(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】気中回路遮断器の変流器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/30 20060101AFI20221219BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01F38/30
H01H33/59 P
(21)【出願番号】P 2021531847
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 KR2019012042
(87)【国際公開番号】W WO2020138654
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0169803
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ハン-ベク
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01551039(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第102800471(CN,A)
【文献】実開昭57-146321(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0086131(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0314083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0229236(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101685725(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/30
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中回路遮断器の主回路が貫通する
貫通孔を有する磁性コア
であって、第1分路と第2分路を含み、前記貫通孔を通過する磁束が誘導される磁性コア;
前記磁性コアに隣接して配置され、前記主回路を流れる電流によって二次電流が誘導され、継電器へ二次電流を供給する二次コイル
であって、前記第1分路に結合された二次コイル;及び、
前記
第2分路に結合して、前記二次コイルに誘導される
二次電流を補正する磁束補償部材を含
み、
より大きい断面積を有する前記第2分路からの磁束が前記第1分路からの磁束よりも大きい変流器。
【請求項2】
前記磁束補償部材は、前記
第2分路に結合する
導体であり、前記第1分路で発生した前記磁束を補償する、
請求項1に記載の変流器。
【請求項3】
前記磁束補償部材は、予め定めた厚さを有する板状部材で形成される、
請求項1に記載の変流器。
【請求項4】
前記磁束補償部材は、予め定めた厚さを有する板状部材が複数個重なって、前記磁性コアに結合する、
請求項3に記載の変流器。
【請求項5】
前記二次コイルは、前記
第2分路と予め定めた間隔だけ離隔した第1分路に結合し、
前記第2分路からの磁束が前記第1分路からの磁束よりも大きく、前記第1分路から誘導される磁束の強さは相対的に低減されており、
該第1分路からの該低減された磁束は、前記二次コイルにおいて誘導された電流の強さを低減する、
請求項1に記載の変流器。
【請求項6】
前記磁束補償部材は
、予め定めた厚さからなる板状部材
として具現化される、
請求項5に記載の変流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気中回路遮断器の変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、気中回路遮断器は、発電所や変電所などの配電盤に使用される。
【0003】
気中回路遮断器は、配電盤における過電流、短絡及び地絡のような異常電流が発生すると、電流を遮断する役割を果たす。異常電流の発生時、電流を遮断するために、気中回路遮断器には継電器が設置される。継電器は、変流器から生成された二次電流を供給されて作動する。
【0004】
変流器は、交流電流の流れる主回路が貫通する磁性コアを含み、磁性コアには一次電流が誘導される。磁性コアに隣接した位置に、二次コイルが配置され、二次コイルには主回路に流れる電流と比例した大きさの二次電流が誘導され、二次コイルを介して誘導された二次電流は、継電器へ供給される。
【0005】
このとき、主回路を流れる電流が低電流領域帯である場合は、継電器に供給される電流の大きさに問題が発生しないが、主回路を流れる電流が、定格電流領域帯で長時間通電するようになれば、二次電流の大きさが大きくなって、変流器が加熱する問題点が発生する。
【0006】
かかる問題点を解決するためには、二次コイルに隣接して流れる磁束を補償して、低電流領域帯では、二次電流が十分な大きさに誘導されるようにし、正常電流領域帯では、二次コイルの磁束を減少させて、二次電流を安定させなければならない。
【0007】
したがって、このような問題点を解決するための方法が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するために案出された発明であって、変流器を介して誘導される二次電流を継電器に安定的に供給するためである。また、磁性コアの発熱を減少させて、火災のリスクを減少させながらも、小さな体積を有する変流器を提供するためである。
【0009】
本発明の課題は、以上に言及した課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、下記の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の変流器は、磁性コア、二次コイル及び磁束補償部材を含んでいてもよい。磁性コアは、気中回路遮断器の主回路が貫通する。そして、二次コイルは、磁性コアに隣接して配置され、主回路を流れる電流によって二次電流が誘導される。また、二次コイルは、継電器へ誘導された二次電流を供給する。磁束補償部材は、磁性コアに結合して、二次コイルに誘導される電流を補正することができる。
【0011】
本発明の一実施形態における磁束補償部材は、磁性コアの両面に結合し得る。
【0012】
本発明の一実施形態における磁束補償部材は、予め定めた厚さを有する板状部材で形成することができる。
【0013】
本発明の一実施形態における磁束補償部材は、予め定めた厚さを有する板状部材が複数個重なって、磁性コアに結合し得る。
【0014】
本発明の一実施形態における磁性コアは、主回路が貫通して通る貫通孔を含み、二次コイルは、磁性コアと予め定めた間隔だけ離隔した第2分路に結合し、磁束補償部材は、主回路及び二次コイルの間の最短距離を繋ぐ仮想連結線が磁性コアを通る領域に接し得る。
【0015】
本発明の一実施形態における磁束補償部材は、主回路及び二次コイルの間の最短距離を繋ぐ仮想連結線が磁性コアと重複する区間の長さを高さとし、予め定めた厚さを有する板状部材である。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決するための本発明の変流器は、気中回路遮断器の主回路が低電流領域帯である場合、二次コイルの磁束を増加させて、継電器へ十分な大きさの二次電流を供給し、主回路が正常電流領域帯である場合は、二次コイルの磁束を減少させて、二次電流を安定させる効果がある。また、主回路が正常電流領域帯である場合、二次電流が安定するため、発熱が減少して、火災のリスクが減る効果がある。
【0017】
また、磁性コアは、相対的に小さな体積を有するようになって、空間の活用性が高くなり、震動による騷音や破損のリスクも減少する効果がある。
【0018】
本発明の効果は、以上に言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は、請求範囲の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】気中回路遮断器の変流器及び継電器が異常電流の発生時、電流を遮断する過程を概略的に示した図面。
【
図3】本発明の一実施形態による変流器の斜視図及び側面図。
【
図4】本発明の一実施形態による変流器の分解斜視図。
【
図5】本発明の一実施形態による変流器における磁性コアの斜視図。
【
図6】本発明の一実施形態による変流器における磁束補償部材の結合位置及び大きさを示した斜視図。
【
図7】本発明の一実施形態による変流器がハウジングに結合した状態を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明の説明において、本発明に係る公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には詳細な説明を省略する。
【0021】
以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施形態を詳説する。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示す。
【0022】
以下では、本発明の幾つの実施形態による変流器を説明する。
【0023】
図1は、気中回路遮断器を示したものであり、
図2は、気中回路遮断器の変流器及び継電器20が異常電流の発生時、電流を遮断する過程を概略的に示したものである。
【0024】
本発明の一実施形態による変流器は、気中回路遮断器に構成することができる。
【0025】
図2に示したように、気中回路遮断器に印加された電流は、主回路に沿って流れ、主回路に流れる電流は、本発明による変流器を介して二次電流を誘導する。誘導された二次電流は、継電器20へ供給されて、継電器20を駆動させるようになる。
【0026】
気中回路遮断器の主回路に過電流、短絡及び地絡のような異常電流が発生する場合、継電器20は、気中回路遮断器の電流を直ちに遮断し、継電器20を駆動するための電流は、本発明による変流器100を介して誘導された二次電流が使用される。
【0027】
図2に示したように、本発明による変流器100は、電気変流器(Power CT)と信号変流器(Signal CT)とを含む。
【0028】
電気変流器は、磁性体からなり、二次電流が誘導される。電気変流器から誘導された二次電流は、継電器20へ供給される。
【0029】
そして、ロゴスキーコイルからなる信号変流器は、継電器20に電流の信号の大きさを伝達する。
【0030】
継電器20は、電気変流器から供給される電流で作動し、信号変流器を介して入力される電流の信号の大きさによって気中回路遮断器を制御する。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態による変流器の斜視図及び側面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による変流器の分解斜視図で、
図5は、本発明の一実施形態による変流器における磁性コアの斜視図である。
【0032】
図3及び
図4に示したように、本発明の一実施形態による変流器100は、磁性コア110、二次コイル120及び磁束補償部材130を含む。
【0033】
磁性コア110は、気中回路遮断器10の主回路が貫通する。そして、二次コイル120は、磁性コア110に隣接して配置され、主回路を流れる電流によって二次電流が二次コイル120に誘導される。
【0034】
磁束補償部材130は、磁性コア110に結合する。そして、二次コイル120に誘導される電流を補正する。
【0035】
以下では、上記した各々の構成をさらに詳説する。
【0036】
磁性コア110は、磁性を有する材質で形成される。本発明の一実施形態では、予め定めた厚さを有する板状部材であって、中心部には、気中回路遮断器の主回路が貫通して通る貫通孔116を含む。
【0037】
貫通孔116は、主回路に接しないほどの大きさで設けられ、貫通孔116の中心点を、主回路が、貫通孔116の形成する仮想平面と垂直となるように通る。また、貫通孔116は、円形に形成することができる。
【0038】
磁性コア110は、貫通孔116を通る主回路から磁束が誘導される第1分路112及び第2分路114を含む。
【0039】
主回路へ電流が印加されると、主回路の周辺に配置された磁性体には磁束が誘導される。よって、磁性コア110は、主回路が通る貫通孔116の一側において、磁性コア110をなす磁性体が少なくとも二つの経路を有するように分けられる。
【0040】
このとき、両経路のうち、貫通孔116と相対的に遠い経路が第1分路112であり、両経路のうち、貫通孔116と相対的に近く位置した経路が第2分路114である。
【0041】
図5に示したように、主回路に電流が印加されると、主回路の周りに沿って磁場が形成される。主回路の周りに形成された磁場は、磁性コア110に沿って一方向に磁束を形成する。
【0042】
このとき、第1分路112及び第2分路114は、主回路を介して誘導される磁束がそれぞれaとbに分けられて形成される。磁性コア110における主回路が通る貫通孔116を中心に、磁性体が一つの経路を有する区間は、図面上、cで表された一つの磁束が形成される。
【0043】
二次コイル120は、第1分路112の長さ方向に沿って長く結合する。二次コイル120は、本発明が適用される実施形態によってその巻線数が決定されうる。
【0044】
したがって、二次コイル120には、主回路を介して流れる電流によって誘導される二次電流が流れるようになり、二次電流は、第1分路112に誘導された磁束の影響を受ける。具体的には、二次コイル120に誘導される二次電流は、第1分路112に形成された磁束の大きさと比例関係にある大きさを有する。
【0045】
二次コイル120を流れる二次電流は、上述した継電器20へ供給され、継電器20は、二次電流を利用して駆動するようになる。
【0046】
気中回路遮断器の主回路に印加される電流は、常に一定した領域帯に維持されない。
【0047】
低電流領域帯又は定格電流領域帯(大電流領域帯)の電流は、主回路に沿って流れうる。
【0048】
特に、定格電流領域帯の電流が主回路に沿って流れる場合は、二次コイル120に誘導される二次電流の大きさが大きくなり得、二次電流の大きさが大きくなるにつれて、過熱や過熱による発火が起こり得る。
【0049】
磁束補償部材130は、第2分路114に結合する導電体であって、第1分路112に形成される磁束を補償して、終局的に、安定した二次電流が継電器に供給されるようにする。
【0050】
磁束補償部材130は、予め定めた厚さを有する板状部材であってもよい。本発明の一実施形態では、長方形の板状部材で実施することができる。
【0051】
図4に示したように、磁束補償部材130は、複数個の薄い板状部材が、広い面が重なるように重なって、磁性コア110に結合する。
【0052】
このとき、磁束補償部材130は、磁性コア110の第2分路114に結合し、磁性コア110の両面に相互対称するように配置されてもよい。
【0053】
磁束補償部材130は、主回路が定格電流領域帯に属する場合、第1分路112の磁束を減少させる作用を行うことになる。
【0054】
具体的には、磁束は、磁場の強さと磁場が通る面積の倍からその大きさが求められる。よって、磁束補償部材130が結合した第2分路114は、相対的に第1分路112が有する磁性体の断面積よりも大きな断面積を有する。よって、同じ条件下で、より広い断面積を有する第2分路114は、第1分路112と比較するとき、誘導される磁束がさらに大きくなる。相対的に、第1分路112に誘導される磁束の大きさは小さくなる。
【0055】
減少した第1分路112の磁束は、二次コイル120に誘導される電流の大きさを減少させる。これによって、本発明による変流器100は、過熱するか、火災のリスクにさらすことがなくなる。
【0056】
磁束補償部材130は、第2分路114の一部区間にのみ配置されるものではなく、第2分路114の全区間における磁性コア110と面が接して結合する。
【0057】
図6は、本発明の一実施形態による変流器における磁束補償部材の結合位置及び大きさを示した斜視図である。
【0058】
図6に示したように、主回路と二次コイルを最短距離で繋ぐ仮想直線lを仮定すれば、仮想直線lが通る経路と、磁性コア110が重複する位置は、hとなる。よって、仮想直線lが通る経路と、磁性コア110が重複する区間であるh領域にわたって磁束補償部材130は、磁性コア110と面が接するように結合する。
【0059】
このような限定は、磁性コア110が有する大きさ内で、主回路と二次コイル120の間の最大限に広い位置に磁束補償部材130を配置するためである。
【0060】
また、磁束補償部材130は、二次コイル120の長さと対応するwだけの長さに形成することができる。
【0061】
磁束補償部材130が広い面積で磁性コア110に配置されると、積層して重なる磁束補償部材130の板状部材の数を減らすことができ、これは、磁束補償部材130が磁性コア110から大いに突出しないようにする効果を有する。
【0062】
また、本発明の一実施形態におけるhを、磁束補償部材130の高さと定義し、w方向の幅を、磁束補償部材130の幅と定義する。そして、磁束補償部材130が磁性コア110に結合した状態で、主回路が流れる方向の長さは、磁束補償部材130の厚さと定義する。
【0063】
したがって、磁束補償部材130は、主回路及び二次コイルの間の最短距離を繋ぐ仮想連結線lが磁性コア110と重複する区間の長さhを高さとし、予め定めた厚さを有する板状部材で具現される。
【0064】
図7は、本発明の一実施形態による変流器がハウジングに結合した状態を示した斜視図である。
【0065】
図7に示したように、本発明による変流器100は、ハウジング140に収められていても良い。または、変流器100の外側をモールディングして保護することもできる。
【0066】
このとき、磁束補償部材130は、磁性コア110に厚く積層されて、大いに突出すれば、ハウジング140やモールディングによって変流器100を収容するのに制約が発生し得る。
【0067】
また、磁束補償部材130は、大いに突出した高さによって震動に弱くなり得、繰り返される震動及び外力によって破損に至ることもある。
【0068】
断面積によって変わる磁束の特性上、本発明による変流器100の磁束補償部材130が、磁性コア110と最大限に広く面が接するように形成されたことは、磁束補償部材130の突出する高さを最小化することができることを意味する。
【0069】
したがって、震動による安全性を向上し得る効果も、本発明による変流器100によって得ることができる。
【0070】
以上のように、本発明による好ましい実施形態を検討しており、前述した実施形態のほか、本発明がその趣旨や範疇から外れることなく、他の特定の形態に具体化することができる事実は、当該技術における通常の知識を有する者には自明である。そのため、上述した実施形態は、制限的なものではなく、例示的なものと考えるべきであり、これによって、本発明は、上述した説明に限定されず、添付の請求項の範疇及びその同等範囲内で変更することもできる。