス制御因子)増強剤を投与することによって処置されることが有益な疾患および状態
を処置する方法におけるこのような組成物の使用も提供する。
【0009】
VX-770として、かつ化学名N-(2,4-ジ-tert-ブチル-5-ヒドロキ
シフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドによっても
公知である、アイバカフトールは、CFTR増強剤として作用する。G551D-CFT
R変異の少なくとも1つの複製を有する嚢胞性線維症を有する患者におけるアイバカフト
ールの第III相治験の結果により、肺機能、ならびに汗の塩化物レベル、肺の増悪の可
能性および体重を含む疾患の他の重要な指標における著しいレベルの改善が実証された。
アイバカフトールは、G551D-CFTR変異を有する患者における嚢胞性線維症の処
置に対して、2012年にFDAによって承認された。2014年には、アイバカフトー
ルはCFTR遺伝子における8つのさらなる変異(G178R、S549N、S549R
、G551S、G1244E、S1251N、S1255PおよびG1349D)のうち
の1つを有する患者における嚢胞性線維症を処置することに対して承認された。2015
年には、アイバカフトールは、CFTR遺伝子における10個の変異(G551D、G1
244E、G1349D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S5
49N、S549RおよびR117H)のうちの1つを有する患者における嚢胞性線維症
を処置することに対して承認された。アイバカフトールは、2006年および2007年
に、それぞれ、FDAによって認可されたファストトラック指定およびオーファンドラッ
グ指定であり、商標名Kalydeco(登録商標)の下で市販されている。アイバカフ
トールは、より一般的なΔF508-CFTR変異を有する嚢胞性線維症患者の経口処置
に対して、VX-809(CFTRコレクターである、ルマカフトールとしても公知)と
組み合わせても承認されており、この組合せは、商標名Orkambi(登録商標)の下
で市販されている。
アイバカフトールの有益な活性にもかかわらず、前述の疾患および状態を処置するため
に、新規化合物に対する必要性が継続して存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Kempf、D.J.ら、Antimicrobial agents and chemotherapy、1997年、41巻(3号):654~60頁
【文献】Wang, Lら、Clinical Pharmacology and Therapeutics、1994年、56巻(6 Pt 1):659~67頁
【文献】www.accessdata.fda.govにおけるキニジンのFDAラベル
【文献】Blake, MIら、J Pharm Sci、1975年、64巻:367~91頁
【文献】Foster、AB、Adv Drug Res 1985年、14巻:1~40頁
【文献】Kushner, DJら、Can J Physiol Pharmacol 1999年、79~88頁
【文献】Curr Opin Drug Discov Devel、2006年、9巻:101~09頁
【文献】J. Med. Chem.、1991年、34巻、2871~76頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
ここで、アイバカフトールの重水素化された類似体(CTP-656、D9-アイバカ
フトールまたは化合物106とも称される化合物(I)、および化合物105またはD1
8-アイバカフトールとも称される化合物(II)を含む)が、被験体に投与された場合
に、アイバカフトールと比較して向上された代謝プロファイルを有することが見出された
。特に、化合物(I)の親の代謝物に対する比は、アイバカフトールに対して見られるプ
ロファイルより大きい。化合物(I)は、以下の構造式:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩によって表される。化合物(II)は、以下の構造式:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩によって表される。
【0012】
アイバカフトールに対する化合物(I)の向上された薬物動態プロファイルは、化合物
(I)が、1日に1回、約50から約200mgの範囲の用量で、有効でありうることを
示唆する。これらの発見に基づき、被験体において、CFTRによって媒介される状態を
処置するために、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩を使
用する新規な投薬レジメンが、ここで開示される。
【0013】
本発明の第1の実施形態は、CFTRの活性を増強する化合物によって処置することが
できる状態を処置するための方法である。方法は、化合物(I)もしくは(II)、また
はその薬学的に許容される塩を、1日に1回の量、被験体に投与することを含み、化合物
(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩の量は、約50mgから約2
00mgの範囲内、例えば、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90
mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約1
50mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約200
mgである。特に、被験体はヒトである。この実施形態の一態様では、被験体は、6歳ま
たはそれより高い年齢のヒトである。好ましくは、化合物(I)もしくは(II)、また
はその薬学的に許容される塩は、前述の投薬量のいずれかで、経口投与される。ある特定
の実施形態では、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩は、
本明細書に開示されている任意の錠剤を含む錠剤、もしくは生物学的に同等な錠剤製剤、
または顆粒剤である医薬製剤において、前述の投薬量のいずれかで、経口投与される。こ
の実施形態のある特定の態様では、化合物は化合物(I)である。この実施形態の他の態
様では、化合物は化合物(II)である。
【0014】
代替的な第1の実施形態では、方法は、一定量の化合物(I)もしくは(II)、また
はその薬学的に許容される塩を、1日に1回、被験体に投与することを含み、一定量の化
合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩は、約25mgから約7
5mgの範囲内、例えば、約25mg、約37.5mg、約50mg、約62.5mg、
または約75mgであり、被験体は、2から6歳未満かつ14kg未満のヒトであるか、
あるいは、2から6歳未満かつ14kgまたはそれより重いヒトである。一態様では、2
から6歳未満かつ14kg未満のヒトに対する用量は25mgである。一態様では、2か
ら6歳未満かつ14kgより重いヒトに対する用量は37.5mgである。好ましくは、
化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩は、前述の投薬量のい
ずれかで経口投与される。好ましくは、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学
的に許容される塩は、顆粒剤である医薬製剤において、前述の投薬量のいずれかで経口投
与される。この実施形態のある特定の態様では、化合物は化合物(I)である。この実施
形態の他の態様では、化合物は化合物(II)である。
【0015】
第2の実施形態は、CFTRの活性を増強する化合物によって処置することができる状
態を処置するための、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩
である。化合物は、本明細書に開示されている投薬レジメンで投与されてもよい。この実
施形態のある特定の態様では、化合物は化合物(I)である。この実施形態の他の態様で
は、化合物は化合物(II)である。
【0016】
本発明の第3の実施形態は、CFTRの活性を増強する化合物によって処置することが
できる状態を処置するための医薬の製造のための、化合物(I)もしくは(II)、また
はその薬学的に許容される塩の使用である。化合物は、本明細書に開示されている投薬レ
ジメン、例えば、1日に1回、50mgから200mgの範囲の量で投与されてもよい。
この実施形態のある特定の態様では、化合物は化合物(I)である。この実施形態の他の
態様では、化合物は化合物(II)である。
【0017】
本発明の第4の実施形態は、薬学的に許容される担体または希釈剤、および約50mg
から約200mgの化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩を
含む医薬組成物である。具体的には、医薬組成物は、約50mg、約60mg、約70m
g、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130m
g、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約19
0mg、または約200mgの化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容
される塩を含む。より具体的には、例えば、医薬組成物は、1日に1回投与される、75
、100、または150mgの化合物Iを含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、1
日に1回投与される、100~150mgの化合物Iを含む。特定の実施形態では、医薬
組成物は、1日に1回投与される、100mgの化合物Iを含む。特定の態様では、医薬
組成物は錠剤である。代替的な第4の実施形態は、薬学的に許容される担体または希釈剤
、および約25mgから約75mgの化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的
に許容される塩を含む医薬組成物である。具体的には、医薬組成物は、約25mg、約3
7.5mg、約50mg、約62.5mg、または約75mgの化合物(I)もしくは(
II)、またはその薬学的に許容される塩を含む。特定の態様では、医薬組成物は顆粒剤
である。この実施形態のある特定の態様では、化合物は化合物(I)である。この実施形
態の他の態様では、化合物は化合物(II)である。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、単一漸増用量研究におけるCTP-656およびアイバカフトールに対する平均血漿濃度(ng/mL)を示す。
【0020】
図1B図1Bは、単一漸増用量研究におけるCTP-656およびアイバカフトールに対する平均血漿濃度(ng/mL)を示す。
【0021】
図2図2は、150mgの経口用量の後のCTP-656およびアイバカフトールに対する平均血漿濃度(ng/mL)を示す。
【0022】
図3図3は、150mgの経口用量の後の(a)CTP-656および(b)アイバカフトール(Kalydeco)に対する親対代謝物の薬物動態プロファイルを示す。
【0023】
図4A図4Aは、試験物品の連続添加によって増強されたピーク電流を示す。
【0024】
図4B図4Bは、増強剤応答のAUCを示す。
【0025】
図4C図4Cは、アイバカフトール、CTP-656、およびD18-アイバカフトールに対する増強剤応答のΔISCを示す。
【0026】
図5図5は、単一漸増用量研究の概略図である。
【0027】
図6図6は、アイバカフトールおよびCTP-656の代謝物の概略図である。
【0028】
図7A図7Aは、D9-アイバカフトールおよびD18-アイバカフトールに対するクロスオーバー研究の概略図である。
【0029】
図7B図7Bは、25mgの経口用量の後のD9-アイバカフトールおよびD18-アイバカフトールに対する平均血漿濃度(ng/mL)を示す。
【0030】
図8図8は、CTP-656(D9-アイバカフトール)に対する複数回漸増用量治験の設計の概略図を示す。パートA:150mgのCTP-656(2×75mgの錠剤)対150mgのアイバカフトールの単一用量の薬物動態の比較(クロスオーバーを含む)。パートB:1日1回、7日間投与された、3用量のCTP-656(75mg、150mg、および225mg)またはプラセボのアセスメント。
【0031】
図9図9は、単一用量のCTP-656またはアイバカフトールの後のCTP-656およびアイバカフトールの血漿濃度を示すグラフである。
【0032】
図10図10は、単一用量のCTP-656またはアイバカフトールの後のCTP-656および代謝物の血漿濃度(左パネル)ならびにアイバカフトールおよび代謝物の血漿濃度(右パネル)を示すグラフである。
【0033】
図11図11は、複数投薬(1日に1回、7日間)のCTP-656の後のCTP-656および代謝物の血漿濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
一実施形態の本発明は、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容され
る塩を含むある特定の投薬レジメンおよびある特定の医薬組成物に関する、化合物(I)
もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩の使用方法に関する。医薬組成物お
よび投薬レジメンは、CFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)によって媒介
される状態を処置するために有用である。特に、化合物(I)もしくは(II)、または
その薬学的に許容される塩ならびに医薬組成物および方法は、CFTRの活性を増強させ
る化合物によって処置することができる状態を処置するために有用である。
【0035】
一実施形態では、本発明は、CFTRの活性を増強させる化合物によって処置すること
ができる状態を処置するための方法を提供する。方法は、一定量の化合物(I)もしくは
(II)、またはその薬学的に許容される塩を、1日に1回、50mgから200mgの
範囲で、被験体に投与することを含む。別の実施形態では、本発明は、被験体において、
CFTRによって媒介される状態を処置する方法であって、化合物I:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む組成物を被験体
に投与することを含み、投与される化合物の量が、50mg/日から200mg/日の範
囲であり、組成物が、1日に1回投与される、方法を提供する。具体的には、上記実施形
態では、例えば、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、1
10mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg
、180mg、190mg、または200mgの化合物Iを、1日に1回、投与すること
ができる。より具体的には、例えば、75、100、または150mgの化合物Iを、1
日に1回、投与することができる。特定の実施形態では、100~150mgの化合物I
を、1日に1回、投与することができる。特定の実施形態では、100mgの化合物Iを
、1日に1回、投与することができる。特定の実施形態では、被験体はヒトである。ある
いは、方法は、一定量の化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される
塩を、1日に1回、被験体に投与することを含み、化合物(I)もしくは(II)、また
はその薬学的に許容される塩の量は、25mgから75mgの範囲内、例えば、25mg
、37.5mg、50mg、62.5mg、または75mgであり、被験体は、2から6
歳未満かつ14kg未満のヒトであるか、あるいは、2から6歳未満かつ14kgまたは
それより重いヒトである。一態様では、2から6歳未満かつ14kg未満のヒトに対する
用量は、25mgである。一態様では、2から6歳未満かつ14kgより重いヒトに対す
る用量は、37.5mgである。
【0036】
本明細書に開示されている方法によって処置可能な状態として、嚢胞性線維症、遺伝性
肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、凝固-繊維素溶解欠乏症、例えば、プロテインC欠
乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂質処理欠損症(Lipid processing deficiency)、例
えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポタンパク血
症、リソソーム蓄積症、例えば、I-細胞疾患/偽ハーラー症候群、ムコ多糖症、サンド
ホフ病/テイ-サックス病(Sandhof/Tay-Sach)、クリーグラー-ナジャー病II型、多
腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダー
ゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型(Glycanosis
CDG type 1)、遺伝性肺気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性線維素
原減少症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、神経下垂体性DI(Neurophyseal DI)、腎
性DI(Neprogenic DI)、シャルコー-マリートゥース症候群、ペリツェウス-メルツ
バッヘル病(Perlizaeus-Merzbacher disease)、神経変性疾患、例えば、アルツハイマ
ー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、各種のポリ
グルタミン神経障害、例えば、ハンチントン、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(Dentatorubal pallidoluysian)、および筋緊張性ジス
トロフィー症、ならびに海綿状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト-ヤコブ病、ファ
ブリー病、ストロイスラー-シャインカー症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ドラ
イアイ疾患、シェーグレン病、および胆管障害、または腎イオンチャネル障害(これらに
制限されないが、バーター症候群およびデント病を含む)が挙げられる。
【0037】
具体的な実施形態では、状態は、それを必要とするヒト患者などの被験体における嚢胞
性線維症である。別の具体的な実施形態では、状態は、それを必要とするヒト患者などの
被験体における慢性閉塞性肺疾患である。ある特定の実施形態では、被験体は、G551
D-CFTR変異を有するヒト患者である。ある特定の実施形態では、被験体は、CFT
R遺伝子に以下の変異:G178R、S549N、S549R、G551S、G1244
E、S1251N、S1255PまたはG1349Dのうちの1つを有するヒト患者であ
る。ある特定の態様では、被験体は、CFTR遺伝子に以下の変異:G551D、G12
44E、G1349D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S54
9N、S549RおよびR117Hのうちの1つを有するヒト患者である。前述の実施形
態の別の例では、化合物は、1日に1回、経口投与される。
【0038】
前述の実施形態では、化合物は、任意選択で、第2の薬剤と組み合わせて投与される。
ある特定の実施形態では、被験体は、ΔF508-CFTR変異を有するヒト患者である
。第2の薬剤の例は、CFTRコレクター、例えば、ルマカフトール(VX-809)ま
たはテザカフトール(VX-661)を含む。一部の実施形態では、化合物(I)もしく
は(II)、またはその薬学的に許容される塩は、任意選択で、第2の薬剤と組み合わせ
て投与され、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩の量は、
1日1回、各回50mgから200mg、例えば、50mg、60mgで、70mg、8
0mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、1
50mg、160mg、170mg、180mg、190mg、または200mgで投与
される。あるいは、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩は
、任意選択で、第2の薬剤と組み合わせて投与され、化合物(I)もしくは(II)、ま
たはその薬学的に許容される塩の量は、1日1回、各回25mgから75mg、例えば、
25mg、37.5mg、50mg、62.5mg、または75mgで投与される。
【0039】
有効用量は、当業者によって認識されているように、処置される疾患、疾患の重症度、
投与経路、被験体の性別、年齢および全身の健康状態、賦形剤の利用、他の薬剤の使用な
ど他の治療処置との共利用の可能性ならびに処置する医師の判断によっても変わる。
【0040】
第2の治療剤を含む医薬組成物について、第2の治療剤の有効量は、まさにその薬剤を
使用する単剤療法レジームにおいて通常利用される投薬量の約20%から100%の間で
ある。好ましくは、有効量は、通常の単剤療法の用量の約70%から100%の間である
。これらの第2の治療剤の通常の単剤療法の投薬量は当技術分野において周知である。例
えば、Wellsら編、Pharmacotherapy Handbook、第2版、Appleton and Lange、Stamfo
rd、Conn. (2000年);PDR Pharmacopoeia、Tarascon Pocket Pharmacopoeia
2000、Deluxe版、Tarascon Publishing、Loma Linda、Calif. (2000年)を
参照のこと。その参照文献のそれぞれが、参照により、全体として本明細書に組み込まれ
る。
【0041】
上記参照された第2の治療剤の一部は、本発明の化合物と相乗的に作用することが期待
される。このことが起こる場合、第2の治療剤および/あるいは化合物(I)もしくは(
II)、またはその薬学的に許容される塩の有効投薬量を、単剤療法において要求される
量よりも低減させることが可能となる。このことは、第2の治療剤、あるいは化合物(I
)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの毒性の副作用の最小
化、有効性における相乗的改善、投与もしくは使用の容易性の改善および/または化合物
の調製もしくは製剤化の全体的な費用の低減、という利点を有する。
【0042】
別の実施形態では、上記処置方法のいずれかは、1種または複数の第2の治療剤を、そ
れを必要とする被験体に共投与するさらなるステップを含む。第2の治療剤の選択は、ア
イバカフトールとの共投与に有用であることが公知の任意の第2の治療剤からなされても
よい。第2の治療剤の選択は、処置される特定の疾患または状態に依存してもよい。本発
明の方法において用いることができる第2の治療剤の例は、化合物(I)もしくは(II
)、またはその薬学的に許容される塩、および第2の治療剤を含む組合せ組成物において
使用するための上記に示したものである。
【0043】
特に、本発明の併用療法は、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容
される塩、またはその薬学的に許容される塩および第2の治療剤、例えば、VX-809
(ルマカフトール)またはVX-661(テザカフトール)を、処置のためにそれを必要
とする被験体に共投与することを含む。ある特定の実施形態では、被験体は、ΔF508
-CFTR変異を有するヒト患者(特に、F508del変異にホモ接合性のヒト患者)
である。
【0044】
本明細書で使用される用語「共投与される」は、第2の治療剤が、単一の剤形(例えば
、本発明の化合物と上記の第2の治療剤とを含む本発明の組成物)または別々の、複数剤
型の一部として、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩と一
緒に投与されうることを意味する。あるいは、化合物(I)もしくは(II)、またはそ
の薬学的に許容される塩の投与前、投与と連続して、または投与の後に、さらなる薬剤が
投与されてもよい。このような併用療法の処置において、化合物(I)もしくは(II)
、またはその薬学的に許容される塩と、第2の治療剤(単数または複数)の両方が、従来
の方法によって投与される。化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容さ
れる塩と、第2の治療剤の両方を含む、本発明の組成物の被験体への投与は、処置の過程
における、同じ治療剤、任意の他の第2の治療剤あるいは化合物(I)もしくは(II)
、またはその薬学的に許容される塩の、別の時点における、前記被験体への別々の投与を
除外するものではない。
【0045】
これらの第2の治療剤の有効量は当業者に周知であり、投与に対するガイダンスは、本
明細書で参照される特許および公開された特許出願、ならびにWellsら編、Pharmacothera
py Handbook、第2版、Appleton and Lange、Stamford、Conn. (2000年);PDR
Pharmacopoeia、Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000、Deluxe版、Tarascon
Publishing、Loma Linda、Calif. (2000年)、および他の医療テキストにおいて
見出すことができる。しかし、第2の治療剤の最適な有効量の範囲を決定することは、十
分に、当業者の技能範囲内である。
【0046】
本発明の一実施形態では、第2の治療剤の有効量は、化合物(I)もしくは(II)、
またはその薬学的に許容される塩が投与されない場合のその有効量未満である。このよう
にして、高用量のいずれかの薬剤に伴う、望ましくない副作用が最小限となりうる。他の
潜在的な利点(制限はしないが、投薬レジメンの改善および/または薬物コストの低減を
含む)は、当業者に明らかである。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、被験体における、上記に示した疾患、障害または症状
の処置または予防のための、単一の組成物としてまたは別々の剤形としての、医薬の製造
における、単独での、または上記第2の治療剤のうちの1種もしくは複数と一緒の、化合
物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本発明
の別の態様は、被験体における、本明細書で描写されている疾患、障害またはそれらの症
状の処置または予防において使用するための、化合物(I)もしくは(II)、またはそ
の薬学的に許容される塩である。
【0048】
一実施形態では、重水素として指定されていない任意の原子は、化合物(I)もしくは
(II)、またはその薬学的に許容される塩において、その天然の同位体存在度で存在す
る。
【0049】
化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩の合成は、その教示
が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,865,902号に記載されて
いる方法によって容易に達成されうる。特に、米国特許第8,865,902号の実施例
3には、化合物(I)の合成について記載されており、実施例4には、化合物(II)の
合成について記載されている。
【0050】
このような方法は、対応する重水素化され、任意選択で他の同位体を含有する試薬およ
び/または中間体を利用して、本明細書で描写されている化合物を合成すること、または
同位体原子を化学構造に導入するための、当技術分野において公知の、標準合成プロトコ
ルを実施することで実行することができる。
【0051】
本発明は、有効量の化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩
と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。担体(単数または複数)は
、製剤の他の成分と相溶性であり、薬学的に許容される担体の場合には、医薬において使
用される量で、そのレシピエントに有害でないという意味において、「許容される」。
【0052】
本発明の医薬組成物において使用されてもよい薬学的に許容される担体、アジュバント
およびビヒクルとして、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン
酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、
例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の
部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナ
トリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸
マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カ
ルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン-ポリオキ
シプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0053】
必要であれば、医薬組成物中の本発明の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティ
は、当技術分野において周知の方法によって強化されてもよい。一つの方法として、製剤
における脂質賦形剤の使用が挙げられる。「Oral Lipid-Based Formulations: Enhanc
ing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the P
harmaceutical Sciences)」、David J. Hauss編 Informa Healthcare、2007年
;および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Dru
g Delivery: Basic Principles and Biological Examples」、Kishor M. Wasan
編、Wiley-Interscience、2006年を参照のこと。
【0054】
バイオアベイラビリティを強化する別の公知の方法は、任意選択で、LUTROL(商
標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロ
キサマー、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体を用いて製
剤化された、本発明の化合物の非晶質形態の使用である。米国特許第7,014,866
号;ならびに米国特許出願公開第20060094744号および同第20060079
502号を参照のこと。
【0055】
本発明の医薬組成物は、経口投与に適するものを含む。他の製剤は、単位剤形、例えば
、錠剤、徐放性カプセル剤、顆粒剤で、およびリポソーム中に存在するのが都合のよい場
合があり、薬学の技術分野において周知の任意の方法で調製されてもよい。例えば、Remi
ngton:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkin
s、Baltimore、MD(第20版 2000年)を参照のこと。
【0056】
このような調製方法は、投与される分子と、1種または複数の補助成分を構成する担体
などの成分を合わせるステップを含む。一般に、組成物は、活性成分と、液体担体、リポ
ソームもしくは微細分割された固体担体、または両方を均一におよび密接に合わせ、次い
で、必要であれば、製品を成形することによって調製される。
【0057】
ある特定の実施形態では、化合物は経口投与される。経口投与に適する本発明の組成物
は、所定量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル剤、サシェ剤、または錠剤;散剤また
は顆粒剤;水性液体もしくは非水性液体中の液剤または懸濁剤;水中油型液状乳剤(liqu
id emulsion);油中水型液状乳剤;リポソームに充填されたもの;またはボーラスとし
てなど、個別の単位で存在してもよい。軟ゼラチンカプセル剤は、化合物の吸収速度を有
益に増加させることができる、このような懸濁剤を含有するのに有用でありうる。具体的
な実施形態では、化合物は、錠剤として経口投与される。あるいは、化合物は、顆粒剤と
して経口投与される。
【0058】
経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体として、ラクトースおよびコーンス
ターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、典型的に添加される。
カプセル剤の形態での経口投与に対して、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥コ
ーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤およ
び懸濁化剤と組み合わされる。所望の場合、ある特定の甘味料および/または矯味矯臭剤
および/または着色剤が添加されてもよい。別の実施形態では、組成物は、錠剤の形態で
ある。ある特定の実施形態では、錠剤として例示的な製剤は、その教示が、参照により本
明細書に組み込まれる、米国特許第8,754,224号に開示されている。
【0059】
特定の実施形態では、錠剤は、150mgの化合物(I)もしくは(II)、またはそ
の薬学的に許容される塩、ならびに以下の不活性成分:コロイド状二酸化ケイ素、クロス
カルメロースナトリウム、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(hypromellose
acetate succinate)、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セル
ロース、およびラウリル硫酸ナトリウムを含有する。ある特定の実施形態では、錠剤のフ
ィルムコートは、カルナウバロウ、FD&C Blue#2、PEG3350、ポリビニ
ルアルコール、タルク、および二酸化チタンを含有する。ある特定の実施形態では、錠剤
は、印刷用インクで印刷され、印刷用インクは、水酸化アンモニウム、黒色酸化鉄(iron
oxide black)、プロピレングリコール、およびシェラックを含有してもよい。別の特
定の実施形態では、錠剤は、以下の不活性成分と一緒に、75mgの化合物I(CTP-
656、D9-アイバカフトール)を含有する:微結晶セルロース、ラクトース一水和物
、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム
、およびラウリル硫酸ナトリウム。適切な1日1回用量を提供するために、複数の錠剤が
投与されてもよい(例えば、150mgの1日1回用量のために、2錠の75mg錠剤が
一緒に投与される)。別の特定の実施形態では、錠剤は、過剰な粒状体材料を用いて圧縮
された顆粒剤を含み、顆粒剤は、約17.1パーセント(錠剤の重量の)の化合物Iの非
晶質分散体(非晶質分散体は、分散体の重量の約80%の実質的に非晶質の化合物I、ヒ
プロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(HPMCAS)(分散体の重量の約19.
5パーセント)およびラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurel sulfate)(分散体の
重量の約0.5パーセント)を含む)、微結晶セルロースなどの圧縮助剤(例えば、Av
icel PH101)(錠剤の重量の約39.0パーセント)、ラクトース一水和物3
16などの希釈剤/充填剤(錠剤の重量の約38.9パーセント)ラウリル硫酸ナトリウ
ム(SLS)などの界面活性剤(錠剤の重量の約0.50パーセント)、クロスカルメロ
ースナトリウム(例えば、Ac-di-sol)などの崩壊剤(錠剤の重量の約1.50
パーセント)およびHyqualステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤(錠剤の重量の
約0.20パーセント)を含み、細胞外マトリックスは、クロスカルメロースナトリウム
(例えば、Ac-di-sol)などの崩壊剤(錠剤の重量の約1.50パーセント)、
コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤(錠剤の重量の約0.50パーセント)およびステア
リン酸マグネシウム(例えば、Hyqual)などのさらなる滑沢剤(錠剤の重量の約0
.80パーセント)を含む。したがって、一実施形態では、本発明は、組成物の重量の約
17.1wt%の固体分散体(分散体は、分散体の重量の約80wt%の実質的に非晶質
の化合物I(CTP-656)、分散体の重量の約19.5wt%のヒプロメロース酢酸
エステルコハク酸エステル(HPMCAS)、および分散体の重量の約0.5wt%のS
LSを含む)、組成物の重量の約39.0wt%の微結晶セルロース、組成物の重量の約
38.9wt%のラクトース一水和物、組成物の重量の約3wt%のクロスカルメロース
ナトリウム、組成物の重量の約0.5wt%のSLS、組成物の重量の約0.5wt%の
コロイド状二酸化ケイ素、および組成物の重量の約0.8wt%のステアリン酸マグネシ
ウムを含む医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、錠剤は、75mgの化合物
I(CTP-656)を含む。他の実施形態では、錠剤は、100mgの化合物I(CT
P-656)を含む。さらに他の実施形態では、錠剤は、150mgの化合物I(CTP
-656)を含む。
【0060】
別の特定の実施形態では、顆粒剤は、25mg、50mgまたは75mgの化合物(I
)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩を含有する単位分包で封入される
。化合物(I)または(II)の経口顆粒剤の各単位分包は、25mgの化合物(I)も
しくは(II)、50mgの化合物(I)もしくは(II)または75mgの化合物(I
)もしくは(II)および以下の不活性成分を含有する:コロイド状二酸化ケイ素、クロ
スカルメロースナトリウム、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ラクトース
一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、スクラロース、およびラウリル硫
酸ナトリウム。別の実施形態では、組成物は、顆粒剤の形態である。ある特定の実施形態
では、顆粒剤として例示的な製剤は、その教示が、参照により本明細書に組み込まれる、
米国特許第8,883,206号に開示されている。
【0061】
別の実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療剤をさらに含む。第2の治療剤は、
アイバカフトールと同じ作用機序を有する化合物と共に投与される場合に、有利な特性を
有することが公知であるか、または有利な特性を実証する、任意の化合物または治療剤か
ら選択されてもよい。
【0062】
好ましくは、第2の治療剤は、嚢胞性線維症、遺伝性肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシ
ス、凝固-繊維素溶解欠乏症、例えば、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管性浮腫、脂
質処理欠損症、例えば、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベー
タリポタンパク血症、リソソーム蓄積症、例えば、I-細胞疾患/偽ハーラー症候群、ム
コ多糖症、サンドホフ病/テイ-サックス病、クリーグラー-ナジャー病II型、多腺内
分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損
症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性肺気腫、先天
性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性線維素原減少症、ACT欠損症、尿崩症(D
I)、神経下垂体性DI、腎性DI、シャルコー-マリートゥース症候群、ペリツェウス
-メルツバッヘル病、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎
縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病、各種のポリグルタミン神経障害、例えば
、ハンチントン、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮
症(Dentatorubal pallidoluysian)、および筋緊張性ジストロフィー症、ならびに海綿
状脳症、例えば、遺伝性クロイツフェルト-ヤコブ病、ファブリー病、ストロイスラー-
シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患、シェーグレン病、および胆管障害、ま
たは腎イオンチャネル障害(これらに制限されないが、バーター症候群およびデント病を
含む)を含む、様々な状態の処置において有用な薬剤である。
【0063】
具体的な実施形態では、第2の治療剤は、嚢胞性線維症の処置において有用な薬剤であ
る。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、G551D-CFTR変異を有するヒト
患者の嚢胞性線維症の処置において有用な薬剤である。ある特定の実施形態では、第2の
治療剤は、CFTR遺伝子に以下の変異:G178R、S549N、S549R、G55
1S、G1244E、S1251N、S1255PまたはG1349Dのうちのいずれか
を有するヒト患者の嚢胞性線維症の処置において有用な薬剤である。ある特定の態様では
、第2の治療剤は、CFTR遺伝子に以下の変異:G551D、G1244E、G134
9D、G178R、G551S、S1251N、S1255P、S549N、S549R
およびR117Hのうちのいずれかを有するヒト患者の嚢胞性線維症の処置において有用
な薬剤である。
【0064】
一実施形態では、第2の治療剤は、VX-809(ルマカフトール)またはVX-66
1(テザカフトール)である。ある特定の実施形態では、被験体は、ΔF508-CFT
R変異を有するヒト患者(特に、F508del変異にホモ接合性のヒト患者)である。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、別々の剤形の化合物(I)もしくは(II)、またはそ
の薬学的に許容される塩と、上述の第2の治療剤のいずれかのうちの1種または複数とを
提供し、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容される塩と、第2の治
療剤とは、互いに合わせられている。本明細書で使用される場合、用語「互いに合わせら
れている」は、別々の剤形が一緒にパッケージングされているか、そうでなければ、互い
に付着されており、その結果、別々の剤形が一緒に販売され、(互いに24時間未満内に
連続して、または同時に)投与されるよう意図されていることが容易に明らかであること
を意味する。
【0066】
本発明の医薬組成物では、化合物(I)もしくは(II)、またはその薬学的に許容さ
れる塩は、有効量で存在する。本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、適切な投薬
レジメンで投与する場合、標的の障害を処置するのに十分である量を指す。
【0067】
本発明は、a)化合物IもしくはII、またはその塩を、50mgから200mgの範
囲の量で含む医薬組成物、およびb)化合物IもしくはII、またはその塩を投与するた
めの添付文書を含む製品も提供する。添付文書は、50mgから200mgの化合物Iも
しくはII、またはその塩を、1日に1回、このような処置を必要とする被験体、例えば
、CFTRによって媒介される状態、例えば、嚢胞性線維症に罹患しているか、またはか
かりやすい被験体に投与するための説明書を含む。
【0068】
動物およびヒトに対する投薬量(体表1平方メートル当たりのミリグラムで)の相互関
係は、Freireichら、Cancer Chemother. Rep、1966年、50巻:219頁に記載さ
れている。体表面積は、被験体の身長および体重から、およそ決定することができる。例
えば、Scientific Tables、Geigy Pharmaceuticals、Ardsley、N.Y.、1970年、5
37頁を参照のこと。
【0069】
定義
用語「処置する」は、疾患(例えば、本明細書で描写されている疾患または障害)の発
症または進行を低下させる、抑制させる、減弱させる、消失させる、休止させる、または
安定化させ、疾患の重症度を弱め、または疾患に伴う症状を改善することを意味する。
【0070】
「疾患」は、細胞、組織、もしくは器官の通常の機能にダメージを与えるか、または妨
害する任意の状態または障害を意味する。
【0071】
天然の同位体存在度の一部の変動は、合成において使用される化学材料の起源によって
、合成された化合物中で生じることが認識される。したがって、アイバカフトールの調製
は、本質的に、少量の重水素化された同位体置換体を含有する。この変動にもかかわらず
、天然に存在する安定な水素および炭素の同位体の濃度は、本発明の化合物の安定な同位
体置換の度合いと比較して小さく、取るに足らない。例えば、Wada, Eら、Seikagaku、
1994年、66巻:15頁;Gannes, LZら、Comp Biochem Physiol Mol Integr
Physiol、1998年、119巻:725頁を参照のこと。
【0072】
化合物(I)または(II)では、特定の同位体として具体的に指定されていない任意
の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことを意味する。他に述べられていなけ
れば、位置が、具体的に、「H」または「水素」と指定されている場合、その位置は、そ
の天然存在度の同位体組成物における水素を有するものと理解される。また、他に述べら
れていなければ、位置が、具体的に、「D」または「重水素」と指定されている場合、そ
の位置は、0.015%である重水素の天然存在度より少なくとも3000倍多い存在度
で重水素を有するものと理解される(すなわち、少なくとも45%の重水素の取り込み)
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「同位体濃縮係数(isotopic enrichment factor)
」は、具体的な同位体の同位体存在度と天然存在度の間の比を意味する。
【0074】
他の実施形態では、本発明の化合物(すなわち、化合物Iまたは化合物II)は、少な
くとも3500(それぞれ指定された重水素原子における52.5%の重水素の取り込み
)、少なくとも4000(60%の重水素の取り込み)、少なくとも4500(67.5
%の重水素の取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500
(82.5%の重水素の取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素の取り込み)
、少なくとも6333.3(95%の重水素の取り込み)、少なくとも6466.7(9
7%の重水素の取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素の取り込み)、または
少なくとも6633.3(99.5%の重水素の取り込み)のそれぞれ指定された重水素
原子に対する同位体濃縮係数を有する。
【0075】
用語「同位体置換体」は、化学構造が、その同位体組成においてのみ、化合物(I)ま
たは(II)と異なる、種を指す。
【0076】
用語「化合物」は、本発明の化合物を指す場合、分子の構成原子の中に同位体変動が存
在する可能性があることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集まりを指す。したが
って、指定された重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物はまた、
その構造において指定された重水素の位置のうちの1つまたは複数で水素原子を有する同
位体置換体の含有量がより少ないことが、当業者に明らかである。本発明の化合物におけ
るそのような同位体置換体の相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化試薬
の同位体純度、および化合物を調製するために使用される様々な合成ステップにおける重
水素の取り込みの効率を含むいくつかの因子に依存する。
【0077】
本発明は、化合物(I)または(II)の塩も提供する。本発明の化合物の塩は、酸と
化合物の塩基性基、例えば、アミノ官能基との間で、または塩基と化合物の酸性基、例え
ば、カルボキシル官能基との間で形成される。別の実施形態によると、化合物は、薬学的
に許容される酸付加塩である。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、正しい医学的判断の範囲
内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを有さず、ヒトおよび他の哺乳動物の組織
と接触して使用するのに適し、合理的なベネフィット/リスク比に見合う構成成分を指す
。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへの投与の際に、直接的にまたは間接的に
のいずれかで、本発明の化合物を提供することができる任意の非毒性塩を意味する。「薬
学的に許容される対イオン」は、レシピエントへの投与の際に塩から放出される場合、毒
性ではない塩のイオン部分である。
【0079】
薬学的に許容される塩を形成するために通常用いられる酸として、無機酸、例えば、ニ
硫化水素(hydrogen bisulfide)、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン
酸、ならびに有機酸、例えば、パラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石
酸(bitartaric acid)、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン
酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、ク
エン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が挙げられる。した
がって、このような薬学的に許容される塩として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫
酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリ
ン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸
塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩
、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マ
レイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩
、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、
メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸
塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、
β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩
、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸
塩、マンデル酸塩およびその他の塩が挙げられる。一実施形態では、薬学的に許容される
酸付加塩として、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸を用いて形成されるもの、および特に
、マレイン酸などの有機酸を用いて形成されるものが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「安定な化合物」は、それらの製造を可能とするのに
十分な安定性を所有し、本明細書で詳述された目的(例えば、治療用製品への製剤化、治
療化合物の生成において使用するための中間体、単離可能または貯蔵可能な中間体化合物
、治療剤に応答する疾患または状態を処置すること)に対して有用となるのに十分な期間
、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的に同等な」は、適切に設計された研究にお
いて、同様の条件下で同じモル用量で投与された場合に、医薬品と薬学的に同等な活性成
分または活性部分が薬物作用部位で利用可能になる速度および程度に有意差がないことを
示す医薬品を意味し、「有意差」は、試験医薬品の90%信頼区間(CI)が、基準医薬
品の80%~125%の間に適合しなければならないことを意味する(オンライントレー
ニングセミナー:「The FDA Process for Approving Generic Drugs」; www.fda.
gov/Training/For HealthProfessionals/ucm090320.htmを参照のこと)。食品医薬品局
(FDA)は、その薬学的に同等な形態であるとみなされる傾向の高い医薬品において、
不活性成分の忍容可能な変動に関する具体的推奨を含む生物学的に同等な医薬品に関する
ガイドラインを発行した。例えば、その内容全体が本明細書に組み込まれる、FDAのGu
idance for Industry:Submission of Summary Bioequivalence Data for ANDAs
(2011年5月)を参照のこと。
【0082】
「D」および「d」は、両方、重水素を指す。「立体異性体」は、エナンチオマーとジ
アステレオマーの両方を指す。「tert」および「t-」は、それぞれ三級の、を意味
する。「US」は、アメリカ合衆国を指す。
【0083】
「重水素で置換された」は、1つまたは複数の水素原子を、対応する数の重水素原子で
置き換えることを指す。
【実施例
【0084】
(実施例1)
第1相、単一漸増用量(SAD)臨床試験
【0085】
10名の健康な男性および女性のボランティアが、150mgのCTP-656および
150mgのKalydeco(登録商標)(商品名はアイバカフトール)のクロスオー
バー比較法を用いる、3用量のCTP-656(75、150および300mg)の単一
漸増用量試験に参加した(図5)。CTP-656の投薬は水性懸濁液として投与し、K
alydecoは錠剤として投与した。CTP-656およびKalydecoのすべて
の投薬は、高脂肪含有朝食の開始後30分以内に投与した。投薬間に7日のウォッシュア
ウトを設けた。この研究の目的は、CTP-656の単一漸増用量(75、150、およ
び300mg)の薬物動態を比較すること、単一用量の150mgのCTP-656およ
び150mgのKalydecoの薬物動態を比較すること、ならびにCTP-656の
安全性および忍容性をアセスメントすることであった。
【0086】
全体として、用量75mg、150mgおよび300mgの単一用量として(高脂肪食
の後に)投与されたCTP-656は、概して、健康な男性および女性の被験体において
、忍容性が良好であった。150mgの単一経口用量として(高脂肪食の後に)投与され
たKalydeco(登録商標)錠剤も、概して、健康な男性および女性の被験体におい
て、忍容性が良好であった。
【0087】
CTP-656(75mg、150mgまたは300mg)とKalydeco(登録
商標)(150mg)との間の安全性アセスメントにおいて、臨床的に有意な差、および
CTP-656後の被験体における明らかな投薬に関連した傾向はなかった。
【0088】
見かけの終末相半減期が14~17時間であるCTP-656に対するTmaxは処置
のそれぞれの間で同様であった。150mgのKalydeco(登録商標)の見かけの
終末相半減期(11.18時間)は、CTP-656に対してより短かった。
【0089】
CTP-656に対して、用量と曝露との間の関係は、log-log回帰分析を使用
して概ね線形であることが分かり、曝露の増加が、用量レベル(75mg、150mgお
よび300mg)に比例する用量より大きかった(図1aおよび1b)。
【0090】
CTP-656とKalydecoの薬物動態特性の要約を以下のチャートに表す。
【表1】
【0091】
150用量に対するCTP-656およびKalydecoの薬物動態特性の比較を以
下のチャートに表す。
【表2】
【0092】
したがって、Kalydeco(登録商標)に対して強化されたCTP-656のPK
プロファイルに基づき、CTP-656は、50~200mgのQD(1日1回)の範囲
で、投薬における有効性を示す可能性を有する。
【0093】
(実施例2)
親対代謝物の薬物動態プロファイル
【0094】
図3に示すように、重水素化は、単一用量後に、アイバカフトールと比較して、重水素
化されたアイバカフトール類似体であるCTP-656の代謝に劇的な影響を与えている
。アイバカフトール、CTP-656、およびそれらの代謝物を図6に示す。アイバカフ
トールからの代謝物M1およびM6の生成に対し、CTP-656からの代謝物D8-M
1およびD6-M6の生成に有意な低減が存在する。したがって、M1に対するアイバカ
フトールの比としての0.58と比較して、CTP-656/D8-M1としてのAUC
0-24hrの親対M1の比は2.0である。CTP-656/D8-M1としてのC
axおよびC24hrの親対M1の比は、それぞれアイバカフトール/M1としての0.
54と0.55および比較して、それぞれ2.1および2.2である。さらに、CTP-
656/D6-M6としてのAUC0-24hrの親対M6の比は、M6に対するアイバ
カフトールの比としての1.5と比較して、4.0である。CTP-656/D6-M6
としてのCmaxおよびC24hrの親対M6の比は、それぞれアイバカフトール/M6
としての1.4および0.97と比較して、それぞれ4.3および2.5である。図3
a)から分かるように、CTP-656は、アイバカフトール(b)と対照的に、測定さ
れたすべての時間において、血漿中で最も豊富な種であり、M1代謝物が、2時間後に優
勢であり、M6代謝物のレベルが、約8時間後にアイバカフトールのレベルに到達する。
結果として、最も薬理学的に活性な種(すなわち、親)は、アイバカフトールに対してで
はなく、CTP-656に対する最も豊富な種である。
【表3】
【0095】
まとめると、CTP-656は、嚢胞性線維症患者の処置に対する現在の標準ケアであ
る、Kalydecoと比較して優れた薬物動態プロファイルを実証した。第1相試験の
結果も、CTP-656は忍容性が良好であり、その安全性プロファイルはKalyde
coに匹敵することを示した。第1相の、CTP-656とKalydecoのクロスオ
ーバー比較では、CTP-656は、クリアランス速度の低減、より長い半減期、曝露の
実質的増加、および24時間における血漿レベルの上昇を含む、Kalydecoと比較
して優れた薬物動態プロファイルを実証した。血漿中の代謝物の分析は、CTP-656
の全体としての曝露プロファイルが、CTP-656の場合の血漿曝露の大半が親薬物に
よるものであるという点でKalydecoのものと異なるのに対し、Kalydeco
に関しては、血漿曝露の大半がより活性の少ない代謝物によるものであり、およそ同量の
不活性代謝物も観察されることを示した。CTP-656に対して測定されたより長い半
減期およびより少ない代謝物レベルが、患者に対する投薬の利益をもたらすと考えられる
【0096】
(実施例3)
CTP-656およびアイバカフトール活性の測定
【0097】
Fischerラットの甲状腺細胞において過剰発現されたG551D-CFTRの塩
化物輸送をUssingチャンバー装置内で測定した。短絡電流(Isc)を100μM
のアンホテリシンを用いる側底の透過処理と10μMのホルスコリンによるCFTRの活
性化後にモニタリングした。35℃で、塩化物勾配の存在下で、試験を実施した。試験物
品を、付加的かつ連続的様式で、0.5μL、2.0μL、0.5μL、および2.5μ
LのDMSOビヒクルを添加しながら、0.0008μM、0.004μM、0.02μ
M、および0.1μMで上皮に付与した。値は、6つの上皮に付与された各試験濃度から
の応答の平均である(図4A)。
【0098】
ホモ接合性F508del-CFTRヒト気管支上皮細胞単層の塩化物輸送(患者コー
ドCFFT027G)を、Usingチャンバー装置中で測定した。短絡電流(Isc
を、30μMのアミロライドを用いる上皮ナトリウムチャネル(ENaC)および10μ
MのホルスコリンによるCFTRの活性化を介するナトリウム電流の遮蔽後にモニタリン
グした。27℃の対称的な生理食塩水溶液を、F508del-CFTRの温度補正のた
めに使用した。試験物品を、付加的かつ連続的様式で、0.5μL、2.0μL、0.5
μL、および2.5μLのDMSOビヒクルを添加しながら、0.0008μM、0.0
04μM、0.02μM、および0.1μMで上皮に付与した。値は、6つの上皮に付与
された各試験濃度からの応答の平均である(図4Bおよび図4C)。
【0099】
したがって、D9-アイバカフトール、D18-アイバカフトールおよびアイバカフト
ールは、同等なin vitroCFTR増強作用を提供した。
【0100】
(実施例4)
D9-アイバカフトールおよびD18-アイバカフトールに対するヒトのクロスオーバー
研究
【0101】
6名の健康なボランティアが、25mgのD9-アイバカフトール(CTP-656)
と25mgのD18-アイバカフトールのクロスオーバー比較に参加した(図7A)。こ
の研究の目的は、単一用量の25mgのD9-アイバカフトールと25mgのD18-ア
イバカフトールの薬物動態を比較することであった。D9-アイバカフトール(CTP-
656)とD18-アイバカフトールの投薬は、水性懸濁液として投与した。D9-アイ
バカフトール(CTP-656)とD18-アイバカフトールのすべての投薬は、絶食し
た被験体に投与した(1群につき3名の被験体)。投薬間に7日のウォッシュアウトを設
けた。
【0102】
D9-アイバカフトールとD18-アイバカフトールの薬物動態特性の比較を以下のチ
ャートに表す。
【表4】
【0103】
D9-アイバカフトールは、D18-アイバカフトールと比較して優れたPKプロファ
イルを示すことが分かった(図7B)。
【0104】
(実施例5)
錠剤形態の調製
【0105】
CTP-656(D9-アイバカフトール)(17.1重量%の80%非晶質分散体)
を、ボトルブレンダー中で、微結晶セルロース(Avicel PH101)(39.0
0重量パーセント)、ラクトース一水和物316(38.9重量パーセント)ラウリル硫
酸ナトリウム(0.50重量パーセント)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-di
-sol)(1.50重量パーセント)およびHyqualステアリン酸マグネシウム(
0.20重量パーセント)とブレンドした。ブレンドを固めて、粉砕して顆粒を形成し、
これを#20および#80メッシュのふるいにかける。顆粒および残っている微粉を、追
加のクロスカルメロースナトリウム(Ac-di-sol)(1.50重量パーセント)
、コロイド状二酸化ケイ素(0.50重量パーセント)および追加のHyqualステア
リン酸マグネシウム(0.80重量パーセント)とブレンドし、最終ブレンドを、ロータ
リープレスを使用して錠剤に圧縮した。各錠剤は、75mgのCTP-656(D9-ア
イバカフトール)を含有する。
【0106】
(実施例6)
D9-アイバカフトールとアイバカフトールに対するヒトのクロスオーバー研究
【0107】
健康なボランティアが、150mgのD9-アイバカフトール(CTP-656)と1
50mgのアイバカフトール(Kalydeco)のクロスオーバー比較に参加した(図
8、左パネル)。この研究の目的は、単一用量の150mgのD9-アイバカフトールと
150mgのアイバカフトールの安全性、忍容性、および薬物動態を比較することであっ
た。D9-アイバカフトール(CTP-656)とアイバカフトールの投薬は、錠剤とし
て投与した(D9-アイバカフトールは、2錠の75mg錠剤として投与した)。D9-
アイバカフトール(CTP-656)とD18-アイバカフトールのすべての投薬は、食
事(高脂肪朝食)を与えられた被験体に投与した(順番当たり4名の被験体)。投薬間に
7日のウォッシュアウトを設けた。間隔毎に血液試料を採取した。
【0108】
結果を図9および10に示す。CTP-656は、アイバカフトールと比較して、およ
そ3倍C24hrおよびAUC0-24hrが強化されたことが分かった(図9)。CT
P-656の経口クリアランスは、アイバカフトールの経口クリアランスの約3分の1で
あった。CTP-656の半減期は約15時間であり、これは、アイバカフトールの半減
期(約11時間)より約40%長い。さらに、代謝物D-M1およびD-M6(図6参照
)に対するCTP-656の比は、代謝物M1およびM6に対するアイバカフトールの比
より高かった(図10)。
【0109】
(実施例7)
D9-アイバカフトールに対するヒトの複数回漸増用量研究
【0110】
健康なボランティアが、D9-アイバカフトール(CTP-656)の複数回漸増用量
研究に参加した(図8、右パネル)。この研究の目的は、プラセボと比較して、7日間の
3用量におけるD9-アイバカフトールの安全性、忍容性、および薬物動態を比較するこ
とであった。D9-アイバカフトール(CTP-656)とプラセボの投薬は、錠剤とし
て投与した(D9-アイバカフトールは、75mg、150mg、または225mgの用
量に対して、1錠、2錠または3錠の75mg錠剤として投与した)。D9-アイバカフ
トール(CTP-656)のすべての投薬は、食事(高脂肪朝食)を与えられた被験体に
投与した(順番当たり8名の被験体がCTP-656を受け、順番当たり2名の被験体が
プラセボを受けた)。投薬間に7日のウォッシュアウトを設けた。間隔毎に血液試料を採
取した、およびCTP-656の血漿濃度。
【0111】
結果を図11に示す。CTP-656の定常状態の血漿レベルが、投薬の約3日後に到
達したことを見出した。CTP-656は、75mg投薬に対する150mg投薬につい
て、反復投薬での曝露において用量に比例した増加を示した。225mg投薬群は、用量
に比例した曝露より高い値を示した。血漿中の代謝物D-M1およびD-M6に対するC
TP-656の比は1より大きかった。CTP-656とD-M1の累積比は、重要な曝
露パラメーターであるC24hrおよびAUC0-24hrに対して約1-6から1.8
であった。重大な有害事象は報告されず、報告された有害事象の大半は、重症度において
軽度であった。
【0112】
さらなる記載なしで、当業者は、先行する記載および例示的実施例を使用して、本発明
の化合物を作製および利用し、特許請求された方法を実践することができると考える。前
述の議論および実施例は、ある特定の好ましい実施形態の詳細な説明としてのみ存在する
ことが理解されるべきである。種々の改変および均等物を本発明の趣旨および範囲から逸
脱することなく作製され得ることは、当業者に明らかである。
【0113】
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
被験体における、CFTRによって媒介される状態を処置する方法であって、50mgか
ら200mgの範囲の量の、以下の構造式:
【化4】

によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を、1日に1回、前記被験体
に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記状態が、嚢胞性線維症である、項目1に記載の方法。
(項目3)
1日あたり、100mgの化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を、前記被験体
に投与することを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記化合物が経口投与される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記化合物が、錠剤である医薬製剤で投与される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記化合物が、顆粒剤である医薬製剤で投与される、項目4に記載の方法。
(項目7)
上記の実施形態のいずれにおいても重水素として指定されていない任意の原子が、その天
然の同位体存在度で存在する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
薬学的に許容される担体または希釈剤、および50mgから200mgの、以下の構造式

【化5】
によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
(項目9)
100mgの化合物(I)を含む、項目8に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記医薬組成物が、経口投与に適している、項目8または9に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記組成物が、錠剤である、項目8または9に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記組成物が、顆粒剤である、項目8または9に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記組成物が、1日に1回投与される、項目8から12のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11