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特許7196315グルコースとケトンの二重検出を特徴とする分析対象物センサー及び検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】グルコースとケトンの二重検出を特徴とする分析対象物センサー及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20221219BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20221219BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N27/327 353U
G01N27/327 353B
G01N27/416 336G
G01N27/416 338
A61B5/1486
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021538681
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020015365
(87)【国際公開番号】W WO2020159956
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】62/797,566
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/884,869
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スローン、マーク ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】キアイエ、ナムバー
(72)【発明者】
【氏名】ラブ、マイケル アール.
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029983(JP,A)
【文献】特開2007-290504(JP,A)
【文献】特表2013-504053(JP,A)
【文献】特表2010-530790(JP,A)
【文献】特表2010-517054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004005(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/1473
A61B 5/1486
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサーにおいて、
少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を備えるセンサーテールと、
前記第1の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域であって、前記ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含むケトン応答性活性領域と、
前記第2の作用電極の表面に配置され、グルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域と、
第1の部分が前記ケトン応答性活性領域を被覆し、第2の部分が前記グルコース応答性活性領域を被覆する膜とを備え
前記第1の部分は多成分であり、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、
前記第1の部分は少なくとも2つの膜層を含み、前記第1の部分がポリビニルピリジン及びポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み、前記第2の部分がポリビニルピリジン-コ-スチレンを含む、分析物センサー。
【請求項2】
前記第2の部分は均質である、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項3】
前記第1の膜ポリマーは、前記ケトン応答性活性領域上に直接に配置され、前記第2の膜ポリマーは、前記第1の膜ポリマー及び前記グルコース応答性活性領域の上に配置される、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項4】
前記膜の第1の部分が前記膜の第2の部分よりも厚い、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項5】
前記膜の第1の部分が、前記第1の膜ポリマーと前記第2の膜ポリマーとの混合物を含む、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項6】
前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記ケトン応答性活性領域及び前記グルコース応答性活性領域を被覆する連続した膜を画成する、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項7】
前記センサーテールは、組織に挿入すべく形成されている、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項8】
前記グルコース応答性活性領域及び前記ケトン応答性活性領域はそれぞれ、前記グルコース応答性活性領域及び前記ケトン応答性活性領域のそれぞれにおいてポリマーに共有結合している電子伝達剤を含む、請求項1に記載の分析物センサー。
【請求項9】
前記グルコース応答性酵素が前記グルコース応答性活性領域で前記ポリマーに共有結合し、前記酵素系の少なくとも2つの酵素のうちの1つ以上が前記ケトン応答性活性領域中の前記ポリマーに共有結合している、請求項8に記載の分析物センサー。
【請求項10】
請求項1に記載の分析物センサーにおいて、
前記分析物センサー及び車両の電気システムと通信する制御モジュールであって、前記分析物センサーによって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを含む制御モジュールをさらに備え、
前記車両の操作は、運転手のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全な閾値を超えると、前記コンピュータシステムによって制御又は無効化される、分析物センサー。
【請求項11】
請求項1に記載の分析物センサーにおいて、
前記分析物センサーは、前記分析物センサー、グルコース及びケトンのうちの少なくとも1つを含む流体に曝露され、前記第1の作用電極及び前記第2の作用電極に電位印加されると、
前記グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で第1の信号を生成するように構成され、前記第1の信号は、前記流体中のグルコースの濃度に比例
前記ケトン応答性活性領域の酸化還元電位以上第2の信号を生成するように構成され、前記第2の信号は、前記流体中のケトンの濃度に比例
前記第1の信号前記流体のグルコース濃度に相関、前記第2の信号前記流体のケトンの濃度に相関する分析物センサー
【請求項12】
前記第1の信号及び前記第2の信号が異なる時刻に測定される、請求項11に記載の分析物センサー
【請求項13】
前記第1の信号及び前記第2の信号は、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に得られる、請求項11に記載の分析物センサー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコースとケトンの二重検出を特徴とする分析対象物センサー及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人体内の様々な分析物の検出は、健康の状態を監視するために不可欠となり得る。通常の分析物レベルからの逸脱は、代謝状態や病気などの根本的な生理学的状態、又は特定の環境条件への曝露を示していることがよくある。単一の分析物が特定の生理学的状態に対して単独で調節不全になる場合があるが、同一の生理学的状態のため、又は併存する(関連する)生理学的状態の結果として、複数の分析物が同時に調節不全になる場合がある。複数の分析物が同時に調節不全になると、調節不全の程度は分析物ごとに異なる可能性がある。そのため、個人の健康状態を十分に評価するには、各分析物を監視する必要となり得る。
【0003】
採取した体液を使用した定期的な生体外の分析物モニタリングは、多くの個人において特定の生理学的状態を観察するのに十分であり得る。ただし、特に体液の採取を有意に頻繁に(たとえば、1日に数回)行う必要がある場合、生体外での分析物のモニタリングは一部の人にとって不便又は痛みを伴う可能性がある。埋め込まれた生体内分析物センサーを使用した継続的な分析物モニタリングは、重度の分析物調節不全及び/又は急速に変動する分析物レベルを有する個人にとってより望ましいアプローチである可能性があるが、提供される利便性のために他の個人にも有益である可能性がある。皮下、間質、又は皮膚の分析物センサーは、多くの場合、ユーザの不快感を最小限に抑えながら、十分な測定精度を提供できる。
【0004】
以下の図は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適切な検出化学物質を特定できれば、多くの分析対象物が生理学的分析の興味深いターゲットとなる。この目的のために、インビボでグルコースをアッセイするために構成された電流測定センサーが、糖尿病患者の健康の監視を促進するために、近年開発及び改良されてきた。糖尿病患者においてグルコースとの同時調節不全に一般的にさらされる他の分析物には、例えば、乳酸、酸素、pH、Ale、ケトンなどが含まれる。グルコースと組み合わせて一般的に調節不全になっている分析物を検出するように構成されたセンサーは公知であるが、現在、有意に改良されていない。
【0006】
インビボ分析物センサーは、通常、特定の分析を提供するために単一の分析物を分析するように構成され、しばしば酵素を使用して、所与の分析物に高い特異性を提供する。そのような分析特異性のために、グルコースを分析するために構成された現在のインビボ分析物センサーは、一般に、グルコースと組み合わせて頻繁に調節不全であるか、又は調節不全のグルコースレベルに起因する他の分析物をアッセイするために有効ではない。せいぜい、現在の分析物モニタリングアプローチでは、糖尿病患者が2つの異なるインビボ分析物センサーを装着する必要がある。1つはグルコースを分析するように構成され、もう1つは乳酸やケトンなどの別の対象分析物を分析するように構成されている。複数のインビボ分析物センサーを使用する分析物モニタリングアプローチは、ユーザにとって非常に不便である可能性がある。さらに、複数のインビボ分析物センサーが使用される場合、機器の追加のコスト負担があり、個々の生体内分析物センサーの少なくとも1つが故障する可能性が統計的に高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、2つの異なる分析物を検出するために複数の酵素を使用する分析物センサー一般、より詳細には、グルコース及びケトンを検出するために複数の酵素を使用する分析物センサー、及びそれらの対応する使用方法を説明する。
【0008】
上記のように、酵素を使用する分析物センサーは、特定の基質又は基質のクラスに対する酵素の頻繁な特異性のために、グルコース又は関連する分析物などの単一の分析物を検出するために一般的に使用されている。ただし、複数の分析物の監視は、各分析物の個別の検出を容易にするために、対応する数の分析物センサーを使用する必要があるため、複雑になる可能性がある。このアプローチは、特に複数の分析物を生体内で監視する場合、複数の分析物センサーのコスト、複数の分析物センサーを装着する際のユーザの不快感、個人の分析物センサー故障の統計的可能性の増加などの問題により、問題又は望ましくない場合がある。
【0009】
本発明は、糖尿病患者において一般的に調節不全となる2つの分析物である、グルコース及びケトンの両方に応答する分析物センサーを提供する。ケトアシドーシス(ケトン調節不全)も示す糖尿病患者では、グルコースとケトンの濃度が互いに直接相関しない可能性があるため、本明細書に開示する分析物センサーを使用して両方の分析物を同時に監視することが有利であり、健康転帰の改善につながる可能性がある。糖尿病患者に健康上の利点を提供することに加えて、分析物センサーは、ケトジェニックダイエットを実践している個人など、ケトンレベルを監視したい他の個人にも有益である可能性がある。ケトジェニックダイエットは、体重減少を促進するだけでなく、てんかんの人が自分の状態を管理するのを助けるのに有益となり得る。ケトジェニックダイエット監視中に同時にグルコースを監視することは、関連する利点を提供する可能性がある。
【0010】
特に、本発明は、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域が単一の分析物センサーのテール内に存在する分析物センサーを与えることによって、調節不全の可能性を特定するために両方の分析物を監視することを、単一の分析物センサーを使用して可能とする。上記の説明から明らかなように、単一の分析物センサーを使用したグルコースとケトンの同時検出は、別々の分析物センサーを使用する監視アプローチに比べていくつかの利点を提供し得る。以下に説明するように、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の様々な物理的配置が、分析物センサー内で可能である。本開示の特定の実施形態は、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を別々に調べて、別々の作用電極上に活性領域を配置することなどを通じて、各分析物の濃度を決定することができるセンサー設計を含む。以下で論じるように、単一の分析物センサー上に異なる検出化学を特徴とする活性領域を組み込むことに伴う課題があり、これらは本開示によって対処される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の分析物センサーを組み込むことができる例示的な検出システムの図。
図2A】本明細書の開示に従ってケトンを検出するために使用され得る特定の酵素系を示す図。
図2B】本明細書の開示に従ってケトンを検出するために使用され得る特定の酵素系を示す図。
図2C】本明細書の開示に従ってケトンを検出するために使用され得る特定の酵素系を示す図。
図3A】単一の作用電極上にグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの断面図。
図3B】単一の作用電極上にグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの断面図。
図3C】単一の作用電極上にグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの断面図。
図4】別々の作用電極上にグルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの断面図。
図5A】互いに同心円状に配置された概ね円筒形の電極を特徴とする分析物センサーの斜視図。
図5B】互いに同心円状に配置された概ね円筒形の電極を特徴とする分析物センサーの斜視図。
図5C】互いに同心円状に配置された概ね円筒形の電極を特徴とする分析物センサーの斜視図。
図5D】互いに同心円状に配置された概ね円筒形の電極を特徴とする分析物センサーの斜視図。
図6】様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度にさらされたときの、ジアホラーゼ、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの再現を示すグラフ。
図7図6の電極の平均電流応答に対するβ-ヒドロキシブチラート濃度の例示的なプロットを示すグラフ。
図8】100mM PBS中の8mMのβ-ヒドロキシブチラートに33℃で2週間曝露した場合の、図6の電極の電流応答の例示的なプロットを示すグラフ。
図9】30mMグルコースと10mMケトンへの曝露後、別々の作用電極上に配置されたグルコース応答活性領域とケトン応答活性領域を含む分析物センサーの応答の例示的なプロットを示すグラフ。
図10】様々な濃度のグルコースとβ-ヒドロキシブチラートにおける、グルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの応答の例示的なプロットを示すグラフ。
図11】様々な濃度のグルコースとβ-ヒドロキシブチラートにおける、グルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの応答の例示的なプロットを示すグラフ。
図12】様々な濃度のグルコースとβ-ヒドロキシブチラートにおける、グルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を有する分析物センサーの応答の例示的なプロットを示すグラフ。
図13A】様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度にさらされたときのNADHO、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの再現を示しているグラフ。
図13B】様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度にさらされたときのNADHO、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの再現を示しているグラフ。
図14】増加するβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ濃度に曝露した後の、NADHO、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の電流応答対時間の例示的なプロットを示している。
図15A】カーボン作用電極の電流応答を示すグラフ。
図15B】それぞれポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含むカーボンナノチューブ作用電極の電流応答を示すグラフ。
図16】本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システムの概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
グルコース応答性分析物センサーは、糖尿病患者が健康をよりよく管理するのを支援するために、十分に研究されいるものの、未だ発展途上の分野である。糖尿病患者における併存する分析物の調節不全の蔓延にもかかわらず、グルコースと組み合わせて一般に調節不全であるケトン及び他の分析物を検出するのに適したセンサー化学は、よりよく発達したグルコース検出化学に比べて著しく遅れをとっている。本開示は、一定範囲のケトン濃度にわたって良好な応答安定性を有しケトンを検出するのに適したセンサー化学、特にケトンの検出を促進するために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素システムを利用する検出化学を提供することによって、この欠陥を軽減する。本明細書で使用される場合、「協調して」という用語は一対の酵素反応を指し、ここで、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応の基質となり、第2の酵素反応は第1の酵素反応中に反応した基質(分析物)の濃度測定の基礎の役割を果たす。2つの対にされた酵素反応に関して定義されているが、場合によっては、3つ以上の酵素反応も同様に組にされ得ることが理解されるべきである。例えば、第1の酵素反応の生成物は、第2の酵素反応の基質となり得、第2の酵素反応の生成物は、第3の酵素反応の基質となり得、第3の酵素反応は、第1の酵素反応中に反応した基質(分析物)の濃度を測定するためのベースの役割を果たす。本明細書の開示による、ケトンを検出するための適切な酵素系の議論は、以下に続く。
【0013】
単一の酵素が検出を容易にすることができない場合、目的の所与の分析物を検出するために、互いに協調して作用する2つ以上の酵素を利用することが望ましい場合がある。単一の酵素が分析物の検出を促進するのに効果がない可能性がある状況には、例えば、酵素が酵素反応の1つ以上の生成物によって阻害されるか、又は分析物センサー内に配置されたときに酸化状態と還元状態との間を循環できない状況が含まれる。単一の酵素によって生成される一部の生成物は、電気化学的検出ができない場合がある。
【0014】
適切な検出化学物質を手にしたとしても、単一の分析物センサー上でグルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を組み合わせるのは簡単なことではない。グルコース応答性分析物センサーは、一般に、グルコース応答性活性領域を被覆する膜を使用して、物質移動制限膜として機能し、及び/又は生体適合性を改善する。物質移動制限膜でグルコース応答活性領域へのグルコースアクセスを制限することは、センサーの過負荷(飽和)を回避するのに役立ち、それによって検出性能と精度を向上させることができる。物質移動制限膜は、前述を達成するためにグルコースの物質移動の速度を低下させる拡散制限バリアとして機能し得る。物質移動制限膜は均質であり得、従来のグルコース応答性センサーにおいて単一の膜ポリマーを含み得る。残念ながら、グルコースとケトンは、特定の膜材料に対して大幅に異なる透過性値を示す。そのため、単一の質量輸送制限膜が、グルコースとケトンの両方を検出できる分析対象物センサーのアクティブ領域を被覆すると、各分析対象物に対して大幅に異なる感度が実現される可能性があり 、それにより、グルコースとケトンを同時に正確に検出する能力が複雑になる。分析物の感度の問題は、原則として、膜の厚さを調整したり、アクティブ領域のサイズを相互に変更したりすることで対処できるが、これらの解決法を実際に実装するのは難しい場合がある。
【0015】
上記に応答して、本発明はまた、グルコース及びケトンの同時検出を容易にするのに適した膜組成物及びその沈着のための方法を提供する。具体的には、本開示は、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域上に別個の組成物として別々に配置され得る異なる透過性値を有する膜組成物を提供する。驚くべきことに、それ以外の場合、膜ポリマーそのものは、性能が低いため(たとえば、望ましくない透過性の値)、ケトンでの使用には適さない場合であっても、グルコース応答性分析物センサーの物質移動制限膜として使用するために適した膜ポリマーは、ケトン応答性分析物センサーの活性領域を被覆するための多成分物質移動制限膜に適切に組み込むこともできる。有利なことに、本明細書に開示される分析物センサーの設計は、均質な膜部分を有する連続膜を分析物センサーのグルコース応答性活性領域に配置し、多成分膜部分をケトン応答性活性領域に配置することを可能にする。これにより、各分析物の透過性が同時に平準化され、感度と検出精度が向上する。本明細書において、「均質膜」という用語は、単一の種類の膜ポリマーからなる膜を指し、「多成分膜」という用語は、2つ以上の種類の膜ポリマーからなる膜を指す。二層膜と混合膜の両方が、本明細書の開示における多成分膜としての使用に適している可能性がある。本明細書に開示されるセンサー設計と組み合わせて多成分膜を使用することにより、分析対象物のうちの1つの感度を調整するために膜の厚さ及び/又は活性領域の大きさを変更する製造アプローチと比較して、グルコース応答性及びケトン応答性の検出化学を互いに組み合わせるときに製造上の利点を実現することができる。
【0016】
本開示の分析物センサーをさらに詳細に説明する前に、本開示の実施形態をよりよく理解できるように、適切なインビボ分析物センサー構成及び分析物センサーを使用するセンサーシステムの簡単な概要をまず与える。図1は、本開示の分析物センサー、より詳細には、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を含む分析物センサーを組み込むことができる例示的な検出システムの図を示す。示されるように、検出システム100は、ローカル通信パス又はリンクであって、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されているものを介して互いに通信するように構成されたセンサー制御デバイス102及び読み取りデバイス120を備える。読み取りデバイス120は、いくつかの実施形態によれば、分析物濃度及びセンサー104又はそれに関連するプロセッサによって決定される警告又は通知を表示するための出力媒体を構成し得、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にし得る。読み取りデバイス120は、多目的スマートフォン又は専用の電子読み取り機器であり得る。1つの読み取りデバイス120のみが示されているが、場合によっては、複数の読み取りデバイス120が存在してもよい。読み取りデバイス120はまた、それぞれ、有線もしくは無線、単一もしくは双方向、及び暗号化又は非暗号化であり得る、通信パス/リンク141及び/又は142を介して、遠隔端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信し得る。 読み取りデバイス120は追加で、又は代わりに、通信パス/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバー)と通信し得る。ネットワーク150は、通信パス/リンク152を介してリモート端末170に、及び/又は通信パス/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180にさらに通信可能に結合され得る。あるいは、センサー104は、介在する読み取りデバイス120が存在することなく、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、センサー104は、米国特許出願公開第2011/0213225号に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介して遠隔端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFi(登録商標)などの任意の適切な電子通信プロトコルを、通信経路又はリンクのそれぞれに使用することができる。遠隔端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によれば、ユーザの分析物レベルに関心を有する一次ユーザ以外の個人によってアクセス可能とし得る。読み取りデバイス120は、ディスプレイ122及び任意の入力コンポーネント121を有し得る。ディスプレイ122は、いくつかの実施形態によれば、タッチスクリーンインターフェースを含み得る。
センサー制御デバイス102は、センサハウジング103を含み、センサハウジング103は、センサー104を操作するための回路及び電源を収容することができる。任意に、電源及び/又はアクティブ回路を省略してもよい。プロセッサ(図示せず)は、センサー104に通信可能に結合されてもよく、プロセッサは、物理的にセンサハウジング103又は読み取りデバイス120内に配置される。センサー104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って延在し、接着層105は、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するために適切である。
センサー104は、皮膚の真皮層又は皮下層内など、関心のある組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサー104は、所与の組織の所望の深さまで挿入するために十分な長さのセンサーテールを有し得る。センサーテールは、少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの作用電極の表面上のグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域とを有することによって、これらの分析物の検出を容易にする。対向電極は、少なくとも1つの作用電極と組み合わせて存在することができる。センサーテール上の特定の電極構成は、図3A~5Dを参照して以下でより詳細に説明されている。
【0017】
1つ以上の物質移動制限膜は、以下でさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの作用電極上のグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を被覆することができる。グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素を含み得、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を有し得る。適切な酵素システムは、図2A~2Cを参照して以下でさらに説明される。様々な実施形態によれば、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域はそれぞれ、少なくともいくつかの酵素が共有結合しているポリマーを含み得る。本開示の様々な実施形態において、グルコースとケトンは、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水などの対象となる任意の生体液で監視することができる。特定の実施形態では、本開示の分析物センサーは、インビボでグルコース及び/又はケトンの濃度を決定するために真皮液又は間質液をアッセイするように適合させることができる。
【0018】
さらに図1を参照すると、センサー104は、データを読み取りデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、分析物濃度データ(すなわち、グルコース及び/又はケトン濃度)は、データが取得されるときの特定の頻度で、又は特定の期間が経過した後など、送信まで(たとえば、毎分、5分ごと、又はその他の所定の期間)データがメモリに格納されて、自動的かつ定期的に伝達され得る。他の実施形態では、センサー104は、設定されたスケジュールに従ってではなく、自動ではない方法で読み取りデバイス120と通信することができる。例えば、センサー電子機器が読み取りデバイス120の通信範囲内に持ち込まれると、RFID技術を使用してセンサー104からデータを通信することができる。読み取りデバイス120に通信されるまで、データは、センサー104のメモリに記憶されたままであり得る。したがって、ユーザは、読み取りデバイス120に常に近接している必要はなく、代わりに、都合のよいときにデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動及び非自動データ転送の組み合わせを実施することができる。例えば、データ転送は、読み取りデバイス120がセンサー104の通信範囲内になくなるまで、自動的に継続することができる。
【0019】
導入器は、センサー104の組織への導入を促進するために一時的に存在し得る。例示的な実施形態では、導入器は、針又は同様の鋭利物を含み得る。代替の実施形態では、シース又はブレードなどの他のタイプの導入器が存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針又は他の導入器は、組織挿入の前に一時的にセンサー104に近接して存在し、その後、引き抜かれる。存在している間、針又は他の導入器は、センサー104が従うためのアクセス経路を開くことにより、組織へのセンサー104の挿入を容易にすることができる。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を促進して、センサー104の埋め込みが行われることを可能にすることができる。アクセス経路を開いた後、針又は他の導入器を引き抜いて、鋭利物による危険をもたらさないようにすることができる。例示的な実施形態では、適切な針は、断面が中実又は中空、面取り又は非面取り、及び/又は円形又は非円形であってもよい。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径及び/又は先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼治療針と同等であり得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0020】
いくつかの実施形態では、針の先端(存在しているとき)は、針が最初に組織を貫通し、センサー104のアクセス経路を開くように、センサー104の末端にわたって角度を付けることができる。他の例示的な実施形態では、センサー104は、針の管腔又は溝内に存在し得、針は、同様に、センサー104のためのアクセス経路を開く。どちらの場合も、センサーの挿入を促進にした後、針は抜去される。
【0021】
ここで図2A~2Cを参照して、本明細書の開示に従ってケトンを検出するために使用することができる特定の酵素システムをさらに詳細に説明する。示されている酵素反応では、β-ヒドロキシブチラートはインビボで形成されたケトンの代用物として機能する。図2Aに示されるように、本明細書の開示に従ってケトンを検出するために使用され得る1対の協調する酵素は、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)及びジアホラーゼであり、これらは、本明細書でさらに説明されるように、少なくとも1つの作用電極表面上のケトン応答性活性領域内に沈着され得る。ケトン応答性活性領域にこの一対の協調する酵素が含まれている場合、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシブチラート及び酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)をそれぞれアセト酢酸及び還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換し得る。酵素補因子NAD及びNADHは、本明細書に開示される協調する酵素反応を促進する。次に、NADHは、ジアホラーゼ媒介下で還元を受ける可能性があり、このプロセス中に転送された電子が、作用電極でのケトン検出の基礎を与える。したがって、作用電極に移動した電子の量と変換されたβ-ヒドロキシブチラートの量の間には1:1のモル対応があり、それによって作用電極で測定された電流量に基づくケトンの検出と定量化の基礎を与える。NADH還元から生じる電子の作用電極への移動は、以下にさらに説明するように、オスミウム(Os)化合物などの電子移動剤を介して起こり得る。アルブミンは、この一対の協調する酵素とともに安定剤として存在し得る。特定の実施形態によれば、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼは、分析物センサーのケトン応答性活性領域内のポリマーに共有結合され得る。NADはポリマーに共有結合している場合と結合していない場合があるが、NADが共有結合していない場合は、ケトン応答活性領域内に物理的に保持され得る。ケトン応答性活性領域を被覆する膜は、NADをケトン応答性活性領域内に保持するのに役立つ一方で、ケトンの検出を可能にするために十分な内向き拡散を可能にする。ケトン応答性活性領域を被覆するための適切な膜ポリマーは、本明細書においてさらに記載される。
【0022】
ケトンを酵素的に検出するための他の適切な化学反応を図2B及び2Cに示す。どちらの場合も、作用電極に移動した電子の量と変換されたβ-ヒドロキシブチラートの量の間には1:1のモル対応があり、それによってケトン検出の根拠を与える。
【0023】
図2Bに示すように、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)は、ここでもβ-ヒドロキシブチラートとNADをそれぞれアセト酢酸とNADHに変換し得る。作用電極への電子移動がジアホラーゼ(図2Aを参照)と遷移金属電子移動剤によって完了する代わりに、還元型のNADHオキシダーゼ(NADHO(還元))が反応して、対応する酸化型(NADHO(酸化))を生じる。次に、NADHO(還元)は分子状酸素との反応によって再形成されてスーパーオキシドを生成し、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の媒介下で過酸化水素に変換され得る。次に、過酸化水素は、作用電極で還元されて、最初に存在したケトンの量に相関し得る信号を提供し得る。様々な実施形態によれば、SODは、ケトン応答性活性領域においてポリマーに共有結合され得る。図2Aに示す酵素システムと同様に、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼとNADHオキシダーゼは、ケトン応答性活性領域のポリマーに共有結合することができ、NADは、ケトン応答性活性領域のポリマーに共有結合している場合と結合していない場合がある。NADが共有結合していない場合は、ケトン応答活性領域内に物理的に保持され、膜ポリマーがケトン応答活性領域内のNADの保持を促進する。
【0024】
図2Cに示すように、さらなるケトンの酵素検出化学において、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(HBDH)を利用して、β-ヒドロキシブチラートとNADをそれぞれアセト酢酸とNADHに変換し得る。この場合の電子移動サイクルは、作用電極でのポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンの酸化によって完了し、NADを再形成する。ポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、ケトン応答性活性領域内のポリマーに共有結合している場合と結合していない場合がある。図2Aに示す酵素システムと同様に、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼは、ケトン応答性活性領域のポリマーに共有結合することができ、NADは、ケトン応答性活性領域のポリマーに共有結合している場合と結合していない場合がある。活性領域にアルブミンを含めると、応答の安定性が驚くほど改善される可能性がある。適切な膜ポリマーは、ケトン応答性活性領域内でのNADの保持を促進する可能性がある。
【0025】
本明細書に開示される分析物センサーのグルコース応答性活性領域は、作用電極表面に物理的に吸着され得、そしてグルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼなどのグルコース応答性酵素を含み得る。様々な実施形態によれば、グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素に共有結合しているポリマーを含み得る。活性領域に含めるのに適したポリマーを以下に説明する。
【0026】
本明細書に開示される分析物センサーは、単一の作用電極上又は2つ以上の別個の作用電極上に設けた、異なるタイプの活性領域(すなわち、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域)を特徴とし得る。単一の作用電極センサー構成は、本開示の様々な実施形態によるように、及び本明細書でさらに説明されるように、2電極又は3電極検出モチーフを使用することができる。単一の作用電極を特徴とするセンサー構成を、図3A~3Cを参照して以下に説明する。これらのセンサー構成のそれぞれは、本開示の様々な実施形態による、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を適切に組み込むことができる。その後、複数の作用電極を特徴とするセンサー構成を、図4及び5A~5Dを参照して説明する。複数の作用電極が存在する場合、ケトン応答性活性領域を第1の作用電極上に配置することができ、グルコース応答性活性領域を第2の作用電極上に配置することができる。複数の作用電極を使用するセンサー構成は、このように活性領域が分離及び/又は間隔を空けられている場合、異なる組成及び/又は異なる透過性値を有する物質移動制限膜を製造工程においてより容易に形成することができるので、本明細書の開示によるグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の両方を組み込むために特に有利であり得る。異なる組成を有する物質移動制限膜の、特に浸漬コーティングによる、各作用電極への堆積を容易にするように配置された複数の作用電極を特徴とする特定のセンサー構成が、図5A~5Dに示されている。本明細書に開示される物質移動制限膜を堆積するための適切な技術には、例えば、スプレーコーティング、塗装、インクジェット印刷、ステンシル、ローラーコーティング、ディップコーティングなど、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0027】
単一の作用電極が分析物センサーに存在する場合、3電極センサー構成は、作用電極、対向電極、及び参照電極を含み得る。関連する2電極センサー構成は、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、対向電極及び参照電極(すなわち、対向電極/参照電極)の両方として機能し得る。2電極及び3電極センサー構成の両方において、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の両方が、単一の作用電極上に配置され得る。いくつかの実施形態では、様々な電極は、互いに少なくとも部分的に積み重ねられ(層状にされ)、及び/又はセンサーテール上で互いに横方向に離間され得る。適切なセンサー構成は、形状が実質的に平坦又は実質的に円筒形であり得、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域は、作用電極上で横方向に離間されている。本明細書に開示されるすべてのセンサー構成において、様々な電極は、誘電体材料又は同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0028】
複数の作用電極を特徴とする分析物センサーは、同様に、少なくとも1つの追加の電極を含み得る。1つの追加の電極が存在する場合、1つの追加の電極は、複数の作用電極のそれぞれの対向電極/参照電極として機能し得る。2つの追加の電極が存在する場合、追加の電極の1つは、複数の作用電極のそれぞれの対向電極として機能し得、追加の電極の他方は、複数の作用電極のそれぞれの参照電極として機能し得る。
【0029】
次に、単一の作用電極を有する分析物センサー構成についてさらに詳細に説明する。図3Aは、本明細書の本開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサー構成の断面図を示す。図示されるように、分析物センサー200は、作用電極214と対向/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及び対電極/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で(構成を図示していない)、基板212の同じ側に配置され得る。活性領域218a及び218b(すなわち、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域)は、作用電極210の表面上で互いに横方向に離間されている。本明細書に示される様々なセンサー構成において、活性領域218a及び218bは、各分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。分析物センサー200は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、又は電位差測定の電気化学的検出技術のいずれかによってグルコースとケトンをアッセイするように動作可能であり得る。
【0030】
さらに図3Aを参照すると、いくつかの実施形態によれば、膜220は、少なくとも活性領域218a,218bを覆い、任意で、作用電極214及び/又は対向/参照電極216の一部又は全部、又は分析物センサー200全体を覆うことができる。分析物センサー200の片面又は両面が、膜220で覆われてもよい。膜220は、活性領域218a及び218bへの分析物の流れを制限するための適切な能力を有する1つ以上のポリマー膜材料(膜ポリマー)を含み得る。図3Aでは必ずしも明らかではないが、膜220の組成は、本明細書でさらに説明されるように、各位置で分析物流束を差別的に調節するために、活性領域218a及び218bで変化し得る。例えば、膜220は、膜220の組成が各位置で異なるように、活性領域218a及び218bに噴霧及び/又は印刷され得る。別の代替案では、膜220は、分析物センサー200の端Aから開始するディップコーティングによって堆積され得る。具体的には、分析物センサー200の端Aを第1のコーティング配合物に浸漬して、活性領域218aを被覆することができる。活性領域218a上で第1のコーティング配合物を部分的に硬化させた後、分析物センサー200の端Aを第2のコーティング配合物に浸漬して、活性領域218a及び218bの両方に第2のコーティング配合物を塗布することができる。したがって、膜220は連続的であり得、活性領域218aで二重層を特徴とし、活性領域218bで均質であり得る。
【0031】
図3B及び3Cは、本明細書の本開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極センサー構成の断面図を示す。単一の作用電極を特徴とする3電極センサー構成は、分析物センサー201及び202(図3B及び3C)に追加の電極217が含まれることを除いて、図3Aの分析物センサー200について示されるものと同様であり得る。追加の電極217を用いて、電極216は、次に、対向電極又は参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は、他の方法では説明されない他の電極機能を果たすことができる。作用電極214は、いずれの場合も相変わらず元の機能を果たす。追加の電極217は、作用電極210又は電極216のいずれかに配置され得、それぞれの間に誘電体の分離層が存在する。例えば、図3Bに示されるように、電極210、216、及び217は、基板212の同一面上に配置され、その間の誘電体層219a、219b、及び219cによって互いに電気的に絶縁されている。あるいは、図3Cに示されるように、電極210、216、及び217のうちの少なくとも1つは、基板212の反対側の面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極210(作用電極)及び電極216(対向電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(参照電極)は、電極210又は216のうちの1つの上に誘電材料で離間して配置される。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)は、電極217上に存在することができ、参照材料層230の位置は、図3B及び3Cに示されるものに限定されない。図3Aに示される分析物センサー200と同様に、分析物センサー201及び202の活性領域218a及び218bは、図3B及び3Cのセンサー構成において作用電極210上で互いに横方向に離間して配置される。分析物センサー200と同様に、分析物センサー201,202は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、又は電位差測定の電気化学的検出技術のいずれかによってグルコースとケトンをアッセイするように動作可能であり得る。
【0032】
また、分析物センサー200と同様に、膜220はまた、分析物センサー201及び202において、活性領域218a及び218b、ならびに他のセンサー構成要素を被覆することができる。いくつかの実施形態では、追加の電極217は、膜220で被覆され得る。図3B及び3Cは、電極214、216及び217のすべてが膜220で被覆されていることを示しているが、いくつかの実施形態では、作用電極210、又は活性領域218a,218bの一方のみが被覆され得ることが認識されるべきである。図3B及び3Cでは明らかではないが、膜220の厚さは、活性領域218a及び218bにおける厚さの変化など、様々な場所で同一であっても異なっていてもよい。同様に、膜220はまた、各位置で分析物流束を差別的に調節するために、活性領域218a及び218bで組成的に変化し得る。例えば、分析物センサー201及び202の端Aからのディップコーティングを使用して、図3Aについて上でより詳細に説明したように、活性領域218aに二層膜部分及び活性領域218bに均一な膜部分を特徴とする連続膜を堆積することができる。2電極検体センサー構成(図3A)におけるように、検体センサー201及び202の片面又は両面は、図2B及び2Cのセンサー構成において膜220で覆われてもよく、又は検体センサー201及び202の全体が覆われていてもよい。したがって、図3B及び3Cに示される3電極センサー構成は、本開示の例示的かつ非限定的であり、代替の電極及び/又は層構成が本開示の範囲内に存在するものとして理解されるべきである。
【0033】
次に、複数の作用電極、より詳細には2つの作用電極を有するセンサー構成を、図4及び5A~5Dを参照してさらに詳細に説明する。以下の説明は、主に2つの作用電極を有するセンサー構成に向けられているが、3つ以上の作用電極が、本明細書の開示の外延を通じて組み込まれ得ることが理解されるべきである。追加の作用電極を使用して、グルコース及びケトンの検出だけでなく、分析物センサーに追加の検出機能を与えることができる。
【0034】
図4は、本明細書の本開示のいくつかの実施形態での使用に適切な、2つの作用電極、すなわち参照電極及び対向電極を有する例示的な分析物センサー構成の断面図を示す。図4に示されるように、分析物センサー300は、基板302の反対側の面に配置された作用電極304及び306を有する。活性領域310aは、作用電極304の表面上に配置され、活性領域310bは、作用電極306の表面上に配置される。本開示の様々な実施形態によれば、活性領域310a及び310bは、グルコース応答性及びケトン応答性であり得る。対向電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330及び332は、それぞれ、参照電極321及び対向電極320上に配置されている。膜340は、様々な実施形態によれば、それぞれ少なくとも活性領域310a及び310bを別々に被覆する第1の膜部分340a及び第2の膜部分340bを有し、分析物センサー300の他の構成要素又は分析物センサー300の全体もまた、任意選択で第1の膜部分340a及び/又は第2の膜部分340bで被覆されている。この場合も、膜340は連続的であり得るが、各位置で分析物流束を差別的に調節するための異なる透過性値を与えるために、第1の膜部分340a及び第2の膜部分340b内で(すなわち、活性領域310a及び310b上で)組成が異なっている可能性がある。例えば、異なる膜配合物を、分析物センサー300の対向する面に噴霧及び/又は印刷することができる。ディップコーティング技術もまた、特に活性領域310a及び310bのうちの1つに二層膜の少なくとも一部を堆積させるために適切であり得る。したがって、本開示の特定の実施形態によれば、第1の膜部分340a及び第2の膜部分340bの一方は二層膜からなることができ、第1の膜部分340a及び第2の膜部分340bの他方は単一の膜ポリマーからなることができる。分析物センサー200,201,202と同様に、分析物センサー300は、電量分析、電流測定、ボルタンメトリー、又は電位差測定の電気化学的検出技術のいずれかによってグルコースとケトンをアッセイするように動作可能であり得る。
【0035】
複数の作用電極を有し、図4に示されるものとは異なる代替センサー構成は、別個の対向電極及び参照電極320、321の代わりに対向電極/参照電極、及び/又は明示的に示されるものとは異なる特徴層及び/又は膜配置を特徴とし得る。例えば、対向電極320及び参照電極321の配置は、図4に示されているものとは逆にすることができる。さらに、作用電極304及び306は、必ずしも、図4に示されるように、基板302の対向する面上に存在する必要はない。
【0036】
適切なセンサー構成は、性質が実質的に平面である電極を特徴とし得るが、非平面電極を特徴とするセンサー構成は、有利であり、本明細書の開示での使用に特に適していることが理解されるべきである。特に、互いに同心円状に配置された実質的に円筒形の電極は、以下に記載するように、物質移動制限膜の堆積を容易にし得る。図5A~5Dは、互いに同心円状に配置された実質的に円筒形の電極を特徴とする分析物センサーの斜視図を示す。図5A~5Dは、2つの作用電極を特徴とするセンサー構成を示しているが、1つの作用電極又は3つ以上の作用電極のいずれかを有する同様のセンサー構成が、本明細書の開示の応用によって可能であることを理解されたい。
【0037】
図5Aは、複数の電極が実質的に円筒形であり、中央基板の周りに互いに同心円状に配置されている例示的なセンサー構成の斜視図を示している。図示されるように、分析物センサー400は、すべての電極及び誘電体層が互いに同心円状に配置されている中央基板402を有する。特に、作用電極410は、中央基板402の表面上に配置され、誘電体層412は、センサー先端404から遠位の作用電極410の一部上に配置される。作用電極420は、誘電体層412上に配置され、誘電体層422は、センサー先端404の遠位にある作用電極420の一部の上に配置される。対極430は、誘電体層422上に配置され、誘電体層432は、センサー先端404の遠位にある対極430の一部の上に配置される。参照電極440は、誘電体層432上に配置され、誘電体層442は、センサー先端404の遠位にある参照電極440の一部の上に配置される。したがって、作用電極410、作用電極420、対向電極430、及び参照電極440の露出面は、分析物センサー400の縦軸Bに沿って互いに離間されている。縦軸に沿った作用電極410及び作用電極420の間隔はまた、上記で提供されたものなどの実質的に平面のセンサー構成でも実現され得る。
【0038】
さらに図5Aを参照すると、活性領域414a及び414bは、それぞれ、作用電極410及び420の露出した面上に配置され、それによって、グルコース及び/又はケトンの検出が行われるために流体との接触が行われることを可能にする。活性領域414a及び414bは、図5Aでは3つの別個の領域として描かれているが、代替のセンサー構成では、3つより少ない又は多い領域が存在し得ることが理解されるべきである。活性領域414a及び414bのそれぞれはまた、それぞれ作用電極410及び420の露出した面上に環として配置される連続層であり得る。
【0039】
上記のセンサー構成と同様に、少なくとも作用電極410及び420ならびにその上の活性領域414a及び414bは、図5Aのセンサー構成において膜で被覆されている。単一の組成物を特徴とする膜が活性領域414a及び414bを被覆してもよいが、膜組成物は、異なる透過性値を与えるために各場所で組成が異なり、それによって各分析物のセンサー応答を平準化することができる。図5Aに示されるセンサー構成において、第1の組成物を有する膜部分450は、誘電体層412の任意の被覆とともに、作用電極410及び活性領域414aを被覆し、第1の組成とは異なる第2の組成物を有する膜部分451は、作用電極420及び活性領域414b、ならびに、任意で誘電体層412及び/又は誘電体層422を被覆する。図5Aには示されていないが、対向電極430、参照電極440、及び誘電体層432及び442もまた、膜451で被覆され得る。
【0040】
図5Bは、図5Aに示したものとは別のセンサー構成を示している。この構成では、センサーテール上のすべての部材が膜コーティングされている。図5Bに示されるセンサー構成では、センサー401は、作用電極410、活性領域414a、及び誘電体層412を含み、これらのそれぞれは、膜452の第1の部分452aで被覆されている。第1の部分452aは、2つの膜層を含み、それにより、二層膜を画定する。膜452の第2の部分452bは、作用電極420、活性領域414b、及びセンサーテールの残り(すなわち、対向電極430、参照電極440、及び誘電体層422,432,442)を単一の膜ポリマーで被覆する。2つの部分452a及び452bを有するものとして示されているが、追加の部分が存在し得ることが理解されるべきである。さらに、第1の部分452aは、図示のように二層膜であってもよいか、複数の膜ポリマーの均質な混合物であってもよい。本開示の様々な実施形態によれば、二層膜として第1の部分452aを有するセンサー構成は、ケトン応答性である活性領域414a及びグルコース応答性である活性領域414bを特徴とし得る。適切な膜ポリマー及び各位置での膜452の第1及び第2の部分452a、452bの堆積のための技術に関するさらなる詳細は、以下に提供される。
【0041】
図5A及び5Bの様々な電極の配置は、明示的に示されているものとは異なる場合があることをさらに理解されたい。例えば、対極430及び参照電極440の位置は、図5A及び5Bに示されている構成から逆にすることができる。同様に、作用電極410及び420の位置は、図5A及び5Bに明示的に示されているものに限定されない。図5Cは、図5Bに示されるものとは別のセンサー構成を示し、センサー405は、センサー先端404からより近位に位置する対向電極430及び参照電極440と、センサー先端404のより遠位に位置する作動電極410及び420を有する。作用電極410,420がセンサー先端404に対してより遠位に配置されるセンサー構成は、活性領域414a,414b(図5Cに例示的に示される5つの別個の検出領域)の成膜のためにより大きな表面積を与え、場合によっては信号強度の増強を促進するため有利となり得る。第1の部分452aによって定義される二層膜及び第2の部分452bによって定義される均質な膜の位置は、作用電極410及び420の位置の変化に対応するように同様に調整されている。
【0042】
図5A~5Cは、それぞれが中央基板402上に支持されるセンサー構成を示しているが、代替のセンサー構成が代わりに電極によって支持され得、中央基板402がなくてもよいことが理解されるべきである。特に、最も内側の同心電極を利用して、他の電極及び誘電体層を支持することができる。図5Dは、図5Cに示されるものとは別のセンサー構成を示し、センサー406は中央基板402を含まず、対向電極430は最も内側の同心電極であり、参照電極440、作用電極410,420、及び誘電体層432,442,412,422をその上に連続して配置するために使用される。本明細書の開示を考慮して、他の電極及び誘電体層構成が、中央基板402を欠くセンサー構成で使用され得ることが再び理解されるべきである。したがって、図5Dに示されているセンサー構成は、本質的に例示的であり、非限定的であると見なされるべきである。
【0043】
したがって、本明細書に開示される分析物センサーのいくつかの実施形態は、少なくとも作用電極、作用電極の表面に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域、及び作用電極の表面にグルコース応答性活性領域から離れて配置された、ケトン応答性活性領域を含むセンサーテールを含み得る。ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含む。各活性領域は一定の酸化還元電位を有し、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位は、ケトン応答性活性領域の酸化還元電位から十分に分離されており、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域いずれかからのシグナルの独立した生成を可能にする。
【0044】
グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域がこのように単一の作用電極上に配置される場合、活性領域の1つは、以下に記載するように、各分析物の検出を容易にするために別々に調べることができるように構成され得る。すなわち、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域のいずれかが、他の活性領域とは独立して信号を生成し得る。
【0045】
本明細書に開示される分析物センサーのいくつか又は他の実施形態は、異なる作用電極の表面上のグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を特徴とし得る。そのような分析物センサーは、少なくとも第1の作用電極と第2の作用電極とを備えたセンサーテールであって、第1の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域と、第1の部分がケトン応答性活性領域を被覆し、第2の部分がグルコース応答性活性領域を被覆する膜であって、第1の部分及び第2の部分は異なる組成を有する膜とを有するセンサーテールを有し得る。
【0046】
特定の実施形態では、第1の部分は多成分からなり、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、第2の部分は均質であり、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの1つを含む。
【0047】
本開示の様々な実施形態によれば、電子伝達剤は、本明細書に開示される例示的なセンサー構成のいずれかにおいて、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域に存在し得る。適切な電子移動剤は、いずれかの分析物が対応する活性領域内で酵素的酸化還元反応を受けた後、隣接する作用電極への電子の輸送を促進し、それによってその特定の分析物の存在を示す電流を生成し得る。生成される電流の量は、存在する分析物の量に比例する。使用するセンサー構成に応じて、グルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域の電子伝達剤は同一であっても異なっていてもよい。例えば、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域が同一の作用電極上に配置される場合、各活性領域内の電子移動剤は異なる可能性がある(例えば、電子移動剤が異なる酸化還元電位を示すために化学的に異なる)複数の作用電極が存在する場合、各作用電極は別々に調査され得るので、各活性領域内の電子移動剤は同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
本開示の様々な実施形態によれば、適切な電子移動剤には、標準のカロメル電極(SCE)の酸化還元電位より数百ミリボルトだけ高い、又は低い酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性の、イオン、錯体又は分子(例えば、キノン)が含まれる。いくつかの実施形態によれば、適切な電子伝達剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,134,461号及び第6,605,200号に記載されているものなどの低電位オスミウム錯体を含み得る。適切な電子移動剤の追加の例には、米国特許第6,736,957号、第7,501,053号及び第7,754,093号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な電子移動剤には、例えば、そのメタロセン化合物を含む、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノ鉄酸塩)、又はコバルトの、金属化合物又は錯体が含まれる。金属錯体に適した配位子には、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)などの二座又はより高い座数の配位子も含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。
【0049】
グルコース及びケトンを検出するのに適した活性領域はまた、電子移動剤が共有結合しているポリマーを含み得る。本明細書に開示される電子移動剤のいずれも、活性領域内のポリマーへの共有結合を促進するための適切な機能性を含み得る。ポリマー結合電子移動剤の適切な例には、米国特許第8,444,834号、第8,268,143号及び第6,605,201号に記載されているものが含まれ、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。活性領域に含めるのに適したポリマーには、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はそれらの任意のコポリマーが含まれ得るが、これらに限定されない。活性領域に含めるのに適している可能性のある例示的なコポリマーには、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルなどのモノマー単位を含むものが含まれる。各活性領域内のポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
本開示の特定の実施形態では、各活性領域を被覆する物質移動制限膜は、少なくとも架橋されたポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。物質移動制限膜の組成は、物質移動制限膜が各活性領域を被覆する場合、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、グルコース応答性活性領域を被覆する物質移動制限膜の部分は、単一成分(単一膜ポリマーを含む)であり得、ケトン応答性活性領域を被覆する物質移動制限膜の部分は、複数成分(2つ以上の異なる膜ポリマーを含み、そのうちの1つはポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマー)であり得る。多成分膜は、二層膜として、又は2つ以上の膜ポリマーの均一な混合物として存在し得る。均一な混合物は、溶液中で2つ以上の膜ポリマーを組み合わせ、次に作用電極上に溶液を堆積させることによって堆積させることができる。本開示のさらにより具体的な実施形態では、グルコース応答性活性領域は、ポリビニルピリジン-コ-スチレンコポリマーを含む膜で被覆され得、ケトン応答性活性領域は、ポリビニルピリジン及びポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み、二層膜又は均一混合物としてのコポリマーの多成分膜で被覆され得る。
【0051】
電子移動剤と各活性領域を含むポリマーとの間の共有結合の方法は、特に限定されるとは考えられていない。電子移動剤のポリマーへの共有結合は、共有結合した電子移動剤を有するモノマーユニットを重合することによって起こり得るか、又はポリマーがすでに合成された後、電子移動剤をポリマーと別々に反応させることができる。いくつかの実施形態によれば、二官能性スペーサーは、活性領域内のポリマーに電子移動剤を共有結合し得、第1の官能基は、ポリマーと反応性を有し(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化することができる官能基)、及び第2の官能基(例えば、金属イオンを配位する配位子と反応する官能基)は電子移動剤と反応することができる。
【0052】
同様に、本開示のいくつか又は他の様々な実施形態によれば、活性領域内の1つ以上の酵素は、ポリマーに共有結合され得る。複数の酵素を含む酵素系が所与の活性領域に存在する場合、いくつかの実施形態では、複数の酵素のすべてがポリマーに共有結合することができ、他の実施形態では、複数の酵素の一部のみがポリマーに共有結合し得る。例えば、酵素系を含む1つ以上の酵素は、ポリマーに共有結合されることができ、少なくとも1つの酵素は、非共有結合された酵素がポリマー内に物理的に取り込まれるように、ポリマーと非共有結合の態様で結合され得る。より具体的な実施形態によれば、所与の活性領域におけるポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤が導入された架橋剤を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との反応(例えば、リジン中の遊離側鎖アミンとの)のための適切な架橋剤には、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアヌル、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はそれらの誘導体化したものなどの架橋剤が含まれる。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。酵素のポリマーへの架橋は一般に分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。
【0053】
電子移動剤及び/又は酵素は、共有結合以外の手段によっても、活性領域内のポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、イオン的に又は配位的にポリマーと結合し得る。例えば、帯電したポリマーは、反対に帯電した電子移動剤又は酵素とイオン的に結合し得る。さらに他の実施形態では、電子伝達剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合することなく、ポリマー内に物理的に取り込まれ得る。物理的に取り込まれた電子移動剤及び/又は酵素は、依然として流体と適切に相互作用して、活性領域から実質的に浸出されることなく分析物の検出を促進し得る。
【0054】
特定の実施形態では、グルコース応答性活性領域のグルコース応答性酵素は、ポリマーにも共有結合している電子伝達剤とともに、グルコース応答性活性領域のポリマーに共有結合し得る。
【0055】
他の特定の実施形態では、ケトン応答性活性領域内の酵素系の酵素の少なくとも一部は、ポリマーに共有結合されている電子伝達剤とともに、ケトン応答性活性領域のポリマーに共有結合し得る。ケトンの検出を容易にするのに適している可能性のある、1つの適切な酵素システムは、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、及びジアホラーゼである(図2Aを参照)。本開示の特定の実施形態において、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼは、ケトン応答性活性領域においてポリマーに共有結合され得、そしてNADは、ポリマーと非共有に係合され得る。ケトン応答性活性領域内のポリマーは、NADの外向き拡散が制限されるように選択することができる。ケトン応答性活性領域を被覆する膜ポリマーは、同様に、NADの外向き拡散を制限して、妥当なセンサー寿命(数日から数週間)を促進する一方で、検出を促進するのに十分な内向きケトン拡散を可能にする。さらに別の実施形態では、上記の酵素系の成分は、ポリマーに共有結合している電子伝達剤とともに、上記のように、ケトン応答性活性領域内のポリマーと共有結合し、又は非共有結合の態様で係合し得る。
【0056】
本明細書に開示される分析物センサーのグルコース応答性及びケトン応答性活性領域は、1つ以上の分離した領域(例:1~約10個の領域、又はこれより多数の領域)からなり、サイズが約0.01mm~約1mmであり、ただし、活性領域内において、より大きな又はより小さな個々の領域もまた、本明細書で企図される。円筒形電極の周りの連続したバンドとして画成される活性領域もまた、本明細書の開示において可能である。
【0057】
より具体的な実施形態では、本発明の検体センサーは、組織への挿入のために構成されたセンサーテールを含み得る。適切な組織は特に限定されるとは考えられず、上記でより詳細に記載した。同様に、センサーテールを組織内の特定の位置に展開するための考慮事項についても、上記に記載している。
【0058】
グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域が単一の作用電極上に配置される実施形態において、グルコース応答性活性領域に関連する酸化還元電位は、少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけケトン応答性活性領域の酸化還元電位から分離され得る。酸化還元電位間の分離の上限は、インビボでの動作電気化学ウィンドウによって決定される。2つの活性領域の酸化還元電位を互いに十分に分離することにより、電気化学反応は、2つの活性領域のうちの1つ内(すなわち、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域内)において、他の活性領域内で電気化学反応を実質的に誘発することなく起こる。したがって、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域の1つからの信号は、対応する酸化還元電位(より低い酸化還元電位)以上であるが、他のグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)より低い電位で、独立して生成され得る。対照的に、以前に調査されなかった他の活性領域の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)以上では、電気化学反応は、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の両方で起こり得る。したがって、より高い酸化還元電位以上で得られる信号には、グルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域の両方からの信号寄与が含まれる可能性があり、観察される信号は複合信号である。次に、酸化還元電位以上の1つの活性領域(グルコース応答活性領域又はケトン応答活性領域のいずれか)からの信号の寄与は、複合信号から、対応する酸化還元電位以上のグルコース応答活性領域又はケトン応答活性領域のいずれかからのみ得られた信号を差し引くことによって決定できる。
【0059】
より詳細な実施形態では、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域は、活性領域が同一作用電極上に位置する場合、互いに大きさが十分に分離された酸化還元電位を与えるように、異なる電子移動剤を含み得る。より詳細には、グルコース応答性活性領域は、第1の電子伝達剤を含み得、ケトン応答性活性領域は、第2の電子伝達剤を含み得、第1及び第2の電子伝達剤は異なる。本開示の様々な実施形態によれば、所与の電子移動剤中に存在する金属中心及び/又は配位子を変化させて、2つの活性領域内の酸化還元電位の十分な分離を提供することができる。
【0060】
理想的には、単一の作用電極上に配置されたグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域は、所与の電位で分析物センサーを操作すると急速に定常電流を達成するように構成され得る。定常電流の迅速な達成は、その酸化還元電位以上の電位にさらされるとその酸化状態を迅速に変化させる各活性領域の電子移動剤を選択することによって促進され得る。活性領域を可能な限り薄くすることはまた、定常電流の迅速な達成を容易にし得る。例えば、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域の適切な厚さは、約0.1ミクロン~約10ミクロンの範囲であり得る。いくつか又は他の実施形態では、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は金属ナノ粒子などの導電性材料を1つ以上の活性領域内で組み合わせると、定常電流の迅速な達成を促進することができる。導電性粒子の適切な量は、活性領域の約0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約50重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得る。応答の安定性を促進するために安定剤を使用することもできる。
【0061】
各分析物に対する分析物センサーの感度(出力電流)は、活性領域の被覆率(面積又はサイズ)、活性領域の互いに対する面積比、活性領域を被覆する物質移動制限膜の同一性、厚さ、及び/又は組成を変えることによって変えることができることも理解されたい。これらのパラメータの変更は、本明細書の開示の利益を一度付与された当業者によって容易に実施することができる。
【0062】
単一の作用電極上にグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を特徴とする分析物センサーを使用してグルコース及びケトンをアッセイするための検出方法は、以下を含み得る:グルコース及びケトンの少なくとも1つを含む流体に分析物センサーを曝露する。分析物センサーは、少なくとも作用電極、特に単一の作用電極、ならびに作用電極の表面に配置され、少なくともグルコース応答性活性領域及び、グルコース応答性活性領域から離れた空間に配置されたケトン応答性活性領域を含むセンサーテールを有する。グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素及びポリマーを含み、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる2つ以上の酵素を含む酵素系を含む。各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域(例えば、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域のいずれ一方)の酸化還元電位は、他方の活性領域からの信号の生成とは独立して、第1の活性領域からの信号の生成を可能にするために、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域の他方の酸化還元電位から十分に分離されている。この方法はさらに、第1の信号を取得する工程であって、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位の低い方以上ではあるが、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位の高い方未満で取得することによって、信号は、流体中のグルコース又はケトンの1つの濃度に比例する、第1の信号を取得する工程と、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位のいずれか高い方以上で第2の信号を取得する工程であって、第2の信号が、グルコース応答性活性領域からの信号寄与と、ケトン応答活性領域からの信号寄与とを含む複合信号である、第2の信号を取得する工程と、第2の信号から第1の信号を差し引いて差信号を取得し、差信号は、グルコース及びケトンのうちの1つの濃度に比例する、差し引く工程とを備える。
【0063】
より詳細な実施形態では、第1の活性領域に関連する酸化還元電位は、第1の活性領域からの信号の独立した生成のための十分な分離を提供するために、第2の活性領域の酸化還元電位から、少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけ分離され得る。特に、第1の活性領域と第2の活性領域との酸化還元電位は、約100mV~約500mV、又は約100mV~約400mV、又は約100mV~約300mVだけ離れていてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、各分析物のルックアップテーブル又は検量線を参照することにより、各活性領域に関連する信号を、対応するグルコース又はケトンの濃度に相関させることができる。各分析物のルックアップテーブルは、既知の分析物濃度を有する複数のサンプルを分析し、各分析物の各濃度でのセンサー応答を記録することによって作成することができる。同様に、各分析物の較正曲線は、濃度の関数として各分析物の分析物センサー応答をプロットし、較正範囲にわたって適切な較正関数を決定することによって(例えば、回帰、特に線形回帰によって)決定することができる。
【0065】
プロセッサは、ルックアップテーブル内のどのセンサー応答値が未知の分析物濃度を有するサンプルについて測定されたものに最も近いかを決定し、それに応じて分析物濃度を報告することができる。いくつか又は他の実施形態では、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサー応答値がルックアップテーブルに記録された値の間にある場合、プロセッサは2つのルックアップテーブル値の間を補間して分析物濃度を推定し得る。補間は、ルックアップテーブルで報告された2つの値の間の線形濃度変動を想定する場合がある。補間は、センサーの応答がルックアップテーブルの特定の値と十分に異なる場合(約10%以上の変動など)に使用できる。
【0066】
同様に、いくつか又は他の様々な実施形態によれば、プロセッサは、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサー応答値を対応する較正関数に入力することができる。次に、プロセッサは、それに応じて分析物濃度を報告することができる。
【0067】
別個の作用電極上にグルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を特徴とする分析物センサーを使用してグルコース及びケトンをアッセイするための検出方法は、以下を含み得る:グルコース及びケトンの少なくとも1つを含む流体に分析物センサーを曝露する。分析物センサーは、少なくとも第1の作用電極と第2の作用電極とを備えたセンサーテールであって、第1の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置されたグルコース応答性活性領域と、第1の部分がケトン応答性活性領域を被覆し、第2の部分がグルコース応答性活性領域を被覆する膜とを有するセンサーテールを有し得る。グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素を含み、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を有する。
【0068】
特定の実施形態では、第1の部分は多成分からなり、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、第2の部分は均質であり、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの1つを含むことができる。このように、グルコース応答性活性領域を被覆する膜は、ケトン応答性活性領域を被覆する多成分膜とは組成が異なる。
【0069】
この方法は、第1の作用電極及び第2の作用電極に一定の電位を印加する工程と、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で第1の信号を取得する工程であって、第1の信号は流体でのグルコースの濃度に比例する、第1の信号を取得する工程と、ケトン応答活性領域の酸化還元電位以上の第2の信号を取得する工程であって、第2の信号は流体中のケトンの濃度に比例する、第2の信号を取得する工程と、第1の信号をグルコースの濃度に、及び第2の信号を流体中のケトンの濃度相関させる工程とをさらに備える。
【0070】
膜の第1の部分は、本開示のいくつかの実施形態における膜ポリマーの混合物を含み得るか、又は本開示の他の実施形態における少なくとも2つの膜層を有する二層膜又は他の膜構造を含み得る。膜の第1の部分が二層膜を含む場合、二層膜は、ケトン応答性活性領域上に配置された第1の膜ポリマー、及び第1の膜ポリマー上に配置された第2の膜ポリマーを有し得る。グルコース応答性活性領域を被覆する均質な膜は、第2の膜ポリマーをからなり得る。すなわち、第1の膜ポリマーは、ケトン応答性活性領域上に直接配置され得、第2の膜ポリマーは、第1の膜ポリマー及びグルコース応答性活性領域上に配置され得る。したがって、膜の第1の部分は、膜の第2の部分よりも厚くてもよい。上記のように、このタイプの二層膜及び均質な膜は、本開示のいくつかの実施形態において、特定の電極構成の浸漬コーティングによって堆積され得る。本開示の特定の実施形態では、膜の第1の部分は、ポリビニルピリジン(PVP)及びポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み得、膜の第2の部分は、ポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み得る。
【0071】
より具体的な実施形態によれば、第1の信号及び第2の信号は、異なる時刻に測定され得る。したがって、そのような実施形態では、電位は、第1の作用電極及び第2の作用電極に交互に印加され得る。他の特定の実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に測定することができ、その場合、電位を両方の電極に同時に印加することができる。いずれの場合も、各活性領域に関連する信号は、ルックアップテーブル又はキャリブレーション関数を使用して、上記と同様の方法でグルコース及びケトンの濃度に相関させることができる。
【0072】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
A.グルコースとケトンに反応する分析物センサー。分析物センサーは、少なくとも作用電極を含むセンサーテールと、作用電極の表面に配置されグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域と、作用電極の表面に配置され、グルコース応答性活性領域から離れて配置されたケトン応答性活性領域であって、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含むケトン応答性活性領域とを備え、ここで、各活性領域は酸化還元電位を有し、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位は、ケトン応答性活性領域の酸化還元電位から十分に分離されていることによって、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域のうちの一方からの信号の独立した生成を可能にする。
【0073】
B.単一の分析物センサーを使用してグルコースとケトンを分析する方法。この方法は、分析物センサーを、グルコース及びケトンのうちの少なくとも1つを含む流体に曝露する工程であって、分析物センサーは、少なくとも作用電極と、作用電極の表面に配置され第1の酸化還元電位を有するグルコース応答性活性領域と、上記の作用電極の表面にグルコース応答性活性領域から離れて配置され、第2の酸化還元を有するケトン応答性活性領域とを備えたセンサーテールを有し、ここで、グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素を含み、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含み、第1の酸化還元ポテンシャル及び第2の酸化還元電位は、グルコース応答性活性領域又はケトン応答性活性領域の1つからの信号の独立した生成を可能にするために、互いに十分に分離されている、分析物センサーを曝露する工程と、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位の低い方以上であるが、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位の高い方より低い酸化還元電位にて第1の信号を取得する工程であって、第1の信号は流体中のグルコース又はケトンの1つの濃度に比例する、第1の信号を取得する工程と、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位のいずれか高い方以上で第2の信号を取得する工程であって、第2の信号は、グルコース応答性活性領域からの第1の信号寄与及びケトン応答性活性領域からの第1の信号寄与の複合したものである、第2の信号を取得する工程と、第2の信号から第1の信号を差し引いて差信号を取得し、差信号は、流体中のグルコース又はケトンのうちの1つの濃度に比例する、差し引く工程とを備える。
【0074】
C.グルコースとケトンに反応し、2つの作用電極を有する分析物センサー。分析物センサーは、以下を含む。少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサーテールと、第1の作用電極の表面に配置されグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域と、第2の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域であって、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含む、ケトン応答性活性領域と、ケトン応答性活性領域を被覆する第1の膜、及びグルコース応答性活性領域を被覆する第2の膜とを備え、ここで、第1の膜及び第2の膜は、異なる透過性値を有する。
【0075】
D.2つの作用電極を有する単一の分析物センサーを使用してグルコース及びケトンをアッセイするための方法。この方法は、分析物センサーを、グルコース及びケトンのうちの少なくとも1つを含む流体に曝露する工程であって、分析物センサーは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を有するセンサーテールと、第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域と、第2の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域と、ケトン応答性活性領域を被覆する第1の膜、及びグルコース応答性活性領域を被覆する第2の膜とを備え、ここで、第1の膜及び第2の膜は、異なる透過性値を有し、グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素を含み、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含む、分析物センサーを曝露する工程と、第1の作用電極及び第2の作用電極に一定の電位を印加する工程と、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で第1の信号を取得する工程であって、第1の信号は、流体中のグルコースの濃度に比例する、第1の信号を取得する工程と、ケトン応答性活性領域の酸化還元電位以上の第2の信号を取得する工程であって、第2の信号は、流体中のケトンの濃度に比例する、第2の信号を取得する工程と、第1の信号を流体中のグルコースの濃度に相関させ、第2の信号を流体中のケトンの濃度に相関させる工程とを備える。
【0076】
実施形態A~Dのそれぞれは、任意の組み合わせで以下の追加の要素のうちの1つ以上を有し得る。
要素1:センサーテールは組織に挿入するように構成されている。
【0077】
要素2:ここで、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位は、ケトン応答性活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている。
要素3:ここで、グルコース応答性活性領域は、第1の活性領域でポリマーに共有結合した第1の電子移動剤を含み、ケトン応答性活性領域は、第2の活性領域でポリマーに共有結合した第2の電子移動剤を含み、第1及び第2の電子移動剤は異なる。
【0078】
要素4:ここで、グルコース応答性酵素は、グルコース応答性活性領域でポリマーに共有結合し、酵素系の少なくとも2つの酵素のうちの1つ以上は、ケトン応答性活性領域でポリマーに共有結合している。
【0079】
要素5:ここで、分析物センサーは、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を被覆する物質移動制限膜をさらに含む。
要素6:流体は生体液であり、分析物センサーはインビボで生体液に曝露される。
【0080】
要素7:ここで、物質移動制限膜は、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域を被覆する。
要素8:ここで、第1の膜は、ケトン応答性活性領域を被覆する多成分膜であり、多成分膜は、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、第2の膜は、グルコース応答性活性領域を被覆し、多成分膜とは組成が異なる均質な膜であり、均質な膜は、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの1つを含む。
【0081】
要素9:ここで、多成分膜は二層膜を含む。
要素10:第1の膜ポリマーがケトン応答性活性領域上に直接配置され、第2の膜ポリマーが第1の膜ポリマー上に配置されて二層膜を規定し、均質な膜が第2の膜ポリマーを含む。
【0082】
要素11:ここで、多成分膜は、第1の膜ポリマーと第2の膜ポリマーとの混合物を含む。
要素12:ここで、多成分膜は、ポリビニルピリジン及びポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み、均質な膜は、ポリビニルピリジン-コ-スチレンを含む。
【0083】
要素13:ここで、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域はそれぞれ、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域のそれぞれにおいてポリマーに共有結合している電子伝達剤を含む。
【0084】
要素14:ここで、第1の信号及び第2の信号は、異なる時刻に測定される。
要素15:ここで、第1の信号及び第2の信号は、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に取得される。
【0085】
非限定的な例として、A及びBに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。1と2; 1と3;1と4;1と5;2と3;2と4;2と5;3と4;3と5;4と5;1と6;2と6;3と6;4と6;5と6。
【0086】
さらなる非限定的な例として、C及びDに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。1と8;4と8;1と9;4と9;1と10;4と10;1と11;4と11;1と12;4と12;1と13;4ろ13;1と14;4と14;1と15;4と15;4と9;9と10;4と11;1と12;4と13;4と14;1と15;4と15;4と9;4,9,10;4と11;4と12;4と13;4と14;4と15;8と9;8~10;8と11;8と12;8と13;8と14;8と15;9と10;9と11;9と12;9と13;9と14;9と15;11と12;11と13;11と14;11と15;12と13;12と14;12と15;13と14;13と15;14と15。
【0087】
本明細書に開示される追加の実施形態は、以下を含む。
A’.グルコースとケトンに反応する分析物センサー。分析物センサーは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサーテールと、第1の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域であって、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含むケトン応答性活性領域と、第2の作用電極の表面に配置されグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域と、ケトン応答性活性領域を被覆する第1の部分、及びグルコース応答性活性領域を被覆する第2の部分を有する膜とを備え、第1の部分及び第2の部分は、異なる組成を有する。
【0088】
B’.単一の分析物センサーを使用してグルコースとケトンを分析する方法。この方法は、分析物センサーを、グルコース及びケトンのうちの少なくとも1つを含む流体に曝露する工程であって、分析物センサーは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を有するセンサーテールと、第1の作用電極の表面に配置されたケトン応答性活性領域と、第2の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域と、ケトン応答性活性領域を被覆する第1の部分、及びグルコース応答性活性領域を被覆する第2の部分を有する膜とを備え、ここで、第1の部分及び第2の部分は、異なる組成からなり、グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素を含み、ケトン応答性活性領域は、ケトンの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む酵素系を含む、分析物センサーを曝露する工程と、第1の作用電極及び第2の作用電極に一定の電位を印加する工程と、グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上で第1の信号を取得する工程であって、第1の信号は、流体中のグルコースの濃度に比例する、第1の信号を取得する工程と、ケトン応答性活性領域の酸化還元電位以上の第2の信号を取得する工程であって、第2の信号は、流体中のケトンの濃度に比例する、第2の信号を取得する工程と、第1の信号を流体中のグルコースの濃度に相関させ、第2の信号を流体中のケトンの濃度に相関させる工程とを備える。
【0089】
要素1’:ここで、第1の部分は多成分であり、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含む。
要素2’:第2の部分は均質であり、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの1つを含む。
【0090】
要素3’:ここで、第1の部分は、少なくとも2つの膜層を含む。
要素4’:ここで、第1の膜ポリマーは、ケトン応答性活性領域上に直接配置され、第2の膜ポリマーは、第1の膜ポリマー及びグルコース応答性活性領域上に配置される。
【0091】
要素5’:ここで、膜の第1の部分は、膜の第2の部分よりも厚い。
要素6’:ここで、膜の第1の部分は、ポリビニルピリジン及びポリビニルピリジン-コ-スチレンを含み、膜の第2の部分は、ポリビニルピリジン-コ-スチレンを含む。
【0092】
要素7’:ここで、膜の第1の部分は、第1の膜ポリマーと第2の膜ポリマーとの混合物を含む。
要素8’:ここで、第1の部分及び第2の部分は、ケトン応答性活性領域及びグルコース応答性活性領域を被覆する連続膜を画定する。
【0093】
要素9':センサーテールは組織に挿入するように構成されている。
要素10’:ここで、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域はそれぞれ、グルコース応答性活性領域及びケトン応答性活性領域のそれぞれにおいてポリマーに共有結合している電子伝達剤を含む。
【0094】
要素11':ここで、グルコース応答性酵素は、グルコース応答性活性領域でポリマーに共有結合し、酵素系の少なくとも2つの酵素のうちの1つ以上は、ケトン応答性活性領域でポリマーに共有結合している。
【0095】
要素12’:流体は生体液であり、分析物センサーはインビボで生体液に曝露される。
要素13’:ここで、第1の信号及び第2の信号は、異なる時刻に測定される。
要素14’:ここで、第1の信号及び第2の信号は、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に取得される。
【0096】
非限定的な例として、A ’及びB’に適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。1’と2’;1’と3’;1’,3’,4’;1’~4’;1’と5’;1’と6’;1’と7’;1’と8’;1’と9’;1’と10’;1’と11’;2’と3’;3’と4’;2’~4’;3’と5’;3’と6’;3’と7’;3’と8’;3’と9’;3’と10’;3’と11’;3’~5’;3’,4’,6’;3’と4’;3’,4’,’;3’,4’,9’;3’,4’,10’;3’,4’,11’;6’と7’;7’と8’;7’と9’;7’と10’;7’と11’;8’と9’;8’と10’;8’と11’;10’と11’、これらのいずれも要素12’,13’,14’とさらに組み合わせることができる。B’に適用可能な他の例示的な組み合わせには、要素12’、要素13’又は要素14’、要素13’又は要素14’;12’と13’;及び12’と14’のうちの1つ以上と組み合わせた要素1’~11’のいずれか1つが含まれる。
【0097】
本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するものではない。
【0098】
(実施例)
式1に示す構造を有するポリ(ビニルピリジン)配位遷移金属錯体を調製した。この遷移金属錯体及びそれによる電子移動に関するさらなる詳細は、上記の参照により組み込まれた、一般に所有されている米国特許第6,605,200号に提供されている。各モノマーの下付き文字は、例示的な原子比を表し、特定のモノマーの順序を示すものではない。
【0099】
【化1】
実施例1:協調して作用するジアホラーゼとβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを有する分析物センサーを使用したケトンの検出。
この例では、図2Aの酵素システムを使用してケトンの検出を容易にした。以下の表1に示すスポッティング配合物を炭素作用電極上にコーティングした。作用電極上に、それぞれ約0.01mmの面積を有する6つの領域を配置するために堆積を行った。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。その後、均質なPVP膜を、4mLの100mg/mL PVP、0.2mLの100mg/mL PEGDGE400(分子量約400のPEGDGE)、及び0.0132mLの100mg/mLポリジメチルシロキサン(PDMS)で処方されたコーティング溶液を使用するディップコーティングを介して作用電極に付着させた。膜の硬化は、乾燥したバイアル内、25℃で24時間、続いて56℃で48時間行った。
【0100】
【表1】
ケトン分析は、電極を100mM PBS緩衝液(pH=7.4)に33℃で浸漬し、ケトン代用物として様々な量のβ-ヒドロキシブチラート(合計0、1、2、3、4、6、及び8mMのβ-ヒドロキシブチラートを添加)を注入することによって実施した。図6は、ジアホラーゼ、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極を様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度に曝露した時の応答の4つの複製を示している。テストした4つのセンサーの信号応答が重なっているため、図6には2つのトレースしかない。示されているように、電流応答は、その後安定化する前に、新しいβ-ヒドロキシブチラート濃度への曝露後、数分の間に増加した。図7は、図6の電極の平均電流応答に対するβ-ヒドロキシブチラート濃度の例示的なプロットを示している。ケトンセンサーは、図8に示すように、長時間の測定でも安定した応答を示した。図8は、100mM PBS中のβ-ヒドロキシブチレート8mMに33℃で2週間曝露した場合の、図6の電極の電流応答の例示的なプロットを示している。測定期間中の平均信号損失はわずか3.1%であった。
【0101】
実施例2:別々の作用電極上にグルコース応答性活性領域とケトン応答性活性領域を有する分析物センサーを使用したグルコースとケトンの検出。
この実施例では、分析物センサーは、第1の作用電極上に被着したグルコースオキシダーゼを含むグルコース応答活性領域と、第2の作用電極上に被着したジアホラーゼ及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含むケトン応答活性領域を用いて調製した。2つの作用電極は、平面誘電体基板の対向する面に配置された炭素電極であった。
【0102】
グルコース応答性活性領域は、以下の表2に指定されたグルコースオキシダーゼ製剤を使用して、第1の作用電極上に堆積された。活性領域の堆積は、それぞれが約0.01mmの面積を有する5つの別個の領域を作用電極上に配置することによって実施された。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0103】
【表2】
ケトン応答性活性領域は、上記の表1に指定されたジアホラーゼ/β-ヒドロキシブチラート製剤を使用して、第2の作用電極上に堆積された。活性領域の堆積及び硬化は、上記の実施例1のように実施されたが、この場合、5つの検出領域が堆積された。ケトン応答性活性領域とグルコース応答性活性領域の硬化を同時に行った。
【0104】
活性領域の堆積に続いて、以下のように、二層膜がケトン応答性活性領域上に堆積された。PVP膜は、最初に、修正されたスロットコーティング法によって、ケトン応答性活性領域上に堆積された。この例のPVP膜は、4mLの160mg/mL PVP、0.133mLの100mg/mL PEGDGE400、及び0.0132mLの100mg/mL PDMSで処方されたコーティング溶液から堆積された。次に、25℃で24時間硬化を行った。スロットコーティング手順は、シリンジポンプを使用して、センサーテールの列の少し上にあるノズルからコーティング溶液をポンプで送ることによって実施された。コーティング溶液は、センサーテールの列を横切って一定の速度でノズルを動かしながら、一定の速度で圧送された。流速、ノズル直径、ノズル移動速度、ノズルとセンサーテールとの間の距離、溶液粘度、温度、及び溶媒などのパラメータを変化させて、所望の厚さを有する膜を得た。
【0105】
その後、アセンブリ全体(すなわち、両方の作用電極、グルコース応答活性領域、ケトン応答活性領域を含む作用電極上のPVPコーティング、及び対向電極及び参照電極)をディップコーティングして、その上に架橋ポリビニルピリジン-コースチレン膜ポリマーを導入した。アセンブリ全体をコーティングする膜ポリマーは、80:20のエタノール:HEPES緩衝液(140mg/mL)中の4mLのポリビニルピリジン-コ-スチレン、80:20のエタノール:HEPES緩衝液(100mg/mL)中の0.2mL PEGDGE400、及びエタノール(100mg/mL)中の0.0132mLのアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用して堆積された。硬化は再び25℃で24時間、続いて乾燥環境、56℃で48時間実行された。したがって、均質な膜(ポリビニルピリジン-コ-スチレン)がグルコース応答性活性領域に堆積され、二層膜(PVPの内層及びポリビニルピリジン-コ-スチレンの外層)がケトン応答性活性領域に堆積された。
【0106】
分析物センサーを使用して、37℃の100mM PBSでグルコースとケトンを同時にアッセイした。最初の実験では、センサーを37℃で2週間、30mMグルコースと10mM β-ヒドロキシブチラート(ケトン代用物)を含む100mM PBS液にさらした。この実験では、センサーはAg/AgClに対して+40mVに保持された。図9は、30mMグルコースと10mMケトンへの曝露後、別々の作用電極上に配置されたグルコース応答活性領域とケトン応答活性領域を含む分析物センサーの応答の例示的なプロットを示している。示されているように、分析物センサーの応答は、両方の分析物の観察期間にわたって非常に安定したままであった。
【0107】
次に、グルコースとβ-ヒドロキシブチラートを37℃で100mM PBSに段階的に添加して、各分析対象物に対する分析対象物センサーの応答を決定した。この実験でも、センサーはAg/AgClに対して+40mVに保持された。グルコースを0~30mMの濃度範囲で添加し、β-ヒドロキシブチラートを0~10mMの濃度範囲で添加した。各分析物は、10mM以下の濃度で同時に添加された。10mMを超えると、追加のグルコースのみが溶液に追加され、10mMはテストされた最大ケトン濃度を表す。図10~12は、様々な濃度のグルコースとβ-ヒドロキシブチラートに対する分析対象物センサーの応答のプロットを示している。図10,11に示すように、分析物センサーは、テストされた濃度範囲にわたって両方の分析対象物に対して線形応答を提供した。図12に示すように、センサーの応答は両方の分析物で迅速であり、特定の分析物濃度で安定したままであった。
【0108】
実施例3:NADHオキシダーゼとβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼが協調して作用する分析物センサーを使用したケトンの検出。
この例では、図2Bの酵素システムを使用してケトンの検出を容易にした。以下の表3に示されるスポッティング配合物は、カーボン作用電極又はカーボンナノチューブ作用電極のいずれかにコーティングされた。センサーチップ全体をコーティングするために、3回のパスで手作業でコーティングを行った。平均活性領域面積は、カーボン作用電極で3.0mm、カーボンナノチューブ作用電極で7.6mmであった。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。その後、4mLの100mg/mL PVP及び0.2mLの100mg/mL PEGDGE400で処方されたコーティング溶液を使用して、ディップコーティングを介してPVP膜を作用電極に付着させた。次に、25℃で24時間、膜硬化を行った。
【0109】
【表3】
ケトン分析は、実施例1に記載されているように実施された。
【0110】
図13A及び13Bは、様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度にさらされたときのNADHO、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの再現を示しているグラフである。図13Aはカーボン作用電極の電流応答を示し、図13Bはカーボンナノチューブ作用電極の電流応答を示している。図示されているように、両方のタイプの作用電極の電流応答は、β-ヒドロキシブチラート濃度が10mMの濃度まで増加するにつれて増加した。
【0111】
図14は、増加するβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ濃度に曝露した後の、NADHO、NAD、及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の電流応答対時間の例示的なプロットを示している。図示されているように、電流は、β-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを添加した後に急速に増加し、その後安定した。
【0112】
実施例4:ポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む分析物センサーを使用したケトンの検出。
この例では、図2Cの酵素システムを使用してケトンの検出を容易にした。以下の表3に示されるスポッティング配合物は、カーボン作用電極又はカーボンナノチューブ作用電極のいずれかにコーティングされた。スポッティング配合物及びPVP膜のコーティング及び硬化は、実施例3に指定されたように実施された。平均活性領域面積は、カーボン作用電極で3.0mm、カーボンナノチューブ作用電極で7.6mmであった。
【0113】
【表4】
ケトン分析は、実施例1に記載されているように実施された。図15A及び
15Bは、様々なβ-ヒドロキシブチラート濃度にさらされたときの、ポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン及びβ-ヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの再現を示している。図15Aはカーボン作用電極の電流応答を示し、図15Bはカーボンナノチューブ作用電極の電流応答を示している。図示されているように、両方のタイプの作用電極の電流応答は、応答が平坦になり始める前に、β-ヒドロキシブチラート濃度が約2mMの濃度まで増加するにつれて増加した。
【0114】
(分析物センサーイグニッションロック)
イグニッションロックなどの車両フェイルセーフは、障害がある場合や車両を安全に操作できる状態にない場合に、運転手が車両を操作できないようにするために使用され得る。障害のある状態で車両を操作すると、運転手や一般の人々に重大な危険をもたらす可能性がある。一般的なタイプのイグニッションロックの1つは、飲酒運転を防止するように設計され、具体的には、アルコールの使用により酩酊している間、個人が車両を操作することを防止するように設計されている。このようなロック装置は、呼気アルコール分析装置又は光学センサーを車両の点火システムに接続し、ドライバーは、車両を始動する前に、血中アルコール濃度テストに合格する必要がある。
【0115】
酩酊は、運転手が車両を操作に不適切になったり、操作できなくなったりする、運転手が経験する可能性のある障害又は状態の種類の1つです。ただし、他の障害や状態も運転手に悪影響を及ぼす可能性があるため、運転手が障害のあるときに車両を操作しないように注意深く監視する必要がある。例えば、糖尿病のため低血糖(低い血糖値)で運転をしている運転手は、立ちくらみ、錯乱、頭痛、意識喪失、発作、反射の遅延を起こす可能性があり、そのいずれもが本人や車両内又は車両の近くにある人の生命を危険にさらす可能性がある。
【0116】
分析物モニタリングシステムは、体液(血液など)中の分析物の長期モニタリングを容易にするために開発された。一部の分析物モニタリングシステムは、血糖値を検出及びモニタリングするように設計されており、糖尿病状態の治療に役立つ。ただし、他の分析物監視システムは、運転手の体液に存在する他の分析物を検出及び監視するように設計されており、運転手で検出された異常な分析物レベルは、運転手が現在車両を安全に操作するのに適していないことを示している可能性がある。
【0117】
以下の説明は、運転手の分析物レベルが所定の閾値を超えたときに車両の動作を防止するために使用される分析物監視及び車両制御システムについて説明する。センサー制御装置102(図1)を適切に展開することにより、ユーザは、体液分析物のレベル及び傾向をインテリジェントに追跡及び監視することができる。一部の分析物レベルが特定の閾値を超えると、物理的又は認知障害が発生し、ユーザが車両を安全に操作できなくなる可能性がある。このような場合、ユーザは、車両の操作を試みる前に、分析物のレベルを安全な範囲に戻すための適切な措置を講じる必要がある。ただし、場合によっては、ユーザは車両を操作するのにまったく問題がないと感じていても、危険な身体的障害の発症を突然引き起こす可能性のある安全でない分析物レベルがある。このような場合、ユーザが車両を操作して自分や他の人を危険にさらす可能性を防止又は警告するフェイルセーフシステムを設置することが有利な場合がある。
【0118】
図16は、本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システム1600の概略図である。図示のように、分析物監視及び車両制御システム1600(以下、「システム1600」)は、センサー制御デバイス102を含み、これは、ユーザ又は「運転手」3202上に配備され、さもなければ、運転手1602の腕の後ろなど、身体の標的監視場所に送達され得る。上記のように、センサー制御デバイス102は、センサー104(図1)を含み、適切に配備されると、センサー104は、皮膚内に経皮的に配置されて、運転手1602の体液中に存在する分析物を検出及び監視する。センサー制御装置102の底部に塗布された接着パッチ105(図1)は、皮膚に付着して、動作中にセンサー制御装置102を所定の位置に固定する。
【0119】
システム1600は、分析物レベルを検出及び報告するためのオンボディセンサー制御デバイス102を含むものとして本明細書で説明されるが、システム1600は、代わりに、開示の範囲から逸脱することなく、体外分析物センサー(例えば、自己監視血糖「SMBG」メーター)を組み込むことができる。したがって、「センサー制御デバイス」という用語は、本明細書では、一般に上記のようなオンボディセンサーシステムだけでなく、従来のハンドヘルドセンサーシステムも含むと解釈されるべきである。
【0120】
図示のように、システム1600は、読み取りデバイス120をさらに含み得、センサー制御デバイス102は、局所通信経路又はリンクを介して読み取りデバイス120と通信して、分析物濃度データを自動的に、定期的に、又は運転手1602が望む時に、与えることができる。読み取りデバイス120は制御モジュール1604と通信し、制御モジュール1604は車両1606の電気システムと通信し、車両バッテリーによって電力を供給されるか、さもなければ別個のバッテリーによって電力を供給される。そのような実施形態では、センサー制御デバイス102から読み取りデバイス120に送信されるデータは、その後、処理のために読み取りデバイス120によって制御モジュール1604に送信され得る。しかしながら、他の実施形態では、センサー制御デバイス102は、BLUETOOTH(登録商標)などの任意の無線通信プロトコルを介して制御モジュール1604と直接通信することができる。そのような実施形態では、読み取りデバイス120は、システム1600において必要である場合もあれば、必要でない場合もある。
【0121】
図示の実施形態では、車両1606は自動車として描かれている。しかしながら、本明細書で使用される場合、「車両」という用語は広く使用され、人間のユーザ又は「運転手」が操作できるあらゆる種類の輸送車両を含むことを意味するが、人間を輸送するために使用される自動運転車も含むことができる。車両1606の例には、任意のタイプの自動車、トラック、スポーツ多目的車両、航空機、船舶、宇宙船、及び/又は他の任意の輸送手段、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
制御モジュール1604は、センサー制御デバイス102及び/又は読み取りデバイス120との間で情報を通信するための通信インターフェースを含み得る。例示的なBLUETOOTH(登録商標)対応のセンサー制御デバイス102及び/又は読み取りデバイス120の場合、センサー制御デバイス102が車両1606に近づくと、ペアリングモードに入ることができる。ペアリング時に、制御モジュール1604は、センサー制御デバイス102及び/又は読み取りデバイス120の存在を自動的に検出し、それらとの通信を確立するようにプログラム及び構成され得る。例えば、運転手1602が車両1606に接近又は進入すると、制御モジュール1604は、センサー制御デバイス102の存在を自動的に検出し、それらの間又は読み取りデバイス120との通信を起動することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1604は、インフォテインメントシステム、タッチスクリーンディスプレイ、又は情報ディスプレイなど、車両1606に含まれる車両ユーザインターフェース1608と通信することができる。そのような実施形態では、制御モジュール1604は、車両ユーザインターフェース1608を介して運転手1602と視覚的に対話することができ、車両1606に含まれるオーディオスピーカーを介して運転手1602と聴覚的にやり取りすることもできる。しかしながら、他の実施形態では、制御モジュール1604は、運転手1602と通信することができるように、読み取りデバイス120と通信するように構成され得る。
【0124】
図示のように、制御モジュール1604は、センサー制御デバイス102によって得られた運転手1602のリアルタイム測定された分析物レベルに基づいて車両1606の様々な動作及び/又はシステムを制御するように構成され、そうでなければプログラムされたコンピュータシステム1610であり得るか、そうでなければコンピュータシステム1610を有し得る。車両1606の動作は、車両1606の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって、又は車両1606内の警告システムをアクティブにすることによって、制御、無効化、又は修正される。運転手1602のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にある場合、運転手1602が車両1606を操作することは安全であると見なされ得る。しかしながら、運転手1602のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム1610は、車両1606の操作を制御、無効化、又は変更するようにプログラムされ得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、例えば、コンピュータシステム1610は、運転手1602の検出された分析物レベルが所定の範囲外にあるか、所定の閾値を超えたときに様々な重要な車両システムを無効にするように構成されることにより、車両1606の安全な操作のために運転手1602に障害があるものと識別する時に、車両の動作を漸進的かつ安全に無効にすることができる。無効にされ得る車両1606の重要な車両システムには、着火システム(例えば、エネルギー切り替え/制御システム)、トランスミッションシステム(又はギアボックス)、燃料システム、エネルギー供給システム(例えば、バッテリー、コンデンサ、変換/反応セルなど)が含まれる。上昇又は低下した(安全でない)分析物レベルが検出されると、コンピュータシステム1610は、重要な車両システムが機能又は動作するのを妨げ得る。その結果、運転手1602は、車両1606を始動又は操作することができず、それにより、運転手1602が自分自身及び/又は他の人を危険にさらすことを防ぐ。
【0126】
他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1610は、運転手1602の検出された分析物レベルが所定の閾値の外に出る、すなわち超過すると、様々な重要ではない車両システムをアクティブにするように構成され得る。作動され得る重要でない車両システムは、例えば、車両ホーン、車両ライト、又は車両1606に設置された聴覚的警告システムを含む。そのような実施形態では、重要でない車両システムの起動は、障害のある状態で運転している可能性のある運転手1602の法執行機関及び他の人(例えば、隣接する車両の運転手、傍観者、歩行者など)に警告し得、したがって法執行を可能にすることによって、それに関連する問題に迅速に対処し、潜在的に危険な状況に他の人を通知する。
【0127】
さらに他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1610は、運転手1602の分析物レベルが所定の安全動作範囲外にあるか、さもなければ所定の閾値を超えたときに、1つ以上の緊急連絡先に自動的に電話をかけるように構成され得る。そのような実施形態では、コンピュータシステム1610は、読み取りデバイス120(例えば、携帯電話)又は車両1606に組み込まれたセルラー又は衛星通信システム(例えば、オンスター(登録商標))を介して操作することができる。他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1610は、運転手1602の分析物レベルが所定の安全な動作範囲外にある、又はその他の方法で所定のしきい値を超えている場合に、メッセージ(例えば、テキスト又はSMSメッセージ、電子メールなど)を緊急連絡先に自動的に送信するように構成され得る。緊急連絡先の例には、配偶者、親、医療関係者(医師など)、病院、911、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
いくつかの実施形態では、システム1600は、運転手1602、より具体的には、センサー制御デバイス102の存在を検出するように構成された1つ以上の近接センサー1612をさらに含み得る。そのような実施形態では、近接センサー1612は、車両1606内の運転席1614の一般的な領域を監視するように構成され得る。センサー制御装置102が近接センサー1612によって運転席1614の領域内で検出された場合、それは、運転手1602が運転席1614にいて、潜在的に車両1606を操作しようとしていることの肯定的な指標を提供し得る。そのような場合、信号が制御モジュール1604に送信されて、運転手1602が車両1606内にあり、車両1606を操作しようとして可能性があることをコンピュータシステム1610に警告することができる。運転手1602のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にあるか、又は所定のレベル未満である場合、コンピュータシステム1610は、運転手1602が車両1606を操作することを可能にし得る。しかしながら、運転手1602のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム1610は、一般に上記のように、車両1606の動作を制御、無効化、又は変更することができる。理解されるように、近接センサー1612は、障害のある運転手1602が運転席1614にいて、車両1606を操作する準備ができている場合にのみ、車両1606の動作を防止するのに有利であり得る。その結果、センサー制御装置102を装着しているユーザは、制御モジュール1604又は車両1606の動作に影響を与えることなく、任意の状態で車両1606に乗客として乗ることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1604は、車両1606が現在動いているか静止しているかを含む、車両1606の現在の状態を検出するように構成された車両ステータス検出モジュール1616をさらに含み得る。さらに、車両ステータス検出モジュール1616は、車両1606内のモーターが現在動作しているか、又は停止しているかどうかを判定するように構成され得る。1つ以上の実施形態では、車両ステータス検出モジュール1616は、ステータス信号を制御モジュール1604に提供することができ、制御モジュール1604は、リアルタイム測定時に運転手1602の分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えている場合に、ステータス信号を使用して、どの車両動作をアクティブ又は無効にするかを決定することができる。例えば、ステータス信号が車両1606が静止していることを示す場合、制御モジュール1604は、車両燃料システム、トランスミッションシステム、着火システム、又はそれらの任意の組み合わせを無効にすることができる。対照的に、ステータス信号が車両1606が移動していることを示すとき、制御モジュール1604は、車両ホーンを作動させ、車両ライトを点滅させ、又は運転手1602及び/又は運転手1602の周囲の人々に運転手1602に障害があると警告を発することができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、運転手1602が車両1606に入ると、又は制御モジュール1604がセンサー制御デバイス102及び/又は読み取りデバイス120とペアリングされると、読み取りデバイス120又は車両ユーザインターフェース1608上でアプリが起動され、現在の分析物レベル、傾向、履歴データ、及び予測される分析物レベルを示す、デジタルダッシュボードが読み取りデバイス120及び/又は車両ユーザインターフェース1608上に表示され得る。しかしながら、現在の分析物レベルが所定の安全動作範囲外にある場合、コンピュータシステム1610は、1つ以上の重要な車両システムを無効にして、運転手1602が車両1606を操作するのを防ぐようにプログラムされ得る。そのような実施形態では、視覚的又は聴覚的警告が制御モジュール1604によって発生されて、車両1606が始動しない理由について運転手1602に通知することができる。より詳細には、視覚的警告(例えば、文字によるメッセージ)が生成され、読み取りデバイス120又は車両ユーザインターフェース1608上に表示され得るか、又は聴覚的警告(例えば、音声メッセージ)が読み取りデバイス120又は車両1606内のスピーカーを通して送信され得る。
【0131】
自動的に行われない場合、運転手1602は、センサー制御デバイス102を制御モジュール1604とペアリングする際に、現在の分析物レベルを取得するように促され得る。場合によっては、現在の分析物レベルが得られるまで、車両1606が操作されるのを妨げることができる。現在の分析物レベルが安全限界内にある場合、コンピュータシステム1610は、車両1606の操作を可能にし得る。いくつかの実施形態において、そして自動的に行われない限り、制御モジュール1604は、所定の期間(例えば、1時間、2時間、5時間後など)にわたって車両1606を操作した後、追加の電流分析物レベルを取得するように運転手1602に促すことができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1604は、測定された分析物レベルを安全な範囲に戻すことを助けることができる、視覚的又は聴覚的な推奨又はコーチングを運転手1602に発生するように構成され得る。そのような実施形態では、そのような視覚的又は聴覚的推奨は、分析物レベルを安全な範囲に戻す結果となる可能性のある何らかの行動をとるようにユーザに促すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、運転手1602は、口頭の応答又はコマンドを発生することによって、口頭で制御モジュール1604と通信することができる場合がある。これは、車両1606の注意散漫な動作を防止するのを助けるのに有利であることが証明され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1604の設定は、安全でない分析物レベルが検出され、視覚的又は聴覚的警告が制御モジュール1604によって発生された後、ユーザが情報に基づいた決定を下せるように、運転手1602によってカスタマイズされ得る。より詳細には、少なくとも1つの実施形態では、制御モジュール1604は、安全でない分析物レベルが測定された場合でさえ、運転手1602が車両1606を操作することを可能にすることができるバイパス機能を含み得る。そのような実施形態では、運転手1602は、運転手1602が障害のある又は危険な健康状態で車両1606を操作している可能性があることを認めることによって、車両1606を操作することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム1610は、運転手1602の分析物レベルが所定の安全範囲から逸脱するか、そうでなければ所定の閾値を超える可能性がある場合に予測タイムラインを計算するように構成又はプログラムされ得る。そのような実施形態では、制御モジュール1604は、運転手1602が安全でない分析物レベルに到達し、潜在的な危険な病状が生じる可能性があるまでに、およそどれくらいの時間があるかを示す視覚的又は聴覚的警告を運転手1602に発生するように構成され得る。安全でない分析物レベルに達するまでに、運転手が特定の時間増分を残していることを示すために、複数の警告が提供される場合がある。たとえば、安全でない分析物レベルが1時間以内、30分以内、10分以内、5分以内、1分以内、及びそれらの間の任意の時間増分に達すると、視覚的又は聴覚的警告が発生される場合がある。さらに、運転手の分析物レベルが危険なレベルに達するか、又は所定の閾値を超えると、視覚的又は聴覚的警告が発せられ得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、運転手1602が車両1606を操作している間に安全でない分析物レベルが測定される場合、制御モジュール1604は、安全でない分析物レベルについて運転手1602に警告する1つ以上の警告(視覚的又は聴覚的)を発生するように構成され得る。場合によっては、車両1606内のステレオの音量を自動的に下げて、運転手1602が聴覚的警告を聞くことができるようにすることができる。そのような実施形態では、制御モジュール1604は、運転手1602に1つ以上の修正アクションを提案するように構成され得る。是正措置の例には、車両1606の減速及び停止、近くのコンビニエンスストア又は薬局への位置特定及び運転、及び近くの病院又は医療施設の位置特定が含まれるが、これらに限定されない。車両1606が自律型車両であり、現在の分析物レベルが運転手1602を潜在的に危険な状態に置く場合、制御モジュール1604は、車両1606を治療のために医療施設に自動的に向けることができる。あるいは、又はそれに加えて、制御モジュール1604は、安全でない分析物レベルが検出されたときに車両1606の速度を漸進的に減速又は制限することができ、したがって、運転手1602を停止させ、車両1606を操作し続ける前に問題を修正する。
【0136】
システム1600は、運転中に運転手1602及び/又は運転手1602の周囲の人々を保護するために、いくつかの異なるシナリオで有用であり得る。いくつかの用途では、システム1600は、リアルタイムで障害を検出するために、運転手によって自発的に組み込まれ得る。他の用途では、システム1600は、車両1606の所有者によって、運転手1602の障害を検出することを要求され得る。そのような用途では、車両1606の所有者は、輸送会社又はトラック会社であり得る。さらに他のアプリケーションでは、システム1600は、障害を検出することを運転手1602に法的に課され得る。
【0137】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
E.運転手の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及び監視するセンサーを有するセンサー制御装置と、センサー制御装置及び車両の電気システムと通信する制御モジュールとを備えた分析物監視及び車両制御システムであって、制御モジュールはセンサー制御装置によって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを有し、ここで、運転手のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全な閾値を超えると、車両の動作がコンピュータシステムによって制御又は無効化される。
【0138】
F.センサーを有するセンサー制御装置を用いて運転手の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及び監視する工程と、センサー制御装置及び車両の電気システムと通信する制御モジュールを備えたセンサー制御装置によって提供されるデータを受信及び処理する工程と、運転手のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全な閾値を超えたときに、制御モジュールのコンピュータシステムを用いて車両の動作を制御又は無効にする工程とを備える方法。
【0139】
実施形態E及びFのそれぞれは、任意の組み合わせで以下の追加の要素のうちの1つ以上を有し得る。要素1:ここで、センサー制御装置は、運転手に結合され、センサーは、運転手の体液内に存在する分析物を検出及び監視するために、運転手の皮膚の下に経皮的に配置される。要素2:ここで、センサー制御デバイスは、体外分析物センサーを含む。要素3:センサー制御装置からデータを受信し、そのデータを制御モジュールに送信する読み取りデバイスをさらに備える。要素4:ここで、車両は、自動車、自動運転車、トラック、スポーツ目的車両、航空機、船舶、宇宙船、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される輸送車両を含む。要素5:ここで、センサー制御装置は、運転手が車両に接近する際の通信のために制御モジュールとペアリングされる。要素6:車両に含まれ、制御モジュールと通信する車両ユーザインターフェースをさらに備える。要素7:車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって車両の動作が無効にされ、重要なシステムは、着火システム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素8:車両の操作は、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先にメッセージを呼び出し、又は送信すること、及び車両の速度を徐々に下げることのうちの少なくとも1つによって制御される。要素9:車両の運転席の領域を監視し、運転手の存在を検出するために車両に設置された1つ以上の近接センサーをさらに備える。要素10:ここで、制御モジュールは、車両の現在の状態を検出する車両ステータス検出モジュールをさらに備える。要素11:ここで、制御モジュールは、運転手のリアルタイムで測定された分析物レベルが所定の安全閾値の外にある時に、運転手によって知覚可能な視覚的又は聴覚的警告を生成する。要素12:安全でない分析物レベルに達する前に、視覚的又は聴覚的警告が特定の時間増分で生成される。要素13:視覚的又は聴覚的警告は、運転手に伝達される1つ以上の提案された是正措置を含む。要素14:ここで、制御モジュールは、運転手のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えたときに、運転手が車両を操作することを可能にするバイパス機能を含む。
【0140】
要素15:センサー制御装置からデータを受信し、センサー制御装置及び制御モジュールと通信する読み取りデバイスを用いてデータを制御モジュールに送信する工程をさらに備える。要素16:車両の動作を無効にすることは、車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることを含み、重要なシステムは、着火システム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素17:ここで、車両の動作を制御することには、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先にメッセージを呼び出し又は送信すること、及び車両の速度を徐々に低下させることの少なくとも1つが含まれる。要素18:車両の運転席の領域を監視し、車両に取り付けられた1つ以上の近接センサーを用いて運転手の存在を検出する工程をさらに備える。要素19:制御モジュールに含まれる車両ステータス検出モジュールを用いて車両の現在の状態を検出する工程をさらに備える。要素20:運転手のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えた時に、制御モジュールを用いて運転手によって知覚可能な視覚的又は聴覚的警告を生成する工程をさらに備える。
【0141】
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、そして均等論の適用をクレームの範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0142】
本明細書では、様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態を提示する。明確にするために、本願では、物理的な実装のすべての機能が説明又は示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連などのコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、実装固有の多数の決定を行わなければならないことが理解される。制約は実装によって、また時間の経過とともに変化する。開発者の努力は時間を要し得るが、それにもかかわらず、そのような努力は、当業者にとって日常的な仕事であり、この開示の恩恵を受ける。
【0143】
様々なシステム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されるが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップから「本質的に構成される」又は「構成される」ことができる。
【0144】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にある「少なくとも1つ」という句は、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語とともに、リストの各メンバーではなく、リスト全体を変更する(つまり、各アイテム)。「の少なくとも1つ」という句は、アイテムのいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムのそれぞれの少なくとも1つを含む意味を可能にする。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、A、B、及びCの任意の組み合わせ、及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0145】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれらに固有のものを達成するために十分に適合されている。本発明の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな異なるが同等の方法で修正及び実施され得るものであり、上に開示された特定の実施形態は、単なる例示である。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除いて、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に対する制限は意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、そのようなすべての変形は本発明の範囲内にあるものと考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示されているシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示された任意の要素がない場合でも適切に実施できる。システム、ツール、及び方法は、様々な部材又はステップを「含む」、「含む」、又は「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、様々な部材を「本質的に構成する」又は「構成する」こともできる。上記で開示されたすべての数と範囲は、ある程度異なる場合がある。下限及び上限を伴う数値範囲が開示される場合は常に、その範囲内に含まれる任意の数及び任意の含まれる範囲が詳細に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約ab」の形式)は、以下のように理解されるべきである。より広い範囲の値に含まれるすべての数と範囲を示す。また、特許請求の範囲の用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、それらの平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書では、それが導入する1つ以上の要素を意味すると定義される。本明細書及び参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許又は他の文書における用語又は用語の使用法に矛盾がある場合、本明細書と一致する定義が採用されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16