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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】尿素基含有レオロジー制御添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/02 20060101AFI20221219BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08L75/02
C09K3/00 103Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021539059
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2019086765
(87)【国際公開番号】W WO2020141120
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】19150341.6
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クナプケ-ボンガルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ナゲルスディイク レネ
(72)【発明者】
【氏名】ビューネ シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン メイケ
(72)【発明者】
【氏名】ミューレマン ヤスミーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス ベルトホルト
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-221539(JP,A)
【文献】国際公開第2013/027481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)10重量%~60重量%の、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される1000g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)40重量%~90重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
(ここで、前記重量%は成分a)および成分b)の合計に対して計算される)を含み、
前記尿素成分は、少なくとも1個の尿素基および少なくとも1個のウレタン基を含む分子を含む、組成物。
【請求項2】
前記尿素成分は、芳香族基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記尿素成分は、1個以上のカルボン酸基を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、1種以上の有機希釈剤c)を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、1種以上の塩d)を更に含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の成分a)、成分b)、成分c)および成分d)の混合物は、一緒になって20mgKOH/g~60mgKOH/gの範囲内の酸価を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
i.1000g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分a)、および式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基を表す)による1種以上のカルボン酸成分b)(ここで、a)およびb)の合計は15重量%~90重量%である)と、
ii.10.0重量%~85.0重量%の1種以上の有機希釈剤c)と、
iii.0.0重量%~8.0重量%の1種以上の塩d)と、
(ここで、前記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
a)3.0重量%~40.0重量%の、1000g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)12.0重量%~60.0重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
c)10.0重量%~85.0重量%の1種以上の有機希釈剤と、
d)0.0重量%~8.0重量%の1種以上の塩と、
(ここで、前記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)を含むが、ただし、成分a)および成分b)の合計に対して計算して、
前記1種以上の尿素成分a)は、10重量%~60重量%の量で存在し、かつ、
前記1種以上のカルボン酸成分b)は、40重量~90重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
液体組成物のレオロジーを制御するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
液体組成物の総重量に対して計算して0.1重量%~7.5重量%の、
a)ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される1000g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
の混合物を含み、かつ成分a):成分b)の重量比が10:90~60:40である、23℃の温度で液体であり、
前記尿素成分は、少なくとも1個の尿素基および少なくとも1個のウレタン基を含む分子を含む、液体組成物。
【請求項11】
前記液体組成物は、前記液体組成物の総重量に対して計算して0.0%から7.0%の間の水を含む、請求項10に記載の液体組成物。
【請求項12】
前記液体組成物は、前記液体組成物の総重量に対して計算して0.0重量%から10.0重量%の間の揮発性有機溶剤を含む、請求項10または11に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記液体組成物は、被膜形成性樹脂を含む、請求項11~12のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項14】
液体組成物のレオロジーを制御する方法であって、前記液体組成物に、
a)ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される1000g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
(ここで、成分a):成分b)の重量比は60:40~10:90の範囲内である)を添加する工程を含み、
前記尿素成分は、少なくとも1個の尿素基および少なくとも1個のウレタン基を含む分子を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素基含有成分およびカルボン酸基含有成分を含む組成物、その調製、ならびにレオロジー制御剤(以下で、「レオロジー添加剤」または「レオロジー剤」とも呼ばれる)としてのその使用に関する。さらに、本発明は、尿素基成分およびカルボン酸成分含有生成物を含むレオロジー制御剤、ならびにそれらの使用に関する。本発明は更に、尿素基含有成分およびカルボン酸成分含有生成物を含む液体組成物、ならびに液体組成物のレオロジーを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体系のレオロジーは、任意に有機変性され得るベントナイトおよびシリカ、硬化ひまし油、ならびにポリアミドワックスを使用して制御される。これらの物質は殆どが乾燥した固体であることから、溶剤および剪断力を使用して半完成品に加工し、および/または狙い通りの温度制御によって液体系へと導入しなければならない。これらの温度が認められない場合に、完成した系には微結晶が発生し、粗悪なレオロジー性能につながるだけでなく、生成物の有害な特性につながることもある。
【0003】
液体系がコーティング組成物である場合に、これらのレオロジー助剤は頻繁に、明澄透明なコーティングに曇りおよびヘイズの事態を招く。さらに、加工の間に粉塵を引き起こす乾燥粉末状製品を用いて作業するのは、技術的に好ましくない場合がある。
【0004】
それらの不利点を避けるために、特許文献1に記載される特定の尿素成分の溶液を含む液体レオロジー助剤が使用される。しばしば、極性/非プロトン性希釈剤が使用される。あるいは、典型的な有機希釈剤の代わりに、特許文献2に記載されるように、イオン液体が使用され得る。これらは、80℃を下回る中程度の温度で流体である溶融塩である。
【0005】
特に厚膜系は垂直表面で垂れる傾向があるため、強化されたレオロジー助剤が必要とされている。エポキシベースのコーティングは、厚膜系で使用されることが多い。従来のエポキシ系では、適切なコーティングの厚さを得るために、アミドおよび有機変性された粘土を含む乾燥配合物または液体チキソトロピー剤が使用される。これらの従来の系とは対照的に、無溶剤系用のレオロジー添加剤の有効性は不十分である。健康および環境保護を理由として、これらの無溶剤系の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第1188779号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008059702号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、新しいレオロジー制御剤を提供することであった。これらの新しいレオロジー制御剤は、上述の明細書に示される不利点を有しないべきである。より具体的には、その目的は、特に無溶剤の厚膜系で顕著なタレ防止挙動を有するレオロジー制御剤を見出すことであった。特に、垂れることなく、塗布されたコーティングの大きな層厚が得られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、上記課題は、a)10重量%~60重量%の、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレートg/mol、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、b)40重量%~90重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分(ここで、上記重量%は成分a)および成分b)の合計に対して計算される)とを含む組成物によって解決され得ることが判明した。
【0009】
尿素成分は、1個以上のNH-(C=O)-NH基を含むあらゆる生成物を意味する。
【0010】
適切には、上記組成物は、10重量%~60重量%の1種以上の尿素成分を含む。好ましくは、上記組成物は、20重量%~50重量%、より好ましくは25重量%~45重量%、最も好ましくは30重量%~40重量%の1種以上の尿素成分を含む。
【0011】
適切には、1種以上の尿素成分は、350g/mol~60000g/molの範囲内の数平均分子量を有する。
【0012】
本発明の1種以上の尿素成分の数平均分子量(Mn)は350g/molを上回る。好ましくは、数平均分子量は、500g/molを上回り、より好ましくは750g/molを上回り、最も好ましくは1000g/molを上回る。
【0013】
さらに、本発明の1種以上の尿素成分の数平均分子量(Mn)は、以下に記載されるように測定される30000g/molを下回り、より好ましくは、20000g/molを下回り、10000g/molを下回り、またはそれどころか8000g/molさえも下回る。
【0014】
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定され得る。あるいは、数平均分子量は計算によって求められ得る。さらに、1000g/molまでの小分子についての数平均分子量は、質量分光測定法などの他の方法によって測定され得る。
【0015】
本発明は更に、組成物を製造する方法であって、
a)10重量%~60重量%の、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)40重量%~90重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
(ここで、上記重量%は成分a)および成分b)の合計に対して計算される)を添加する工程を含む、方法に関する。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態では、上記組成物の尿素成分は芳香族基を含む。芳香族基は、独立して、7個~12個の炭素原子を有するアルキル置換された芳香族ヒドロカルビル基から選択される。芳香族環に結合された1個以上のアルキル基を置換基として有するフェニレン基であって、該アルキル基(単数または複数)が、好ましくは1個~4個、より好ましくは1個または2個の炭素原子を含み、最も好ましくはメチル基であるフェニレン基が好ましい。好ましい芳香族基はトルイレン基である。
【0017】
別の好ましい実施形態では、上記組成物の尿素成分は、芳香脂肪族基、好ましくはキシリレン基CH-C-CHを含む。別の好ましい実施形態では、上記組成物の尿素成分は、脂肪族基、好ましくは線状C~Cアルキレン基、好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレンおよびヘキサメチレンを含む。非常に好ましい実施形態では、上記組成物の尿素成分はトルイレン基およびキシリレン基の両方を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態では、上記組成物の尿素成分は、米国特許出願公開第2017/0044378号明細書における化合物Bおよび米国特許出願公開第2016/0185985号明細書における化合物Bの例から選択される構造を有する。
【0019】
尿素化合物は、既知のように対応するイソシアネートとアミンとの反応によって調製され得る。この種類の尿素化合物についての調製方法は、例えば、米国特許第7250487号明細書、米国特許第7348397号明細書、欧州特許出願公開第1396510号明細書、欧州特許出願公開第2292675号明細書においてより詳細に記載されている。好ましくは、尿素化合物は、本発明の実施例に従って調製され得る。
【0020】
適切には、尿素成分の分子は平均で少なくとも2個の尿素基を含む。一実施形態では、尿素成分は、少なくとも1個の尿素基および少なくとも1個のウレタン基を含む分子を含む。別の実施形態では、尿素成分は、少なくとも1個の尿素基および少なくとも2個のウレタン基を含む分子を含む。異なる実施形態では、尿素成分は、少なくとも2個の尿素基および少なくとも2個のウレタン基を含む分子を含む。本発明の異なる実施形態では、ウレタン基が存在しない場合さえもある。
【0021】
別の実施形態では、上記組成物の尿素成分は1個以上のカルボン酸基を含む。好ましくは、12-ヒドロキシステアリン酸が上記組成物の尿素成分に化学的に結合されている。異なる実施形態では、尿素成分はカルボン酸基を含まない。
【0022】
上記組成物は、式(I)HO-R-COOHによる1種以上のカルボン酸成分を含む。一般に、本発明によるカルボン酸成分はカルボン酸基として存在し、それらの塩形では存在しない。
【0023】
本発明によれば、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す。「有機基」という用語は、「脂肪族基」および「芳香族基」から選択される炭素含有基を示し、ここで、「脂肪族基」という用語は、非芳香族の非環式および環式の飽和および不飽和の線状および分岐状の炭素含有基を含む。しかしながら、有機基は脂肪族部および芳香族部を同時に含んでもよい。例えば、1個以上の芳香族基を置換基として含む脂肪族基は芳香脂肪族基と呼ばれる。当然ながら、芳香族基は脂肪族置換基を含んでもよい。有機基は1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。このように、カルボン酸は有機変性されていてもよく、芳香族部またはアルコキシル化部などの有機部を有するだけでなく、エステル基を有することもでき、それにより二量体、三量体またはオリゴマーが形成され得る。
【0024】
好ましい実施形態では、上記組成物の基Rは、3個~75個の炭素原子、より好ましくは5個~29個、更により好ましくは9個~23個の炭素原子を有する有機基を表す。別の好ましい実施形態では、Rは、1個~3個のヒドロキシ基で置換された、上記の好ましい炭素原子数を有する有機基である。
【0025】
好ましくは、Rは、9個~23個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す。「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素原子および水素原子のみからなる有機基を示す。Rによって表されるヒドロカルビル基は、好ましくは、9個~23個の炭素原子、より好ましくは11個~21個の炭素原子、最も好ましくは15個~19個の炭素原子を有する。適切には、Rは脂肪族である。Rが飽和脂肪族基であることも好ましい。Rが線状脂肪族基であることも好ましい。
【0026】
式(I)による適切なカルボン酸成分の例は、12-ヒドロキシステアリン酸、14-ヒドロキシステアリン酸、16-ヒドロキシステアリン酸、6-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、9,10-ジヒドロキシステアリン酸、グリコール酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシラウリン酸、5-ヒドロキシラウリン酸、5-ヒドロキシデカン酸、4-ヒドロキシデカン酸、14-ヒドロキシエイコサン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸である。酸はエナンチオマー純粋であり得るか、ラセミ体であり得るか、またはエナンチオマーの混合物であり得る。特に好ましい酸は、12-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、14-ヒドロキシエイコサン酸、14-ヒドロキシステアリン酸、16-ヒドロキシステアリン酸、6-ヒドロキシステアリン酸、9,10-ジヒドロキシステアリン酸から選択され、12-ヒドロキシステアリン酸および14-ヒドロキシステアリン酸がとても好ましい。
【0027】
一実施形態では、上記組成物は1種以上の有機希釈剤c)を含む。有機希釈剤c)は尿素基を含まず、典型的には非プロトン性極性希釈剤を含む。有機希釈剤は、上記組成物の粘度を低下させることができるあらゆる有機化合物であり得る。有機希釈剤には、揮発性有機溶剤だけでなく、不揮発性有機溶剤も含まれる。適切な希釈剤の例には、アミド、好ましくは環状アミド(すなわちラクタム)、一官能性および二官能性の炭酸の非環状ジアルキルアミド、スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドおよび/またはイオン液体が含まれる。特に適切なのは、N-アルキル-ラクタム、好ましくはN-アルキルブチロラクタム、および更により好ましくはN-C~C12-アルキル-ブチロラクタムの群から選択される希釈剤である。尿素化合物の合成に使用される希釈剤は、本発明の組成物のキャリア媒体としても使用され得る。
【0028】
N-アルキルブチロラクタムの例は、N-メチルブチロラクタム、N-エチルブチロラクタム、N-ブチルブチロラクタム、N-オクチルブチロラクタムおよびN-ヒドロキシエチルブチロラクタムである。線状アミドの例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジアルキルアミドアルキルエステル、N,N-ジアルキルアミドアルキルエーテル、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびアシルモルホリンである。これらの好ましい例はまた、N,N-ジメチルアミドアルキルエステル、N,N-ジメチルアミドアルキルエーテル、N-ホルミルモルホリンおよびN-アセチルモルホリンである。
【0029】
別の好ましい実施形態では、上記組成物の1種以上の有機希釈剤c)はイオン液体である。本発明の文脈において、いわゆるイオン液体は、80℃を下回る融点を有する有機塩である。イオン液体の例は、置換イミダゾリウム塩、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアン酸塩、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアン酸塩である。イオン液体を上述の非イオン性有機希釈剤と組み合わせることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、本発明による組成物は、上述のイオン液体とは異なり、80℃より高い融点を有する1種以上の塩d)を含む。
【0031】
尿素化合物の調製は1種以上の塩d)の存在下で行われ得る。本発明による塩d)は、元素の周期律表の第I主族および第II主族の元素(アルカリ金属およびアルカリ土類金属)のカチオンまたはアンモニウムイオン(置換アンモニウムイオン、例えば、アルキルアンモニウムイオンを含む)およびそれらの混合物、好ましくはリチウムカチオン、カルシウムカチオンまたはマグネシウムカチオン、特に好ましくはリチウムカチオンおよびカルシウムカチオンを含み、アニオンとして、好ましくは一価アニオン、特に好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、ギ酸イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオン、最も特に好ましくは塩化物イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオンを含む。塩として特に好ましいのは、例えば塩化リチウムまたは硝酸リチウムなどの無機リチウム塩、ならびにアンモニウム塩、例えばアルキルアンモニウム塩、特にテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物などの第四級アンモニウム塩である。
【0032】
上記組成物が10重量%~85重量%、より好ましくは35重量%~80重量%、最も好ましくは45重量%~75重量%の有機希釈剤c)を含むことが好ましい(ここで、上記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)。
【0033】
好ましくは、上記組成物は、0.0重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%、最も好ましくは0.8重量%~3.5重量%の1種以上の塩d)を含む(ここで、上記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)。
【0034】
上記組成物は固体形または液体形で存在し得る。上記組成物が1種以上の有機希釈剤c)を含む場合に、該組成物は好ましくは液体である。
【0035】
好ましい実施形態では、上記組成物は、
i.350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分a)、および式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分b)(ここで、a)およびb)の合計は15重量%~90重量%である)と、
ii.10.0重量%~85.0重量%の1種以上の有機希釈剤c)と、
iii.0.0重量%~8.0重量%の1種以上の塩d)と、
(ここで、上記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)を含む。
【0036】
別の好ましい実施形態では、上記組成物は、
a)3.0重量%~40.0重量%の、350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)12.0重量%~60.0重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
c)10.0重量%~85.0重量%の1種以上の有機希釈剤と、
d)0.0重量%~8.0重量%の1種以上の塩と、
(ここで、上記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)を含むが、ただし、成分a)および成分b)の合計に対して計算して、
上記1種以上の尿素成分a)は、10重量%~60重量%の量で存在し、かつ、
上記1種以上のカルボン酸成分b)は、40重量~90重量%の量で存在する。
【0037】
更なる実施形態では、本発明はまた、本発明による組成物を製造する方法に関する。
【0038】
上記方法は、
a)3.0重量%~40.0重量%の、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)12.0重量%~60.0重量%の、式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
c)10.0重量%~85.0重量%の1種以上の有機希釈剤と、
d)0.0重量%~8.0重量%の1種以上の塩と、
(ここで、上記重量%はa)、b)、c)およびd)の合計に対して計算される)を混合する工程を含む。
【0039】
更なる実施形態では、上記方法は、
1)350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分を準備する工程と、
2)任意に、1種以上の尿素成分と1種以上のアルコール成分および/またはグリコール成分とを反応させる工程と、
3)式(I)HO-R-COOHによる1種以上のカルボン酸成分を添加する工程と、
を含む。
【0040】
尿素成分がイソシアネート基を含むのであれば、1種以上の尿素成分と1種以上のアルコール成分および/またはグリコール成分とを反応させることが好ましい。
【0041】
適切には、上記組成物の成分a)および成分b)の混合物は一緒になって、50mgKOH/g~180mgKOH/g、より適切には70mgKOH/g~160mgKOH/g、最も適切には90mgKOH/g~140mgKOH/gの範囲内の酸価を有する。
【0042】
上記組成物の成分a)、成分b)、成分c)、および成分d)の混合物は一緒になって、好ましくは、20mgKOH/g~60mgKOH/g、より好ましくは25mgKOH/g~55mgKOH/g、最も好ましくは30mgKOH/g~50mgKOH/gの範囲内の酸価を有し得る。
【0043】
酸価は、溶剤としてN-エチル-ピロリドンを使用してDIN EN ISO 2114(2002年6月)に従って測定された。
【0044】
本発明による組成物は、好ましくは、液体組成物のレオロジーを制御するために、例えば、増粘剤および/またはチキソトロピー剤として使用される。
【0045】
本発明による組成物は、液体配合物のレオロジーを調整するための唯一の制御剤として使用するのに適しているが、本発明による組成物を任意の他の種類のレオロジー制御剤、例えば(シリカまたは粘土のような)無機化合物または有機化合物と組み合わせることも可能である。本発明による組成物と組み合わせて使用することができる好ましい有機化合物は、ポリアミン化合物、すなわち、2個以上の第一級アミン基、第二級アミン基もしくは第三級アミン基またはそれらの塩を有する分子である。そのようなポリアミン化合物は、低分子量の有機分子であってもよいが、ポリマー分子であってもよい。2個以上のアミン基を有するそのような分子の好ましい例は、ポリアルキレンアミン、ポリアミノアミド、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、およびポリアルカノールアミンである。これらのポリアミンは、この分子が依然として2個以上のアミン基を含むように化学的に変性されてもよいことは当業者に知られている。これらの変性ポリアミンを得るための例は、非変性ポリアミンと酸(および酸無水物またはハロゲン化物などのそれらの誘導体)、エポキシド、イソシアネート、およびアクリレートとの反応である。本発明による組成物と組み合わせて使用するのに好ましい部類の第2のレオロジー制御剤としてのポリアミンは、ポリエチレンイミン(アジリジンの開環重合によって入手可能)である。適切な例は、BASF社からLupasolの商品名、例えばLupasol FG、Lupasol G20、Lupasol PR 8515、Lupasol WF、Lupasol P、Lupasol PO 100として入手可能である。
【0046】
本発明による組成物と更なるレオロジー制御剤との組み合わせが使用される液体組成物(例えば、コーティング配合物または熱硬化性配合物)が(ポリウレタン系、エポキシ系、ポリアスパラギン酸系のような)2成分系である場合に、本発明による組成物を2つの成分のうちの一方に使用し、更なるレオロジー制御剤を他方の成分に使用することが有利であり得る。例えば、本発明による組成物をポリアミンベースの第2のレオロジー添加剤と組み合わせて使用して、2成分エポキシ配合物のレオロジーを制御する場合に、本発明による組成物をエポキシ成分に含めて、ポリアミンベースのレオロジー剤を硬化剤成分に含めることが有利である。
【0047】
本発明の更なる態様はまた、液体組成物のレオロジーを制御するための、更なるレオロジー制御剤と組み合わせた本発明による組成物の使用である。好ましい実施形態では、これは、液体組成物のレオロジーを制御するための、ポリアミン化合物と組み合わせた本発明による組成物の使用に関する。非常に好ましい実施形態では、これは、液体組成物のレオロジーを制御するための、ポリエチレンイミン化合物またはその誘導体と組み合わせた本発明による組成物の使用に関する。
【0048】
本発明による組成物を使用して、液体組成物のレオロジープロファイルを調整することができる。したがって、本発明の別の対象は、レオロジーを調整する方法であって、本発明の液体組成物を、コーティング組成物、クリアコート組成物、ラッカー、プラスチック配合物、顔料ペースト、エフェクト顔料ペースト、シーラント配合物、化粧品配合物、ホームケア配合物またはインダストリアルケア配合物(香水配合物およびフレグランス配合物を含む)、セラミック配合物、接着剤配合物、採ガスおよび採油で使用するための液体配合物、電機部品および回路の製造用の組成物、エネルギー貯蔵媒体で使用するための液体配合物、洗浄剤、ポッティング用コンパウンド、建材配合物、潤滑剤、充填用コンパウンド、ワックスエマルジョン、金属加工液、金属加工用製品、スプレー剤の形の液体組成物、いわゆる沈着助剤(例えば、植物保護剤で使用するため、またはドリフト低減の一般的な目的のため)、インキ、印刷インキおよびインクジェットインキに添加する工程を含む、方法である。さらに、液体組成物は、船舶コーティングおよび保護コーティングの分野における腐食防止として使用され得る。
【0049】
本発明の組成物および液体組成物が使用され得る更なる液体組成物は、溶剤系または無溶剤のペイント、印刷用インキ、ならびに例えばプラスチックのワニス処理用ラッカー、ワイヤエナメル、食品および種子をコーティングするためのコーティング組成物、ならびに例えば液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイにおけるカラーフィルターのために使用される、いわゆるカラーレジストのようなインキおよびラッカーである。ラッカーの利用分野には、一般に非常に高い割合の固形分と少ない割合の液体成分とを有するペースト状材料、例えばいわゆる顔料ペースト、または更にエフェクト顔料、例えば金属エフェクト顔料、例えば、アルミニウム顔料、銀顔料、真鍮顔料、亜鉛顔料、銅顔料、青銅顔料、例えばゴールドブロンズ、ファイヤーダイドブロンズ(fire-dyed bronze)または酸化鉄アルミニウム顔料を基礎とするペーストが含まれる。エフェクト顔料には、例えば、干渉顔料または真珠光沢顔料、例えば、金属酸化物マイカ顔料、フィッシュシルバー(fish silver)、酸化ビスマス塩化物または塩基性炭酸鉛も含まれる。
【0050】
プラスチック配合物は、好ましくは、化学的架橋過程(「硬化」)によって熱硬化性樹脂へと変換されるプラスチック材料を製造するための液体または非液体の出発材料であり得る。好ましいプラスチック調製物は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂(例えば、メラミン-ホルムアルデヒドまたは尿素-ホルムアルデヒド)である。これらは、非常に様々な条件下で、例えば、室温(低温硬化系)または高温(高温硬化系)で、任意に圧力を加えて(「密閉型」用途、シート成形コンパウンドまたはバルク成形コンパウンド)硬化させることができる。プラスチック配合物には、PVCプラスチゾルも含まれる。
【0051】
化粧品調製物は、いわゆるパーソナルケア分野またはヘルスケア分野で使用される様々な液体組成物、例えば、ローション、クリーム、練り歯磨き等のペースト、例えばシェービングフォーム等のフォーム、例えばシェービングジェル、シャワージェル等のジェルまたはジェル配合物中の活性成分、ヘアシャンプー、液体石鹸、マニキュア、リップスティックおよび染髪剤であり得る。
【0052】
いわゆるワックスエマルジョンは、好ましくは、水または有機媒体中の室温で粒状形の固体ワックスの分散液である。
【0053】
建材配合物は、建築分野で使用され、硬化後に固化する液体またはペースト状の材料であり得る。例えば、コンクリート、セメント、モルタル、タイル用接着剤およびプラスター等の水硬性バインダーである。
【0054】
金属加工液は、一般に切削液、穿孔液(例えば、金属加工で使用される)、または鍛造液もしくは潤滑剤であり得る。潜在的な他の分野は、離型剤(しばしば、水性エマルジョンの形で、例えばアルミニウムダイカストおよび鋳造用途)、鋳物洗浄(鋳物コーティング)および金属の表面処理用の液体(例えば「表面仕上げ」、表面処理およびメッキ)である。
【0055】
潤滑剤は、潤滑用に使用される、すなわち、摩擦および摩耗を軽減するだけでなく、動力、冷却、振動減衰、密閉作用および腐食防止をもたらすために用いられる手段であり、ここでは、液体潤滑剤が好ましい。
【0056】
洗浄剤は、例えばホームケアまたはインダストリアルケアの分野において広範囲の物体を洗浄するために使用することができる。洗浄剤は、不純物、残留物および付着物の除去に影響し、またはそれらを補助する。洗浄剤には、洗剤(主に、テキスタイル、その前駆物質、皮革および食器の洗浄用)およびパーソナルケア製品も含まれる。香水および他のフレグランス(液体原材料として、またはカプセル化された形態のいずれかで)を含む配合物、例えばジェル香水もこの適用分野に属する。
【0057】
採ガスおよび採油に使用される液体配合物は、鉱床の開発および採鉱に使用される配合物である。掘削液または「掘削泥水」が好ましい例である。別の適用例は、水圧破砕法を準備または実施するのに使用される液体である。
【0058】
接着剤は、処理条件下で液体であり、表面接着および内部強度によって部材を接合することができるあらゆる接着剤材料であり得る。
【0059】
本発明の別の主題は、a)およびb)ならびに任意にc)および/またはd)を含む本発明による組成物が使用される、上記の好ましい適用分野について記載された液体組成物である。
【0060】
本発明の液体組成物は、慣用の添加剤を更に含み得る。添加剤の例は、粘着防止剤、安定剤、酸化防止剤、顔料、湿潤剤、分散剤、乳化剤、レオロジー添加剤、UV吸収剤、フリーラジカルスカベンジャー、スリップ添加剤、消泡剤、接着促進剤、レベリング剤、ワックス、ナノ粒子、被膜形成助剤、および難燃剤である。好ましい添加剤は、湿潤剤、分散剤および/または乳化剤ならびに(有機粘土を含む)粘土ベースの増粘剤、他の尿素化合物、(ポリ)アミド、(セルロース誘導体、グアー、キサンタンのような)多糖類、ポリアクリレートまたは会合性増粘剤などの本発明の組成物とは異なるレオロジー添加剤である。一例では、本発明による組成物は、そのレオロジー挙動に関して変更が必要である液体組成物の低剪断性能、中剪断性能および/または高剪断性能に影響を与える他の増粘剤と組み合わせて使用され得る。
【0061】
本発明の更に別の主題は、液体組成物でコーティングされた物品であって、該液体組成物が本発明による組成物を含むコーティング組成物、更により好ましくは、船舶コーティング組成物および保護コーティング組成物のようなエポキシ樹脂を含むコーティング組成物である、物品である。
【0062】
本発明はまた、液体組成物の総重量に対して計算して0.1重量%~7.5重量%の、
a)ゲル浸透クロマトグラフィー(溶出剤:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウムの溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:80℃)によってDIN 55672 パート2(2008年)に従って測定される350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
の混合物を含み、かつ成分a):成分b)の重量比が10:90~60:40の範囲内である、23℃の温度で液体である組成物に関する。
【0063】
一実施形態では、液体組成物は、好ましくはポリアミン化合物、より好ましくはポリエチレンイミン化合物またはその誘導体である更なるレオロジー制御剤を含む。
【0064】
本発明による「液体組成物」という用語は、23℃および100kPaで液体である組成物、すなわち、少なくとも2種の物質体を示す。そのような液体組成物は、例えば、溶剤系、水性、または無溶剤である。液体組成物は、好ましくは非水性である。
【0065】
好ましい実施形態では、成分a):成分b)の重量比は、10:90~60:40、より好ましくは15:85~70:30、更により好ましくは20:80~60:40の範囲内である。
【0066】
好ましい実施形態では、液体組成物は、該組成物の総重量に対して計算して0.0%から7.0%の間の水を含む。より好ましくは、液体組成物は、該組成物の総重量に対して計算して5.0%未満の水を含む。例えば、液体組成物は、該組成物の総重量に対して計算して3.0%未満または1.0%未満の水を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、液体組成物は、液体組成物の総重量に対して計算して0.0重量%から10.0重量%の間の揮発性有機溶剤を含む。より好ましくは、液体組成物は、液体組成物の総重量に対して計算して8.0重量%未満またはそれどころか5.0重量%未満の揮発性有機溶剤を含む。例えば、液体組成物は、液体組成物の総重量に対して計算して3.0重量%未満の揮発性有機溶剤を含む。液体組成物が無溶剤のコーティング組成物であることが本発明の非常に好ましい実施形態である。
【0068】
揮発性有機溶剤は、1013mbarで250℃未満の沸点を有する溶剤である。ベンジルアルコールは、揮発性有機溶剤であるとみなされない。
【0069】
適切な揮発性有機溶剤の例としては、n-ブチルアセテートなどのエステル、およびメチルエチルケトンなどのケトン、アルコール(ベンジルアルコールを除く)、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素(例えば、キシレン)が挙げられる。
【0070】
一実施形態では、本発明による液体組成物は、被膜形成性樹脂、好ましくは1個以上のエポキシ基を有する樹脂を含む。被膜形成性樹脂が無溶剤エポキシ樹脂であることが非常に好ましい実施形態である。適切な例は、Epon 825、Epon 826、Epon 827、Epon 828、Epon 862、Epon 863、Epon 869、Epon 824、Epon 829H、Epon 8281、Epon 233、Epon 813、Epon 8131およびEpon 8132(Hexion社によるあらゆるEponタイプ)、Araldite GY 6010、Araldite GY 783、Araldite GY 240、Araldite 250、Araldite 260(Huntsman社によるあらゆるAralditeタイプ)、D.E.R.331、D.E.R.353、D.E.R.354(Olin社によるあらゆるD.E.R.タイプ)である。
【0071】
被膜形成性樹脂の他の例は、ポリウレタン(1成分系および2成分系)、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、PVCプラスチゾル、PVCオルガノゾル、熱可塑性樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂である。そのような液体組成物は、好ましくは、通常の方法、例えば、物理的乾燥および/またはフリーラジカル共重合もしくは重付加等の化学的硬化によって固体状態に変換される。
【0072】
本発明は更に、液体組成物のレオロジーを制御する方法であって、該液体組成物に、
a)350g/molを上回る数平均分子量Mnを有する1種以上の尿素成分と、
b)式(I)HO-R-COOH(式中、Rは、3個~75個の炭素原子を有する有機基を表す)による1種以上のカルボン酸成分と、
(ここで、成分a):成分b)の重量比は60:40~10:90である)を添加することを含む、方法に関する。
【0073】
一実施形態では、液体組成物のレオロジーを制御する方法において、好ましくはポリアミン化合物、より好ましくはポリエチレンイミン化合物またはその誘導体である更なるレオロジー制御剤が液体組成物に添加される。
【0074】
好ましい実施形態では、成分a)および成分b)は、プレミックスとして、例えば、液体プレミックスとして液体組成物に添加される。幾つかの実施形態では、プレミックスは、上記のようにa)およびb)に加えて1種以上の有機希釈剤c)および任意に1種以上の塩d)も含み得る。
【0075】
成分a)および成分b)は、当業者に知られる適切な条件下で別々に混ぜ合わせ、撹拌後に、液体組成物に添加することができる。プレミックスは、予備混合が完了した直後に、または指定された時間の後に液体組成物に添加することができる。
【0076】
別の実施形態では、成分a)および成分b)は、連続的または同時のいずれかで、別々の成分として液体組成物に添加される。成分a)および成分b)を液体組成物に個別に添加することができる。すなわち、成分a)または成分b)を液体組成物に添加した後に、残りの成分を添加することができる。さらに、成分a)および成分b)を、任意の所与の順序で液体組成物に添加することができる。あるいは、成分a)および成分b)の両方を、個別の成分として、しかし同時に液体組成物に添加することができる。
【0077】
本発明を、実施例を参照して以下で更に説明する。例えば、反応温度、反応時間および投入速度のようなそれぞれの反応条件の選択は当業者に知られており、実施例でより詳細に例示される。
【実施例
【0078】
合成例
実施例(本発明による)
合成例1(SE1)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、95.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、80%の含有率の2,4-ジイソシアナトトルエン(以下、TDI T 80と略記)を含む12.2g(0.070mol)のトリレンジイソシアネートを混合物に添加した。
【0079】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0080】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.140mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0081】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=3757g/mol;M=10093g/mol)。
【0082】
合成例2(SE2)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、100.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.07mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0083】
2.1g(0.03mol)のエチレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0084】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0085】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=2559g/mol;M=10660g/mol)。
【0086】
合成例3(SE3)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、107.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.07mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0087】
5.95g(0.035mol)のイソホロンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0088】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0089】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=2812g/mol;M=8651g/mol)。
【0090】
合成例4(SE4)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、300.0gのN-ブチルピロリドンおよび7.8g(0.0185mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、36.5g(0.21mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0091】
14.4g(0.105mol)のm-キシリレンジアミンおよび65.1gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分5.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0092】
3時間の反応時間後に、157.5g(0.525mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0093】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=2301g/mol;M=11999g/mol)。
【0094】
合成例5(SE5)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、113.1gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、15.56g(0.07mol)のイソホロンジイソシアネートを混合物に添加した。
【0095】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0096】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0097】
生成物は粘稠な黄色の液体であった(GPC:M=1710g/mol;M=3266g/mol)。
【0098】
合成例6(SE6)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、95.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.34g(0.050mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.07mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0099】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0100】
3時間の反応時間後に、14.44g(0.07mol)のブチルトリグリコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0101】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=2685g/mol;M=10225g/mol)。
【0102】
合成例7(SE7)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、52.4gのN-ブチルピロリドンおよび2.1g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、5.5g(0.032mol)のTDI T 80ならびにTDI T65およびブチルトリグリコールから作製された2.83g(0.007mol)のモノ付加物(欧州特許第1048681号明細書の実施例2に記載されるように合成した)を混合物に添加した。
【0103】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。3時間の反応時間後に、42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0104】
生成物は乳濁した黄色の固体であった(M=3684g/mol)。
【0105】
合成例8(SE8)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、95gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.065mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.070mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0106】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0107】
3時間の反応時間後に、14.4g(mol)のトリエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0108】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=4711;M=13194)。
【0109】
合成例9(SE9)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、95gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.065mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.070mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0110】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0111】
3時間の反応時間後に、8.26g(mol)のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、混合物を30分間撹拌した。42.0g(0.14mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌した。
【0112】
生成物は粘稠な黄色の液体であった(GPC:M=4725;M=18860)。
【0113】
比較例(本発明によるものではない)
比較例1(SC1)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、102.7gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.060mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.07mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0114】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0115】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。39.8g(0.140mol)のステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0116】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=3716g/mol;M=10291g/mol)。
【0117】
比較例2(SC2)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、95.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.060mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.07mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0118】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0119】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。
【0120】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=2607g/mol;M=8665g/mol)。
【0121】
比較例3(SC3)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、103.0gのN-ブチルピロリドンおよび2.6g(0.06mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、12.2g(0.070mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0122】
4.8g(0.035mol)のm-キシリレンジアミンおよび21.7gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分3.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0123】
3時間の反応時間後に、7.6g(0.07mol)のベンジルアルコールを添加し、混合物を30分間撹拌した。40.1g(0.140mol)の12-ヒドロキシステアリンアルコールを添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0124】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=1962;M=6872)。
【0125】
比較例4(SC4)
26.7g(0.089mol)の12-ヒドロキシステアリン酸および80.0gのN-ブチルピロリドンの混合物を、酸が溶解するまで加熱しながら撹拌した。
【0126】
生成物は明澄無色の生成物であった。
【0127】
比較例5(SC5)
撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた四ツ口丸底フラスコに、300.0gのN-ブチルピロリドンおよび7.8g(0.185mol)の塩化リチウムを入れ、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。30分後に、36.5g(0.210mol)のTDI T 80を混合物に添加した。
【0128】
14.4g(0.105mol)のm-キシリレンジアミンおよび65.1gのN-ブチルピロリドンの混合物を、毎分5.0mLの速度で計量ポンプを使用して添加した。
【0129】
3時間の反応時間後に、63.4g(0.210mol)の12-ヒドロキシステアリン酸を添加し、さらに30分間撹拌を続けた。
【0130】
生成物は粘稠な橙色の液体であった(GPC:M=4159g/mol;M=15319g/mol)。
【0131】
適用例および試験
【表1】
【0132】
塗布試験系:2パック-エポキシ保護コーティング
保護コーティングの成分Aを、表2における配合物を使用して製造した。引き続き、その配合物の100gの成分Aを150mLのガラス瓶に充填した。配合物を室温(23℃)に冷却した後に、成分Aに対して1.0重量%のそれぞれのレオロジー添加剤SE1~SE9およびSC1~SC4の活性物質を、Dispermat CV(Getzmann社)と共に直径4cmの歯付きプレートを使用して1000rpmで2分間撹拌しながら配合物へと混加した。活性物質とは、含まれる有機希釈剤(c)を除いて、合成例で得られた混合物の全ての成分を指す。適用例AC5の製造については、レオロジー添加剤を混加しなかった。その後に、試料を室温で24時間貯蔵してから、これらを塗布した。塗布する前に、33.1gの硬化剤(成分B)を成分Aに添加し、試料が均質に見て取れるまでスパチュラを用いて手で撹拌することにより混和した。均質化した後に、段付きドクターブレードモデル421/S(Erichsen GmbH&Co KG社)を用いて50μm~500μmおよび550μm~1000μmの湿式膜厚で試料を塗布した。コントラストカード2801(BYK-Gardner GmbH社)上で、自動アプリケーターbyko-drive XL(BYK-Gardner GmbH社)を使用して50mm/秒の塗布速度で塗布を行った。塗布直後に、ドローダウンを乾燥するまで室温で垂直に吊るした。乾燥後に、タレ抵抗性を視覚的に評価した。したがって、乾燥後にドローダウンの明確な分離を示し、ランナーを示さず、そしてまた塗布された膜厚の間に膨れの形成を示さない湿式膜厚を選択した。得られた湿式膜厚を表3に列記する。1000μmを超える膜厚は塗布されなかったため、「≧1000μm」という値は、観察され得た最小の1000μmの厚さを指す。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
驚くべきことに、本発明による組成物の実施例AE1は、本発明によるものではない比較例SC1、SC2、SC3、SC4およびSC5と比較して、大幅に改善されたタレ抵抗性をもたらすことが判明した。実施例AE1/SE1は、尿素成分だけでなく12-ヒドロキシステアリン酸も含むが、本発明によるものではない比較試料SC1~SC3およびSC5は、それぞれ酸または12-ヒドロキシステアリン酸を欠いている。したがって、本発明によるものではない比較試料は、本発明による実施例よりも低い、タレ抵抗性によって測定されたレオロジー効果を示す。これらの試料は、本発明によるものではない比較試料よりもタレ抵抗性を改善するのに明らかにより一層適している。