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特許7196273最小の遠位側圧力/動脈圧(PD/PA)比を決定することによって心臓系を評価するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】最小の遠位側圧力/動脈圧(PD/PA)比を決定することによって心臓系を評価するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B5/0215
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202128
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2020079926の分割
【原出願日】2015-08-27
(65)【公開番号】P2022037095
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】62/042,448
(32)【優先日】2014-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517064692
【氏名又は名称】セント ジュード メディカル システムズ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】スヴァネルド,ヨハン
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0072880(US,A1)
【文献】特表2012-501807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0046190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内データを使用して血管を評価するための1つ又は複数の診断メトリックを決定するためのプログラムであって、当該プログラムが、血管内データ収集プローブを含む血管内データ処理システムのプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記血管を通して前記血管内データ収集プローブを引き戻している間に、前記血管内に配置された前記血管内データ収集プローブのセンサをサンプリングレートでサンプリングして、サンプリングされた複数の遠位側圧力(Pd)値を受け取ること、
該サンプリングされた複数の遠位側圧力(Pd)値及び複数の近位側圧力(Pa)値を受け取ること、
前記サンプリングされた複数の遠位側圧力(Pd)値及び前記複数の近位側圧力(Pa)値に基づいて、Pd/Pa比の複数のセットを決定することであって、該Pd/Pa比の複数のセットのそれぞれには、1つの心拍周期の全体を通して決定されるPd/Pa比が含まれる、決定すること、
複数の最小のPd/Pa比を決定することであって、該最小のPd/Pa比のそれぞれは、対応する前記心拍周期の全体に亘るPd/Pa比のセットのうちの1つのセット内の最小の比である、決定すること、及び
前記引き戻し中に時間とともに変化する前記複数の最小のPd/Pa比のプロットを表示すること、を含む方法を実行させる、
プログラム。
【請求項2】
前記方法には、前記複数の最小のPd/Pa比を決定する前に、心拍周期の長さの1%~50%の範囲である時定数を有するフィルタを使用して、前記Pd/Pa比の複数のセットをフィルタリングすることがさらに含まれる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記プロットには、前記複数の最小のPd/Pa比のそれぞれについての離散点が含まれる、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記方法には、前記血管内の狭窄の指標として前記複数の最小のPd/Pa比の変化を特定することがさらに含まれる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記方法には、前記プロットを含むユーザインターフェイスを表示することがさらに含まれる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記ユーザインターフェイスには、FFR値、Pd値、Pa値、Pa移動平均、Pd移動平均、又は血管内画像のうちの少なくとも1つがさらに含まれる、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記複数の最小のPd/Pa比の前記プロットには、前記複数の最小のPd/Pa比の移動平均を示す曲線が含まれる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
血管を評価するための血管内データ解析システムであって、当該システムは、
血管内データ収集プローブによって測定された複数の遠位側圧力(Pd)値と、前記血管を通した前記血管内データ収集プローブの引き戻し中の複数の近位側圧力(Pa)値とを含む血管内圧力データを受け取るように構成されたインターフェイスシステムと、
表示システムと、
命令を含む1つ又は複数のメモリ記憶装置と、
前記インターフェイスシステム、前記表示システム、及び¥1つ又は複数のメモリ記憶装置と電気的に通信するプロセッサと、を含み、
該プロセッサは、前記命令を実行して、
前記複数の遠位側圧力(Pd)値及び前記複数の近位側圧力(Pa)値に基づいて、Pd/Pa比の複数のセットを決定することであって、該Pd/Pa比の複数のセットのそれぞれには、1つの心拍周期の全体を通して決定されるPd/Pa比が含まれる、決定すること、
複数の最小のPd/Pa比を決定することであって、該最小のPd/Pa比のそれぞれは、対応する前記心拍周期の全体に亘るPd/Pa比のセットのうちの1つのセット内の最小の比である、決定すること、及び
前記引き戻し中に時間とともに変化する前記複数の最小のPd/Pa比のプロットを表示すること、を行うように構成される、
システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記複数の最小のPd/Pa比を決定する前に、心拍周期の長さの1%~50%の範囲である時定数を有するフィルタを使用して、前記Pd/Pa比の複数のセットをフィルタリングするように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロットにが、全体的な最小のPd/Pa比の指標が含まれる、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロットには、前記複数の最小のPd/Pa比のそれぞれについての離散点が含まれる、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記血管内の狭窄の位置を特定するために、前記引き戻し中の前記複数の最小のPd/Pa比の変化を追跡するための命令を実行するようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記プロットを含むユーザインターフェイスを表示するための命令を実行するようにさらに構成される、請求項8乃至12に記載のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ユーザインターフェイスには、FFR値、Pd値、Pa値、Pa移動平均、Pd移動平均、又は血管内画像のうちの少なくとも1つがさらに含まれる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の最小のPd/Pa比の前記プロットには、前記複数の最小のPd/Pa比の移動平均を示す曲線が含まれる、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、最小の遠位側圧力/動脈圧(PD/PA)比を決定することによって心臓系を評価するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、米国特許法119(e)に基づき、2014年8月27日に出願された米国仮特許出願第62/042,448号についての優先権の利益を主張するものであり、この文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
冠状動脈疾患は、世界中の主要な死亡原因の1つである。冠状動脈疾患をより適格に診断、監視、及び治療する能力は、人命を救う上で重要である。種々の技術を用いて、動脈の画像化又は特徴付けに適した測定パラメータ又は信号等によって血管内データを取得することができる。圧力センサ又は流量センサ(又は他の血管内装置)等の測定装置又は感知装置を使用して、データを収集し、長さ、直径、及び他のパラメータ等の心臓血管及び血管パラメータを測定することができる。狭窄及び他の心臓系の現象の診断を補助するために、イメージング・モダリティ等の他のデータ収集モダリティも使用することができる。
【0004】
血管内光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、光を用いて冠状動脈壁を検査し(peer into)、その画像を検討するために生成する、カテーテルベースのイメージング・モダリティである。OCTは、コヒーレント光、干渉分光法、及びマイクロ光学系を利用して、病変部血管内のビデオレートの生体内断層撮影をマイクロメータレベルの分解能で提供することができる。これは、OCTプローブを関心対象の動脈を通して引き戻し、その詳細を取得することによって達成される。OCT画像は、冠状動脈形態の高解像度の視覚化を提供し、単独で、或いは感知装置を用いて収集される圧力データ又は他のデータ等の他の情報と組み合わせて使用することができる。血管内超音波又はIVUSシステム及びプローブ等の超音波ベースの装置を使用して、動脈の画像化又は測定等によって、被験体の心臓血管系に関する情報を収集することもできる。関心対象に関するOCT、IVUS、及び圧力データは、所与の心血管系及びそのサブシステム及びその構成要素に関する相当量のデータを提供する。
【0005】
OCT、IVUS、圧力感知、及び他の血管内データ収集ツール及び装置の臨床医又はエンドユーザに利用可能な情報を簡素化及び抽出するのを助けるのに、不要な複雑性及び仮定を回避しながら、心臓血管介入及び他の研究の分野を進歩させる新しい診断メトリックを特定することは有用である。
【0006】
本開示は、これらの課題及び他の課題に対処する。
【発明の概要】
【0007】
部分的には、本開示は、本明細書に記載されるような圧力値に基づく比又は他の診断メトリックを用いて心臓系を評価するのに適したコンピュータベースの方法及びシステムに関する。圧力値に基づく比は、大動脈圧を含み得るPaとして特定される近位側圧力、及び狭窄部の下流に位置する領域で取得される圧力値等の遠位側圧力Pdを用いて決定することができる。これらの圧力値は、2つの圧力データ源をサンプリングすることによって取得することができる。いくつかの例示的な圧力データ源は、電気的又は光学的な圧力トランスデューサ等の圧力センサを含むことができる。適切な圧力センサは、例えば、送達カテーテル、血管内データ収集プローブ、ガイドワイヤ、及び他の適切な装置及びシステム等のカテーテル上に、カテーテル内に、又は他にカテーテルに対して配置することができる。Pd/Paの比は、1つ又は複数の心周期(cardiac cycle)についてサンプリングされたPd及びPa値毎に決定することができる。このような各Pd/Pa比の最小値は、各心周期について決定することができる。このような最小値のセットは、MCR値とも呼ばれ、経時的にプロットすることができる。MCR値は、数値として表示されるか、又は入力値として使用して、心周期の挙動に関連する他の比又は指標を生成することができる。
【0008】
部分的には、本開示は、血管内データを用いて心周期イベントを追跡する方法に関する。この方法は、血管の遠位領域から第1の複数の圧力値を取得するために、血管内データ収集プローブをサンプリングレートでサンプリングするステップと、血管内データ処理システムにおいて、血管の近位領域から取得した第2の複数の圧力値を受け取るステップと、第1の複数の圧力値及び第2の複数の圧力値から複数の遠位側圧力対近位側圧力(Pd/Pa)比を決定するステップと、複数のPd/Pa比から最小のPd/Pa比を決定するステップと、最小のPd/Pa比(MCR)を表示するステップと、を含む。
【0009】
一実施形態では、表示されたMCRは第1の心拍周期についての比であり、心拍周期(heart cycle)毎に複数のMCRを決定するステップをさらに含む。一実施形態では、この方法は、圧力ワイヤが血管を通して引き戻されるときに、血管造影シネ(cine)及び複数のMCRを経時的に表示するステップをさらに含む。一実施形態では、この方法は、複数の後続の心拍周期について上記複数のステップを繰り返して複数のMCRを決定するステップと、複数のMCRを心周期毎に経時的にプロットするステップとをさらに含む。一実施形態では、サンプリングレートは、約25Hz~約2kHzの範囲である。一実施形態では、この方法は、心周期毎に1つ又は複数の最小のPd/Pa比を決定する前に、複数のPd/Pa比値を使用して生成された波形をフィルタリングするステップをさらに含む。一実施形態では、本開示は、充血性拡張薬(hyperemic agent)を用いない安静状態の間に取得された測定値を使用して決定される患者の関心状態と相関する診断メトリックに関する。一実施形態では、本開示は、充血性拡張薬を用いた安静状態の間に取得された測定値を使用して決定される患者の関心状態と相関する診断メトリックに関する。
【0010】
一実施形態では、MCRは狭窄診断メトリックであり、この方法は、期間(T)に亘ってMCR値を監視するステップと、MCR値の変化を血管内の狭窄の指標として特定するステップとをさらに含む。一実施形態では、この方法は、複数のPd/Pa比値を使用して生成された波形を、時定数(TC)を有するフィルタを用いてフィルタリングするステップと、時定数を心周期の持続時間の一部に対応させるように設定するステップとをさらに含む。一実施形態では、TCは、心拍周期の長さの約1%~約50%の範囲となり得る。一実施形態では、第1の複数の圧力値及び第2の複数の圧力値は、心臓拡張期及び収縮期を含む1つ又は複数の心周期の間に取得される。一実施形態では、この方法は、第1のパネル及び第2のパネルを含むユーザインターフェイスを表示するステップを含み、第1のパネルは、MCR値のサイクル毎のプロットを含み、第2のパネルは、FFR値、Pd値、Pa値、時間値、及びMCR値の1つ又は複数を含む。
【0011】
部分的には、本開示は、圧力値に基づいた比に応答して、心周期イベントを解析する方法に関する。この方法は、血管領域の遠位側の位置で測定された第1の圧力値(Pd1)を受け取るステップと、血管領域の近位側の位置で測定された第2の圧力値(Pa1)を受け取るステップと、第1の圧力値と第2の圧力値との第1の比(R1)を決定するステップであって、ここでR1は第1の時間値に対応する、決定するステップと、血管領域の遠位側の位置で測定された第3の圧力値(Pd2)を受け取るステップと、血管領域の近位側の位置で測定された第4の圧力値(Pa2)を受け取るステップと、第3の圧力値と第4の圧力値との第2の比(R2)を決定するステップであって、ここでR2は第2の時間値に対応する、決定するステップと、R1がR2より大きい場合に、R1又はこのR1のプロットを時間に対して表示するステップ、又はR2がR1より大きい場合に、R2又はこのR2のプロットを時間に対して表示するステップとを含む。一実施形態では、R1がR2よりも大きい場合に、第1の時間値は、心周期における圧力低下の発生に対応する。一実施形態では、圧力低下は極大値である。一実施形態では、圧力低下は、複数の心周期について最大のものである。一実施形態では、この方法は、第1のパネル及び第2のパネルを含むユーザインターフェイスを表示するステップを含み、第1のパネルは、MCR値のサイクル毎のプロットを含み、第2のパネルは、FFR値、Pd値、Pa値、時間値、及びMCR値の1つ又は複数を含み、MCR値はR1又はR2である。
【0012】
部分的に、本開示は、血管内データ収集システムに関する。このシステムは、血管内プローブからデータを受け取るインターフェイスを含む血管内データ収集システムと、血管内データ収集システムと電気通信する表示システムと、表示システム上にユーザインターフェイスを出力する命令を含む1つ又は複数のメモリ記憶装置であって、ユーザインターフェイスは、最小サイクル比又はこの最小サイクル比のプロットを表示するための1つ又は複数の領域を含む、メモリ記憶装置と、血管内データ収集システム、表示システム、及び1つ又は複数のメモリ記憶装置と電気通信するプロセッサを含み、このプロセッサは、心周期毎に複数の近位側圧力値(Pa)をサンプリングし、心周期毎に複数の遠位側圧力値(Pd)をサンプリングし、サンプリングされたPa及びサンプリングされたPdの1つ又は複数についてPd/Pa比のセットを決定し、このセット内の最小比値を特定する、ようにプログラムされる、プロセッサと、を含む。血管内データ収集及び解析システム又はその構成要素のいくつかの非限定的な例は、RadiAnalyzer、RadiAnalyzerXpress、Quantien、圧力ワイヤ(pressure wire)システム(Aeris1、Aeris2、又はCertus等)、Optisシステム、血管内イメージング及び圧力監視システムの組合せ等のマルチモーダルシステム、圧力データ入力を有する血行動態ディスプレイを含むことができる。本開示の実施形態は、適用可能なデータを測定し、1つ又は複数の診断メトリックを決定し、それら診断メトリックを離散固定として又は時変値として表示するために出力及び中間ステップを生成する、圧力感知、OCT、又はIVUSシステムで使用される専用のプロセッサ及びコンピュータ装置を使用することができる。一実施形態では、血管内データ解析又はデータ収集システムは、血管内圧力感知システム、光コヒーレンス断層撮影システム、及び血管内超音波システムから構成されるグループから選択される。一実施形態では、プロセッサは、圧力感知システムプロセッサ、OCTシステムプロセッサ、マルチモーダル血管内システムプロセッサ、及びIVUSシステムプロセッサから構成されるグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の例示的な実施形態による、圧力値比の最小又は閾値に基づくプロットを含む血管内データ収集及び表示システムの概略図である。
図2A】本開示の例示的な実施形態による血管内データ解析及び表示の例示的な方法のフローチャートである。
図2B】本開示の例示的な実施形態による血管内データ解析及び表示の例示的な方法のフローチャートである。
図3A】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図3B】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図3C】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図3D】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図3E】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図3F】本開示の例示的な実施形態による一連の血管内データセット又はプロットである。
図4A】本開示の例示的な実施形態に従って本明細書で説明される経時的な及び心拍周期毎の血管内データに基づく情報及び関係のデータの表示である。
図4B】本開示の例示的な実施形態に従って本明細書で説明される経時的な及び心拍周期毎の血管内データに基づく情報及び関係のデータの表示である。
図5A】左冠状動脈系における血流パターンを示す例示的なプロットであり、本開示の例示的な実施形態による診断情報表示パネル又はインターフェイスを含む。
図5B】右冠状動脈系における血流パターンを示す例示的なプロットであり、本開示の例示的な実施形態による診断情報表示パネル又はインターフェイスを含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、代わりに例示的な原理を説明する際に強調されることがある。数字は、全ての態様で例示とみなされるべきであり、本開示を限定することを意図していない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0015】
様々なデータ収集及び解析システムが、冠動脈系に関する情報を取得するために利用可能である。装置を用いて血管から取得したデータ又はその血管に関連する血管内又は血管外の測定から導出されたデータを解析及び表示して、研究者及び臨床医を支援するために相関及び外挿を提供することができる。例えば、圧力センサに基づく装置を使用して、血管に対する血流予備量比(FFR)を決定するために、様々な測定システム及び血管内プローブが利用可能である。血管の一部を画像化するために、血管内超音波(IVUS)をプローブに使用することもできる。次に、光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、干渉計を使用して、血管又はこの血管内に配置された対象物に対する距離測定値を取得する画像化モダリティである。
【0016】
血管内データ収集装置は、それら装置が使用される血管に対する診断情報を含む信号を生成し、受け取るために使用することができる。これらの装置は、光学プローブ又は超音波プローブ、圧力センサ装置、及び他の装置等のイメージング装置に制限されることなく、血管又は心臓血管系の他の構成要素に関するデータを収集するのに適した他の装置を含むことができる。
【0017】
部分的に、本開示は、血管内プローブによって収集された血管内データをプロセッサベースのシステムによって変換又は解析することができる血管内データ収集システム及び関連する方法に関する。このような解析及び変換の結果は、圧力監視システム又は血管内データ収集システム等のシステムと又はこのシステムの一部と通信するディスプレイ等の様々な表現でエンドユーザに表示することができる。そのようなシステムの例を図1に示す。部分的に、このようなデータを用いて、患者の生理学的状態と相関する1つ又は複数の指標又は比を生成することが開示される。
【0018】
これらの比又は指標は、狭窄、治療レジメン、ステント、ステント配置不良、狭窄重症度、狭窄位置、梗塞サイズ、梗塞の重症度、誘導治療戦略、処置効果の評価、及び診断情報等の1つ又は複数の心臓系パラメータ又は患者状態と相関付けされ、処置後の追加の治療の必要性を評価する。本明細書に記載される比は、一実施形態では、被験体の安静状態の間に取得した圧力値を使用して決定することができる。別の実施形態では、本明細書に記載される比は、アデノシン等の充血性拡張剤(hyperemic agent)の導入後に決定することができる。充血性拡張剤の使用は、一実施形態では、関連する波形を増幅することができる。
【0019】
一実施形態では、Pd/Pa比は、圧力値を計算するために使用される1つ又は複数の圧力センサから取得したPd圧力値又は他のサンプリングデータのサンプルを使用して連続的に計算される。一実施形態では、被験体の動脈内に配置された血管内データ収集プローブを用いて圧力データを収集する。例示的な血管内データ収集プローブには、カテーテルベースのプローブ又はカテーテル送達プローブ、ガイドワイヤベースのプローブ、撮像プローブ、アブレーションプローブ、超音波プローブ、干渉計測ベースのプローブ、及び他の適切なデータ収集プローブ及び装置が含まれる。Pa値は、ガイドカテーテル又は送達カテーテルから継続的に得られる。ガイドカテーテル又は送達カテーテルを用いて、狭窄等の動脈の関心領域を通して血管内プローブを位置付け及び前進させる。この比は、サンプル毎に計算することができ、各心拍周期の間に1つ又は複数のPd/Pa比を決定することができる。その結果、所与の心周期について、複数のPd/Pa比又はPd/Pa比のセットが得られる。
【0020】
Pd/Pa比のセットにおいて、最小のPd/Pa比の値を特定することができる。この最小比は、特定の心拍周期に対応しており、最小サイクル圧力比指標又は最小サイクル比(MCR)として特定することができる。心周期のセットに対する各MCRは、数値として表示されるか、又は本明細書で説明されるように表示システム上にプロットされる。一実施形態では、各MCRは、心周期のサブセット又はその一部ではなく、心周期に基づくものである。一実施形態では、MCRは、圧力データ等のサンプリングされた血管内データを用いて生成される診断メトリックである。一実施形態では、サンプリングされたデータは、心臓拡張期及び収縮期に取得される。
【0021】
一例として、100HzのサンプリングレートがPd及びPaデータを収集するために使用される場合に、例示的な1秒の心周期について、サイクルは、約100のサンプル点を含む。これら100点を使用して、100個のPd/Pa比を決定することができる。その100個の比のセットから、その心周期について最小比をMCRとして特定することができる。このプロセスは、複数の心周期に対して繰り返され、例えば図4Aに示されるように経時的にプロットされる。一実施形態では、サンプリングレートは、約10Hz~約100Hzの範囲である。一実施形態では、サンプリングレートは、約25Hzを超える範囲である。一実施形態では、サンプリングレートは、約100Hz~約2000Hzの範囲である。さらに、心周期は、MCR値を使用して被験体の1つ又は複数の関心状態を診断することに関連して、フロー曲線、EKG、圧力波形、及び他のメトリックを使用して解析することができる。
【0022】
一実施形態では、本明細書で開示されるような比を決定する方法は、ECGトリガリング又はランドマーク識別でないか、又はそれらに依存しない場合がある。一実施形態では、本明細書で開示されるような比を決定する方法は、サンプリング期間、時定数、又は他のフィルタパラメータ等のフィルタパラメータを調整するための入力として心拍数を検出することができる。一実施形態では、ECGトリガリング又はランドマーク識別を用いて、このシステム及び方法の心拍数又は他の入力(input put)パラメータを決定する。別の実施形態では、心拍周期における最大圧力低下は、そのような最大圧力低下が所与の心周期において生じる箇所とは無関係に、本明細書に開示される方法及びシステムを使用して識別可能でもある。従って、心臓拡張期に関してのみ決定されるのではなく、本開示の最小サイクル比及び関連する方法は、所与の心周期において最大圧力低下が何時、何処で起こるかを特定することができる。この特定は、そのような圧力低下が心臓拡張期又は収縮期に生じるかどうかにかかわらず実施することができる。
【0023】
従って、本開示の実施形態は、方法及び関連する比が依存していない、或いは比を決定するために使用される圧力値が左又は右の冠動脈系において測定されるかどうかに影響を受けないので、他のアプローチに対して遥かにフレキシブルであり且つ向上した正確性を提供する。右及び左の冠状動脈系に関連する流れの詳細のいくつかの例示的なグラフを図5に示す。数回の心拍周期に亘る圧力平均化を用いる指標と比較して、最小サイクル比は、センサが病変部を横切って引き戻されたときに生じる変化に対してより感度を高めることもできる。従って、血管再建術が生じた後、又は圧力の引戻し中に、最小サイクル比は、全サイクルPd/Paと比較した場合に、圧力変化に対してより感度を高めることができる。より小さい圧力降下が表示システム上でより大きな振幅値として表示されるこの感度は、狭窄の位置を特定するために引戻し中にMCR値を追跡し、ステント留置後の影響を評価し、側枝(side branch)を評価し、及び疾患又は他の血管の特徴を拡げるときに有用である。感度がより大きくなると、例えば狭窄がMCRの変化に基づいて特定された場合に、圧力変化をより検出し易くなる。
【0024】
一実施形態では、所与の最小サイクル比であるMCR値の一貫性を改善するために、この比は、オプションで、複数の心拍周期に亘って平均化され得る。1つの好ましい実施形態では、MCRは、複数の心周期に亘って平均化されるのではなく、サイクル毎に決定される。MCRは、画面上の数字、曲線、離散点のプロット、及びMCRに基づいて、MCRに相関された、又はMCRから派生した前述の表現又は他の表現の組合せとして表示することができる。
【0025】
一実施形態では、表示システムは、MCR又は他の比を決定するときに特定の条件又は他のパラメータを使用できるようにする機能を含むユーザインターフェイスを提供する。値又は起動を記録した後に、システムは、記録全体、つまりユーザインターフェイスを介したユーザ選択に基づいて予め選択した心拍数の後の記録において最も低い比を表示するように構成することができる。各MCR値は、圧力感知位置に関係なく、且つECGトリガリング又はランドマーク識別を用いずに、心拍周期における最大圧力低下の発生を心拍周期毎に特定するためのメトリックを提供する。MCR値を決定するための例示的なシステム及びその構成要素は、図1に関して説明される。
【0026】
図1は、心臓系を解析するのに適したカテーテル検査システム10を示す。システム10は、データ収集及び解析システム18、インターフェイスシステム20、表示システム22、及び血管造影システム25等のX線システム25等の様々なシステムを含むことができる。血管内データ収集及び解析システム18又はその構成要素は、RadiAnalyzer、RadiAnalyzerXpress、Quantien、Aerisシステム、Optisシステム、複合血管内イメージング及び圧力監視システム等のマルチモーダルシステム、圧力データ入力を有する血行動態ディスプレイを含むことができる。
【0027】
データ収集及び解析システム18は、マイクロプロセッサ等のプロセッサ23、メモリ26、関連する時定数TCを有するフィルタ32、及び(例えばPd/Pa比ハードウェア要素又はソフトウェアモジュール29等の)1つ又は複数のソフトウェアモジュール、回路、又は診断メトリック生成器29等のハードウェアコンポーネントを含むことができる。プロセッサは、圧力感知、OCT、IVUS、又は他の血管内データ収集システムの回路基板と電気通信することができる。時定数TCは、測定されたパラメータ又はプリセット値に基づいて更新又は適合され得るか、或いはユーザに選択され得る。データ収集及び解析システム18は、以前の血管内及び血管外のデータ収集セッションからデータベース35に記憶された履歴データをレビューすることもできる。本明細書で説明されるような1つ又は複数の比、曲線、又は他の値を決定した結果も、データベース35に記憶することができる。1つ又は複数のデータベースを、適用可能な様々なデータセットに使用することができる。
【0028】
部分的には、本開示の実施形態は、プローブ40又は44等の血管内データ収集プローブからサンプリングされた信号に基づいて比を決定するのに適した、圧力感知装置、測定システム、及びそれらに関連するソフトウェアの様々な特徴に関する。圧力変化に応答して電気的変化を受ける構成要素を含む半導体装置を有するガイドワイヤベースのプローブ40、44を使用して、圧力監視を行うことができる。本明細書で説明される実施形態は、ガイドワイヤベースのプローブ及びデータ収集及び解析システム18の関連するソフトウェア及び電気素子を使用して、本方法、比決定、及び測定を実行するメソッドをサポートする。インターフェイスシステム20、システム18、又はシステム22によって受け取られるデータを、有線プローブ44又は無線プローブ40を使用して送信することができる。ガイド又は送達カテーテルの近位側圧力センサ等のセンサ45は、大動脈圧力値等の近位側圧力値(Pa)も受け取ることができる。
【0029】
システム18は、血管内プローブからサンプリングされた信号に基づいて測定計算を行うことができる。あるいはまた、システム18は、例えばプローブの近位側コネクタ等のプローブに配置された回路又は処理要素を使用して実行される計算結果を符号化する信号を受け取ることができる。システム18は、圧力値、FFR値、MCR値、サンプリングされたPa値、サンプリングされたPd値、上記に関連する移動平均値、及び他の値をグラフ化して表示するのに適したソフトウェア、制御システム、データ解析及び表示装置、及びプロセッサも含むことができる。
【0030】
インターフェイスシステム20は、1つ又は複数の回路或いは信号処理又は制御要素に接続される。所与の血管内測定システムのこれらの回路、要素、及び他の構成要素を使用して、プローブ40、44又はセンサをサンプリングすることによるガイドワイヤベースのプローブからの時間変化する電気信号を変換し、図1の1つ又は複数のシステムで受け取ることができるPd及びPa値を生成する。時間変化する電気信号は、電流変化、電圧変化、抵抗変化、又はMCR値と相関する他のデータとすることができる。インターフェイス及びディスプレイは、表示システム22を使用して、本明細書に記載されるように、これらの値、並びに他の比及びパラメータを表示するようにフォーマット及びプログラムされる。
【0031】
表示システム22は、Pd及びPa値等の圧力データ、又はそれらから導出したデータ55、58、血管内造影画像70、IVUS又はOCT画像67、65、及び他の血管内画像及びデータを表示するのに適したパネル、ユーザインターフェイス、及び他の画面を含むことができる。ディスプレイ22又はインターフェイス20は、ガイドワイヤベースのプローブ、OCT、FFR、IVUS、又は他のシステムからデータを受け取るシステム18との無線通信等の電気通信の一部であってもよく、又は電気通信であってもよい。
【0032】
血管造影システム25は、圧力ワイヤによってデータ収集の引戻しの前後に観察することができるシネ(cine)・シーケンスを生成するために使用することができる。一実施形態では、表示システムは、圧力センサが血管を通して引き戻される際に時間的に変化するMCR値を表示しながら、シネ・シーケンスを同時に表示する。MCR値の変化は、動脈の引戻し経路に沿った狭窄領域を決定するために使用することができる。これらの狭窄位置をカーソル又は電子注釈ツールを使用して特定して、シネ・シーケンスの1つ又は複数の血管造影フレーム上のステント留置のために、或いはIVUS、OCT又は別の画像化又はデータ収集モダリティを使用する更なる画像化のために候補領域をマークすることができる。
【0033】
カテーテル又はガイドワイヤ上に取り付けられた圧力センサから取得した、又は他の測定値を使用して計算されたPa圧力値を、所与の血管内プローブからサンプリングされたPd圧力値とともに使用して、MCR値等の1つ又は複数の比を決定することができる。これらの比は、本明細書に記載されるように表示又はプロットすることができる。図2A及び図2Bは、そのような1つ又は複数の比を決定するための例示的な方法100及び150をそれぞれ示している。この比はここでは最小値として説明されているが、絶対最小値の一定のパーセンテージ内にある又は最小値からの標準偏差の範囲内にある値等の、特定の閾値又は他の範囲内にあるものとして値を決定することもできる。
【0034】
特定の環境では最小値が好ましいが、本明細書で最小値が参照される状況では、最小値ではないが最小値の範囲内の所定の閾値である閾値を使用してもよい。従って、一実施形態では、Pd/Pa比等の最小値の約0%より大きく約20%未満の間の閾値をサイクル毎に使用することができる。一実施形態では、Pd/Pa比は、OCT、IVUS、圧力感知、流量感知、又は他のシステムのユーザインターフェイス又は表示パネルに対して表示することができる診断メトリックである。診断メトリックは、臨床医等のユーザに対する被験体に対する意思決定を容易にする。
【0035】
図2Aに示されるように、この方法は、Pa値を受け取るステップと、Pd値を受け取るステップとを含む。これらのステップA1及びA2は、別々に又は一緒に実行することができる。この値は、データ収集及び解析システム18等のシステム10の構成要素によって受け取ることができる。一実施形態では、複数のPd及びPa値が、時間の経過と共に受け取られ、且つそれら値が収集される間に個々の心周期に関連付けられる。この方法は、受け取ったPa及びPd値に基づいて、Pd/Pa比を決定するステップ(ステップB)も含む。一実施形態では、複数のPd/Pa比が決定される。オプションのフィルタリングステップ(ステップC)が、この方法の一部であってもよい。Pd/Pa比の軌跡又は曲線をフィルタリングすることは、ノイズを除去することにより、そのような軌跡又は曲線を平滑化することができる。フィルタは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、移動平均フィルタ、同様のフィルタ又はそれらの組合せ、及び他の適切なフィルタ等、様々なタイプのものであってもよい。フィルタの時定数TCは、約10ms~約500msの範囲であり得る。
【0036】
一実施形態では、この比の曲線へのフィルタの適用は、所与の心周期に対するMCR値の再現性を向上させる。一実施形態では、時定数TCはMCR値に影響を与える。これは、例えば、患者の心拍数、徐脈、又は頻脈が大きく変動する場合に重要である。一実施形態では、時定数TCは、約10ms~約500msのTC範囲、好ましくは100~300msのサブセットを有する予め選択された定数とすることができる。一実施形態では、TCは、適応性があり、経時的に変化し得るか、或いは心拍周期長さ等の1つ又は複数のパラメータ若しくは他の心臓系又は血管パラメータとの関係を有することができる。例えば、心拍周期長さのパーセンテージとして決定される適応性TCを使用することができる。心拍周期長さは、データ収集セッション中に測定され、適応性TCを生成するための入力として使用される。適応性TCは、TC=a(心拍周期長さ)の形態をとることができ、ここでaはパーセンテージである。そのような適応性TCのパーセンテージは、心拍周期長さの約1%~約50%の範囲であり得る。TCは、ユーザインターフェイスを介してユーザによって調整され、データ収集システムに記憶された固定値であり、ネットワーク又はファームウェア更新によって更新可能であり、又は所定のシナリオに適するように構成することができる。ユーザインターフェイスは、ディスプレイ22を介してシステム10に表示することができる。
【0037】
さらに図2Aを参照すると、1つ又は複数のPd/Pa比が決定された場合に、この方法は、最小のPd/Pa比(MCR)を決定するステップ(ステップD)も含む。一実施形態では、最小値、相対的な極値、又は上記と相関又は導出された値を診断メトリックとして使用することができる。最小比のパーセンテージ等の閾値も、このMCR決定実施形態及び他のMCR決定実施形態に使用することができる。この決定プロセスは、心拍周期毎に経時的に行うことができる。1つ又は複数のMCR値が決定されると、これらの比は、本開示の図に示されるように、表示システム上に数値として表示してもよいし、又は経時的にプロットしてもよい(ステップE)。図2Bは、MCRを決定して表示する方法160の別の例示的な実施形態を示す。ステップ50及びステップ55は、一緒に又は別々に実行することができる。ステップ65は、オプションのフィルタリングステップである。図示されるように、ステップ60、70、及び80を実行することができる。図2Bのプロセスは、さらに、プロセスフロー200に示されるように、N個の心周期について、複数のMCRを離散的な点、値、又は曲線として時間の経過と共にディスプレイに表示することができることを示す。方法200では、ステップ210及び220が実行される。ノイズのフィルタリングは、方法200の一部として実行することもできる。こうして、ステップは、心周期について遠位側で測定された複数の圧力値をサンプリングするステップを含む。心周期について近位側で測定された複数の圧力値をサンプリングするステップは、別のステップである。各比に対してサンプリングされた遠位側圧力値及びサンプリングされた近位側圧力値を使用して複数の比を決定することは、1つのステップである。オプションで、ノイズフィルタ処理を実行することができる。心周期の複数の比から最小比を決定することができる。次に、この比は、値、変化する値、或いは値又は点のプロットとして表示できる。N個の心周期についてのサンプリングの反復、比決定、最小比決定は、1又は1を超えるN周期に対して反復的に行うことができる。一実施形態では、この方法は、心周期毎のN個の最小比を時間比で表示するステップを含む。
【0038】
図3Aは、複数の心周期についてサンプリングされたPa値及びPd値のプロットを示す。Pa曲線は、一般的にPd曲線の上にある。図3Bは、Pd/Pa比に対応する曲線を加えた図3Aのプロットを示す。図3Cでは、図3Bのプロットが、Pd/Pa比の移動平均を加えて示されている。図3Cでは、Pd/Pa曲線は、移動平均を決定する前に時定数TCを有するフィルタを適用することによって平滑化される。このようなフィルタの適用は、オプションであるが、信号ノイズ又は変動する心拍数に関係なく、MCR測定の再現性を高めるために、特定のシナリオでは有利となり得る。図3Dでは、図3Cのプロットは、2つの心周期についての最小のPd/Pa比に対応する垂直マーカーを加えて示されている。これらの最小値は、図3F又は図4A及び図4Bに示されるように、経時的なMCR値としてプロットすることができる。図3A図3Dに示される画像は、図2A及び2Bに関して開示されるようなMCR決定方法を使用してデータを生成する方法を示す。これらの図又はその一部は、被験体の診断を容易にするために、ユーザ又はその派生物にも表示することができる。
【0039】
図3Eは、FFR値のプロットを示す。FFR値は、約0.6~約1以下の範囲である。FFR値は、時間に対してプロットされ、FFR値は、サンプル毎に算出される。充血時のPd/Pa比を用いてFFR値を決定し、記録された心拍周期に亘って1又は数回の心拍周期に対して平均化した。冠状動脈ステント留置の決定の指針を提供するために、圧力ワイヤを使用した血流予備流量比(FFR)の測定が用いられる。冠動脈分岐部で測定された0.8以上の遠位側FFR読取り値は、分岐部の病変が充血状態の下で虚血を誘発するのに十分に狭められていないので、経皮的冠動脈介入(PCI)が安全に延期され得ることを示す。逆に、0.8未満の遠位側FFR値は、通常、ステントの埋込みによる治療の必要性を示す。MCR値の遷移は、ステント計画を容易にするために、FFR値と並行して、又はその代わりに使用することができる。
【0040】
図3Fは、時間に対する離散的なMCR値のプロットを示す。図示の実施形態では、MCR値は、心拍周期毎に決定されるため、離散的である。所与の心拍周期についてサンプリングされたPd及びPa値についての最小のPd/Pa比として、MCR値が決定される。
【0041】
図4A及びその代わりのグラフ表示、図4Bは、画面の下部パネルに図3EのFFR値及び図3FのMCR値も示す。サンプリングされたPd及びPaの値は、上部パネルに軌跡として表示される。さらに、Pa値の移動平均(Pa移動平均)及びPd値の移動平均(Pd移動平均)も示されている。Pa移動平均は、Paピーク及びPdピークを通る曲線である。Pd移動平均は、Pa移動平均の下に配置された曲線である。画面の右側の領域では、上から下にPa、Pd、FFR、MCR、及び時間値が、垂直マーカーVMの位置に対応して示されている。垂直マーカーVMは、所定の値で表示されるように、又はプリセット位置のセットを循環するように調整するようにプログラムすることができる。垂直マーカーVMは、ユーザが適宜配置することもできる。図示されるように、VMは、Pd/Pa最小値及びMCR最小値に近い。一実施形態では、図4A及び図4Bに示されるようなデータ又はユーザインターフェイス情報の複数のパネルが、MCR、Pa、Pd、FFR、時間、Pa移動、Pd移動のプロット又は固定値又は時間変化値とともに表示される、及びこれらの平均及び重み付けされた組合せを含む。一実施形態では、経時的に変化するMCR値を含むディスプレイパネルが、時間変化するFFR値に対してプロットされて、ステント計画又は動脈の他の特徴付け又は診断を容易にする。
【0042】
これらの図及びユーザインターフェイス画面は、ステント決定を行い、診断の観点から関心領域を特定し、診断ツールとして他の心臓系処置決定を通知するために血管内画像及び血管造影画像とともに使用することができる。これらの比はまた、他のアプローチと比べて本明細書に記載された様々な実装形態及び信頼性の詳細について有利である。
【0043】
図4A及び図4Bは、安静時及び充血時の両方でのMCRを示す(MFR値がFFRと同時に決定される)。安静時の被験体で決定されたMCRは、充血時のFFR値を予測するために使用され得る。さらに、充血時のMCRは、FFRと比較して、充血中の狭窄によって誘発される圧力差を増幅するために使用され得る。一実施形態では、本明細書で開示されるシステム、方法、及びディスプレイのユーザは、処置前に、処置中に、又は処置後にMCR値の所与の表示を経時的に見直して、狭窄の重症度、狭窄の位置を診断し、治療戦略を誘導し、治療効果を評価し、処置後の追加治療の必要性を評価することができる。
【0044】
図5A及び図5Bは、左右の冠状動脈系における血流パターンを示す例示的なプロットである。図5Aでは、時間に対する単位時間当たりの血液量に関する左冠状動脈の血流が示されている。図5Bでは、時間に対する単位時間当たりの血液量に関する右冠状動脈の血流が示されている。本明細書に開示された比及び指標は、1つ又は複数の心周期を記述するのに適しており、2つの血管の流動特性が経時的に異なっていても、左又は右の冠状動脈のいずれかから収集された圧力データと共に使用するのに適している。一実施形態では、図5A及び図5Bのプロットは、本明細書で説明するOCT、IVUS、圧力測定、流量測定、又は他の心臓血管診断/データ収集システムのディスプレイ又はユーザインターフェイスの一部として表示することができる。
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載された診断メトリックは、心臓拡張期等の心周期の段階に特有のものではない。「瞬間的な波を含まない比(instantaneous wave free ratio)」、すなわちiFRは、iFRと、より広く使用されている血流予備量比、すなわちFFRとを相関させようとする方法である。本開示の一実施形態とは対照的に、瞬間的な波を含まない期間を計算するプロセスの一部として、大動脈圧力及び冠動脈圧力が、心臓拡張期の期間中に平均化される。このiFRの方法論は、血管抵抗が心臓拡張期の間に最小限に抑えられるという仮定に基づいており、従って充血性拡張剤を使用せずに安静時の状態での病変評価を可能にする。
【0046】
瞬間的な波を含まない比の使用に関連する課題及び不確実性がある。心臓拡張期の特定のウィンドウにおける比の計算は、圧力波形における特定の値を探索すること等により信号の正確なゲート操作を必要とする。このような比を使用するためには、信号処理及び波形解析について複雑性が増大し、心臓拡張期への依存は、出力を歪める可能性がある。さらに、上述したように、心臓拡張期の間に計算された比の使用は、最大血流が心臓拡張期に生じるという仮定に基づいている。これは、流量が心臓収縮期においてより高くなり得る右冠状動脈系において必ずしも当てはまるわけではないが、右冠動脈脈管構造における心臓拡張期指標を使用することは、潜在的に病変の重症度の誤った評価につながる可能性がある。心臓拡張期は、心周期のサブセットである。結果として、心周期の固定されたサブセットの間に収集されたデータに依存することは、様々な状況下では信頼できない結果の原因となる可能性がある。一実施形態では、本明細書に記載される診断方法及び関連する出力メトリックは、このような心周期の固定されたサブセットを使用して取得されない。一実施形態では、本開示の方法は、1つ又は複数の心周期、又は心臓拡張期及び収縮期を含む心周期のサブセットに基づいて診断メトリックを生成する。
【0047】
血管内プローブデータに基づく比及び指標等の診断メトリックを決定するための非限定的なソフトウェアの特徴及び実施形態。
以下の説明は、本明細書に記載される本開示の方法を実行するのに適した装置ハードウェア及び他の動作要素の概要を提供することを意図している。この説明は、適用可能な環境又は本開示の範囲を限定することを意図するものではない。同様に、ハードウェア及び他のオペレーティング要素は、上記の装置の一部として適切であり得る。本開示は、パーソナルコンピュータ、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラマブル電子装置、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を含む他のシステム構成で実施することができる。本開示は、カテーテル検査室又はカテーテル処置室の異なる部屋等の通信ネットワークを介してリンク付された遠隔処理装置によってタスクが実行される分散型コンピュータ環境でも実施することができる。
【0048】
詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する動作のアルゴリズム及び記号表現に関して提示される。これらのアルゴリズムの記述及び表現は、コンピュータ及びソフトウェアに関連する分野の当業者によって使用され得る。一実施形態では、アルゴリズムは、本明細書では、一般的に、所望の結果をもたらす動作のセルフコンシステント(self-consistent)シーケンスであると考えられる。本明細書に記載される方法ステップ又は他のものとして実行される動作は、物理量の物理的操作を必要とするものである。通常、これらの量は、必ずしも必要ではないが、記憶、転送、結合、変換、比較、及び他の操作が可能な電気信号又は磁気信号の形態を取る。
【0049】
以下の説明から明らかなように、特に明記しない限り、明細書全体に亘って、「処理する」、「計算する」、「相関させる」、「検出する」、「測定する」、「計算する」、「比較する」、「生成する」、「感知する」、「決定する」、又は「表示する」等の用語を利用する議論、或いはブール論理又は他のセットに関連する動作は、コンピュータシステム又は電子装置の動作及びプロセスを指し、この動作及びプロセスは、コンピュータシステム又は電子装置のレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを、電子メモリ又はレジスタ或いは他のそのような情報記憶、送信又は表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに変換する。
【0050】
本開示は、いくつかの実施形態において、本明細書の動作を実行するための装置にも関する。この装置は、必要な目的のために特別に構成することができ、又はコンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成された汎用コンピュータを含むことができる。様々な回路及びその構成要素を使用して、本明細書で説明するデータ収集及び変換及び処理のうちのいくつかを実行することができる。
【0051】
本明細書に提示されるアルゴリズム及びディスプレイは、本質的に、特定のコンピュータ又は他の装置に関連していない。様々な汎用システムを、本明細書の教示に従ってプログラムと共に使用してもよく、又は様々な汎用システムは、必要な方法ステップを実行するためにより特化した装置を構築するために好都合であると判明するかもしれない。様々なこれらのシステムに必要な構造は、以下の説明から明らかになるであろう。さらに、本開示は、特定のプログラミング言語を参照して記載しておらず、様々なプログラミング言語を使用して、様々な実施形態を実装することができる。
【0052】
本開示の実施形態は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又は汎用コンピュータ)と共に使用するためのコンピュータプログラムロジック、プログラマブルロジック装置(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブルロジック装置)と共に使用するためのプログラマブルロジック、ディスクリートコンポーネント、集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))、又はそれらの任意の組合せを含む任意の他の手段を含むが、これに限定されない多くの異なる形態で実現することができる。本開示の典型的な実施形態では、OCTプローブ及びプロセッサベースのシステムを使用して収集されたデータの処理の一部又は全部をコンピュータプログラム命令のセットとして実装することができ、この命令セットは、コンピュータ実行可能な形式に変換され、コンピュータ可読媒体として記憶され、オペレーティングシステムの制御下でマイクロプロセッサによって実行される。こうして、クエリ応答及び入力データは、固定の又は時間変化する診断メトリック、サンプリングされた圧力値に基づく固定の又は時間変化する比を生成する、1つ又は複数の心周期或いは心臓拡張期及び収縮期を含む心拍周期のサブセットに基づくサンプリングを含む血管内データのサンプリングするために適したプロセッサが理解可能な命令に変換され、及び他にそのような比及び所定の圧力データ収集セッションについてどの変化をどの様に決定するかのオプション、並びに上記の他の特徴及び実施形態を表示する。
【0053】
本明細書で先に説明した機能の全部又は一部を実装するコンピュータプログラムロジックは、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、及び様々な中間形式(例えば、アッセンブラ、コンパイラ、リンカ(linker)、又はロケータによって生成される形式)を含む様々な形式で実装することができるが、これらに限定されるものではない。ソースコードは、様々なオペレーティングシステム又はオペレーティング環境で使用するために、様々なプログラミング言語(例えば、オブジェクトコード、アッセンブリ言語、或いはFortran、C、C++、JAVA、又はHTML等のレベルの高い言語)のいずれかで実装された一連のコンピュータプログラム命令を含むことができる。ソースコードは、様々なデータ構造及び通信メッセージを規定し、使用することができる。ソースコードは、(例えば、インタプリタを介して)コンピュータ実行可能形式であってもよく、又はソースコードを(例えば、トランスレータ、アッセンブラ、又はコンパイラを介して)コンピュータ実行可能形式に変換してもよい。
【0054】
コンピュータプログラムは、半導体記憶装置(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュ・プログラマブルRAM等)、磁気記憶媒体(例えば、ディスケット、又は固定ディスク)、光記憶装置(例えば、CD-ROM)、PCカード(例えば、PCMCIAカード)、又は他の記憶装置等の有形の記憶媒体に恒久的に又は一時的にいずれかの形式(例えば、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、又は中間形式)で固定してもよい。コンピュータプログラムは、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、ブルートゥース(登録商標))、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、これに限定されない、様々な通信技術のいずれかを使用してコンピュータに送信可能な信号の形態で固定してもよい。コンピュータプログラムは、印刷文書又は電子文書(例えば、シュリンク・ラップ(shrink-wrapped)ソフトウェア)を伴うリムーバブル記憶媒体の形態で配布される、コンピュータシステムを用いて(例えば、システムROM、又は固定ディスク上に)予めロードされる、又は通信システム(例えば、インターネット又はワールド・ワイド・ウェブ)を介してサーバ又は電子掲示板から配布され得る。
【0055】
本明細書で先に説明した機能の全部又は一部を実装するハードウェアロジック(プログラマブルロジック装置とともに使用するためのプログラマブルロジックを含む)は、従来の手動方法を使用して設計してもよく、又はコンピュータ支援設計(CAD)、ハードウェア記述言語(例えば、VHDL又はAHDL)、又はPLDプログラミング言語(例えば、PALASM、ABEL、又はCUPL)等の様々なツールを使用して電子的に設計、キャプチャ、シミュレート、又は文書化することもできる。
【0056】
プログラマブルロジックは、半導体記憶装置(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュ・プログラマブルRAM)、磁気記憶装置(例えば、ディスケット、又は固定ディスク)、光記憶装置(例えば、CD-ROM)、又は他の記憶装置等の有形の記憶媒体に恒久的に又は一時的に固定してもよい。プログラマブルロジックは、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、ブルートゥース(登録商標))、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、これらに限定されない、様々な通信技術のいずれかを使用してコンピュータに送信可能な信号として固定してもよい。プログラマブルロジックは、印刷文書又は電子文書(例えば、シュリンクラップソフトウェア)を伴うリムーバブル記憶媒体として配布される、コンピュータシステムを用いて(例えば、システムROM、又は固定ディスク上に)予めロードされる、又は通信システム(例えば、インターネット又はワールド・ワイド・ウェブ)を介したサーバ又は電子掲示板から配布され得る。
【0057】
適切な処理モジュールの様々な例について以下でより詳細に説明する。本明細書で使用される場合に、モジュールは、特定のデータ処理タスク又はデータ送信タスクを実行するのに適したソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアを指す。典型的には、好ましい実施形態では、モジュールは、命令の受信、変換、ルーティング、及び処理するのに適したソフトウェアルーチン、プログラム、又は他のメモリ常駐アプリケーションを指し、或いは抵抗変化、電圧変化、電流変化、ガイドワイヤベースのプローブデータ、血管内圧力データ、比、指標、及び関心対象の他の情報等の様々なタイプのデータを指す。
【0058】
本明細書で説明されるコンピュータ及びコンピュータシステムは、データの取得、処理、記憶、及び/又は通信に使用されるソフトウェアアプリケーションを記憶するためのメモリ等の動作可能に関連付けられたコンピュータ可読媒体を含むことができる。このようなメモリは、その動作可能に関連付けられたコンピュータ又はコンピュータシステムに関して、内部、外部、リモート、又はローカルにあってもよいことが理解されよう。
【0059】
メモリは、例えば、ハードディスク、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、DVD(デジタルバーサタイルディスク)、CD(コンパクトディスク)、メモリスティック、フラッシュメモリ、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)、PROM(プログラマブルROM)、EEPROM(拡張消去可能PROM)、及び/又は他の同様な可読媒体等を含むが、これらに限定されない、ソフトウェア又は他の命令を記憶するための手段を含むことができる。
【0060】
一般に、本明細書に記載の本開示の実施形態に関連して適用されるコンピュータ可読記憶媒体は、プログラマブル装置によって実行される命令を記憶することができる任意の記憶媒体を含むことができる。適用可能であれば、本明細書に記載の方法ステップは、コンピュータ可読記憶媒体又はメモリ媒体に記憶された命令として実施又は実行することができる。これらの命令は、C++、C、Java等の様々なプログラミング言語、及び/又は本開示の実施形態による命令を作成するために適用され得る様々な他の種類のソフトウェアプログラミング言語で具体化されたソフトウェアであってもよい。
【0061】
記憶媒体は、非一時的なものであってもよく、又は非一時的な装置を含んでもよい。従って、非一時的な記憶媒体又は非一時的な装置は、装置がその物理的状態を変更することができるが、具体的な物理的形態を有することを意味する有形の装置を含むことができる。こうして、例えば、非一時的とは、この状態の変化にもかかわらず有形のままである装置を指す。
【0062】
本開示の態様、実施形態、特徴、及び実施例は、全ての点で例示的であるとみなすべきであり、本開示を限定することを意図するものではなく、その本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。特許請求の範囲に記載された開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態、修正、及び用途が当業者には明らかであろう。
【0063】
本出願における見出し及び段落の使用は、本開示を限定することを意味するものではなく、各段落は、本開示の任意の態様、実施形態、又は特徴に適用することができる。
【0064】
用途全体に亘って、組成物が特定の構成要素を有する、含む、又は備えると記載される場合に、或いはプロセスが特定のプロセスステップを有する、又は含む、又は備えると記載される場合に、本教示の組成物は、列挙された構成要素から本質的に構成されるか、又は列挙される構成要素から構成される、或いは本発明の教示のプロセスは、列挙されたプロセスステップから本質的に構成される、又は列挙されたプロセスステップから構成されることを理解されたい。
【0065】
その用途において、要素又は構成要素が列挙された要素又は構成要素のリストに含まれる及び/又はそのリストから選択されると言及される場合に、その要素又は構成要素は、列挙された要素又は構成要素のいずれか1つであり得ること、及び列挙した要素又は構成要素の2つ以上から構成されるグループから選択することができることを理解されたい。さらに、本明細書に記載された組成物、装置、又は方法の要素及び/又は特徴は、明示的又は暗黙的によらず、本教示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0066】
「含む、有する(include, includes, including)」、又は「有する、含む(have,
has, having)」という用語の使用は、他に特に断らない限り、一般にオープンエンドで非限定的であると理解すべきである。
【0067】
本明細書での単数形の使用は、特に他に記載のない限り、複数を含む(逆の場合も同じ)。また、文脈が他に明確に指示しない限り、単数形「1つの、その(a, an, the)」は、複数形を含む。加えて、「約」という用語が定量値の前に使用される場合に、本教示は、特に他に記載のない限り、特定の定量値自体も含む。
【0068】
ステップの順序又は特定の動作を行うための順序は、本教示が使用可能である限り、無関係であることを理解すべきである。さらに、2つ以上のステップ又は動作を、同時に行ってもよい。
【0069】
値の範囲又はリストが提供される場合に、その値の範囲又はリストの上限と下限との間に介在する各値は、個別に企図され、各値が本明細書に具体的に列挙されているかのように本開示内に包含される。加えて、所与の範囲の上限と下限との間及びそれらを含むより小さい範囲が、企図され、本開示内に包含される。例示的な値又は範囲のリストは、所与の範囲の上限及び下限の間及びそれらを含む他の値又は範囲の排除ではない。
【0070】
本開示の図面及び説明は、明確化のために他の要素を排除した状態で、本開示の明確な理解のために関連するような要素を示すように簡略化されることを理解すべきである。しかしながら、当業者は、これら及び他の要素が望ましいことを認識するであろう。しかし、このような要素は、当技術分野で知られており、これらの要素は、本開示のより良い理解を促進しないので、このような要素の議論について、本明細書では提供しない。なお、図面は、例示目的のために提示されており、構造図として提示されていないことを理解すべきである。省略した詳細及び変形形態又は代替実施形態は、当業者の知識の範囲内にある。
【0071】
本開示の特定の態様では、単一の構成要素を複数の構成要素で置き換えることができ、複数の構成要素を単一の構成要素で置き換えて、要素又は構造を提供する、又は所定の機能(複数可)を実行することができる。そのような置換が本開示の特定の実施形態を実施するために有効でない場合を除いて、そのような置換は、本開示の範囲内にあるとみなされる。
【0072】
本明細書に提示された実施例は、本開示の潜在的な且つ具体的な実装態様を説明することを意図している。これらの実施例は、主に、当業者に本開示を説明する目的のためのものであることが理解されよう。本開示の精神から逸脱することなく、これらの図又は本明細書に記載された動作に変更があってもよい。例えば、ある場合には、方法ステップ又は操作は、異なる順序で実行又は実施してもよく、又は操作を追加、削除、又は変更してもよい。
【0073】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の内容を実施例として記載しておく。
[実施例1]
血管内データを用いて心周期イベントを追跡する方法であって、当該方法は、
血管の遠位領域から第1の複数の圧力値を取得するために、血管内データ収集プローブをサンプリングレートでサンプリングするステップと、
血管内データ処理システムにおいて、前記血管の近位領域から取得した第2の複数の圧力値を受け取るステップと、
第1の複数の圧力値及び第2の複数の圧力値から複数の遠位側圧力対近位側圧力(Pd/Pa)比を決定するステップと、
前記複数のPd/Pa比から最小のPd/Pa比を決定するステップと、
前記最小のPd/Pa比(MCR)を表示するステップと、を含む、
方法。
[実施例2]
前記表示されたMCRは、第1の心拍周期についての比であり、心拍周期毎に複数のMCRを決定するステップをさらに含む、実施例1に記載の方法。
[実施例3]
圧力ワイヤが前記血管を介して引き戻されるときに、血管造影シネ(cine)及び前記複数のMCRを経時的に表示するステップをさらに含む、実施例2に記載の方法。
[実施例4]
複数の後続の心拍周期について前記複数のステップを繰り返して複数のMCRを決定するステップと、前記複数のMCRを心周期毎に経時的にプロットするステップとをさらに含む、実施例1に記載の方法。
[実施例5]
前記サンプリングレートは、約25Hz~約2kHzの範囲である、実施例1に記載の方法。
[実施例6]
心周期毎に1つ又は複数の最小のPd/Pa比を決定する前に、複数のPd/Pa比値を使用して生成された波形をフィルタリングするステップをさらに含む、実施例1に記載の方法。
[実施例7]
前記MCRは、狭窄診断メトリックであり、期間(T)に亘ってMCR値を監視するステップと、前記MCR値の変化を前記血管内の狭窄の指標として特定するステップとをさらに含む、実施例1に記載の方法。
[実施例8]
時定数(TC)を有するフィルタを使用して、複数のPd/Pa比値を用いて生成された波形をフィルタリングするステップと、前記時定数を心周期の持続時間の一部に対応するように設定するステップとをさらに含む、実施例1に記載の方法。
[実施例9]
前記TCは、心拍周期の長さの約1%~約50%の範囲である、実施例8に記載の方法。
[実施例10]
第1の複数の圧力値及び第2の複数の圧力値は、心臓拡張期及び収縮期を含む1つ又は複数の心周期の間に取得される、実施例1に記載の方法。
[実施例11]
第1のパネル及び第2のパネルを含むユーザインターフェイスを表示するステップをさらに含み、第1のパネルは、MCR値のサイクル毎のプロットを含み、第2のパネルは、FFR値、Pd値、Pa値、時間値、及びMCR値の1つ又は複数を含む、実施例1に記載の方法。
[実施例12]
心周期イベント及び1つ又は複数の診断メトリックを追跡する方法であって、当該方法は、
血管領域の遠位側の位置で測定された第1の圧力値(Pd1)を受け取るステップと、
血管領域の近位側の位置で測定された第2の圧力値(Pa1)を受け取るステップと、
第1の圧力値と第2の圧力値との第1の比(R1)を決定するステップであって、該R1は第1の時間値に対応する、決定するステップと、
血管領域の遠位側の位置で測定された第3の圧力値(Pd2)を受け取るステップと、
血管領域の近位側の位置で測定された第4の圧力値(Pa2)を受け取るステップと、
第3の圧力値と第4の圧力値との第2の比(R2)を決定するステップであって、該R2は第2の時間値に対応する、決定するステップと、
R1がR2より大きい場合に、R1又は該R1のプロットを時間に対して表示するステップ、又はR2がR1より大きい場合に、R2又は該R2のプロットを時間に対して表示するステップと、を含む、
方法。
[実施例13]
R1がR2より大きい場合に、第1の時間値は、心周期における圧力低下の発生に対応する、実施例12に記載の方法。
[実施例14]
前記圧力低下は、極大値である、実施例13に記載の方法。
[実施例15]
前記圧力低下は、複数の心周期について最大のものである、実施例13に記載の方法。
[実施例16]
第1のパネル及び第2のパネルを含むユーザインターフェイスを表示するステップを含み、第1のパネルは、MCR値のサイクル毎のプロットを含み、第2のパネルは、FFR値、Pd値、Pa値、時間値、及びMCR値の1つ又は複数を含み、前記MCR値は、R1又はR2である、実施例13に記載の方法。
[実施例17]
血管内データ解析システムであって、当該血管内データ解析システムは、
血管内プローブからデータを受け取るインターフェイスを含む血管内データ収集システムと、
血管内データ収集システムと電気通信する表示システムと、
該表示システム上にユーザインターフェイスを出力する命令を含む1つ又は複数のメモリ記憶装置であって、前記ユーザインターフェイスは、最小サイクル比又は該最小サイクル比のプロットを表示するための1つ又は複数の領域を含む、メモリ記憶装置と、
前記血管内データ収集システム、前記表示システム、及び1つ又は複数のメモリ記憶装置と電気通信するプロセッサと、を有しており、
該プロセッサは、
心周期毎に複数の近位側圧力値(Pa)をサンプリングし、
心周期毎に複数の遠位側圧力値(Pd)をサンプリングし、
サンプリングされたPa及びサンプリングされたPdのうちの1つ又は複数についてPd/Pa比のセットを決定し、
該セット内の最小比値を特定する、ようにプログラムされる、
血管内データ解析システム。
[実施例18]
時定数(TC)及び波形入力を含むフィルタをさらに有しており、前記フィルタはノイズフィルタであり、前記時定数は心周期の持続時間の一部であり、前記フィルタは前記プロセッサと電気通信する、実施例17に記載の血管内データ解析システム。
[実施例19]
前記血管内データ収集システムは、血管内圧力感知システム、光コヒーレンス断層撮影システム、及び血管内超音波システムから構成されるグループから選択される、実施例18に記載の血管内データ解析システム。
[実施例20]
前記プロセッサは、圧力感知システムプロセッサ、OCTシステムプロセッサ、マルチモーダル血管内システムプロセッサ、及びIVUSシステムプロセッサから構成されるグループから選択される、実施例17に記載の血管内データ解析システム。




図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B