(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】手術支援ロボット
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20221219BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021075100
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2020079001
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岸田 悠治
(72)【発明者】
【氏名】東條 剛史
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】北辻 博明
(72)【発明者】
【氏名】宗藤 康治
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/022786(WO,A2)
【文献】特開2015-020215(JP,A)
【文献】特開2017-064878(JP,A)
【文献】特開2017-013167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0001301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30 - 34/37
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具が取り付けられるホルダが設けられたアームと、
前記アームに設けられる操作部とを備え、
前記操作部は、
操作者の第1の指で押下されることにより前記アームの移動を許可するイネーブルスイッチと、
前記イネーブルスイッチが前記第1の指で押下された状態で前記第1の指とは異なる第2の指で操作することにより、前記アーム
を移動させて前記医療器具の移動方向を
操作する操作具とを含み、
前記イネーブルスイッチ及び前記操作具は、前
記操作者
が前記操作部の外周面を把持した片手の
前記第1の指
と前記第2の指とで
同時に操作可能な範囲に離間して配置される、手術支援ロボット。
【請求項2】
前記操作具は、前記アーム
を移動させて前記ホルダに取り付けられた前記医療器具の前記移動方向及び移動速度を操作する
ように構成されている、請求項1に記載の手術支援ロボット。
【請求項3】
前記イネーブルスイッチは、前記操作部の外周面に設けられており、前記操作者が前記操作部の外周面を把持して前記イネーブルスイッチを押下することにより前記アームの移動を許可する、請求項1または2に記載の手術支援ロボット。
【請求項4】
前記イネーブルスイッチは、前記操作部の外周面の両側に一対設けられており、前記操作者が前記操作部の外周面を把持して、前記操作部の外周面の両側に設けられている前記イネーブルスイッチのうちの少なくとも一方を押下することにより前記アームの移動を許可する、請求項3に記載の手術支援ロボット。
【請求項5】
前記操作部の断面は、略矩形形状を有しており、前記一対のイネーブルスイッチは、前記操作部の互いに対向する面に各々設けられている、請求項4に記載の手術支援ロボット。
【請求項6】
前記アーム
は、モータで駆動される関節を備えており、
前記操作具は、前記イネーブルスイッチが前記第1の指で押下されている状態で前記第2の指で操作されることにより、前記モータを駆動して前記アームを移動させるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項7】
前記アームは、多関節ロボットアームからなるアーム部と、前記アーム部の先端に設けられるとともに
前記ホルダを備えており、
前記ホルダに取り付けられた前記医療器具を前記アーム部に対して相対的に並進移動させる並進移動機構部とをさらに備え、
前記操作部は、前記並進移動機構部に設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項8】
前記操作部は、前記医療器具に隣り合うように、前記並進移動機構部に設けられている、請求項7に記載の手術支援ロボット。
【請求項9】
前記操作具は、前記操作者の
前記第2の指により操作可能なジョイスティックを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項10】
前記ジョイスティックは、前記アームの先端に取り付けられた
前記医療器具の先端が所定の平面上を移動するように前記アームの移動させる並進移動モードと、前記医療器具の先端を中心に前記医療器具が回転移動するように前記アームが前記医療器具を移動させる回転移動モードと、のうちの一つのモードによって前記アームを操作するように構成されている、請求項9に記載の手術支援ロボット。
【請求項11】
前記操作具は、前記アームの前記移動方向及び移動速度を操作し、
前記操作具からの入力信号に基づいて前記アーム
の移動を
制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作具からの入力信号に上限値を設けることと、前記操作具からの入力信号を平滑化することとのうちの少なくとも一方を行うことにより、前記アームの移動速度の変化を低減する制御を行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【請求項12】
前記操作部は、前記アームの先端に取り付けられた
前記医療器具の長手方向に沿って前記医療器具の先端が移動するように前記アームによる前記医療器具の移動を操作するためのスイッチ部を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の手術支援ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術支援ロボットに関し、特に、アームを操作する操作具を備える手術支援ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術支援ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、関節式プローブと、手術用器具と、コントローラ(以下、アームという)とを備えるロボットシステム(手術支援ロボット)が開示されている。手術用器具は、関節式プローブの先端に設けられている。また、アームは、関節式プローブおよび手術用器具を操作(移動)するように構成されている。また、ロボットシステムには、ジョイスティックが設けられている。操作者がジョイスティックを操作することによって、アームに対して、手術用器具を操作させるための信号が出力される。また、ジョイスティックの変位(倒れ方)に応じて手術用器具の変位、速度および加速度が操作される。なお、ジョイスティックは、アーム(関節式プローブ、手術用器具)から離間した位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のようなロボットシステム(手術支援ロボット)では、手術時には、アームから離間した位置に配置されているジョイスティックが操作されることにより、手術用器具が操作される。一方、手術前の準備の段階では、アームを移動させて、手術用器具を患者の近傍まで移動させる。この場合、上記特許文献1のようなロボットシステムでは、ジョイスティックが、アームから離間した位置に配置されているため、手術用器具を患者の近傍まで移動させるようにジョイスティックによりアームを移動させるのが困難な場合があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、アームを操作具により容易に操作することが可能な手術支援ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による手術支援ロボットは、医療器具が取り付けられるホルダが設けられたアームと、アームに設けられる操作部とを備え、操作部は、操作者の第1の指で押下されることによりアームの移動を許可するイネーブルスイッチと、イネーブルスイッチが第1の指で押下された状態で第1の指とは異なる第2の指で操作することにより、アームを移動させて医療器具の移動方向を操作する操作具とを含み、イネーブルスイッチ及び操作具は、操作者が操作部の外周面を把持した片手の第1の指と第2の指とで同時に操作可能な範囲に離間して配置される。
【0008】
この発明の一の局面による手術支援ロボットでは、上記のように、操作部がアームに設けられている。これにより、操作者は、アームの近傍において操作具を操作することができるので、アームを操作具により容易に操作することができる。
【0009】
また、操作部をアームに設けた場合、操作者による操作具の操作に伴って、アームが比較的高速(急激に)に移動する場合には、アームの急激な移動に操作者の動きが追随できない場合がある。具体的には、アームは移動する一方、操作者の操作具を把持した手はアームの移動に追随できずに静止しているか、または、アームの移動速度よりも遅い速度で移動する。この場合、操作具に対する操作量が操作者の意図に反して変化してしまい、アームに対する操作方向が操作者の意図に反して変化してしまう。その結果、アームの移動方向が急激に変化してしまう。また、逆に、アームの移動速度が急激に小さくなった場合でも、操作具に対する操作方向が操作者の意図に反して変化してしまう。そして、このような状態が連続して行われることにより、アームが振動するように動作する。
【0010】
そこで、上記のように、操作部は、押下されることによりアームの移動を許可するイネーブルスイッチと、アームの移動方向を制御する操作具とを含み、イネーブルスイッチ及び操作具は、操作部において操作者の片手の指で操作可能な範囲に離間して配置されるように構成する。これにより、アームの移動方向を操作する操作具が、イネーブルスイッチを押下した状態で操作者の指により操作可能であるので、操作者の操作具を操作する指とイネーブルスイッチを押下する指との間隔が、略一定に保持される。つまり、アームが比較的高速に移動した場合でも、操作者の操作部を把持する指と操作部を操作する指との間隔が、略一定に保持される。これにより、アームが比較的高速に移動した場合でも、操作者の指の操作部に対する状態が変化しにくいので、操作部によるアームの操作方向が変化しにくい。その結果、アームが比較的高速に移動する場合でも、操作具の操作方向が変化することに起因するアームの振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記のように、アームを操作具により容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による外科手術システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータのアームの構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの操作部の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの操作部の構成を示す側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による医療用マニピュレータの操作部を操作者が把持した状態を示す図である。
【
図7】アームの並進移動を説明するための図である。
【
図8】アームの回転移動を説明するための図である。
【
図9】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図10】本開示の一実施形態による医療用マニピュレータの制御部の制御ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図10を参照して、本実施形態による外科手術システム100の構成について説明する。外科手術システム100は、患者P側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。なお、医療用マニピュレータ1は、特許請求の範囲の「手術支援ロボット」の一例である。
【0015】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。モニタ24は、内視鏡により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサにより術者の頭部を検知することにより医療用マニピュレータ1は遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。これにより、遠隔操作装置2に指令が入力される。遠隔操作装置2に入力された指令は、医療用マニピュレータ1に送信される。
【0016】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが設けられている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。
【0017】
また、医療用台車3には、入力装置33が設けられている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。
【0018】
図1および
図2に示すように、医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い棒形状(長尺形状)を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の根元部が、アームベース50に取り付けられている。複数のアーム60は、折り畳まれた姿勢(収納姿勢)をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、図示しない滅菌ドレープにより覆われて使用される。
【0019】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させるように構成されている。
【0020】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。
【0021】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、医療器具4が着脱可能に取り付けられている。医療器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、内視鏡アセンブリ(図示せず)などを含む。
【0022】
図3に示すように、医療器具4としてのインストゥルメントには、アーム60のホルダ71に設けられたサーボモータM2によって駆動される被駆動ユニット4aが設けられている。また、インストゥルメントの先端には、エンドエフェクタ4bが設けられている。エンドエフェクタ4bは、関節を有する器具として、鉗子、ハサミ、グラパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステーブルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤーなどを含む。また、エンドエフェクタ4bは、関節を有しない器具として、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィスなどを含む。また、医療器具4は、被駆動ユニット4aとエンドエフェクタ4bとを接続するシャフト4cを含む。被駆動ユニット4aと、シャフト4cと、エンドエフェクタ4bとは、Z方向に沿って配置されている。
【0023】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0024】
図3に示すように、アーム60は、アーム部61(ベース部62、リンク部63、関節部64)と、アーム部61の先端に設けられる並進移動機構部70とを含む。アーム60は、アーム60の根元側(アームベース50)に対して先端側を3次元に移動されるように構成されている。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。
【0025】
本実施形態では、並進移動機構部70は、医療器具4が取り付けられるとともに、医療器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、医療器具4を保持するホルダ71が設けられている。ホルダ71には、サーボモータM2(
図9参照)が収容されている。サーボモータM2は、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるように構成されている。被駆動ユニット4aの回転体が回転されることにより、エンドエフェクタ4bが動作される。
【0026】
アーム60は、アームベース50に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。また、アーム部61は、アーム部61をアームベース50に取り付けるためのベース部62と、ベース部62に連結された複数のリンク部63とを含む。複数のリンク部63同士は、関節部64により連結されている。
【0028】
並進移動機構部70は、ホルダ71をZ方向に沿って並進移動させることにより、ホルダ71に取り付けられた医療器具4をZ方向(シャフト4cが延びる方向)に沿って並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70は、アーム部61の先端に接続される基端側リンク部72と、先端側リンク部73と、基端側リンク部72と先端側リンク部73との間に設けられる連結リンク部74とを含む。また、ホルダ71は、先端側リンク部73に設けられている。
【0029】
そして、並進移動機構部70の連結リンク部74は、基端側リンク部72に対して、先端側リンク部73を、Z方向に沿って相対的に移動させる倍速機構として構成されている。また、基端側リンク部72に対して先端側リンク部73がZ方向に沿って相対的に移動されることにより、ホルダ71に設けられた医療器具4が、Z方向に沿って並進移動するように構成されている。また、アーム部61の先端は、基端側リンク部72を、Z方向に直交するY方向を軸として回動させるように基端側リンク部72に接続されている。
【0030】
ここで、本実施形態では、
図4に示すように、医療用マニピュレータ1は、アーム60に設けられる操作部80を備えている。操作部80は、イネーブルスイッチ81と、アーム60による医療器具4の移動を操作するためのジョイスティック82と、アーム60による医療器具4の移動を操作するためのスイッチ部83を含む。イネーブルスイッチ81は、ジョイスティック82およびスイッチ部83によるアーム60の移動を許可するとともに、押下されることによりアーム60の移動を許可する状態となる。また、ジョイスティック82は、アーム60の移動方向および移動速度を制御(操作)する。また、イネーブルスイッチ81及びジョイスティック82は、操作部80において操作者Oの片手の指で操作可能な範囲に離間して配置される。また、操作部80は、操作者O(看護師、技師など)が操作部80を把持して操作する。また、操作部80は、操作者Oがアーム60の移動を許可する状態となるように操作部80を把持してイネーブルスイッチ81を押下した状態で、操作者Oの指により操作可能に構成されている。なお、ジョイスティック82およびスイッチ部83は、特許請求の範囲の「操作具」の一例である。
【0031】
具体的には、イネーブルスイッチ81は、操作者Oの指により押下される押しボタンスイッチにより構成されている。イネーブルスイッチ81が押下されることにより、サーボモータM1~M3(
図9参照)に通電する制御(サーボモータM1~M3を駆動させる制御)を行うことが可能になる。すなわち、イネーブルスイッチ81が押下されている間のみ、アーム60を移動させる制御が可能になる。
【0032】
また、ジョイスティック82は、操作者Oの指により倒されることにより操作されるように構成されている。また、ジョイスティック82が倒された方向および倒された角度に応じて、アーム60が移動されるように制御される。また、操作者Oは、ジョイスティック82の先端82aに操作者Oの指を当接させるとともに、指を動かすことによりジョイスティック82を倒すように操作可能する。また、イネーブルスイッチ81が押下されている間のみ、ジョイスティック82が操作されることによる信号の入力が受け付けられる。すなわち、イネーブルスイッチ81が押下されていない状態では、ジョイスティック82を操作してもアーム60は移動されない。
【0033】
また、本実施形態では、イネーブルスイッチ81は、操作部80の外周面80aに設けられており、操作者Oが操作部80の外周面80aを把持してイネーブルスイッチ81を押下することによりアーム60の移動を許可する。また、
図5に示すように、イネーブルスイッチ81は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。具体的には、操作部80の断面は、略矩形形状を有しており、一対のイネーブルスイッチ81は、操作部80の互いに対向する面80bに各々設けられている。詳細には、操作部80は、略角柱形状を有しており、略角柱形状の操作部80の側面(長手方向に沿った面80b)に、一対のイネーブルスイッチ81が設けられている。そして、操作者Oが操作部80の外周面80aを把持して、操作部80の外周面80aの両側に設けられているイネーブルスイッチ81のうちの少なくとも一方を押下することによりアーム60の移動が許可される。
【0034】
これにより、操作部80の外周面80aの両側に設けられているイネーブルスイッチ81の両方を押下する必要がない分、操作者Oの負担を低減することができるとともに操作者Oの利便性が向上される。
【0035】
また、本実施形態では、
図5に示すように、ジョイスティック82は、操作部80の外周面80aに交差する端面80cに設けられている。そして、操作者Oがアーム60の移動を許可する状態となるように操作部80の外周面80aを把持してイネーブルスイッチ81を押下した状態で、操作者Oの指により操作可能な位置に配置されている。たとえば、
図6に示すように、操作部80の外周面80aに設けられている一対のイネーブルスイッチ81を、操作者Oの親指と中指などとで押下した状態で、操作部80の端面80cに設けられているジョイスティック82を、操作者Oの人差し指などで操作する。これにより、操作者Oの操作部80を把持する親指および中指と、ジョイスティック82を操作する人差し指との間隔を容易に略一定に保持することが可能になる。なお、イネーブルスイッチ81とジョイスティック82とをいずれの指で操作するのかは、上記の例に限られない。
【0036】
また、本実施形態では、ジョイスティック82は、医療器具4の先端4d(
図3参照)が所定の平面上を移動するようにアーム60による医療器具4の移動を操作したり、医療器具4の先端4dを中心に回転するようにアーム60による医療器具4の移動を操作したりするように構成されている。また、操作部80は、医療器具4の長手方向に沿って医療器具4の先端4dが移動するようにアーム60による医療器具4の移動を操作するためのスイッチ部83を含む。医療器具4の先端4dが移動する所定の平面は、操作部80の端面80cに平行な平面(
図4のX-Y平面)である。また、医療器具4の長手方向は、
図4のX-Y平面に直交するZ方向である。
図4のX軸、Y軸およびZ軸によって表される座標は、ツール座標系(または、ベース座標系)と呼ばれる。また、スイッチ部83が、イネーブルスイッチ81が押下された状態(アーム60による医療器具4の移動を許可する状態)で、押下されることにより、医療器具4の長手方向に沿って医療器具4の先端4dが移動される。
【0037】
また、スイッチ部83は、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている。そして、操作者Oが操作部80の外周面80aを把持して、操作部80の外周面80aの両側に設けられているスイッチ部83のうちの少なくとも一方を押下することにより並進移動機構部70が医療器具4を並進移動させる。
【0038】
また、本実施形態では、ジョイスティック82は、傾斜された状態に応じて移動速度が変化し、最大に傾斜された状態で医療器具4の先端4dの所定の平面上の移動速度を最大にするように構成されている。そして、スイッチ部83が操作者Oに押下されて医療器具4の先端4dの所定の平面に直交する医療器具4の長手方向に沿った移動速度が最大となるまでの時間は、操作者Oによりジョイスティック82が操作されて医療器具4の先端4dの移動速度が最大になるまでの時間よりも長い。すなわち、ジョイスティック82が操作されることによって、医療器具4の先端4dは、比較的高速に移動される。これに対して、スイッチ部83が操作されることにより医療器具4の先端4dが移動される速度は、比較的低速である。
【0039】
また、本実施形態では、スイッチ部83は、医療器具4の長手方向と平行な、医療器具4を患者Pに挿入する方向側に医療器具4の先端4dを移動させるスイッチ部83aと、医療器具4を患者Pに挿入する方向と反対側に医療器具4の先端4dを移動させるスイッチ部83bとを含む。スイッチ部83aとスイッチ部83bとは、共に、押しボタンスイッチから構成されている。また、スイッチ部83aとスイッチ部83bとは、共に、略円形状を有する。
【0040】
また、操作部80の面80bには、イネーブルスイッチ81に隣り合うようにピボットボタン85が設けられている。ピボットボタン85は、ピボット点を設定するように構成されている。なお、ピボット点とは、アーム60が動作する支点である。また、操作部80の面80bには、アーム60の位置を最適化するためのアジャストメントボタン86が設けられている。
【0041】
また、本実施形態では、ピボット位置PPが設定される前は、スイッチ部83が操作されることにより、アーム部61が移動することにより医療器具4の先端4dが並進移動される。ピボット位置PPが設定された後は、スイッチ部83が操作されることにより、医療器具4の先端4dがピボット位置PPから所定の距離分移動するまでは、アーム部61が移動することにより医療器具4の先端4dが並進移動される。そして、医療器具4の先端4dがピボット位置PPから所定の距離分移動した後は、並進移動機構部70が移動することにより医療器具4の先端4dが並進移動される。つまり、医療器具4の先端4dがピボット位置PPから所定の距離分移動した後は、アーム部61は移動されずに並進移動機構部70のみが移動される。
【0042】
また、本実施形態では、
図4に示すように、操作部80は、アーム60に取り付けられた医療器具4の先端4dが、所定の平面内を並進移動(
図7参照)する並進移動モードと、医療器具4の先端4dを中心に回転移動(
図8参照)する回転移動モードとを切り替えるモード切替ボタン84を含む。操作部80において、モード切替ボタン84は、ジョイスティック82の近傍に配置されている。具体的には、操作部80の端面80cにおいて、モード切替ボタン84は、ジョイスティック82と隣り合うように設けられている。また、モード切替ボタン84は、押しボタンスイッチからなる。また、モード切替ボタン84の近傍には、モードインジケータ84aが設けられている。モードインジケータ84aが点灯または消灯されることにより、現在のモード(並進移動モードまたは回転移動モード)が報知される。
【0043】
図7に示すように、医療器具4の先端4dを並進移動させる並進移動モードでは、医療器具4の先端4dが、X-Y平面上において移動するように、ジョイスティック82によりアーム60が移動される。また、
図8に示すように、医療器具4の先端4dを中心に回転移動する回転移動モードでは、ピボット位置PPが教示されていない時は、エンドエフェクタ4bの先端4dを中心に医療器具4が回転移動し、ピボット位置PPが教示されている時は、ピボット位置PPを支点として医療器具4が回転移動するように、ジョイスティック82によりアーム60が移動される。なお、ピボット点(ピボット位置PP)が設定された後は、並進移動モードは設定できなくなる。また、医療器具4のシャフト4cがトロカールTに挿入されている場合、シャフト4cがピボット位置PPを支点として拘束された状態で医療器具4が回転移動される。
【0044】
すなわち、ジョイスティック82は、アーム60に取り付けられた医療器具4の先端4dが所定の平面内を並進移動(
図7参照)するように、アーム60が医療器具4を移動させる並進移動モードと、医療器具4の先端4dを中心に医療器具4が回転移動(
図8参照)するように、アーム60が医療器具4を移動させる回転移動モードと、のうちの一のモードによってアーム60を操作するように構成されている。
【0045】
また、本実施形態では、
図3に示すように、操作部80は、並進移動機構部70に設けられている。また、操作部80は、並進移動機構部70に取り付けられた医療器具4に隣り合うように並進移動機構部70に設けられている。具体的には、操作部80は、並進移動機構部70の先端側リンク部73に設けられている。また、操作部80は、医療器具4の被駆動ユニット4aに隣り合うように配置されている。
【0046】
また、
図9に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0047】
また、
図9に示すように、並進移動機構部70には、医療器具4の被駆動ユニット4aに設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM2と、医療器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE2およびエンコーダE3と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE2およびエンコーダE3は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0048】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0049】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の前輪(図示せず)の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE5は、サーボモータM5の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0050】
医療用台車3の制御部31は、指令に基づいて複数のアーム60の移動を制御するアーム制御部31aと、指令に基づいてポジショナ40の移動および医療用台車3の前輪(図示せず)の駆動を制御するポジショナ制御部31bとを含む。アーム制御部31aには、アーム60を駆動するためのサーボモータM1を制御するためのサーボ制御部C1が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C1には、サーボモータM1の回転角を検出するためのエンコーダE1が電気的に接続されている。
【0051】
また、アーム制御部31aには、医療器具4を駆動するためのサーボモータM2を制御するためのサーボ制御部C2が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C2には、サーボモータM2の回転角を検出するためのエンコーダE2が電気的に接続されている。また、アーム制御部31aには、並進移動機構部70を並進移動するためのサーボモータM3を制御するためのサーボ制御部C3が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C3には、サーボモータM3の回転角を検出するためのエンコーダE3が電気的に接続されている。
【0052】
そして、遠隔操作装置2に入力された動作指令が、アーム制御部31aに入力される。アーム制御部31aは、入力された動作指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1(C2、C3)に出力する。サーボ制御部C1(C2、C3)は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1(E2、E3)により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1(M2、M3)に出力する。これにより、遠隔操作装置2に入力された動作指令に沿うように、アーム60が移動される。
【0053】
また、本実施形態では、制御部31(アーム制御部31a)は、操作部80のジョイスティック82からの入力信号に基づいてアーム60を操作するように構成されている。具体的には、アーム制御部31aは、ジョイスティック82から入力された入力信号(動作指令)と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C1に出力する。サーボ制御部C1は、アーム制御部31aから入力された位置指令と、エンコーダE1により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM1に出力する。これにより、ジョイスティック82に入力された動作指令に沿うように、アーム60が移動される。
【0054】
ここで、本実施形態では、制御部31(アーム制御部31a)は、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとのうちの少なくとも一方を行うことにより、アーム60の移動速度の変化を低減する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部31は、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けて、上限値を超える入力信号が入力された際には、上限値を入力信号として、アーム60の移動を制御する。また、制御部31は、ジョイスティック82からの入力信号を、たとえば、LPF(Low-pass filter)により平滑化する。なお、本実施形態では、制御部31は、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとの両方を行っている。
また、制御部31(アーム制御部31a)は、下記の数式に示す制御用の運動方程式に基づいて、アーム60の移動を制御する。
【0055】
【0056】
また、制御部31(アーム制御部31a)は、
図10に示す制御ブロックに基づいて、アーム60の移動を制御する。すなわち、制御部31(アーム制御部31a)は、ジョイスティック82からの入力信号F(s)に対して、速度(xの1階微分)と粘性係数cとの積を減算する。そして、減算された値に慣性係数1/mを乗算する。そして、乗算された値(=1/m(F(s)-c×速度)=加速度=xの2階微分)が、上限値を超える場合、加速度は、上限値に設定される。そして、加速度が積分されて速度(xの1階微分)が算出され、速度が積分されて位置X(s)が算出される。
【0057】
また、ポジショナ制御部31bには、ポジショナ40を移動するサーボモータM4を制御するためのサーボ制御部C4が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C4には、サーボモータM4の回転角を検出するためのエンコーダE4が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部31bには、医療用台車3の前輪(図示せず)を駆動するサーボモータM5を制御するためのサーボ制御部C5が電気的に接続されている。また、サーボ制御部C5には、サーボモータM5の回転角を検出するためのエンコーダE5が電気的に接続されている。
【0058】
また、入力装置33から準備位置の設定などに関する動作指令が、ポジショナ制御部31bに入力される。ポジショナ制御部31bは、入力装置33から入力された動作指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて位置指令を生成するとともに、位置指令をサーボ制御部C4出力する。サーボ制御部C4は、ポジショナ制御部31bから入力された位置指令と、エンコーダE4により検出された回転角とに基づいて、トルク指令を生成するとともに、トルク指令をサーボモータM4に出力する。これにより、入力装置33に入力された動作指令に沿うように、ポジショナ40が移動される。同様に、入力装置33からの動作指令に基づいて、ポジショナ制御部31bは、医療用台車3を移動させる。
【0059】
次に、医療用マニピュレータ1を用いた施術の手順について説明する。医療用マニピュレータ1を用いた施術においては、最初に、医療用台車3が操作者Oによって、手術室内の所定の位置に移動される。次に、操作者Oは、入力装置33に含まれるタッチパネルを操作することにより、アームベース50と、手術台5または患者Pとが所望の位置関係になるように、ポジショナ40を動作させることによりアームベース50を移動させる。また、患者Pの体表に配置されたカニューレスリーブ(手術器具等を体腔に挿入するための作業用チャンネル)と医療器具4とが、所定の位置関係になるようにアーム60が移動される。また、操作者Oによってジョイスティック82が操作されることにより、複数のアーム60が所望の位置に移動される。そして、ポジショナ40を静止させた状態で、遠隔操作装置2からの指令に基づいて、複数のアーム60および医療器具4が動作される。これにより、医療用マニピュレータ1による施術が行われる。
【0060】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、上記のように、操作部80がアーム60に設けられている。これにより、操作者Oは、アーム60の近傍においてジョイスティック82やスイッチ部83を操作することができるので、アーム60を操作具により容易に操作することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80は、押下されることによりアーム60の移動を許可するイネーブルスイッチ81と、アーム60の移動方向および移動速度を制御(操作)するジョイスティック82とを含み、イネーブルスイッチ81及びジョイスティック82は、操作部80において操作者Oの片手の指で操作可能な範囲に離間して配置されるように構成する。これにより、アーム60の移動方向および移動速度を操作するジョイスティック82が、イネーブルスイッチ81を押下した状態で操作者Oの指により操作可能であるので、操作者Oの操作部80を操作する指とイネーブルスイッチ81を押下する指との間隔が、略一定に保持される。つまり、アーム60が比較的高速に移動した場合でも、操作者Oのジョイスティック82を把持する指と操作部80を操作する指との間隔が、略一定に保持される。これにより、アーム60が比較的高速に移動した場合でも、操作者Oの指の操作部80に対する状態が変化しにくいので、操作部80によるアーム60の方向が変化しにくい。その結果、アーム60が比較的高速に移動する場合でも、ジョイスティック82の方向が変化することに起因するアーム60の振動を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック82は、アーム60の移動方向及び移動速度を操作する。これにより、ジョイスティック82の方向が変化すること、および、操作量が変化することに起因するアーム60の振動を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、イネーブルスイッチ81は、操作者Oが操作部80の外周面80aを把持してイネーブルスイッチ81を押下することによりアーム60の移動を許可する。これにより、操作者Oが操作部80の外周面80aを指で覆うように把持するだけで、容易に、イネーブルスイッチ81を押下してアーム60の移動を許可する状態にすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、イネーブルスイッチ81は、操作者Oが操作部80の外周面80aを把持して、操作部80の外周面80aの両側に設けられているイネーブルスイッチ81のうちの少なくとも一方を押下することによりアーム60の移動を許可する。これにより、イネーブルスイッチ81が操作部80の外周面80aの両側に設けられているので、操作者Oが操作部80の外周面80aを指で覆って把持するように、操作者Oに促すことができる。また、イネーブルスイッチ81のどちらか一方のみを押下することによりアーム60の移動を許可するように構成すれば、操作者Oは、押下しやすい方のイネーブルスイッチ81を押下してアーム60の移動操作を行うことができるので、操作の利便性を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80の断面は、略矩形形状を有しており、一対のイネーブルスイッチ81は、操作部80の互いに対向する面80bに各々設けられている。これにより、一対のイネーブルスイッチ81が操作部80の互いに対向する面80bに各々設けられているので、操作者Oが互いに対向する面80bを挟み込むように操作部80を把持することによって、容易に、イネーブルスイッチ81を押下することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック82は、操作部80の外周面80aに交差する端面80cに設けられており、操作者Oがアーム60の移動を許可する状態となるように操作部80の外周面80aを把持してイネーブルスイッチ81を押下した状態で、操作者Oの指により操作可能な位置に配置されている。これにより、操作部80の外周面80aに設けられているイネーブルスイッチ81を、操作者Oの親指と中指などとで押下した状態で、操作部80の外周面80aに交差する端面80cに設けられているジョイスティック82を、操作者Oの人差し指などで操作することができる。これにより、操作者Oの操作部80を把持する親指および中指などと、操作部80を操作する人差し指との間隔を容易に略一定に保持することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、アーム60は、7軸多関節ロボットアームからなるアーム部61と、アーム部61の先端に設けられるとともに医療器具4が取り付けられ、医療器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させる並進移動機構部70とを含む。これにより、操作部80が医療器具4の近傍(医療器具4が取り付けられる並進移動機構部70)に配置されるので、医療器具4を所望の位置に移動させるようにアーム60を移動させる操作を、操作部80により容易に行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80は、医療器具4に隣り合うように、並進移動機構部70に設けられている。これにより、操作部80が医療器具4の近傍に確実に配置されるので、医療器具4を所望の位置に移動させるようにアーム60を移動させる操作を、操作部80により、より容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、操作部80において、操作者Oの指により操作可能なジョイスティック82が設けられている。これにより、ジョイスティック82は比較的小さな力で操作することができるので、操作者Oがアーム60の移動を許可する状態となるように操作部80の外周面80aを把持してイネーブルスイッチ81を押下した状態で、操作者Oの指によりジョイスティック82を容易に操作することができる。
【0071】
また、本実施形態では、操作部80は、医療器具4の長手方向に沿って医療器具4の先端4dが移動するようにアーム60を操作するためのスイッチ部83をさらに含む。これにより、ジョイスティック82、および、スイッチ部83を併用することにより、アーム60を3次元的に移動させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック82は、アーム60の移動方向及び移動速度を操作し、医療用マニピュレータ1は、ジョイスティック82からの入力信号に基づいてアーム60を操作する制御部31をさらに備えている。そして制御部31は、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとのうちの少なくとも一方を行うことにより、アーム60の移動速度の変化を低減する制御を行うように構成されている。これにより、アーム60がさらに高速に移動して、操作部80に対する操作者Oの指の操作量が変化した場合でも、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとのうちの少なくとも一方が制御部31に行われることにより、ジョイスティック82の操作量が変化することに起因するアーム60の振動をより効果的に抑制することができる。
【0073】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記実施形態では、操作部80に操作者Oの指により操作可能なジョイスティック82が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、操作部80に操作者Oの指により操作可能な加速度センサを設けて、加速度センサに入力される入力信号に基づいてアーム60を移動させてもよい。または、操作部80に操作者Oの指により操作可能な力センサを設けて、力センサに入力される入力信号に基づいてアーム60を移動させてもよい。また、力センサとして、たとえば、ひずみゲージ式の力センサや圧電式の力センサが用いられる。また、力センサとして、3方向の力およびモーメントを検出することか可能な3軸力センサや、6方向の力およびモーメントを検出することか可能な6軸力センサが用いられる。
【0075】
また、上記実施形態では、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられているイネーブルスイッチ81のうちの片方が押下されることにより、アーム60の移動が許可される状態となる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、操作部80の外周面80aの両側に一対設けられているイネーブルスイッチ81のうちの両方が押下されることにより、アーム60の移動が許可される状態となるように構成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、イネーブルスイッチ81が操作部80の外周面80aの両側に一対設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、イネーブルスイッチ81が操作部80の外周面80aの片側に1つ設けられていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、操作部80の断面が略矩形形状を有している(操作部80が略角柱形状を有している)例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、操作部80が略円筒形状を有していてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ジョイスティック82が、操作部80の外周面80aに交差する端面80cに設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ジョイスティック82は、操作者Oがイネーブルスイッチ81を押下するように操作部80を把持した状態で、操作者Oの指により操作可能な位置に設けられていればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、操作部80が並進移動機構部70に設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、操作部80が、アーム部61に設けられていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ジョイスティック82は、医療器具4の先端4dが、所定の平面を並進移動(
図7参照)するモードと、医療器具4の先端4dを中心に回転移動(
図8参照)するモードでアーム60を操作するように構成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ジョイスティック82が、医療器具4の長手方向に沿って医療器具4が並進移動するようにアーム60を操作可能に構成されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、制御部31は、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとの両方を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、制御部31が、ジョイスティック82からの入力信号に上限値を設けることと、ジョイスティック82からの入力信号を平滑化することとのうちのいずれか一方のみを行ってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、アーム60が4つ設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。アーム60の数は、3つでもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、アーム部61およびポジショナ40が7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、アーム60およびポジショナ40が7軸多関節ロボット以外の軸構成(例えば、6軸や8軸)の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 医療用マニピュレータ(手術支援ロボット)
4 医療器具
31 制御部
60 アーム
61 アーム部
70 並進移動機構部
80 操作部
81 イネーブルスイッチ
82 ジョイスティック(操作具)
80a 外周面
80b 面
80c 端面
83、83a、83b スイッチ部
O 操作者