(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】グルコース及びエタノールのデュアル検出のための分析物センサ及び検知方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1486 20060101AFI20221219BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20221219BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20221219BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B5/1486
G01N27/30 A
G01N27/416 338
G01N27/416 302G
G01N27/327 353B
G01N27/327 353U
G01N27/327 353R
(21)【出願番号】P 2021543440
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020015400
(87)【国際公開番号】W WO2020159981
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】トラン、ラム エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】オージャ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スローン、マーク ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】キアイエ、ナムバー
(72)【発明者】
【氏名】ラブ、マイケル アール.
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0131478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0132525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1468-5/1486
G01N 27/30-27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサであって:
少なくとも作用電極を含むセンサテール;
作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;
グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;
エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;
第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及び
グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含む、分析物センサ。
【請求項2】
センサテールは、組織への挿入のために構成されている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
第1及び第2の膜ポリマーは、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項4】
第1の膜ポリマーはポリビニルピリジンであり、第2の膜ポリマーはポリビニルピリジン-co-スチレンである、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項5】
キサンチンオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第1の部分の第1のポリマーに共有結合し、グルコースオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第2の部分の第2のポリマーに共有結合している、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項6】
エタノール応答性活性領域の第1の部分が電子移動剤を含み、電子移動剤が第1のポリマーに共有結合している、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項7】
電子移動剤がオスミウム錯体を含む、請求項6に記載の分析物センサ。
【請求項8】
エタノール応答性活性領域の第1の部分は、カタラーゼをさらに含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項9】
グルコース応答性酵素は、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼである、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項10】
分析物センサであって:
少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;第2の作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及びグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含む分析物センサ。
【請求項11】
センサテールは、組織への挿入のために構成されている、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項12】
第1及び第2の膜ポリマーは、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項13】
第1の膜ポリマーはポリビニルピリジンであり、第2の膜ポリマーはポリビニルピリジン-co-スチレンである、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項14】
キサンチンオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第1の部分の第1のポリマーに共有結合し、グルコースオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第2の部分の第2のポリマーに共有結合している、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項15】
エタノール応答性活性領域の第1の部分が電子移動剤を含み、電子移動剤が第1のポリマーに共有結合している、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項16】
電子移動剤がオスミウム錯体を含む、請求項
10に記載の分析物センサ。
【請求項17】
グルコース応答性酵素は、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼである、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項18】
エタノール応答性活性領域の第1の部分は、カタラーゼをさらに含む、請求項10に記載の分析物センサ。
【請求項19】
体液中のグルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を
検出するための分析物センサ
であって:
少なくとも作用電極を含むセンサテール;
作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;
グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;
エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;
第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及び
グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜
を含
み、
グルコース応答性活性領域はグルコースの濃度に比例する第1のシグナル
を生成するように構成されており、エタノール応答性活性領域はエタノールの濃度に比例する第2のシグナル
を生成するように構成されている、分析物センサ。
【請求項20】
体液中のグルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を
検出するための分析物センサ
であって:
少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;
第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;
第2の作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;
エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;
第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及び
グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜
を含
み、
グルコース応答性活性領域はグルコースの濃度に比例する第1のシグナル
を生成するように構成されており、エタノール応答性活性領域はエタノールの濃度に比例する第2のシグナル
を生成するように構成されている、分析物センサ。
【請求項21】
分析物センサであって:
少なくとも作用電極を含むセンサテール;
作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;
グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;
エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;
第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及び
少なくともグルコース応答性活性領域上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコースに対して透過性である第2の膜及び少なくともエタノール応答性活性領域上に配置された第3の膜であって、第3の膜ポリマーを含み、少なくともエタノールに対して透過性である第3の膜を含む分析物センサ。
【請求項22】
第2の膜は分断されている、請求項21に記載の分析物センサ。
【請求項23】
分析物センサ及び車両の電気システムと通信する制御モジュールであって、分析物センサによって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを含む制御モジュールをさらに含み、
操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えると、車両の操作がコンピュータシステムによって制御又は無効化される、請求項21に記載の分析物センサ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
個体内の様々な分析物の検出は、健康やウェルビーイングの状態をモニタリングするために時として不可欠な場合がある。通常の分析物レベルからの逸脱は、代謝状態や病気などの根本的な生理学的状態、又は特定の環境条件への曝露を示していることがよくある。単一の分析物が特定の生理学的状態に対して単独で調節不全になる場合があるが、同じ生理学的状態のため、又は併存する(同時に存在する)関連又は非関連の生理学的状態の結果として、複数の分析物が同時に調節不全になる場合もある。
【0002】
個体の分析物モニタリングは、定期的に又は一定期間にわたって継続的に行われる場合がある。定期的な分析物モニタリングは、1つ以上の時間間隔で血液などの体液のサンプルを採取し、生体外で分析することによって行われ得る。継続的な分析物モニタリングは、分析が生体内で実施され得るように、皮膚内、皮下又は静脈内などの、個体の組織内に少なくとも部分的に埋め込まれたままである1つ以上のセンサを使用して行われ得る。埋め込まれたセンサは、例えば、個体の特定の健康上のニーズ及び/又は以前に測定された分析物レベルに応じて、任意の指示された速度で分析物データを収集することができる。
【0003】
生体内分析物センサは、通常、特定の分析を提供するために単一の分析物を分析するように構成され、所与の分析物の分析特異性を提供するために酵素を使用することが多い。しかし、分析物の様々な組み合わせの間の生理学的相互作用により、特定の場合では、複数の分析対象物の分析が望ましい場合もある。現在、複数の分析物の生体内分析は、各分析物の分析用に構成された対応する数の分析物センサを使用することを必要とし得る。このアプローチは、個体が複数の分析物センサを装用する必要があるため、不便な場合がある。さらに、複数の分析物センサは、個人又は保険会社にとって許容できないコスト負担となる可能性がある。また、このような検知プロトコル中に、独立した分析物センサの1つが故障する可能性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【
図1】本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。
【
図2A】本明細書に開示の1つ以上の実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図2B】本明細書に開示の1つ以上の実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図3】本明細書に開示の1つ以上の実施形態での使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の図を示す。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態による、複数の電極が実質的に円筒形であり、中央基板の周りに互いに同心円状に配置されている例示的なセンサ構成の斜視図を示す。
【
図5A】本開示の1つ以上の実施形態による、作用電極上に直接配置されたアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応系を示す。
【
図5B】本開示の1つ以上の実施形態による、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応系を示し、グルコースオキシダーゼは作用電極から離れており、キサンチンオキシダーゼは作用電極上に直接位置している。
【
図6A】本開示の1つ以上の実施形態による、互いに同心円状に配置された円筒形電極、ならびにグルコース及びエタノールを検出するための膜構成を特徴とする分析物センサの斜視図を示す。
【
図7】本開示の1つ以上の実施形態による、グルコース及びエタノールを検出するための例示的な作用電極及び膜構成を示す。
【
図8】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する分析物センサの一部であって、2つの作用電極を有し、2つの作用電極のうちの1つを覆う二層膜を特徴とする分析物センサの一部の例示的な概略図を示す。
【
図9A】別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極の、様々なエタノール濃度への曝露時の応答の2つの複製を示し、カタラーゼはグルコースオキシダーゼを含む活性領域に存在する。
【
図9B】別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極間の、様々なエタノール濃度への曝露時の比較応答データを示し、カタラーゼは活性領域に別々に存在する。
【
図10】
図9Aの電極の平均電流応答対エタノール濃度の例示的なプロットを示す。
【
図11】本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
本開示は、概して、少なくとも2つの異なる分析物の検出のために複数の酵素を使用する分析物センサ及び方法、より具体的には、少なくともグルコース及びエタノールを検出するために複数の酵素を使用する分析物センサ及び方法を説明する。
【0006】
上述したように、分析物センサは通常、単一の分析物を検出するために使用され、典型的には、特定の基質に対して特定の特異性を有する酵素を使用する。しかしながら、複数の分析物のモニタリングは、各分析物の個別の検出を容易にするために、対応する数の分析物センサを使用する必要があるため、複雑になる場合がある。このアプローチは、特に複数の分析物を生体内でモニタリングする場合、例えば、複数の分析物センサのコストや、複数の分析物センサを装着するときのユーザの快適さ、1つ以上の個々の分析物センサの故障の統計的確率の増大などの問題のために、問題となるか又は望ましくない可能性がある。
【0007】
グルコース応答性分析物センサは、糖尿病患者が健康をよりよく管理するのを支援するために、十分に研究され、かつまだ進展している分野を代表する。糖尿病患者における併存疾患の有病率にもかかわらず、グルコースと共に調節不全になることが多い他の分析物を検出するための適切なセンサ化学は、開発が遅れている。
【0008】
本開示は、単一の酵素ベースの分析物センサを使用して、目的とする少なくとも2つの分析物に応答する分析物センサを提供する。より具体的には、本開示は、糖尿病管理において重要な役割を果たす2つの分析物である、グルコース及びエタノールの両方に応答する分析物センサを提供する。本明細書で使用される場合、「エタノール」という用語は、化合物C2H6Oを指し、アルコール飲料の成分である。「アルコール」及び「エタノール」という用語は、特に明記しない限り、本明細書では交換可能に使用される。このようなグルコース及びエタノールのデュアルセンサは、身体に装着して、生体内のグルコース及びエタノールレベルの両方への同時の連続的又はほぼ連続的なアクセスを提供することができる。
【0009】
血糖を維持するためのインスリンとグルカゴンのバランスであるグルコースホメオスタシスは、適切な代謝のためにそのような恒常性に依存する中枢神経系及び様々な細胞系の機能にとって重要である。グルコースホメオスタシスの変動(すなわち、血糖の過剰である高血糖、及び血糖の不足である低血糖)は、少なくともインスリン及びグルコースの産生、調節、及び作用を特異的に妨害することによって、器官及び細胞の動作を妨害する可能性がある。例えば、アルコールは肝臓でのグルコースの生成を阻害し、それにより肝臓からのグルコースの放出を阻害し、中等度又は重度の低血糖のリスクを高める可能性がある。アルコールはまた、インスリンの有効性を低下させ、それにより中等度又は重度の高血糖のリスクを高める可能性もある。このように、アルコールとグルコースの関係は互いに直接相関していない可能性があり、多くの点で個々別々であり(例えば、遺伝的素因)、少なくとも曝露時間と濃度に依存する。さらに、アルコールは、高血糖症及び低血糖症に関連する症状を認識又は理解する個人の能力を損ない、それによって個人の健康リスクを悪化させる可能性がある。
【0010】
糖尿病患者の血糖コントロールにおけるアルコール誘発性の変化についての知識は、そのグルコースレベルが生来的に調節不全であるか、あるいは介入しない場合は恒常性を欠いているため、非常に有益となり得る。本開示に従ってエタノールレベルのみをモニタリングすることは有利であるかもしれないが、本開示はさらに、エタノール及びグルコースレベルの両方の同時又は二重の(デュアル)モニタリングを可能にし、そのグルコースレベルは典型的に糖尿病の個人によってモニタリングされる。そうすることで、個人は、自身のエタノール及びグルコースレベルをモニタリングし相関させて、治療の決定、ライフスタイルの決定などをカスタマイズすることができる。したがって、本開示は、グルコース及びエタノールの両方に応答する分析物センサを提供し、これは、特に糖尿病の個人にとって健康転帰の改善につながる可能性がある。いくつかの実施形態において、本開示のグルコース及びエタノールのデュアル応答性センサは、本開示の範囲から逸脱することなく、1つ以上の他の分析物(例えば、乳酸塩、酸素、pH、A1c、ケトン、薬物のレベルなど)をさらに検出し得る。
【0011】
本開示の実施形態は、少なくともエタノール応答性活性領域を含む単一の分析物センサを含み、この活性領域は任意選択でグルコース応答性活性領域と組み合わされる。本開示は、グルコース及びエタノールのデュアル分析物センサについて述べているが、1つ以上のエタノール応答性活性領域のみを含む(そしてグルコース応答性活性領域と組み合わされていない)分析物センサもまた、現在の開示の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0012】
本明細書に開示される実施形態は、単一の分析物センサのテール内に存在するグルコース及びエタノール応答性活性領域を含み、それにより、両方の分析物を生体内で同時にモニタリングすることを可能にする。本明細書で使用される場合、センサに関する「テール」という用語は、センサの一部であって、分析物応答性活性領域を含み、個体の組織内、例えば皮膚、皮下又は静脈内に埋め込まれるか、他の態様で組織と接触するセンサの一部を意味する。テールは、任意の形状又はサイズとすることができ、本開示の範囲から逸脱することなく、組織に植え込まれた他の構成要素(例えば、完全に植込み可能な分析物センサ)と関連付けられ得る。グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の様々な物理的配置が、以下で述べる分析物センサ、ならびにグルコース及びエタノールのデュアルセンサに関連する特定の課題内で可能である。本開示の特定の実施形態は、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域が、各分析物の濃度を決定するために別々に及び同時に調査され得るセンサアーキテクチャを含む。
【0013】
本明細書の実施形態は、少なくともグルコース及びエタノールの検出を容易にするために協調して作用することができる少なくとも2つの酵素を含む検出化学物質を含む酵素系を利用する。本明細書で使用される場合、「協調して」という用語及びその文法的変形は、少なくとも第1の酵素反応の生成物が少なくとも第2の酵素反応の基質となり、最終的な酵素反応が基質(分析物)の濃度測定の基礎として機能する酵素反応系を指す。2つの組み合わされた酵素反応に関して定義されているが、場合によっては、3つ以上の酵素反応も同様に組み合わされ得ることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、第1の酵素反応の生成物は、第2の酵素反応の基質となり得、第2の酵素反応の生成物は、第3の酵素反応の基質となり得、第1又は第2の酵素反応中に、第3の酵素反応が基質(分析物)の濃度測定の基礎として機能する。
【0014】
単一の酵素では検出を容易にすることができない場合、目的の所与の分析物を検出するために、互いに協調して作用する2つ以上の酵素を利用することが望ましい場合がある。単一の酵素が分析物の検出を促進するのに効果がない可能性がある状況には、例えば、酵素が酵素反応の1つ以上の生成物によって阻害されるか、又は分析物センサ内に配置されると、酸化状態と還元状態との間を循環できない状況、及び/又は検出を容易にするために必要な反応経路を促進するための酵素が知られていない状況が含まれる。
【0015】
グルコース応答性活性領域とエタノール応答性活性領域を単一の分析物センサに組み合わせると、いくつかのハードルが生じる可能性がある。特に、グルコース応答性分析物センサは、一般に、エタノールの検出に必要な酵素と電子を自由に交換できない可能性がある酸化還元メディエータを使用する。グルコース応答性分析物センサは、センサの過負荷(飽和)を回避し、正確なグルコース測定を容易にするために、単一の物質移動制限高分子膜をさらに使用することができる。グルコースに適した物質移動制限層は、拡散係数及び濃度がかなり異なるため、アルコールには適さない場合がある。更なるハードルには、分析物の感度の違い、及び特定の分析条件のセットに対する1つ以上の酵素の潜在的な非互換性が含まれる。
【0016】
本開示はさらに、グルコース及びエタノールの同時検出を容易にするための膜組成物、堆積構成、及び堆積方法を提供する。具体的には、いくつかの実施形態において、本開示は、グルコース検出を妨げることなく、増強されたエタノール検出を容易にする特定の二層膜構成を提供する。本明細書で使用される場合、「二層膜」という用語は、少なくとも作用電極及び活性領域を覆う2つの堆積層を有する膜を指し、これらは、組成が同じであっても異なっていてもよい。すなわち、二層膜は、組成が均質(同じ化学物質のもの)であっても、組成が不均質(異なる化学物質のもの)であってもよく、それが覆う分析物センサ構成要素を参照して説明される。本明細書で使用される場合、「単層膜」は、少なくとも作用電極及び活性領域を覆い、均質な組成である1つの堆積層を有する膜を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルコース及びエタノールのデュアルセンサの構成により、均質な単層膜を、少なくとも1つのグルコース応答性活性領域及び少なくとも1つのエタノール応答性活性領域の両方の上に配置(オーバーコート)することができる。他の実施形態では、本明細書に記載のグルコース及びエタノールのデュアルセンサの構成により、均質な単層膜を少なくとも1つのグルコース応答性活性領域上に配置し、均質又は不均質な二層膜を少なくとも1つのエタノール応答性活性領域上に配置することができる。
【0017】
本開示の特定の分析物センサをより詳細に説明する前に、本開示の実施形態をよりよく理解できるように、適切な生体内分析物センサ構成及びセンサシステムの簡単な概要を提供する。本開示の様々な実施形態によれば、以下に記載されるセンサシステム及び分析物センサ構成のいずれも、複数の酵素を特徴とし得、そして本明細書に記載される特定の構成に限定されないことが理解されるべきである。
【0018】
図1は、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域を含む分析物センサなどの、本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。示されるように、検知システム100は、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されているローカル通信パス又はリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102及びリーダデバイス120を含む。リーダデバイス120は、いくつかの実施形態によれば、分析物濃度、分析物の傾向、警告、及び/又はセンサ104又はそれに関連するプロセッサによって決定される通知などの、様々な情報を表示するための出力媒体を構成することができ、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にし得る。リーダデバイス120は、例えば、多目的スマートフォン又は専用の電子リーダ機器であり得る。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、特定の場合には、複数のリーダデバイス120が存在し得、センサ制御デバイス102と通信し得る(例えば、複数のユーザが分析物レベルにアクセスできるようにするために)。リーダデバイス120はまた、こちらも有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されている通信パス/リンク141及び/又は142を介して、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180とそれぞれ通信し得る。それに加えて又はそれに代えて、リーダデバイス120は、通信パス/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信し得る。ネットワーク150は、通信パス/リンク152を介してリモート端末170に、及び/又は通信パス/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180にさらに通信可能に接続され得る。あるいは、センサ104は、介在するリーダデバイス120を存在させ又はさせずに、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、センサ104は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されているように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介してリモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。
【0019】
近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFi(登録商標)などの任意の適切な電子通信プロトコルを、通信パス又はリンクのそれぞれに使用することができる。上述のようなリーダデバイス120、及び/又はリモート端末170、及び/又は信頼できるコンピュータシステム180、及び/又は追加の1つ以上のリーダデバイスは、いくつかの実施形態によれば、一次ユーザ以外の、ユーザの分析物レベルに関心のある個人によってアクセス可能である。リーダデバイス120は、ディスプレイ122及びオプションの入力コンポーネント121を含み得る。ディスプレイ122は、いくつかの実施形態によれば、例えば、センサ制御デバイス102及びユーザ入力に関連する情報を出力するためのタッチスクリーンインターフェースを含み得る。
【0020】
センサ制御デバイス102は、センサ104を操作するための回路及び電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意選択で、電源及び/又はアクティブ回路を省略してもよく、センサ制御デバイス102は、他の態様で自己給電することができる。プロセッサ(図示略)を、センサ104に通信可能に接続してもよく、プロセッサは、物理的にセンサハウジング103及び/又はリーダデバイス120内に配置される。センサ104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って延在する。接着層105は、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するように適合されている。
【0021】
センサ104は、皮膚の真皮層内又は皮下層内など、対象の組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサ104は、所与の組織の所望の深さまで挿入するのに十分な長さのセンサテールを含み得る。センサテールは、少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの作用電極上に配置され、グルコース及び/又はエタノールなどの、目的とする1つ以上の分析物を検知するために活性である1つ以上の活性領域(任意の形状およびサイズとすることができる検知領域/スポット又は検知層)とを含み得る。いくつかの実施形態では、活性領域は、1つ以上の個別のスポット(例えば、1~約10のスポット、又はそれ以上)の形態であり、サイズは約0.01mm2~約1mm2の範囲であり、それらの間の任意の値及びサブセットを包含するが、より大きい又はより小さい個々の活性領域スポットも本願では企図されている。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、1つ以上の活性領域は、1つ以上の膜で覆われた複数の酵素を含み得る。いくつかの実施形態によれば、活性領域は、少なくとも一部の酵素が化学的に結合している(例えば、共有結合、イオン結合などしている)又は他の方法で固定化(例えば、マトリックス中で非結合)されているポリマー材料を含み得る。いくつかの実施形態では、各活性領域は、目的の分析物の検出を容易にするための電子移動剤をさらに含み得る。
【0023】
本開示の様々な実施形態において、目的の分析物(例えば、グルコース及びエタノール)は、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水などの対象の任意の生物学的流体中でモニタリングされ得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、生体内でグルコース及び/又はエタノールの濃度を決定するために真皮液又は間質液をアッセイするために適合させることができる。
【0024】
図1を引き続き参照すると、センサ104は、データをリーダデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、分析物濃度データ(例えば、グルコース及び/又はエタノール濃度)は、データが取得されると、(例えば、数秒ごとに、毎分、5分ごとに、又は他の所定の期間で)送信されるまでメモリに格納され、特定の頻度で、又は特定の期間が経過した後など、自動的かつ定期的に通信され得る。他の実施形態では、センサ104は、設定されたスケジュールに従ってではなく、非自動的な方法でリーダデバイス120と通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に入ったときに、RFID技術を使用してセンサ104から通信され得る。リーダデバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリに記憶されたままであってもよい。したがって、患者は、リーダデバイス120に常に近接している必要はなく、代わりに、都合のよい時間にデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動及び非自動データ転送の組み合わせを実装することができる。例えば、データ転送を、リーダデバイス120がセンサ104の通信範囲からいなくなるまで、自動的に継続することができる。センサ104からの自動及び非自動データ転送について、リーダデバイス120を参照して説明したが、そのような転送メカニズムは、本開示の範囲から逸脱することなく、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180に等しく適用可能である。
【0025】
組織へのセンサ104の導入を促進するために、イントロデューサを一時的に存在させてもよい。例示的な実施形態では、イントロデューサは、針又は同様の鋭利な物体を含み得る。代替の実施形態では、シースやブレードなどの他のタイプのイントロデューサが存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針又は他のイントロデューサは、組織挿入の前に(例えば、外部を取り囲む)センサ104の近傍又は同時に一時的に存在し、その後、引き抜かれてもよい。存在している間、針又は他のイントロデューサは、センサ104がたどるアクセス経路を開くことによって、センサ104の組織への挿入を容易にし得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針又は他のイントロデューサは、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を容易にして、センサ104の植込みが行われることを可能にし得る。アクセス経路を開いた後、針又は他のイントロデューサを引き抜いて、鋭利な危険を与えないようにすることができる。例示的な実施形態では、適切なイントロデューサは、中実又は中空、斜角又は非斜角、断面が円形又は非円形などであり得る針を含む。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径及び/又は先端設計において、約150~約300マイクロメートル(例えば、250マイクロメートル)の断面直径を有し得る鍼治療針に匹敵し得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0026】
いくつかの実施形態では、イントロデューサの先端(存在している間)は、イントロデューサが最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の末端上で角度を付けられ得る。他の例示的な実施形態では、センサ104は、イントロデューサの管腔又は溝内に存在してもよく、イントロデューサは、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、イントロデューサはセンサの挿入を容易にしたら、その後引き抜かれる。
【0027】
本明細書に開示の分析物センサは、単一の作用電極上(例えば、単一の作用電極の同じ側又は反対側)、又は2つ以上の別個の作用電極上の異なるタイプの活性領域(すなわち、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域)を特徴とし得る。本開示の様々な実施形態によれば、及び本明細書でさらに説明されるように、単一作用電極センサ構成は、2電極又は3電極検出モチーフを使用することができる。単一の作用電極を特徴とするセンサ構成を、以下、
図2A~2Cを参照して説明する。これらのセンサ構成のそれぞれは、本開示の様々な実施形態による、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域を適切に組み込むことができる。その後に、複数の作用電極を特徴とするセンサ構成を、
図3及び4A~4Dを参照して説明する。複数の作用電極が存在する場合、1つ以上のグルコース応答性活性領域を第1の作用電極上に配置することができ、1つ以上のエタノール応答性活性領域を第2の作用電極上に配置することができる。このように活性領域が分離及び/又は間隔を空けられている場合、製造中に、異なる組成及び/又は異なる透過性値を有する物質移動制限膜がより容易に堆積され得るので、複数の作用電極を使用するセンサ構成は、本明細書の開示によるグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の両方を組み込むのに特に有利であり得る。特にディップコーティングによって、異なる組成を有する物質移動制限膜の各作用電極への堆積を容易にするように配置された複数の作用電極を特徴とする特定のセンサ構成が、
図4A~4Cに示されている。本明細書に開示される物質移動制限膜を堆積するための適切な技術には、例えば、スプレーコーティング、塗装、インクジェット印刷、ステンシル、ローラコーティング、ディップコーティングなど、及びそれらの任意の組み合わせによるものが含まれる。
【0028】
単一の作用電極が分析物センサに存在する場合、3電極センサ構成は、作用電極、カウンター電極、及び参照電極を含み得る。関連する2電極センサ構成は、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、カウンター電極及び参照電極の両方(すなわち、カウンター/参照電極)として機能し得る。2電極及び3電極構成の両方において、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域は単一の作用電極と接触し(例えば、その上に配置され)てもよい。いくつかの実施形態では、様々な電極は互いに少なくとも部分的に積み重ねられ(層状にされ)、及び/又はセンサテール上で互いに横方向に離隔され得る。適切なセンサ構成は、形状が実質的に平坦又は実質的に円筒形であり得、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域は、作用電極上で離隔されている。本明細書に開示されるすべてのセンサ構成において、様々な電極は、1つ以上の誘電体材料又は同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0029】
複数の作用電極を特徴とする分析物センサは、本明細書に記載の実施形態での使用にさらに適したものであり得る。そのような分析物センサは、少なくとも2つの作用電極及び少なくとも1つの追加の電極を含み、これは、各作用電極のカウンター/参照電極として機能し得る。他の実施形態では、第1の追加電極は、複数の作用電極のそれぞれのカウンター電極として機能し得、第2の追加電極は、複数の作用電極のそれぞれの参照電極として機能し得る。
【0030】
本明細書に記載の様々な分析物センサは、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによって分析物(例えば、少なくともグルコース及びエタノール)をアッセイするために動作可能であり得る。
【0031】
図2Aは、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサ構成の断面図を示す。示されるように、分析物センサ200は、作用電極214とカウンター/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及びカウンター/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に配置され得る(構成は図示しない)。活性領域218a及び218b(すなわち、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域)は、作用電極214の表面上で互いに横方向に離隔されている。本明細書に示される様々なセンサ構成において、活性領域218a及び218bは、各分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、活性領域218a及び218bは、本開示の範囲から逸脱することなく、単一電極(図示略)の対向する両側に配置され得る。
【0032】
引き続き
図2Aを参照すると、膜220は、少なくとも活性領域218a及び218bを覆い、任意選択で、作用電極214及び/又はカウンター/参照電極216の一部又は全部、分析物センサ200全体、あるいは活性領域218a及び218bを含む分析物センサ200のテール部分の少なくとも全体を覆うことができる。分析物センサ200の片面又は両面が、膜220で覆われてもよい。膜220は、分析物フラックスを活性領域218a及び218bに制限するための適切な能力を有する1つ以上の高分子膜材料(膜ポリマー)を含み得る。
図2Aでは分かり易くはないが、本明細書でさらに説明されるように、活性領域218a及び218bの各位置で分析物フラックスを別々に調節するために、及び/又は協調酵素反応系の1つ以上の構成要素を分離するために(例えば、その系の特定の反応物又は生成物が分析物の検出を阻害する場合)、膜220の組成は活性領域218a及び218bで異なり得る。例えば、膜220は、膜220の組成及び/又は層が各位置で異なるように、活性領域218a及び218b上に噴霧及び/又はプリントされ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、膜220は、分析物センサ200の端部Aから開始するディップコーティングによって堆積され得る。具体的には、分析物センサ200の端部Aを第1のコーティング配合物に浸漬して、活性領域218aをコーティングすることができる。活性領域218a上の第1のコーティング配合物を部分的に硬化させた後、分析物センサ200の端部Aを第2のコーティング配合物に浸漬して、活性領域218a及び218bの両方を第2のコーティング配合物でコーティングすることができる。したがって、膜220は、活性領域218aでは二重層とすることができ、活性領域218bでは均質にすることができる。他の実施形態では、分析物センサ200の端部Aを第1のコーティング配合物に浸漬して活性領域218a及び218bの両方をコーティングし、部分的に硬化させた後、端部Aを第2のコーティング配合物に浸漬して活性領域218a又は218bの一方のみをコーティングすることができる。第1及び第2のコーティング配合物は、本開示の範囲から逸脱することなく、組成において同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
図2B及び2Cは、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極センサ構成の断面図を示す。単一の作用電極を特徴とする3電極センサ構成は、分析物センサ201及び202(
図2B及び2C)に追加の電極217を含めることを除いて、
図2Aの分析物センサ200について示したものと同様とすることができる。追加の電極217を用いると、電極216は、カウンター電極又は参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は他方の電極機能を果たし得る。いずれの場合も、作用電極214は、その本来の機能を引き続き果たす。追加の電極217は、作用電極210上又は電極216上のいずれかに、それぞれの間に誘電体の分離層を挟んで配置することができる。例えば、
図2Bに示されるように、電極214、216、及び217は、基板212の同じ面上に配置され、誘電体層219a、219b、及び219cによって互いに電気的に絶縁されている。あるいは、電極214、216、及び217のうちの少なくとも1つは、
図2Cに示されるように、基板212の反対側の面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)及び電極216(カウンター電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(参照電極)は、電極214又は216のうちの一方の上に配置され、誘電体材料でそれから離隔され得る。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)が電極217上に存在してもよく、参照材料層230の位置は、
図2B及び2Cに示されるものに限定されない。
図2Aに示される分析物センサ200と同様に、分析物センサ201及び202の活性領域218a及び218bは、
図2B及び2Cのセンサ構成では作用電極214上で互いに横方向に離隔して配置されるが、他の構成では、他の態様で間隔を空けて(例えば、作用電極の対向する両側に)配置することができる。
【0035】
分析物センサ200(
図2A)と同様に、膜220もまた、分析物センサ201及び202において、活性領域218a及び218b、ならびに他のセンサ構成要素を覆うことができる。いくつかの実施形態では、追加の電極217が、膜220で覆われ得る。
図2B及び2Cでは、電極214、216及び217のすべてが膜220で覆われているものとして描写されているが、いくつかの実施形態では、作用電極214のみ又は活性領域218a及び218bを含む作用電極214の一部のみが覆われてもよいことが認識されるべきである。さらに、電極214、216、及び217のそれぞれにおける膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよく、前述のように、電極214、216、及び217のそれぞれの上に同じように又は異なるように層状にされ得る。2電極センサ構成(
図2A)の場合のように、分析物センサ201及び202の片面又は両面は、
図2B及び2Cのセンサ構成において膜220で覆われてもよく、分析物センサ201及び202の全体が覆われてもよく、又は活性領域218a及び218bのみが覆われてもよい。さらに、膜220の組成を活性領域218a及び218bで異ならせて、活性領域へのフラックスを制御し、及び/又は膜220を端部Aからディップコーティングして、活性領域218a及び218bのうちの一方の上に二重層を、他方の活性領域の上に均質な層を堆積させるなどによって、協調酵素反応系の様々な構成要素を単離してもよい。したがって、
図2B及び2Cに示される3電極センサ構成は、本開示の範囲内にある代替の電極及び/又は層構成を備えた、本明細書に開示される実施形態の非限定的例として理解されるべきである。
【0036】
図3、4、6A、6B、及び8は、複数の作用電極を有する分析物センサ構成を示す。以下の説明は、主に2つの作用電極を有する分析物センサ構成に向けられているが、本明細書の開示を拡張することで、3つ以上の作用電極も問題なく組み込まれ得ることが理解されるべきである。追加の作用電極は、グルコース及びエタノールの検知以外の追加の検知能力を与えるなど、追加の活性領域及び対応する検知能力を、そのような特徴を有する分析物センサに与えることを可能にし得る。
【0037】
図3は、本明細書の開示の1つ以上の実施形態での使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的なセンサ構成の断面図を示す。
図3に示すように、分析物センサ300は、基板302の対向面にそれぞれ配置された作用電極304及び306を含む。活性領域310aは、作用電極304の表面に配置され、活性領域310bは、作用電極306の表面に配置される。活性領域310a及び310bのそれぞれは、本開示の様々な実施形態によれば、グルコース応答性活性領域又はエタノール応答性活性領域のいずれかであり得、それにより、そのような分析物のデュアル検出を可能にする。カウンター電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330及び332は、それぞれ、参照電極321及びカウンター電極320上に配置されている。膜340は、様々な実施形態によれば、少なくとも活性領域310a及び310bを覆うことができ、分析物センサ300の他の構成要素、又は分析物センサ300の全体も、任意選択で膜340で覆われてもよい。この場合も、膜340は、前述のように、組成が変化するか、又は活性領域310a及び310bに1つ以上の層として配置され得る。例えば、1つ以上の配合物の異なる膜配合物又は層を、分析物センサ300の対向する面に噴霧及び/又はプリントすることができる。ディップコーティング技術もまた、特に活性領域310a及び310bのうちの少なくとも一方に二層膜を堆積させるのに適切であり得る。
【0038】
例えば、活性領域310a又は310bはグルコース応答性活性領域であり得、他方はエタノール応答性活性領域であり得る。一例として、活性領域310aがグルコース応答性活性領域である場合、膜340aは310aを覆い、グルコース検知と互換性のある移動制限膜であり得る。そのような例では、活性領域310bはエタノール応答性活性領域であり、膜340bは、310aを覆い、エタノール検知と互換性のある移動制限膜であり得る(
図5A参照)。すなわち、膜340は、それぞれグルコース及びエタノール検知用に構成された活性領域340a、310bを覆う2つの別個の膜組成物340a、340bから構成され得る。いくつかの実施形態では、膜組成物340a、340bは、それらがそれぞれの分析物応答性活性領域によって検出される分析物と適合性であれば、同じ又は異なる組成物とすることができる。膜340a、340bが同じ組成物である場合、それらは、所望の分析物検出を可能にするために異なる厚さを有する可能性が高いと考えられる。好ましい実施形態では、膜340a、340bは、それぞれグルコース及びエタノールの個別の調整された検出をより容易にするために、異なる組成物であり得る。
【0039】
複数の作用電極を有し、
図3に示されるものとは異なる代替のセンサ構成は、別個のカウンター電極及び参照電極320及び321の代わりに、カウンター/参照電極、及び/又は、明示的に示されたものとは異なる層及び/又は膜の配置を特徴とし得る。例えば、カウンター電極320及び参照電極321の配置は、
図3に示されているものとは逆にすることができる。さらに、作用電極304及び306は、必ずしも、
図3に示される態様で基板302の対向面上に存在する必要はない。
【0040】
適切なセンサ構成は、性質が実質的に平面である電極を特徴とし得るが、非平面電極を特徴とするセンサ構成も、本明細書の開示での使用に有利であり、特に適している可能性があることを理解されたい。特に、互いに同心円状に配置された実質的に円筒形の電極は、本明細書に記載されるように、物質移動制限膜の堆積を容易にし得る。
図4は、互いに同心円状に配置された実質的に円筒形の電極を特徴とする分析物センサの斜視図を示す。
図4は、2つの作用電極を特徴とするセンサ構成を示しているが、1つの作用電極又は3つ以上の作用電極のいずれかを有する同様のセンサ構成が、本明細書の開示の拡張を通じて可能であることを理解されたい。
【0041】
図4は、複数の電極が実質的に円筒形であり、中央基板の周りに互いに同心円状に配置されている例示的なセンサ構成の斜視図を示す。示されるように、分析物センサ401は中央基板402を含み、この周りにすべての電極及び誘電体層が互いに同心円状に配置されている。特に、作用電極410は、中央基板402の表面に配置され、誘電体層412は、センサ先端404の遠位の作用電極410の一部上に配置される。作用電極420は、誘電体層412上に配置され、誘電体層422は、センサ先端404の遠位にある作用電極420の一部上に配置される。カウンター電極430は、誘電体層422上に配置され、誘電体層432は、センサ先端404の遠位にあるカウンター電極430の一部上に配置される。参照電極440は、誘電体層432上に配置され、誘電体層442は、センサ先端404の遠位にある参照電極440の一部上に配置される。このように、作用電極410、作用電極420、カウンター電極430、及び参照電極440の露出面は、分析物センサ400の長手方向軸Bに沿って互いに離隔されている。作用電極410、作用電極420、カウンター電極430、及び参照電極440の順序は非限定的であることを理解されたい。さらに、いくつかの実施形態では、カウンター電極430及び参照電極440を組み合わせて単一の電極にすることができる。
【0042】
引き続き
図4を参照すると、活性領域414a及び414bは、それぞれ、作用電極410及び420の露出面上に配置され、それにより、流体との接触を可能にしてグルコース及び/又はエタノールの検知を行う。任意選択で、他の分析物がさらに組み合わされる。活性領域414a及び414bは、
図4(
図6A及び6Bも同様)では3つの別個の円形スポットとして描かれているが、代替のセンサ構成では3つより少ない又はより多いスポットが存在してもよく、スポットの形状は非円形(例えば、楕円形、正方形、多角形など)であり得ることが理解されるべきである。
【0043】
図3、6A、6B、及び7は、本開示の1つ以上の実施形態による、グルコース及びエタノールを同時に検出するための分析物センサの様々な膜構成を示す。そのような実施形態は、例えば、二層膜を利用して、協調酵素反応系の一部を形成する様々な検知構成要素の分離を容易にし得る。これらの検知構成要素がもしも共存する場合は、分析物の検知を阻害するであろう。例えば、上記のように、エタノール酸化の生成物は、その検出に必要な酵素を強く阻害するので、単層膜はエタノール検出を可能にするのに効果がない可能性がある。エタノール検知で使用するためにそのような協調酵素反応系が選択された場合、正確なエタノール検知を可能にするために、二層膜を使用するそのような構成要素の分離が必要である。本明細書に記載の分析物センサの実施形態での使用に適した様々な膜構成について説明する前に、グルコース及びエタノールのデュアルセンサで使用するための協調酵素反応系について最初に説明する。
【0044】
いくつかの実施形態では、エタノールを検出するための協調酵素反応系を含む分析物センサは、アルコールオキシダーゼ(AOX)の第1の酵素及びキサンチンオキシダーゼ(XOX)の第2の酵素を利用することができる。エタノール(及び作用電極上に配置された両方の酵素を有するエタノール以外の他のアルコール)を検出するためのアルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼとの間の協同性は、以下でさらに詳細に説明される。本開示の特定の実施形態において、キサンチンオキシダーゼは、活性領域においてポリマーに共有結合されており、アルコールオキシダーゼは、ポリマーに共有結合されていない。他の実施形態では、キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤の両方がポリマーに共有結合され得るが、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されない。カタラーゼは、この酵素のペアと共に安定剤として存在し得る。
【0045】
アルコールオキシダーゼはエタノールと相互作用してアセトアルデヒドと過酸化水素を形成する。他のアルコールは反応して、対応するより高い又はより低い炭素数のアルデヒドを形成する。有利なことに、アルコールオキシダーゼは、エタノールからアセトアルデヒドへの順方向変換のみを触媒し(アルコールデヒドロゲナーゼの場合のように可逆的に反応を実施するのとは対照的である)、これはこの酵素を分析物センサで使用するのに有利であり得る。さらに、アルコールオキシダーゼは強く結合したフラビン補因子を含んでいるため、外因性補因子を必ずしもアルコールオキシダーゼと組み合わせて、酵素をアルコール酸化を促進するために活性化する必要はない。
【0046】
原則として、アルコールオキシダーゼのみを、酵素反応で生成されたアセトアルデヒド又は過酸化水素生成物のいずれかをアッセイすることにより、分析物センサでのエタノール検出に使用することができる。しかし、このアプローチには2つの潜在的な問題がある。まず、アセトアルデヒド及び過酸化水素の両方がアルコールオキシダーゼを阻害する。したがって、これらの化合物がセンサ環境から除去されない場合、アルコールオキシダーゼはエタノール酸化を促進するために不活性になり、それによって分析物センサは、エタノールをアッセイするために機能しなくなるか、最適なものではなくなる。さらに、アセトアルデヒドと過酸化水素が隔離されたり、他の薬剤でクエンチされたりすると、電気化学的検出に利用できる種はなくなる。第二に、アルコールオキシダーゼは、酸素分子以外の酸化還元メディエータと電子を自由に交換しない。そのため、本明細書で記述されるオスミウムや他の遷移金属錯体などの、分析物センサの活性領域内のポリマーに関連する電子移動剤は、アルコールオキシダーゼを不活性な還元状態からエタノールと反応性である酸化状態に循環させるのに効果がない可能性がある。したがって、アルコールオキシダーゼは、任意選択でポリマーに共有結合され得るが、そうすることによる電子移動プロセスへの特別な利点はない。すなわち、アルコールオキシダーゼのポリマーへの共有結合は、電子移動剤による電子移動の促進を助けない。
【0047】
作用電極上に直接的に配置された、特に所与の活性領域で一緒の、アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼを含む協調酵素系は、アルコールオキシダーゼを使用する分析物センサを使用するエタノール検出に関連する前述の課題の少なくともいくつかを克服し得る。アセトアルデヒド及び他のアルデヒドは、キサンチンオキシダーゼの基質として機能することができ、アセトアルデヒドは酵素的に酢酸に変換される。したがって、キサンチンオキシダーゼは、センサ環境からアセトアルデヒドを除去することができ、それにより、アルコールオキシダーゼのアセトアルデヒドベースの不活性化を妨げる。過酸化水素を除去するために、カタラーゼが(例えば、カタラーゼ-過酸化水素複合体として)活性領域に存在してもよく、それにより、この種によるアルコールオキシダーゼの不活性化を妨げる。さらに、アルコールオキシダーゼとは異なり、キサンチンオキシダーゼは、分析物センサの活性領域内のポリマーに関連するオスミウム及び他の遷移金属錯体と電子を交換することができる。このように、キサンチンオキシダーゼは、その酸化型と還元型との間を循環することができ、それにより、分析物センサがアクティブな検知状態を維持することを可能にする。したがって、前述の分析物センサでのエタノールの検出は、キサンチンオキシダーゼと、エタノール自体ではなくエタノールの酵素反応生成物であるアセトアルデヒドとの酵素反応に基づいている。さらに、前述の方法で分析物センサ内の酵素を構成することにより、アルコールオキシダーゼは、酸素分子で再酸化を受けてその活性を維持する可能性がある。
【0048】
図5Aは、本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置されたアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応系を示す。キサンチンオキシダーゼは、分析物センサの活性領域でポリマーに共有結合し、アルコールオキシダーゼは、活性領域でポリマーと非共有結合する。キサンチンオキシダーゼに加えて、この酵素と電子を交換することができるオスミウム錯体又は他の遷移金属錯体もまた、ポリマーに共有結合されている。
図5Aに示すように、エタノールは、フラビン補因子(FAD-既にアルコールオキシダーゼと結合している)の存在下で酸化(活性)アルコールオキシダーゼと反応し、それにより、還元アルコールオキシダーゼ、アセトアルデヒド、及び過酸化水素を形成する。還元されたアルコールオキシダーゼは、アルコールオキシダーゼをその触媒的に活性な酸化形態に戻すために、示されるように酸素分子で再酸化され得る。
【0049】
引き続き
図5Aを参照して、エタノールから酵素的に形成されたアセトアルデヒドは、次に、酵素と共に本来存在するフラビン補因子の存在下で、酸化型のキサンチンオキシダーゼとのその後の反応を受ける。この過程で酢酸が生成され、キサンチンオキシダーゼが還元状態に変化する。次に、還元されたキサンチンオキシダーゼは、ポリマーに結合した遷移金属電子移動剤と反応して、電子を作用電極に移動させ、それによって電流を生成し、酸化型のキサンチンオキシダーゼを再生することができる。
図5Aには示されていないが、過酸化水素は、活性領域に存在するカタラーゼによってセンサ環境から別個に除去され得る。
【0050】
図5Aから理解できるように、酵素的に形成されたアセトアルデヒドの量は、元々存在していたエタノールの量に比例する。そのため、アセトアルデヒドのキサンチンオキシダーゼ酸化中に作用電極で生成される電流は、存在するアセトアルデヒドの量、ひいてはエタノールの量に比例し得る。作用電極電流とエタノール濃度との相関は、既知のエタノール濃度での電流のルックアップテーブルを参照することにより、又は検量線を利用することにより行われ得る。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応に基づくエタノール応答性活性領域(例えば、本明細書に記載のグルコース及びエタノールのデュアル分析物センサで使用するため)を提供する。より具体的には、本開示は、少なくとも作用電極、及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つのエタノール応答性活性領域を含むセンサテールを含む分析物センサを提供し、ここで、少なくとも1つの活性領域は、アルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ポリマー、及び電子移動剤を含む。特定の実施形態によれば、電子移動剤及びキサンチンオキシダーゼは、ポリマーに共有結合され得るが、アルコールオキシダーゼは、ポリマーに共有結合されない。アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して作用し、アルコール濃度に比例するシグナルを作用電極で生成することができる。より具体的には、アルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼは両方とも、前述のことを達成するために作用電極上に直接配置される。
【0052】
分析物センサの単一の活性領域内に位置する協調酵素反応系の複数の酵素は、互いに協調して相互作用して分析物濃度を決定することができるが、別個の活性領域を用いてそのような協調酵素反応系の構成要素(例えば、反応物及び/又は生成物)を分離することで、分析物検出を容易に改善及び/又は安定化できる場合がある。いくつかの実施形態では、分析物センサ構成は、別々の活性領域に広げられた複数の酵素を含み得、活性領域の1つは、作用電極への電子移動が活性領域の1つのみから起こるように、作用電極から分離され得る。例えば、作用電極から分離された活性領域は、目的の分析物の酵素反応を促進して、作用電極と直接接触する活性領域内の酵素とそれ自体が反応する反応生成物(基質)を生成し得る。次に、作用電極と直接接触している活性領域で起こる酵素反応に関連するシグナルが、分析物を検出するための基礎を提供する。このシグナルと分析物濃度との相関は、本明細書で述べる様々な方法の任意のいずれでも達成することができる。
【0053】
より具体的には、
図5Bは、本開示の様々な実施形態によるグルコースオキシダーゼ(GOX)及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応系を示し、キサンチンオキシダーゼのみ、又はキサンチンオキシダーゼ及びカタラーゼが作用電極の表面に配置されている場合、カタラーゼによってさらに媒介される。カタラーゼは、この酵素のペアの安定剤としても機能し得る。すなわち、エタノールを検出するための協調酵素反応系の構成要素は、協調酵素反応系の構成要素の混ざり合いに関連する特定の問題を克服するために、別個の活性領域ポリマーに配置され得る。例えば、グルコースオキシダーゼは、作用電極と直接接触する活性領域に位置する電子移動剤(例えば、オスミウム又は他の遷移金属)との反応などによって、グルコースオキシダーゼが反応して電流を生成するのを防ぐために、作用電極から分離されなければならない。グルコースオキシダーゼが作用電極から分離されていない場合、グルコース酸化がシグナルの寄与を提供するため、不正確又はその他の異常なエタノール測定が生じる可能性がある。したがって、エタノールの検出を容易にするため、ならびに上記のようにアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する問題を克服するために、本開示は、2つの活性領域、及び、2つの活性領域が分離されている二層膜構成を含むエタノールセンサを提供する。
【0054】
図5Bに示される協調酵素反応系は、分析中に流体中に互いに共存するグルコース及びエタノールに依存している。グルコースは遍在する生物学的栄養素であるため、生物学的流体を分析する際に、エタノールを含む他の分析物と共存することがよくある。
【0055】
図5Bを引き続き参照すると、グルコースオキシダーゼは活性領域(例えば、
図7の活性領域702a又は702b)に存在し、外因性グルコースをD-グルコノラクトン-1,5-ジオンと過酸化水素に変換する。アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシドとの間の協調酵素反応に基づく検出を特徴とするエタノール応答性活性領域(
図5A)とは異なり、カタラーゼは、
図5Bに示される協調酵素反応系においてより積極的な役割を果たす。すなわち、カタラーゼは過酸化水素と反応して、隔離された活性領域でカタラーゼ-過酸化水素複合体(アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応においてカタラーゼによって示されるのと同じ過酸化物除去機能)を形成し、その後、複合体はエタノールと反応して同じ隔離された活性領域においてアセトアルデヒドを形成する。エタノールをカタラーゼ-過酸化水素複合体と反応させたときに1つの活性領域で形成されたアセトアルデヒドは、膜を通って第2の活性領域に浸透し、この膜は活性領域(例えば、
図7の活性領域702a及び702b)を分離する。膜は、例えばアセトアルデヒドを透過させる架橋ポリビニルピリジンを含み得る。次に、アセトアルデヒドは、第2の活性領域(例えば、
図7の活性領域702a又は702b)においてキサンチンオキシダーゼと反応して、
図5Aについて上記で説明したのと同様の方法で酢酸を形成する。固定化又は化学結合された電子移動剤(例えば、オスミウム錯体又は他の遷移金属錯体)は、好ましくは、電子を交換するためにキサンチンオキシダーゼと共に活性領域内に存在して酢酸形成を促進してもよく、これはエタノールレベルと相関する。カタラーゼはまた、安定剤として作用するために、いずれかの活性領域内に任意に存在し得る。さらに、
図5Bに示される膜に加えて、第2の膜は、二層膜構造を形成する2つの活性領域を覆うことができ、第2の膜は、グルコース及びエタノールの両方を透過させる。
【0056】
あるいは、カタラーゼはキサンチンオキシダーゼを含む活性領域に存在してもよく、その場合、グルコースオキシダーゼを含む活性領域で形成された過酸化水素は、膜を通ってキサンチンオキシダーゼ(及びカタラーゼ)を含む活性領域に拡散し、カタラーゼ-過酸化水素複合体を形成し、そこでエタノールをアセトアルデヒドに酸化することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、及び説明の目的で、「エタノール応答性活性領域」という用語は、特に明記しない限り、本明細書で説明されるように、エタノールを検出するために協調して使用されるすべての別個の活性領域を包含する。例えば、「エタノール応答性活性領域」という用語は、
図5Bを参照して説明されたものなどの第1及び第2の活性領域の両方を含む。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の分析物センサの少なくとも1つのエタノール応答性活性領域内のカタラーゼは、ポリマーに共有結合していない。カタラーゼは、活性領域ポリマーの約1重量%~約50重量%、より具体的には、活性領域ポリマーの約1重量%~約10重量%、又は活性領域ポリマーの約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0059】
本明細書に開示される分析物センサのグルコース応答性活性領域は、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼなどのグルコース応答性酵素、及びポリマーを含み得る。様々な実施形態によれば、グルコースオキシダーゼは、グルコース応答性活性領域のポリマーに共有結合され得る。活性領域に含めるのに適したポリマーを以下に説明する。さらに、固定化又は化学結合された電子移動剤(例えば、オスミウム錯体又は他の遷移金属錯体)は、好ましくは、グルコース応答性活性領域に存在し、グルコース応答性酵素と電子を交換して、グルコースレベル決定するためのグルコノラクトンの形成を促進し得る。
【0060】
グルコース応答性酵素は、グルコース応答性活性領域のポリマーの約1重量%~約50重量%の範囲の量で存在し得、ここには、グルコース応答性活性領域のポリマーの重量の約5%~約45%、又は約10%~約40%、又は約15%~約35%、又は約20%~約30%などの、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。任意選択の電子移動剤は、グルコース応答性活性領域のポリマーの重量の約10%~約50%の範囲の量で存在し得、ここには、グルコース応答性活性領域のポリマーの重量の約15%~約45%、又は約20%~約40%、又は約25%~約35%などの、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。これらの範囲は、限定されることなく、本明細書に記載のグルコース応答性活性領域に関係するすべての実施形態に等しく適用可能である。
【0061】
上記のように、1つ以上のグルコース応答性活性領域及び1つ以上のエタノール応答性活性領域を含む分析物センサは、単一の作用電極又は2つ以上の別個の作用電極上に配置され得る。さらに、選択された協調酵素反応系が、上記のように、二層膜の使用による様々な構成要素の分離を必要とする場合(
図5Bを参照)には特に、様々な膜構成が可能である。
【0062】
図6A及び6Bは、別個の作用電極上の活性領域と、本明細書に記載の1つ以上のグルコース及びエタノールのデュアルセンサに適した膜構成とを含む、
図4の例示的なセンサ構成(及び同様の符号が使用される)の斜視図を示す。
図7は、単一の作用電極上の活性領域と、本明細書に記載の1つ以上のグルコース及びエタノールのデュアルセンサに適した膜構成とを含む例示的なセンサ構成の断面図を示す。
【0063】
最初に
図6Aを参照すると、センサ401は、作用電極410、活性領域414a、及び誘電体層412を含み、これらはそれぞれ、二層膜450で覆われている。センサ401はさらに、作用電極420、活性領域414b、活性領域414c、及びセンサテールの残りの部分(すなわち、カウンター電極430、参照電極440、及び誘電体層422、432、及び442)を含み、それぞれ単層膜451で覆われている。二層膜450は、膜層446で覆われた膜層444を含み、単層膜451は、膜層446を含む。二層膜450及び単層膜層451は、本明細書でより詳細に述べているように、同じ又は異なる組成物であり得、少なくとも1つの作用電極、及び、対象の分析物を検出するために必要な活性領域の関連する数に関して二層又は単層である。
【0064】
図6Aのセンサ構成は、本明細書に記載されるように、グルコース応答性である活性領域414b、及び集合的にエタノール応答性である第1及び第2の活性領域414a及び414cを特徴とし得る。グルコース応答性活性領域414bは、少なくともグルコース応答性酵素、ポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含み得る。典型的には、グルコース応答領域は、電子移動剤を含む。
【0065】
第1の活性領域414aは、作用電極410の表面に配置され得、少なくともキサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含み得る。第2の活性領域414cは、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含み得る。
【0066】
図6A及び6Bには、第1の活性領域414aが
図5Bのキサンチンオキシダーゼ化学を含み、第2の活性領域414bが
図5Bのグルコースオキシダーゼ化学を含むことが記載されているが、上記のように、その逆も使用され得ることが理解されるべきである。すなわち、膜(及びカタラーゼの包含)に対する2つの活性領域の特定の位置は非限定的であり、
図6A及び6Bは2つの構成の単なる例示である。
【0067】
キサンチンオキシダーゼは、第1の活性領域414aの第1のポリマーの重量の約1%~約50%の範囲の量で存在し得、これには、第1の活性領域414aの第1のポリマーの重量の約5%~約45%、又は約10%~約40%、又は約15%~約35%、又は約20%~約30%などの、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。任意選択の電子移動剤は、第1の活性領域414aの第1のポリマーの重量の約10%~約50%の範囲の量で存在し得、ここには、第1の活性領域414aの第1のポリマーの重量の約15%~約45%、又は約20%~約40%、又は約25%~約35%などの、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。グルコースオキシダーゼは、第2の活性領域414cの第2のポリマーの重量の約1%~約50%の範囲の量で存在し得、ここには、第2の活性領域414cの第2のポリマーの重量の約5%~約45%、又は約10%~約40%、又は約15%~約35%、又は約20%~約30%などの、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。カタラーゼは、上記の量で第2の活性領域414cに存在し得る。これらの範囲は、
図6Aを参照して説明されているが、それらは、限定されることなく、本明細書に記載される第1及び第2のエタノール応答性活性領域(エタノール応答性活性領域の第1及び第2の部分)に関するすべての実施形態に等しく適用可能であることが理解されるべきである。
【0068】
典型的には、第1の活性領域414aは、電子移動剤を含み、任意選択でカタラーゼも含み得る(例えば、本明細書に開示される範囲内の量で)。第1及び第2のポリマーは、同じ又は異なる組成物であってよく、本明細書でより詳細に説明されている。第2の活性領域414cは、膜444の表面に配置され、膜446に結合され(例えば、共有結合などで化学結合され)、又は他の態様で膜446内に固定化され得る(例えば、膜446のマトリックス内に非結合)。好ましい実施形態では、第2の活性領域414cは、膜444の表面に堆積される(例えば、共有結合などで化学結合される)か、又は、第2の活性領域414cが、エタノール検出を容易にするために、第1の活性領域414aに比較的近接しているのであれば、第2の活性領域414cは、膜444の外側に配置され、膜446内で可動化される。活性領域414a、414b、及び414cのそれぞれの数、サイズ、及び形状は、本開示の図のいずれかに示される数に限定されず、対象となる特定の分析物を検出するために機能する限り、様々なサイズ及び形状の単一の活性領域又は複数の活性領域であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤は、第1の活性領域414aの第1のポリマーに共有結合され、グルコースオキシダーゼは、第2の活性領域414cの第2のポリマーに共有結合される。
【0069】
引き続き
図6Aを参照すると、二層膜450及び単層膜451は、センサテールのすべての構成要素をまとめて覆っているが、本開示の範囲から逸脱することなく、他の膜構成を使用できることを理解されたい。例えば、二層膜は、作用電極410、活性領域414a、及び活性領域414cのみを覆い、別個の単層膜は、作用電極420及び活性領域414bのみを覆うことができる。本明細書に記載の分析物センサの残りの構成要素(例えば、カウンター電極、参照電極、誘電体層)の膜コーティングは任意であるが、分析物センサの製造を容易にし又は簡素化する(例えば、センサテール上に膜をディップコーティングするのを簡素化する)ために覆われてもよい。さらに、様々な作用電極、カウンター電極、及び参照電極の位置は、
図6Aに示されるものに限定されないことをさらに理解されたい。同様に、そのような電極の数は、
図6Aに示されるものに限定されない(例えば、別個のカウンター電極及び参照電極ではなく、単一のカウンター/参照電極を利用することができる)。
【0070】
図6Bは、
図6Aと比較した代表的な代替センサ構成を示し、センサ402は、センサ先端404のより近位に配置されたカウンター電極430及び参照電極440と、センサ先端404からより遠位に配置された作用電極410及び420とを含む。作用電極410及び420がセンサ先端404からより遠位に配置されるセンサ構成は、活性領域414a及び414b(
図5Bに例示的に示される5つの別個の検知スポットであるが、より多い数及び少ない数も含まれ得る)の堆積のためにより大きい表面積を提供することによって有利となり得る。それにより、場合によってはシグナル強度の増加が容易になる。膜450によって画定される二層膜及び膜451によって画定される単層膜の位置は、作用電極410及び420の位置の変化、ならびにエタノールを検出するための活性領域414aと共に協調酵素反応系を形成する第2の活性領域414cの位置に対応するように同様に調整されている。
【0071】
図5A及び5Bは、それぞれが中央基板402上に支持されるセンサ構成を示しているが、代替のセンサ構成は代わりに電極に支持され、中央基板402を欠くものであり得ることが理解されるべきである。代表的な実施形態では、最も内側の同心電極を利用して、他の電極及び誘電体層を支持することができる。例えば、センサ402は、基板402を除外することができ、最も内側の同心カウンター電極430が、参照電極440、作用電極410及び420、ならびに誘電体層432、442、412、及び422をその上に順次配置するために使用され得る。本明細書の開示を考慮して、他の電極及び誘電体層構成が、中央基板402を欠くセンサ構成で使用され得、そして異なる位置構成で使用され得ることが再び理解されるべきである。
【0072】
ここで
図7を参照すると、単一の作用電極上の活性領域と、本明細書に記載の1つ以上のグルコース及びエタノールのデュアルセンサに適した膜構成とを含む例示的なセンサ構成の一部の断面図が示されている。示されるように、作用電極700は、グルコース応答性活性領域706及びその上に配置された第1のエタノール応答性活性領域702aを含む。グルコース応答性活性領域706は、グルコース応答性酵素及び第1のポリマーを含み得、グルコース応答性酵素は、第1のポリマーに化学的に(例えば、共有結合で)結合され得る。典型的には、電子移動剤も活性領域706に存在し、これはまた、第1のポリマーに化学的に(例えば、共有結合で)結合され得る。
【0073】
引き続き
図7を参照すると、作用電極700上に配置された第1のエタノール応答性活性領域702aは、キサンチンオキシダーゼ及び第2のポリマーを含み得、キサンチンオキシダーゼは、第2のポリマーに化学的に(例えば、共有結合で)結合され得る。典型的には、電子移動剤も活性領域702aに存在し、これも第2のポリマーに化学的に(例えば、共有結合で)結合され得る。上記のように、第1の膜704は、第2のエタノール応答性活性領域702bから702aを分離してそれらの間の電子交換を排除するために、活性領域702aを覆う。図示のように、第1の膜704はまた、図示のように作用電極700の表面、ならびに作用電極700が存在する分析物センサの他の部分を覆うことができる。あるいは、膜704は活性領域702aのみを覆ってもよい。第1の膜704は、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性であり得る。
【0074】
第2の活性領域702bは、膜704上に配置され(ただし、いくつかの実施形態では、膜708に結合されるか、膜708内で可動化されるか、さもなければ膜708内に固定化され得る)、それに化学的に(例えば、共有結合で)結合され得る。第2の活性領域702bは、上記のように、活性領域702aと協調して作用して、生体内エタノールレベルを検出し、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第3のポリマーを含み得る。グルコースオキシダーゼは、第3のポリマーに化学的に(例えば、共有結合で)結合することができ、カタラーゼは、第3のポリマーに化学的に結合するか、又は結合しないことができる。第1の膜704は、特に第3のポリマーに化学的に結合した場合、グルコースオキシダーゼを作用電極700と接触することからさらに隔離し、それにより、活性領域702a内に位置する電子移動剤との相互作用などによって電流を生成するのを防ぐ。
【0075】
示されるように、グルコース応答性活性領域706及び第2のエタノール応答性活性領域702bは、まとめて第2の膜708で覆われている。したがって、膜704及び708を含む二層膜は、第1のエタノール応答性活性領域702aを覆い、膜708を含む単層膜は、グルコース応答性活性領域706及び第2のエタノール応答性活性領域702bの両方を覆う。膜708は、示されるように、作用電極700の表面、ならびに作用電極700が存在する分析物センサの他の部分をさらに覆うことができる。あるいは、膜708は、活性領域706及び702bのみを覆うことができる。第2の膜708は、少なくともグルコース及びエタノールの両方に対して透過性である。さらに代替的に、膜708は、一続きではない(すなわち、分断されている)ものとしてもよいが、本開示の範囲から逸脱することなく、活性領域706及び702bを別々に覆うことができる。
【0076】
活性領域706、702a、702bの第1、第2、及び第3のポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。同様に、第1及び第2の膜704、708は、同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
図8は、2つの作用電極を有し、2つの作用電極のうちの1つを覆う二層膜を特徴とする分析物センサの一部の追加の例示的な概略図を示し、これは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態による分析物センサの形成に使用するのに適合している。
図8に示すように、分析物センサは、基板812の対向する両面に配置された作用電極814a及び814bを有するセンサテール800を特徴とする。グルコース応答性活性領域816は、作用電極814aの面上に配置され、第1のエタノール応答性活性領域(全エタノール応答性活性領域の第1の部分)818aは、作用電極814bの面上に配置される。グルコース応答性活性領域816は、
図7のグルコース応答性領域706に対応する。第1のエタノール応答性活性領域818aは、
図7の第1のエタノール活性領域702aに対応する。
図8は、基板812に対して互いにほぼ対向する両側に配置された活性領域816及び818aを示しているが、活性領域816及び818aは、本開示の範囲から逸脱することなく、基板812の対向面上で互いに横方向に離隔され(ずらされ)得ることを理解されたい。活性領域818及び818aの横方向に離隔された構成は、以下で論じるように、各活性物質を物質移動制限膜で覆うのに特に有利であり得る。
【0078】
図8にさらに示されるように、活性領域816は単層膜820で覆われている。膜820は、単一の膜ポリマーを含む均質な膜である。活性領域818aは二層膜821で覆われており、この二層膜821は活性領域818aと直接接触する膜層821a及び膜層821aを覆う膜層821bを含む。この実施形態では、膜層821a及び821bは、異なる膜ポリマーを含む。ある特定の実施形態では、膜層820及び膜層821bは、同じ膜ポリマーを含み得る。膜層821a上に配置された第2のエタノール応答性活性領域(全エタノール応答性活性領域の第2の部分)818bは、膜821a上に配置されている。第2のエタノール応答性活性領域818bは、
図7の第1のエタノール活性領域702bに対応する。第1及び第2のエタノール応答性活性領域818a、818bは、本明細書に記載されるように、エタノールを検出するために協調して作用する。
【0079】
図示された分析物センサ構成において、膜820はグルコースに対して透過性を示し、一方、膜821aはアセトアルデヒドに対して透過性を示す。第2のエタノール応答性活性領域818b及びグルコース応答性活性領域816は両方ともグルコースに依存するので、膜821b及び820は同じポリマーを構成し得る。さらに、活性領域818aは、活性領域816に接触することなく膜818aでディップコーティングされ得るように、センサテールの先端に対してより遠位に配置され得る。その後、活性領域818bが堆積され得、膜821aの外側部分、活性領域818b、及び活性領域816のすべてが、堆積膜820のためにディップコーティングされ得る。そのような構成は、分析物センサの製造を容易にし得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、そして以下により詳細に記載されるように、膜821aは、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み、膜821b、820は、ポリビニルピリジン-co-スチレンを含む。
【0081】
本開示の様々な実施形態によれば、電子移動剤は、本明細書に記載の分析物センサのグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域に存在し得る。別々の活性領域がエタノール検出に利用される場合、電子移動剤は、作用電極上に配置された活性領域に存在し得る(そしてさらにキサンチンオキシダーゼ及びポリマーを含む)。適切な電子移動剤は、分析物のいずれか(グルコース又はエタノール)、又はその生成物(アセトアルデヒド)が酸化還元反応を受けた後、隣接する作用電極への電子の輸送を促進し、それによってその特定の分析物の存在を示す電流を生成し得る。生成される電流の量は、存在する分析物の量に比例する。使用するセンサ構成に応じて、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の電子移動剤は同じでも異なっていてもよい。電子移動剤は、例えば、各電子移動剤が異なる酸化還元電位を示すように、異なっていてもよい。
【0082】
適切な電子移動剤には、標準的なカロメル電極(SCE)の酸化還元電位よりも数百ミリボルト上又は下の酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、錯体又は分子(例えば、キノン)が含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、適切な電子移動剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,134,461号及び第6,605,200号に記載されているものなどの低電位オスミウム錯体が含まれ得る。追加の例には、米国特許第6,736,957号、第7,501,053号及び第7,754,093号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な電子移動剤は、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)又はコバルトの金属化合物又は錯体(例えば、そのメタロセン化合物を含む)を含み得る。金属錯体に適した配位子には、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)などの二座又はより高い座数の配位子も含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルコース応答性及びエタノール応答性の活性領域で使用するために選択された電子移動剤は、オスミウム錯体である。
【0083】
グルコース及びエタノールを検出するのに適した活性領域はまた、電子移動剤が共有結合され得るポリマーを含み得る。本明細書に開示される電子移動剤のいずれも、活性領域内のポリマーへの共有結合を促進するための適切な機能性を含み得る。電子移動剤及びポリマー結合電子移動剤の適切な例には、米国特許第8,444,834号、第8,268,143号及び第6,605,201号に記載されているものが含まれ得、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。活性領域に含めるのに適したポリマーには、限定するものではないが、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はそれらの任意のコポリマーが含まれ得る。活性領域に含めるのに適し得る例示的なコポリマーには、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルなどのモノマー単位を含むものが含まれる。各領域内のポリマーは同じであっても異なっていてもよい。
【0084】
各活性領域における電子移動剤とポリマーとの間の共有結合の方法は、特に制限があるとは考えられない。共有結合は、共有結合した電子移動剤を有するモノマー単位を重合することによって起こり得るか、又はポリマーが既に合成された後なら、電子移動剤をポリマーと別々に反応させることができる。いくつかの実施形態によれば、二官能性スペーサーは、活性領域内のポリマーに電子移動剤を共有結合し得、ここで、第1の官能基はポリマーと反応性であり(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化することができる官能基)、第2の官能基は電子移動剤と反応性である(例えば、金属イオンを配位する配位子と反応する官能基)。
【0085】
同様に、本開示のいくつかの又は他の様々な実施形態によれば、1つ以上の活性領域内の酵素は、ポリマーに共有結合され得る。複数の酵素が単一の活性領域に存在する場合、いくつかの実施形態では、複数の酵素のすべてがポリマーに共有結合し得、他の実施形態では、複数の酵素の一部のみがポリマーに共有結合し得る。例えば、協調酵素反応系を含む1つ以上の酵素はポリマーに共有結合し得、少なくとも1つの酵素は、非共有結合酵素がポリマー内に物理的に同伴されるように、ポリマーと非共有結合し得る(例えば、いくつかの実施形態では、グルコースオキシダーゼは共有結合しており、カタラーゼはエタノール応答性活性領域で非共有結合している)。特定の実施形態によれば、活性領域のポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤と共に導入された架橋剤を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中の遊離側鎖アミンとの)反応のための適切な架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はそれらの誘導体化変異体などの架橋剤を含み得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。ポリマーへの酵素の架橋は一般に分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。そのような架橋剤は、本明細書に記載の膜ポリマーを架橋するためにさらに使用することができる。
【0086】
電子移動剤及び/又は酵素は、共有結合以外の手段によっても、活性領域内のポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、イオン的に又は配位的にポリマーと結合し得る。例えば、帯電したポリマーは、反対に帯電した電子移動剤又は酵素とイオン結合し得る。さらに他の実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合することなく、ポリマー内に物理的に同伴又は固定化され得る。
【0087】
本開示の特定の実施形態では、各活性領域を覆う物質移動制限膜は、少なくとも架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。物質移動制限膜の組成は、物質移動制限膜が各活性領域を覆う場合、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、グルコース応答性活性領域を覆う物質移動制限膜は、単層膜であり得る(そして単一の膜ポリマーを含む)。特定の実施形態では、本明細書に記載されるように、エタノール応答性活性領域の第1の部分を覆う物質移動制限膜は二重層(各層は同じ又は異なる膜ポリマーを含む)であり得、エタノール応答性活性領域の第2の部分を覆う物質移動制限膜は単層膜であり得る。本開示のより具体的な実施形態では、グルコース応答性活性領域は、ポリビニルピリジン-co-スチレンコポリマーを含む膜で覆われ得、エタノール応答性活性領域は、ポリビニルピリジン及びポリビニルピリジン-co-スチレンを含む二層膜で覆われ得る。ここで、ポリビニルピリジン膜は、作用電極上に配置されたエタノール応答性活性領域を覆う(例えば、
図7の膜704)。ポリビニルピリジン膜ポリマー及びポリビニルピリジン-co-スチレン膜ポリマーの一方又は両方は架橋されてもよい。さらに、ポリビニルピリジン-co-スチレン膜ポリマーは、官能化され得、ここで、ピリジン窒素原子の一部は、非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部は、アルキルスルホン酸基で官能化される。場合によっては、物質移動制限膜は、電極(例えば、作用電極)の表面への分析物のフラックスを約10~約1000の係数で減少させることができ、ここにはそれらの間の任意の値及びサブセットが包含される。
【0088】
前述に照らして、スタンドアロン型エタノールセンサの様々な実施形態が本明細書に開示されている。さらに、グルコース応答性及びエタノール応答性のデュアルセンサが本明細書に開示されている。このようなグルコース応答性及びエタノール応答性のデュアルセンサにより、各分析物を同時に、しかし別々に検出できる。すなわち、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域は、それらが各分析物の検出を容易にするために別々に問い合わせをされ得るように、単一の分析物センサ内に配置される。すなわち、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域はそれぞれ、分析物レベル(濃度)を表す独立したシグナルを生成する。例えば、いくつかの実施形態では、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域のそれぞれにおいて発生する酵素反応に関連するシグナルは、各活性領域及び/又は作用電極を同時に又は異なる時間に応答させることによって別々に測定され得る。次に、各活性領域に関連するシグナルを、それぞれグルコース及びエタノールのそれぞれの濃度に相関させることができる。
【0089】
グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域が単一の作用電極上に配置されるいくつかの実施形態において、グルコース応答性活性領域に関連する酸化還元電位は、エタノール応答性活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけ離され得る。酸化還元電位間の離隔の上限は、作業電気化学ウィンドウによって生体内で決定される。2つの活性領域の酸化還元電位の大きさを互いに十分に離すことにより、電気化学反応は、他方の活性領域内で電気化学反応を実質的に誘発することなく、2つの活性領域のうちの1つ(すなわち、グルコース応答性活性領域又はエタノール応答性活性領域)内で起こり得る。したがって、グルコース応答性活性領域又はエタノール応答性活性領域の1つからのシグナルは、その対応する酸化還元電位(より低い酸化還元電位)以上であるが、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域のうちの他方の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)より下で、独立して生成され得る。対照的に、以前に問い合わせをされなかった他方の活性領域の酸化還元電位(より高い酸化還元電位)以上では、電気化学反応は、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の両方で起こり得る。したがって、より高い酸化還元電位以上で得られるシグナルは、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の両方からのシグナル寄与を含み得、観察されるシグナルは複合シグナルである。次に、1つの活性領域(グルコース応答性活性領域又はエタノール応答性活性領域のいずれか)からのその酸化還元電位以上のシグナル寄与は、グルコース応答性活性領域又はエタノール応答性活性領域のみから得られたその酸化還元電位以上のシグナルを、複合シグナルから差し引くことによって決定することができる。
【0090】
より具体的な実施形態では、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域は、活性領域が同じ作用電極上に位置する場合、酸化還元電位の大きさを互いに十分に離すために、異なる電子移動剤を含み得る。より具体的には、グルコース応答性活性領域は、第1の電子移動剤を含み得、エタノール応答性活性領域は、第2の電子移動剤を含み得、第1の電子移動剤と第2の電子移動剤とは異なる。本開示の様々な実施形態によれば、所与の電子移動剤中に存在する金属中心及び/又は配位子を変化させて、2つの活性領域の酸化還元電位を十分に離すことができる。
【0091】
理想的には、単一の作用電極上に配置されたグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域は、所与の電位で分析物センサを動作させると迅速に定常状態電流を達成するように構成され得る。定常状態電流の迅速な達成は、各活性領域について、その酸化還元電位以上の電位にさらされるとその酸化状態を迅速に変化させる電子移動剤を選択することによって促進され得る。活性領域を可能な限り薄くすることもまた、定常状態電流の迅速な達成を容易にし得る。例えば、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域に適した厚さは、約0.1マイクロメートル(μm)~約10μmの範囲であり得、ここには、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。いくつかの又は他の実施形態では、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は金属ナノ粒子などの導電性材料を1つ以上の活性領域内で組み合わせると、定常状態電流の迅速な達成を促進することができる。導電性粒子の適切な量は、活性領域の約0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約50重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得、ここには、それらの間の任意の値及びサブセットが包含される。応答の安定性を促進するために、上記のように、カタラーゼなどの安定剤を使用することもできる。
【0092】
各分析物に対する分析物センサの感度(出力電流)は、活性領域の被覆率(面積又はサイズ)、活性領域の互いに対する面積比、活性領域を覆う物質移動制限膜の性質、厚さ、及び/又は組成を変化させることによって変更できることも理解されたい。これらのパラメータの変更は、本明細書の開示の利益を与えられた当業者によって容易に実施することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、各活性領域に関連するシグナルは、各分析物のルックアップテーブル又は検量線を参照することによって、対応するグルコース又はエタノールの濃度に相関させることができる。各分析物のルックアップテーブルは、既知の分析物濃度を有する複数のサンプルを分析し、各分析物の各濃度でのセンサ応答を記録することによって作成することができる。同様に、各分析物の検量線は、濃度の関数として各分析物に対する分析物センサ応答をプロットすることによって決定することができ、較正範囲にわたって適切な較正関数を決定することができる(例えば回帰、特に線形回帰によって)。
【0094】
プロセッサは、ルックアップテーブル内のどのセンサ応答値が未知の分析物濃度を有するサンプルについて測定されたものに最も近いかを決定し、それに応じて分析物濃度を報告することができる。いくつかの又は他の実施形態では、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値がルックアップテーブルに記録された値の間にある場合、プロセッサは2つのルックアップテーブル値の間を内挿して分析物濃度を推定することができる。内挿は、ルックアップテーブルで報告された2つの値の間の線形濃度変動を前提とし得る。内挿は、センサの応答がルックアップテーブルの所与の値と十分に異なる場合(約10%以上の変動など)に使用できる。
【0095】
同様に、いくつかの又は他の様々な実施形態によれば、プロセッサは、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値を、対応する較正関数に入力することができる。次に、プロセッサはそれに応じて分析物濃度を報告することができる。
【0096】
したがって、本開示は、センサテール及び少なくとも1つの作用電極を含む分析物センサを提供する。グルコース応答性活性領域は、作用電極の表面に配置され、エタノール応答性活性領域の第1の部分は、作用電極の表面に配置され、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第1の部分は離隔されている(例えば、横方向に又は作用電極の対向する両側に)。グルコース応答性活性領域は、グルコース応答性酵素及び任意選択の電子移動剤を含む。グルコース応答性活性領域は、さらにポリマーを含む。エタノール応答性活性領域の第1の部分は、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含む。エタノール応答性活性領域の第1の部分は、カタラーゼなどの安定剤をさらに含み得る。第1の膜は、エタノール応答性活性領域の第1の部分(及び任意選択でそれに隣接する作用電極の表面)上にのみ配置され、第1の膜は、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドを透過させる。エタノール応答性活性領域の第2の部分は、第1の膜上に配置され、エタノール応答性活性領域の第2の部分は、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含む。第2の膜は、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置され、第2の膜は、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールを透過させる。グルコース応答性活性領域に存在するグルコースオキシダーゼは、作用電極でグルコース濃度に比例するシグナルを生成することができ、エタノール応答性活性領域の第1及び第2の部分のキサンチンオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼは、協調して相互作用して、作用電極でエタノール濃度に比例するシグナルを生成することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の膜は、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つであり得る。第1及び第2の膜ポリマーは、ポリビニルピリジンを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の膜はポリビニルピリジンであり、第2の膜ポリマーはポリビニルピリジン-co-スチレンである。いくつかの実施形態では、第1の膜ポリマーは、アセトアルデヒドを容易に透過させる架橋ポリビニルピリジンであり、第2の膜ポリマーは、グルコースとエタノールの両方を容易に透過させる架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーであって、ピリジン窒素原子の一部が非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部がアルキルスルホン酸基で官能化された架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーである。
【0098】
いくつかの実施形態において、グルコース応答性活性領域、及び、エタノール応答性反応性領域の第1の部分の一方又は両方は、電子移動剤を含む。いくつかの実施形態では、含まれる電子移動剤は、オスミウム錯体などの遷移金属錯体である。
【0099】
活性領域の様々な構成要素は、その中でさらに共有結合され得る。例えば、いくつかの実施形態において、グルコースオキシダーゼは、グルコース応答性活性領域のポリマーに共有結合しており、キサンチンオキシダーゼ及び任意選択の電子移動剤は、エタノール応答性活性領域の第1の部分の第1のポリマーに共有結合しており、グルコースオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第2の部分の第2のポリマーに共有結合している。エタノール応答性活性領域の第1又は第2の部分のカタラーゼは、共有結合されているか又は非結合であり得る。いくつかの実施形態において、カタラーゼは、エタノール応答性活性領域の第1又は第2の部分に結合せず、代わりに、第1のポリマー、第2のポリマー、第1の膜、及び/又は第2の膜のいずれかによって、第1又は第2の部分内に又はそこに隣接して物理的に拘束される。
【0100】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、2つの作用電極を含み得、ここで、グルコース応答性活性領域は、第1の作用電極上にあり、エタノール応答性領域の第1及び第2の部分は、第2の作用電極上にあるか、あるいは、上述した組成物及び膜構成を有する。
【0101】
分析物センサのセンサテールは、分析が生体内で実施され得るように、皮膚、皮下、又は静脈内などの組織への挿入のために構成されている。したがって、本開示は、上記の分析物センサ(1つ以上の作用電極を含むもの)を使用してグルコース及びエタノールを検知する方法を提供する。特に、分析物センサは、グルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を含む体液に曝露される。すなわち、分析物センサを含むオンボディユニットを装着しているユーザの装着期間中(例えば、1日以上、例えば、最大約1ヵ月まで)、体液は、グルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を含むと予想される。第1のシグナル及び第2のシグナルは、それぞれ、分析物センサのグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域(その第1及び第2の部分を含む)から(例えば、電気化学的検出によって)検出される。第1のシグナルはグルコースの濃度に比例し、第2のシグナルはエタノールの濃度に比例する。
【0102】
いくつかの実施形態では、上記の分析物センサからのグルコース及びエタノールの検出は、特に分析物センサが単一の作用電極を含む場合、グルコース応答性活性領域とエタノール応答性活性領域との間の酸化還元電位の変化に基づくが、これは複数の作用電極を含む分析物センサにも適用できる。分析物センサは、グルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を含む体液に曝露される。グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域(その第1及び第2の部分を含む)のそれぞれは、グルコース応答性活性領域からの第1のシグナル及びエタノール応答性活性領域からの第2のシグナルの独立した検出を可能にするのに十分に離れた酸化還元電位を有する。いくつかの実施形態では、第1のシグナルは体液中のグルコース又はエタノールのいずれかの濃度に比例するように、第1のシグナルは、酸化還元電位及び第2の酸化還元電位のうちの低い方以上であるが、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位のうちの高い方よりも下で検出される。第2のシグナルは、第1の酸化還元電位及び第2の酸化還元電位のうちの高い方以上で検出され、その結果、第2のシグナルは、グルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の両方からのシグナル寄与を含む複合シグナルである。その後、第1のシグナルが第2のシグナルから差し引かれて差分シグナルが得られ、差分シグナルは、グルコース及びエタノールのうちの一方の濃度に比例する。
【0103】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
実施形態A:分析物センサであって:少なくとも作用電極を含むセンサテール;作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及びグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含む、分析物センサ。
【0104】
実施形態B:分析物センサであって:少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;第2の作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及びグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含む分析物センサ。
【0105】
実施形態C:方法であって:分析物センサを、グルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を含む体液に曝露すること;分析物センサは:少なくとも作用電極を含むセンサテール;作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及びグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含むこと;及びグルコースの濃度に比例する第1のシグナルとエタノールの濃度に比例する第2のシグナルとを検出することを含む方法。
【0106】
実施形態D:方法であって:分析物センサを、グルコース及びエタノールのうちの少なくとも一方を含む体液に曝露すること;分析物センサは:少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;第2の作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及びグルコース応答性活性領域及びエタノール応答性活性領域の第2の部分上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコース及びエタノールに対して透過性である第2の膜を含むこと;及びグルコースの濃度に比例する第1のシグナルとエタノールの濃度に比例する第2のシグナルとを検出することを含む方法。
【0107】
実施形態E:分析物センサであって:少なくとも作用電極を含むセンサテール;作用電極の表面に配置されたグルコース応答性活性領域であって、グルコース応答性活性酵素を含むグルコース応答性活性領域;グルコース応答性活性領域から離隔した作用電極の表面に配置されたエタノール応答性活性領域の第1の部分であって、キサンチンオキシダーゼ、第1のポリマー、及び任意選択の電子移動剤を含むエタノール応答性活性領域の第1の部分;エタノール応答性活性領域の第1の部分上に配置された第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、少なくともアセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置されたエタノール応答性活性領域の第2の部分であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含むエタノール応答性活性領域の第2の部分;及び少なくともグルコース応答性活性領域上に配置された第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、少なくともグルコースに対して透過性である第2の膜及び少なくともエタノール応答性活性領域上に配置された第3の膜であって、第3の膜ポリマーを含み、少なくともエタノールに対して透過性である第3の膜を含む分析物センサ。
【0108】
実施形態A、B、C、D、及びEのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る:
要素1:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
【0109】
要素2:第1及び第2の膜ポリマーは、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである。
要素3:第1の膜はポリビニルピリジンであり、第2の膜ポリマーはポリビニルピリジン-co-スチレンである。
【0110】
要素4:キサンチンオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第1の部分で第1のポリマーに共有結合し、グルコースオキシダーゼは、エタノール応答性活性領域の第2の部分で第2のポリマーに共有結合している。
【0111】
要素5:エタノール応答性活性領域の第1の部分が電子移動剤を含み、電子移動剤が第1のポリマーに共有結合している。
要素6:エタノール応答性活性領域の第1の部分が電子移動剤を含み、電子移動剤が第1のポリマーに共有結合し、電子移動剤がオスミウム錯体を含む。
【0112】
要素7:エタノール応答性活性領域の第1の部分は、カタラーゼをさらに含む。
要素8:グルコース応答性酵素は、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼである。
【0113】
要素9:第2の膜は分断されている。
要素10:第3の膜は、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つである。
【0114】
非限定的な例として、A、B、C、及びDに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる:
要素1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び7;1及び8;1及び9;1及び10;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;2及び9;2及び10;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;3及び9;3及び10;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;5及び6;5及び7;5及び8;6及び7;6及び8;7及び8;ならびに1、2、3、4、5、6、7、及び8のうちの1つ、複数、又はすべての非限定的な組み合わせ。
【0115】
非限定的な例として、Eに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる:
要素1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び7;1及び8;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;4及び9;4及び10;5及び6;5及び7;5及び8;5及び9;5及び10;6及び7;6及び8;6及び9;6及び10;7及び8;7及び9;7及び10;8及び9;8及び10;9及び10;及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10のうちの1つ、複数、又はすべての非限定的な組み合わせ。
【0116】
本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するものと解されるべきではない。
【0117】
実施例:単一の作用電極上で協調して作用する2つの異なる酵素(XOX/GOX)を有する分析物センサを使用したエタノールの検出。表1に示す配合の第1のスポッティング溶液を調製した。すべての成分をpH8の10mM HEPES緩衝液に溶解させた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて達成された。
【0118】
【0119】
約15nLの第1のスポッティング溶液を、約0.05mm2の面積を有する単一のスポット(XOXスポット)として炭素作用電極上に堆積させた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0120】
硬化後、100mg/mL PVP及び100mg/mL PEGDE400を含むコーティング溶液から、ポリ(4-ビニルピリジン)(PVP)膜を作用電極及びXOXスポット上に堆積させた。膜の堆積は、コーティング溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥バイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。
【0121】
表2に示される配合を有する第2のスポッティング溶液を調製した。すべての成分をpH8の10mM HEPES緩衝液に溶解させた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて達成された。
【0122】
【0123】
約15nLの第2のスポッティング溶液を、約0.05mm2の面積を有する単一のスポット(GOXスポット)として上からPVP膜上に堆積させた。堆積後、25℃で一晩硬化を行った。
【0124】
硬化後、GOXスポット及びPVP膜上に第2の膜を堆積させた。この場合の膜ポリマーは、架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーであり、ピリジン窒素原子の一部は非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部はアルキルスルホン酸基で官能化された。この位置の膜は、35mg/mLの架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーと100mg/mL PEGDE400を含むコーティング溶液から堆積された。膜の堆積は、コーティング溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥バイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。
【0125】
それぞれが様々な濃度のエタノール及び5mMのグルコース(過酸化水素の生成に必要)を含むエタノール含有PBS溶液に電極を浸すことにより、エタノール分析を行った。溶液には5mMのグルコースが含まれていたが、約4mM~約30mMグルコースなどの、他のグルコース濃度もまた、記載された実施例を実施するために使用され得ることが理解されるべきである。
図9Aは、別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極の、様々なエタノール濃度に曝露した時の応答の2つの複製を示す。カタラーゼはグルコースオキシダーゼと共に活性領域内にある。示されているように、電流応答は、新しいエタノール濃度への曝露後、数分の間に増加してその後安定した。観察した2つの複製の間で良好な再現性が得られた。
【0126】
図9Bは、別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極間の、様々なエタノール濃度への曝露時の比較応答データを示す。カタラーゼは別々に活性領域に存在する。示されているように、センサ応答は、カタラーゼがキサンチンオキシダーゼを含む活性領域に含まれている場合に大きくなった。
図10は、エタノール濃度に対する平均電流応答の例示的なプロットを示している。
【0127】
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量等を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0128】
分析物センサイグニッションロック
イグニッションロックなどの車両フェイルセーフは、障害がある場合や車両を安全に操作できる状態にない場合に、操作者が車両を操作できないようにするために使用されることがある。障害のある状態で車両を操作すると、操作者や一般の人々に重大な危険をもたらす可能性がある。一般的なタイプのイグニッションロックの1つは、飲酒運転を防止するように設計されており、より具体的には、アルコールの使用によって酔っている間に個人が車両を操作するのを防止するように設計されている。このようなロック装置は、呼気アルコール分析装置又は光学センサを車両のイグニッションシステムに接続しており、ドライバーは車両を始動する前に血中アルコール濃度テストに合格する必要がある。
【0129】
酩酊は、操作者を車両の操作に不適合又は操作不可能にする、操作者が経験し得る一種の障害又は状態である。ただし、他の障害や状態も操作者を悩ませる可能性があるため、操作者が障害のあるときに車両を操作しないように注意深く監視する必要がある。例えば、糖尿病で低血糖のときに運転をしている操作者は、立ちくらみ、錯乱、頭痛、意識喪失、発作、反射の遅延を起こす可能性があり、そのいずれもが自身の、及びその車両内又は車両付近の人の生命を危険にさらす可能性がある。
【0130】
分析物モニタリングシステムは、体液(例えば血液)中の分析物の長期モニタリングを容易にするために開発されてきた。いくつかの分析物モニタリングシステムは、血糖値を検出及びモニタリングするように設計されており、これは糖尿病状態の治療に役立つ。しかしながら、他の分析物モニタリングシステムは、操作者の体液中に存在する他の分析物を検出及びモニタリングするように設計されており、操作者で検出された異常な分析物レベルは、操作者が現在車両を安全に操作するのに適していないことを示し得る。
【0131】
以下の説明は、操作者の分析物レベルが所定の閾値を超えたときに車両の操作を防止するために使用される分析物モニタリング及び車両制御システムについて記載する。センサ制御デバイス102(
図1)を適切に配備することにより、ユーザは、体液分析物のレベル及び傾向を理性的に追跡及びモニタリングすることができる。一部の分析物レベルが特定の閾値を超えると、ユーザが車両を安全に操作できなくなる物理的又は認知障害が発生する可能性がある。このような場合、ユーザは、車両の操作を試みる前に、分析物レベルを安全な範囲に戻すための適切な措置を講じる必要がある。ただし、場合によっては、ユーザは車両を操作するのにまったく問題がないと感じるかもしれないが、そうであっても、危険な身体的障害の発症を突然引き起こす可能性のある安全でない分析物レベルを有する。このような場合、ユーザが車両を操作して自身や他者を危険にさらす可能性を防止又は警告するフェイルセーフシステムを設置することが有利な場合がある。
【0132】
図11は、本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システム1100の概略図である。図示のように、分析物モニタリング及び車両制御システム1100(以下、「システム1100」)は、センサ制御デバイス102を含み、これは、ユーザ又は「操作者」3202上に配備され、あるいは、操作者1102の身体の標的モニタリング位置、例えば腕の後ろに送達され得る。上述のように、センサ制御デバイス102は、センサ104(
図1)を含み、適切に配備されると、センサ104は、皮膚内に経皮的に配置されて、操作者1102の体液内に存在する分析物を検出及びモニタリングする。センサ制御デバイス102の底部に塗布された接着パッチ105(
図1)は、皮膚に付着して、動作中にセンサ制御デバイス102を所定の位置に固定する。
【0133】
システム1100は、本明細書では分析物レベルを検出及び報告するためのオンボディセンサ制御デバイス102を含むものとして説明されるが、システム1100は、代わりに、本開示の範囲から逸脱することなく、生体外分析物センサ(例えば、セルフモニタリング血糖「SMBG」メータ)を組み込むことができる。したがって、「センサ制御デバイス」という用語は、本明細書では、上記で主に記載したようなオンボディセンサシステムだけでなく、従来のハンドヘルドセンサシステムも含むと解釈されるべきである。
【0134】
図示のように、システム1100は、リーダデバイス120をさらに含むことができ、センサ制御デバイス102は、ローカル通信パス又はリンクを介してリーダデバイス120と通信して、分析物濃度データを自動的に、定期的に、又は操作者1102の必要に応じて提供することができる。リーダデバイス120は、制御モジュール1104と通信することができ、制御モジュール1104は、車両1106の電気システムと通信し、車両バッテリによって電力を供給されるか、さもなければ別個のバッテリによって電力を供給される。そのような実施形態では、センサ制御デバイス102からリーダデバイス120に送信されるデータは、その後、処理のためにリーダデバイス120によって制御モジュール1104に送信され得る。しかしながら、他の実施形態では、センサ制御デバイス102は、BLUETOOTH(登録商標)などの任意の無線通信プロトコルを介して制御モジュール1104と直接通信することができる。そのような実施形態では、リーダデバイス120は、システム1100において必要である場合もあれば、必要でない場合もある。
【0135】
図示の実施形態では、車両1106は自動車として描かれている。しかしながら、本明細書で使用される場合、「車両」という用語は広い意味で使用され、人間のユーザ又は「操作者」が操作できるあらゆる種類の輸送体を含むことを意味するが、人間を輸送するために使用される自動運転車も含むことができる。車両1106の例には、限定するものではないが、任意の種類の自動車、トラック、スポーツ多目的車両、航空機、船舶、宇宙船、及び/又は他の任意の輸送手段、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。
【0136】
制御モジュール1104は、センサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120との間で情報を通信するための通信インターフェースを含み得る。例示的なBLUETOOTH(登録商標)対応のセンサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120の場合、センサ制御デバイス102が車両1106に近づくと、ペアリングモードに入ることができる。ペアリング時に、制御モジュール1104は、センサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120の存在を自動的に検出し、それらとの通信を確立するようにプログラム及び構成され得る。例えば、操作者1102が車両1106に接近し又は進入すると、制御モジュール1104は、センサ制御デバイス102の存在を自動的に検出し、それらの間又はリーダデバイス120との通信を可能にすることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1104は、インフォテインメントシステム、タッチスクリーンディスプレイ、又は情報ディスプレイなどの、車両1106に含まれる車両ユーザインターフェース1108と通信することができる。そのような実施形態では、制御モジュール1104は、車両ユーザインターフェース1108を介して操作者1102と視覚的に通信することができ、また、車両1106に含まれるオーディオスピーカを介して操作者1102と聴覚的に通信することもできる。しかしながら、他の実施形態では、制御モジュール1104は、操作者1102と通信することができるように、リーダデバイス120と通信するように構成され得る。
【0138】
図示のように、制御モジュール1104は、センサ制御デバイス102によって得られた操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルに基づいて、車両1106の様々な動作及び/又はシステムを制御するように構成又はプログラムされたコンピュータシステム1110であり得るか、又はそれを含み得る。車両1106の操作は、車両1106の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって、又は車両1106内の警告システムをアクティブにすることによって、制御、無効化、又は変更される。操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にある場合、操作者1102が車両1106を操作することは安全であると見なされ得る。しかしながら、操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム1110は、車両1106の操作を制御、無効化、又は変更するようにプログラムされ得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、例えば、コンピュータシステム1110は、操作者1102の検出された分析物レベルが所定の範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えたときに、様々な重要な車両システムを無効にするように構成され得、したがって、操作者1102を、車両1106を安全に操作するのに障害があるものとして識別すると、車両の操作を徐々にかつ安全に無効にする。無効にされ得る車両1106の重要な車両システムには、イグニッションシステム(例えば、エネルギー切り替え/制御システム)、トランスミッションシステム(又はギアボックス)、燃料システム、エネルギー供給システム(例えば、バッテリ、コンデンサ、コンバージョン/反応電池など)が含まれる。上昇又は低下した(安全でない)分析物レベルが検出されると、コンピュータシステム1110は、重要な車両システムが機能又は動作するのを妨げることができる。その結果、操作者1102は、車両1106を始動又は操作することができず、それにより、操作者1102が自身及び/又は他者を危険にさらすことを防ぐ。
【0140】
他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1110は、操作者1102の検出された分析物レベルが所定の閾値を上回るか又は超えると、様々な重要でない車両システムを作動させるように構成され得る。作動され得る重要でない車両システムには、例えば、車両1106に設置された車両ホーン、車両ライト、又は可聴警告システムが含まれる。そのような実施形態では、重要でない車両システムの起動は、障害のある状態で運転している可能性のある操作者1102の法執行機関及び他者(例えば、隣接する車両の操作者、居合わせている人、歩行者など)に警告し、したがってそれに関連する問題に迅速に対処すべく、法的処置を可能にし、潜在的に危険な状況を他者に通知することができる。
【0141】
さらに他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1110は、操作者1102の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えると、1つ以上の緊急連絡先に自動的に電話をかけるように構成され得る。そのような実施形態では、コンピュータシステム1110は、リーダデバイス120(例えば、携帯電話)又は車両1106に組み込まれたセルラー又は衛星通信システム(例えば、OnStar(登録商標))を介して動作することができる。他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム1110は、操作者1102の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えたときに、緊急連絡先にメッセージ(例えば、テキスト又はSMSメッセージ、電子メールなど)を自動的に送信するように構成され得る。緊急連絡先の例には、限定するものではないが、配偶者、親、医療関係者(医師など)、病院、911、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、システム1100は、操作者1102、より具体的には、センサ制御デバイス102の存在を検出するように構成された1つ以上の近接センサ1112をさらに含み得る。そのような実施形態では、近接センサ1112は、車両1106内の運転席1114の全体的な領域をモニタリングするように構成され得る。センサ制御デバイス102が近接センサ1112によって運転席1114の領域内で検出された場合、それは、操作者1102が運転席1114にいて、車両1106を操作しようとしている可能性があることの肯定的な指標を提供し得る。そのような場合、シグナルが制御モジュール1104に送信されて、操作者1102が車両1106内にいて、車両1106を操作しようとしている可能性があることをコンピュータシステム1110に警告することができる。操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にあるか、又は所定のレベル未満である場合、コンピュータシステム1110は、操作者1102が車両1106を操作することを可能にし得る。しかしながら、操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム1110は、上記で概説したように、車両1106の操作を制御、無効化、又は変更することができる。理解されるように、近接センサ1112は、障害のある操作者1102が運転席1114にいて、車両1106を操作する準備ができている場合にのみ、車両1106の操作を防止するのに有利であり得る。その結果、センサ制御デバイス102を装着しているユーザは、制御モジュール1104又は車両1106の動作に影響を与えることなく、任意の状態で車両1106に乗客として乗ることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1104は、車両1106が現在動いているか静止しているかを含む、車両1106の現在の状態を検出するように構成された車両状態検出モジュール1116をさらに含み得る。さらに、車両状態検出モジュール1116は、車両1106内のモータが現在動作しているか、又は停止しているかを決定するように構成され得る。1つ以上の実施形態では、車両状態検出モジュール1116は、状態シグナルを制御モジュール1104に提供することができ、制御モジュール1104は、操作者1102のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えたときに、状態シグナルを使用して、どの車両動作をアクティブ又は無効にするかを決定することができる。例えば、状態シグナルが車両1106が静止していることを示す場合、制御モジュール1104は、車両燃料システム、トランスミッションシステム、イグニッションシステム、又はそれらの任意の組み合わせを無効にすることができる。対照的に、状態シグナルが車両1106が動いていることを示す場合、制御モジュール1104は、車両ホーンを作動させ、車両ライトを点滅させ、又は操作者1102及び/又は操作者1102の周囲の人に、操作者1102が正常でないという警告音を発することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、操作者1102が車両1106に入ると、又は制御モジュール1104がセンサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120とペアリングすると、リーダデバイス120又は車両ユーザインターフェース1108上でアプリが起動され得る。そして、リーダデバイス120及び/又は車両ユーザインターフェース1108上に、現在の分析物レベル、傾向、履歴データ、及び予測される分析物レベルを示すデジタルダッシュボードが表示され得る。しかしながら、現在の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にある場合、コンピュータシステム1110は、1つ以上の重要な車両システムを無効にして、操作者1102が車両1106を操作するのを防ぐようにプログラムされ得る。そのような実施形態では、視覚的又は聴覚的な警告が制御モジュール1104によって発せられて、車両1106が始動しない理由を操作者1102に通知することができる。より具体的には、視覚的警告(例えば、書かれたメッセージ)が生成され、リーダデバイス120又は車両ユーザインターフェース1108上に表示され得るか、又は可聴警告(例えば、音声メッセージ)がリーダデバイス又は車両1106内のスピーカを通して伝えられ得る。
【0145】
自動的に行われない場合、操作者1102は、センサ制御デバイス102を制御モジュール1104とペアリングする際に、現在の分析物レベルを取得するように促され得る。場合によっては、現在の分析物レベルが得られるまで、車両1106の操作が妨げられてもよい。現在の分析物レベルが安全限界内にある場合、コンピュータシステム1110は、車両1106の操作を可能にし得る。いくつかの態様において、及び自動的に行われない限り、制御モジュール1104は、所定の期間にわたって車両1106を操作した後(例えば、1時間、2時間、5時間後など)、追加の現在の分析物レベルを取得するように操作者1102を促すことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1104は、測定された分析物レベルを安全な範囲に戻すのに役立ち得る視覚的又は聴覚的な推奨又は指導を操作者1102に発するように構成され得る。そのような実施形態では、そのような視覚的又は聴覚的推奨は、分析物レベルを安全な範囲に戻す結果となり得る何らかの行動をとるようにユーザを促すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、操作者1102は、口頭の応答又は命令を発することによって、口頭で制御モジュール1104と通信することができる場合がある。これは、車両1106の気が散る操作を防ぐのに有利であることを証明し得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、制御モジュール1104の設定は、安全でない分析物レベルが検出され、視覚的又は聴覚的警告が制御モジュール1104によって発せられた後、ユーザが情報に基づいた決定を下せるように、操作者1102によってカスタマイズされ得る。より具体的には、少なくとも1つの実施形態では、制御モジュール1104は、安全でない分析物レベルが測定された場合でさえ、操作者1102が車両1106を操作できるようにするバイパス機能を含み得る。そのような実施形態では、操作者1102は、操作者1102が障害のある又は危険な健康状態で車両1106を操作している可能性があることを認めることによって、車両1106を操作することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム1110は、操作者1102の分析物レベルが所定の安全範囲から逸脱するか、あるいは所定の閾値を超える可能性がある場合に、予測タイムラインを計算するように構成又はプログラムされ得る。そのような実施形態では、制御モジュール1104は、安全でない分析物レベルに到達し、潜在的な危険な病状が生じ得る状態になるまでに、操作者1102におよそどれくらいの時間があるかを示す視覚的又は聴覚的警告を操作者1102に発するように構成され得る。安全でない分析物レベルに達する前に、操作者が特定の時間増分を残していることを示すために、複数の警告が提供されてもよい。例えば、1時間以内、30分以内、10分以内、5分以内、1分以内、及びそれらの間の任意の時間増分で安全でない分析物レベルに達しそうになると、視覚的又は聴覚的警告が発せられ得る。さらに、操作者の分析物レベルが安全でないレベルに達するか、又は所定の閾値を超えると、視覚的又は聴覚的警告が発せられ得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、操作者1102が車両1106を操作している間に安全でない分析物レベルが測定されると、制御モジュール1104は、安全でない分析物レベルについて操作者1102に警告する1つ以上の警告(視覚的又は聴覚的)を発するように構成され得る。場合によっては、車両1106内のステレオの音量を自動的に下げて、操作者1102が可聴警告を聞くことができるようにすることができる。そのような実施形態では、制御モジュール1104は、操作者1102に1つ以上の是正措置を提案するように構成され得る。是正措置の例には、限定するものではないが、車両1106の減速及び停止、近くのコンビニエンスストア又は薬局の位置特定及びそこへの運転、及び近くの病院又は医療施設の位置特定が含まれる。車両1106が自動運転車であり、現在の分析物レベルが操作者1102を潜在的に危険な状態に置く場合、制御モジュール1104は、車両1106を治療のために医療施設に自動的に向けることができる。あるいは、又はそれに加えて、制御モジュール1104は、安全でない分析物レベルが検出されたときに車両1106の速度を徐々に減速又は制限することができ、したがって、操作者1102を停止させ、車両1106を操作し続ける前に問題に対処する。
【0150】
システム1100は、運転中の操作者1102及び/又は操作者1102の周囲の人々を保護するために、いくつかの異なるシナリオで有用であり得る。いくつかの用途では、システム1100は、リアルタイムで障害を検出するために、操作者によって自発的に組み込まれ得る。他の用途では、システム1100は、車両1106の所有者によって、操作者1102の障害を検出することを要求され得る。そのような用途では、車両1106の所有者は、輸送会社又はトラック会社であり得る。さらに他のアプリケーションでは、システム1100は、障害を検出するために操作者1102に法的に課され得る。
【0151】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
F.操作者の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及びモニタリングするセンサを有するセンサ制御デバイスと、センサ制御デバイス及び車両の電気システムと通信する制御モジュールとを含む分析物モニタリング及び車両制御システムであって、制御モジュールは、センサ制御デバイスによって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを含み、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えると、車両の操作がコンピュータシステムによって制御又は無効化される、分析物モニタリング及び車両制御システム。
【0152】
G.センサを有するセンサ制御デバイスを用いて操作者の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及びモニタリングすること、センサ制御デバイスによって提供されるデータを、センサ制御デバイス及び車両の電気システムと通信する制御モジュールで受信及び処理すること;及び、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えたときに、制御モジュールのコンピュータシステムを用いて車両の操作を制御又は無効にすることを含む方法。
【0153】
実施形態F及びGのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る:要素1:センサ制御デバイスが操作者に結合され、センサが操作者の体液内に存在する分析物を検出及びモニタリングするために、操作者の皮膚の下に経皮的に配置される。要素2:センサ制御デバイスは、生体外分析物センサを含む。要素3:センサ制御デバイスからデータを受信し、そのデータを制御モジュールに送信するリーダデバイスをさらに備える。要素4:車両は、自動車、自動運転車、トラック、スポーツユーティリティビークル、航空機、船舶、宇宙船、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される輸送体を含む。要素5:センサ制御デバイスは、操作者が車両に接近した際に通信のために制御モジュールとペアリングする。要素6:車両に含まれ、制御モジュールと通信する車両ユーザインターフェースをさらに備える。要素7:車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって車両の操作が無効にされ、上記重要なシステムは、イグニッションシステム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素8:車両の操作は、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先に電話するかメッセージを送信すること、及び車両の速度を徐々に下げることの少なくとも1つによって制御される。要素9:車両の運転席の領域をモニタリングし、操作者の存在を検出するために車両に設置された1つ以上の近接センサをさらに備える。要素10:制御モジュールは、車両の現在の状態を検出する車両状態検出モジュールをさらに含む。要素11:制御モジュールは、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値外にあるときに、操作者が知覚できる視覚的又は聴覚的警告を生成する。要素12:安全でない分析物レベルに達する前に、視覚的又は聴覚的警告が特定の時間増分で生成される。要素13:視覚的又は聴覚的警告は、操作者に伝達される1つ以上の提案された是正措置を含む。要素14:制御モジュールは、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えたときに、操作者が車両を操作できるようにするバイパス機能を含む。
【0154】
要素15:センサ制御デバイスからデータを受信し、センサ制御デバイス及び制御モジュールと通信するリーダデバイスを用いて、データを制御モジュールに送信することをさらに含む。要素16:車両の操作を無効にすることは、車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることを含み、上記重要なシステムは、イグニッションシステム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素17:車両の操作を制御することは、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先に電話するかメッセージを送信すること、及び車両の速度を徐々に下げることの少なくとも1つを含む。要素18:車両に取り付けられた1つ以上の近接センサを用いて、車両の運転席の領域をモニタリングし、操作者の存在を検出することをさらに含む。要素19:制御モジュールに含まれる車両状態検出モジュールを用いて車両の現在の状態を検出することをさらに含む。要素20:操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えたときに、制御モジュールを用いて、操作者によって知覚可能な視覚的又は聴覚的警告を生成することをさらに含む。
【0155】
様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示されている。明確にするため、物理的実装のすべての特徴が本願で説明ないし示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発において、システム関連、ビジネス関連、政府関連及びその他の制約のコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解される。これらは、実装によって、また場合によって変化する。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それでも、そのような努力は、当業者にとって日常的な作業であり、本開示の利益を有するであろう。
【0156】
様々なシステム、ツール、及び方法が、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されているが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ものとすることができる。
【0157】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にあり、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語を伴う「少なくとも1つ」という句は、リストの各メンバー(つまり、各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「~の少なくとも1つ」という句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含むという意味を許容する。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0158】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれに内在するものを達成するために十分に適合されている。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかな、相違する同等の態様で変更及び実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は例示にすぎない。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に限定することは意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正され得ることは明らかであり、そのようなすべてのバリエーションは、本開示の範囲内であると見なされる。本明細書に例示的に開示されるシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示されている任意選択の要素がない状態で適切に実施され得る。システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ことも可能である。上記に開示されたすべての数及び範囲は、いくらか変動する場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約a~b」の形式)は、より広い範囲の値に含まれるすべての数及び範囲を記載しているものとして理解されるべきである。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、請求項の用語は、本来の通常の意味を有する。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許文献又はその他の文献との間で単語又は用語の使用法に矛盾がある場合は、本明細書に従う定義を採用するものとする。