(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】傾斜を補償するナビゲーション機器及び関連方法
(51)【国際特許分類】
G01C 17/38 20060101AFI20221219BHJP
G01C 17/28 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01C17/38 J
G01C17/28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021090944
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2021-05-31
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・ベスシェ
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-500350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 17/00-17/38
21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション機器(4)であって、前記ナビゲーション機器(4)は、
-第1のセンサ(6)であって、前記第1のセンサ(6)は、内蔵基準座標系と呼ぶ、前記ナビゲーション機器に関連する基準座標系
【数1】
において、第1の測定ベクトルと呼ぶ、第1の地球の力場
【数2】
の第1のベクトルの3つの成分を測定し、前記3つの成分
【数3】
を表す第1の出力信号を生成するように構成する、第1のセンサ(6)と、
-前記ナビゲーション機器の方位角(φ、θ、Ψ)計算ユニット(8)と
を備え、前記計算ユニットは、前記第1の出力信号を受信するように前記第1のセンサ(6)に接続し、地球基準座標系
【数4】
に対して、前記内蔵基準座標系、したがって前記ナビゲーション機器(4)の第1の方位角(φ)及び第2の方位角(θ)を計算し得るように構成し、前記第1の方位角及び前記第2の方位角は、2つの連続回転によって規定し、前記2つの連続回転は、前記内蔵基準
系内に3つの計算成分を有する計算ベクトル上で前記第1の測定ベクトルを整合するために、前記第1の方位角のための第1の回転基準軸
【数5】
回り、及び前記第2の方位角のための第2の回転基準軸
【数6】
回りで前記第1の測定ベクトルが受けなければならない回転であり、前記3つの計算成分は、前記地球基準座標系において予め規定又は予め決定した第1の基準ベクトル
【数7】
の3つの基準成分と同一である、ナビゲーション機器(4)において、
前記方位角計算ユニット(8)は、所与の順序及び更には逆の順序の前記2つの連続回転において、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を決定し得るように構成し、前記計算ユニット(8)は、前記所与の順序
あるいは前記逆の順序
を選択し、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を決定する間、前記計算ユニットの不安定リスクを定量化するエラー・リスク指標と所定の閾値との間の比較に基づき前記第1の方位角及び前記第2の方位角を計算し得るように構成し、前記エラー・リスク指標は、前記第1の出力信号の少なく
とも1つに従って、前記ナビゲーション機器によって決定することを特徴とする、ナビゲーション機器(4)。
【請求項2】
前記エラー・リスク指標は、前記第1の回転基準軸に直交する平面で測定した前記第1のベクトルの射影のノルムであり、前記方位角計算ユニット(8)は、前記エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記2つの連続回転のうち、最初に、前記第1の回転基準軸回りに測定した前記第1のベクトルの回転を実施することによって、最初に前記第1の方位角を決定するように構成することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション機器。
【請求項3】
前記所定の閾値は、前記第1の測定ベクトルのノルムの0.15から0.45の間、
または、前記ノルムの0.20から0.30の間に含まれることを特徴とする、請求項2に記載のナビゲーション機器。
【請求項4】
前記エラー・リスク指標は、前記第1の方位角を前記第2の方位角の前に計算する場合、前記第2の方位角の絶対値であり、前記方位角計算ユニット(8)は、前記エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記2つの連続回転のうち、最初に、前記第2
の回転
基準軸回りに前記第1の測定ベクトルの回転を実施することにより、最初に、前記第2の方位角を計算することによって、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を再度決定するように構成し、前記計算ユニット(8)は、次に、前記第1の方位角及び前記第2の方位角のために再度決定した前記第1の方位角及び前記第2の方位角の値を保持することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション機器。
【請求項5】
前記所定の閾値は、65°から80°の間、
または、70°から75°の間に含まれることを特徴とする、請求項4に記載のナビゲーション機器。
【請求項6】
前記地球基準座標系の予め規定した軸は、前記第1の基準ベクトルと整合し、
または、前記第1の基準ベクトルは、前記地球基準座標系の垂直軸
【数8】
と整合することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項7】
前記第1の測定ベクトルは
、重力場のベクトルであることを特徴とする、請求
項6に記載のナビゲーション機器。
【請求項8】
前記第1の測定ベクトルは、前記第1のセンサを形成する加速度計(6)によって決定することを特徴とする、請求
項7に記載のナビゲーション機器。
【請求項9】
前記第1の回転基準軸は、前記内蔵基準座標系の軸
【数9】
に対応し、前記第2の回転基準軸は、前記内蔵基準座標系の軸
【数10】
に対応し、前記第1の回転基準軸及び前記第2の回転基準軸は、直交することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項10】
前記機器は、第2のセンサ(10)を含み、前記第2のセンサ(10)は、第2の測定ベクトルと呼ぶ、前記内蔵基準座標系内の第2の地球の力場の第2のベクトルの3つの成分を測定し、前記3つの成分を表す第2の出力信号を生成するように構成し、前記第2の測定ベクトルは、前記第1の測定ベクトルと非共線的であり、前記ナビゲーション機器は、前記地球基準座標系に対する前記内蔵基準座標系の第3の方位角、したがって前記ナビゲーション機器の方位角を決定するユニット(12)を更に備え、前記決定ユニットは、前記第2の出力信号を受信するように前記第2のセンサ(10)に接続し、計算した前記第1の方位角及び前記第2の方位角並びに前記第2の出力信号から前記第3の方位角を決定するように構成することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項11】
前記計算ユニット(8)、及び前記第3の方位角を決定する前記ユニット(12)は、1つの同じ電子ユニットによって形成し、前記電子ユニット自体、前記ナビゲーション機器の中央電子ユニット(14)を形成することを特徴とする、請求
項10に記載のナビゲーション機器。
【請求項12】
前記第3の方位角は、第3の回転基準軸回りに
前記2つの連
続回転を前記第2の測定ベクトルに適用することによって、前記内蔵基準座標系内で方位変更した後、前記第2の測定ベクトルが受けなければならない回転によって規定し、前記第3の回転基準軸は、前記第1の回転基準軸及び前記第2の回転基準軸に直交し、前記内蔵基準座標系
の第3の軸
【数11】
に対応し、このため、第2の方位変更ベクトルと呼ぶ、前記第2の測定・方位変更ベクトルは、前記第1の回転基準軸及び前記第3の回転基準軸を含む前記内蔵基準座標系の第1の基準平面内に位置することを特徴とする、請求項9に従属する請求項10又は11に記載のナビゲーション機器。
【請求項13】
前記第3の方位角は、最初に
、前記所与の順序
および前記逆の順序
のうち選択
された順序で、
前記2つの連
続回転を前記第2の測定ベクトルに適用し、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を規定し、前記第2の方位変更ベクトルを得るようにし、次に、前記第1の回転基準軸及び前記第2の回転基準軸を含む第2の基準平面における前記第2の方位変更ベクトルの射影と、前記第1の回転基準軸との間の角度を計算することによって、決定することを特徴とする、請求項12に記載のナビゲーション機器。
【請求項14】
前記第2の測定ベクトルは、地磁気のベクトルであり、前記第2の測定ベクトルは、前記第2のセンサを形成する磁気センサ(10)により決定することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項15】
前記第3の方位角は、前記機器の向首方向とみなすことを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項16】
前記第1の測定ベクトルは、地磁気のベクトルであり、前記第1の測定ベクトルは、前記第1のセンサを形成する磁気センサ(10)により決定することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項17】
前記3つの基準成分は
、GPS型の前記ナビゲーション機器の位置デバイスから到来するデータから予め決定してあることを特徴とする、請求項16に記載のナビゲーション機器。
【請求項18】
前記内蔵基準座標系内の第2の地球の力場の第2の測定ベクトルは、地球の重力場のベクトルであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に従属する請求項10から13のいずれか一
項、又は請求項16又は17に記載のナビゲーション機器。
【請求項19】
前記機器は、第2のセンサ(10)を含み、
前記第2の測定ベクトルは、前記第2のセンサを形成する加速度計(6)によって決定することを特徴とする、請求項18に記載のナビゲーション機器。
【請求項20】
前記機器は、電子コンパス(4)であり、前記電子コンパス(4)は、磁北又は地理上の北の指標(18)と、前記指標を制御する手段(16)とを備え、前記手段(16)は、前記指標(18)を制御するように構成し、前記指標が、前記第1の回転基準軸に対し、前記第3の方位角の反対と等しい角度を有するようにし、
または、地磁気の偏角差に加えて、磁北及び地理上の北を示す前記ナビゲーション機器の位置における地磁気の偏差を修正するようにすることを特徴とする、請求項9に従属する請求項10から15のいずれか一項に記載のナビゲーション機器。
【請求項21】
前記機器は、真の向首方向を示すデータを表示するデバイス(20)を備え、前記計算ユニット(8)は、前記向首方向に従った真の向首方向、地磁気の偏角差を定量化する第1のパラメータ、及び前記ナビゲーション機器が位置する場所における地磁気の偏差を定量化する第2のパラメータを計算するように構成することを特徴とする、請求項15、又は請求項15に従属する請求項20に記載のナビゲーション機器。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のナビゲーション機器を備える着用可能デバイス(2)。
【請求項23】
前記デバイス、
または腕時計(2)は、ユーザの手首上に着用可能であり、前記第1の回転基準軸
【数12】
は、手首上に着用可能な前記デバイスの6-12時の軸に対応し、前記第2の回転基準軸
【数13】
は、9-3時の軸に対応することを特徴とする、請求項22に記載の着用可能デバイス。
【請求項24】
地球基準座標系
【数14】
に対するナビゲーション機器(4)の方位角を決定する方法であって、前記方法は、
-内蔵基準座標系と呼ぶ、前記ナビゲーション機器に関連する基準座標系
【数15】
において、第1の測定ベクトルと呼ぶ、第1の地球の力場の第1のベクトルの成分を取
得するステップと、
-前記地球基準座標系に対する前記内蔵基準座標系の第1の方位角及び第2の方位角を決定するステップ
とを含み、前記第1の方位角及び前記第2の方位角は、前記第1の測定ベクトルの2つの連続回転によって規定し、前記連続回転は、前記第1の方位角のための第1の回転基準軸回りの回転、及び前記第2の方位角のための第2の回転基準軸回りの回転であり、前記第1の測定ベクトルと、前記内蔵基準座標系内に3つの計算成分を有する計算ベクトルとの整合を可能にし、前記3つの計算成分は、前記地球基準座標系内の第1の基準ベクトルの3つの基準成分と同一であり、前記3つの基準成分は、前記地球基準座標系内で事前に規定又は事前に決定してあり、前記決定は、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を計算するため、前記第1の方位角及び前記第2の方位角を決定する間の不安定リスクを定量化するエラー・リスク指標と、所定の閾値との間の比較に基づき、前記2つの連続回転の所与の順序
あるいは逆の順序
を選択するステップを含み、前記エラー・リスク指標は、前記第1の測定ベクトルの前記成分の少なくとも1つに基づき決定する、方法。
【請求項25】
前記エラー・リスク指標は、前記第1の回転基準軸に直交する平面で測定した第1のベクトルの射影のノルムであり、前記エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記第1の方位角は、前記2つの連続回転のうち、最初に、前記第1の回転基準軸回りに測定した第1のベクトルの回転を実施することによって、前記所与の順序に基づき計算することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記所定の閾値は、前記第1の測定ベクトルのノルムの0.15から0.45の間、
または、前記ノルムの0.20から0.30の間に含まれることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エラー・リスク指標は、前記所与の順序で前記第1の方位角を前記第2の方位角の前に計算する場合、前記第2の方位角の絶対値であり、前記エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記2つの連続回転のうち、最初に、前記第2
の回転
基準軸回りに前記第1の測定ベクトルの回転を実施することによって、前記逆の順序で前記第1の方位角及び前記第2の方位角を再度計算し、次に、再計算した前記第1の方位角及び前記第2の方位角の値は、前記第1の方位角及び前記第2の方位角のために保持することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記所定の閾値は、65°から80°の間、
または、70°から75°の間に含まれることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記地球基準座標系の予め規定した軸は、前記第1の基準ベクトルと整合し、
または、前記第1の基準ベクトルは、前記地球基準座標系の垂直軸
【数16】
と整合することを特徴とする、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の測定ベクトルは、地球の重力場のベクトルであることを特徴とする、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の測定ベクトルは、加速度計(6)によって決定することを特徴とする、請求
項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の方位角及び前記第2の方位角は、それぞれロール角及びピッチ角であり、前記ロール角は、前記ロール角を最初に決定する際、前記内蔵基準座標系の軸
【数17】
に対応する前記第1の回転基準軸回りの回転に関連し、前記ピッチ角は、前記ピッチ角を最初に決定する際、前記内蔵基準座標系の軸
【数18】
に対応する前記第2の回転基準軸回りの回転に関連することを特徴とする、請求項24から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、第2の測定ベクトルと呼ぶ、前記内蔵基準座標系
【数19】
における第2の地球の力場の第2のベクトルの3つの成分を取得するステップであって、前記第2の測定ベクトルは、前記第1の測定ベクトルと非共線的である、ステップと、計算した前記第1の方位角及び前記第2の方位角、並びに前記第2の測定ベクトルの3つの成分から、前記地球基準座標系に対する前記内蔵基準座標系の第3の方位角、したがって前記ナビゲーション機器の方位角を決定するステップとを更に含むことを特徴とする、請求項24から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第3の方位角は、最初に
、前記所与の順序
および前記逆の順序
のうち選択
された順序で、
前記2つの連
続回転を前記第2の測定ベクトルに適用し、第2の方位変更ベクトルと呼ぶ、第2の測定・方位変更ベクトルを内蔵基準座標系内で得、次に、前記第1の回転基準軸及び前記第2の回転基準軸を含む第2の基準平面における前記第2の方位変更ベクトルの射影と、前記第1の回転基準軸との間
の角度を計算することによって、決定することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第3の方位角は、前記ナビゲーション機器のヨー角であり、前記ヨー角は、第3の回転基準軸回りの前記内蔵基準座標系の回転によって規定し、前記第3の回転基準軸は、ロール及びピッチを修正した後の前記地球基準座標系内の垂直軸
【数20】
に対応することを特徴とする、請求項32に従属する請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の方位角は、前記ナビゲーション機器の向首方向とみなすことを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
第2の地球の力場の前記第2のベクトルは、地磁気のベクトルであり、前記第2のベクトルは、磁気センサ(10)により測定することを特徴とする、請求項30又は31に従属する請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
第1の地球の力場の前記第1のベクトルは、地磁気のベクトルであり、前記第1のベクトルは、磁気センサにより測定することを特徴とする、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第2の地球の力場の前記第2のベクトルは、地球の重力場のベクトルであることを特徴とする、請求項24から29のいずれか一項に従属する請求項33又は34と組み合わせた、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第2の地球の力場の前記第2のベクトルは、加速度計(6)により測定することを特徴とする、請求
項39に記載の方法。
【請求項41】
前記3つの基準成分は
、GPS型の前記ナビゲーション機器の位置デバイスから到来するデータから決定することを特徴とする、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ナビゲーション機器は、電子コンパス(4)であることを特徴とする、請求項24から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ナビゲーション機器は、真の向首方向を示すデータを表示する手段(20)を備え、前記方法は、以前のステップのうち1つで決定された前記向首方向に従って真の向首方向、偏角差を定量化する第1のパラメータ、及びナビゲーション機器が位置する場所における地磁気の偏差を定量化する第2のパラメータを決定するステップを更に含むことを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記ナビゲーション機器は、着用可能デバイス(2)上に取り付けるか又は前記着用可能デバイス(2)内に組み込むように構成することを特徴とする、請求項24から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記着用可能デバイス、
または腕時計(2)は、ユーザの手首上に着用可能であり、前記第1の回転基準軸
【数21】
は、6-12時の軸に対応し、前記第2の回転基準軸
【数22】
は、9-3時の軸に対応することを特徴とする、請求
項44に記載の方法。
【請求項46】
命令を含むコンピュータ・プログラムであって、前記プログラムをコンピュータによって実行すると、前記コンピュータが請求項24から45のいずれか一項に記載の方法ステップを実施する、コンピュータ・プログラム。
【請求項47】
命令を含むコンピュータ可読記録媒体であって、前記コンピュータ可読記録媒体をコンピュータによって実行すると、前記コンピュータが請求項24から45のいずれか一項に記載の方法ステップを実行する、コンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜を補償するナビゲーション機器、ナビゲーション機器の方位角の決定を可能にする関連方法、当該方法を実施するプログラム、及びこのプログラムのためのコンピュータ可読記録媒体に関し、ナビゲーション機器は、より詳細には電子コンパスであり、着用可能デバイス、特に腕時計は、このナビゲーション機器を備える。
【背景技術】
【0002】
電子コンパスは、今日、主に傾斜補償のために巻き付けられる。この方法は、2軸又は3軸に沿って地磁気を測定し、(加速度計及び/又はジャイロスコープによって取得される)コンパスの姿勢(ロール及びピッチ)を最初に補償し、実際に望ましい向首方向にある、コンパスがまるで水平に保たれているような状態と同等の向首方向を推定することにある。これらの技法は、一般に、「傾斜補償」又は6-DOFと呼ばれる。例えば、欧州特許出願第1669718A1号(特許文献1)は、電子コンパスを例示しており、この電子コンパスは、2軸に沿って磁場を測定し、ピッチ及びロールを修正する。
【0003】
これらの技法の目的は、時計のピッチ角及びロール角を推定し得ることである(ヨーは、地磁気の測定によって規定される)。通常、ロール角が最初に計算され、ピッチ角が次に計算される。この方法に伴う主な問題は、ピッチが90°に接近すると、ロール測定平面上の重力ベクトルの射影がゼロに近いノルムを有するため、ロールの計算が不安定になることである。したがって、加速度計の測定ノイズは、異常な結果を生成する(ジンバル・ロック)。
【0004】
時計内に取り付けられた電子コンパスという特定の背景では、ユーザが北の方向又は向首方向を知る際に時計を水平に使用していないと、かなりの確率で、ユーザが時計を見る際、手首に着用している時計に対し、強力なロールではなく、強力なピッチが加わる(ロールは、概して、前腕と水平との間に形成される角度に対応し、ピッチは、概して、対応する腕を上げたまま文字板が見えるようにする手首の回転に対応する)。このことにより、製品の視点からは許容できない不安定さを生じさせる。
【0005】
米国特許第2004/0187328号(特許文献2)及びST(www.st.com)、「Design Tip」、DT5008(非特許文献1)によって記載されるもの等の解決策が存在し、ST(www.st.com)、「Design Tip」、DT5008(非特許文献1)では、計算軸上のノルムがゼロに近づくと、いくつかの角度が90°に強いられる。米国特許第2004/0187328号(特許文献2)は、初期の角度値を凍結させるジンバル・ロックの問題を解決することを提案している。この任意の選択は、誤った向首方向値をもたらすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願第1669718A1号
【文献】米国特許第2004/0187328号
【非特許文献】
【0007】
【文献】ST(www.st.com)、「Design Tip」、DT5008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の従来技術の欠点のうち少なくとも1つを克服することである。より詳細には、本発明の目的は、ナビゲーション機器のノイズに対する感度を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的で、本発明は、ナビゲーション機器に関し、ナビゲーション機器は、
-第1のセンサであって、第1のセンサは、内蔵基準座標系(on-board reference frame)と呼ぶ、前記ナビゲーション機器に関連する基準座標系において、第1の測定ベクトルと呼ぶ、第1の地球の力場の第1のベクトルの3つの成分を測定し、前記3つの成分を表す第1の出力信号を生成するように構成する、第1のセンサと、
-ナビゲーション機器の方位角計算ユニットと
を備え、この計算ユニットは、前記第1の出力信号を受信するように前記第1のセンサに接続し、地球基準座標系(terrestrial reference frame)に対して、内蔵基準座標系、したがってナビゲーション機器の第1の方位角及び第2の方位角を計算し得るように構成し、これら第1の方位角及び第2の方位角は、2つの連続回転によって規定し、2つの連続回転は、この第1の測定ベクトルを計算ベクトル上で整合するために、第1の測定ベクトルが、第1の方位角に関する第1の回転基準軸(第1の基準軸とも呼ぶ)、及び第2の方位角に関する第2の回転基準軸(第2の基準軸とも呼ぶ)回りに受けなければならない回転であり、計算ベクトルは、内蔵基準座標系内に、3つの計算成分を有し、3つの計算成分は、地球基準座標系内で予め規定又は予め決定した第1の基準ベクトルの3つの基準成分と同一である。このナビゲーション機器は、方位角計算ユニットが、所与の順序、更には逆の順序の前記2つの連続回転において、第1の方位角及び第2の方位角を決定し得るように構成されること、並びに計算ユニットが、第1の方位角及び第2の方位角を決定する間、計算ユニットの不安定リスクを定量化するエラー・リスク指標と、所定の閾値との間の比較に基づき、前記所与の順序と前記逆の順序との間で選択し、第1の方位角及び第2の方位角を計算し得るように構成されるという点で注目に値する。前記エラー・リスク指標は、前記第1の出力信号の少なくとも1つにより、ナビゲーション機器によって決定する。
【0010】
本発明の有利な実施形態によれば、ナビゲーション機器は、あらゆる可能な組合せで以下の技術的特徴を含む:
-エラー・リスク指標は、第1の回転基準軸に直交する平面内で測定した第1のベクトルの射影のノルムであり、方位角計算ユニットは、エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記2つの連続回転のうち、第1の回転基準軸回りに測定される第1のベクトルの回転を最初に実施することによって、第1の方位角を最初に決定するように構成される。
-所定の閾値は、第1の測定ベクトルのノルムの0.15から0.45の間、好ましくは、このノルムの0.20から0.30の間に含まれる。
-代替的に、エラー・リスク指標は、第1の方位角を第2の方位角の前に計算する場合、第2の方位角の絶対値であり、方位角計算ユニットは、エラー・リスク指標が所定の閾値よりも大きい場合、前記2つの連続回転のうち、最初に、第2の回転基準軸回りに第1の測定ベクトルの回転を実施することにより、第2の方位角を最初に計算することによって、第1の方位角及び第2の方位角を再度決定するように構成し、次に、計算ユニットは、第1の方位角及び第2の方位角のために再度決定した第1の方位角及び第2の方位角の値を保持する。
-以前の代替形態では、所定の閾値は、65°から80°の間、好ましくは、70°から75°の間に含まれる。
-地球基準座標系の予め規定される軸は、前記第1の基準ベクトルと整合し、好ましくは、この第1の基準ベクトルは、地球基準座標系の垂直軸
【0011】
【0012】
と整合する。
-第1の回転基準軸は、内蔵基準座標系内の軸
【0013】
【0014】
に対応し、第2の回転基準軸は、内蔵基準座標系内の軸
【0015】
【0016】
に対応し、これら第1の回転基準軸及び第2の回転基準軸は、直交する。
-ナビゲーション機器は、第2のセンサを含み、第2のセンサは、第2の測定ベクトルと呼ぶ、内蔵基準座標系内の第2の地球の力場の第2のベクトルの3つの成分を測定し、これら3つの成分を表す第2の出力信号を生成するように構成し、この第2の測定ベクトルは、第1の測定ベクトルと非共線的であり、ナビゲーション機器は、地球基準座標系に対するこの機器の第3の方位角を決定するユニットを更に備え、この決定ユニットは、第2の出力信号を受信するように第2のセンサに接続し、計算した第1の方位角及び第2の方位角並びに第2の出力信号から、第3の方位角を決定するように構成する。
-計算ユニット、及び第3の方位角を決定するユニットは、1つの電子ユニットによって形成し、電子ユニット自体は、中央電子ユニットを形成する。
-第3の方位角は、回転によって規定し、この回転は、(第3の基準軸とも呼ぶ)第3の回転基準軸回りの第1及び第2の連続回転を第2の測定ベクトルに適用することによって、内蔵基準座標系内で方位変更した後、第2の測定ベクトルが受けなければならないものであり、第3の回転基準軸は、第1の回転基準軸及び第2の回転基準軸に直交し(したがって、内蔵基準座標系内の軸
【0017】
【0018】
に対応する)、第2の方位変更ベクトルと呼ぶ、この第2の測定・方位変更ベクトルは、第1の回転基準軸及び第3の回転基準軸を含む内蔵基準座標系の第1の基準平面内に位置する。
-第3の方位角は、最初に、好ましくは、前記所与の順序と前記逆の順序との間で選択した順序で、第2の測定ベクトルに第1の回転及び第2の回転の連続回転を適用し、第1の方位角及び第2の方位角を規定し、第2の方位変更ベクトルを得るようにし、次に、第1の回転基準軸及び第2の回転基準軸を含む第2の基準平面における、第2の方位変更ベクトルの射影と第1の基準軸との間の角度を計算することによって決定する。
-第3の方位角は、この機器の向首方向とみなされる。
-第1の測定ベクトルは、地球の重力場のベクトルである。
-第1の測定ベクトルは、第1のセンサを形成する加速度計によって決定される。
-第2の測定ベクトルは、地磁気のベクトルであり、第2の測定ベクトルは、第2のセンサを形成する磁気センサにより決定される。
-代替的に、第1の測定ベクトルは、地磁気のベクトルであり、第1の測定ベクトルは、第1のセンサを形成する磁気センサにより決定される。
-以前の代替形態では、前記3つの基準成分は、特にGPS型の前記ナビゲーション機器の位置デバイスから到来するデータから予め決定されている。
-上記の代替形態では、第2の測定ベクトルは、地球の重力場のベクトルであり、第2の測定ベクトルは、第2のセンサを形成する加速度計により決定される。
-ナビゲーション機器は、電子コンパスであり、電子コンパスは、磁北又は地理上の北の指標と、この指標を制御するデバイスとを備え、このデバイスは、指標を制御するように構成し、指標が、第1の基準軸に対し、第3の方位角の反対と等しい角度を有し、好ましくは、地磁気の偏角差に加えて、磁北及び地理上の北を示す前記ナビゲーション機器の位置における地磁気の偏差を修正する。
-ナビゲーション機器は、真の向首方向を示すデータを表示する手段を備え、前記計算ユニットは、前記向首方向に従った真の向首方向、地磁気の偏角差を定量化する第1のパラメータ、及びナビゲーション機器が位置する場所における地磁気の偏差を定量化する第2のパラメータを計算するように構成する。
-本発明は、ナビゲーション機器を備える着用可能デバイスにも関する。有利には、本発明による着用可能デバイス、特に腕時計は、このデバイスがユーザの手首上に着用可能であり、第1の基準軸が6-12時の軸に対応し、第2の基準軸が9-3時の軸に対応するという点で注目に値する(時計の従来のアナログ時間表示に従って、6-12時の軸は、時計バンドの長手方向軸と位置合わせされる)。
-本発明は、地球基準座標系に対するナビゲーション機器の少なくとも第1の方位角及び第2の方位角を含む方位角を決定する方法にも関し、この方法は、
-内蔵基準座標系と呼ぶ、前記ナビゲーション機器に関連する基準座標系内で、第1の測定ベクトルと呼ぶ、第1の地球の力場の第1のベクトルの成分を取得するステップと、
地球基準座標系に対する内蔵基準座標系の第1の方位角及び第2の方位角を決定するステップと
を含み、これら第1の方位角及び第2の方位角は、第1の測定ベクトルの2つの連続回転によって規定され、これらの回転は、第1の方位角のための第1の回転基準軸回りの回転、及び第2の方位角のための第2の回転基準軸回りの回転であり、第1の測定ベクトルと、内蔵基準座標系内に3つの計算成分を有する計算ベクトルとの整合を可能にし、3つの計算成分は、地球基準座標系内で事前に規定又は事前に決定した地球基準座標系内の第1の基準ベクトルの3つの基準成分と同一であり、
第1の方位角及び第2の方位角の決定は、2つの連続回転の所与の順序と逆の順序との間で選択するステップを含み、前記所与の順序と前記逆の順序との間の選択により、第1の方位角及び前記第2の方位角を計算し、この計算は、第1の方位角及び第2の方位角を決定する間の不安定リスクを定量化するエラー・リスク指標と、所定の閾値との間の比較に基づき、エラー・リスク指標は、第1の測定ベクトルの前記成分の少なくとも1つに基づき決定される。
【0019】
本発明の有利な実施形態によれば、方位角を決定する方法は、あらゆる可能な組合せで1つ若しくは複数の以下の特徴及び/又はステップを含む:
-エラー・リスク指標は、第1の回転基準軸に直交する平面内で測定した第1のベクトルの射影のノルムであり、エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、第1の方位角は、前記2つの連続回転のうち、最初に、第1の回転基準軸回りに測定する第1のベクトルの回転を実施することによって計算する。
-所定の閾値は、第1の測定ベクトルのノルムの0.15から0.45の間、好ましくは、このノルムの0.20から0.30の間に含まれる。
-代替的に、エラー・リスク指標は、前記所与の順序に基づき、第1の方位角を第2の方位角の前に計算する場合、第2の方位角の絶対角度値であり、エラー・リスク指標が前記所定の閾値よりも大きい場合、第2の方位角は、前記2つの連続回転のうち、最初に、第2の回転基準軸回りに測定する第1のベクトルの回転を実施することによって計算する。
-以前の代替形態では、所定の閾値は、65°から80°の間、好ましくは、70°から75°の間に含まれる。
-地球基準座標系の事前に規定した軸は、第1の基準ベクトルと整合し、好ましくは、この第1の基準ベクトルは、地球基準座標系の垂直軸
【0020】
【0021】
と整合する。
-第1の方位角及び第2の方位角は、それぞれロール角及びピッチ角であり、ロール角は、ロール角を最初に決定する際、内蔵基準座標系内の軸
【0022】
【0023】
に対応する、第1の基準軸回りの回転に関連し、ピッチ角は、ピッチ角を最初に決定する際、内蔵基準座標系内の軸
【0024】
【0025】
に対応する、第2の基準軸回りの回転に関連する。
-方法は、第2の測定ベクトルと呼ばれる、内蔵基準座標系における第2の地球の力場の第2のベクトルの3つの成分を取得するステップと、第1の計算方位角及び第2の計算方位角、並びに第2の測定ベクトルの3つの成分から、第3の方位角を決定するステップとを更に含む。
-第3の方位角は、最初に、好ましくは前記所与の順序と前記逆の順序との間で選択した第1の回転及び第2の回転の連続回転を第2の測定ベクトルに適用し、第2の方位変更ベクトルと呼ぶ、内蔵基準座標系内で第2の測定方位変更ベクトルを得るようにし、次に、第1の基準軸及び第2の基準軸を含む基準平面内の第2の方位変更ベクトルの射影と、第1の基準軸との間の角度として第3の方位角を規定することによって、決定される。
-第3の方位角は、この機器のヨー角であり、このヨー角は、第3の回転基準軸回りのナビゲーション機器の回転によって規定され、第3の回転基準軸は、ロール及びピッチを修正した後の地球基準座標系内の垂直軸
【0026】
【0027】
に対応する。
-第3の方位角は、ナビゲーション機器の向首方向とみなされる。
-第1の測定ベクトルは、加速度計を使用して測定される地球の重力場のベクトルである。
-第2の地球の力場の第2のベクトルは、磁気センサにより測定される地磁気のベクトルである。
-代替的に、第1の測定ベクトルは、地磁気のベクトルであり、第1の測定ベクトルは、磁気センサにより決定される。
-上記の代替形態では、第2の地球の力場の第2のベクトルは、地球の重力場のベクトルであり、第2の測定ベクトルは、加速度計により決定される。
-上記の代替形態では、3つの基準成分は、特にGPS型のナビゲーション機器の位置デバイスから到来するデータから決定される。
-ナビゲーション機器は、電子コンパスである。
-ナビゲーション機器は、真の向首方向を示すデータを表示する手段を備え、方法は、以前のステップのうち1つで決定された前記向首方向に従った真の向首方向、偏角差を定量化する第1のパラメータ、及びナビゲーション機器が位置する場所における地磁気の偏差を定量化する第2のパラメータを決定するステップを更に含む。
-ナビゲーション機器は、着用可能デバイス上に取り付けられる又は着用可能デバイスに統合されるように構成される。
-着用可能デバイス、特に腕時計は、ユーザの手首上に着用可能であり、第1の基準軸は、時計による従来のアナログ時間表示の6-12時の軸に対応し、第2の基準軸は、9-3時の軸に対応する。
【0028】
本発明は、命令を含むプログラムにも関し、プログラムをコンピュータによって実行すると、このコンピュータが本発明による方法ステップを実施する。
【0029】
本発明は、命令を含むコンピュータ可読記録媒体に更に関し、プログラムをコンピュータによって実行すると、コンピュータが本発明による方法ステップを実行する。
【0030】
本発明の方策は、数学的な視点から、手法が、優先的に計算される角度に関わらず依然として同じであるため、有利である。しかし、2つの連続回転が所与の順序で実行されるか、又は逆の順序で実行されるかに応じて、特に、2つの角度が大きい(典型的にはロール及びピッチが45°に等しい)場合、結果は、かなり様々であり得る向首方向を示す。しかし、快適さの理由で、ユーザは、概して、ロールが0°に近く、ピッチが大幅に、特に-30°から70°の間で変動し得る状態で時計を使用することが公知である。これらの条件下、この説によって測定される向首方向は、もはやジンバル・ロックの影響を受けない。更に、方法は、測定に関連する不確実さを決定し、デジタル安定性を保証することを可能にする。最後に、本発明の測定は、従来技術のデバイス又はシステムによって得られる測定よりも正確である。というのは、ピッチが90°に近い場合でさえ、このピッチ角の推定を行うためである。従来技術では、同じ状況では、せいぜい、初期値がピッチに割り当てられている。
【0031】
以下、非限定的な例として与える添付の図面を使用して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ナビゲーション機器、特に電子コンパスが取り付けられた腕時計の図であり、この
図1は、左側に腕時計の正面図、及び右側にこの時計の簡略化した斜視図を含む。
【
図2】腕時計に関連する内蔵基準座標系、及び地球基準座標系の図である。
【
図3】地球基準座標系が、ナビゲーション機器の内蔵基準座標系と一致するように、地球基準座標系が受けるはずである連続する3つの回転の図である。
【0033】
【0034】
に直交する平面における地球の重力場のベクトルの射影の図である。
【
図4b】地球の重力場が計算ベクトルと一致するような、地球の重力場のベクトルの第1の回転及び第2の回転の図であり、計算ベクトルの成分は、地球基準座標系内の地球の重力場の成分に比例する。
【
図5】ロール角の計算時の測定ノイズの影響を示す2つのグラフである。
【
図6】2つの連続回転の所与の順序と逆の順序との間の任意選択領域のグラフであり、回転は、ナビゲーション機器のロール及びピッチに関連する。
【
図7a】所与のロール角の場合の、向首方向値とピッチ値とを比較するグラフであり、2つのロール回転及びピッチ回転の所与の順序及び逆の順序を伴う。
【
図7b】所与のロール角の場合の、向首方向値とピッチ値とを比較するグラフであり、2つのロール回転及びピッチ回転の所与の順序及び逆の順序を伴う。
【
図7c】所与のロール角の場合の、向首方向値とピッチ値とを比較するグラフであり、2つのロール回転及びピッチ回転の所与の順序及び逆の順序を伴う。
【
図8】本発明による電子コンパスを組み込んだ電子型着用可能物体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態を示し、ナビゲーション機器4(
図8に示す)は、腕時計2内に組み込まれた電子コンパスであり、腕時計2は、左側に正面図を示し、右側に斜視図を示す(他の図面ではバンドなしの概略図を使用する)。ナビゲーション機器は、腕時計の方位角を計算するユニット8を備え、ユニット8は、中央電子ユニット内に組み込まれるか又は中央電子ユニットによって形成される(
図8を参照)。ナビゲーション機器に関連する基準座標系
【0036】
【0037】
を
図1に示す。この基準座標系は、内蔵基準座標系とも呼ぶ。内蔵基準座標系がナビゲーション機器に関連する場合でさえ、内蔵基準座標系は、ナビゲーション機器が厳密に固定された腕時計2の特徴と共に規定することができる。したがって、有利には、内蔵基準座標系は、
【0038】
【0039】
により規定することができ、腕時計2の6時-12時の軸及び9時-3時の軸と方向が整合され、この腕時計2のデジタル表示又はアナログ表示(即ち、主文字板)の全体平面を規定する。軸
【0040】
【0041】
は、
【0042】
【0043】
に直交、好ましくは右旋回するように選択され、したがって、前記表示全体平面から腕時計の底の方に向けられる。
【0044】
内蔵基準座標系は、
図2に示す予め規定した地球基準座標系に対するナビゲーション機器の方位の決定を可能にする。腕時計2のこの方位は、ユーザが時計を着用し、ユーザが、腕時計を着用している手首の位置を変更すると、著しく変動することがある。内蔵基準座標系
【0045】
【0046】
の選択は、地球基準座標系
【0047】
【0048】
の選択が任意であるのとちょうど同じであることに留意されたい。この選択は、本質的に、ナビゲーション機器の使用慣習及び/又は意図される使用法に関連する。例えば、地球基準座標系は、(NED方位に従って)上から下に垂直方向で向けられた軸
【0049】
【0050】
により規定され(NEDは、北-東-下(North East Down)の頭文字である)、このため、軸
【0051】
【0052】
は、(ナビゲーション機器における)局所的な重力場を伴う方向で整合される。局所的重力場は、ベクトル
【0053】
【0054】
によって表される地球の重力場の基準ベクトルを特徴とする。基準座標系の軸
【0055】
【0056】
は、
図2に示すように、磁北極点又は地理上の北極点の方向に従って方位が定められる。好ましくは、軸
【0057】
【0058】
は、ベクトル
【0059】
【0060】
に直交する平面における基準地磁気のベクトルの射影から得られ、地磁気のベクトルは、磁北を指し、前記ベクトルは、ベクトル
【0061】
【0062】
によって表される。地表で最も人が居住する領域では、ベクトル
【0063】
【0064】
は、ベクトル
【0065】
【0066】
に実質的に直交し、したがって、軸
【0067】
【0068】
は、ベクトル
【0069】
【0070】
と実質的に共線的である。第3の軸
【0071】
【0072】
は、
【0073】
【0074】
に対して直交し、右旋回するように規定される。基準座標系の規定は、上記の例に限定されない。例えば、軸
【0075】
【0076】
は、ベクトル
【0077】
【0078】
と整合していてもよく、軸
【0079】
【0080】
は、軸
【0081】
【0082】
に直交する平面におけるベクトル
【0083】
【0084】
の射影から得てもよい。軸
【0085】
【0086】
の方位は、下から上へであってもよい。
【0087】
地球基準座標系に対する内蔵基準座標系の方位は、3つの方位角によって規定される一連の3つの回転によって規定することができ、3つの回転は、
図3に示すように、地球基準座標系が受けるはずの運動を、地球基準座標系が内蔵基準座標系と一致するように特徴付ける。
【0088】
公知の様式では、地球基準座標系に対する内蔵基準座標系の方位は、ヨー-ピッチ-ロールと呼ばれる3つの基準角によって規定される。これらの角度は、特に航空学で一般に使用される。しかし、本発明は、こうした角度の選択に限定するものではない。というのは、本発明が同様に適用可能である他の技術分野で使用される、オイラー角等の他の慣習があるためである。
【0089】
ヨー回転と呼ばれる第1の回転は、偏角Ψを伴って軸
【0090】
【0091】
回りに生じる。この第1の回転により、腕時計2(したがって、ナビゲーション機器、特に電子コンパス)のヨー運動の偏角の決定を可能にする。この偏角は、腕時計2、したがって、電子コンパスの向首方向にも対応する。腕時計2が、腕時計2の表示面が場
【0092】
【0093】
、したがって軸
【0094】
【0095】
に直交するように配置される特定のケースでは、ヨー回転は、ナビゲーション機器の向首方向を直接的に示す。実際、ナビゲーション機器、したがって腕時計2の向首方向の決定は、実際の腕時計2の方位を架空の位置に対して比較することによって行われ、架空の位置では、腕時計2の6時-12時の軸は、軸
【0096】
【0097】
と整合され、このことは、6時-12時の軸が、地磁気のベクトル
【0098】
【0099】
で固定されていることを暗示する。ヨー角、したがって向首方向は、有利には、測定した地磁気のベクトル
【0100】
【0101】
の座標に対する三角法の計算から決定される。これらの座標は、電子コンパス4内に配設した磁気センサ10により決定される(
図8を参照)。地磁気のベクトル
【0102】
【0103】
の座標
【0104】
【0105】
は、内蔵座標系/基準座標系内で表現される。
【0106】
ピッチ回転と呼ばれる第2の回転は、ヨー回転の後に得られる基準座標系の軸
【0107】
【0108】
回りに生じる。軸
【0109】
【0110】
は、ヨー回転を受けた地球基準座標系の軸
【0111】
【0112】
に対応する。ピッチ偏角は、ギリシャ文字θによって表される。腕時計2を使用する際、ピッチは、概して、人が、着用している腕時計2の表示上で時間を見るために行う前腕の回転運動と同様である。
【0113】
ロール回転と呼ばれる第3の回転は、内蔵基準座標系内の軸
【0114】
【0115】
に対応する軸
【0116】
【0117】
回りに生じる。ロールの偏角は、ギリシャ文字Φによって表される。腕時計2を使用する際、ロールは、概して、水平に対する前腕の回転運動と同様である。
【0118】
2つのロール角及びピッチ角の決定は、ユーザが装着する腕時計2の位置と、仮想位置とを比較することによって行うことができ、仮想位置では、腕時計2の表示面は、平ら(即ち、水平)であり、したがって垂直軸
【0119】
【0120】
に直交する。これら2つの角度を決定するため、電子コンパスは、センサ6(
図8を参照)を含み、センサ6は、
【0121】
【0122】
で表される、(時計に関連する)内蔵座標系内の地球の重力場のベクトルの測定を可能にする。磁気コンパス4が厳密に固定された腕時計2の内蔵基準座標系内のベクトル
【0123】
【0124】
の成分
【0125】
【0126】
の測定に基づき、ピッチ角及びロール角は、以下で説明する三角法の計算から容易に推測することができる。
【0127】
上記した3つの回転の偏角が既知であれば、
図3に示すように、例えば、腕時計2が地球基準座標系内の基準位置を占める初期の仮想位置から、腕時計2がユーザによって携行される際の最終的な現実の位置まで、腕時計2を仮想的にもたらすことが可能である。初期の仮想位置では、腕時計2の6時-12時軸は、軸
【0128】
【0129】
と整合され、(6時-12時軸及び9時-3時軸によって形成される)全体表示面は、垂直軸
【0130】
【0131】
に直交する。既に示したように、第1の回転の間に決定されたヨー角は、腕時計2の向首方向の決定を可能にする。第2の回転角及び第3の回転角は、腕時計のピッチ角及びロール角の決定を可能にする。
【0132】
したがって、地球基準座標系に対する内蔵基準座標系は、基準座標系を変換して「3次元の」運動を表すことによって規定することができ、3つの方位角、即ち、ヨー、ピッチ及びロールは、地球基準座標系の軸
【0133】
【0134】
の角度の変位を一緒に規定し、地球基準座標系軸の変位を、対応する内蔵基準座標系の軸
【0135】
【0136】
と一致させる。この基準座標系の変換は、地球基準座標系におけるある点(x,y,z)のための、以下の式1で示す行列積によって表される座標の変化に対応し、この式1は、内蔵基準座標系内のこの点からの座標(x’,y’,z’)をもたらす。
【0137】
【0138】
Rφ
T、Rθ
T、RΨ
Tは、Rφ、Rθ、RΨの転置行列である。
【0139】
電子コンパスは、腕時計内に組み込まれ、この電子コンパスの場合、内蔵基準座標系のみが最初に規定され、既知であり、計画される方法は、内蔵基準座標系と、地球基準座標系とを仮想的に一致させ、腕時計である着用可能デバイスの方位角、特に、この着用可能デバイスの向首方向を決定するため、次に、基準座標系を上記座標系に変換することに注意を向けられたい。内蔵基準座標系内の座標(x’,y’,z’)を有する1つ又は複数のベクトルから開始し(ベクトルは、内蔵基準座標系内及び地球基準座標系内にも、点(0,0,0)に起点を有する)、地球基準座標系内のこの1つ又は複数のベクトル(複数可)の座標(x,y,z)を決定しようとする。以前に示した式1に基づき、内蔵基準座標系内に表されるベクトル(x’,y’,z’)と、地球基準座標系内に表される同じベクトル(x,y,z)との間の行列形式での数学的関係は、以下の式2によって示される。この特性は、本発明の明細書の残りにおいて、電子コンパスを組み込む着用可能デバイスの方位角の計算のために利用される。式2の行列関係は通過行列を規定し、点又はベクトルを、内蔵基準座標系から地球基準座標系へ切り替えることを可能にする(即ち、座標の表現)。
【0140】
【0141】
したがって、点の座標が、起点が内蔵基準座標系と地球基準座標系の共通の起点と一致するベクトルの端部を規定し得ると仮定すると、既に示したように、式2は、内蔵基準座標系内で規定した測定ベクトル
【0142】
【0143】
と、地球基準座標系内で規定した同じベクトル
【0144】
【0145】
との間の関係の確立を可能にする。この関係は、以下の通りである:
【0146】
【0147】
また、内蔵基準座標系内で規定した測定ベクトル
【0148】
【0149】
と、地球基準座標系内で規定した同じベクトル
【0150】
【0151】
との間の関係は、以下の通りである:
【0152】
【0153】
しかし、方位角の計算は、内蔵基準座標系内の測定ベクトル
【0154】
【0155】
が、基準ベクトル
【0156】
【0157】
と共線であるという仮定から開始しており、この基準ベクトルは、内蔵基準座標系内の測定ベクトルに対応し、地球基準座標系内の基準ベクトルの成分は、予め規定又は予め決定されている。式3及び式4のため、地球基準座標系内の測定ベクトル
【0158】
【0159】
のそれぞれの成分を以下のように決定することが可能である:
【0160】
【0161】
したがって、式5a及び式5bを解くことによって方位角を計算することが可能である。しかし、方位角を発見するというこの手法は、決して全ての状況で有利ではない。というのは、特異解(例えばジンバル・ロック)の可能性があるためである。このため、本発明によれば、以下で説明するように、より多くの高度な手法を展開する。
【0162】
点又は測定ベクトルに関し、内蔵基準座標系(測定のベクトル)から、地球基準座標系(基準ベクトルのベクトル)に切り替える場合(基準ベクトルの式は、この地球基準座標系内で少なくとも部分的に既知である)、式2において、一連の基準回転は、最初にロール(角度φ)、次にピッチ(角度θ)及び最後にヨー(角度Ψ)であることが観察される。好ましくは、(ノルムgを有する)重力場のベクトル
【0163】
【0164】
の測定に基づき、ロール角及びピッチ角を最初のステップで決定し、この最初のステップの後、第2のステップの間、ヨー、したがって、向首方向を決定する。ヨーの計算は、地磁気のベクトル
【0165】
【0166】
の測定に基づく。
【0167】
したがって、第1のステップは、ロール角及びピッチ角を式5aから決定することにある。以下の式で示すように、重力場のベクトルが垂直軸
【0168】
【0169】
と整合した状態の適切な地球基準座標系を選択すると、計算の簡略化、及びジンバル・ロックのリスクに対するより良好な予想を可能にする。
【0170】
【0171】
式5aは、書き直し、以下のように簡略化することができる:
【0172】
【0173】
式5aから得られたロール角は、第1の測定ベクトルが第1の垂直基準ベクトルと共線である場合、以下の三角法の関係によって示される:
φ=arctan(g’y/g’z) 式6
【0174】
この場合、ピッチ角は以下によって示される:
θ=-arctan(g’x/g*z) 式7
式中、g*z=g’y・sinφ+g’z・cosφ
【0175】
有利には、
図4aに示すように、式6から、ロール角φが、(軸
【0176】
【0177】
に直交する)基準面Y’-Z’における地球の重力場
【0178】
【0179】
のベクトルの射影と、軸
【0180】
【0181】
との間の角度に対応することが成立する。
【0182】
次に、
図4bに示すように、式7から、ピッチ角θが、(軸
【0183】
【0184】
に直交する)基準面X’-Z’における地球の重力場のベクトル
【0185】
【0186】
の回転から生じる作動ベクトルと、軸
【0187】
【0188】
との間の角度に対応することが成立する。
【0189】
図4bは、ロール角及びピッチ角が、測定される地球の重力場のベクトル
【0190】
【0191】
が受けるはずである2つの連続回転によって規定されることを示し、回転は、最初に、ロール回転のための軸
【0192】
【0193】
回りでの回転であり、次に、ピッチ回転のための軸
【0194】
【0195】
回りでの回転であり、この測定ベクトルを軸
【0196】
【0197】
上で整合する。
【0198】
内蔵座標系内で測定される重力場のベクトル
【0199】
【0200】
は、加速度計によって決定することができ、加速度計は、このベクトルの3つの成分を表す出力信号をもたらす。しかし、3つの成分に対応する3つの信号は、それぞれノイズを有することが観察されており、これらのノイズの大きさは、無視できるものではなく、適切な対策が取られなければ、方位角の測定を大幅に妨害する可能性がある。測定ベクトルの3つの成分のそれぞれに対し、ノイズは、測定信号の大きさに依存しない変量効果であることに留意されたい。したがって、着用可能デバイスの姿勢を計算する際、ノイズは問題となる。実際、ロール角の計算は、射影に基づき行われ、したがって、低い偏角ベクトルに基づき行われる可能性がある。ノイズは各測定軸に対して統計的に不変であるため、測定値は、射影した測定ベクトルの偏角が低減すると、不確実に増加する。
図5に示す例では、ロール回転がピッチ回転の前に実施される場合、(内蔵基準座標系の軸/ベクトル
【0201】
【0202】
によって規定される)平面Y’-Z’において、ノルムが低い場合、ノイズがかなり大きなロール角の誤差を生じさせることが観察される(左の画像に対する右の画像を参照)。
【0203】
数学的に、ロール回転軸が実質的にピッチ回転軸と共線になると生じるジンバル・ロックのケースに近づくと、問題が生じる。ロール値は、ヨー値の計算に直接的な影響を有することに留意されたい。計算したロール値が安定していない場合、針又は他の表示器によって示されるヨー値、及びしたがって向首方向も不安定であることがわかる。
【0204】
本発明によれば、方位角の計算順序を逆にすると、平面Y’-Z’で測定したベクトルの射影が小さすぎる際に出現するこの不安定さを回避することができる。この測定のために、ピッチ角θの計算で使用される(内蔵基準座標系内の軸/ベクトル
【0205】
【0206】
によって規定される)平面X’-Z’内の測定ベクトル
【0207】
【0208】
の射影のノルムは、許容できる範囲内に留まる。この現象は、加速度が一定のノルムである際、ベクトルの射影が1つの平面内で低いノルムであると、他の直交平面では大きい必要があるという理由によって説明される。
【0209】
したがって、ロール角及びピッチ角の計算順序は、所与の順序又は逆の順序のいずれかである。所与の順序は、最初のロール回転、その後のピッチ回転を伴う。逆の順序の場合、所与の順序の反転により、最初に計算されるピッチ回転、次に計算されるロール回転がもたらされる。内蔵基準座標系内で測定されるベクトルに適用されるこれらの回転は、本発明による電子コンパスを組み込む又は備える着用可能デバイスに関与するロール及びピッチの修正に対応する、したがって、内蔵基準座標系の反対方向での回転(-φ;-θ)に対応し、このため、この内蔵基準座標系は、内蔵基準座標系の軸
【0210】
【0211】
が、地球基準座標系の垂直軸/ベクトル
【0212】
【0213】
と共線である状態で、仮想的に方位変更されることにも留意されたい。
【0214】
上記で示した順序に関し、ロール角及びピッチ角は、上記の式6及び式7によって決定される。逆の順序の場合、簡略化した式5aは以下の式5cと取り替えられる:
【0215】
【0216】
式5cから得られたピッチ角は、第1の測定ベクトルが第1の垂直基準ベクトルと共線である場合、以下の三角法の関係によって示される:
【0217】
【0218】
概して、Rφ・Rθは、Rθ・Rφに等しくなく、このため、考慮される2つの連続回転の反転は、腕時計2の向首方向を得るために次に計算されるヨー値に影響を及ぼすことに留意されたい。このことは、後で説明する。
【0219】
ロール角及びピッチ角を計算する順序の選択は、様々な基準に基づくことができる。例えば、第1の基準は、平面Y’-Z’におけるベクトル
【0220】
【0221】
の射影のノルム(又はノルムの2乗)を利用する。このノルムが所与の値よりも小さい場合、角度の計算順序を逆にする(最初にピッチを計算し、次にロールを計算する)。代替的に、第2の提案する基準は、所与の順序(最初にロールを計算し、次にピッチを計算する)に従ってこの値を決定する際のピッチ角の値に関する。ピッチが所与の角度よりも大きいことがわかった場合、ここで考慮される2つの角度の計算は、2度目を実施し、ピッチを最初に計算する。
【0222】
基本的な基準として既知である第1の基準は、(内蔵基準座標系の軸
【0223】
【0224】
によって規定される)平面Y’-Z’上で射影されるノルムの限度が、最大ノイズ・ノルムよりもかなり大きいことを保証することを目的とする。このようにして、ロール角の計算に対して一定の精度が保証される。有利には、この条件は、平面Y’-Z’内の測定ベクトル
【0225】
【0226】
の射影と、所定の閾値(
図6に示される限界半径)とを比較することによって実行することができる。「最初にピッチ」に切り替える条件は、射影ベクトル
【0227】
【0228】
の射影が、所与の閾値未満のノルムを有することである。例えば、所定の閾値は、測定ベクトル
【0229】
【0230】
のノルムの0.15から0.45の間、好ましくは、このノルムの0.20から0.30の間に含まれる。これらの値は、腕時計上又は腕時計内に取り付けられるナビゲーション機器の場合、特に好都合である。実際、ユーザは、前腕を水平に定め、手首を約30°から60°のピッチに回転させて時計を見る傾向があることがわかっている。したがって、本発明の有利な実施形態では、逆の順序を使用する選択は、ピッチが70°から75°の間に含まれる閾値を超えた際に生じる(代替基準を参照)。実際、順序が、ユーザが時計を見る際にピッチの30°から60°の有用範囲、したがって、上述の閾値の角度選択内で逆にならないようにすることが有利である。
【0231】
値の他の範囲は、ナビゲーション機器の用途の場、例えば、cos(45°)、即ち0.707を中心とする範囲に応じた閾値で選択することができる。この選択により、計算値に関する測定ノイズの影響を低減することの最適化が可能になるが、手首に着用可能な物体内に組み込まれる電子コンパスの向首方向の表示に不安定さを生じさせ、可能性として、この不安定さのために、ロール角及びピッチ角の計算シーケンスにより多くの繰り返しが生じるという危険がある。実際、測定ベクトル
【0232】
【0233】
に適用されるロール回転及びピッチ回転に対する所与の順序及び逆の順序は、様々なヨー/向首方向値をもたらすため、電子コンパスの使用中にピッチ角が閾値の周囲で変動する場合、表示される向首方向は、他の測定がなければ、問題とする2つの回転順序の選択基準によって規定される比較の結果、変化ごとに再計算される。代替基準と呼ばれる第2の基準は、第1の基準と実質的に同等である。第2の基準は、所与の順序に従って計算されるピッチ角と、65°から80°、好ましくは70°から75°の間に含まれる閾値との比較に基づく。
【0234】
本発明が提案する手法は、特に、ロール角及びピッチ角を決定する際、ノイズにもかかわらず、ノイズとは無関係に、軸
【0235】
【0236】
上で測定される重力ベクトルを比較的良好な精度でもたらすことが常に可能であるという観察に基づく。実際、重力ベクトルの測定ノイズにもかかわらず、(ベクトル
【0237】
【0238】
によって規定される)平面Y’-Z’と同一平面上の測定ベクトルのロールの計算は、常に比較的正確であり、(ベクトル
【0239】
【0240】
によって規定される)平面X’-Z’と同一平面上の測定ベクトルのピッチの計算は、常に比較的正確である。この場合、ロールを最初に計算し、対応する回転を測定ベクトルに適用した後、このように方位変更される測定ベクトルは、平面X’-Z’内にあり、このため、ピッチを良好な精度で計算することができる。同様に、ピッチを最初に計算し、対応する回転を測定ベクトルに適用した後、このように方位変更される測定ベクトルは、平面Y’-Z’内にあり、このため、ロールを良好な精度で計算することができる。したがって、電子コンパスの方位角の最初の計算は、基準平面内での射影に基づき、この射影のノルムが比較的小さいことがあるため、重要であり、このため、既に説明したように、測定中に生じるノイズは、電子コンパス4の計算ユニット8によって次に計算される最初の角度の結果を強くゆがめることがあることを理解されたい。本発明により、「最初にロール」と「最初にピッチ」との間で選択することによって、この最初の計算に対する良好な精度又は十分な精度が保証される。
【0241】
第2のステップは、向首方向を得るためにヨーを決定することにある。このステップは、既に示した式5bを解くことにある。適切な地球基準座標系を選択することにより、特に、軸
【0242】
【0243】
に直交する平面において第2の基準ベクトルに対応する基準地磁気ベクトル
【0244】
【0245】
の射影が軸
【0246】
【0247】
と共線である場合、即ち、地球基準座標系NEDが開始時に規定される場合の計算ステップの簡略化を可能にする。この場合、磁気センサによって測定される磁気ベクトルに対して以下の式が得られる:
【0248】
【0249】
式10aは、「最初にロール」の代替形態に対応し、「最初にピッチ」のケースでは、式10aと同様の式10bがあるが、回転行列の反転Rφ・Rθを伴う。ヨー角Ψは、最初に、内蔵基準座標系内で測定される地磁気のベクトル
【0250】
【0251】
に、既に説明した前記所与の順序と前記逆の順序との間で選択される順序に従ってロール回転及びピッチ回転に対応する2つの連続回転を適用し、地磁気の測定・方位変更ベクトル
【0252】
【0253】
を得るようにし、次に、地磁気の方位変更ベクトル
【0254】
【0255】
の
【0256】
【0257】
によって規定される基準平面X’-y’内での射影と、軸
【0258】
【0259】
との間の角度を計算することによって、決定することができる。式10a及び式10bから開始し、以下の簡略化した式が得られる:
【0260】
【0261】
したがって、式10a又は式10bから、ヨー/向首角は、以下の式によって示される:
【0262】
【0263】
上記で説明した全ての計算ステップは、電子コンパス4の中央処理ユニット14によって実行することができる。向首方向の決定は、向首方向を決定するユニット12によって式12を用いて計算したヨー角に基づき、ユニット12は、ロール角及びピッチ角を計算するユニット8と同じ電子回路によって形成することができる。一変形形態では、電子コンパスは、磁北又は地理上の北の指標18と、この指標を制御するデバイス16とを備える(
図1及び
図8を参照)。制御デバイス16は、ヨー角の反対に等しい、軸
【0264】
【0265】
に対する角度を有するように指標18を制御し、好ましくは、地磁気の偏角差に加えて、磁北及び地理上の北を示す前記ナビゲーション機器の位置における地磁気の偏差を修正するように構成することができる。
【0266】
電子コンパス4は、好ましくは、真の向首方向を示すデータを表示するデバイス20(
図1及び
図8を参照)と、向首方向を決定するユニット12とを備え、ユニット12は、上記式12によってもたらされる向首方向に基づく真の向首方向、地磁気の偏角差を定量化する第1のパラメータ、及びナビゲーション機器が位置する場所における地磁気の偏差を定量化する第2のパラメータを計算するように構成する。特に、地磁気の偏角差及び偏差を決定する場合、着用可能物体2は、地理位置デバイスを更に備える。電子コンパス4は、不揮発性メモリを有することができ、不揮発性メモリ内に、偏角差及び偏差に関連する情報、並びに/又は特に地理位置に基づき偏角差及び偏差を決定するプログラムが保存される。更に、着用可能物体は、ワイヤレス通信手段を有することができ、特に、偏角差及び偏差における、電子コンパスを組み込む着用可能物体が位置する場所に応じた磁場の取得を可能にする。
【0267】
腕時計2に適用した状況におけるヨー角、したがって向首方向の計算を踏まえて、所与の順序(最初にロール、次にピッチ)又は逆の順序(最初にピッチ、次にロール)との間での回転順序の選択が、比較的取るに足らない事項であることを論証するため、比較研究を実行した。実際、ロール回転及びピッチ回転の順序は、通常、ロール角及びピッチ角の計算に影響を及ぼす。というのは、既に示したように、行列積は交換可能ではないためである(R
θ・R
φ≠R
φ・R
θ)。
図7aは、ロールの不在下(電子コンパスを備える腕時計を着用している前腕が水平である場合)、所与の順序と逆の順序との間の置換が影響を及ぼしていないことを示す。この知見は、ユーザが、前腕を実質的に水平に定め、手首を特に30°から60°のピッチに回転させて時計を見る傾向があることがわかっているため、重要である。したがって、本発明の有利な実施形態では、逆の順序を使用する選択は、ピッチが70°を超えた際に生じるが、別の閾値、例えば、60°を選択することもできる。実際、既に説明したように、方位角を計算する連続シーケンスでの不安定さ、及び/又はこれらの計算シーケンス数の増大を回避するため、通常のピッチ範囲では順序が逆にならないようにすることが有利である。したがって、角度の(任意の)選択は、60°より大きい、特に70°である。特に一般的なケースであるロールが低く留まる限り、この値を上回って動作する場合でさえ、時計のユーザは、所与の順序から逆の順序に切り替わる際の差に気がづかない(
図7a)。念のために記載するが、この反転により、ナビゲーション機器(特に電子コンパス)の方位角を決定する際の測定ノイズによる影響を低減し、向首方向の測定精度を増大し、更には、一連の計算シーケンスによってもたらされる連続結果に関して可能性のある不安定さを低減することが可能になる。不安定さは、北及び/又は向首方向の値を表示する針のぐらつきをもたらす。
【0268】
しかし、ロールが比較的低い場合(
図7bを参照。ロールは10°)、現在の値に対応する範囲0°~90°内で最大10°、特に、範囲40°~60°内で約5°から8°という著しい偏差が既にあることに留意されたい。したがって、所定の閾値が通常のピッチ範囲内にならないようにするか又は対応しないようにすることが有利である。
図7cは、ロール角が増大するにつれて、所与の順序と逆の順序との間の向首方向の結果の差が増大することを示す。したがって、45°のロール角で、0°から30°のピッチ範囲内である場合、向首方向の値の差は20°に達することがある。
【0269】
本発明は、上記した第1の実施形態の装着可能デバイスに限定されない。実際、回転順序の反転は、2つの方位角を予測する間、測定ノイズに対する感度を有利に低減することを可能にするだけでなく、輸送車両又は飛行物体等の多くの物体に関するジンバル・ロックの影響をもはや受けない。概して、本発明による回転順序の反転は、フィルタとして動作し、地球の力場の少なくとも1つのベクトルに対する測定ノイズの影響を低減し、地球基準座標系に対する物体の方位角を決定する際にジンバル・ロックを除去することを目的とする。
【0270】
第2の実施形態において、ナビゲーション機器は、球面座標系内でシステムの2つの方位角の決定を可能にする。したがって、ナビゲーション機器は、地理位置を介して決定された地磁気のベクトルの測定に基づき、内蔵基準座標系の軸
【0271】
【0272】
の2つの方位角の決定を可能にする。
【0273】
第1の実施形態は、ナビゲーション機器に関連する基準座標系における、地球の重力場のベクトル
【0274】
【0275】
の測定に従ってロール角及びピッチ角を最初に計算し、次に、同じ内蔵基準座標系における、地磁気ベクトル
【0276】
【0277】
の測定からヨー角を計算することを提案する。この順序は、逆にすることができ、最初のステップで、同様に、ナビゲーション機器に接続する基準座標系における、地球の磁場のベクトル
【0278】
【0279】
の測定からヨー角及びロール角を計算し、次に、この内蔵基準座標系における、地球の重力場のベクトル
【0280】
【0281】
の測定からピッチ角を計算する。例は、考慮される基準座標系の軸の選択及び所与の回転順序が任意であることを示す。
【符号の説明】
【0282】
2 着用可能デバイス、腕時計 4 ナビゲーション機器 6 第1のセンサ、加速度計 8 方位角計算ユニット 10 第2のセンサ、磁気センサ
12 ユニット 14 中央電子ユニット 16 手段 18 指標 20 デバイス、手段