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特許7196228シリコン前駆体およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】シリコン前駆体およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20221219BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021078482
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2021177550
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0054948
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アン, チェ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソク, チャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チュン-ウ
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108064(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1834288(CN,A)
【文献】特開2010-103484(JP,A)
【文献】特表2011-504651(JP,A)
【文献】特開2013-110385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/42
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を含む気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップと、酸素(O 2 )および水素(H 2 )の混合物が注入されるステップとを含む、薄膜の製造方法。
[化学式1]
SiX1 n(NR12(4-n)
前記化学式1において、
nは、であり、
1は、Clであり、
1およびR2は、それぞれ独立して、iso-プロピル基である。
【請求項2】
前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を含む、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項3】
600℃以上の工程温度で蒸着するステップをさらに含む、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能であり、特に、高温の工程温度で優れた品質の薄膜製造に使用できる新規シリコン前駆体およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン-含有薄膜は、RAM(メモリおよびロジッグチップ)のようなマイクロエレクトロニック素子、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)などを含む平板ディスプレイ(Flat panel display)および太陽熱分野のような半導体技術で半導体基板、拡散マスク、酸化防止膜、および誘電体膜などに用いられている。
【0003】
特に、半導体素子の高集積化に伴う、多様な性能を有するシリコン-含有薄膜が要求されており、半導体素子の高集積化によって縦横比が増加することから、従来の前駆体を用いたシリコン-含有薄膜蒸着によっては要求される性能に及ばない問題が発生している。
【0004】
既存の前駆体を用いた薄膜蒸着は、高集積化された半導体素子に優れた段差被覆性および厚さ制御が困難であり、薄膜内に不純物が含有される問題が発生している。
【0005】
したがって、高品質のシリコン-含有薄膜の蒸着のために、シラン、ジシラン、ハロゲン化シランなどの既存のシリコン前駆体をはじめとして、アミノシランなど多様なシリコン前駆体が研究開発されている。
【0006】
一般的に、アミノシラン前駆体としては、BAS(ブチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、3-DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、およびDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)などが広く使用されている。
【0007】
シリコン-含有薄膜の製造には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)が広く用いられている。
【0008】
なかでも特に、シリコン-含有薄膜を形成するためにALDを適用すれば、薄膜の厚さ均一度および物性が向上して半導体素子の特性を向上させることができるという利点があるので、最近、ALDの活用が大きく増加しているが、CVDとALDは反応メカニズムが異なっていて、CVDに適した前駆体はALDでは所望する品質の薄膜を製造できず、CVDおよびALDに混用で適用可能な前駆体の研究開発が増加している。
【0009】
一方、アミノシラン前駆体の一つであるトリス(ジメチルアミノ)シラン(Tris(dimethylamino)silane、3-DMAS)などを前駆体として活用した特許には、米国登録特許公報第5593741号があるが、3-DMASを前駆体として用いても、高温の工程温度では依然として高品質の薄膜を得ることができなかった。また、ハロゲン元素が置換されたシリコン前駆体を用いた場合にも、低温蒸着においては効果があったが、高温の工程温度では依然として高品質の薄膜を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】大韓民国公開特許公報第2011-0017404号
【文献】米国登録特許公報第5593741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に混用で適用可能な新規シリコン化合物を提供しようとする。
【0012】
特に、600℃以上の高温の工程温度に適用可能で高温でALDの挙動確保が可能であり、シリコン酸化膜中における不純物の濃度が低く(特に、Cl、C、Nなどの不純物が検出されない)、優れた段差被覆特性と表面特性(粗さ(粗度)など)の確保が可能で、界面特性に優れるとともに耐食性に優れた新規シリコン化合物を含むシリコン前駆体およびこれを用いたシリコン含有薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を含む気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法を提供する:
[化学式1]
SiX (NR(4-n)
【0015】
前記化学式1において、nは、1~3の整数であり、Xは、それぞれ独立して、Cl、Br、Iからなる群より選択されるいずれか1つであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の炭素数1~4の線状または分枝状、飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはこれらの異性体である。
【0016】
本願の他の側面は、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つを含む薄膜の製造方法を提供する。
【0017】
本願の他の側面は、化学式1において、nは、3であり、RおよびRがiso-プロピル基である気相蒸着前駆体を含む薄膜の製造方法を提供する。
【0018】
本願の他の側面は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)から選択される薄膜の製造方法を提供する。
【0019】
本願の他の側面は、反応ガスとして、酸素(O)、水(HO)、オゾン(O)、酸素(O)および水素(H)の混合物、窒素(N)、アンモニア(NH)、亜酸化窒素(NO)、過酸化水素(H)からなる群より選択されたいずれか1つ以上が注入されるステップをさらに含む薄膜の製造方法を提供する。
【0020】
本願の他の側面は、600℃以上の工程温度で蒸着するステップをさらに含む薄膜の製造方法を提供する。
【0021】
本願の製造方法により製造された薄膜の表面粗さが0.2nm以下であり、密度が2.5g/cm以上である。
【0022】
本願のさらに他の側面は、本発明で製造された薄膜を含む電子装置を提供することができ、電子装置は、半導体、ディスプレイ、および太陽電池からなる群より選択されるいずれか1つである。
【発明の効果】
【0023】
本発明による新規シリコン前駆体は、600℃以上の高温でも熱分解(Thermal decomposition)されない特性を保持しており、特に、高温ALDに適用可能であり、均一な蒸着率を有して正確な厚さ制御が可能であり、優れた段差被覆特性を有する効果がある。
【0024】
また、本発明による新規シリコン前駆体の蒸着により優れた品質のシリコン含有薄膜を製造することができる。
【0025】
このような優れた特性によって、今後、3D-NANDメモリ素子のトンネリング酸化膜(Tunneling oxide)およびギャップフィル(Gap Fill)としての活用が期待され、また、このような高品位のシリコン薄膜は、ナノ装置およびナノ構造の製造、半導体、ディスプレイ、太陽電池などの多様な分野に応用できる。この他にも、非メモリ半導体の絶縁膜などにも使用可能である。
【0026】
このような物性は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)および化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適した前駆体を提供し、これを蒸着した薄膜の製造方法により半導体素子の誘電体物質への適用を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の前駆体の核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析の結果である。
図2】実施例1の前駆体を用いて工程温度600℃、700℃、750℃でそれぞれ蒸着した時の、前駆体の注入時間による蒸着率(Å/サイクル)を示すグラフである(製造例1~3)。
図3】実施例1の前駆体を600℃(3A)および750℃(3B)の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜の組成をX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)で測定したグラフである(実験例1)。
図4】実施例1の前駆体を600℃(4A)および750℃(4B)の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜の原子顕微鏡(Atomic Force Microscopy、AFM)および走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)写真で、これを通して表面粗さ(roughness、Ra)などの表面状態を分析した結果である(実験例2)。
図5】実施例1の前駆体を600℃(5A)および750℃(5B)の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜のX線反射測定(X-Ray Reflectometry、XRR)の結果およびこれを通して測定したシリコン酸化膜の密度値である(実験例3)。
図6】走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)を用いて測定した実施例1の前駆体を蒸着したシリコン酸化膜のエッチング前(6A)、後(6B)の厚さ測定値である(実験例4)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施形態および実施例を詳細に説明する。しかし、本願は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態、実施例および図面に限定されない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために説明に不必要な部分は省略した。
【0029】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を含む気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法を提供する:
[化学式1]
SiX (NR(4-n)
前記化学式1において、
nは、1~3の整数であり、
は、それぞれ独立して、Cl、Br、Iからなる群より選択されるいずれか1つであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の炭素数1~4の線状または分枝状、飽和もしくは不飽和の炭化水素基またはこれらの異性体である。
【0030】
好ましくは、前記化学式のRおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つであってもよい。
【0031】
さらに好ましくは、前記化学式1において、nは、3であり、RおよびRがiso-プロピル基
であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップは、物理吸着、化学吸着、または物理および化学吸着するステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本願の一実施形態において、気相蒸着は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を含むことができ、化学気相蒸着は、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)、低圧化学気相蒸着(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、LPCVD)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本願の一実施形態において、薄膜の製造方法において、反応ガスとして、酸素(O)、水(HO)、オゾン(O)、水素(H)と酸素(O)との混合物(H+O)、窒素(N)、亜酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、過酸化水素(H)からなる群より選択されたいずれか1つ以上が注入されるステップをさらに含むことができる。また、必要とする薄膜の特性によって多様な酸素を含む反応物、窒素を含む反応物、炭素を含む反応物を共に使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
本願の一実施形態において、薄膜の製造方法は、高温で行われ、300℃~800℃の工程温度で蒸着可能であり、好ましくは600℃~800℃の工程温度で蒸着可能である。
【0036】
既存のシリコン前駆体は、600℃以上の高温工程温度では厚さ制御が困難であり、所望の特性を有する高品質の薄膜を提供できないが、本願の新規な高温シリコン前駆体は、600℃以上でも熱的に安定して、高温工程でも優れた品質の薄膜を提供することができる。
【0037】
本願のさらに他の側面は、薄膜の製造方法により製造された表面粗さが0.2nm以下であり、密度が2.5g/cm以上であり、好ましくは2.55g/cm以上である高純度の非晶質シリコン酸化膜を提供する。前記薄膜は、反応物の選択によって、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化膜、酸化窒化膜などの多様な薄膜が提供できる。また、前記薄膜の表面特性および密度によって優れた界面特性および耐食性を有することが期待される。
【0038】
本願のさらに他の側面は、本発明で製造された薄膜を含む多層薄膜を提供する。
【0039】
本願のさらに他の側面は、本発明で製造された薄膜を含む電子装置を提供する。電子装置は、半導体、ディスプレイ、および太陽電池からなる群より選択されるいずれか1つであってもよく、特に、3D-NANDメモリ素子のトンネリング酸化膜として優れた特性を実現することができる。
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【実施例
【0040】
[実施例1]ジイソプロピルアミノトリクロロシラン(diisopropyl amino trichlorosilane、C 14 Cl NSi)の製造
フラスコにSiCl(1.0eq.)を入れてペンタン(12eq.)で希釈させた後、0℃に維持された水槽で冷却させた。前記溶液を撹拌しながら、ペンタン(6eq.)で希釈したジイソプロピルアミン(diisopropylamine)(2.87eq.)をゆっくり添加した。添加完了後に、混合物を常温で15時間撹拌した。反応終了後、フィルタで濾過して得られた溶液を常圧で沸かして溶媒を除去した。前記得られた液体を減圧精製して無色の透明な液体を得た。
【0041】
ジイソプロピルアミノトリクロロシランの合成反応式とジイソプロピルアミノトリクロロシランの化学構造は、下記の反応式および化学構造式の通りであり、化学構造は、図1に示すように、H-NMRによって検証された。
[反応式および化学構造式]

【0042】
また、得られた前記化合物の分子量は234.63g/molであり、常温での状態は無色の液体であり、沸点(boiling point)は205℃であった。前記化合物は、高い蒸気圧で工程チャンバへの流入が容易であり、短時間に十分な前駆体の供給が可能である。
【0043】
[製造例1~3]
原子層蒸着(ALD)装置を用いて前記実施例1により製造された化合物を蒸着してシリコン酸化膜を製造した。本実験に用いられた基板はbare Siウエハであり、蒸着に先立ち、アセトン-エタノール-脱イオン水(DI water)にそれぞれ10分ずつ超音波処理(ultrasonic)後、前記bare Siウエハ上の自然酸化膜はHF10%(HF:HO=1:9)の溶液に10秒間浸漬して除去した。
【0044】
具体的には、原子層蒸着は、[実施例1のシリコン前駆体の注入](X秒)-[前駆体パージ(Ar)](10秒)-[反応ガス](5秒)-[反応ガスパージ(Ar)](10秒)の順序で供給し、前記順序を1サイクル(cycle)として蒸着した。
【0045】
実施例1のシリコン前駆体の供給(X超)において、Xは1秒~12秒とし、前駆体運送気体であるアルゴン(Ar)を200sccmで注入し、600℃~850℃の工程温度範囲で蒸着した。
【0046】
キャニスタの温度はすべて40℃に加熱し、Purge用Arは2000sccmを注入した。
【0047】
また、反応ガスを水素(H)ガスと酸素(O)ガスとの混合物(H+O)とし、工程温度を600℃(製造例1-1~1-5)、700℃(製造例2-1~2-5)、および750℃(製造例3-1~3-5)としてシリコン酸化物薄膜を製造した。
【0048】
反応ガスの注入時、酸素(O)と水素(H)はそれぞれ1000sccmおよび325sccmの量を反応チャンバ内に供給した。
【0049】
製造例1~3の蒸着工程条件および蒸着結果をそれぞれ下記表1~表3および図2に示した。
【0050】
また、図2に示すように、600℃以上の高温でも実施例1のシリコン前駆体化合物の蒸着による薄膜形成が観察され、実施例1のシリコン前駆体化合物およびこれを蒸着したシリコン酸化膜が高温でも優れた熱的安定性を保持していることを確認した。
【0051】
これとともに、850℃の工程温度での蒸着実験の結果を通して、850℃以上の工程温度では、実施例1の前駆体化合物の熱分解によってALD工程を適用できないことを確認することができた。
【0052】
【表1】
【0053】
前記表1は、工程温度を600℃とした時の蒸着結果で、前駆体の注入時間が1秒から12秒に増加するにつれ、蒸着率が次第に増加し、約9秒近傍でSelf-Limited Reactionが確認された。
【0054】
【表2】
【0055】
前記表2は、工程温度を700℃とした時の蒸着結果で、前駆体の注入時間が1秒から12秒に増加するにつれ、0.84から1.57Å/cycleに蒸着率が増加し、約9秒近傍でSelf-Limited Reactionが確認された。
【0056】
【表3】
【0057】
前記表3は、工程温度を750℃とした時の蒸着結果で、前駆体の注入時間が1秒から12秒に増加するにつれ、1.37から2.54Å/cycleに蒸着率が増加し、約9秒近傍でSelf-Limited Reactionが確認された。
【0058】
表1~表3および図2の蒸着結果から、前駆体の注入時間が増加するにつれて蒸着率が高くなることが確認され、また、工程温度を除いた残りの工程条件を同一にして実施した蒸着実験では、工程温度が上昇するにつれて蒸着率が高くなることが確認された。
【0059】
[実験例1]実施例1の前駆体で製造したシリコン酸化膜(SiO )の組成分析
XPS分析により実施例1の前駆体および酸素と水素との混合物(H+O)を600℃および750℃の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜の組成を分析して、図3に示した。
【0060】
図3に示すように、600℃(図3A)および750℃(図3B)の工程温度で製造されたすべての薄膜のXPS測定の結果から、炭素(C)および塩素(Cl)、窒素(N)のような不純物が検出されず、不純物が含まれていない優れた品質のシリコン酸化薄膜が形成されることを確認することができた。
【0061】
[実験例2]実施例1の前駆体で製造したシリコン酸化膜(SiO )の表面特性
実施例1の前駆体および酸素と水素との混合物(H+O)を600℃および750℃の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜を原子顕微鏡(Atomic Force Microscopy、AFM)および走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)で観察し、これを通してシリコン酸化膜の表面粗さ(roughness、Ra)を測定して、図4に示した。
【0062】
図4に示すように、表面粗さは0.097nmから0.134nmの範囲で測定され、いずれも1.5Å以下の優れた粗さを有しており、工程温度が上昇するにつれて粗さが大きくなることを確認することができた(図4A(工程温度:600℃、Ra:0.097nm)、図4B(工程温度:750℃、Ra:0.134nm))。
【0063】
このような優れた表面粗さはSEMを通しても確認することができた。
【0064】
[実験例3]実施例1の前駆体で製造したシリコン酸化膜(SiO )の密度特性
実施例1の前駆体と酸素と水素との混合物(H+O)を600℃および750℃の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜のXRR分析の結果を通してシリコン酸化膜の密度を分析して、図5に示した。
【0065】
図5の測定結果のように、工程温度が600℃の場合に密度が2.574g/cmであり(図5A)、工程温度が750℃の場合に密度が2.581g/cmであった(図5B)。
【0066】
前記測定のように、製造されたすべての薄膜の密度はSiO bulk(2.68g/cm)薄膜に近接した密度を有していて、優れた品質と優れた耐食性を有する薄膜が形成されたことを確認することができた。
【0067】
[実験例4]実施例1の前駆体で製造したシリコン酸化膜(SiO )のウェットエッチング(wet etching)特性
実施例1の前駆体および酸素と水素との混合物(H+O)を600℃および750℃の工程温度でそれぞれ蒸着して製造したシリコン酸化膜のウェットエッチング特性をエリプソメータ(ellipsometer)および走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)で分析し、SEM分析の結果を図6に示した。
【0068】
蒸着完了後、エッチング前(As-dep)に測定した薄膜の厚さは、エリプソメータ、SEMによってそれぞれ30.6nmおよび31nmと測定された。
【0069】
蒸着された薄膜を常温(20℃)でフッ酸(HF、蒸留水に1:200で希釈)溶液に15分間浸漬してエッチングを実施した後(15min dipping)、薄膜の厚さを測定した結果、エリプソメータ、SEMによってそれぞれ10.3nmおよび8nmと測定された。
【0070】
すなわち、エリプソメータ、SEMによって測定された厚さ値によれば、エッチング率(etch rate)はそれぞれ1.35、1.53となった。
【0071】
以上説明したように、本発明の新規シリコン前駆体は、600℃以上の高温の工程温度でも熱に安定して、高温ALDへの適用が可能であり、低い薄膜成長挙動と均一な蒸着率を活用して正確な厚さ制御が可能であり、優れた密度およびエッチング特性を有することを確認した。また、本発明の新規シリコン前駆体の蒸着により優れたシリコン薄膜が形成されることを確認した。
【0072】
このような優れた特性によって、今後、3D-NANDメモリ素子のトンネリング酸化膜(Tunneling Oxide)としての活用が期待され、その他、このような高品位のシリコン薄膜は、ナノ装置およびナノ構造の製造、半導体、ディスプレイ、太陽電池などの多様な分野に応用できる。この他にも、非メモリ半導体の製造時に絶縁膜などに使用可能である。
【0073】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6