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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】風力発電機用ナセル
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/70 20160101AFI20221219BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20221219BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20221219BHJP
   F16N 7/28 20060101ALI20221219BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20221219BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20221219BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20221219BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F03D80/70
F16C17/10 Z
F16N31/00 C
F16N7/28
F16J15/3232 201
F16C33/10 Z
F16C33/74 Z
F16C33/20 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021532194
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 AT2019060424
(87)【国際公開番号】W WO2020118332
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】A51112/2018
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス セバスティアン ヘルツル
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191163(WO,A1)
【文献】特開2016-125587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/70
F16C 17/10
F16N 31/00
F16N 7/28
F16J 15/3232
F16C 33/10
F16C 33/74
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機(1)用のナセル(2)であって、前記ナセル(2)は、
ナセルハウジング(4)と、
ローターハブ(6)と、
ローターハブ(6)をナセルハウジング(4)に支持するためのローター軸受(8)とを含み、
前記ローター軸受(8)は少なくとも1つの内側リング部材(12)と少なくとも1つの外側リング部材(13)とを有しており、内側リング部材(12)と外側リング部材(13)との間に少なくとも1つの油潤滑される滑り軸受部材(14)が形成されている、ナセル(2)において、
ナセルハウジング(4)内及び/又はローターハブ(6)内に、滑り軸受部材(14)用の潤滑油(19)を収容するための潤滑油サンプ(18)が形成されていて、潤滑油サンプ(18)が潤滑油レベル(20)まで潤滑油(19)で満たすことができるようにされており、ローター軸受(8)の少なくとも一部は潤滑油サンプ(18)内で潤滑油レベル(20)の下方に垂直に配置されており、
内側リング部材(12)内及び/又は外側リング部材(13)内に、直接潤滑油サンプ(18)内に開口している少なくとも1つの潤滑油孔(22)が配置されていることを特徴とする風力発電機(1)用のナセル(2)。
【請求項2】
少なくとも1つの滑り軸受部材(14)は、増圧装置なしで潤滑することができる流体力学的滑り軸受として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のナセル(2)。
【請求項3】
ナセルハウジング(4)とローターハブ(6)との間、及び/又はナセルハウジング(4)とローターシャフト(15)との間にシール部材(24)が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のナセル(2)。
【請求項4】
潤滑油サンプ(18)は全体がナセルハウジング(4)内に形成されており、ナセルハウジング(4)は潤滑油サンプ(18)の領域で分割可能に設計されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項5】
ナセルハウジング(4)は、ハウジング主要部(35)と潤滑油サンプカバー(36)とを有することを特徴とする、請求項に記載のナセル(2)。
【請求項6】
風力発電機(1)用のナセル(2)であって、前記ナセル(2)は、
ナセルハウジング(4)と、
ローターハブ(6)と、
ローターハブ(6)をナセルハウジング(4)に支持するためのローター軸受(8)とを含み、
前記ローター軸受(8)は少なくとも1つの内側リング部材(12)と少なくとも1つの外側リング部材(13)とを有しており、内側リング部材(12)と外側リング部材(13)との間に少なくとも1つの油潤滑される滑り軸受部材(14)が形成されている、ナセル(2)において、
ナセルハウジング(4)内及び/又はローターハブ(6)内に、滑り軸受部材(14)用の潤滑油(19)を収容するための潤滑油サンプ(18)が形成されていて、潤滑油サンプ(18)が潤滑油レベル(20)まで潤滑油(19)で満たすことができるようにされており、ローター軸受(8)の少なくとも一部は潤滑油サンプ(18)内で潤滑油レベル(20)の下方に垂直に配置されており、
内側リング部材(12)はローターハブ(6)と連結されていること、及び少なくとも1つの滑り軸受部材(14)は内側リング部材(12)に固定されていて、外側リング部材(13)に対して回動可能であり、前記滑り軸受部材(14)と前記外側リング部材(13)との間には摺動面(17)が形成されていることを特徴とする、風力発電機(1)用のナセル(2)。
【請求項7】
少なくとも1つの滑り軸受部材(14)は、増圧装置なしで潤滑することができる流体力学的滑り軸受として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のナセル(2)。
【請求項8】
内側リング部材(12)内及び/又は外側リング部材(13)内に、直接潤滑油サンプ(18)内に開口している少なくとも1つの潤滑油孔(22)が配置されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載のナセル(2)。
【請求項9】
ナセルハウジング(4)とローターハブ(6)との間、及び/又はナセルハウジング(4)とローターシャフト(15)との間にシール部材(24)が形成されていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項10】
潤滑油サンプ(18)は全体がナセルハウジング(4)内に形成されており、ナセルハウジング(4)は潤滑油サンプ(18)の領域で分割可能に設計されていることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項11】
ナセルハウジング(4)は、ハウジング主要部(35)と潤滑油サンプカバー(36)とを有することを特徴とする、請求項10に記載のナセル(2)。
【請求項12】
外側リング部材(13)内に少なくとも1つの潤滑油孔(23)が配置されており、前記潤滑油孔(23)は第1の端部で摺動面(17)に開口し、第2の端部で潤滑油サンプ(18)内に開口していることを特徴とする、請求項6~11のいずれか1項に記載のナセル(2)。
【請求項13】
外側リング部材(13)内に少なくとも部分的に円周方向に延びる流路(27)が形成されており、前記流路(27)は特に楔状隙間(31)の形で延びていて、前記楔状隙間(31)内に少なくとも1つの潤滑油孔(23)が開口していることを特徴とする、請求項12に記載のナセル(2)。
【請求項14】
外側リング部材(13)の円周にわたって分布して複数の潤滑油孔(23)が形成されており、前記潤滑油孔(23)の幾つかは流路(27)内に開口していることを特徴とする、請求項13に記載のナセル(2)。
【請求項15】
潤滑油レベル(20)は、ローター軸受(8)の摺動面(17)がそれらの最も低い位置の断面で完全に潤滑油レベル(20)の下方に位置するような高さに選択されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項16】
潤滑油レベル(20)は、シール部材(24)が潤滑油レベル(20)の上方に位置するような高さに選択されていることを特徴とする、請求項から15のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項17】
滑り軸受部材(14)が、円周にわたって分布して配置された複数の個々の滑り軸受パッド(33)を有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項18】
滑り軸受パッド(33)は、それぞれ少なくとも1つの固定手段(16)、特にねじ止めによって内側リング部材(12)又は外側リング部材(13)に固定されていることを特徴とする、請求項17に記載のナセル(2)。
【請求項19】
滑り軸受部材(14)はポリマー層を含み、前記ポリマー層は固体潤滑剤粒子と金属酸化物粒子を含み、ポリマーとして専らポリイミドポリマー又はポリアミドイミドポリマー又はそれらの混合物を含み、前記金属酸化物粒子は、バナジン酸ビスマス、クロムアンチモンルチル及びそれらの混合物を含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載のナセル(2)。
【請求項20】
ナセル(2)を備えた風力発電機(1)であって、前記ナセル(2)は、請求項1~19のいずれか一項のナセル(2)であることを特徴とする風力発電機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電機用のナセル、及びナセルを装備された風力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により風力発電機のナセル用のローター軸受が知られている。特許文献1により知られているローター軸受は、エネルギー効率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第EP2863076A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、先行技術の不利な点を克服し、エネルギー効率が改善された風力発電機用のナセルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、請求項に記載されたナセル及び風力発電機によって解決される。
【0006】
本発明により、風力発電機用のナセルが提供される。このナセルは、
ナセルハウジングと、
ローターハブと、
ローターハブをナセルハウジングに支持するためのローター軸受とを含み、ローター軸受は少なくとも1つの内側リング部材(inneres Ringelement)と少なくとも1つの外側リング部材(aeusseres Ringelement)とを有しており、内側リング部材と外側リング部材との間に少なくとも1つの油潤滑される滑り軸受部材が形成されている。ナセルハウジング内及び/又はローターハブ内に、滑り軸受部材用の潤滑油を収容するための潤滑油サンプ(Schmieroelsumpf)が形成されていて、潤滑油サンプが潤滑油レベルまで潤滑油で満たすことができるようにされており、ローター軸受の少なくとも一部は潤滑油サンプ内で潤滑油レベルの下方に垂直に配置されている。
【0007】
本発明によるナセルは、本発明による構造によりナセルのエネルギー効率の改善が達成され得るという驚くべき利点を伴う。ナセルの改善されたエネルギー効率は、特にローター軸受の一部が潤滑油サンプ中に浸漬され、したがってローター軸受の流体力学的潤滑を実現でき、追加のオイルポンプを必要としないことによって達成できる。このようにすることにより、特に追加のオイルポンプなどの複雑なユニットは必要ない。本発明によるナセルにおいては、他の場合にはオイルポンプによって運ばれる潤滑油を輸送するために必要とされる油管も必要ではない。その結果、エネルギー効率が改善されるだけでなく、ナセルの複雑さも軽減できる。このことは特にナセルの故障しやすさの低減、若しくはナセルの寿命の増加につながる。
【0008】
さらに、少なくとも1つの滑り軸受部材が、増圧装置なしで潤滑することができる流体力学的滑り軸受として設計されていると、好都合であり得る。
【0009】
さらに、内側リング部材及び/又は外側リング部材内に、直接潤滑油サンプ内に開口している少なくとも1つの潤滑油孔が配置されているようにすることができる。このことは、潤滑油を直接潤滑油サンプから滑り軸受部材に供給できるという利点を伴う。
【0010】
さらに、ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間にシール部材が形成されているようにすることができる。この方策により、ナセルの内部から潤滑油が漏出するのを回避若しくは可能な限り低減することができる。
【0011】
潤滑油サンプは全体がナセルハウジング内に形成されており、ナセルハウジングは潤滑油サンプの領域で分割可能に設計できる特徴も有利である。このことは、シール部材を潤滑油サンプの外部に形成できるので、潤滑油サンプがシール部材まで延びる場合よりも少ない密封効果を有するだけでよいという利点を伴う。潤滑油サンプの領域でナセルハウジングを分割可能に設計することにより、ローター軸受は保守がより簡単になり、若しくはローター軸受の組み立てが簡単になる。
【0012】
変形例により、ナセルハウジングがハウジング主要部と潤滑油サンプカバーとを有することが可能である。潤滑油サンプカバーは、ハウジング主要部と共に潤滑油サンプを形成してもよい。組み立てられた状態で潤滑油サンプカバーはハウジングの一部をなす。特に、潤滑油サンプカバーは、固定手段によって、特にねじによってハウジング主要部と連結されてもよい。さらに、ハウジング主要部と潤滑油サンプカバーとの間にシール部材が配置されるようにしてもよい。
【0013】
さらに、潤滑油サンプカバーが半径方向に分割されて設計されているか、若しくはローターシャフトから半径方向に取り外すことができる複数の潤滑油サンプカバーが設けられるようにしてもよい。この方策により、ローターハブをローターシャフトから途中で取り除くことなく、潤滑油サンプカバーを取り外すことができる。特に、それによってナセルの保守容易性を改善することができる。
【0014】
さらに、内側リング部材がローターハブと連結されており、及び少なくとも1つの滑り軸受部材が内側リング部材に固定されていて、外側リング部材に対して回動可能であり、滑り軸受部材と外側リング部材との間には摺動面が形成されていると、好都合であり得る。特にここでは、ローター軸受は、摺動面が少なくとも部分的に潤滑油サンプ中に浸漬されるように形成することができる。特にローター軸受のそのような構造は、ローター軸受の潤滑が非常に効率的に行われることができ、したがってこのように形成されたナセルが高いエネルギー効率を有し得るという驚くべき利点を伴う。
【0015】
さらに、外側リング部材内に少なくとも1つの潤滑油孔が配置されており、この潤滑油孔は第1の端部で摺動面に開口し、第2の端部で潤滑油サンプ内に開口しているようにすることができる。この方策により、潤滑油は直接潤滑油孔を通して摺動面に直接供給することができ、軸受の驚くべき高い効率が得られるようにすることができる。
【0016】
さらに、外側リング部材内に少なくとも部分的に円周方向に延びる流路が形成されており、この流路は特に楔状隙間(Keilspalte)の形で先細りしており、この楔状隙間内に少なくとも1つの潤滑油孔が開口するようにしてもよい。この方策により、摺動面上に油膜が形成されやすくなり、ローター軸受の潤滑を改善できる。少なくとも部分的に円周方向に延びる流路は、内側リング部材において、滑り軸受部材が当接している面の中央に形成することができる。
【0017】
特別の特徴により、複数の潤滑油孔が外側リング部材の円周にわたって分布して形成されており、これらの潤滑油孔の幾つかは流路内に開口していることが可能である。この方策により、流路に十分な潤滑油を供給することが確保され得る。
【0018】
有利な変形例により、潤滑油レベルは、ローター軸受の摺動面がそれらの最も低い位置の断面で完全に、つまりそれらの全幅にわたって潤滑油レベルの下方に位置するような高さに選択されてもよい。この方策により、ローター軸受の摺動面にそれらの全幅で見て十分な潤滑油を供給することが確保され得る。
【0019】
特に、潤滑油レベルは、シール部材が潤滑油レベルの上方に位置するような高さに選択されていると、有利であり得る。この方策により、工程において平均以上の密封措置を講じることなくナセルからの潤滑油の漏出をほぼ防ぐことができる。
【0020】
さらに、滑り軸受部材が、円周にわたって分布して配置された複数の個々の滑り軸受パッドを有するようにすることができる。特にこのような滑り軸受パッドは簡単に組み入れることができ、若しくは保守の際に簡単に交換することができる。特に、個々の滑り軸受パッドは組み立てた状態で閉じた摺動面を形成し、その結果滑り軸受内に均一な潤滑油膜が形成され得るようにすることができる。
【0021】
さらに、滑り軸受パッドは、それぞれ少なくとも1つの固定手段、特にねじ止めによって内側リング部材又は外側リング部材に固定されるようにしてもよい。特に滑り軸受パッドを滑り軸受内にこのように固定した場合に、ローター軸受の保守容易性を改善することができる。
【0022】
ナセルハウジング内及び/又はローターハブ内に滑り軸受部材用の潤滑油を収容するための潤滑油サンプが形成されていて、潤滑油サンプは潤滑油レベルまで潤滑油で満たされており、ローター軸受の少なくとも一部は潤滑油サンプ内で潤滑油レベルの下方に垂直に配置されていて、その結果ローター軸受のこの部分は潤滑油サンプ内に集められた潤滑油中に浸漬されるようになっている構成も有利である。
【0023】
本発明により、さらにナセルを備えた風力発電機が設けられている。このナセルは、
ナセルハウジングと、
ローターハブと、
ローターハブをナセルハウジングに支持するためのローター軸受とを含み、このローター軸受は少なくとも1つの内側リング部材と少なくとも1つの外側リング部材とを有しており、内側リング部材と外側リング部材との間に少なくとも1つの軸受部材が形成されている。
【0024】
ナセルハウジング内及び/又はローターハブ内に滑り軸受部材用の潤滑油を収容するための潤滑油サンプが形成されていて、潤滑油サンプは潤滑油レベルまで潤滑油で満たされており、ローター軸受の少なくとも一部は潤滑油サンプ内で潤滑油レベルの下方に垂直に配置されていて、ローター軸受のこの部分は潤滑油サンプ内に集められた潤滑油中に浸漬される。
【0025】
さらに、滑り軸受部材は多層滑り軸受として設計されてもよい。多層滑り軸受は、少なくとも1つの支持層と少なくとも1つの摺動層とからなるか、若しくはこれらを有することができ、摺動層は、少なくとも75HV(0.001)、特に少なくとも110HV(0.001)のビッカース硬さを、少なくとも走行面の表面領域に有する。少なくとも表面領域に特定の最小硬さを有する摺動層を形成することによって、滑り軸受の寿命を制限する要因である摩耗を減らすことができる。風力発電機の従来の滑り軸受システムでは、風力発電機の運転中に混合摩擦や弾性変形に対処するために軟らかい軸受材料を使用する必要があり、これは相応に大きい寸法と流体力学的損失につながるのとは対照的に、多層滑り軸受の本発明による用途には、相応に硬い表面材料を使用する場合、有利であることが明らかにされた。
【0026】
特に、滑り軸受部材の摺動面とシールの密封面が同様の構造を有するようにしてもよい。
【0027】
滑り軸受部材の摺動面及び/又は密封面は、好ましくはアルミニウム系合金、ビスマス系合金、銀系合金、潤滑ワニスからなる群から選択された材料を含む。特にこれらの耐摩耗性で摩擦学的に非常に効果的な材料は、高出力密度の風力発電機で特に有利であることが実証されている。驚くべきことに、特に潤滑ワニスは摺動層として良好に使用できる。但し、潤滑ワニスはビッカース硬さが約25HV(0.001)~60HV(0.001)で、上述した摺動層よりも著しく軟らかいが、ここでは相応の硬粒子を添加することにより硬度を増すことが可能である。
【0028】
さらに、軸受部材の摺動面及び/又は密封面上にポリマーベースの慣らし動作層を配置して、シール部材の慣らし動作中に密封面がシール部材により良好に適応できるようにすることが可能である。
【0029】
潤滑ワニスとして、例えばポリテトラフルオロエチレン、例えばパーフルオロアルコキシ共重合体、ポリフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン共重合体、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド等のフッ素含有樹脂、パーフルオロエチレンプロピレン、ポリエステルイミド、ビスマレイミド等の交互共重合体、ランダム共重合体、カルボランイミド、芳香族ポリイミド樹脂、水素を含まないポリイミド樹脂、ポリトリアゾピロメリットイミド、ポリアミドイミド、特に芳香族、ポリアリルエーテルイミド等のポリイミド樹脂、任意選択でイソシアネートで修飾、ポリエーテルイミド、任意選択でイソシアネートで修飾、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステル、フェノール樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリオキシメチレン、シリコーン、ポリアリルエーテル、ポリアリルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリアリルエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、硫化ポリエチレン、硫化アリル、ポリトリアゾピロメリットイミド、ポリエステルイミド、硫化ポリアリル、硫化ポリビニル、硫化ポリフェニレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、酸化ポリアリル、硫化ポリアリル、及びこれらの共重合体を使用できる。
【0030】
さらに、滑り軸受部材はその摺動面上ポリマー層を含み、このポリマー層は潤滑剤粒子のポリマー層と金属酸化物粒子を有し、ポリマーとして専らポリイミドポリマー又はポリアミドイミドポリマー又はそれらの混合物を有しており、金属酸化物粒子はバナジン酸ビスマス、クロムアンチモンルチル及びそれらの混合物を含む群から選択されてもよい。驚くべきことに、金属酸化物粒子としてバナジン酸ビスマス又はクロムアンチモンルチル又はそれらの混合物を使用すると、本質的な構造的特徴の1つとして、イミド基を有するポリマーが、摩耗及び破断傾向の面で予測外の改善を示すことが明らかとなった。これは、ポリマー層のマトリックスを形成するポリマーにおける窒素原子に隣接する2つの酸素原子に基づくイミド基の反応性と、それに伴って生じるポリマー鎖中の電荷シフトによって、バナジン酸ビスマス若しくはクロムアンチモンルチルの結合が、アニオン性若しくはカチオン性の電荷担体を介して改善され、それによりポリマーマトリックスが予想外に強化されるという事実に起因すると推測される。その結果として、先行技術から知られているように慣らし動作層を形成することが可能であるだけでなく、それぞれの摺動相手部材と接触するポリマー層からなる摺動層そのものを、滑り軸受部材の通常の動作による慣らし動作後に、滑り軸受部材の特殊な高付加用途のために形成することができる。特に上述した構成により、驚くほど良好な乾燥摩擦特性を達成できるが、これは長寿命を維持するために流体力学的滑り軸受に不可欠である。
【0031】
滑り軸受部材の変形実施形態によれば、ポリマー層に金属酸化物粒子が2重量%~13重量%の範囲から選択される総割合で含まれるようにすることが好ましい。実施された試験の過程で明らかになったのは、これらの金属酸化物粒子の割合が2重量%未満でもポリマー層のトライボロジー特性(tribologischen Eigenschaften)の改善を観察できるが、ポリマー層の長期耐久性は2重量%以上で大幅に改善され、そのためこれらの最小割合の金属酸化物粒子を含むポリマー層は滑り軸受の摺動層として使用するのにより適していることである。他方、13重量%を超える割合では、ポリマー層の耐荷重性は、ポリマー層を摺動層として使用することに悪影響を与える程度まで低下する。
【0032】
さらに、バナジン酸ビスマスがタングステン及び/又はモリブデンの酸化添加物を含むようにすることができる。両金属は、滑り軸受のこのような種類のポリマー層で使用されることが知られているMoS2やWS2などの一般的な固体潤滑剤にも含まれている。これにより金属酸化物粒子のポリマーマトリックスへの結合を改善できるだけでなく、使用される固体潤滑剤粒子に関する材料適合性も改善することができる。そのうえ、滑り軸受部材の動作中に高温でこれらの混合物自体から潤滑油の硫化物成分により固体潤滑剤粒子が再び形成できる場合にはポリマー層の潤滑性も改善できる。
【0033】
別の変形実施形態によれば、バナジン酸ビスマス中の酸化タングステン及び/又は酸化モリブデンの総割合が5重量%~20重量%の範囲から選択されているようにすることができる。5重量%未満の割合では、ポリマー層のトライボロジー特性はある程度改善できたが、バナジン酸ビスマスをこれらの添加物と共に使用することが経済的に妥当とされる程度ではない。20重量%を超える割合では、ポリマー層のトライボロジー特性のそれ以上の改善は観察できなかった。
【0034】
クロムアンチモンルチル中の酸化アンチモンの割合は、好ましくは5重量%~14重量%の範囲から選択される。ポリマーマトリックスを強化するために酸化アンチモンを使用することは、先行技術から知られている。ルチルに添加するとアンチモンイオンがルチル構造内で電荷の歪みを引き起こし、それによって金属酸化物粒子のポリマーマトリックスへの結合を改善することができる。クロムアンチモンルチル中の酸化アンチモンの量比が上記の範囲外の場合は、純粋なTiO2からなるポリマー層と比較してポリマー層のトライボロジー特性の改善はわずかしか観察されないか(割合が低い場合)、又はポリマー層が硬くなりすぎた(割合が高い場合)。
【0035】
さらに、クロムアンチモンルチル中の酸化クロムの割合は、1重量%~8重量%の範囲から選択されているようにすることができる。ポリマーマトリックスを強化するために酸化クロムを使用することは、同様に先行技術から知られている。しかし驚くべきことに、この効果はルチルへの酸化添加物によって、酸化クロムのみの添加により予想される効果を超えるような顕著な改善が観察される。この効果の増加も、クロムの酸化添加物がポリマーマトリックスにより良好に結合し、それによってポリマーマトリックスの強化がポリマー鎖に直接的に作用することに起因すると推測される。モリブデン及びタングステンについて上で説明したように、クロムの酸化添加物の効果は1重量%未満で観察されはするが、それはクロムの酸化添加物なしで純粋なルチルを添加する程度である。これらの添加物の割合が8重量%を超えると、ポリマーマトリックスが硬くなりすぎ、滑り軸受部材のトライボロジー全体が悪影響を被る。
【0036】
Sb5+イオン及びCr2+イオンが、好ましくはクロムアンチモンルチル中のクロムとアンチモンの総割合の50原子%を超えてTi3+の格子サイトを占め、部分的にこれに置き代わる。公知のように理想的なルチル構造が専ら八面体配位のチタン原子を有する。この理想的な構造はTi4+イオンとO2イオンによって特徴付けられる。しかしルチルの実際の構造では、例えば表面欠陥の結果として、Ti3+とTi5+も発生する。Ti3+サイトの50原子%以上がクロムとアンチモンで占められるという利点は、そのような格子サイトでは明らかにクロムアンチモンルチルのポリマー構造への結合の改善が起こり得ることである。
【0037】
さらに、クロムアンチモンルチル中にアンチモンとクロムが、互いに1.5:1~3:1の範囲から選択された比で存在するようにしてもよい。作用の正確なメカニズムはまだ完全に解明されていない。しかしながら実験では、この混合比は特に有利であることが示された。
【0038】
滑り軸受部材の別の実施形態によれば、ポリマー層中の金属酸化物粒子の総割合を基準として、金属酸化物粒子の少なくとも60%の割合が、500nm以下の最大粒径を有するようにすることができる。ポリマーマトリックスを強化するために金属酸化物粒子を当該技術分野で慣用的な粒径で使用することは可能であるが、最大粒径が500nmの金属酸化物粒子を使用すると、それらが周囲のポリマー鎖を整列させ、それによりポリマー自体の構造に影響を与えるという利点があることが発見された。したがって金属酸化物粒子は、ポリマーマトリックスの強化に直接作用することに加えて、ポリマーの構造に対する間接的な作用も有する。これによりポリマーの強度を目標とする方法で変えることができる。
【0039】
さらに、金属酸化物粒子及び/又は固体潤滑剤粒子の少なくとも一部は表面修飾を有するようにすることができる。この表面修飾により、粒子とポリマーマトリックスとの相互作用、したがってそれらのポリマー層内での作用に影響を与えることができ、広範囲に調整することができる。
【0040】
この場合、表面修飾は、好ましくはシラン化、シロキサン化、エポキシ化、アミノ化、プラズマ活性化、電子ビーム活性化を含む群から選択されている。特に、これらの反応によって粒子の表面に生成される官能基若しくは配位子は、ポリマー層を作成するために出発材料の凝集を形成することなく粒子をより容易に添加することができ、それによって粒子の少なくともほぼ均一な分布が混合物内で得られ、続いてポリマー層内で改善され得るという利点を有する。粒子のこの少なくともほぼ均一な分布により、それらのポリマー層内における効果を均一にすることができる。それとともに粒子のポリマーマトリックスへの結合も改善され得る。
【0041】
滑り軸受部材の変形実施形態によれば、ポリマー層は好ましくは専らポリアミドイミド、固体潤滑剤粒子及び金属酸化物粒子からなり、それによりポリマー層の作成を単純化することができる。そのうえポリマーの前駆体に添加されたポリマー層の成分間で起こり得る相互作用を低減することができ、それにより支持される摺動相手部材に対する成分の有効性を改善することができる。
【0042】
ポリマーマトリックスの強化に関して、金属酸化物粒子の割合に対する固体潤滑剤粒子の割合が5:1~12:1の範囲から選択されていると有利であることが発見された。
【0043】
ポリマー層の好ましい実施形態では、ポリマー層は摺動層として設計されているので、軸受部材は更なる金属摺動層を必要とせず、したがって摺動層はより簡単に構成することができる。
【0044】
さらに、シール部材が、ナセルハウジングの端面とローターハブの端面との間に配置された軸シールとして形成されていると、好都合であり得る。
【0045】
代替例において、シール部材が、ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間に配置されたラジアルシール(Radialdichtung)として形成されていると、好都合であり得る。
【0046】
さらに、シール部材が機械的な端面シール(Gleitringdichtung)として形成されているようにすることができる。特に機械的な端面シールによってナセルを密封するための良好な密封作用を達成することができる。
【0047】
シール部材がローターシャフト上に半径方向に被せることができる、少なくとも2つのセグメントを含むようにできる特徴も有利である。このことは、ローターシャフトを取り外す必要なくシール部材を簡単に交換できるという利点を伴う。このローターシャフトの保守における容易化は、特にシール部材が完全に閉じられておらず、セグメント化された構造を有するので、それをシャフト上に半径方向に被せることができるように開くことができるという点で達成され得る。
【0048】
変形例によれば、シール部材がラビリンスシール(Labyrinth-Dichtung)として形成されることが可能である。特にラビリンスシールは本発明の使用例において長い寿命を持つことができ、特にシール部材が潤滑油サンプ中に浸漬されない場合において、十分な密封作用を有することができる。
【0049】
さらにラビリンスシールが潤滑油サンプ内に続く戻り部を有すると好都合であり得る。この方策により、ナセルからの望ましくない潤滑剤の漏出をほとんど回避することができる。戻り部は、例えばラビリンスシールのくぼみから潤滑油サンプの方向に延びる孔の形で実現できる。しかしながら戻り部は、潤滑油サンプに近い位置にあるラビリンスの内壁が、潤滑油サンプから遠い位置にあるラビリンスの外壁よりも低い構造によっても形成することができる。
【0050】
そのうえシール部材がナセルハウジング内に収容されており、ローターハブがシール部材に対して回動可能であるようにすることができる。特にこのように形成されたシール若しくはこのように形成されたシールの取り付け状況により、シール部材の摩耗を可能な限り小さくすることができる。これによりシール部材の長寿命性を高めることができる。
【0051】
さらにシール部材は、このシール部材に対して可動である密封面と接触し、この密封面が潤滑ワニス被覆を有するようにしてもよい。特にこのようなシール部材の構造で、風力発電機の長寿命性を高めることができる。
【0052】
特別の特徴により、ローターハブ又はローターシャフトに、シール部材と協働するスライドスリーブが配置されていることが可能である。特にスライドスリーブを使用すると、シール部材の長寿命性を高めることができる。
【0053】
有利な変形例によれば、油滴下部材が切り込み溝又は隆起部の形でローターシャフトに形成されてもよい。この方策によりシール部材の密封作用を改善できることが達成され得る。特に、2つのシール部材が軸方向で互いに離間して形成されていると、有利であり得る。それにより回転軸線の軸方向で見て、潤滑油サンプは両方向で密封されて、一方の側では潤滑油がナセルから漏出するのを防ぎ、第2の側ではナセルハウジング内の潤滑油を潤滑油サンプの領域に留めることができる。
【0054】
さらに、ナセルハウジングとローターハブとの間、及び/又はナセルハウジングとローターシャフトとの間にシール部材が形成されているようにしてもよい。
【0055】
この文書でいう増圧装置は、外部エネルギー供給によって潤滑油の圧力を増すように設計された装置である。そのような増圧装置は、例えば油圧ポンプである。
【0056】
この文書でいうナセルは、ナセルハウジングに加えてローターハブ及びローターハブを支持するためのローター軸受を含む。
【0057】
内側リング部材及び/又は外側リング部材は、それぞれローターハブ又はローターシャフト及び/又はナセルハウジングと連結できる独立の構成要素として形成することができる。代替的に、内側リング部材がローターハブ及び/又はローターシャフトの一体的な構成要素として形成されていることも考えられる。代替的に、外側リング部材がローターハブ及び/又はローターシャフトの一体的な構成要素として形成されていることも考えられる。代替的に、内側リング部材がナセルハウジングの一体的な構成要素として設計されていることも考えられる。
【0058】
本発明をより良く理解するために、以下の図を参照して詳細に説明する。
【0059】
図は、それぞれ著しく簡略された模式的表現で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、風力発電機の概略図を示す。
図2図2は、ナセルの非常に概略的な断面図を示す。
図3図3は、外側リング部材内に流路を有するナセルの断面図を示す。
図4図4は、流路を有する外側リング部材の断面図を示す。
図5図5は、分割されたナセルハウジングを有するナセルの非常に概略的な断面図を示す。
図6図6は、スリーブに摺動面が形成されたスリップリングシールの実施形態を示す。
図7図7は、オイルドレンを備えたラビリンスシールの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
最初に確認しておくと、記載された種々の実施形態において同じ部材には同じ参照符号若しくは同じ部材名称を付す。この場合、説明全体に含まれている開示内容は同じ参照符号若しくは同じ部材名称を有する同じ部材に準用され得る。説明において選択された位置を表す言葉、例えば上、下、横なども直接説明及び表示された図を基準としており、位置が変化した場合には新しい位置に準用されるものとする。
【0062】

図1は、風力エネルギーから電気エネルギーを生成するための風力発電機1の概略図を示す。風力発電機1は、塔体3に回転可能に受容されたナセル2を含んでいる。ナセル2は、ナセル2の主要構造をなすナセルハウジング4を含む。ナセル2のナセルハウジング4内には、風力発電機1の発電機などの電気技術部品が配置されている。
【0063】
さらに、ローターブレード7を取り付けたローターハブ6を有するローター5が形成されている。ローターハブ6はナセル2の一部として見られる。ローターハブ6は、ローター軸受8によってナセルハウジング4に回転可能に受容されている。
【0064】
ローターハブ6をナセル2のナセルハウジング4に支持する働きをするローター軸受8は、半径方向力9、軸方向力10、及び傾斜モーメント11を吸収するように設計されている。軸方向力10は、風の力によって生じる。半径方向力9は、ローター5の重力によって生じ、ローター5の重心に作用する。ローター5の重心はローター軸受8の外部にあるので、半径方向力9によってローター軸受8内に傾斜モーメント11が生じる。傾斜モーメント11は、ローターブレード7の不均一な負荷によっても引き起こされ得る。
【0065】
本発明によるローター軸受8の直径は、例えば0.5m~5mであり得る。もちろんローター軸受8がこれより小さいか、又はより大きいことも考えられる。
【0066】
図2には、ナセルハウジング4及びローターハブ6が概略的な断面図で示されており、構造は、特にその寸法に関して著しく図式化されている。図2から分かるように、ローター軸受8は、少なくとも1つの内側リング部材12と少なくとも1つの外側リング部材13を有するようにすることができる。内側リング部材12と外側リング部材13との間には、少なくとも1つの滑り軸受部材14が配置されている。
【0067】
図2から分かるように、内側リング部材12はローターハブ6と連結されてもよい。特にローターシャフト15を形成され、これにローターハブ6が配置されているようにすることができる。内側リング部材12は、直接ローターシャフト15に受容されることができる。
【0068】
図示されていない別の実施形態では、もちろん内側リング部材12が直接ローターハブ6に受容されるようにしてもよい。
【0069】
やはり図示されていないさらに別の実施形態では、もちろん内側リング部材12がナセルハウジング4に固定され、ローターハブ6が外側リング部材13と連結されているようにしてもよい。
【0070】
図2から分かるように、内側リング部材12も外側リング部材13もV字形に形成されていて、それぞれ両リング材12、13の間のV字形側面に2つの滑り軸受部材14が軸方向で互いに離間して形成され、互いに対して所定の角度で配置されているようにすることができる。図2から分かるように、一実施形態では、滑り軸受部材14は固定手段16によって内側リング部材12に固定されているようにすることができる。このようにして滑り軸受部材14と外側リング部材13との間に摺動面17を形成することができる。図2に示されているように、滑り軸受部材14の配置構成において摺動面17もV字形に配置することができる。
【0071】
同様に図2から分かるように、ローター軸受8の組み立てを容易にするために、内側リング部材12はその軸方向延長で分割されて設計されているようにすることができる。
【0072】
図示されていない実施形態では、内側リング部材12は図2に示す実施形態のように溝を形成するのではなく、V字形配置が逆に形成されて、内側リング部材12にV字形突起が形成されていることも考えられる。この場合、組み立てを容易にするために、外側リング部材13がその軸方向延長で分割されて設計されているようにすることができる。
【0073】
軸方向延長で分割できる内側リング部材12を有する実施形態においても、軸方向延長で分割できる外側リング部材13を有する実施形態でも、例えば滑り軸受部材14の摩耗を補償できるようにするために、それぞれ分割可能に設計されたリング部材12、13の個々の部品が軸方向で互いに調整可能に形成されているようにすることができる。リング部材12、13の個々の部品が軸方向で互いに調整可能であることによって軸受隙間が調整できるようにすることができる。
【0074】
さらに図2から分かるように、潤滑油19を収容する働きをする潤滑油サンプ18が形成されている。潤滑油サンプ18は動作状態では潤滑油レベル20まで潤滑油19で満たされる。この場合、潤滑油レベル20は、摺動面17が少なくとも部分的に潤滑油レベル20より下方に位置し、したがって潤滑油サンプ18内にある潤滑油19中に浸漬されるように選択されている。
【0075】
滑り軸受部材14は流体力学的滑り軸受として形成されており、それによりローターハブ6がローター軸21を中心に回転すると、摺動面17に潤滑油膜が摺動面17上に形成され、これが滑り軸受部材14を流体力学的に支持する働きをする。
【0076】
摺動面17に潤滑油19を供給するために、内側リング部材12内若しくは外側リング部材13内に潤滑油孔22が形成されて、ローターハブ6の回転位置に応じて、第1の縦方向端部では潤滑油サンプ18内に開口し、第2の縦方向端部では内側リング部材12と外側リング部材13との間の空隙内に開口しているようにすることができる。この方策により滑り軸受部材14に潤滑油19が十分供給できることが達成され得る。
【0077】
さらに、直接摺動面17に開口している潤滑油孔23を設けることもできる。これらの潤滑油孔23によって、摺動面17は潤滑油サンプ18と直接流動接続することができ、その結果摺動面17に十分な潤滑油19を供給することができる。特に、滑り軸受部材14が外側リング部材13に対して移動することにより、潤滑油19は潤滑油孔23若しくは潤滑油孔22を介して摺動面17に吸引され、そこで滑り軸受部材14を潤滑若しくは支持するための油膜が形成される。
【0078】
滑り軸受部材14の良好な潤滑作用を達成するために、図2に示されているように、摺動面17の少なくとも一部はその幅で見て全体が潤滑油レベル20の下方に位置している。
【0079】
さらに、ローターハブ6をナセルハウジング4に対して密封する働きをするシール部材24が形成されるようにしてもよい。図2から分かるように、シール部材24がナセルハウジング4の端面25とローターハブ6の端面26との間で作用するようにしてもよい。特に、潤滑油サンプ18は、ナセルハウジング4とローターハブ6の両方にわたって延び、したがってシール部材24が部分的に潤滑油レベル20の下方に位置するようにすることができる。
【0080】
さらに図2から分かるように、シール部材24がナセルハウジング4内に収容されていうるようにすることができる。
【0081】
図3には、ナセル2の別の、任意選択で独立の実施形態が示されており、ここでも同じ部材には前出の図1図2と同じ参照番号若しくは部材名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、前出の図1図2の詳細な説明の参照を求め、若しくはこれを引き合いに出す。
【0082】
図3から分かるように、外側リング部材13内に流路27が形成されていて、潤滑油孔23と流動接続しており、潤滑油19が摺動面17により良好に分配されるように働く。
【0083】
図4は、図3の断面線IV-IVによる断面図を示している。図4から分かるように、流路27は流路角度28にわたって延びており、流路角度28は好ましくは流路27が完全に潤滑油レベル20より下方に配置されるように選択される。特に、流路角度28は10°~160°、好ましくは45°~80°であるようにしてもよい。
【0084】
さらに、流路幅29は、滑り軸受部材14の幅30よりも小さくなるように選択されている。図4から分かるように、潤滑油孔23の幾つかは流路27内に開口しているようにすることができる。さらに流路27は楔状隙間31の形で先が細くなるようにしてもよい。この方策により潤滑膜を形成することができる。
【0085】
第1の実施形態では、流路27は円周方向両側に楔状隙間31の形で先が細くなるようにしてもよい。
【0086】
別の実施形態では、主回転方向32で見て、流路27の端部にのみ楔状隙間31が形成されているようにしてもよい。
【0087】
さらに図4から分かるように、滑り軸受部材14は、円周にわたって分布して内側リング部材12に配置された複数の滑り軸受パッドを有するようにしてもよい。滑り軸受パッド33は特に、流体軸受として機能できる連続した摺動面17が形成されるように、内側リング部材12上に配置することができる。特に、摺動面17は円錐台の形を有するようにしてもよい。
【0088】
図5には、ナセル2の別の、任意選択で独立の実施形態が示されており、ここでも同じ部材には前出の図1図4と同じ参照番号若しくは部材名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、前出の図1図4の詳細な説明の参照を求め、若しくはこれを引き合いに出す。
【0089】
図5から分かるように、潤滑油サンプ18は、全体がナセルハウジング4内に形成されている。特にここでは、シール部材24、特にそれらの密封面34が完全に潤滑油レベル20より上方に位置するようにすることができる。このように構成されたナセルハウジング4又はローター軸受8の組み立て若しくは保守を可能にしたり容易にしたりするために、ナセルハウジング4がハウジング主要部35と潤滑油サンプカバー36を有するようにすることができる。特にハウジング主要部35と潤滑油サンプカバー36が潤滑油サンプ18の範囲を定めるようにしてもよい。ここで、潤滑油サンプカバー36は固定部材37によってハウジング主要部35に固定されているようにすることができる。
【0090】
図5から分かるように、ローター軸21の軸方向で見て、潤滑油サンプ18の両側にそれぞれ1つのシール部材24が配置されている。特に、シール部材24はラジアルシール(Radialdichtung)として形成されていてもよい。ここではシール部材24の一方はハウジング主要部35内に配置することができ、他方のシール部材24は潤滑油サンプカバー36内に配置することができる。
【0091】
さらに、シール部材24がローターシャフト15と協働するようにすることができる。特に、ここでは、摺動面17がローターシャフト15に形成されているようにしてもよい。特に、ローターシャフト15はこのために局所的に、例えば潤滑ワニス被覆によって形成される特別に設計された表面を有するようにしてもよい。このような潤滑ワニス被覆は、特にスリップリングシール(Schleifringdichtungen)を使用する場合に設けることができる。
【0092】
さらに、ローターシャフト15に、潤滑油19がローターシャフト15に沿って軸方向でシール部材24に到達するのを防ぐ働きをする油滴下部材38が形成されているようにすることができる。油滴下部材38は、例えば切り込み溝の形で形成することができる。代替実施形態では、油滴下部材38は、例えばローターシャフト15の全周に延びる隆起部の形で設計されているようにすることもできる。
【0093】
図6は、シール部材24の配置構成の別の実施形態の詳細図を示している。図6から分かるように、ローターシャフト15にスライドスリーブ39が配置され、そのスライドスリーブ39に密封面34が形成されているようにすることができる。このような配置構成は、特にスリップリングシールを使用する場合に有用であり得る。
【0094】
図示されていない別の実施形態では、スライドスリーブ39が直接ローターハブ6に直接受容され、したがってシール部材24がローターハブ6を密封する働きをするようにすることもできる。
【0095】
図7は、シール部材24の別の実施形態を示している。図7から分かるように、シール部材24は、例えば潤滑油サンプカバー36と協働するラビリンスシールの形で形成されているようにすることができる。特に、潤滑油19を潤滑油サンプ18に戻す働きをする戻り部40が形成されているようにすることができる。戻り部は、図7に見られるように、ラビリンスシールの最低点から出発して潤滑油サンプ18に続く孔の形で形成することができる。
【0096】
以上の実施形態は可能な変形例を示すものであり、この箇所で注記すると、本発明は特別に図示された本発明の実施態様に制限されておらず、個々の実施態様を互いに種々組み合わせることが可能であり、この変形可能性は本発明による技術的行為に関する教示に基づき当該技術分野に従事する当業者の能力の範囲内にある。
【0097】
保護の範囲は請求項によって規定されている。しかしながら請求項を解釈するために詳細な説明と図面が援用される。図示及び説明された種々の実施例に基づく個別特徴又は特徴の組合せは、それ自体で独自の発明による解決をなすことができる。独自の発明による解決の根底にある課題は、詳細な説明から読み取ることができる。
【0098】
本発明の説明において値の範囲に関するすべての指示は、当該範囲内のすべての任意の部分範囲を含むものと理解すべきである。例えば1~10という指示には、下限1を起点として上限10に至るまでのすべての部分範囲が含まれていると理解すべきである。即ち、すべての部分範囲は、例えば1~1.7又は3.2~8.1又は5.5~10のように、下限の1又はそれ以上から始まって上限の10又はそれ以下で終わる。
【0099】
最後に形式的に指摘しておくと、構造を理解しやすくするために、部材は一部縮尺通りではなく及び/又は拡大及び/又は縮小して表現された。
【符号の説明】
【0100】
1 風力発電機
2 ナセル
3 塔体
4 ナセルハウジング
5 ローター
6 ローターハブ
7 ローターブレード
8 ローター軸受
9 半径方向力
10 軸方向力
11 傾斜モーメント
12 内側リング部材
13 外側リング部材
14 滑り軸受部材
15 ローターシャフト
16 固定手段
17 摺動面
18 潤滑油サンプ
19 潤滑油
20 潤滑油レベル
21 ローター軸
22 リング部材の潤滑油孔
23 潤滑油孔
24 シール部材
25 ナセルハウジング端面
26 ローターハブ端面
27 流路
28 流路角度
29 流路幅
30 滑り軸受部材の幅
31 楔状隙間
32 主回転方向
33 滑り軸受パッド
34 密封面
35 ハウジング主要部
36 潤滑油サンプカバー
37 固定部材
38 油滴下部材
39 スライドスリーブ
40 戻り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7