(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/70 20060101AFI20221219BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B41J11/70
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2021548117
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038149
(87)【国際公開番号】W WO2021059482
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】田邊 宙夢
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-224764(JP,A)
【文献】特開2017-024221(JP,A)
【文献】特開2010-201820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/36
B41J 11/00-11/70
B41J 15/00-15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた媒体を巻き出して搬送する搬送部と、
前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記媒体から、前記印刷ヘッドによって印刷が行われた印刷部分を切り出すカッタと、
前記カッタによって切り出された前記印刷部分を挟み込んで搬送する排出部と、
少なくとも前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記カッタによって前記印刷部分が切り出された後で、且つ前記印刷ヘッドによって印刷が開始される前に、前記媒体が前記排出部によって挟み込まれる位置まで前記搬送部が前記媒体を排出方向に搬送するように前記搬送駆動部を制御
し、
前記制御部は、前記印刷ヘッドによる次の印刷の開始指令を受けた後、前記搬送部が前記媒体を前記排出方向とは反対の逆方向に搬送するように前記搬送駆動部を制御し、
前記制御部は、前記媒体の前記逆方向への搬送と印刷データの受信とを並行処理し、
前記媒体の前記逆方向への搬送に起因して印刷開始時に前記媒体に生じているたるみ部分は、その後、印刷時に前記排出方向に搬送される際に前記媒体の前記逆方向への搬送が開始された位置において解消される、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
ロール状に巻かれた媒体を巻き出して搬送する搬送部と、
前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記媒体から、前記印刷ヘッドによって印刷が行われた印刷部分を切り出すカッタと、
前記カッタによって切り出された前記印刷部分を挟み込んで搬送する排出部と、
少なくとも前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記カッタによって前記印刷部分が切り出された後で、且つ前記印刷ヘッドによって印刷が開始される前に、前記媒体が前記排出部によって挟み込まれる位置まで前記搬送部が前記媒体を排出方向に搬送するように前記搬送駆動部を制御し、
前記制御部は、前記媒体が前記排出部によって挟み込まれる位置から前記搬送部によって前記媒体が前記排出方向とは反対の逆方向に搬送された状態で印刷が開始された後、前記媒体の前記逆方向への搬送が開始された位置において低速となり、他の少なくとも一部の位置において高速となる搬送速度で前記搬送部が前記媒体を前記排出方向に搬送するように前記搬送駆動部を制御する、
ことを特徴とす
る印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアラインプリンタなどの印刷装置では、手荷物タグやレシートなどの媒体は、ロール状に巻かれた状態から巻き出されることで搬送され、印刷ヘッドによって印刷が行われる。また、媒体は、印刷が行われた印刷部分がカッタによって切り出され、この印刷部分が一対の排出ローラによって排出される。一方、印刷部分が切り出された残りの媒体は、次の印刷の前に、先端が印刷ヘッドによる印刷位置に戻るように排出方向とは反対の逆方向に搬送される。
【0003】
このような印刷装置において、先端を印刷位置に戻すために逆方向への搬送を行うものではないが、ロール紙のカット面の変形に起因するジャムエラー等の不具合を防止するために、カット面を排出用搬送経路内で待機させる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、印字装置に着脱自在に配置される給送装置において、媒体のたるみが検出されると給送速度を速める給送機構を備える給送装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-131997号公報
【文献】特開2003-118898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、印刷部分が切り出された後に媒体が排出方向とは反対の逆方向へ搬送されることによって、媒体にはたるみ部分が生じる。その後、媒体が排出方向に搬送されてたるみ部分が解消される際に、媒体に衝撃が加わる。印刷装置に用いられる媒体は、交換回数を減らすためには、ロール外径が長いものが用いられることが望ましいが、ロール外径が長いほど、媒体に加わる衝撃が強くなる。
【0007】
上述のように媒体に加わる衝撃は、媒体に印刷(印字)縮みなどの印刷不良(印刷乱れ)を引き起こす。このような印刷不良は、衝撃によって媒体がスリップすることによるものと考えられる。
【0008】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ロール状に巻かれた媒体に印刷不良が発生するのを抑制することができる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の印刷装置は、ロール状に巻かれた媒体を巻き出して搬送する搬送部と、前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、前記媒体から、前記印刷ヘッドによって印刷が行われた印刷部分を切り出すカッタと、前記カッタによって切り出された前記印刷部分を挟み込んで搬送する排出部と、少なくとも前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、前記搬送駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カッタによって前記印刷部分が切り出された後で、且つ前記印刷ヘッドによって印刷が開始される前に、前記媒体が前記排出部によって挟み込まれる位置まで前記搬送部が前記媒体を排出方向に搬送するように前記搬送駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0010】
開示の印刷装置によれば、ロール状に巻かれた媒体に印刷不良が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態に係る印刷装置の内部構造を示す側面図である。
【
図2】一実施の形態に係る印刷装置の一部の内部構造を示す側面図である。
【
図3】一実施の形態に係る印刷装置の制御構成を示す図である。
【
図4】一実施の形態に係る印刷装置の搬送制御を説明するためのフローチャートである。
【
図5】一実施の形態に係る印刷装置の搬送制御を説明するための側面図(その1)である。
【
図6】一実施の形態に係る印刷装置の搬送制御を説明するための側面図(その2)である。
【
図7】一実施の形態に係る、媒体がたるんだ状態の印刷装置の内部構造を示す側面図である。
【
図8】一実施の形態の変速印刷(その1)における搬送速度と時間との関係を示す図である。
【
図9】一実施の形態の変速印刷(その2)における搬送速度と時間との関係を示す図である。
【
図10】一実施の形態の定速印刷における搬送速度と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、印刷装置1の内部構造を示す側面図である。
【0013】
図2は、印刷装置1の一部の内部構造を示す側面図である。
図3は、印刷装置1の制御構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、搬送部の一例であるプラテンローラ10と、印刷ヘッド20と、カッタ30と、排出部の一例である一対の排出ローラ41,42と、ロール軸部50と、を備える。また、
図3に示すように、印刷装置1は、搬送駆動部60と、制御部71と、記憶部72と、インターフェース部73と、を更に備える。
【0015】
プラテンローラ10は、後述する搬送駆動部60の駆動によって回転することで、長尺状の媒体Mを搬送する。プラテンローラ10は、例えばゴムローラである。なお、プラテンローラ10は、ロール状に巻かれた長尺状の媒体Mを巻き出して搬送する搬送部の一例であるが、この搬送部としては、プラテンローラ10以外の搬送ローラや搬送ベルトなどであってもよい。
【0016】
媒体Mは、例えば外径が200mmのロール状に巻かれており、軸芯において例えば後述するロール軸部50によって回転可能に支持されている。また、媒体Mの一例としては、エアラインプリンタにおいて手荷物タグとして用いられ、一方の面(表面)又は内部に接着層を有するラベルが挙げられる。ロール状に巻かれた媒体Mは、後述する
図5に示すようにプラテンローラ10の回転によって排出方向D1に巻き出されて搬送される。一方、
図6に示すように、プラテンローラ10が逆回転すると、媒体Mは、排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送される。
【0017】
印刷ヘッド20は、プラテンローラ10に対向して配置されている。また、印刷ヘッド20は、プラテンローラ10との間に挟み込まれた媒体Mに印刷(印字)を行う。印刷ヘッド20の印刷方式は、特に制限はないが、例えば、感熱方式である。なお、印刷ヘッド20の印刷方式が感熱方式である場合には、媒体Mは、例えば感熱ラベルである。
【0018】
図2に示すように、カッタ30は、媒体Mから、印刷ヘッド20によって印刷が行われた印刷部分Maを切り出す。
【0019】
一対の排出ローラ41,42は、互いに対向して配置され、カッタ30によって切り出された印刷部分Maを挟み込んで搬送する。一対の排出ローラ41,42のうちの一方の排出ローラ41は、後述する搬送駆動部60の駆動によって回転する駆動ローラであり、他方の排出ローラ42は、従動ローラである。なお、一対の排出ローラ41,42は、排出部の一例であるが、この排出部としては、排出ベルトなどが用いられてもよい。
【0020】
図1に示すロール軸部50は、上述のように、ロール状に巻かれた媒体Mの軸芯において、媒体Mを回転可能に支持する。
【0021】
図3に示す搬送駆動部60は、排出ローラ41及びプラテンローラ10を駆動する例えばモータである。そのため、一対の排出ローラ41,42及びプラテンローラ10は、互いに同一のタイミングで回転する。なお、駆動ローラである排出ローラ41を駆動する搬送駆動部と、プラテンローラ10を駆動する搬送駆動部とが個別に配置されていてもよい。
【0022】
制御部71は、印刷ヘッド20、カッタ30が有するカッタ駆動部、搬送駆動部60などを制御する。例えば、制御部71は、記憶部72に記憶されているプログラムを読み出して実行するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有する。
【0023】
記憶部72は、例えば、制御部71のプロセッサによって実行されるプログラムを記憶する読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種のプログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などである。
【0024】
インターフェース部73は、外部機器との間で各種情報を授受する。例えば、インターフェース部73は、プロセッサによって実行されるプログラムを記憶媒体から或いはネットワークを介して取得したり、或いは、印刷データを生成するコンピュータから印刷データを受信したりする。
【0025】
以下、印刷装置1の搬送制御について、
図4~
図10を参照しながら説明する。
図4は、印刷装置1の搬送制御を説明するためのフローチャートである。
【0026】
図5及び
図6は、印刷装置1の搬送制御を説明するための側面図である。
図7は、媒体Mがたるんだ状態の印刷装置1の内部構造を示す側面図である。
【0027】
図8は、変速印刷(その1)における搬送速度と時間との関係を示す図である。
図9は、変速印刷(その2)における搬送速度と時間との関係を示す図である。
図10は、定速印刷における速度と時間との関係を示す図である。
【0028】
図3に示す制御部71は、まず、
図4に示すように、印刷装置1におけるユーザの操作に基づき、或いは印刷データを生成するコンピュータから受信する情報に基づき、印刷ヘッド20による次の印刷の開始指令があったかの判定を、開始指令を受けるまで繰り返す(ステップS1)。
【0029】
制御部71は、次の印刷の開始指令を受けた後(ステップS1:YES)、
図5に示すように、一対の排出ローラ41,42によって媒体Mが挟み込まれて保持されているかを判定する(ステップS2)。この判定処理は、例えば、後述する排出動作処理(ステップS8)において、媒体Mを一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置まで排出方向D1に搬送する動作が行われたか否かによって判定することができる。但し、制御部71は、媒体Mを検知するセンサの検知結果に基づいて、一対の排出ローラ41,42によって媒体Mが挟み込まれて保持されているかを判定してもよい。
【0030】
制御部71は、一対の排出ローラ41,42によって媒体Mが挟み込まれて保持されていないと判定した場合(ステップS2:NO)のみ、プラテンローラ10が媒体Mを一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置まで排出方向D1に搬送するように搬送駆動部60を制御する(ステップS3)。
【0031】
その後、制御部71は、
図6に示すように、次の印刷時に媒体Mの先端(逆方向D2における上流側端部、すなわち、排出方向D1における下流側端部)から印刷が行われるように、媒体Mの先端がプラテンローラ10と印刷ヘッド20との間に到達するまで、プラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送するように搬送駆動部60を制御する(ステップS4)。制御部71は、媒体Mが逆方向D2に搬送されているときに、印刷データを取得する。なお、逆搬送処理(ステップS4)は、排出動作(ステップS8)の直後に行われてもよいが、その場合、上述のステップS2の判定処理において、制御部71は、一対の排出ローラ41,42によって媒体Mが挟み込まれて保持されてから逆搬送処理が行われたかを判定するとよい。
【0032】
次に、制御部71は、後述するように媒体Mに衝撃が加わる際に媒体Mの搬送速度を低速にする速度変化設定が行われているかを判定する(ステップS5)。この速度変化設定は、例えば、印刷装置1におけるユーザの操作に基づき、或いは印刷データを生成するコンピュータから受信する情報に基づき、設定される。なお、速度変化設定は、
図6に示すように媒体Mが逆方向D2に搬送されることによって、
図7に示すように媒体Mに生じたたるみ部分(たわみ部分)Mbが、印刷時の媒体Mの排出方向D1への搬送によって解消されるときに媒体Mに衝撃が加わる際に搬送速度を低速とするための設定である。上述のように、媒体Mは、
図6に示す一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置まで排出方向D1に搬送されてから逆方向D2に搬送されているため、たるみ部分Mbが解消されて媒体Mに衝撃が加わるのは、媒体Mが一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれた状態である。そのため、媒体Mは、一対の排出ローラ41,42の間、及びプラテンローラ10と印刷ヘッド20との間の2箇所で保持された状態で衝撃を受ける。なお、この衝撃は、媒体Mのロール外径が長いほど大きくなる。
【0033】
制御部71は、速度変化設定が行われている場合(ステップS5:YES)、媒体Mの搬送速度を変化させながら印刷ヘッド20に変速印刷を行わせる(ステップS6)。例えば、制御部71は、
図8に示すように、印刷時における媒体Mの搬送開始後、高速の速度v1まで搬送速度を加速させ、その後、媒体Mに衝撃が加わる時間t1において低速の速度v2となるように搬送速度を減速させ、時間t1よりも後に、再び高速の速度v2まで搬送速度を加速させるように搬送駆動部60を制御する。なお、印刷ヘッド20は、上述の変化する搬送速度に対応するように媒体Mに印刷を行う。
【0034】
或いは、制御部71は、変速印刷(ステップS6)を、
図9に示すように、印刷時における媒体Mの搬送開始後、低速の速度v2まで搬送速度を加速させ、媒体Mに衝撃が加わる時間t1よりも後に、高速の速度v1まで搬送速度を加速させるように搬送駆動部60を制御してもよい。但し、
図8に示すように、高速の速度v1の搬送時間が長い方が、搬送速度を低速v2とすることに起因する印刷処理能力低減を最小限に抑制することができる。
【0035】
制御部71は、速度変化設定が行われていない場合、或いは速度変化設定の機能自体が印刷装置1に搭載されていない場合(ステップS5:NO)、媒体Mの搬送速度を変化させずに印刷ヘッド20に定速印刷を行わせる(ステップS7)。例えば、制御部71は、
図10に示すように、印刷時における媒体Mの搬送開始後、高速の速度v1まで搬送速度を加速させ、媒体Mに衝撃が加わる時間t1においても高速の速度v1のまま媒体Mを搬送するように搬送駆動部60を制御する。
【0036】
制御部71は、変速印刷(ステップS6)又は定速印刷(ステップS7)が行われた後、印刷部分Maの排出動作の制御を行う(ステップS8)。例えば、制御部71は、印刷部分Maの排出方向D1における後端(上流側端部)がカッタ30まで到達するようにプラテンローラ10(搬送駆動部60)によって媒体Mが排出方向D1に搬送された後(
図2参照)、印刷部分Maを切り出すようにカッタ30を制御する。また、制御部71は、
図5に示すように、媒体Mが一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置までプラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1に搬送して待機させるように搬送駆動部60を制御するとよい。そして、制御部71は、上述のステップS1から処理を繰り返す。
【0037】
以上説明した本実施の形態では、印刷装置1は、搬送部の一例であるプラテンローラ10と、印刷ヘッド20と、カッタ30と、排出部の一例である一対の排出ローラ41,42と、搬送駆動部60と、制御部71と、を備える。プラテンローラ10は、ロール状に巻かれた長尺状の媒体Mを巻き出して搬送する。印刷ヘッド20は、プラテンローラ10に対向して配置され、媒体Mに印刷を行う。カッタ30は、媒体Mから、印刷ヘッド20によって印刷が行われた印刷部分Maを切り出す。一対の排出ローラ41,42は、カッタ30によって切り出された印刷部分Maを挟み込んで搬送する。搬送駆動部60は、少なくともプラテンローラ10を駆動する。制御部71は、搬送駆動部60を制御する。また、制御部71は、カッタ30によって印刷部分Maが切り出された後で(ステップS8)、且つ印刷ヘッド20によって印刷が開始される前に(ステップS6,S7)、媒体Mが一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置までプラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1に搬送するように搬送駆動部60を制御する(ステップS8又はステップS3)。
【0038】
これにより、その後、媒体Mが一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置からプラテンローラ10によって排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送されてから印刷が開始される。そのため、逆方向D2への搬送に起因して印刷開始時に媒体Mに生じているたるみ部分Mbは、その後、印刷時に排出方向D1に搬送される際に媒体Mの逆方向D2への搬送が開始された位置において解消される。そして、この逆方向D2への搬送が開始された位置において、媒体Mは、一対の排出ローラ41,42の間、及びプラテンローラ10と印刷ヘッド20との間の2箇所で保持される。そのため、媒体Mは、このように保持された状態で、たるみ部分Mbが解消されることに起因する衝撃を受けることができる。したがって、媒体Mに衝撃が加わることに伴い生じるスリップを抑制することができるため、印刷(印字)縮み等の印刷不良が発生するのを抑制することができる。以上のとおり、本実施の形態によれば、ロール状に巻かれた長尺状の媒体Mに印刷不良が発生するのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、制御部71は、カッタ30によって印刷部分Maが切り出された後、一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置までプラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1に搬送して待機させるように搬送駆動部60を制御し、印刷ヘッド20による次の印刷の開始指令を受けた後、プラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送するように搬送駆動部60を制御する。
【0040】
ところで、印刷部分Maの切り出し後に、媒体Mの先端から印刷を開始するために予めプラテンローラ10と印刷ヘッド20との間に到達するようにプラテンローラ10が媒体Mの逆方向D2への搬送を行う態様では、媒体Mの先端が、プラテンローラ10上に長時間保持されることによって、プラテンローラ10に貼り付き、印刷動作の開始後に媒体Mがプラテンローラ10に巻き込まれ得る。それに対し、本実施の形態では、上述のように、制御部71は、カッタ30によって印刷部分Maが切り出された後、プラテンローラ10が媒体Mを一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置まで排出方向D1に搬送して待機させる。これにより、媒体Mの先端がプラテンローラ10上に長時間保持されないため、媒体Mの先端がプラテンローラ10に貼り付くことで印刷動作の開始後に媒体Mがプラテンローラ10に巻き込まれるのを防止することができる。
【0041】
更には、本実施の形態では、カッタ30によって印刷部分Maが切り出された後、プラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1に搬送して待機させるため、切り出された印刷部分Maを、プラテンローラ10と同一駆動源で駆動する排出ローラ41,42によって(或いは残りの媒体Mによって)、押し出して排出を促すことができる。
【0042】
したがって、媒体Mがプラテンローラ10に巻き込まれるのを防止することができるとともに印刷部分Ma(媒体M)の排出を促すことができる。更には、制御部71は、印刷ヘッド20による次の印刷の開始指令を受けた後、プラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送するため、逆方向D2への搬送と印刷データの受信とを並行処理することで、印刷処理能力低減を抑えることもできる。
【0043】
また、本実施の形態では、制御部71は、媒体Mが一対の排出ローラ41,42によって挟み込まれる位置からプラテンローラ10によって媒体Mが排出方向D1とは反対の逆方向D2に搬送された状態で印刷が開始された後、媒体Mの逆方向D2への搬送が開始された位置において低速(速度v2)となり、他の少なくとも一部の位置において高速(速度v1)となる搬送速度でプラテンローラ10が媒体Mを排出方向D1に搬送するように搬送駆動部60を制御する。
【0044】
これにより、たるみ部分Mbが解消される位置である、媒体Mの逆方向D2への搬送が開始された位置において、衝撃を受ける際の媒体Mの搬送速度を低速の速度v2とすることで、衝撃を緩和することができる。したがって、媒体Mに衝撃が加わることに伴い生じるスリップを更に抑制することができるため、印刷不良が発生するのを更に抑制することができる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されず、構成要素を変形して具体化することができる。例えば、本実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。このように、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において発明の種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 印刷装置
10 プラテンローラ
20 印刷ヘッド
30 カッタ
41,42 排出ローラ
50 ロール軸部
60 搬送駆動部
71 制御部
72 記憶部
73 インターフェース部
D1 排出方向
D2 逆方向
M 媒体
Ma 印刷部分
Mb たるみ部分