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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】自動走行システム及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20221219BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20221219BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20221219BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20221219BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221219BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T17/18
B60T8/88
B60W50/04
B60W60/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021178553
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2018098272の分割
【原出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2022019733
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】池乗 健太
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001807(JP,A)
【文献】特開平08-230660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
17/22
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキの制動状態と制動を解除する解除状態とを切り換えるアクチュエータを備えた作業車両の自動走行を可能にする自動走行システムであって、
前記作業車両の自動走行開始前に、前記アクチュエータの作動制御で前記ブレーキが正常に動作するかを確認する動作確認処理を行い、前記動作確認処理において前記ブレーキの正常動作が確認された場合に、前記作業車両の自動走行の開始を許可する制御部を有し、
前記動作確認処理には、前記アクチュエータが正常に動作しているかを確認する第1動作確認処理と、前記ブレーキが正常に動作しているかを確認する第2動作確認処理とが含まれている自動走行システム。
【請求項2】
前記アクチュエータの動作を検出する第1動作センサと、
前記ブレーキの動作を検出する第2動作センサとを備える請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記動作確認処理を行う場合に、動作確認処理開始用の条件が成立しているか否かを判定する事前条件判定処理を行い、前記事前条件判定処理において前記動作確認処理開始用の条件が成立していると判定した場合に前記動作確認処理を行う請求項1又は2に記載の自動走行システム。
【請求項4】
走行装置を制動するブレーキと、
車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、
前記ブレーキを、前記走行装置を制動する制動状態と制動を解除する解除状態とに切り換えるアクチュエータとを備え、
前記自動走行ユニットは、前記車両の自動走行開始前に、前記アクチュエータの作動制御で前記ブレーキが正常に動作するかを確認する動作確認処理を行い、前記動作確認処理において前記ブレーキの正常動作が確認された場合に、前記車両の自動走行の開始を許可し、
前記動作確認処理には、前記アクチュエータが正常に動作しているかを確認する第1動作確認処理と、前記ブレーキが正常に動作しているかを確認する第2動作確認処理とが含まれている作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を制動するブレーキを備えた作業車両用の自動走行システム及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車においては、運転支援装置及び運転支援方法として、先行車両に衝突する危険性がある場合に緊急ブレーキ制御を行うようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-43193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、トラクタなどの作業車両においては、GPS(Global Positioning System)などの衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)を利用して、作業車両の自動走行を可能にする自動化が進められている。このような作業車両の自動化が進むと、無人状態での作業車両の自動走行を可能にする無人化が進められるようになり、無人化を実現させるためには、無人状態で自動走行中の作業車両を緊急停止させるブレーキ操作系を備える必要がある。
【0005】
無人状態での自動走行が可能な作業車両は、本来は搭乗者の運転によって走行するように構成されたものであることから、作業車両の自動走行が長期にわたって行われないことがある。このような場合において作業車両の自動走行が行われると、緊急停止用のブレーキ操作系が正常に作動しない虞がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業車両の自動走行において緊急停止用のブレーキ操作系が正常に作動しない虞を回避できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る自動走行システムは、ブレーキの制動状態と制動を解除する解除状態とを切り換えるアクチュエータを備えた作業車両の自動走行を可能にする自動走行システムである。前記自動走行システムは、前記作業車両の自動走行開始前に、前記アクチュエータの作動制御で前記ブレーキが正常に動作するかを確認する動作確認処理を行い、前記動作確認処理において前記ブレーキの正常動作が確認された場合に、前記作業車両の自動走行の開始を許可する制御部を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る作業車両は、走行装置を制動するブレーキと、車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、前記ブレーキを、前記走行装置を制動する制動状態と制動を解除する解除状態とに切り換えるアクチュエータとを備える。前記自動走行ユニットは、前記車両の自動走行開始前に、前記アクチュエータの作動制御で前記ブレーキが正常に動作するかを確認する動作確認処理を行い、前記動作確認処理において前記ブレーキの正常動作が確認された場合に、前記車両の自動走行の開始を許可する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】セフティブレーキ機能に関する概略構成を示すブロック図
図4】ブレーキシステムの構成を示す要部を左後上方から見た斜視図
図5】ブレーキシステムの構成を示す要部を右後上方から見た斜視図
図6】ブレーキシステムにおけるブレーキペダル周辺の構成を示す要部の斜視図
図7】ブレーキシステムにおけるブレーキペダル周辺の構成を示す要部の背面図
図8】ブレーキシステムにおける電動モータによるブレーキ操作構造を示す要部を右前上方から見た斜視図
図9】ブレーキシステムにおける電動モータによるブレーキ操作構造を示す要部を右後上方から見た斜視図
図10】ブレーキシステムにおける電動モータによるブレーキ操作構造を示す要部の右側面図
図11】ブレーキシステムにおける電動モータによるフットブレーキの非操作状態を示す要部の縦断左側面図
図12】ブレーキシステムにおける電動モータによるフットブレーキの操作状態を示す要部の縦断左側面図
図13】電動モータの作動よる操作量と制動力及び操作荷重との関係を示すグラフ
図14】緊急停止制御のフローチャート
図15】液晶モニタのホーム画面を示す図
図16】液晶モニタのセフティブレーキチェック選択画面を示す図
図17】液晶モニタにおいて初回チェックボタンを操作不能に表示した状態のセフティブレーキチェック画面を示す図
図18】液晶モニタにおいて初回チェックボタンを操作可能に表示した状態のセフティブレーキチェック画面を示す図
図19】液晶モニタにおいてチェック中を表示した状態のセフティブレーキチェック画面を示す図
図20】液晶モニタにおいてチェック失敗を表示した状態のセフティブレーキチェック画面を示す図
図21】液晶モニタにおいてチェック完了を表示した状態のセフティブレーキチェック画面を示す図
図22】液晶モニタの自動走行開始画面を示す図
図23】初回チェック(動作確認処理)のシーケンスを示す図
図24】セフティブレーキ機能部の初回チェックでの状態遷移などを示す状態遷移図
図25】セフティブレーキ機能部のエラー検出状態での状態遷移などを示す状態遷移図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、作業車両の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明は、トラクタ以外の、例えば乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、運搬車、ホイールローダ、除雪車、などの乗用作業車両に適用することができる。
【0011】
図1~2に示すように、この実施形態で例示するトラクタ1は、作業車両用の自動走行システムによって作業地の一例である圃場などにおいて自動走行可能に構成されている。自動走行システムは、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末3、などを備えている。携帯通信端末3には、自動走行に関する情報などを表示するマルチタッチ式の表示部(例えば液晶パネル)4などを有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。
【0012】
図1に示すように、トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置6が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1はロータリ耕耘仕様に構成されている。
なお、トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置6に代えて、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、草刈装置などの各種の作業装置を連結することができる。
【0013】
図1~3に示すように、トラクタ1には、ホイール式の走行装置として機能する駆動可能で操舵可能な左右の前輪10と駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット15、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構16、左右の後輪11を制動するブレーキシステム17、ロータリ耕耘装置6への伝動を断続する作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構19、ロータリ耕耘装置6を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構20、ロータリ耕耘装置6をロール方向に駆動する電子油圧制御式のロール方向駆動機構21、各種の制御部を有する車載制御システム22、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器23、及び、トラクタ1の現在位置や現在方位などを測定する測位ユニット24、などが備えられている。
なお、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。パワーステアリング機構16には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構などを採用してもよい。
【0014】
図1図3~5に示すように、運転部12には、アクセルレバーや変速レバーなどの各種の操作レバー、アクセルペダル28やクラッチペダル29などの各種の操作ペダル、パワーステアリング機構16を介した左右の前輪10の手動操舵を可能にするステアリングホイール30、搭乗者用の座席31、及び、自動走行に関する情報を含む各種の情報を表示するとともに入力操作を可能にする表示部としてのマルチタッチ式の液晶モニタ32、などが備えられている。
【0015】
図1に示すように、キャビン13は、トラクタ1の前部側に備えられた前フレーム34と、後フレームを兼ねる変速ユニット15とに防振ゴムなどを介して防振支持されている。エンジン14は、前フレーム34に防振ゴムなどを介して防振支持されている。エンジン14は、トラクタ1の前部側に備えられたボンネット35によって覆われている。
【0016】
図2に示すように、変速ユニット15には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置36、変速ユニット15による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置37、及び、左右の後輪11の差動を許容する後輪用差動装置、などが含まれている。無段変速装置36には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission、)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置37には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
なお、無段変速装置36には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission、)、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット15には、無段変速装置36の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
【0017】
図4~7に示すように、ブレーキシステム17には、運転部12に備えられた左右のブレーキペダル40とパーキングレバー41、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ42、左右のブレーキペダル40と左右のブレーキ42とを連動可能に連係する左右の第1連係機構43、パーキングレバー41と左右のブレーキ42とを連動可能に連結するパーキング用の第2連係機構44、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキ42を作動させる電子油圧制御式の第1ブレーキ操作装置45、などが含まれている。ブレーキシステム17は、搭乗者により、左右いずれか一方又は双方のブレーキペダル40の踏み込み操作、パーキングレバー41の制動位置への引き上げ操作、又は、ステアリングホイール30による左右の前輪10の設定角度以上の操舵が行われた場合に、対応するブレーキ42を作動させて対応する後輪11を制動する。これにより、左右のブレーキ42は、左右のブレーキペダル40が同時に踏み込み操作された場合には、左右の後輪11を同時に制動するフットブレーキとして機能する。左右のブレーキ42は、パーキングレバー41が引き上げ操作された場合には、左右の後輪11を同時に制動するパーキングブレーキとして機能する。左右のブレーキ42は、左右いずれか一方のブレーキペダル40の踏み込み操作、又は、左右の前輪10の設定角度以上の操舵が行われた場合には、対応する左右いずれか一方の後輪11を制動するサイドブレーキとして機能する。左右の各ブレーキ42の内部には、各ブレーキ42の状態を、後輪11を制動する制動状態から制動を解除する解除状態に復帰付勢する圧縮バネなどの付勢部材が備えられている。
【0018】
図2~3に示すように、車載制御システム22には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部22A、無段変速装置36や前後進切換装置37などに関する制御を行う変速制御部22B、パワーステアリング機構16や第1ブレーキ操作装置45などに関する制御を行うステアリング制御部22C、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部22D、液晶モニタ32の表示作動を制御する表示制御部22E、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部22F、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路などを記憶する不揮発性の車載記憶部22G、などが含まれている。各制御部22A~22Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。図3に示すように、自動走行制御部22Fは、表示制御部22Eとともに液晶モニタ32に含まれている。各制御部22A~22Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
【0019】
図3に示すように、車両状態検出機器23は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。車両状態検出機器23には、アクセルレバー及びアクセルペダル28のアイドリング位置からの操作量を検出するアクセルセンサ、変速レバーの零速位置からの操作量を検出する変速センサ、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ、左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置での有無を検出する左右のブレーキスイッチ25(図3参照)、左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置からの操作量を検出する左右のブレーキセンサ26(図3参照)、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、トラクタ1の車速を検出する車速センサ、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ、などが含まれている。
【0020】
エンジン制御部22Aは、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアイドリング回転数からアクセルレバー又はアクセルペダル28の操作量に応じた回転数に変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
【0021】
変速制御部22Bは、変速センサからの検出情報と車速センサからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が変速レバーの操作量に応じた速度に変更されるように無段変速装置36の作動を制御する変速制御、リバーサセンサからの検出情報に基づいて前後進切換装置37の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、及び、各ブレーキセンサ26からの検出情報と車速センサからの検出情報とに基づいて、左右のブレーキペダル40が同時操作されている場合に、トラクタ1の車速が変速レバーの操作量に応じた速度から左右のブレーキペダル40の踏み込み操作量に応じて低下するように無段変速装置36の作動を制御する制動変速制御、などを実行する。変速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、無段変速装置36を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。制動変速制御には、左右のブレーキペダル40が踏み込み限界位置まで踏み込み操作された場合に、無段変速装置36を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる制動減速停止処理が含まれている。
【0022】
図4~7に示すように、ブレーキシステム17において、左右のブレーキペダル40は運転部12における右側の前下部に左右に並べて配置されている。左右のブレーキペダル40は、左右の引っ張りバネ46によって踏み込み解除位置に復帰付勢されている。左右の各ブレーキペダル40は、ステアリングホイール30の前下方において左右方向に延びるペダル支持用の回転軸47に支持されたボス部40A、ボス部40Aから後下方に延びるペダルアーム部40B、及び、ペダルアーム部40Bの遊端部分に取り付けられたペダル部40C、などを有している。右側のブレーキペダル40は、そのボス部40Aが回転軸47と相対回転し、ボス部40Aから前下方に延びる連係アーム部40Dを有している。左側のブレーキペダル40は、そのボス部40Aが、回転軸47を介して、回転軸47の左端部に固定された連係アーム48と一体回転する。
【0023】
図4~5に示すように、左右のブレーキ42は変速ユニット15に備えられている。左右の各ブレーキ42は、それらの前端部において車両横外方に向けて突出する操作軸49、及び、操作軸49の突出端部に固定された操作アーム50、などを有している。
【0024】
図4~7に示すように、左右の各第1連係機構43は、回転軸47の下方において左右方向に延びる左右の固定軸51に回転可能に支持されたボス部材52、右側のブレーキペダル40の連係アーム部40D又は連係アーム48とボス部材52の第1アーム部52Aとにわたる上下に長い第1連係ロッド53、及び、ボス部材52の第2アーム部52Bとブレーキ42の操作アーム50とにわたる前後に長い第2連係ロッド54、などを有している。左側の第1連係機構43には、前述した回転軸47と連係アーム48とが含まれている。つまり、左右の第1連係機構43は、第1連係ロッド53や第2連係ロッド54などを介して左右のブレーキペダル40を左右のブレーキ42に連係するロッド連係式に構成されている。
【0025】
上記の構成により、ブレーキシステム17は、右側のブレーキペダル40のみが踏み込み操作されると、そのときの操作力が右側の第1連係機構43を介して右側のブレーキ42の操作アーム50に伝わることにより、右側のブレーキ42によって右側の後輪11を制動する右側制動状態に切り換わる。その後、右側のブレーキペダル40の踏み込み操作が解除されると、右側制動状態から解除状態に切り換わる。
ブレーキシステム17は、左側のブレーキペダル40のみが踏み込み操作されると、そのときの操作力が左側の第1連係機構43を介して左側のブレーキ42の操作アーム50に伝わることにより、左側のブレーキ42によって左側の後輪11を制動する左側制動状態に切り換わる。その後、左側のブレーキペダル40の踏み込み操作が解除されると、左側制動状態から解除状態に切り換わる。
ブレーキシステム17は、左右のブレーキペダル40の両方が踏み込み操作されると、そのときの操作力が左右の第1連係機構43を介して左右のブレーキ42の操作アーム50に伝わることにより、左右のブレーキ42によって左右の後輪11を制動する制動状態に切り換わる。その後、左右のブレーキペダル40の踏み込み操作が解除されると、制動状態から解除状態に切り換わる。
【0026】
これにより、搭乗者がトラクタ1を手動走行させる場合は、搭乗者がステアリングホイール30を旋回方向に操作しながら、旋回内側のブレーキペダル40を踏み込み操作することにより、トラクタ1の旋回半径を小さくするブレーキ旋回を行うことができる。又、搭乗者が左右のブレーキペダル40の両方を踏み込み操作することにより、左右のブレーキ42の制動作用と前述した変速制御部22Bの制動変速制御により、トラクタ1を直進姿勢に維持しながら制動減速又は制動停止させることができる。
【0027】
図6~12に示すように、ブレーキシステム17は、左右のブレーキペダル40を連結する連結状態と、その連結を解除する解除状態とに切り換え可能な連結機構55を有している。連結機構55は、右側のブレーキペダル40に左右方向に移動可能に支持された操作ロッド56、操作ロッド56の左端部を左側のブレーキペダル40に向けて突出付勢する圧縮バネ57、操作ロッド56の被案内部56Aを案内するガイド板58、などを有している。ガイド板58には、操作ロッド56の被案内部56Aを連結位置と解除位置とにわたって案内するJ字状のガイド孔58aが形成されている。左側のブレーキペダル40には、操作ロッド56の被案内部56Aが連結位置に位置するときに操作ロッド56の左端部が差し込まれる貫通孔40E(図8図11~12参照)が形成されている。
【0028】
上記の構成により、連結機構55は、操作ロッド56の被案内部56Aが連結位置に位置するように操作ロッド56が操作されると、操作ロッド56の左端部が左側のブレーキペダル40の貫通孔40Eに差し込まれることにより、左右のブレーキペダル40を連結する連結状態に切り換わるとともに、この連結状態が圧縮バネ57によって保持される。連結機構55は、操作ロッド56の被案内部56Aが解除位置に位置するように操作ロッド56が操作されると、操作ロッド56の左端部が左側のブレーキペダル40の貫通孔40Eから抜き出されることにより、左右のブレーキペダル40の連結を解除する解除状態に切り換わるとともに、この解除状態が圧縮バネ57によって保持される。
【0029】
これにより、搭乗者が圃場内でトラクタ1を手動走行させる場合は、搭乗者が操作ロッド56を操作して連結機構55を解除状態に切り換えておくことにより、圃場内での走行時に必要なブレーキ旋回を行うことができる。又、搭乗者が圃場外でトラクタ1を手動走行させる場合は、搭乗者が操作ロッド56を操作して連結機構55を連結状態に切り換えておくことにより、圃場外での走行時に不要なブレーキ旋回が行われる虞を回避することができる。
【0030】
ブレーキシステム17において、パーキングレバー41は運転部12における座席31の左隣に配置されている。パーキングレバー41は、左右のブレーキ42を制動状態に切り換える上側の制動位置と解除状態に切り換える下側の解除位置との2位置に切り換え保持される2位置切り換え式に構成されている。パーキングレバー41は、その制動位置への操作が車両状態検出機器23に含まれたパーキングスイッチによって検出される。
【0031】
図4~5に示すように、パーキング用の第2連係機構44は、左右のコントロールケーブル59、左右の各コントロールケーブル59におけるインナケーブルの一端部をパーキングレバー41に連結するイコライザユニット60、及び、左右のインナケーブルの他端部を左右のブレーキ42の操作アーム50に連結する左右のリンクプレート61と左右の連係ピン62、などを有している。つまり、第2連係機構44は、左右のコントロールケーブル59などを介してパーキングレバー41を左右のブレーキ42に連係するケーブル連係式に構成されている。左右のリンクプレート61は、左右の操作アーム50に固定される連係ピン62が通された長孔を有しており、これらの長孔が、左右のブレーキペダル40の踏み込み操作に伴う左右のリンクプレート61に対する左右の操作アーム50の変位を許容する融通部として機能する。
【0032】
上記の構成により、ブレーキシステム17は、パーキングレバー41が下側の解除位置から上側の制動位置に引き上げ操作されて制動位置に保持されると、そのときの操作力が第2連係機構44を介して左右のブレーキ42の操作アーム50に伝わることにより、左右のブレーキ42によって左右の後輪11を制動するとともにこの制動状態を維持するパーキング用の制動状態に切り換わる。その後、パーキングレバー41が上側の制動位置から下側の解除位置に押し下げ操作されて解除位置に保持されると、パーキング用の制動状態から解除状態に切り換わる。
【0033】
図6に示すように、左右の第1連係機構43において、各第1連係ロッド53の下端部には上下に長い長孔53aが形成されており、これらの長孔53aには、ボス部材52の第1アーム部52Aに固定される連係ピン63が通されている。図3~5に示すように、左右の第1連係機構43は、パーキングレバー41の引き上げ操作によって左右のブレーキ42が解除状態からパーキング用の制動状態に切り換えられた場合に、この切り換えに連動して、左右の第2連係ロッド54が後方に引かれるとともに左右のボス部材52の第2アーム部52Bが後方に揺動変位し、この揺動変位に連動して左右のボス部材52の第1アーム部52Aが上方に揺動変位する。このとき、各第1連係ロッド53の長孔53aが、左右の第1連係ロッド53に対する左右の第1アーム部52Aの上方への揺動変位を許容する融通部として機能する。これにより、パーキングレバー41の引き上げ操作によって左右のブレーキ42がパーキング用の制動状態に切り換えられるときに、左右のブレーキペダル40が連動して操作が重くなることによる操作性の低下が回避されている。
【0034】
図4~7に示すように、ブレーキシステム17において、第1ブレーキ操作装置45は、左右のブレーキ42に対応する2つの油圧シリンダと2つの電磁バルブとを有する自動ブレーキ用の油圧ユニット64、油圧ユニット64によって押し引きされる一対の押し引きリンク65、一対の押し引きリンク65に連動して縦軸回りに揺動する一対のクランクアーム66、一対のクランクアーム66から左右のボス部材52に向けて延びる左右のコントロールケーブル67、左右のコントロールケーブル67におけるインナケーブル67Aの前端部を左右のボス部材52の第3アーム部52Cに連結する左右のリンクプレート68と左右の連係ピン69、などを有している。油圧ユニット64には、エンジン14からの動力で駆動される油圧ポンプからのオイルが供給されている。左右のリンクプレート68は、左右の第3アーム部52Cに固定される連係ピン69が通された長孔68aを有しており、これらの長孔68aが、左右のブレーキペダル40の踏み込み操作、又は、パーキングレバー41の引き上げ操作に伴う左右のリンクプレート68に対する左右の第3アーム部52Cの揺動変位を許容する融通部として機能する。
【0035】
図2に示すように、ブレーキシステム17にはステアリング制御部22Cが含まれている。ステアリング制御部22Cは、運転部12に備えられた自動ブレーキ用の選択スイッチが操作されて自動ブレーキモードが選択された場合に、舵角センサの検出に基づいて第1ブレーキ操作装置45における油圧ユニット64の作動を制御して左右のブレーキ42を操作する自動ブレーキ制御を実行する。ステアリング制御部22Cは、自動ブレーキ制御においては、左右の前輪10の操舵角が設定角度未満である間は、油圧ユニット64の各電磁バルブを各油圧シリンダからオイルを排出する排出状態に維持することで、左右の油圧シリンダを収縮状態に維持して左右のブレーキ42を解除状態に維持する。そして、左右の前輪10の操舵角が設定角度以上になると、旋回内側の後輪11に対応する電磁バルブを油圧シリンダにオイルを供給する供給状態に切り換えることで、旋回内側の後輪11に対応する油圧シリンダを伸張させて旋回内側のブレーキ42を制動状態に切り換える。
【0036】
上記の構成により、ブレーキシステム17は、自動ブレーキモードが選択された手動走行時においては、ステアリングホイール30の回動操作に基づく左右の前輪10の操舵角が設定角度未満である間は、第1ブレーキ操作装置45によって左右のブレーキ42を解除状態に維持する。これにより、トラクタ1の旋回状態が、左右の前輪10の操舵角度に応じた旋回半径でトラクタ1が旋回する通常旋回状態に維持される。そして、ステアリングホイール30の回動操作に基づく左右の前輪10の操舵角が設定角度以上になると、第1ブレーキ操作装置45によって旋回内側のブレーキ42を制動状態に切り換える。これにより、トラクタ1の旋回状態が、通常旋回状態での旋回半径より小さい旋回半径でトラクタ1が旋回するブレーキ旋回状態に切り換わる。その後、ステアリングホイール30の回動操作に基づく左右の前輪10の操舵角が設定角度未満になると、第1ブレーキ操作装置45によって左右のブレーキ42を解除状態に切り換える。これにより、トラクタ1の旋回状態が前述した通常旋回状態に切り換わる。
【0037】
つまり、搭乗者の運転による手動走行時においては、搭乗者が自動ブレーキモードを選択することにより、左右の前輪10が設定角度以上に操舵される旋回時には、搭乗者が旋回内側のブレーキペダル40に対する踏み込み操作を行わなくても、左右の前輪10が設定角度未満か設定角度以上かに基づいて、ブレーキシステム17がトラクタ1の旋回状態を自動的に通常旋回状態とブレーキ旋回状態とに切り換える。その結果、搭乗者はトラクタ1を小旋回させるときの旋回操作をステアリングホイール30の回動操作のみによって簡便に行える。
【0038】
図6に示すように、左右の各第1連係機構43においては、前述したように、第1連係ロッド53の下端部に融通部として機能する長孔53aが形成されている。これにより、第1ブレーキ操作装置45は、左右のブレーキペダル40が連結機構55によって連結された状態であっても、左右の前輪10が設定角度以上に操舵されたときには、旋回内側のブレーキ42を作動させることができ、トラクタ1の旋回状態をブレーキ旋回状態に切り換えることができる。
【0039】
測位ユニット24は、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)、などを有している。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局73が設置されている。
【0040】
図1~2に示すように、トラクタ1と基準局73とのそれぞれには、GPS衛星74(図1参照)から送信された電波を受信するGPSアンテナ75,76、及び、トラクタ1と基準局73との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール77,78、などが備えられている。これにより、測位ユニット24の衛星航法装置は、トラクタ側のGPSアンテナ75がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位データと、基地局側のGPSアンテナ76がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位データとに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット24は、衛星航法装置と慣性計測装置とを有することにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0041】
このトラクタ1において、測位ユニット24の慣性計測装置、GPSアンテナ75、及び、通信モジュール77は、図1に示すアンテナユニット79に含まれている。アンテナユニット79は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。
【0042】
図2に示すように、携帯通信端末3には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット80、及び、トラクタ側の通信モジュール77との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール81、などが備えられている。端末制御ユニット80は、表示部4の作動を制御する表示制御部80A、自動走行用の目標走行経路を生成する走行経路生成部80B、及び、走行経路生成部80Bが生成した目標走行経路などを記憶する不揮発性の端末記憶部80C、などを有している。
【0043】
目標走行経路には、トラクタ1の作業幅に対応する一定間隔で平行に配置設定された複数の作業経路部や、隣接する作業経路部の終端と始端とを走行順に接続する非作業用の複数の旋回経路部などの各種の走行経路部に加えて、各種の走行経路部でのトラクタ1の走行形態などに応じて設定された適正エンジン回転数や適正車速、トラクタ1の進行方向、旋回経路部での前輪操舵角、及び、トラクタ1の停止位置、などが含まれている。
【0044】
図3に示すように、自動走行制御部22Fには、車両状態検出機器23に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、変速制御部22Bやステアリング制御部22Cなどを介して入力されている。これにより、自動走行制御部22Fは、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
【0045】
自動走行制御部22Fは、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、搭乗者や車外の管理者などのユーザによって携帯通信端末3の表示部4が操作されて自動走行の開始が指令された場合に、測位ユニット24にてトラクタ1の現在位置を取得しながら目標走行経路に沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0046】
自動走行制御部22Fによる自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部22Aに送信するエンジン用自動制御処理、無段変速装置36や前後進切換装置37などに関する自動走行用の制御指令を変速制御部22Bに送信する変速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部22Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部22Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0047】
自動走行制御部22Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標走行経路に含まれた適正エンジン回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、及び、エンジン停止条件の成立に基づいてエンジン14の停止を指示するエンジン停止指令、などをエンジン制御部22Aに送信する。
自動走行制御部22Fは、変速用自動制御処理においては、目標走行経路に含まれた適正車速に基づいて無段変速装置36の変速操作を指示する変速操作指令、目標走行経路に含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置37の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、及び、走行動力遮断条件の成立に基づいて前後進切換装置37の中立状態への切り換えを指示する中立切り換え指令、などを変速制御部22Bに送信する。
自動走行制御部22Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標走行経路に含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部22Cに送信する。
自動走行制御部22Fは、作業用自動制御処理においては、目標走行経路に含まれた作業開始地点に基づいてロータリ耕耘装置6の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標走行経路に含まれた作業停止地点に基づいてロータリ耕耘装置6の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部22Dに送信する。
【0048】
なお、前述したエンジン停止条件及び走行動力遮断条件に関して、自動走行制御部22Fは、例えば、車両状態検出機器23などからの各種の情報に基づいて、適正車速とトラクタ1の車速とにズレが生じる変速制御不良などの変速制御部22Bの異常を検知した場合、又は、変速制御部22B及びステアリング制御部22Cに対するCAN通信の異常を検知した場合、などにおいてエンジン停止条件及び走行動力遮断条件が成立したと判定する。
【0049】
エンジン制御部22Aは、前述したエンジン用自動制御処理によって自動走行制御部22Fから送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じて、エンジン回転数を自動で変更する自動エンジン回転数変更制御、及び、エンジン14を自動で停止させる自動エンジン停止制御、などを実行する。
【0050】
変速制御部22Bは、前述した変速用自動制御処理によって自動走行制御部22Fから送信された無段変速装置36や前後進切換装置37などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置36の作動を自動で制御する自動変速制御、前後進切換装置37の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、及び、左右の前輪10と左右の後輪11への伝動が遮断されるように前後進切換装置37を自動で中立にする自動中立切り換え制御、などを実行する。自動変速制御には、例えば、目標走行経路に含まれた適正車速が零速である場合に、無段変速装置36を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理が含まれている。
【0051】
ステアリング制御部22Cは、前述したステアリング用自動制御処理によって自動走行制御部22Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリング機構16の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動操舵制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、第1ブレーキ操作装置45を作動させて旋回内側のブレーキ42を作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
【0052】
作業装置制御部22Dは、前述した作業用自動制御処理によって自動走行制御部22Fから送信されたロータリ耕耘装置6に関する各種の制御指令に応じて、昇降駆動機構20とクラッチ操作機構19の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降させて作動させる自動作業開始制御、及び、ロータリ耕耘装置6を停止させて非作業高さまで上昇させる自動作業停止制御、などを実行する。又、作業装置制御部22Dは、ロータリ耕耘装置6を作業高さまで下降させて作動させた作業状態においては、ロータリ耕耘装置6による耕耘深さを検出する耕深センサの検出に基づいて、昇降駆動機構20の作動を制御してロータリ耕耘装置6による耕耘深さを設定深さに維持する自動耕深維持制御、及び、トラクタ1のロール角を検出する傾斜センサと慣性計測装置の加速度センサの検出とに基づいて、ロール方向駆動機構21の作動を制御してロータリ耕耘装置6のロール方向での傾斜姿勢を設定姿勢(例えば水平姿勢)に維持する自動ロール角維持制御を実行する。
【0053】
つまり、前述した自動走行ユニット2には、パワーステアリング機構16、クラッチ操作機構19、昇降駆動機構20、ロール方向駆動機構21、車載制御システム22、車両状態検出機器23、測位ユニット24、及び、通信モジュール77、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標走行経路に沿って精度よく自動走行させることができるとともに、ロータリ耕耘装置6による耕耘を適正に行うことができる。又、万が一、トラクタ1において前述した変速制御部22Bの異常やCAN通信の異常などが生じたときには、トラクタ1の走行を自動で停止させることができる。
【0054】
図2図4~5、図8~11に示すように、ブレーキシステム17には、連結機構55によって連結された左右のブレーキペダル40を操作することで左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させる電動式の第2ブレーキ操作装置100が備えられている。図3に示すように、自動走行制御部22Fには、第2ブレーキ操作装置100の作動を制御することで、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして機能させるセフティブレーキ機能部22Faが含まれている。
【0055】
図8~11に示すように、第2ブレーキ操作装置100は、運転部12における右側のブレーキペダル40の右隣に配置されている。第2ブレーキ操作装置100は、右側のブレーキペダル40に連結された被操作体101、被操作体101を前後方向に操作する電動アクチュエータ102、及び、右側のブレーキペダル40と電動アクチュエータ102との間においてブレーキペダル40の踏み込み操作に伴う電動アクチュエータ102に対する右側のブレーキペダル40などの変位を許容する融通部103、などを有している。
【0056】
図8~12に示すように、被操作体101は、右側のブレーキペダル40のペダルアーム部40Bに連結された第1部材104と第2部材105、第2部材105に左右に延びる連結ピン106を介して上下方向に揺動可能に連結されたダンパ107、及び、ダンパ107に前後方向に位置調節可能に連結されたリンクプレート108、などを有している。そして、リンクプレート108に、融通部103として機能する前後方向に長い長孔108aが形成されている。電動アクチュエータ102には、ウォーム減速機102Aを有する電動モータが採用されている。電動モータ102は、ステアリング制御部22Cの制御作動により、正回転動力を出力する正転作動状態と、逆回転動力を出力する逆転作動状態と、回転動力の出力を停止する作動停止状態とに切り換わる。被操作体101と電動モータ102のウォーム減速機102Aとの間には、小径の入力ギア109と大径の出力ギア110とを有してウォーム減速機102Aからの動力を更に減速する減速ギアセット111と、減速ギアセット111における出力ギア110の外周側と被操作体101とを融通部103を介して連係する連係ピン112とが備えられている。連係ピン112は、リンクプレート108の長孔108aに通された状態で出力ギア110の外周側に固定されている。連係ピン112は、電動モータ102からの正回転動力により、右側のブレーキペダル40(右側のブレーキ42)を操作しない非操作位置(図8~11参照)から右側のブレーキペダル40(右側のブレーキ42)の操作量を最大にする最大操作位置(図12参照)に移動し、電動モータ102からの逆回転動力によって最大操作位置から非操作位置に移動する。連係ピン112の非操作位置は、右側のブレーキペダル40が踏み込み解除位置に位置するときに、連係ピン112が長孔101aの前端部に位置するように設定されている。
【0057】
上記の構成により、右側のブレーキペダル40の踏み込み操作が行われたときは、この操作に伴う連係ピン112に対する被操作体101の前方への移動が、リンクプレート108の長孔108a(融通部103)による融通で許容される。その結果、搭乗者の運転によるトラクタ1の手動走行中において右側又は左右のブレーキペダル40の踏み込み操作が行われたときは、融通部103の作用により、その踏み込み操作に連動した右側又は左右のブレーキ42の制動操作を、電動モータ102によって阻害されることなくスムーズに行うことができる。
【0058】
そして、左右のブレーキペダル40が連結機構55によって連結された状態においては、電動モータ102が正転作動状態に切り換えられることにより、左右のブレーキペダル40を踏み込み限界位置まで移動させることができ、これにより、左右のブレーキ42を制動状態に切り換えることができる。又、電動モータ102が逆転作動状態に切り換えられることにより、左右のブレーキペダル40を踏み込み解除位置まで移動させることができ、これにより、左右のブレーキ42を解除状態に切り換えることができる。
【0059】
連係ピン112の非操作位置には、電動モータ102の作動による連係ピン112の非操作位置への到達を検出する第1リミットスイッチ113が配置されている。連係ピン112の最大操作位置には、電動モータ102の作動による連係ピン112の最大操作位置への到達を検出する第2リミットスイッチ114が配置されている。左右のブレーキペダル40が連結機構55によって連結された状態において、連係ピン112の非操作位置は、左右のブレーキ42による制動を解除する解除位置であり、連係ピン112の最大操作位置は、左右のブレーキ42による制動を最大にする制動位置である。これにより、第1リミットスイッチ113は、電動モータ102の作動による連係ピン112の解除位置への到達を検出する解除スイッチとして機能する。第2リミットスイッチ114は、電動モータ102の作動による連係ピン112の制動位置への到達を検出する制動スイッチとして機能する。そして、解除スイッチ113及び制動スイッチ114は、電動モータ102の動作を検出する第1動作センサとして機能する。
【0060】
図3に示すように、解除スイッチ113及び制動スイッチ114は、前述した左右のブレーキスイッチ25及び左右のブレーキセンサ26などとともに車両状態検出機器23に含まれている。車両状態検出機器23には、左右のブレーキペダル40が連結機構55によって連結された場合にON状態になる連結スイッチが含まれている。
【0061】
ステアリング制御部22Cは、連結スイッチのON状態において、左右のブレーキスイッチ25が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置での存在を検出し、かつ、左右のブレーキセンサ26の検出値が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置を示す場合は、左右のブレーキ42が解除状態であることを検知することができる。ステアリング制御部22Cは、連結スイッチのON状態において、左右のブレーキスイッチ25が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置での存在を検出せず、かつ、左右のブレーキセンサ26の検出値が左右のブレーキペダル40の踏み込み最大位置を示す場合は、左右のブレーキ42が制動状態であることを検知することができる。つまり、左右のブレーキスイッチ25及び左右のブレーキセンサ26は、左右のブレーキペダル40が連結機構55にて連結されている状態において左右のブレーキ42の動作を検出する第2動作センサとして機能する。
【0062】
上記の構成から、ステアリング制御部22Cは、左右のブレーキペダル40が連結機構55にて連結されている状態においては、左右のブレーキスイッチ25の検出と、左右のブレーキセンサ26の検出値と、解除スイッチ113の検出と、制動スイッチ114の検出とに基づいて電動モータ102の作動を制御することにより、左右のブレーキ42の解除状態から制動状態への切り換えと制動状態から解除状態への切り換えとを確実に行うことができる。
【0063】
図8~12に示すように、第2ブレーキ操作装置100は、運転部12のフロアプレート(車両の固定部の一例)38に取り付けられる収容ケース116を有している。収容ケース116は、フロアプレート38に着脱可能にボルト連結されたベースプレート117、フロアプレート38とベースプレート117とにボルト連結された左側ケース体118、左側ケース体118の内側面に溶接された第1支持プレート119、左側ケース体118の側壁に所定間隔をあけて取り付けられた第2支持プレート120、及び、左側ケース体118にボルト連結された右側ケース体121、などを有している。収容ケース116は、左側ケース体118と右側ケース体121との間に収容空間が形成されている。
【0064】
収容ケース116において、左側ケース体118には、その側壁から右方向に延びる3本の段付きボルト122が固定されており、これらの段付きボルト122を介して第2支持プレート120が左側ケース体118の側壁に取り付けられている。3本の段付きボルト122のうち、側壁の中央側に位置する段付きボルト122は、出力ギア110を回転可能に支持する支軸123に使用されている。左側ケース体118の側壁には、連係ピン112を解除位置と制動位置とにわたって案内するガイド孔118aが、支軸123を中心とする円弧状に形成されている。第1支持プレート119には、電動モータ102が3本のボルト124を使用して取り付けられている。電動モータ102におけるウォーム減速機102Aの出力軸には、出力ギア110と噛み合い連動する入力ギア109が取り付けられている。第2支持プレート120は、その一端部が解除位置に到達した連係ピン112を受け止める第1受止部120Aとして機能し、その他端部が制動位置に到達した連係ピン112を受け止める第2受止部120Bとして機能するように形成されている。そして、第2支持プレート120の一端部に解除スイッチ113が取り付けられ、第2支持プレート120の他端部に制動スイッチ114が取り付けられている。
【0065】
上記の構成により、第2ブレーキ操作装置100においては、電動モータ102、減速ギアセット111、解除スイッチ113、及び、制動スイッチ114、などが収容ケース116に収容されている。これにより、収容ケース116、電動モータ102、減速ギアセット111、解除スイッチ113、及び、制動スイッチ114、などを駆動ユニットとして一体化した状態でフロアプレート38に着脱可能に取り付けることができる。そして、その駆動ユニットの取り付け後に、右側のブレーキペダル40に連結された被操作体101と駆動ユニット側の出力ギア110とを、電動モータ102による被操作体101の操作が可能な状態に融通部103と連係ピン112とを介して連係することにより、第2ブレーキ操作装置100による左右のブレーキ42の操作が可能な状態で第2ブレーキ操作装置100を運転部12に組み付けることができる。
【0066】
つまり、運転部12に対する第2ブレーキ操作装置100の組み付けを、運転部12の構成に大きな変更を加えることなく簡単に行うことができ、これにより、トラクタ1に対する第2ブレーキ操作装置100の後付けが可能になる。その結果、トラクタ1に対する第2ブレーキ操作装置100の組み付けが容易になるとともに、第2ブレーキ操作装置100に不具合が生じた場合における第2ブレーキ操作装置100の交換などのメンテナンスが行い易くなる。
【0067】
図8~10に示すように、第2支持プレート120の第1受止部120A及び第2受止部120Bは、連係ピン112の移動範囲を解除位置と制動位置との間に制限する移動制限部として機能する。連係ピン112の移動範囲は、連係ピン112が、右側のブレーキペダル40に対する被操作体101の連結点となる連結ピン106と出力ギア110の回転中心となる支軸123とを通る仮想直線L1を越えて、解除位置と制動位置とにわたって移動する範囲に設定されている。
【0068】
上記の構成により、第2ブレーキ操作装置100が左右のブレーキ42を作動させる場合は、先ず、電動モータ102からの正回転動力が出力ギア110に伝わることによって出力ギア110が制動方向に回転し、これにより、連係ピン112が解除位置から制動位置に向けて円弧を描きながら移動する。このとき、図13に示すように、左右のブレーキ42の制動力Aは、連係ピン112が解除位置を含む遊び領域を通過してから制動位置に達するまでの移動量に応じて上昇する。一方、電動モータ102にかかる操作荷重Bに関しては、左右のブレーキ42の制動力Aが大きくなるに連れて、左右のブレーキ42の内部で発生する各摩擦板などの各部品からの反力が大きくなり、又、左右のブレーキペダル40が左右の引っ張りバネ46の引っ張り力によって踏み込み解除位置に復帰付勢されていることから、連係ピン112が遊び領域を通過してから仮想直線L1を越えるまでの第1移動範囲においては、連係ピン112が仮想直線L1に近づくほど電動モータ102にかかる操作荷重Bは重くなる。その反面、連係ピン112が仮想直線L1に近づくほど、連係ピン112と出力ギア110の回転中心とを結ぶ結線L2と被操作体101との夾角θ(図11参照)が狭くなり、これに伴って、左右のブレーキペダル40にかかる左右のブレーキ42からの反力及び左右の引っ張りバネ46の引っ張り力が、連係ピン112を解除位置に戻す力として作用し難くなることから、電動モータ102にかかる操作荷重Bの増加量は減少する。その後、連係ピン112が仮想直線L1を越えると、左右のブレーキ42からの反力及び左右の引っ張りバネ46の引っ張り力が電動モータ102による左右のブレーキ42の制動操作をアシストする状態に切り換わる。そのため、連係ピン112が仮想直線L1を越えてから制動位置に達するまでの第2移動範囲においては、連係ピン112が仮想直線L1から離れて制動位置に近づくほど電動モータ102にかかる操作荷重Bは軽くなる。そして、連係ピン112が制動位置に達した状態では、連係ピン112が、制動方向への移動が第2受止部120Bによって制限された状態で、左右のブレーキ42からの反力及び左右の引っ張りバネ46の引っ張り力によって制動方向に移動付勢される。これにより、連係ピン112が仮想直線L1を越えて第2移動範囲に達した状態において、例えば、電動モータ102におけるウォーム減速機102Aの破損や出力ギア110の欠損などが生じた場合には、左右のブレーキ42からの反力及び左右の引っ張りバネ46の引っ張り力により、連係ピン112が制動位置まで移動するとともに制動位置に保持されることから、左右のブレーキ42を制動状態に維持することができ、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。
【0069】
その結果、第2ブレーキ操作装置100による左右のブレーキ42の制動操作において電動モータ102にかかる操作荷重Bの軽減を図りながら、第2ブレーキ操作装置100の作動によってトラクタ1が制動停止している状態においては、電動モータ102におけるウォーム減速機102Aの破損や出力ギア110の欠損などにかかわらず、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。
【0070】
図3に示すように、セフティブレーキ機能部22Faは、変速制御部22Bやステアリング制御部22Cなどを介して入力される車両状態検出機器23からの各種の検出情報に基づいて、トラクタ1における各部の動作状態や各部との通信状態などを監視している。セフティブレーキ機能部22Faは、前述した自動走行モードにおいては、車両状態検出機器23からの検出情報に基づいて車両内部の異常を検知した場合、又は、携帯通信端末3又は無線通信機器の一例である緊急停止リモコン90(図2参照)からの緊急停止指令を取得した場合に、電動モータ102の作動を制御して左右のブレーキ42を解除状態から制動状態に切り換える緊急停止制御を実行する。そのため、このトラクタ1には、図2に示すように、緊急停止リモコン90から送信された緊急停止指令を受信する緊急停止用の通信アンテナ91が備えられている。
【0071】
車両内部の異常には、エンジン回転数がエンジンストールを招く虞のある設定下限値以下まで低下した場合、変速制御部22Bの自動変速制御においてトラクタ1の車速が適正車速から外れるなどの制御不良が生じた場合、及び、CAN通信において断線などによる通信不良が生じた場合が含まれている。
なお、車両内部の異常としては、ステアリング制御部22Cの自動操舵制御において測位ユニット24が測定したトラクタ1の現在位置が目標走行経路から外れなどの制御不良が生じた場合などを含むようにしてもよい。
【0072】
そのため、セフティブレーキ機能部22Faは、緊急停止制御においては、図14のフローチャートに示すように、車両状態検出機器23に含まれたエンジン回転数検出用の回転センサからの検出情報に基づいて、エンジン回転数がエンジンストールを招く虞のある設定下限値以下まで低下したか否かを判定する第1判定処理(ステップ#1)と、車両状態検出機器23に含まれた車速センサなどからの検出情報に基づいて、変速制御部22Bにおいてトラクタ1の車速が適正車速から外れるなどの制御不良が生じているか否かを判定する第2判定処理(ステップ#2)と、車両状態検出機器23に含まれたCAN通信用の異常検出部からの検出情報に基づいて、CAN通信において通信不良が生じているか否かを判定する第3判定処理(ステップ#3)とを行うとともに、携帯通信端末3又は緊急停止リモコン90からの緊急停止指令を取得したか否かを判定する第4判定処理(ステップ#4)を行う。そして、第1判定処理(ステップ#1)においてエンジン回転数が低下した場合、第2判定処理(ステップ#2)において変速制御部22Bの制御不良が生じている場合、第3判定処理(ステップ#3)においてCAN通信の通信不良が生じている場合、又は、第4判定処理(ステップ#4)において緊急停止指令を取得した場合に、トラクタ1を緊急停止させる緊急停止処理(ステップ#5)と、緊急停止を報知する緊急停止報知処理(ステップ#6)とを行う。
【0073】
セフティブレーキ機能部22Faは、緊急停止処理においては、エンジン停止指令をエンジン制御部22Aに送信するとともに、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させるセフティブレーキ作動指令をステアリング制御部22Cに送信する。セフティブレーキ機能部22Faは、緊急停止処理においては、自動走行モードの選択を解除して、走行モードを自動走行モードから手動走行モードに遷移する。セフティブレーキ機能部22Faは、緊急停止報知処理においては、トラクタ1に備えられた緊急停止用の表示灯などの報知装置83(図2参照)を作動させるとともに、緊急停止報知指令を携帯通信端末3に送信する。
エンジン制御部22Aは、自動走行制御部22Fからのエンジン停止指令に応じて前述した自動エンジン停止制御を実行してエンジン14を自動で停止させる。
ステアリング制御部22Cは、セフティブレーキ機能部22Faからのセフティブレーキ作動指令に応じて、電動モータ102を作動させて左右のブレーキ42を解除状態から制動状態に切り換えることによってトラクタ1を制動停止させる。
携帯通信端末3は、自動走行制御部22Fからの緊急停止報知指令に応じて、表示部4の表示画面を緊急停止報知画面に切り換えるなどの緊急停止報知処理を行う。
【0074】
上記の構成により、このトラクタ1を自動走行させる場合には、左右のブレーキペダル40を連結機構55によって連結しておくことにより、車両内部において、エンジン回転数が設定下限値以下まで低下する、変速制御部22Bにおいて制御不良が生じる、又は、CAN通信において通信不良が生じる、といった異常が生じた場合には、エンジン14を自動で停止させることができるとともに、左右のブレーキ42を自動でセフティブレーキとして作動させることができてトラクタ1を制動停止させることができる。
その結果、自動走行モードにおいて、万が一、車両内部において前述した異常が生じた場合には、トラクタ1が無人状態で自動走行する無人走行状態であったとしても、トラクタ1を迅速に制動停止させることができるとともに、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。そして、ロータリ耕耘装置6が作動している場合は、エンジン14の停止とともにロータリ耕耘装置6の作動を停止させることができる。
【0075】
又、電動モータ102は、エンジン動力で駆動される油圧ポンプからのオイルで左右のブレーキ42を作動させる電子油圧制御式の第1ブレーキ操作装置45とは異なり、エンジン14が停止して油圧が落ちた場合であっても左右のブレーキ42を作動させて制動状態に維持することができる。これにより、自動走行制御部22Fからのエンジン停止指令に応じて、エンジン制御部22Aがエンジン14を停止させたとしても、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。
その結果、トラクタ1の緊急停止位置がトラクタ1の進行方向に傾斜する傾斜地であったとしても、トラクタ1が不測に降坂する虞を回避することができる。
【0076】
セフティブレーキ機能部22Faは、前述した緊急停止処理を行った後は、運転部12に備えられたキースイッチ(操作具の一例)84(図2参照)のOFF操作によって電源が落された後に、キースイッチ84のON操作によって電源が再投入された場合に緊急停止解除処理を行う。セフティブレーキ機能部22Faは、緊急停止解除処理においては、エンジン停止解除指令をエンジン制御部22Aに送信するとともに、セフティブレーキ解除指令をステアリング制御部22Cに送信する。エンジン制御部22Aは、セフティブレーキ機能部22Faからのエンジン停止解除指令に応じてエンジン14の始動を許可する。ステアリング制御部22Cは、セフティブレーキ機能部22Faからのセフティブレーキ解除指令に応じて、電動モータ102を作動させて左右のブレーキ42を制動状態から解除状態に切り換えることにより、トラクタ1の制動停止を解除する。
【0077】
これにより、セフティブレーキ機能部22Faの制御作動によってトラクタ1が緊急停止された場合には、キースイッチ84の操作によって電源が一旦落されて再投入されるまでの間はトラクタ1を緊急停止状態に維持することができる。そして、キースイッチ84の操作によって電源が再投入された場合に、エンジン14の始動が許可され、トラクタ1の制動停止が解除されることにより、搭乗者によるエンジン14の始動が可能になるとともに、搭乗者の運転によるトラクタ1の手動走行が可能なる。その結果、トラクタ1を手動走行によって安全な場所や修理工場などに移動させることができる。
【0078】
図15に示すように、液晶モニタ32のホーム画面32Aには自動走行モードの選択を可能にするモード選択ボタン(モード選択部)32aなどが表示されている。自動走行制御部22Fは、モード選択ボタン32aの操作によって自動走行モードが選択された場合に、トラクタ1の走行モードを手動走行モードから自動走行モードに遷移させるための各条件の全てが成立しているか否かを判定する条件成立判定処理を行う。自動走行制御部22Fは、各条件の全てが成立している場合に、トラクタ1の走行モードを手動走行モードから自動走行モードに遷移させるとともに、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに遷移したことを携帯通信端末3に送信して、携帯通信端末3の操作による自動走行の開始を可能にする。自動走行制御部22Fは、各条件の全てが成立していない場合は、各条件の全てが成立するか、液晶モニタ32に表示されたキャンセルボタンが操作されるまで、条件成立判定処理を継続する。
【0079】
走行モードを自動走行モードに遷移させるための各条件には、アクセルレバーの操作による自動走行用のエンジン回転数の設定、及び、変速レバーの操作による自動走行用の車速設定、などのトラクタ1の自動走行に必要な各種の設定操作の完了に加えて、左右のブレーキ42がセフティブレーキとして正常に動作するかを確認する初回チェック(動作確認処理)において正常動作が確認されていること、などが含まれている。つまり、走行モードを自動走行モードに遷移させるためには、事前に初回チェックを行って、左右のブレーキ42がセフティブレーキとして正常に動作することを確認しておく必要がある。
【0080】
初回チェックはセフティブレーキ機能部22Faの制御作動に含まれている。セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェックによる正常動作の確認が完了している場合には、初回チェック実施済み状態(動作確認実施済み状態:図24に示すCheck_OK)に遷移している。初回チェック実施済み状態には有効期間が設定されている。この実施形態において、初回チェック実施済み状態の有効期間は同日内に設定されている。そのため、セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック実施済み状態に遷移したときに、その遷移年月日を車載記憶部22Gに記憶させている。
なお、初回チェック実施済み状態の有効期間としては、例えば、遷移年月日から数日間、遷移時刻から数時間、又は、遷移した走行距離から設定距離を走行するまでの間、などの種々の設定が可能である。
【0081】
初回チェックを行うためには、以下に示す第1~9の全ての条件(動作確認処理開始用の条件)が成立していることが前提となっている。
第1条件:左右のブレーキ42をセフティブレーキとして機能させる電動モータ102の作動を制御するステアリング制御部22Cが正常である。
第2条件:左右のブレーキスイッチ25及び左右のブレーキセンサ26などからの検出情報を監視する変速制御部22Bが正常である。
第3条件:ステアリング制御部22CとのCAN通信が正常である。
第4条件:変速制御部22BとのCAN通信が正常である。
第5条件:変速制御部22Bを介して入力される左右のブレーキスイッチ25及び左右のブレーキセンサ26からの検出情報によって左右のブレーキペダル40が踏み込み解除位置にあることを検知している。
第6条件:変速制御部22Bを介して入力されるリバーサセンサからの検出情報によってリバーサレバーが中立位置にあることを検知している。
第7条件:変速制御部22Bを介して入力されるパーキングスイッチからの検出情報によってパーキングレバー41が制動位置にないことを検知している。
第8条件:ステアリング制御部22Cを介して入力される連結スイッチからの検出情報によって左右のブレーキペダル40が連結機構55によって連結されていることを検知している。
第9条件:変速制御部22Bを介して入力される車速センサからの検出情報によって車速が零であることを検知している。
【0082】
以下、図15~25に基づいて、セフティブレーキ機能部22Faの初回チェックでの状態遷移などについて説明する。
【0083】
セフティブレーキ機能部22Faは、キースイッチ84(図2参照)のON操作によって電源が投入されることで初期状態(図24に示すStart)になる。初期状態では、初回チェック実施済み状態が有効期間を経過しているか否かを判定する期間経過判定処理を行う。
セフティブレーキ機能部22Faは、初期状態において、解除スイッチ113が電動モータ102で操作される連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、エラー検出状態(図24に示すErr_Detection)に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、初期状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない状態で、初回チェック実施済み状態が有効期間を経過している場合は、制動解除復帰動作状態(図24に示すRev_Start)に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を行う。この解除操作により、前回のキーON状態において、セフティブレーキ機能部22Faが左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させていた場合は、左右のブレーキ42を解除状態に復帰させることができる。
【0084】
セフティブレーキ機能部22Faは、初期状態において、図15に示すホーム画面32Aにおけるモード選択ボタン32aの操作によって自動走行モードが選択された場合は、上記の第1~9の全ての条件が成立しているか否かを判定する事前条件判定処理を行う。 セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件判定処理において、第1~9のいずれかの条件が成立していない場合は、事前条件成立待機状態(図24に示すCheck_PreStandby)に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件判定処理において、第1~9の全ての条件が成立している場合は、初回チェック待機状態(図24に示すCheck_Standby)に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。
セフティブレーキ機能部22Faは、初期状態において、初回チェック実施済み状態が有効期間内であるが、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、チェック済み制動解除復帰動作状態(図24に示すOK_Rev)に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を行う。この解除操作により、前回のキーON状態において、セフティブレーキ機能部22Faが左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させていた場合は、左右のブレーキ42を解除状態に復帰させることができる。
セフティブレーキ機能部22Faは、期間経過判定処理において、初回チェック実施済み状態が有効期間内であり、かつ、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出している場合は、前述した初回チェック実施済み状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図22に示す自動走行開始画面32Dに遷移させて、走行モードの手動走行モードから自動走行モードへの遷移を許可する。
【0085】
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件成立待機状態において、セフティブレーキチェック選択画面32Bにおけるチェック選択ボタン32bの操作によって初回チェックが選択された場合は、液晶モニタ32の表示画面を、図17に示すセフティブレーキチェック画面32Cに遷移させる。そして、このときのセフティブレーキチェック画面32Cにおいては、図17に示すように初回チェックボタン32cをグレー表示させて、初回チェックボタン32cの操作による初回チェックの開始が不能であることを知らせる。
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件成立待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出している状態で、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件成立待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、前述した制動解除復帰動作状態に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件成立待機状態において、解除スイッチ113が電動モータ102の作動による連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が電動モータ102の作動による連係ピン112の制動位置への到達を検出していない状態で、第1~9の条件の全てが成立している場合は、前述した初回チェック待機状態に遷移するとともに、セフティブレーキチェック画面32Cでの初回チェックボタン32cの表示状態を図18に示す通常表示状態に遷移させて、初回チェックボタン32cの操作による初回チェックの選択が可能であることを知らせる。
セフティブレーキ機能部22Faは、事前条件成立待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない状態で、第1~9のいずれかの条件が成立していない場合は、事前条件成立待機状態を維持するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図17に示すセフティブレーキチェック画面32Cに遷移させる。そして、このときのセフティブレーキチェック画面32Cにおいては、図17に示すように初回チェックボタン32cをグレー表示させて、初回チェックボタン32cの操作による初回チェックの選択が不能であることを知らせる。
【0086】
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、前述した制動解除復帰動作状態に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない状態で、例えば、左右のブレーキペダル40又はリバーサレバーなどが人為操作されることで第1~9のいずれかの条件が成立しなくなった場合は、前述した事前条件成立待機状態に遷移するとともに、セフティブレーキチェック画面32Cでの初回チェックボタン32cの表示状態を図17に示すグレー表示状態に遷移させて、初回チェックボタン32cの操作による初回チェックの選択が不能になったことを知らせる。
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック待機状態において、初回チェックボタン32cが操作された場合は、制動動作チェック状態(図24に示すCheck)に遷移するとともに、図19に示すようにセフティブレーキチェック画面32Cにおいて初回チェック中であることを表示する。
【0087】
セフティブレーキ機能部22Faは、制動動作チェック状態においては、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を行う。
セフティブレーキ機能部22Faは、制動動作チェック状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合、又は、所定の制動動作チェック時間が経過しても、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出しない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、制動動作チェック状態において、例えば、左右のブレーキペダル40又はリバーサレバーなどが人為操作されることで第1~9のいずれかの条件が成立しなくなった場合は、初回チェック失敗状態(図24に示すCheck_NG)に遷移するとともに、図20に示すようにセフティブレーキチェック画面32Cにおいて初回チェックが失敗したことを表示する。そして、初回チェック失敗状態への遷移後において所定の表示時間が経過すると、セフティブレーキ機能部22Faは、前述した初期状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。そして、セフティブレーキ機能部22Faは、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bのチェック選択ボタン32bが操作された場合に、前述した事前条件成立待機状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図17に示すセフティブレーキチェック画面32Cに遷移させる。
セフティブレーキ機能部22Faは、制動動作チェック状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出しなくなり、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している状態で、左右のブレーキスイッチ25が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置からの移動を検出し、かつ、左右のブレーキセンサ26が左右のブレーキペダル40の踏み込み最大位置への到達を検出している場合は、左右のブレーキペダル40が踏み込み最大位置に操作されて、左右のブレーキ42が制動状態に切り換わったと判定する。そして、この判定に基づいて、解除動作チェック待機状態(図24に示すCheck_Rev_Wait)に遷移するとともに、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作の停止を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を終了する。
【0088】
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出している場合、又は、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック待機状態において、例えば、左右のブレーキペダル40又はリバーサレバーなどが人為操作されることで第1~9のいずれかの条件が成立しなくなった場合は、前述した初回チェック失敗状態に遷移するとともに、図20に示すようにセフティブレーキチェック画面32Cにおいて初回チェックが失敗したことを表示する。そして、初回チェック失敗状態への遷移後において所定の表示時間が経過すると、セフティブレーキ機能部22Faは、前述した初期状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。そして、セフティブレーキ機能部22Faは、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bのチェック選択ボタン32bが操作された場合に、前述した事前条件成立待機状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図17に示すセフティブレーキチェック画面32Cに遷移させる。
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック待機状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出しなくなり、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出し、又、左右のブレーキスイッチ25が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置からの移動を検出し、かつ、左右のブレーキセンサ26が左右のブレーキペダル40の踏み込み最大位置への到達を検出している状態で、所定の待機時間が経過した場合は、解除動作チェック状態(図24に示すCheck_Rev)に遷移する。
【0089】
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック状態においては、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を行う。
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出した場合、又は、所定の解除動作チェック時間が経過しても、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出しない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック状態において、例えば、左右のブレーキペダル40又はリバーサレバーなどが人為操作されることで第1~9のいずれかの条件が成立しなくなった場合は、前述した初回チェック失敗状態に遷移するとともに、図20に示すようにセフティブレーキチェック画面32Cにおいて初回チェックが失敗したことを表示する。そして、初回チェック失敗状態への遷移後において所定の表示時間が経過すると、セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック失敗状態から前述した初期状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。そして、セフティブレーキ機能部22Faは、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bのチェック選択ボタン32bが操作された場合に、前述した事前条件成立待機状態に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図17に示すセフティブレーキチェック画面32Cに遷移させる。
セフティブレーキ機能部22Faは、解除動作チェック状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない状態で、左右のブレーキスイッチ25及び左右のブレーキセンサ26が左右のブレーキペダル40の踏み込み解除位置への到達を検出している場合は、左右のブレーキペダル40が踏み込み解除位置に操作されて左右のブレーキ42が解除状態に切り換わったと判定する。そして、この判定に基づいて、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作の停止を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を終了する。そして、セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック成功状態(図24に示すCheck_Comp)に遷移するとともに、図21に示すようにセフティブレーキチェック画面32Cにおいて初回チェックが完了したことを表示する。
【0090】
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック成功状態においては、セフティブレーキチェック画面32Cでの初回チェック完了表示を所定時間継続させる。そして、所定時間が経過すると、初回チェック実施済み状態(動作確認実施済み状態:図24に示すCheck_OK)に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図22に示す自動走行開始画面32Dに遷移させて、走行モードの手動走行モードから自動走行モードへの遷移を許可する。
【0091】
そして、このようにセフティブレーキ機能部22Faが初回チェック実施済み状態に遷移した後に、例えば、アクセルレバーの操作による自動走行用のエンジン回転数の設定、及び、変速レバーの操作による自動走行用の車速設定、などのトラクタ1の自動走行に必要な各種の設定操作などが行われると、走行モードを自動走行モードに遷移させるための全ての条件が成立する。そして、全ての条件が成立した状態において、図22に示す自動走行開始画面32Dに表示された自動走行開始ボタン32dが操作された場合は、自動走行制御部22Fが、トラクタ1の走行モードを手動走行モードから自動走行モードに遷移させるとともに、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに遷移したことを携帯通信端末3に送信して、携帯通信端末3の操作による自動走行の開始を可能にする。
【0092】
つまり、走行モードを自動走行モードに遷移させてトラクタ1を自動走行させる場合には、事前の動作確認によって左右のブレーキ42がセフティブレーキとして正常に動作することが確認されている。これにより、自動走行モードにおいて、万が一、車両内部において前述した異常が生じた場合などには、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして正常に作動させることができ、トラクタ1を確実に制動停止させることができる。
【0093】
そして、上記の説明から明らかなように、初回チェック(動作確認処理)においては、電動モータ102の動作を検出する解除スイッチ(第1動作センサ)113及び制動スイッチ(第1動作センサ)114からの検出情報に基づいて電動モータ102が正常に動作しているかを確認する第1動作確認処理と、左右のブレーキ42の動作を検出する左右のブレーキスイッチ(第2動作センサ)25及び左右のブレーキセンサ(第2動作センサ)26からの検出情報に基づいて左右のブレーキ42が正常に動作しているかを確認する第2動作確認処理とが含まれている。
【0094】
これにより、左右のブレーキ42がセフティブレーキとして正常に動作するかを確認する初回チェック(動作確認処理)においては、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させる電動モータ102の動作確認と、セフティブレーキとして機能する左右のブレーキ42の動作確認とが、それぞれ個別に行われることになる。その結果、初回チェックを高い精度で行うことができ、初回チェックの信頼性を高めることができる。
【0095】
又、セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェックを行う場合に、先ず事前条件判定処理を行って、初回チェックを開始するために必要な前述した初回チェック開始用の全ての条件が成立したときに初回チェックを開始している。これにより、例えば、左右のブレーキペダル40が踏み込み操作されていることや、左右のブレーキペダル40の連結が解除されていることなどに起因して、初回チェック時に電動モータ102にかかる負荷が小さくなっていることで初回チェックの信頼性が低下する、又は、変速制御部22BやCAN通信などに異常が生じていることで初回チェックが完了しなくなる、などの不都合の発生を回避することができる。
【0096】
前述したように、初回チェック実施済み状態には有効期間が設定されている。そのため、セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック実施済み状態においては前述した期間経過判定処理を行う。そして、セフティブレーキ機能部22Faは、期間経過判定処理において有効期間が経過した場合は、図24に示すように初回チェック実施済み状態から初期状態に遷移する。
【0097】
このとき、走行モードが自動走行モードであれば、セフティブレーキ機能部22Faは、走行モードを自動走行モードから手動走行モードに遷移させるとともに自動走行モードへの遷移を禁止する。又、セフティブレーキ機能部22Faは、液晶モニタ32の表示画面を、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bに遷移させる。そして、図16に示すセフティブレーキチェック選択画面32Bのチェック選択ボタン32bが操作された場合に、セフティブレーキ機能部22Faは、前述した状態遷移で初回チェックを行い、初回チェック実施済み状態に遷移したときに、液晶モニタ32の表示画面を、図22に示す自動走行開始画面32Dに遷移させて、走行モードの手動走行モードから自動走行モードへの遷移を許可する。
【0098】
これにより、例えばトラクタ1を数日にわたって自動走行させる場合には、初回チェックが定期的に行われることから、車両内部に前述した異常が生じた場合などにおいて、左右のブレーキ42がセフティブレーキとして正常に作動しなくなる虞を効果的に抑制することができる。
【0099】
なお、セフティブレーキ機能部22Faは、期間経過判定処理において、初回チェック実施済み状態の有効期間が経過した場合に、そのときの走行モードが既に自動走行モードであれば、ユーザが自動走行モードを継続させている間は、初回チェック実施済み状態を有効とし、ユーザによって自動走行モードが終了されたときに、初回チェック実施済み状態を無効にして、初回チェック実施済み状態から初期状態に遷移するように構成されていてもよい。
【0100】
一方、走行モードが手動走行モードであれば、セフティブレーキ機能部22Faは、液晶モニタ32の表示画面などにおいて、初回チェック実施済み状態の有効期間が経過したことを報知する。
【0101】
これにより、搭乗者の運転でトラクタ1を手動走行させている場合には、走行モードを自動走行モードに遷移させるときに初回チェックが必要になることを搭乗者に前もって知らせておくことができる。又、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させることのない手動走行においても初回チェックが定期的に行われることによる作業効率の低下を防止することができる。
【0102】
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック実施済み状態において車両内部に前述した異常などが生じた場合は、セフティブレーキ操作状態(図24に示すBrake_Move)に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を行う。
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック実施済み状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出している状態で、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、初回チェック実施済み状態において、初回チェック実施済み状態が有効期間内であり、かつ、車両内部に前述した異常などが生じていない状態で、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、前述したチェック済み制動解除復帰動作状態(図24に示すOK_Rev)に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を行う。
【0103】
セフティブレーキ機能部22Faは、チェック済み制動解除復帰動作状態において、制動解除操作用の所定時間が経過しても、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、チェック済み制動解除復帰動作状態において、制動解除操作用の所定時間内で解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出した場合は、初回チェック実施済み状態(図24に示すCheck_OK)に遷移するとともに、液晶モニタ32の表示画面を、図22に示す自動走行開始画面32Dに遷移させて、走行モードの手動走行モードから自動走行モードへの遷移を許可する。
【0104】
セフティブレーキ機能部22Faは、前述した制動解除復帰動作状態(図24に示すRev_Start)において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している場合、又は、制動解除操作用の所定時間が経過しても、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出していない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、制動解除復帰動作状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出し、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない場合は、前述した初期状態(図24に示すStart)に遷移する。
【0105】
セフティブレーキ機能部22Faは、前述したセフティブレーキ操作状態(図24に示すBrake_Move)において、ブレーキ操作用の所定時間が経過しても、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出している場合、又は、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出していない場合は、電動モータ102と解除スイッチ113と制動スイッチ114とのいずれかに異常が生じていると判定して、前述したエラー検出状態に遷移する。
セフティブレーキ機能部22Faは、セフティブレーキ操作状態において、解除スイッチ113が連係ピン112の解除位置への到達を検出しなくなり、かつ、制動スイッチ114が連係ピン112の制動位置への到達を検出している状態で、ブレーキ操作用の所定時間が経過した場合は、左右のブレーキペダル40が踏み込み最大位置に操作されて、左右のブレーキ42が制動状態に切り換わったと判定する。そして、この判定に基づいて、セフティブレーキ作動保持状態(図24に示すBrake_Stop)に遷移するとともに、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作の停止を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の制動操作を終了する。その結果、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させた状態で保持することができ、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。
【0106】
図25に示すように、セフティブレーキ機能部22Faは、エラー検出状態においては、解除スイッチ113及び制動スイッチ114の検出状態に応じて、電動モータ異常状態(図25に示すErr_Actuater)とON検出異常状態(図25に示すErr_Position_ON)とOFF検出異常状態(図25に示すErr_ Position_Off)とのいずれかに遷移する。そして、いずれの異常状態においても、セフティブレーキ操作状態からの遷移でなければ、異常時用制動解除状態(図25に示すErr_Rev)に遷移して、ステアリング制御部22Cに電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を指示する。これにより、ステアリング制御部22Cが電動モータ102の作動による左右のブレーキ42の解除操作を行う。そして、この解除操作により、左右のブレーキ42を解除状態に復帰させることができ、搭乗者の運転によるトラクタ1の手動走行を可能にすることができる。
セフティブレーキ機能部22Faは、異常時用制動解除状態において解除操作用の所定時間が経過すると、異常状態(図25に示すErr_Actuater)に遷移してこの状態を継続する。
セフティブレーキ機能部22Faは、電動モータ異常状態とON検出異常状態とOFF検出異常状態とのいずれにおいても、セフティブレーキ操作状態からの遷移であれば、前述した異常状態(図25に示すErr_Actuater)に遷移してこの状態を継続する。これにより、このときの異常状態においては、左右のブレーキ42をセフティブレーキとして作動させた状態に維持することができ、トラクタ1を制動停止状態に維持することができる。
【0107】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0108】
(1)作業車両の構成に関する代表的な別実施形態は以下の通りである。
例えば、作業車両は、走行装置10,11として、左右の前輪10と、左右の後輪11に代わる左右のクローラとを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行装置10,11として、左右の前輪10と左右の後輪11とに代わる左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、エンジン14の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、エンジン14と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、キャビン13に代えて、トラクタ1から上方に延びる保護フレームを備えるように構成されていてもよい。
【0109】
(2)電動アクチュエータ102に関する代表的な別実施形態は以下の通りである。
例えば、電動アクチュエータ102として、左右のブレーキペダル40を個別に操作する左右の電動モータ102を備えるようにしてもよい。
例えば、電動アクチュエータ102として、連結機構55で連結された左右のブレーキペダル40を操作する単一の電動シリンダを備えるようにしてもよい。
例えば、電動アクチュエータ102として、左右のブレーキペダル40を個別に操作する左右の電動シリンダを備えるようにしてもよい。
【0110】
(3)フットブレーキ42は、運転部12に備えられた単一のブレーキペダルによって操作される単一のものであってもよい。
【0111】
<発明の付記>
本発明の第1特徴構成は、作業車両において、
走行装置を制動するフットブレーキと、
車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、
前記自動走行ユニットによって車両を自動走行させる自動走行モードの選択を可能にするモード選択部と、
前記フットブレーキを、前記走行装置を制動する制動状態と制動を解除する解除状態とに切り換える電動アクチュエータとを備え、
前記自動走行ユニットは、前記電動アクチュエータの作動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記モード選択部の人為操作によって前記自動走行モードが選択された場合に、前記電動アクチュエータの作動制御で前記フットブレーキが正常に動作するかを確認する動作確認処理を行い、前記動作確認処理において前記フットブレーキの正常動作が確認された場合に、動作確認実施済み状態に遷移して走行モードの手動走行モードから前記自動走行モードへの遷移を許可する点にある。
【0112】
本構成によれば、自動走行モードによる作業車両の自動走行が可能な状態においては、事前の動作確認処理により、電動アクチュエータの作動制御でフットブレーキが正常に動作することが確認されている。
これにより、自動走行モードにおいて、電動アクチュエータの作動制御でフットブレーキを作動させる必要が生じた場合には、フットブレーキを正常に作動させることができ、作業車両を確実に制動停止させることができる。
【0113】
本発明の第2特徴構成は、
前記電動アクチュエータの動作を検出する第1動作センサと、
前記フットブレーキの動作を検出する第2動作センサとを備え、
前記動作確認処理には、前記第1動作センサからの検出情報に基づいて前記電動アクチュエータが正常に動作しているかを確認する第1動作確認処理と、前記第2動作センサからの検出情報に基づいて前記フットブレーキが正常に動作しているかを確認する第2動作確認処理とが含まれている点にある。
【0114】
本構成によれば、動作確認処理においては、フットブレーキを作動させる電動アクチュエータの動作確認と、フットブレーキの動作確認とが、それぞれ個別に行われることになる。
その結果、動作確認処理を高い精度で行うことができ、動作確認処理の信頼性を高めることができる。
【0115】
本発明の第3特徴構成は、
前記制御部は、前記動作確認処理を行う場合に、動作確認処理開始用の条件が成立しているか否かを判定する事前条件判定処理を行い、前記事前条件判定処理において前記動作確認処理開始用の条件が成立していると判定した場合に前記動作確認処理を行う点にある。
【0116】
本構成によれば、例えば、動作確認処理開始用の条件にブレーキペダルが踏み込み解除位置にあることが含めるようにすれば、ブレーキペダルが踏み込み操作されて電動アクチュエータにかかる負荷が小さくなっている状態で動作確認処理が行われることを防止することができる。
つまり、動作確認処理開始用の条件を、実際の自動走行において電動アクチュエータの作動制御でフットブレーキを作動させるときの状態と同じ状態で動作確認処理を行えるようにするものに設定しておけば、実際とは異なる状態で動作確認処理が行われることによる動作確認処理の信頼性の低下を回避することができる。
【0117】
本発明の第4特徴構成は、
前記制御部は、前記動作確認実施済み状態に遷移した場合に、前記動作確認実施済み状態の有効期間が経過したか否かを判定する有効期間判定処理を行い、前記自動走行モードにおいて前記動作確認実施済み状態の有効期間が経過した場合は、前記走行モードを前記自動走行モードから前記手動走行モードに遷移させるとともに前記動作確認実施済み状態から初期状態に遷移し、前記動作確認処理によって前記フットブレーキの正常動作が再確認された場合に、前記動作確認実施済み状態に遷移して前記自動走行モードへの遷移を許可する点にある。
【0118】
本構成によれば、例えば作業車両を数日にわたって自動走行させる場合には、動作確認処理が定期的に行われることから、作業車両を数日にわたって使用することで、電動アクチュエータやフットブレーキなどにおいて、制動操作に影響する何らかの不具合が生じていた場合には、動作確認処理で見つけることができる。
これにより、自動走行時に電動アクチュエータの作動制御でフットブレーキを作動させる必要が生じたときに、フットブレーキが正常に作動しなくなる虞を効果的に抑制することができる。
【0119】
本発明の第5特徴構成は、
前記制御部は、前記動作確認実施済み状態に遷移した場合に、前記動作確認実施済み状態の有効期間が経過したか否かを判定する有効期間判定処理を行い、前記手動走行モードにおいて前記動作確認実施済み状態の有効期間が経過した場合は、前記有効期間の経過を報知する点にある。
【0120】
本構成によれば、作業車両を手動走行させている搭乗者に、走行モードを自動走行モードに遷移させるときに動作確認処理が必要になることを前もって知らせておくことができる。
又、電動アクチュエータの作動制御でフットブレーキを作動させることのない手動走行において、動作確認処理が定期的に行われることによる作業効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0121】
2 自動走行ユニット
10 走行装置(前輪)
11 走行装置(後輪)
22Fa 制御部(セフティブレーキ機能部)
32a モード選択部
42 フットブレーキ(ブレーキ)
102 電動アクチュエータ(電動モータ)
113 第1動作センサ(解除スイッチ)
114 第2動作センサ(制動スイッチ)
図1
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