(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】フィルタ及び濾過プロセスで用いるためのプロセス制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/22 20060101AFI20221219BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B01D61/22
C07K1/34
(21)【出願番号】P 2021175256
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2020020325の分割
【原出願日】2015-05-13
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2014-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバ・ジェフロー
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ・ダブリュ・シュウェイカート
(72)【発明者】
【氏名】クリスタ・ペティー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・フランク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・サルストローム・タープズマ
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・シー・ザ・サード・ヘウィグ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・エドバルト・シュルツ
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213772(JP,A)
【文献】特開平03-143382(JP,A)
【文献】米国特許第6296770(US,B1)
【文献】特開平10-033957(JP,A)
【文献】特開昭63-252505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0239666(US,A1)
【文献】特開2003-334425(JP,A)
【文献】特開2003-064099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C07K 1/34
C12N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過液流量制御による単一パス接線流濾過を用いた精密濾過収穫流体の濃縮のためのプロセス制御方法であって、
バイオリアクターからの収穫流れによりインラインに配置され、細胞及び細胞残屑を対象となるタンパク質から分離して、細胞及び細胞残屑をバイオリアクターに戻す精密濾過要素を含み、
流入口、透過液排出口、及び保持物排出口を有する単一パス接線流フィルタを通して前記対象となるタンパク質を含む精密濾過の濾過液を送り出すこと;および
前記単一パス接線流フィルタの透過液排出口から透過液を送り出して、前記単一パス接線流フィルタの流入口への供給物流量の当該単一パス接線流フィルタの保持物排出口から排出される保持物流量に対する比率である流量減少係数を変動させて、前記供給物流量の累積供給物体積の前記保持物流量の累積保持物体積に対する比率である体積減少係数の目的体積減少係数を達成すること
を含む方法。
【請求項2】
生成物の収率を増強するための濾過液流量制御による単一パス接線流濾過を用いた透析濾過と組み合わせた精密濾過の使用のためのプロセス制御方法であって、
バイオリアクターからの収穫流れによりインラインに配置され、細胞及び細胞残屑を対象となるタンパク質から分離して、細胞及び細胞残屑をバイオリアクターに戻す精密濾過要素;および
前記バイオリアクターに接続され、前記対象となるタンパク質を含む濾過液を前記精密濾過要素を通過させたり除去したりしながら、バイオリアクターにおける媒体のレベルを保持する透析濾過要素を含み、
流入口、透過液排出口、及び保持物排出口を有する単一パス接線流フィルタを通して前記対象となるタンパク質を含む精密濾過の濾過液を送り出すこと;および
前記単一パス接線流フィルタの透過液排出口から透過液を送り出して、前記単一パス接線流フィルタの流入口への供給物流量の当該単一パス接線流フィルタの保持物排出口から排出される保持物流量に対する比率である流量減少係数を変動させること
を含む方法。
【請求項3】
流量減少係数を変動させて、前記供給物流量の累積供給物体積の前記保持物流量の累積保持物体積に対する比率である体積減少係数の目的体積減少係数を達成する、請求項1または2に記載のプロセス制御方法。
【請求項4】
前記流量減少係数を一連の段階的な変化で変動させる、請求項1または2に記載のプロセス制御方法。
【請求項5】
前記流量減少係数を一連の段階的な増加で変動させる、請求項4に記載のプロセス制御方法。
【請求項6】
前記段階的な増加は、72時間にわたって3つのステップにおいて実行される、請求項4に記載のプロセス制御方法。
【請求項7】
各ステップは、24時間にわたって実施される、請求項6に記載のプロセス制御方法。
【請求項8】
前記透過液を送り出すことが、第1の流量減少係数にしたがって透過液を送り出し、続いて前記第1の流量減少係数とは異なる第2の流量減少係数に変化させて、第2の流量減少係数にしたがって前記透過液を送り出すことを含む、請求項1または2に記載のプロセス制御方法。
【請求項9】
前記収穫流体は対象となるタンパク質を含む、請求項1または2に記載のプロセス制御方法。
【請求項10】
前記対象となるタンパク質がモノクローナル抗体を含む、請求項9に記載のプロセス制御方法。
【請求項11】
前記収穫流体が、少なくとも部分的に対象となるタンパク質を含み、前記プロセスが、溶出液で前記タンパク質を精製することをさらに含む、請求項10に記載のプロセス制御方法。
【請求項12】
薬学的に許容される賦形剤中に前記タンパク質を配合することをさらに含む、請求項11に記載のプロセス制御方法。
【請求項13】
プロセス制御方法であって、
バイオリアクターからの収穫流れとインラインで接続される精密濾過単位;
流入口、透過液排出口、及び保持物排出口を有する単一パス接線流フィルタ;
前記精密濾過単位と接続される流入口と前記フィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプ;
前記フィルタの透過液排出口に接続される流入口を有する透過液ポンプ;
前記透過液ポンプと連結され、および流量減少係数を変動させるように、前記透過液ポンプを制御するように適合される制御システムを備え、前記流量減少係数は前記単一パス接線流フィルタの流入口への供給物流量の前記単一パス接線流フィルタの保持物排出口からの保持物流量に対する比率であるシステム。
【請求項14】
前記制御システムが、前記流量減少係数を一連の段階的な変化で変動させるように、前記透過液ポンプを制御するように適合される、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【請求項15】
前記制御システムが、前記流量減少係数を一連の段階的な増加で変動させるように、前記透過液ポンプを制御するように適合される、請求項14に記載のプロセス制御システム。
【請求項16】
前記流量減少係数は第1の流量減少係数を含み、および前記制御システムは前記第1の流量減少係数を与えるように前記透過液ポンプを操作し、続いて前記第1の流量減少係数とは異なる第2の流量減少係数に変化させて、前記第2の流量減少係数を与えるように前記透過液ポンプを操作するように適合される、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【請求項17】
前記制御システムが、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記流量減少係数を変動させるように、前記透過液ポンプを制御するようにプログラムされる、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記透過液ポンプを制御するようにプログラムされ、前記流量減少係数を変動させて目的体積減少係数を達成し、前記体積減少係数が、前記供給物流量の累積供給物体積の前記保持物流量の累積保持物体積に対する比率である、請求項17に記載のプロセス制御システム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記透過液ポンプを制御するようにプログラムされ、前記流量減少係数を一連の段階的な変化で変動させる、請求項17に記載のプロセス制御システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記透過液ポンプを制御するようにプログラムされ、前記流量減少係数を一連の段階的な増加で変動させる、請求項19に記載のプロセス制御システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記透過液ポンプを制御するようにプログラムされ、前記流量減少係数を連続的に変動させる、請求項17に記載のプロセス制御システム。
【請求項22】
前記流量減少係数は第1の流量減少係数を含み、および前記少なくとも1つのプロセッサは前記第1の流量減少係数を与えるように前記透過液ポンプを操作し、続いて前記第1の流量減少係数とは異なる第2の流量減少係数に変化させて、前記第2の流量減少係数を与えるように前記透過液ポンプを操作するようにプログラムされる、請求項17に記載のプロセス制御システム。
【請求項23】
前記制御システムが、前記供給ポンプに連結され、一定流量を提供するように前記供給ポンプを制御するように適合される、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【請求項24】
前記保持物排出口と混合タンクとの間に配置されるバルブを備え、前記制御システムが、前記バルブに連結され、前記フィルタに背圧を与えるように前記バルブを制御するように適合される、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【請求項25】
前記バイオリアクターに接続される透析濾過単位をさらに含む、請求項13に記載のプロセス制御システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
2014年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/992,595号に対する優先権を主張し、その全内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本特許は、プロセス制御システム及び方法、具体的には、フィルタ及び濾過プロセスで用いるためのプロセス制御システム及び方法を対象にする。
【0003】
多くの生成物、例えば、抗体、より具体的には、モノクローナル抗体は、細胞由来である。細胞由来の生成物を調製するために、1つ以上の初期単位操作は、精製を可能にするために細胞及び任意の関連細胞残屑を除去するために行ってもよい。精製後、1つ以上のその後の単位操作は、投与用の生成物を調製するために行ってもよい。濾過は、細胞由来の生成物を調製する全プロセスの一般的な説明の文脈において以下に説明されるように、初期及びその後の単位操作の両方に含まれてもよい。
【0004】
抗体または免疫グロブリン等の治療等級の細胞外で発現した生成物を調製するために使用され得る工業規模の単位操作を参照して、遠心分離または濾過等の初期分離操作は、細胞及び細胞残屑を除去するために使用してもよい。遠心分離は、より高い濃度の要素の液体溶液または懸濁液を軸からさらに遠くに移動させ、より低い濃度の要素のこの溶液または懸濁液を軸に向かって移動させる(または少なくともより高い濃度の要素ほど軸から遠くに移動させない)ように、液体溶液または懸濁液への遠心力(軸に対して)の適用を伴う。濾過は、要素間のサイズ差に従って、液体溶液または懸濁液中の要素を分離するために膜を使用する圧力駆動型プロセスである。細胞分離収穫用途で使用される場合、濾過は、精密濾過と称され得る。初めにこの溶液または懸濁液中にある細胞及び/もしくは細胞残屑の量、もしくは遠心分離または一次濾過プロセスが細胞及び/もしくは細胞残屑を分離する程度に応じて、上に言及される遠心分離または濾過のいずれが、1つ以上の(さらなる)濾過単位操作の前またはその後であってもよい。
【0005】
一旦細胞及び細胞残屑が十分に除去されると、精製は、クロマトグラフィーとして知られているプロセスを用い、1つ以上のデバイス(1つ以上のカラムの形態であってもよい)において行われてもよい。クロマトグラフィーは、移動相と称される第1の相と、固定相と称される第2の相との間に相互作用を伴う。しばしば、移動相における対象となる生成物は、固定相に結合し、次いで、溶媒(溶出液と称される)が、固定相から生成物を分離するために使用される。また、対象となる生成物は、移動相中を流れるが、混入物質は固定相に結合する。
【0006】
移動相と固定相との間の相互作用の正確な性質は、用いられたクロマトグラフィーの種類によって異なる。イオン交換クロマトグラフィーは、対象となる生成物(または混入物質)の電荷分子と逆電荷の固相との間の引力に依存する。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、正電荷分子が負電荷の固相に引き付けられる。親和性クロマトグラフィーは、生成物(すなわち、標的分子)または混入物質に特異的に結合するリガンドの使用を伴う。対象となる抗体または免疫グロブリン生成物については、リガンドは、関連抗原であり得る。
【0007】
一旦精製が完了すると、クロマトグラフィーデバイスから溶出される生成物は、例えば、薬学的に許容される賦形剤中にタンパク質を配合すること及び/または濾過を行うことを含む、患者への投与前のさらなる処理のために輸送され得る。例えば、濾過は、バイオテク由来の治療剤のウイルス安全性を確保するために、いかなるウイルスの存在も除去するように行ってもよい。さらに、濾過は、生成物を治療レベルまで濃縮し、生成物を脱塩するために、生成物において行ってもよい。濾過の目的は、依然としてより小さな要素からより大きな要素を分離することであるが、生成物から細胞及び細胞残屑を除去するために行われる事前精製濾過とは異なり、精製後の濾過は、生成物の濃度を増加させるために、生成物から小ペプチド及び塩を除去する。また、この濾過は、生成物を脱塩するまたは充填前の生成物の保存用の安定した薬物物質製剤を導入するため(すなわち、緩衝液の交換または置換)に使用してもよい。この文脈において使用される場合、濾過は、限外濾過と称され得る。
【0008】
上に記載される濾過は、デッドエンドプロセスまたは直交流もしくは接線流プロセスであってもよい。デッドエンドフィルタでは、分離(または供給)される液体溶液または懸濁液の流れは、膜に垂直である。直交流フィルタにおける供給流れの大部分は、膜表面に接線方向であるか、または横断する。
【0009】
接線流濾過(またはTFF)は、デッドエンド濾過に対してある特定の有利点を提供する。具体的には、膜表面(淀み膜層とも称される)上に構築する物質は、接線流濾過中最小化され、フィルタが操作可能であり得る時間の長さを増大させる。その結果として、供給物がフィルタに及びそれを通して連続的に供給され得るという点で、接線流濾過を連続的なプロセス用途に適用してもよい。
【0010】
単一パス接線流濾過(またはSPTFF)と称される、特殊な種類の接線流濾過は、ある特定の用途に使用してもよい。従来のTFFは複数のパスでフィルタデバイス(または並行して配置された複数のフィルタデバイス)を通して供給物流れを誘導することを伴うが、SPTFFは単一パスでフィルタデバイスを通して供給物流れを誘導することを伴う。ある特定の実施形態によれば、SPTFFフィルタデバイスは、単一膜を含んでもよい。他の実施形態によれば、SPTFFフィルタデバイスは、直列に接続された複数の膜カセットによって画定され、ある段階の保持物を供給物流れとして連続する段階に誘導してもよい。これらのカセットは、複数のホルダーまたは分流プレートと接続させてもよい。あるいは、筺体は、複数の膜を受容するように設計されてもよく、この筺体は個々の膜を接続するための経路を提供する。
【0011】
以下に詳細に記されるように、本開示は、フィルタ及び濾過、具体的には、従来のデバイス及び方法への有利な代替手段を具現化する接線流フィルタ及び濾過のために改善されたプロセス制御システム及び方法を説明する。
【発明の概要】
【0012】
本開示の態様によれば、プロセス制御システムは、それぞれが流量を操作する1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタと、タンクに接続される流入口とフィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプと、透過液排出口での流量を判定するための透過液排出口に配置されるセンサとを含む。また、このシステムには、センサ及び上流プロセスに連結され、透過液排出口での流量に従って1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御するように適合される、制御システムも含まれる。
【0013】
本開示の別の態様によれば、プロセス制御方法は、1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有する接線流フィルタとともに用いるために提供される。本方法は、透過液排出口での流量を検知することと、透過液排出口での流量に従って1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御することと、を含む。
【0014】
本開示のさらに別の態様によれば、プロセス制御システムは、それぞれが流量を操作する1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタと、タンクに接続される流入口とフィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプと、透過液排出口での流量を判定するための透過液排出口に配置されるセンサと、を含む。また、このシステムには、センサ及び供給ポンプに連結され、透過液排出口での流量に従って供給ポンプを制御するように適合される、制御システムも含まれる。
【0015】
本開示のさらなる態様によれば、プロセス制御方法は、1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有する接線流フィルタとともに用いるために提供される。本方法は、透過液排出口での流量を検知することと、透過液排出口での流量に従ってタンクからフィルタに物質を送り出すことと、を含む。
【0016】
本開示のなおさらなる態様によれば、プロセス制御システムは、それぞれが流量を操作する1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタと、タンクに接続される流入口とフィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプと、透過液排出口での流量を判定するための透過液排出口に配置されるセンサとを含む。また、本システムには、センサ及び供給ポンプに連結され、供給ポンプの所定流量に達するまで透過液排出口での流量に従って供給ポンプを制御し、供給ポンプの所定流量に達した後、透過液排出口での流量に従って1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御するように適合される、制御システムも含まれる。
【0017】
本開示の別の態様によれば、プロセス制御方法は、1つ以上の上流処理単位と、それぞれの上流処理単位が流量を有する1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタとともに用いるために提供される。本方法は、透過液排出口での流量を検知することと、所定のポンプ流量に達するまで、透過液排出口での流量に従ってタンクからフィルタに物質を送り出し、続いて、所定のポンプ流量に達した時点で、1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御することと、を含む。
【0018】
本開示のさらに別の態様によれば、プロセス制御システムは、それぞれが流量を操作する1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタと、タンクに接続される流入口とフィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプと、透過液排出口での流量を判定するための透過液排出口に配置されるセンサと、を含む。また、このシステムには、センサ及び供給ポンプに連結され、供給ポンプの所定流量に達するまで、透過液排出口での流量に従って供給ポンプを制御し、供給ポンプの所定流量に達した後、1つ以上の上流処理単位の流量と供給ポンプの流量との間の不一致を許容するように適合される、制御システムが含まれる。
【0019】
本開示のさらなる態様によれば、プロセス制御方法は、1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有するフィルタとともに用いるために提供される。本方法は、透過液排出口での流量を検知することと、所定のポンプ流量に達するまで、透過液排出口での流量に従ってタンクからフィルタに物質を送り出し、続いて、所定のポンプ流量に従ってタンクからフィルタに物質を送り出し、それによりタンク中の体積の変動を許容することと、を含む。
【0020】
本開示のなおさらなる態様によれば、プロセス制御システムは、精密濾過単位と、流入口、透過液排出口、及び保持物排出口を有する単一パス接線流フィルタと、精密濾過単位に接続される流入口とフィルタの流入口に接続される排出口とを有する供給ポンプと、フィルタの透過液排出口に接続される流入口を有する透過液ポンプとを含む。また、このシステムには、透過液ポンプに連結され、供給物流量の保持物流量に対する比率である流量減少係数を変動させるように、透過液ポンプを制御するように適合される制御システムが含まれる。
【0021】
本開示の別の態様によれば、プロセス制御システムは、流入口、透過液排出口、及び保持物排出口を有する単一パス接線流フィルタを通して物質を送り出すことと、供給物流量の保持物流量に対する比率である流量減少係数を変動させるように、フィルタの透過液排出口から透過液を送り出すことと、を含む。
【0022】
本開示の別の態様によれば、タンパク質を精製するプロセスが提供される。このプロセスは、1つ以上の上流処理単位と、1つ以上の上流処理単位に接続されるタンクと、流入口、透過液排出口、及びタンクに接続される保持物排出口を有する接線流フィルタを利用する。このプロセスには、タンパク質が保持物排出口からタンクに戻って流れる間に透過液排出口での流量を検知することが含まれる。次いで、このプロセスには、(i)~(iv)のうちの1つを実施することが含まれる。(i)によれば、このプロセスには、少なくとも部分的にタンパク質を含む物質の流量である、透過液排出口での流量に従って1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御することが含まれ得る。(ii)によれば、このプロセスには、透過液排出口での流量に従って、タンクからフィルタに少なくとも部分的にタンパク質を含む物質を送り出すことが含まれ得る。(iii)によれば、このプロセスには、所定のポンプ流量に達するまで、透過液排出口での流量に従ってタンクからフィルタに少なくとも部分的にタンパク質を含む物質を送り出し、続いて、所定のポンプ流量に達した時点で、1つ以上の上流処理単位のうちの1つ以上の流量を制御することが含まれ得る。(iv)によれば、このプロセスには、所定のポンプ流量に達するまで透過液排出口での流量に従ってタンクからフィルタに少なくとも部分的にタンパク質を含む物質を送り出し、続いて、所定のポンプ流量に従ってタンクからフィルタに物質を送り出し、それによりタンク中の体積の変動を許容することが含まれ得る。最終的に、(i)~(iv)のうちのいずれか1つの後、このプロセスには、溶出液中でタンパク質を精製することと、任意に、薬学的に許容される賦形剤中にタンパク質を配合することとが含まれる。
【0023】
本開示は、添付の図面に関連して得られる以下の説明からさらに十分に理解されると考えられる。いくつかの図は、他の要素をさらに明らかに示すために選択された要素を省略することにより単純化されている場合がある。いくつかの図における要素のこのような省略は、対応する明細書において明確に記述され得る以外は、例示的な実施形態のいずれかにおける特定の要素の有無を必ずしも示さない。どの図面も、必ずしも一律の縮尺に従っていない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】連続単一パス接線流濾過(SPTFF)と組み合わせて使用される制御システムの概略図である。
【
図2】
図1の制御システムにより実行される段階的または層的制御方法のブロック図である。
【
図3】
図2の実施形態に従う段階的制御方法の一例における経時的な体積減少係数(VRF)のグラフである。
【
図4】段階的制御方法及び連続的に変化する制御方法の一例における経時的な体積減少係数(VRF)のグラフである。
【
図5】接続処理システムと組み合わせて使用される制御システムの概略図である。
【
図6】
図5の制御システムにより実行される可変流量制御方法のブロック図である。
【
図7】
図5の制御システムにより実行される一定流量制御方法のブロック図である。
【
図8】
図5の制御システムにより実行されるハイブリッド制御方法のブロック図である。
【
図9】
図5の制御システムにより実行されるサージ制御方法のブロック図である。
【
図10】
図5の制御システムにより実行される高体積設定点の固定流束制御方法のブロック図である。
【
図11】研磨ステップとしてカラム2及び3を用いた3カラムのmAb精製プロセスを示し、カラム2は、典型的には、結合及び溶出様式で操作される陽イオン交換クロマトグラフィーであり、カラム3は、一般に、フロースルー様式で操作される陰イオン交換クロマトグラフィーとして特定され、このボックスは、接続プロセスにおいて同時に操作されるステップを示し、大きなプールタンクは、接続プロセスにおいて小型サージ容器に変えることができる。
【
図12】操作の順序、ステップの接続性、サージ容器の位置、スプリットストリームのサンプリング、及びインライン滴定を示す接続プロセス設計の概略図である。
【
図13】接続下流プロセスにおけるTFF制御戦略を表す表である。
【
図14a】STIC膜クロマトグラフィー(mAb A)でのCHOp除去における負荷導電率の効果を示すデータのグラフであり、対照塩及び高塩実験は、それぞれ、16及び28mS/cmの負荷導電率を有し、プール(縦棒)及びCHOpの低減の割合(%)(傾斜のある線)においてCHOpレベルにおける負荷導電率の最小効果を示す。
【
図14b】mAb AのSTIC膜クロマトグラフィーでのCHOpの低減におけるpHの効果を示すデータのグラフであり、これら4つの実験のための負荷材料は、それらの対応するpHになるまで2M Trisを用いたCEXプール(pH5.0、導電率16mS/cm)の滴定により調製され、プール(縦棒)及びCHOpの低減の割合(%)(曲線)のCHOpレベルの結果は、より良好な宿主細胞のタンパク質除去がSTICにおいてより高いpHで達成されることを示す。
【
図15】0.1の体積比で400mMのTris滴定剤pH8.3を用いた、pH5.0~pH8.0のmAb A CEX溶出流れのインラインのpH滴定を示すデータのグラフであり、目標pH(直線の水平線)が溶出ピーク(タンパク質濃度、釣鐘曲線;導電率、傾斜のある線)全体にわたって達成されたという結果を示す。
【
図16】mAb Dを用いたViresolve Proに対して2つの異なるプレフィルタを使用するバッチ様式で負荷pHの効果を評価するデータの2つのグラフ(上パネル:Viresolve Shield、下パネル:Viresolve Prefilter)を表し、試験条件は、25g/Lのタンパク質濃度、0.1M NaAcetate 0.15M NaCl、30psiの定圧であり、これらの条件をpH5.0(ひし形)、pH6.5(四角形)、pH7.5(三角形)で表す。
【
図17a】17a)5分間及び17b)25分間の中間サージ容器内での滞留時間に伴うmAb C(0.1M NaAcetate中pH5)による接続されたCEX-VF(VPF-VPro)の操作に対するウイルス濾過プロファイルを示すグラフであり、動向は、タンパク質濃度(ひし形)、導電率(四角形)、圧力(三角形)、透過性(X)に対して示される。
【
図17b】17a)5分間及び17b)25分間の中間サージ容器内での滞留時間に伴うmAb C(0.1M NaAcetate中pH5)による接続されたCEX-VF(VPF-VPro)の操作に対するウイルス濾過プロファイルを示すグラフであり、動向は、タンパク質濃度(ひし形)、導電率(四角形)、圧力(三角形)、透過性(X)に対して示される。
【
図18】接続データを対角線に沿ってクラスタ化で示し、バッチデータを、クラスタ化された線の下に位置する四角形、丸形、及びひし形で示し、mAb C(0.1M NaAcetate中pH 5を用いたVPF-VProを使用する、バッチ対接続(CEX-VF)様式でのVF透過率の動向の比較を示すグラフであり、バッチデータを、各独立した実験に対する平均VPro透過率として示し、四角形は高圧、丸形は低圧、ひし形は中心点を示し、中塗りの形状は高塩状態を表すが、中抜きの形状は低塩状態を表す。
【
図19】mAb C(中抜き記号では低塩30mM NaCl、または中塗り記号では高塩150mM NaClを用いた、100mMの酢酸塩中pH5)を用いた低及び高塩条件における20psiのTMPでのTFF透過液流束対濃度を示すグラフであり、データ点を記号で示し、線はモデルフィットを示し、矢印は、接続プロセスの終了(UF1aの終了)まで38LMHの一定の透過液流束を維持するために必要とされる供給物直交流ランピングを示す。
【
図21a】CEXの結合/溶出クロマトグラフィー(CEX)、HICフロースルークロマトグラフィー(HIC FT)、ウイルス濾過(VF)、及びTFF(UF1a)の操作の順のステップによるmAb Bの接続下流プロセスによる質量の進行を示すデータのグラフであり、このプロセスの接続部分は、UF1aで終了し、UF1b、DF、及びOCは、離散様式で操作される。
【
図21b】接続されたウイルス濾過の動向を示すデータのグラフであり、設定点(破線)周辺の流量変動(ひし形)、ひいてはViresolve Proを横断する圧力低下(三角形)は、TFF保持物タンクにおける自動化レベル制御の結果であり、VProフィルタ透過率(四角形)の低下はフィルタ上のピークタンパク質濃度(X)の増加に相当する。
【
図21c】接続されたTFFの動向(
図20、表2中に示される実行パラメータ)を示すデータのグラフであり、供給物直交流(三角形)及びTMP(四角形)は、UF1a中、一定の透過液流量(*)を維持するように増加し、VF流量の設定点及びTFF透過液流量の設定点は一致し、8LPMを若干上回って配置された水平方向の破線によって表され、VF流量(+)及びTFFタンクレベル(X)の若干の振動は、自動化制御によるものである。
【
図22】100Lのサージタンクの接続プロセス使用と比較して、離散様式で操作されたmAb A~Eに対するB/E(3つの各クラスタにおける最左の縦棒)、FT(3つの各クラスタにおける中央の縦棒)、及びVF(3つの各クラスタにおける最右の縦棒)ステップにおける予測されたプール容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、以下の用語を使用し、これらの定義を以下に提供する。
【0026】
濾過:膜を使用して、要素間のサイズ差に従って液体溶液または懸濁液中の要素を分離する圧力駆動型の分離プロセス。
【0027】
供給物:フィルタに入る液体溶液または懸濁液。
【0028】
濾液:膜を通過する要素(複数を含む)。透過液とも称される。
【0029】
保持物:膜を通過しないが、その代わりに膜により保持される構成要素(複数を含む)。
【0030】
接線流濾過(TFF):TFFでは、液体溶液または懸濁液は、膜表面に沿って接線方向に送り出される。直交流濾過とも称される。
【0031】
単一パス接線流濾過(SPTFF):供給物流れが再循環することなく、単一パスでフィルタデバイスを通過するように誘導される一種のTFF。
【0032】
精密濾過:無傷細胞及び比較的大きな細胞残屑/溶解物を、要素、例えば、コロイド物質、タンパク質(対象となる生成物を含む)、及び塩の残留物から分離するために使用される濾過。この種の分離のための膜細孔径は、例えば、0.05μm~1.0μmの範囲内であってもよい。精密濾過プロセスからの濾液または透過液は、精密濾過収穫流体とも称され得る。
【0033】
限外濾過:例えば、脱塩または濃縮において、タンパク質(対象となる生成物を含む)を、例えば、比較的小さいペプチド及び緩衝液の要素から分離するために使用される濾過。この種の分離のための膜細孔径は、公称分子量限界において表されてもよく、例えば、1kD~1000kDの範囲内であってもよい。
【0034】
透析濾過:例えば、生成物の収率または純度を増強させるために、分離の他のカテゴリーと組み合わせて行うことができる濾過プロセス。緩衝液は、リサイクルタンクに導入されるが、濾液は、単位操作から除去される。
【0035】
膜貫通圧(TMP):TMPは、供給物から膜の濾液側への平均加圧力である。
【0036】
接続プロセス:上流プロセス及び下流プロセスが接続され、下流プロセスは、上流プロセスと同時に使用される。つまり、上流プロセス及び下流プロセスの操作は、時間的に少なくとも重複する。
【0037】
本開示は、フィルタ及び濾過システムのための様々なプロセス制御方法及びシステムに関する。初めに、プロセス制御方法及びシステムは、濾液(透過液)流れ制御による単一パス接線流濾過を用いた精密濾過収穫流体の濃度について説明している。さらに、プロセス制御方法及びシステムは、1つ以上の上流単位操作とともに同時に使用される(すなわち、接続される)限外濾過の操作について本明細書に説明している。
【0038】
上述されるように、精密濾過は、細胞及び細胞残屑を対象となる生成物から分離するために使用される。具体的には、精密濾過要素は、バイオリアクターからの収穫流れによりインラインに配置される。精密濾過要素は、細胞及び細胞残屑をバイオリアクターに戻すが、濾液は、さらなる下流プロセスのために収集される。
【0039】
精密濾過は、生成物の収率を増強するために透析濾過と組み合わせてもよい。しかしながら、透析濾過は、精密濾過要素から収集される濾液の液体体積を増加させる。80~90%超の生成物の収率を得るために、精密濾過要素から収集される濾液の液体体積は、バイオリアクターの作業体積の少なくとも3倍であってもよい。収集されるかなりの量の液体体積は、規模が増大するにつれて、透析濾過の有用性を制限する場合がある。
【0040】
大規模操作における生成物の収率を増強させるために精密濾過を伴う透析濾過の使用を許容するために、プロセス制御方法及びシステムは、精密濾過要素(本明細書では、精密濾過収穫流体と称される)からの透過液の濃縮について本明細書に説明している。具体的には、これらのプロセス制御方法及びシステムは、透過液流れ制御による単一パス接線流濾過(SPTFF)を使用する。
【0041】
一定体積透析濾過モードでの精密濾過の操作時、生成物濃度は、生産段階時、バイオリアクターにおける生成物の蓄積により高いところから出発する。すなわち、生成物濃度は、依然として生成物の除去がなく、緩衝液が透析濾過の一部としてまだ加えられていないため、高いところから出発する。バイオリアクター(及び精密濾過要素の濾液)中の生成物濃度は、生成物が精密濾過要素を通過し、媒体が透析濾過プロセスの一部として加えられるにつれて減少するであろう。変化する生成物濃度は、供給物の透過液へのSPTFFの転換が供給物濃度ならびに直交流量及び膜貫通圧により異なるため、精密濾過収穫流体を濃縮するためのSPTFF下流の使用に影響を及ぼし得る。精密濾過要素の濾液中の生成物濃度の変化は、SPTFFにおける供給物の透過液への転換の変化をもたらし得る。
【0042】
本開示によれば、単一パス接線流濾過(SPTFF)は、精密濾過収穫流体の濃度を達成するために、制御システム及び方法と組み合わせて使用される。
【0043】
ハードウェアに関しては、
図1は、精密濾過単位51、精密濾過単位51からの濾液を受容する任意の第1のタンク52、供給ポンプ54(他の実施形態によれば、精密濾過単位51に直接連結され、精密濾過単位51からの濾液を除去し、かつSPTFF56等の下流要素を横断して供給物流れを推進する二重目的を果たし得る)、SPTFF56、透過液(または濾液)ポンプ58、及び保持物を保持するための第2のタンク60を含む、処理システム50を示す。ライン62は、第1のタンク52の排出口64を供給ポンプ54の流入口66に接続し、ライン68は、供給ポンプ54の排出口70をSPTFF56の流入口72と接続する。ライン74は、保持物排出口76を第2のタンク60に接続するが、ライン78は、透過液排出口80を透過液ポンプ58の流入口に接続する。背圧制御バルブ82は、保持物排出口76と第2のタンク60との間のライン74に配置してもよい。ライン62、68、74、及び78は、
図1中に示されないコネクタ、クランプ、及び他の装置をさらに含んでもよい。
【0044】
図1にも示されるように、制御システム120を提供する。供給ポンプ54及びバルブ82は、手動で設定してもよいが、透過液ポンプ58は、
図2に示される制御方法に従って制御システム120によって制御される。他の実施形態によれば、制御システム120は、供給ポンプ54、透過液ポンプ58、及びバルブ82に連結してもよく、供給ポンプ54、透過液ポンプ58、及びバルブ82を制御するように構成または適合してもよい。
【0045】
ある特定の実施形態によれば、制御システム120は、1つ以上のプロセッサ122、及び1つ以上のプロセッサ122に連結されるメモリ124を含んでもよい。1つ以上のプロセッサ122は、
図2に示されるように制御方法に従って、透過液ポンプ58、任意に、供給ポンプ54及びバルブ82を制御するようにプログラムされてもよい。1つ以上のプロセッサ122により実行される命令は、メモリ124に保存してもよく、メモリ124は、様々な形態(例えば、ハードディスク、光/磁気媒体等)で読取専用メモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリ(RAM)等の非一時的コンピュータ可読有形媒体または記憶媒体を含んでもよい。
【0046】
本開示によれば、制御システム及び方法は、目的体積減少係数(VRF)を達成するように、可変流量減少係数(FRF)の戦略を利用する。FRFは、供給物流量の保持物流量に対する比率(供給物流量/保持物流量)として定義される。VRFは、累積供給物流量の累積保持物流量に対する比率(供給物流量/保持物流量)として定義される。可変流量変換により所望の目標VRFを達成するために、本開示による制御システム及び方法は、収穫の経過にわたってFRFの変化に伴う透過液流量制御戦略を実行する。具体的には、生成物濃度が高い場合(すなわち、収穫プロセスの開始時)には、より低い目標FRFが利用される。対照的に、生成物濃度が低い場合には、より高い目標FRFが利用される。生成物濃度が高いものから低いものに変化するにつれて、目標FRFは変動する。
【0047】
本開示の第1の実施形態によれば、目標FRFは、一連の段階的な変化で変動する。透過液流量制御戦略は、以下のように表すことができる:
全VRF=ΔT全/(Δt1/FRF1+...Δtn/FRFn)(式1)
式中、全VRF=累積体積減少係数、
ΔT全=全処理時間、
Δt=ステップの時間間隔、及び
FRF=ステップの体積減少係数。
【0048】
図2は、制御方法150として示される制御方法の一実施形態を示す。方法150は、ブロック152で始まり、供給ポンプ54は、必要とされるバイオリアクターの還流速度で起動するように設定される。方法150は、ブロック154に続き、背圧制御バルブ82は、SPTFF56のために必要とされる背圧に設定される。ブロック152、154での動作は、連続してまたは同時に行われてもよいことが認識されよう。方法150は、ブロック156に続き、透過液ポンプ58は、目標FRFを達成するように指定されるポンプ速度で設定される。次いで、方法150は、ブロック158に続き、透過液ポンプ58は、指定されるポンプ速度で操作される。本方法は、ブロック160に移動し、透過液ポンプ58の操作が目標FRFを変動させるように調節されるべきかどうかの判定がなされる。ブロック160で、透過液ポンプ速度を変化させて、目標FRFを変化させる(特定の実施形態を参照して、増加させる)時ではないという判定がなされる場合、方法150はブロック158に戻る。ブロック160で、ポンプ速度を変化させるべきであるという判定がなされる場合、方法150は、ポンプ速度を変化させて、新しい目標FRFを達成する、ブロック162に移動する。
【0049】
図3は、段階的制御システム及び方法と組み合わせた本開示によるSPTFFシステムの使用により達成可能なFRFの一例を示す。本方法は、72時間にわたって3つのステップにおいて実行されたことが認識されよう。各ステップは、24時間にわたって実施された。上の考察に従って、第1のステップにおいて使用されたFRFは、生成物濃度が高い場合に低く、第3及び最後のステップにおいて使用されたFRFは、生成物濃度が低い場合に高い。具体的には、第1のステップにおいて使用されたFRFは2.1であり、第2のステップにおいて使用されたFRFは2.7であり、第3のステップにおいて使用されたFRFは3.4である。上の方程式1を使用して、結果として全VRFは2.6である。
【0050】
図3の例は、3つのステップを含むが、より少ないステップか、またはより多くのステップ(例えば、2つのステップ、4つのステップ)を使用してもよいことが認識されよう。実際には、
図4は、本開示の実施形態を示し、FRFが段階的様式で実行される実施形態は、FRFが連続して変動する実施形態と比較される。さらに、各ステップは同じ期間にわたって実施されるが、透過液ポンプ速度が目標FRFを達成するように維持され得る期間は、第1のステップが連続するステップよりも長い、またはその逆も同様であり得るように、変動してもよい。さらに、目標FRFの変化(この場合、増加)が
図3の例において実質的に均等であったが、連続的ステップにおける目標FRF間の差が実質的に同一である必要はないことが認識されよう。
【0051】
目標VRFは、供給物流量に従って膜面積をサイズ調節し、システムの圧力制約内でFRFを特定することにより達成されてもよい。FRFの各段階的変化は、ある特定の膜貫通圧(TMP)ウィンドウ内で操作するように設定し、所望の全VRFを得てもよい。
【0052】
精密濾過収穫流体の濃度におけるプロセス制御システム及び方法を考慮して、限外濾過及び接続プロセスで使用される他のプロセス制御システム及び方法は、
図5~10を参照して論じられ得る。具体的には、
図5は、
図6~10の方法を実行し得る(関連制御システムを用いる)接続プロセスシステムを示す。
【0053】
上で論じられるように、限外濾過は、例えば、対象となる生成物、例えばタンパク質をより小さいペプチド及び塩から分離するために、膜を使用する分離プロセスである。限外濾過の場合、保持物は、可能なさらなる処理、パッケージ化等において収集されるが、透過液または濾液は除去される。限外濾過は、より低い塩分を有する濃縮生成物をもたらす。それ故に、限外濾過はまた、脱塩プロセスとも称され得る。
【0054】
例えば、モノクローナル抗体(mAb)に対するような典型的な限外濾過プロセスでは、限外濾過プロセスは、固定された供給物直交流量でバッチ様式において離散単位操作として稼働する。プロセスは、単位が上流プロセスまたは下流プロセスに直接接続されないが、その代わりにバッチ様式で操作されるという意味では離散的である。選択された固定の供給物直交流量は、典型的には、プロセス効率を最大限にするシステム設計により許容可能な最大供給物直交流量である。
【0055】
生成物濃度が増加するにつれて、透過液流束は減少する。この減少は、一般に、濃度分極勾配に起因する。すなわち、濾過プロセスが進行するにつれて、保持された物質の実質的に高い濃度の境界層が膜表面上またはその付近に構築される。境界層は、膜を通る物質の流れを遅らせ、その故に、透過液の産出に影響を及ぼす。
【0056】
実際には、限外濾過プロセスは、フィルタに取り付けられた供給タンクを用いたバッチ様式で操作され、供給タンクからのフィルタへの流入口流量は、典型的には、単位時間当たりの一定の保持物体積を維持するように、透過液流量に一致させるために減少する。限外濾過が離散単位操作として操作されるため、この流量の減少により、いかなる他の単位操作にも影響を及ぼさない。
【0057】
しかしながら、
図5は、限外濾過処理単位202が上流処理単位204(例えば、クロマトグラフィー処理単位、ウイルス濾過処理単位)に接続されるシステム200を示す。限外濾過処理単位202は、上流プロセスの生成物を供給するタンク(または再循環容器)206、供給ポンプ208、接線流フィルタ(TFF)210、及び背圧バルブ212を含む。ライン214は、供給タンク206の排出口216及びポンプ208の流入口218に接続される。さらなるライン220は、ポンプ208の排出口222及びフィルタ210の流入口224に接続される。さらなる保持物戻りライン226は、フィルタ210の排出口228及び供給タンク206に接続される。透過液は、フィルタ210の透過液排出口230で限外濾過処理単位202を出る。
【0058】
限外濾過プロセス単位202は、
図5において見られるような上流プロセスに接続される場合、透過液流量のいかなる減少(すなわち、排出口230での)も、上流操作に影響を及ぼし得る。すなわち、透過液流量の減少に一致させるために、フィルタへの流入口流量を減少させることは典型的である。一方、クロマトグラフィー及びウイルス濾過等の上流プロセス操作は、典型的には、一定流量で稼働する。上流プロセス操作が限外濾過処理単位202に接続される場合、溶液は、限外濾過処理単位202と上流操作204との間の操作の差を処理するために提供されなければならない。本開示の実施形態によれば、制御システムは、一定流量で上流プロセス204(例えば、クロマトグラフィー処理単位)を稼働させ、これらのプロセス(ウイルス濾過処理単位を通して直接的または間接的に)を、可変透過液流量を有する限外濾過プロセス単位202に接続するための要望に対応することが必要とされる方法である。
【0059】
図5に示されるように、制御システム240が提供され得る。制御システム240は、上流プロセス204及び/または供給ポンプ208に連結されてもよい。制御システム240は、
図6~10に記載される制御方法のうちの1つ以上を実行するために、上流プロセス204及び/またはポンプ208を制御するように構成または適合されてもよい。制御システム240はまた、少なくとも1つのセンサ246に連結されてもよく、これより、透過液流量を判定することができる。
【0060】
ある特定の実施形態によれば、制御システム240は、1つ以上のプロセッサ242、及び1つ以上のプロセッサ242に連結されるメモリ244を含んでもよい。1つ以上のプロセッサ242は、
図6~10のうちの1つ以上に示される制御方法に従って、上流プロセス204及びポンプ208を制御するようにプログラムされてもよい。1つ以上のプロセッサ242により実行される命令は、メモリ244に保存されてもよく、メモリ244は、様々な形態(例えば、ハードディスク、光/磁気媒体等)で読取専用メモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリ(RAM)等の非一時的コンピュータ可読有形媒体または記憶媒体を含んでもよい。
【0061】
図6に示され、可変流量戦略と称される第1の方法250に従って、制御システム240は、上流プロセス204の動作を変動させる。具体的には、方法250は、制御システム240が、例えば、センサ246から受容したシグナルに応答して、透過液流量が減少していることを決定する、ブロック252から開始する。方法250は、上流プロセスの変動が透過液流量の感知した減少に従って決定される、ブロック254に続く。言い換えれば、方法250は、透過液流量の感知した変化に対するブロック254での適切な応答を決定する。例えば、決定された変動は、一定の保持物体積を維持するための上流プロセス204の流量(例えば、クロマトグラフィー処理単位の流量)に対する所定の減少であり得る。他の実施形態によれば、変動は、上流プロセス204の流量に対する透過液流量に関する式に従って計算される減少であり得る。次いで、方法252は、ブロック254で決定された変動に従ってブロック256で上流プロセス204を制御する。
【0062】
図7に示され、一定流量戦略と称される、第2の方法260に従って、制御システム240は、ポンプ208の動作を変動させる。具体的には、方法260は、制御システム240が、例えば、センサ246から受容したシグナルに応答して、透過液流量が減少していることを決定する、ブロック262から開始する。方法260は、ポンプ208の動作時の変動(すなわち、ポンプ208の排出口での流量の増加または減少)が透過液流量の感知された減少に従って決定される、ブロック264に続く。例えば、変動は、透過液流量を一定の流量に変化させる供給物直交流量の変化であり得、この流量は、上流プロセス204の流量と一致し、これはまた、タンク206内に一定容量を提供しなければならない。この点において、透過液流束は、供給物直交流量に強く依存しており、より高い供給物直交流量がより高い質量移動係数をもたらし、それ故に、より高い透過液流束を生じる。次いで、方法260は、制御システム240がブロック264で決定される変動に従って、ポンプ208の操作を制御する、ブロック266に続いてもよい。
【0063】
矛盾に取り組むためのさらなる方法はまた、上流プロセス204の流量及び排出口230からの透過液の不一致を許容することである。可変容量戦略とも称される、本方法によれば、タンク206は、不一致により生じる保持物体積における急激な変化(すなわち、増加または減少)を調整するように十分にサイズ調整されなければならない。
図6及び7に記載される方法250、260とは異なり、本方法は、能動的制御方法ではなく、受動的制御方法である。
【0064】
図8~10は、制御システム240により実行され得る3つのさらなる制御方法を示し、
図8の制御方法はハイブリッド戦略と称され、
図9の制御方法はサージ戦略(サージがタンク206内に生じることを単に容認するものとは異なる)と称され、
図10の制御方法は高容量の設定点の固定流束戦略と称される。
【0065】
図8に示される方法270によれば、方法270は、初めに方法260のステップを使用する。すなわち、方法270は、ブロック272で透過液流量の変化があったかどうかを決定し、ブロック274でポンプ208における変動を決定し、ブロック276でその変動を実行する。次いで、方法270は、ポンプ208の操作において所定流量に達したかどうかをブロック278で決定し、方法270は、ブロック280、282、284に進み、方法270は、透過液流量の減少があったかどうかを決定し、上流プロセス204における変動を決定し、その変動を実行する。ある特定の実施形態によれば、所定流量は、最大システム流量であり得る。所定流量(具体的には、最大システム流量)に従う、ポンプ208の操作を制限する結果として、ブロック282で決定し、ブロック284で実行される変動は、方法250と比較して低減される。さらに、固定の保持物体積が維持され、より小型のタンク要求を可能にする。
【0066】
図9に示される方法290によれば、方法290もまた、初めに方法260のステップを使用する。すなわち、方法290は、ブロック292で透過液流量の変化があったかどうかを決定し、ブロック294でポンプ208における変動を決定し、ブロック296でその変動を実行する。次いで、方法290は、ポンプ208の操作において所定流量に達したかどうかをブロック298で決定し、方法270は、タンク容量が上で記載される受動的方法に従って急激な変化を許容するブロック300に進む。特定の実施形態によれば、所定流量は、最大システム流量であり得る。方法290は、上流プロセス204が一定の流量での操作を継続することを許容する利点を有する。
【0067】
図10に示される方法310によれば、より大型のタンク206を使用して、限外濾過処理単位202での濃度を最小限に抑える。上述のように、生成物濃度は、分極勾配形成の主要な一因である。従来のTFFバッチ限外濾過処理単位と比較して、単位202において最大濃度を制限することにより、達成することができる最大透過液流束速度が、従来のバッチ処理単位と比較して増加する。より高い最大透過液流束速度の結果は、上流処理単位がそれらの性能を最適化するのに望ましい一定の流量で維持され得るということである。
【0068】
それ故に、
図10に示される方法310によれば、制御システム240は、ポンプ208の動作を変動する。具体的には、方法310は、制御システム240が、例えば、センサ246から受容したシグナルに応答して、透過液流量が減少していることを決定する、ブロック312から開始する。方法310は、ポンプ208の動作の変動が透過液流量の感知した減少に従って決定される、ブロック314に続く。例えば、変動は、透過液流量を一定の流量に変化させる供給物直交流量の変化であり得、この流量は、上流プロセス204の流量と一致し、これはまた、一定容量を提供しなければならない。しかしながら、この変動はまた、
図8において方法260により維持される体積よりも大きいタンク206内の容量を維持することにより異なる。次いで、方法310は、制御システム240がブロック314で決定される変動に従って、ポンプ208の動作を制御する、ブロック316に続いてもよい。
【0069】
上流処理単位204が、
図6~10に示される方法において処理単位204の各サイクルに対して、接続システム200の動作を通じて継続的に使用されるべき十分な質量を提供し得ないことをさらに認識されよう。その代わりに、上に記載される可変容量戦略は、タンク206内の容量を急激に変化させ、それにより、上流処理単位204からの複数の接続サイクルを収集し、組み合わせるために使用することができる。
【0070】
認識されるように、本開示に従うシステム及び方法は、上で説明されたように、従来の技術と比較して、1つ以上の有利点を有し得る。これらの有利点のうちのいずれか1つ以上は、その実施形態に含まれる本開示の特性に従って特定の実施形態に存在し得る。本明細書に具体的に記載されていない他の有利点もまた、存在し得る。
【0071】
実験的試験
【0072】
例として、様々な有利点及び利点は、以下の実験的活動を通して実現されてきた。具体的には、以下の説明は、最終の接線流濾過(TFF)ステップを通じて研磨カラムから接続されるある実験的mAb下流プロセスを示す。典型的なmAbプラットフォームプロセスを
図11に記載し、収穫から開始し、その後、捕捉のためのプロテインA親和性クロマトグラフィー、低pHのウイルス不活性化ステップ、研磨のための最大2つのさらなるクロマトグラフィーステップ、ウイルス濾過(VF)ステップ、最後に、製剤化のために限外濾過/透析濾過(UF/DF)を行うTFFステップが続く。研磨カラムの間、この場合、結合/溶出(B/E)とフロースルー(FT)ステップ間の中間プールおよびTFFは、通常、最も希釈されたプールであり、したがって、それらの体積がプールタンクのサイズを上回る可能性が最も高い。B/Eカラム、FTカラム、VF、及びTFFステップを接続することにより、3つの大型プールタンクは、低減または排除され得る。この論文は、単位操作の接続性を可能にする接続プロセス及び流れ制御戦略の提案された構成を報告する。接続プロセスの開発への取り組み方、及びさらなるプロセス監視必要条件のための考慮における詳細な説明が提供される。
【0073】
方法及び材料
【0074】
材料
【0075】
5つのmAb生成物(mAb A、mAb B、mAb C、mAb D、mAb E)を、標準的なCHO細胞培養方法を用いて生成した。
【0076】
小規模及び大規模に使用されるクロマトグラフィー樹脂は、Fractogel(登録商標)EMD SO3
-(EMD Millipore,Billerica,MA)及びPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow High Sub(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を含む。小規模クロマトグラフィーカラムを、1.15cmのEMD Millipore Vantage(商標)L研究用カラム中に充填し、大規模では、GE Healthcare Axichrom 60または80cmのカラム中に充填した。AEX膜Sartobind STIC(登録商標)(Sartorius Stedim,Goettingen,Germany)を、ナノ(1mL)または10インチ(180mL)のサイズのいずれかにおいて使用した。Viresolve(登録商標)Prefilter(5cm2、0.55m2、及び1.1m2)、Viresolve Shield(3.1cm2及び0.51m2)、Viresolve Pro(3.1cm2及び0.51m2)、及びPellicon(登録商標)3 Ultracel(登録商標)30kDa(0.0088m2及び1.14m2)フィルタをEMD Milliporeから購入した。
【0077】
小規模クロマトグラフィー及び接続プロセス実験を、GE Healthcare AKTAexplorer(商標)100システムで行った。接続プロセス実験については、複数のAKTAを、P-900ポンプの背面上に遠隔接続を介して互いに接続し、補助入力及び出力シグナルを装置間で通過させた。小規模プレフィルタ及びウイルスフィルタの圧力モニタリングを、SciPres(登録商標)(SciLog,Madison,WI)圧力センサ及び圧力モニタを用いて行った。EMD Millipore Amicon(登録商標)撹拌細胞(50mL)を、サージ容器として使用し、この容器を上のふた及び膜を用いずに使用し、そのため、磁気撹拌プレート上に置かれた連続的に撹拌した細胞として大気圧に対して解放して操作し得た。
【0078】
小規模の離散ウイルス濾過実験は、一定の圧力設定で行われ、これには、圧力調整器、圧力容器(300または600mLのポリカーボネート)、圧力計、データ収集用のコンピュータにシリアル方式で接続されるはかり、及び圧縮給気が含まれる。小規模のTFF実験を、AKTA直交流(商標)システムで行った。
【0079】
大規模な実行を、特注の自動クロマトグラフィー、ウイルス濾過、及びTFFスキッドで行った。クロマトグラフィースキッドには、勾配及び希釈容量のための第3のポンプ、圧力、流量、pH、導電率、及び紫外線のインラインモニタリングが含まれる。スキッドはまた、生成物プールの偽プールサンプルを収集するためにスプリットストリームバルブ及びポンプも装備された。ウイルス濾過スキッドには、プレフィルタ及びウイルスフィルタ用のホルダー、ならびに圧力、流量、導電率、紫外線のインラインモニタリングが含まれた。TFFスキッドには、200Lの保持物タンク、システム供給物用のダイヤフラムポンプ、及び透析濾過緩衝液用の蠕動ポンプ、自動TMP制御バルブ、保持物タンク上での圧力、流量、pH、導電率、及びレベル検出のインラインモニタリングが含まれる。サージタンクは、レベル検知が装備された。
【0080】
方法
【0081】
Sartobind STIC膜クロマトグラフィー
【0082】
Sartobind STIC実験を、バイパスされたミキサを有するAKTAexplorerで行った。インラインフィルタ(0.2μmのSartorius Minisart)をSTIC膜の上流に使用し、AKTAポンプにより潜在的に生成された粒子を濾過することによって圧力構築を防いだ。負荷物質は、濾過、低pHウイルス不活性化プール(FVIP)、またはCEXプールのいずれかであった。生成物プールは、フロースルー及び洗浄時の単一の主要な画分としてまたは複数の画分のいずれかで収集された。STICプールにおいて行われたアッセイには、CHOp ELISA(CHO宿主細胞タンパク質用)、DNA QPCR、及び濃縮UV A280が含まれる。
【0083】
インラインpH滴定
【0084】
CEX溶出画分は、自動プログラムを通して全CEX操作配列を泳動したAKTAexplorerにより作成された。次いで、各画分を使用して、手動でpH滴定剤をスクリーニングした。適切な滴定剤を見つけた後、2つのAKTAexplorerを採用する実験を実行して、選択された滴定剤が正確なインラインpH滴定を標的物に提供し得ることを確認した。第1のAKTAがCEXを泳動し、その溶出を、5分間の滞留時間でのサージ容器としてビーカーに収集した。第2のAKTAは、ポンプAを用いてビーカーからの生成物、及びポンプBを用いて滴定剤を装填した。2つの流れをミキサ中で混合し、次いで第2のAKTAにおけるインラインpHプローブによりpHを測定した。第2のAKTAはまた、分画を行い、各画分を、Orion Dual StarオフラインのpHメーター(Thermo Scientific,Waltham,MA)を用いて確認した。
【0085】
ウイルス濾過
【0086】
ウイルスフィルタ試験を離散または接続様式のいずれかで行い、プレフィルタ及びウイルスフィルタを直列に置いた。離散試験を、材料の項に記載される一定の圧力設定を用いて行い、経時的に濾過された体積を収集し、均一な供給がフィルタ上に装填された。接続試験を、接続AKTAexplorer設定を用いて行い、1つのAKTA上のプレフィルタ及びウイルスフィルタは、別個のAKTA及び各ステップの間のサージ容器上の前述のクロマトグラフィーステップ(複数を含む)に接続された。サージ容器は、一定の滞留時間、したがって、体積で、典型的には、5~7分間操作された。ユニコーン方法は、AKTA間の自動化シグナリングが負荷及び溶出を開始及び終了することができるようにプログラムされた。インライン滴定、条件付け、または希釈は、AKTA B-ポンプで行い、AKTA A-ポンプ上に装填された供給流れで混合した。小規模の設定が市販の固定カラム直径及びフィルタ面積を使用するので、大規模の操作に相当する中間接続単位操作において目標負荷及び流量を達成するために、スプリットストリームが、クロマトグラフィーステップ後及びサージ容器前にAKTAサンプルポンプで得られた。このスプリットストリームは、その後の単位操作のための流量の制御を可能にし、質量及び流量が接続プロセスに連結されるため、質量負荷もまた制御される。スプリットストリームから収集された物質は、各接続ステップの収率及び不純物除去の性能評価用の偽生成物プールを作製するために使用された。
【0087】
TFF流束振幅
【0088】
流束振幅実験は、淀み膜モデルパラメータを実験的に決定するために、タンパク質濃度(典型的には、10~80g/L)、供給物直交流(1~6L/分/m2またはLMM)、及びTMP(10~25psi)の範囲で透過液流束の測定値を得ることにより、AKTA直交流において行われた(以下の方程式を参照のこと)。流束振幅は、塩緩衝液中のタンパク質を用いて、事前単位操作から最良モデルまで接続されたUF段階(UF1a)時に行われた。生成物は、安定した透過液流束及びデルタ圧(供給物-保持物)が達成されるまで、各濃度、TMP、及び供給物直交流での再循環を認められた。透過圧が4psiを超えたデータ点は、この分析から除外された。各組のTMP測定後、膜は、透過液排出口を閉ざされて、再循環により脱分極された。次いで、このデータを、流束(J)対Cb(この試験のタンパク質濃度)の自然対数の観点からプロット化した。
【0089】
フィルタのサイズ調整
【0090】
ウイルスフィルタ面積のサイズ調整は、接続プロセス流量及び最大許容操作圧によって異なる。最低の観察されたウイルスフィルタ透過率(圧力低下に対して規格化されるフィルタ流束)は、タンパク質濃度のピークで生じる。この最低の観察された透過率(kVF、最低)は、JVF、最大=kVF、最低×PVF、最大により説明されるように、最大圧力限界(PVF、最大)内で操作され得る最大流束(JVF、最大)を設定するために使用することができる。必要とされるフィルタ面積(AVF)は、方程式1により決定することができ、式中、QVFはプロセス流量である。
【0091】
【0092】
TFFモデリングについては、Ng P,Lundblad J,Mitra G.1976.Optimization of solute separation by diafiltration.Separation Science 11(5):499-502の研究は、淀み膜モデルに基づいたTFF透過液流束を説明する。淀み膜モデルは、質量移動係数(k=kovn)における供給物直交流依存性を含むように修飾され得、式中、koは実験定数であり、vは供給物直交流であり、nは供給物直交流依存性における指数用語である。この修飾された淀み膜モデルは、方程式2に示され、式中、JTFFは、透過液流束であり、Cwは、膜壁付近のタンパク質の濃度であり、Cbはバルクタンパク質濃度である。
【0093】
【0094】
流束振幅から得られ、プロセスからの入力パラメータと組み合わされたパラメータは、最適最終濃度を決定するために使用され、Cbについて方程式2を解くことにより、処理の接続部分の終端(UF1aの終端)を標的化する。。所望の透過液流束は、流入口プロセス流量及びTFFフィルタ面積から決定される。供給物直交流量は、システム及び膜の上位能力値、典型的には、6LMMで設定される。次いで、方程式3は、プロセスに対する期待される質量全体(m)に基づいた標的保持物タンクレベルの設定点を決定するために使用することができる。
【0095】
【0096】
結果
【0097】
接続プロセスの設計及び流量制御
【0098】
接続システムの高レベル設計は、標準的な単位操作の主要要素及び機能性が大部分は同一のままであるという点で、離散システムと類似している。接続システムでは、大きなプール容器は、短滞留時間(典型的には、5~7分間)の短い、単位操作の間の圧力破壊としての役割を果たす小さなサージタンクにより置き換えられる(
図12)。バッチ希釈及び滴定は、インライン添加に置き換えられる。接続システムのプロセス制御を設計する鍵は、単位操作間の流量格差の管理方法を決定することである。最終のTFFステップでは、生成物は、初めに、透析濾過を行うために所望の終点まで濃縮される。この課題は、質量を保持物タンクに添加する場合に、生成物濃度の増加をもたらす透過液流束の減少を管理することであり、この透過液流束の減少は、濃度分極の膜への影響に起因する。離散的供給回分TFFについては、保持物タンクへの流入口流量は、透過液流量を一致させるために減少し、一定の保持物体積を維持する。TFFステップは、離散単位操作として操作されるため、この流量の減少によるいかなる他の単位操作への影響はない。しかしながら、接続プロセスでは、流入口流れは、前の上流操作に直接接続され、透過液流量のいかなる減少も流量の不一致を引き起こし得る。一定流量のクロマトグラフィーステップを可変透過液流束TFFステップと接続するプロセス順序については、直接またはウイルス濾過ステップを通じるかに関わらず、不一致の流量は、能動的に管理する必要がある。これは、3つの異なる戦略:1)可変流量戦略、2)一定流量戦略、または3)サージ戦略を用いて、TFF操作中に達成され得る(
図13、表1)。一旦生成物質量が保持物タンク中に十分に包含されると、透析濾過及び最終濃縮ステップの残りが標準的な離散プロセスとして進められ得るため、初期濃縮が最終TFFステップにおいて接続される唯一の段階であることに留意すべきである。
【0099】
可変流量戦略では、TFFは、質量が保持物タンク内で蓄積するにつれて、透過液流束が低下するという点において、離散的供給回分操作と類似して操作される。システム流量の平衡を保つために、上流単位操作の流量はまた、透過液流束と一致するように減少する。これは、クロマトグラフィーステップにおいて、一定の保持物体積を維持するが、可変流量をもたらす。流量変動の大きさは、少なくとも2倍の減少をもたらし得、これはクロマトグラフィーステップの性能に潜在的影響を及ぼし得る。
【0100】
代替案は、一定流量戦略であり、透過液及び流入口流量は、前述の単位操作を通じて保持物体積及び一定流量の両方を維持するために、一定値で維持される。一定の透過液及び流入口流量を達成するために、TFF供給物直交流量及び膜貫通圧(TMP)の両方を用いた、透過液流束を能動的に制御するための新規の戦略が開発された。TFF供給物直交流量は、質量移動速度、ひいては膜を通過する流束に直接影響を及ぼすことができる。膜貫通圧(TMP)はまた、透過液流束も制御するが、このパラメータは、流束を制限された体制に達する場合に、より高いタンパク質濃度及びより高いTMPで制御の低下を有する。この制御戦略では、タンク内の生成物濃度が低い場合、より低い直交流量及びTMPは、生成物濃度が一定の透過液流量を維持するために増加するにつれて、両方のパラメータの漸増をともなう接続プロセスの手始めに使用される。この手法は、一定の透過液排出口流量を達成するように、共有直交流量及びTMPの両方の入力パラメータを同時に調節し、そのため、流量格差なく、接続プロセスシステムを操作することを可能にする、自動制御システムになった。
【0101】
最終制御戦略であるサージ戦略は、能動的な流量制御のないものとしてほとんど説明することができる。この戦略では、透過液流束が低下する場合、流入口流量は、依然として一定量で維持され、TFF保持物タンク内の体積サージを誘導する。実際には、TFFシステムは、流束の低下が示すように、体積がタンク内で急激に変化するにつれて、生成物濃度の増加速度は緩やかであるという点で、いくつかの自己調整を示す。
【0102】
これら3つの説明された制御戦略は、流量制御に利用可能な選択を提示するが、最終的には、これらの戦略のブレンドは、膜面積及び処理時間、前述の単位操作に影響を及ぼす流量下降、及び保持物容器の容量に対する必要条件の平衡を保つグローバルなプロセス最適条件を達成するために使用することができる。以下の項は、接続プロセスに特有の態様及びパラメータに重点を置いて、一定流量戦略を用いた接続プロセスの開発を説明する。この戦略は、クロマトグラフィー及びウイルス濾過ステップにおいて一定流量を維持し、研究される必要がある動的効果の数を最小限に抑えるので、操作及びプロセス開発におけるその簡潔さのために選択される。
【0103】
接続プロセスの開発
【0104】
2つの研磨カラム、ウイルス濾過、及びTFFを接続するプロセスの開発は、これらの単位操作を個々に開発することと比較してさらなる考慮を必要とする。そのような考慮には、1)その後のステップにおいてB/Eカラム溶出の影響を評価することと、2)その後のステップがB/EプールのpHとは異なるpHで操作される必要がある場合のインラインpH滴定方法を開発することと、3)可変供給組成物を用いた流量駆動のウイルス濾過ステップを開発することと、4)接続プロセス中、一定の透過液流束を用いたTFFステップを開発することと、が含まれる。
【0105】
第1のクロマトグラフィーステップの開発
【0106】
接続プロセスの一連の流れにおける第1のステップは、均一な負荷の濾過されたウイルス不活性化プロテインA生成物プールとともに提示されるため、離散プロセスとして独立して開発され得、そのため、ここでは詳細に論じられないであろう。しかしながら、接続プロセスにおいて2つの重要な考慮がある。第1に、勾配溶出を用いたB/Eステップ(例えば、CEX)が接続プロセスの第1のステップとしての役割を果たす場合、すべてのその後のステップは、第1のステップの溶出により生成された生成物濃度ピーク及び塩濃度勾配を経験する。達成された最大生成物濃度に応じて、そのような濃度ピークは、特に、ウイルス濾過ステップに対して、下流に課題をもたらし得る。その後のステップへの高いピーク濃度の影響を緩和するために、より浅い塩溶出勾配が採用され得る。これは、ピーク濃度を減少させ、生成物が許容される背圧により残りのステップを通るのを許容し得る。第2に、すべてのステップが接続されるため、第1のステップ溶出体積流量を、残りのステップの能力に基づいて最適化する必要がある。
【0107】
第2のクロマトグラフィーステップの開発
【0108】
接続プロセスの概略図中に特定された第2のステップは、フロースルー様式で操作され、樹脂ベースのまたは膜ベースのクロマトグラフィーであり得る。この第2のステップは、通常、下流プロセス全体において第3及び最後のクロマトグラフィーステップであるが、2つのカラムプロセスが十分な不純物及びウイルス除去能力を示す場合には必要とされない場合がある。典型的なmAb精製プロセスにおけるこのステップの目的は、宿主細胞タンパク質を除去し、潜在的には、高分子量(HMW)及びDNAをさらに低減することである。このフロースルーステップが第1のステップとしてB/Eステップに接続される場合、その供給物は、離散様式で操作される場合ほど均一ではないが、タンパク質濃度及び導電性の観点から動的である。フロースルーステップ供給物流れの導電率は、前述の塩勾配溶出のため、負荷中に増加し、負荷の終了時に最大値に達する。このため、広範囲の導電率にわたってロバストな不純物クリアランスを維持する樹脂または吸着性膜を選択することは重要であり、AEX膜STICクロマトグラフィーは、塩耐性吸着マトリックスの一例である。宿主細胞タンパク質除去への負荷導電率の影響を評価するために、負荷導電率の変動を有するいくつかの離散フロースルー実験は、影響を評価するのに十分である。
図14aは、フロースルーSTICステップによるCHOp除去への負荷導電率の影響を比較する。これらの結果は、導電性が、このデバイスに対して最適化されたリガンドの高塩耐性に基づいて期待されるように、CHOp除去に関して重要な役割を果たさないことを示す。したがって、第1のステップからの溶出は、希釈することなく、第2の接続ステップに直接供給され得る。
【0109】
宿主細胞タンパク質をより有効に除去するために、フロースルーステップは、B/Eステップ、例えば、AEX FTステップのpHよりも高いpHで操作する必要があり得る。いくつかの離散pH探索実験は、このフロースルーステップにおける最適な操作pHを見出すことを必要とされる。
図14bは、より高いpHでAEX膜クロマトグラフィーを介した宿主細胞タンパク質除去がより良好なクリアランスを提供することを示す。この例については、すべて4つの試験したpH値が許容されるクリアランスを提供したため、pH5が、接続処理中、滴定ステップを回避することの有効性によりSTIC操作において選択された。しかしながら、pH滴定が所望の宿主細胞タンパク質除去を達成するために必要とされる場合には、インラインpH滴定方法が必要となる。
【0110】
インラインpH滴定ステップの開発
【0111】
中間生成物プールのpH滴定は、前述のステップがその後のステップとは異なる操作pHを使用する場合には必要となる。離散様式では、pH滴定は、特定量の滴定剤を均一な生成物プールに添加することによって容易に行われ、目標pHを達成することができる。しかしながら、接続プロセスの場合、インラインpH滴定は、生成物が次のステップに連続的に負荷されるため、前述のステップから来る生成物流れのpHを変化させることが必要となる。接続プロセスにおいてpH滴定を潜在的に必要とする生成物流れは、フロースルーまたはウイルス濾過における供給物流れ、及び時折、UFステップにおける負荷である。フロースルー及びウイルス濾過ステップにおける供給物流れのインラインpH滴定は、各ステップにおいて最小限に使用されるスキッドまたはシステムが、受動ミキサを介するその後の混合とともに、同時に供給物及び滴定剤の流れを送達する二重ポンプ設計を有する場合、追加のポンプなしに適合され得る。追加のポンプは、UF負荷が滴定を必要とする場合に、滴定剤をTFF保持物タンクに送達するために必要とされ得る。
【0112】
インラインpH滴定が導入される位置に関わらず、結合及び溶出ステップからの溶出液中のタンパク質濃度及び導電率の変動は、滴定剤を選択する場合に考慮する必要がある。さらに、プロセス及びシステム設計は、滴定剤が一定の滴定剤対生成物体積比で生成物流れに導入される場合に簡易化される。この体積比は、生成物流れの過度の希釈を避けるために低くなければならないが、ポンプ流量線形範囲内であるほどに十分高くなければならない。このことに基づいて、0.1~0.2の体積または流量比が、一般的には推奨される。
【0113】
インラインpH滴定の開発は、結合及び溶出ステップの溶出にわたって複数の画分のオフラインpH滴定から始める。滴定された画分の生成物濃度及びpHは、各画分が、同じ体積比で滴定剤の添加とともに、目標pHに達することを確実にするためにスクリーニングされる。滴定剤が特定された後、ベンチ規模で接続された泳動がこれらの結果を実証するために採用される。
図15は、0.1の体積比で400mMのTris滴定剤pH8.3を用いた、pH5.0~pH8.0のCEX溶出からのインラインpH滴定を示す。インライン滴定後、生成物流れを画分化し、各画分をオフラインpHプローブを用いて分析した。目標pHを、
図15に示されるように、溶出ピーク全体にわたって達成した。
【0114】
ウイルス濾過ステップの開発
【0115】
接続ウイルス濾過ステップの初期開発は、分子及び溶液特性が適切なウイルスフィルタ及びプレフィルタの選択を推進し、膜の水圧透過性に影響するという点で、離散ステップの開発と類似している。ウイルスフィルタはフィルタを通過する流量を規定する前述の単位操作に接続されるため、高膜透過性を有するウイルスフィルタを選択し、必要とされる膜面積を低減することは有利である。さらに、ウイルスフィルタは、経時的に生成物濃度及び導電率の両方によって変動する可変圧力及び供給組成物にさらされる場合、有効に操作することが可能でなければならない。ここで、Viresolve Pro(VPro)フィルタを例として使用する。このフィルタは、高膜透過性を有し、概して、分子、供給組成物、及び圧力変動に関わらず、特にプレフィルタの使用により、ロバストな操作を示す。一般に使用されるプレフィルタには、深層フィルタ及び電荷に基づいたプレフィルタ(Ng P,Lundblad J,Mitra G.1976.Optimization of solute separation by diafiltration.Separation Science 11(5):499-502;Brown A,Bechtel C,Bill J,Liu H,Liu J,McDonald D,Pai S,Radhamohan A,Renslow R,Thayer B,Yohe S,Dowd C.2010.Increasing parvovirus filter throughput of monoclonal antibodies using ion exchange membrane adsorptive pre-filtration.Biotechnol and Bioeng 106(4):627-637)が含まれる。
【0116】
均一な供給量を用いたバッチ濾過実験は、異なる吸着性を有するプレフィルタ間の相対的性能比較を提供することができる。さらに、バッチ実験は、ウイルスフィルタ負荷の最適なpHの設定点をスクリーニングするために使用することができる。
図16は、2つの異なるプレフィルタ:1)電荷を持つ結合剤を含む珪藻土からなるViresolve Prefilter(VPF)、及び2)負の電荷を持つ膜からなるViresolve Shieldが使用される場合のVPro流束におけるpHの効果を示す。mAb Dについては、mAbの高等電点、またはより具体的にはmAb凝集体の不純物、及び相互作用の陽イオン交換機構に基づいて期待されるように、負の電荷を持つShieldプレフィルタは、低pHでより良好な性能を示す。逆に、VPFプレフィルタは、高pHでより良好な性能を示す。これは、分子の等電点に近いpH及び高塩溶液条件下で、より疎水性相互作用の機構を示し得る。この例は、プレフィルタの相対的性能及びpH条件を評価するためにバッチ研究を行う利点を示す。
【0117】
接続プロセスにおけるウイルスフィルタの性能を評価するために、2つの異なるアプローチが考慮され得る。前述の例等の場合、実験は、ウイルスフィルタのみでのバッチ様式で行うことができ、このことにより、生成物及び塩濃度を変動させて、複数の供給材料を作製することにより達成することができる。これらの実験は、タンパク質濃度、塩濃度、そしてさらに膜性能における圧力または流量の相対的効果を研究するための実験(DoE)の設計として行うことができる。範囲は、前述のクロマトグラフィーステップから観察された生成物及び塩濃度の極限を評価し、ウイルスフィルタにより経験した圧力の範囲を一括するために選択することができる。接続性能を評価するための第2のアプローチは、小規模なシステムを用いて実際の接続プロセスを模擬実験することである。そのようなアプローチは、ウイルスフィルタ上に直接負荷し得る前述のクロマトグラフィーステップからタンパク質及び塩濃度を変化させる代表的な時間的に変化する供給量をもたらし得る。プレフィルタでVProに接続したCEX勾配溶出により接続された実行の例を
図17aに示す。ウイルスフィルタにおけるタンパク質濃度及び導電率の変動は、サージ容器の排水による負荷の終了時に安定期を有する、CEX勾配からの溶出の結果である。この実行が一定流量で操作されるため、タンパク質濃度の増加は、ウイルスフィルタ上の圧力の増加をもたらし、このことは、膜透過性の初期減少、及びタンパク質濃度が低下する場合、それに続く透過性の回復に相当する。最終透過性は、開始の透過性と類似しており、実行中、最小のファウリングを示す。
【0118】
接続及びバッチ様式でのウイルスフィルタ性能を比較する結果を
図18に示す。2組の実験を、VPF及びVProフィルタを用いたmAb Cで行った。10の実行(2つの中央点で複製する)によるバッチ要因実験を、5または40g/Lのタンパク質濃度、0または250mMの塩化ナトリウム濃度、及び15または45psiの圧力で行い、これらのパラメータの中点で中央点を複製した。接続実験は、
図17a中に示されるものと同様に行われ、データを瞬間タンパク質濃度の関数としてVPro透過性を示すように変換した。バッチ条件は、接続プロセスにおいて見られる条件の範囲を包含するように選択された(
図17a)。バッチ結果は、タンパク質濃度の増加が透過性を減少させる明らかな動向を示すのに対して、試験された範囲内の塩濃度及び圧力がほとんど透過性に影響を与えないことを示す。接続実験からの結果は、バッチ実験と同様の透過性をきたしたが、バッチ様式でのフィルタ透過性は接続様式での透過性よりも全体的に低かった。CEX及びVF ステップの同時操作が、CEXプールが保持される持続時間を最小限に抑え、ひいてはウイルスフィルタの汚染要素の形成を最小限に抑えるならば、これらの結果は、期待されないわけではない。これらの結果は、バッチ実験がパラメータを操作する相対的効果における方向性の動向、及びタンパク質濃度の関数として最小限の期待された膜透過性の初期表示を提供することができることを示す。最後に、代表的な接続実行は、最終プロセス仕様に使用されなければならない。
【0119】
一旦ウイルスフィルタの水圧膜透過性が決定されると、ウイルスフィルタ面積は、接続プロセスにおいて適切にサイズ調整することができる。ウイルスフィルタを通過する流量は、先行のクロマトグラフィーステップの流量設定点により予め決定される。操作の様式が一定流量である場合、ウイルスフィルタのサイズ調整は、特定の最大限度を下回る供給圧力を維持することに基づいている。この限度は、ウイルスフィルタ、プレフィルタ、または操作システムによっても影響を受け得る。例えば、製造業者によって設定されたVProフィルタの最大限度は、60psiであり、VPFは50psiであり、したがって、ウイルスフィルタ上の40~45psiの操作圧力限度は、プレフィルタの限度を満たすように課せられる必要があり得る。バッチまたは接続様式で行われる実験は、期待された最大タンパク質濃度に基づいて期待された最小透過性を供給することができる。流量、最大圧力、及び最小透過性に対して既知の入力データで、ウイルスフィルタ面積は、方程式1を用いて計算することができる。様々な接続プロセスにおけるウイルスフィルタのサイズ調整を
図20、表2中に示す。
【0120】
離散ウイルス濾過プロセスでは、ロバスト性は、正常な操作範囲内での供給組成物中の変動を評価することにより評価される。ウイルスフィルタ上に負荷された供給プロファイルに影響を及ぼし得る接続プロセスにおける1つのパラメータは、ウイルスフィルタを先行するサージ容器での滞留時間である。サージ容器での滞留時間を最小限に抑えることは、ウイルスフィルタ上への先行のクロマトグラフィー溶出プロファイルのほぼ直接的な伝播をもたらし得る。対照的に、サージ容器での滞留時間を最大限にすることは、クロマトグラフィー溶出プール全体の収集をもたらし、そのため、実質的には、ウイルス濾過ステップに離散操作を与え得る。実験は、5分間及び25分間のサージ容器での滞留時間を比較するために行われた(それぞれ、
図17a及び17b)。予想通りに、長滞留時間は比較的均一なプールを生成するのに対して、短滞留時間は、観察された最大ピーク変動に対応する。
【0121】
接続接線流濾過ステップの開発
【0122】
導入に記載されるように、先行する下流単位操作を接線流濾過(TFF)ステップに接続するために使用することができるある制御戦略は、一定流束戦略であり、TFF保持物タンク容量及び透過液流束の両方がすべての接続操作中一定に保たれる。質量は、接続処理の経過中、TFF保持物タンク内に蓄積し、質量のすべてが接続プロセスの終了時にTFF保持物タンク内にある場合、最高タンパク質濃度に到達する。接続プロセスの終了時に一定の透過液流束を維持するために、TFF保持物体積設定点及び膜面積は、接続された流入口流量及び期待された最大タンパク質濃度に適合するように特定される必要がある。ベンチ規模流束振幅研究は、変動する供給物直交流量、膜貫通圧(TMP)、及び供給濃度、及び淀み膜モデルへのフィットモデルのパラメータへのTFF透過液流束の応答を策定するために行われる(方程式2)。このモデルは、接続プロセスにおける特定のパラメータを計算するために使用することができる。
【0123】
先行する単位操作からの塩緩衝液中のmAb Cにおける流束振幅データセットの例を
図19中に示す。流束振幅は、先行のCEX塩勾配溶出による塩濃度の変動の影響を評価するために、低塩(30mMのNaCl)及び高塩(150mMのNaCl)の両方を用いて行われた。この流束振幅研究については、5~20psiのTMP範囲及び1~6LMMの供給物流量範囲で9~88g/Lの濃度範囲を標的化しており、20psiのTMPデータを
図19中に示す。Pellicon 3 30kDaの再生セルロース膜は、この実施例及びその後の実施例に使用された。これらの結果は、高塩条件と低塩条件との間で比較できるほどの性能を示し、これにより、TFF膜の性能が可変塩濃度により最小限の影響が与えられることを示す。この同一の動向は、複数の分子において観察された(データは示さず)。
図19中の高塩流束振幅データに基づいた透過液流束モデルパラメータは、k
o=8.47、C
w=175、及びn=0.73である。接続プロセスについては、モデルパラメータとともに、方程式2及び3は、透過液流束についての既知の入力データに基づいたTFF保持物体積設定点(接続された流入口流量/TFF面積)、ポンプまたはシステム圧力限度に基づいた最大供給物直交流、及び期待された最大質量を計算するために使用することができる。導入の項に記載されるように、接続TFFプロセスは、一旦設定点の保持物体積に到達するとすぐに、開始される。供給物直交流及びTMPは、初めは、低タンパク質濃度を標的にする一定の透過液流束に達するために、低い設定である。質量が蓄積し、タンパク質濃度が増加するにつれて、供給物直交流及びTMPは、一定の流束標的を維持するように増大し、最大供給物直交流がシステム限度を下回って維持される。供給物直交流のランピングを、
図19中に重ね合わされた矢印により概念的に示し、38LMHの一定透過液流束で、供給物直交流は、約120LMHで開始し、接続プロセスの終了(UF1a終了)時に約300LMHで終了する。各分子プロセス(示さず)における淀み膜モデルパラメータ及び方程式2を用いて計算された、様々な接続プロセスにおけるUF1aタンパク質濃度の標的終了を
図20、表2中に示す。
【0124】
一旦初期充填体積パラメータがTFFステップに対して決定されると、透析濾過及び過濃縮/生成物回復ステップ等の単位操作の開発の残りは、標準的なバッチTFFプロセスにおけるものと同一であり、したがってこの考察では網羅しない。TFFステップの接続部分にけるプロセスのロバスト性は、複数の方法で評価することができる。期待された質量またはタンパク質濃度、供給物直交流、TMP、及び流入口流量の変動の効果は、入力条件下でモデルフィットパラメータ及び変動を用いて、感度分析により研究することができる。概して、安全因子は、入力条件下での変動を許容し、依然として一定の透過液流束を維持するために使用しなければならない。すなわち、より保守的なまたはより高い保持物体積の設定点仕様を設定するということである。透過液流束はまた、操作の固有の膜透過性及び温度によっても影響され得、実験は、これらの入力パラメータ辺りで行われ得る。
【0125】
プロセスのモニタリング
【0126】
離散様式と比較して、接続プロセスにおける単位操作は、単位操作の遷移を促進するためにさらにプロセスのモニタリングを必要とし、圧力制御に役立ち、その実行自体の性能についての必要な情報を提供する。サージタンクレベルのモニタリングは、対応する単位操作にリアルタイムで通信する臨界遷移シグナルを提供する。例えば、CEXクロマトグラフィー後のサージタンクレベルがその所定値に達する場合、制御システムがこのシグナルをフロースルークロマトグラフィースキッドに送り、サージタンクからの負荷を開始する。CEXクロマトグラフィー後のサージタンクレベルが0に達する場合、フロースルースキッドにおける負荷段階は停止し、洗浄段階が始まる。ウイルス濾過ステップについては、操作は一定流量で行われ、フィルタ流入口圧力が監視される。流入口圧力は、生成物ピーク濃度がウイルスフィルタを通過すると、変動する。最大圧力限界に達する場合、これが制御システムを始動させ、ウイルス濾過流量を低減し、フロースルーサージタンクレベルの増加を許容する。TFFステップにおいて、透過液流量は、接続プロセス中、流束情報を提供するだけではなく、制御システムと連通して、供給物直交流量及びTMPを調節することにより事前設定値で透過液流束を維持する、流量計によって測定される。加えて、制御システムは、TFF保持物タンクレベルを監視し、流入口またはウイルス濾過ステップの流量を調節することにより一定体積を維持する。
【0127】
離散プロセスにおけるステップ収率情報は、通常、均一な生成物プール全体の生成物濃度を測定し、それを、対応する体積とともに、均一な供給と比較することにより得られる。接続単位操作の同時操作がプール全体の収集を許容しないので、小スプリットストリームは、プール収集中、主要な生成物流れから取り出される。次いで、この偽プールは、濃度測定及び生成物品質アッセイのためのサンプルを提供する。収率情報はまた、紫外線A280nmまたはA300nmシグナルの統合及び実験的に決定した製品固有の減衰係数を使用することによりスキッドにおける実時間を得ることができる。紫外線統合方法は、接続プロセスの終了時にTFF保持物タンク中の蓄積質量を計算するために、TFFステップを直前に先行するVFステップにおいて使用することができる。この蓄積質量は、離散様式で操作される場合のTFF負荷質量に相当し、これは、透析濾過及び過濃縮における保持物タンク容量レベルの決定のための重要なパラメータである。
【0128】
大規模な性能
【0129】
前項に記載されるように、接続プロセス中の各単位操作は、最初に、離散様式で開発され、次いで、試験用のベンチ規模で一緒に接続され、さらに最適化される。次いで、このプロセスは、拡大され、実証及び確認のためにパイロットプラントに移される。表2は、接続プロセスCEX-AEX(FT)-VF-UFを用いる、5つの異なる分子のための実行パラメータ及びパイロットプラントにおいて首尾よく実行されたその変形例を列挙する。サージタンクは、100Lのサイズで、クロマトグラフィーステップの間で、かつVFの前に配置され、5~7分間の滞留時間設定点で操作される。
図20、表2中に列挙される収率は、パイロット規模で実証され、これらは離散様式(離散データは示されず)での操作に相当する。
【0130】
mAb B接続下流プロセス(CEX-HIC(FT)-VF-UF)における操作動向の例を
図21中に示す。
図21aは、70分間にわたる接続下流プロセスによる生成物質量の時間経過を示す。UFステップの残りは、離散様式で行われ、この期間中、他の単位操作は、清浄及び平衡ステップを完了して、次の接続サイクルに備える。HIC(FT)及びVFステップのための濃度プロファイルは、負荷のインライン滴定/希釈によりHIC(FT)ステップで低い濃度を有し、ラインホールドアップ及びサージタンク混合体積によりVFステップで若干低い濃度を有する、CEXステップからの溶出ピークに対応する。HIC(FT)及びVFステップにおける濃度プロファイルの後の部分は安定し、これは、先行する接続単位操作が完了し、サージタンクが空になる場合の操作の段階を表す。
【0131】
図21bは、流量設定点、流量、透過率、Vpro圧力低下(dP)、及びタンパク質濃度を含む、接続VFプロファイルを示す。VF流量は、HIC(FT)ステップからの流量に応じた8.1L/分で設定されるが、一旦UFステップが開始すると、VF流量は、一定のUF保持物タンクレベルを維持するためにその設定点から変動することを許容された(
図21b)。VFにわたる圧力低下は、流量変動に対応するが、流量が圧力低下により正常化すると、フィルタ透過性プロファイルは比較的平坦になる。タンパク質濃度がフィルタ上で増加する場合、透過率のわずかな下落があり、タンパク質濃度が減少する場合、初期透過率まで回復する。
【0132】
図21cは、接続UF1aの傾向、ならびにUF1b(DF設定点までのバッチ濃度)及び操作のDF段階における離散の傾向を示す。前述のように、VF流量は、保持物タンクレベル設定点を維持するようにその設定点周辺で変動し、このプロセス制御の結果は、
図21cに見ることができる。UF透過率流量設定点は、VF流量設定点と同一であり、供給物直交流量及びTMPがUF透過率流量を制御する。供給物直交流量及びTMPの両方は、タンク中のタンパク質濃度が増加する場合に、徐々に増加することが観察され、制御戦略は、その設定点で透過液流量を維持することができる。
【0133】
導入に論じられるように、接続下流単位操作への主要な有利点のうちの1つは、中間プールタンク容量の低減、ひいては製造プラントでの設置面積である。
図22は、
図20、表2中にそれぞれのプロセスが記載される、離散プロセス対接続プロセスのタンク容量必要条件の比較を示す。製造プラントが予想される最大プール容量に対するプールタンクのサイズを設計することが必要であるため、離散プロセスは、少なくとも1000Lのタンクを必要とし得る。これは、接続プロセスにおける5~7分間の滞留時間で操作される100Lのサージタンクよりも著しく大きい。さらに、VFプールタンクは、UF保持物タンクに直接接続することができるため、接続プロセスにおいて完全に除外される。
【0134】
考察及び結論
【0135】
前述の実験研究は、研磨クロマトグラフィーステップから最終のTFFステップまで接続される下流プロセスの概念の概要を示し、パイロット規模でのその成功した実行を実証する。複数の流量制御戦略は、単位操作間、具体的には、クロマトグラフィーステップとTFFステップにおける可変透過液流量の間の流量の不一致を管理するために使用することができる。一定流量戦略は、一定のTFF透過液流量を維持する手段として、ひいてはクロマトグラフィー及びウイルス濾過ステップにおける一定流量を維持するための手段として提案された。これは、接続プロセスの開発中に研究される必要がある動的効果の数を最小限に抑える。この制御戦略はまた、接続操作の全期間にわたって一定のサージタンク及びTFF保持物タンクの容量をもたらし、これにより、より簡易なプロセス、装置、及び自動化設計を可能にする。
【0136】
接続下流プロセスの開発は、多くの点で、離散プロセスの開発と類似している。樹脂の選択、ウイルス及びプレフィルタの選択、ならびにpH、導電率、及び生成物濃度等の負荷条件はすべて、標準的なバッチ実験を通して研究され得る。しかしながら、接続プロセスの開発において考慮する多くの固有の態様がある。一例として、第1の接続ステップが塩勾配溶出によるB/Eクロマトグラフィーステップである場合、より浅い勾配傾斜は、プロセスを通して伝播するピーク生成物濃度を管理するために、ウイルスフィルタ等のその後の単位操作に有益であり得る。より浅い勾配傾斜にもたらされ得るある有利点は、B/Eクロマトグラフィーステップにおける不純物分離の選択性の増大であり、タンク容量限界の制限というよりもむしろプロセス必要条件に基づいて勾配傾斜を選択する際に柔軟性がある。第1のクロマトグラフィーステップはまた、接続プロセス全体における流量を設定する上でも極めて重要であり、したがって、濾過ステップのより経済的なサイズ調整を達成するために最適化する必要があり得る。中間クロマトグラフィーステップについては、勾配溶出の影響は、評価する必要がある。ステップ性能における導電率の効果を研究する実験が行われなければならない。データは、この論文には提示されなかったが、さらなる実験は、生成物濃度の変動の効果及び勾配溶出から得られた不純物プロファイルを研究するために行われ得る。操作上のpHはまた、スクリーニングしてもよく、単位操作間のpHが変化する場合には、インラインpH滴定が接続処理のために開発され、実施され得る。
【0137】
ここで強調された実施例は、接続濾過ステップの開発のための経路を示す。一旦プレフィルタ及びウイルスフィルタが選択されると、供給条件が決定され、比較的少ない接続プロセス実験が、フィルタサイズ調整の必要条件を決定し、供給組成物中の変動へのウイルスフィルタのロバスト性を評価するために必要とされる。TFFステップにおいては、自動化制御戦略の開発及び実施は、一定の透過液流量操作を管理するために必要であるが、このステップの開発は、概して、離散実験を通して達成することができる。対応する流束モデルとともに、ベンチ規模で行われた流束振幅研究は、一定流束様式で接続ステップを操作するために必要とされるパラメータを特定するために使用される。これらは、小規模の接続実行をバイパスする、拡大された接続プロセスに直接適用され得る。
【0138】
さらなる処理モニタリング機能は、接続プロセスにおいて、例えば、単位操作の負荷を開始し、また終了するためのサージタンクのレベル制御を考慮しなければならない。オンライン紫外線統合は、TFFステップにおける質量入力を決定するために実施され、それ故に、体積標的を透析濾過及び過濃縮、ならびにステップ収率の決定に対して設定することができる。。スプリットストリームポンプはまた、個々のステップ性能及び不純物クリアランスの評価を許容するようなスキッド設計に組み込まなければならない。
【0139】
収穫ロット全体の処理は、接続プロセスにおいて複数のクロマトグラフィーサイクルを必要とし、各接続サイクルは、記載されるように、1~2時間要する。クロマトグラフィーステップは、通常、カラムサイズの必要条件及び樹脂費用を低減させるために循環され、TFF膜は、一般的には、清浄及び再利用され、そのため、これらのステップのための接続プロセスにおける複数のサイクルの使用は簡単である。対照的に、ウイルスフィルタは、通常、単サイクルの生成物負荷、続いて、離散プロセスにおける単一の緩衝濾過のために採用される。接続プロセスについては、ウイルスフィルタ上の負荷を、単一接続サイクルには十分活用しない。
図20、表2中に示される例は、少なくとも20kg/m
2の負荷がこのフィルタタイプに達成可能であるのに対して、2~4kg/m
2の負荷が、接続ウイルス濾過ステップには一般的であることを示す(Bolton G,Basha J,LaCasse D.2010.Achieving high mass-throughput of therapeutic proteins through parvovirus retentive filters.Biotech Progress 26(6):1671-1677)。接続プロセスにおけるウイルスフィルタ使用の有効性を改善させるために、同一のウイルスフィルタが、各連続サイクルにおける生成物負荷段階、続いて緩衝濾過段階で、収穫ロット全体に使用され得る。ウイルスフィルタは、生成物及び緩衝液の交互のサイクルを経験し得るが、フィルタ性能は、すべてのサイクルからの全生成物負荷により管理されることが予想される。使用後フィルタ完全性試験は、サイクルすべてが完了した後、フィルタが依然として完全であることを確認するために行われる。このアプローチは、フィルタ面積の必要条件、ひいては商品原価を低減することによる著しい利益を提供し、フィルタ交換に関連する時間のかかる取り付け及び準備ステップを除外し、ウイルスフィルタ後のシステム閉鎖を維持することによりプロセスの流れへの外来性薬剤の導入のリスクを最小限に抑える。プラントスケジューリング及び装置利用の複雑性が複数サイクルの接続処理に伴って増加するため、プラント資源モデリングは、装置の再整備時間の期限内に収まる十分な施設を確保することが必要であろう。さらに、ウイルスフィルタの循環を含む接続プロセスにおける個々のステップのウイルス排除性能の評価は、慎重な考慮が当然必要である。認定小型モデルの開発及び接続プロセスへのウイルススパイクの導入等の態様は、その後の論文の課題として取り扱われるであろう。
【0140】
ここで提示された接続下流プロセスは、プールタンク容量の低減の直接利益を提供し、それ故に、より最新式の設備設計をもたらす。タンクサイズの低減は、異なるプロセス要求を伴う複数の生成物に対して容易に再構成され得る移動タンクを使用する可能性を広げる。これは、資本コストの低減を推進し、製造における柔軟性を提供する。最終目的は、完全な連続生産のために、収穫、プロテインA、及び下流ステップを完全に接続させることである。これは、連続多層カラムクロマトグラフィー(SMCC)または疑似移動床(SMB)技術、低pHのウイルス不活性化バッチ操作への代替案の開発、及びすべてのフロースルー研磨ステップの実施を利用する、連続的なプロテインAの捕捉ステップの実施を必要とする。これは、連続生産及びプロセス統合に焦点を当てた最近の総説からも明らかなように、近い将来に実現可能であり得る(Konstantinov K and Cooney C.2014.White paper on continuous bioprocessing.J Pharm Sci DOI:10.1002/jps.24268、Jungbauer A.2013.Continuous downstream processing of biopharmaceuticals.Trends in biotechnology 31(8):479-492)。最終TFFステップを通して下流研磨ステップを接続するという、この論文において提示された概念及び制御戦略は、この技術をその目的により近い別のステップに動かす。
【0141】
上述の文章は、本発明の異なる実施形態の詳細な説明を記載するが、本発明の法的範囲は、本特許の最後に記載される特許請求の範囲の文言により定義されることを理解されたい。詳細な説明は、例示目的のみとして解釈されるものであり、すべての考えられる実施形態を説明することは、不可能ではないにしても非実用的であるため、本発明のすべての考えられる実施形態を説明しない。多くの代替的実施形態は、現在の技術または本特許の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して実施され得るが、それらは依然として、本発明を定義する特許請求項の範囲に含まれる。
【0142】
用語が、「本明細書において使用するとき、「__」という用語は、・・・を意味するために本明細書により定義される」という文章または同様の文章を使用して本特許において明確に定義されない限り、その平易なまたは通常の意味を超えて、明確にまたは含蓄的にその用語の意味を限定することを意図するものではなく、そのような用語は、本特許の任意の区分でなされた任意の表明に基づく(特許請求の範囲の言語以外で)範囲に限定されるものと解釈されてはならないことも理解されたい。本発明の最終部分の特許請求の範囲に引用された任意の用語が、単一の意味と一致する手法で本特許において参照される限りにおいては、それは、読者を混乱させないように、明確にするためだけに行われ、そのような特許請求の範囲の用語は、含蓄的または別様にその単一の意味に限定されることを意図しない。最後に、特許請求の範囲の要素が、任意の構造を引用せずに「手段」という単語及び機能を引用することにより定義されない限り、任意の特許請求の範囲の要素の範囲が、米国特許法第112条第6段落の適用に基づいて解釈されることは意図しない。