(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】匂い物質として有用なアセタート化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/14 20060101AFI20221219BHJP
C07C 31/137 20060101ALI20221219BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07C69/14 CSP
C07C31/137
C11B9/00 U
(21)【出願番号】P 2021526223
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2018081156
(87)【国際公開番号】W WO2020098927
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】ブリンゲン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】エルウッド,サイモン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/163023(WO,A1)
【文献】特開昭55-004374(JP,A)
【文献】特表2000-512663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その立体異性体のいずれか1つの形態の式(I)
【化1】
式中、
R
1およびR
2はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルまたは二重結合を形成するか、またはR
1およびR
2は水素であり;および
R
3およびR
4はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルを形成し、および点線が炭素-炭素結合と一緒に単結合を形成するか;または
R
3およびR
4は、水素であり、および点線の1つが炭素-炭素結合と一緒に二重結合を形成する、
で表される化合
物。
【請求項2】
化合物が、その立体異性体のいずれか1つの形態
の(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
a)請求項1において定義される少なくとも1つの式(I)で表される化合物、および
b)その立体異性体のいずれか1つの形態の[1-メチル-2-[(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル)メチル]シクロプロピル]メタノールまたはそれらの混合物、
を含む、またはそれらからなる、フレグランス組成物。
【請求項5】
請求項1に定義される式(I)で表される化合物、または請求項4に定義されるフレグランス組成物、および消費者製品ベースを含む消費者製品。
【請求項6】
式(I)
【化2】
式中、
R
1およびR
2はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルまたは二重結合を形成するか、またはR
1およびR
2は水素であり;および
R
3およびR
4はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルまたは二重結合を形成し、および点線が炭素-炭素結合と一緒に単結合を形成するか;または
R
3およびR
4は、水素であり、および点線の1つが炭素-炭素結合と一緒に二重結合を形成する、
で表される化合物のフレグランスとしての使用。
【請求項7】
嗅覚許容量の、請求項1に定義される式(I)で表される化合物または請求項4に定義されるフレグランス組成物を添加することによって、消費者製品ベースを改善、増強または改変する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッディ、クリーミー、サンダルウッド嗅覚特性を持つ新しい匂い物質に関する。本発明はさらに、それらの産生方法、およびそれらを含有するフレグランス組成物を指す。
【背景技術】
【0002】
フレグランスおよびフレーバー産業において、パヒューマーおよびフレーバリストは継続的に新しい化合物を探している。
【発明の概要】
【0003】
驚くべきことに、今、ウッディ、クリーミー、サンダルウッドの匂いプロファイルを持つ新しいクラスのアセタートが見出された。
【0004】
第1の態様において、式(I)
【化1】
式中、
R
1およびR
2はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルまたは二重結合を形成するか、またはR
1およびR
2は水素であり;および
R
3およびR
4はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルまたは二重結合を形成し、および点線が炭素-炭素結合と一緒に単結合を形成するか;または
R
3およびR
4は水素であり、および点線が炭素-炭素結合と一緒に二重結合を形成する、
で表される化合物が提供される。
【0005】
式(I)で表される化合物は、1以上のキラル中心を含み、それ自体、立体異性体の混合物として存在してもよく、またはそれらは異性体的に純粋な形態として分割されてもよい。立体異性体を分割すると、それらの化合物の製造および精製が複雑になるため、単に経済的な理由から、化合物を、それらの立体異性体の混合物として使用することが好ましい。しかしながら、個々の立体異性体を調製することが所望される場合、これは、当技術分野において知られている方法、例として、分取HPLCおよびGC、結晶化または立体選択的な合成に従って達成し得る。
【0006】
式(I)で表される化合物の特定の例として、1つ、非限定的な例として、ソフトフルーティーフローラルな面(バイオレット/オリス方向)を有するソフトな、ウッディ、クリーミー、サンダルウッドの特徴を持つ(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートを挙げることができる。この化合物の4つのジアステレオ異性体はすべてその全体的な匂い特徴に寄与するが、ジアステレオマーの1つだけが主な匂いベクトルを構成することが見出された(rel-(1S、2S)-(1-メチル-2-(((1S、3R、5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)-シクロプロピル)メタノール))。
【0007】
さらに、非限定的な例は、
(E)-2-メチル-4-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)ブタ-2-エン-1-イルアセタート;
(E)-2-メチル-4-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)ブタ-3-エン-1-イルアセタート,
(E)-2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペンチル)ブタ-3-エン-1-イルアセタート;
(E)-2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペンチル)ブタ-2-エン-1-イルアセタート;
(E)-2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ブタ-3-エン-1-イルアセタート;
(E)-2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ブタ-2-エン-1-イルアセタート;
(1-メチル-2-((2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート;および
(1-メチル-2-((2,2,3-トリメチルシクロペンチル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート
から選択される式(I)で表される化合物である。
【0008】
式(I)で表される化合物は、単独で、立体異性体混合物として、または広範な天然産物、ならびに、現在利用可能な合成分子、たとえば、精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大員環化合物および複素環化合物など、から選択される匂い物質分子と組み合わせて、および/またはフレグランス組成物中の匂い物質と併せて従来使用される1以上の成分または賦形剤、例えば、担体材料、および当技術分野で一般的に使用される他の助剤と混和させて使用してもよい。
本明細書に使用されるとき、「担体材料」は、匂い物質の観点から実際的に中性である材料、すなわち、匂い物質の官能特性を有意に変化させない材料を意味する。
【0009】
用語「助剤」は、前記組成物の嗅覚性能に特に関係しない理由のためにフレグランス組成物に用いられ得る成分を指す。例えば、助剤は、フレグランス成分(単数)または成分(複数)を処理するための補助として作用する成分、または前記成分(単数または複数)を含有する組成物であり得、またはそれは、フレグランス成分またはそれを含む組成物の取り扱いまたは保管を改善し得る。それはまた、色または質感を与えるなどの追加の利益を提供する成分でもよい。それはまた、フレグランス組成物に含有される1以上の成分に耐光性または化学安定性を与える成分であってもよい。同じものを含むフレグランス組成物において一般的に使用されるアジュバントの性質およびタイプの詳細な記載は網羅的ではないが、前記成分が当業者によく知られていることは言及しておくべきことである。
【0010】
本明細書に使用されるとき、「フレグランス組成物」は、式(I)で表される化合物および基材、例として、匂い物質と併せて従来から使用されている希釈剤、たとえば、フタル酸ジエチル(DEP)、ジプロピレングリコール(DPG)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ペンタン-1,2-ジオール、クエン酸トリエチル(TEC)およびアルコール(例として、エタノール)など、を含む任意の組成物を意味する。任意に、組成物は抗酸化剤アジュバントを含んでもよい。前記抗酸化剤は、Tinogard(登録商標)TT(BASF)、Tinogard(登録商標)Q(BASF)、トコフェロール(その異性体を含む、CAS 59-02-9;364-49-8;18920-62-2;121854-78-2)、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(BHT、CAS 128-37-0)および関連するフェノール、ヒドロキノン(CAS121-31-9)から選択してもよい。
【0011】
以下のリストは、式(I)で表される化合物と組み合わせることができる既知の匂い物質分子の例を含む:
- 精油および抽出物、例として、海狸香、コスタスルート油(costus root oil)、オークモスアブソリュート、ゼラニウム油、ツリーモスアブソリュート、バジル油、果実油、たとえばベルガモット油およびマンダリン油など、ミルテ油、パルマローザ油、パッチュリ油、プチグレン油、ジャスミン油、バラ油、サンダルウッド油、アブサン油、ラベンダー油および/またはイランイラン油;
【0012】
- アルコール、例として、桂皮アルコール((E)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オール);cis-3-ヘキセノール;((Z)-ヘキサ-3-エン-1-オール);シトロネロール(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);ジヒドロミルセノール(2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール););EbanolTM((E)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタ-4-エン-2-オール);オイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール);エチルリナロール((E)-3,7-ジメチルノナ-1,6-ジエン-3-オール);ファルネソール((2E,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール);ゲラニオール((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール);Super MuguetTM((E)-6-エチル-3-メチルオクタ-6-エン-1-オール);リナロール(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール);メントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール);Nerol(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール);フェニルエチルアルコール(2-フェニルエタノール);RhodinolTM(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);SandaloreTM(3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタン-2-オール);テルピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロパン-2-オール);またはTimberolTM(1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール);2,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、および/または[1-メチル-2(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル]-メタノール;
【0013】
- アルデヒドおよびケトン、例としてアニスアルデヒド(4-メトキシベンズアルデヒド);アルファアミル桂皮アルデヒド(2-ベンジリデンヘプタナール);GeorgywoodTM(1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);ヒドロキシシトロネラール(7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール);Iso E Super(登録商標)(1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);Isoraldeine(登録商標)((E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン);Hedione(登録商標)(メチル3-オキソ-2-ペンチルシクロペンタンアセタート);3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール;マルトール;メチルセドリルケトン;メチルイオノン;ベルベノン;および/またはバニリン;
【0014】
- エーテルおよびアセタール、例として、Ambrox(登録商標)(3a,6,6,9a-テトラメチル-2,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[e][1]ベンゾフラン);ゲラニルメチルエーテル((2E)-1-メトキシ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン);ローズオキシド(4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン);および/またはSpirambrene(登録商標)(2’,2’,3,7,7-ペンタメチルスピロ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2,5’-[1,3]ジオキサン]);
- エステルおよびラクトン、例として、ベンジルアセタート;セドリルアセタート((1S,6R,8aR)-1,4,4,6-テトラメチルオクタヒドロ-1H-5,8a-メタノアズレン-6-イルアセタート);γ-デカラクトン(6-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン);Helvetolide(登録商標)(2-(1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エトキシ)-2-メチルプロピルプロピオナート);γ-ウンデカラクトン(5-へプチルオキソラン-2-オン);および/またはベチベリルアセタート((4,8-ジメチル-2-プロパン-2-イリデン-3,3a,4,5,6,8a-ヘキサヒドロ-1H-アズレン-6-イル)アセタート);
【0015】
- 大員環化合物、例として、アンブレットリド((Z)-オキサシクロへプタデカ-10-エン-2-オン);ブラシル酸エチレン(1,4-ジオキサシクロへプタデカン-5,17-ジオン);および/またはExaltolide(登録商標)(16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン);および
- 複素環化合物、例として、イソブチルキノリン(2-イソブチルキノリン)。
【0016】
1つの具体的な態様において、式(I)で表される化合物は、天然のウッディ特徴を強化するために、以下の他の既知のウッディ匂い物質と組み合わせてもよい、たとえば、JavanolTM(1-メチル-2-[[(1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル]メチル]シクロプロパンメタノール)、EbanolTM((E)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-シクロペンテン-2-オール)、RadjanolTM(2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)、PolysantolTM(3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール)、OsyrolTM(3,7-ジメチル-7-メトキシ-2-オクタノール)、SandaloreTM(3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタン-2-オール)、SandelaTM(3-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]へプタ-2-イル)シクロヘキサン-1-オール)、PolysantTM(3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール)等。
【0017】
ある態様において、式(I)で表される化合物は、0.05:99.95~99.95:0.05の範囲(例として、0.5:99.5~5:95の範囲(式(I)で表される化合物またはその混合物:ウッディ匂い物質(単数または複数))で他のウッディ匂い物質と組み合わせてもよい。
1つの特具体的な態様において、式(I)で表される化合物は(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタートであり、および他のウッディ匂い物質が(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)-シクロプロピル)メタノールであり、これは0.05:99.95~99.95:0.05(例として、0.1:99.5~5:95(0.2:99.8;0.3:99.7、0.4:99.6を包含する)の範囲で組み合わせてもよい。
【0018】
別の具体的な態様において、式(I)で表される化合物は、(1-メチル-2-(1S,3R,5R)-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタートであり、および他のウッディ匂い物質が(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)-シクロプロピル)メタノールであり、これは、0.05:99.95~99.95:0.05(例えば、0.1:99.5~5:95の範囲(0.2:99.8;0.3:99.7、0.4:99.6;0.5:99.5;0.6:99.4;0.7:99.3、0.8:99.2、0.9:99.1、1:99、1.5:98.5を包含する)の範囲で組み合わせてもよい。
【0019】
式(I)で表される化合物は、当業者に周知の条件下で、それぞれのアルコールのアセチル化によって調製し得る。それぞれのアルコールの調製は、例えば、EP 0 801 049に記載されている。
【0020】
任意に、R1とR2はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルを形成し、および/またはR3とR4はそれらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピルを形成し、シクロプロパン化およびアセチル化の両方が、亜鉛、および、例として、塩化アセチルの存在下で、シングルポットプロセスで一緒に行われてもよい。アルコールとアセタートの比率は、使用する試薬の量によって、および粗産物の蒸留画分の適切な選択によって制御される。
【0021】
次に、本発明を、以下の非限定的な例を参照してさらに説明する。これらの例は、例示のみを目的としており、当業者によってバリエーションおよび改変がなされ得ることが理解される。
【0022】
例1 (1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート
還流冷却器を備えた反応器に、1-メチル-2-[[(1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル]メチル]シクロプロパンメタノール)(ジアステレオマーの混合物;異性体1:40.9%;異性体2:53.4%;50g;純度:94.3%;212mmol)、ピリジン(20g;253mmol)、およびトルエン(200g)を窒素下でチャージした。0℃で撹拌した混合物に、塩化アセチル(18g;229mmol)を15分以内に滴加した。結果として生じる反応混合物を20℃まで上昇させ、さらに2時間撹拌した。水を添加した。有機層を分離し、洗浄し(水)、ロータリーエバポレーター蒸留(60℃;10mbar)により濃縮して、90%の(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートを含有する帯黄色の油58gを得た。
【0023】
0.08Torr下で15cmのVigreuxカラムを使用した蒸留によるさらなる精製により、48gの(純度:93.9%;異性体1:41.4%;異性体2:52.5%;170mmol)(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートがもたらされた。8.7gの拒否した画分(純度82%)からより多くの生成物を回収できた。(1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ(3.1.0)-ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル)メタノールに対して、(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)-シクロプロピル)メチルアセタートのモル収率は、拒否した画分を考慮せずに約80%を示した。2回目の蒸留後に得られた48gをSulzerカラム(20cm)を使用してさらに蒸留した後、40gの98%(異性体1:43.2%;異性体2:54.8%)の嗅覚純粋生成物((1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート)が得られた。
匂い記載:ソフトフルーティーフローラル面(バイオレット/オリス方向)を有する、ソフトな、ウッディ、クリーミー、サンダルウッド特徴
【0024】
異性体1:(rel-(1R,2R)-(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート):1H NMR (C6D6,600 MHz): 3.83 (d, J = 11.3, 1H), 3.77 (d, J = 10.9, 1H), 1.95 (dd, J = 12.4, 6.4, 1H), 1.73 (s, 3H), 1.37 (td, J = 11.7, 4.1, 1H), 1.22-1.16 (m, 2H), 1.04 (s, 3H), 1.03 (s, 3H), 1.01-0.93 (m, 2H), 0.92 (s, 3H), 0.74 (s, 3H), 0.55-0.47 (m, 3H), 0.08 (dd, J = 7.5, 4.5, 1H), -0.13 (br t, J = 4.5, 1H).
13C NMR (C6D6,150 MHz): 170.0, 73.2, 45.1, 41.1, 32.4, 31.2, 29.5, 22.8, 22.75, 21.4, 20.3, 19.5, 18.7, 17.4, 17.3, 15.3, 14.0
【0025】
異性体2:(rel-(1S,2S)-(1-メチル-2-(((1S,3R,5R)-1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)メチルアセタート):1H NMR (C6D6,600 MHz): 3.84 (d, J = 11.3, 1H), 3.79 (d, J = 10.9, 1H), 1.88 (dd, J = 12.1, 6.8, 1H), 1.72 (s, 3H), 1.37 (td, J = 11.7, 4.1, 1H), 1.22-1.13 (m, 2H), 1.09-1.06 (m, 1H), 1.04 (s, 3H),
1.04 (s, 3H), 1.00-0.97 (m, 1H), 0.93 (s, 3H), 0.74 (s, 3H), 0.54-0.47 (m, 3H), 0.06 (dd, J = 7.9, 4.9, 1H), -0.18 (br t, J = 4.5, 1H).
13C NMR (C6D6,150 MHz): 170.0, 73.2, 44.8, 41.1, 32.2, 31.3, 28.8, 22.8, 22.6, 21.9, 20.2, 19.6, 19.6, 17.2, 16.8, 15.9, 13.9
【0026】
例2: ウッディ、オリエンタルフレグランスアコード
【表1】
【0027】
上記のアコードの4部のDPGを(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタート(すなわち、式(I)で表される化合物)によって置き換えることにより、フレッシュおよびドライダウンの両方でアコードをソフトにし、とりわけドライダウンノートにソフトクリーミーオリスバイオレットをもたらす。
【0028】
上記のアコードの20部のDPGを(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メチルアセタートと、(1-メチル-2-((1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メチル)シクロプロピル)-メタノールとの混合物(2:98の比率)で置き換えることにより、アルコールは、アセタートとの組み合わせによって、より自然に感じる一般的なサンダルウッドの特徴を有し、サンダルウッドの精油の効果および特徴に近く、ソフトなフルーティーフローラルオリスファセットを有する、性能と全体的なサンダルウッドを提供する。