(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】安全キャビネット
(51)【国際特許分類】
B01L 1/00 20060101AFI20221219BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B01L1/00 A
C12M1/00 K
(21)【出願番号】P 2021567046
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023124
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
(72)【発明者】
【氏名】松村 健史
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-156082(JP,A)
【文献】特開2004-031928(JP,A)
【文献】特開平04-105884(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 1/04
C12M 1/00
B25H 1/20
F24F 7/06 - 7/10
B08B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面シャッターの内側に形成された作業室内と、
前記作業室内の下面側、前記作業室内の側面側および前記作業室内の背面側と安全キャビネットの外側部分とから形成される循環流路とを備え、前記作業室内に装置を搭載する安全キャビネットにおいて、
前記作業室に整流化した吹き出し気流を供給する吹き出し用整流板と、
前記作業室内の上部よりも前記作業室内の下部が広い水平断面積となるように、仕切り板
と、を有し、
前記仕切り板は、
前記吹き出し用整流板から下方へ所定距離から前記作業室内の側面へ傾斜する側面仕切り板と、
前記吹き出し用整流板から下方へ所定距離から前記作業室内の背面へ傾斜する背面仕切り板と、を有する
ことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項2】
請求項
1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記前面シャッターから所定距離において、前記吹き出し用整流板から前記作業室内の下方に向かう気流仕切り板を有する
ことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項3】
請求項2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記側面仕切り板及び前記背面仕切り板は、前記作業室内において上下にスライドするよう構成した
こと特徴とする安全キャビネット。
【請求項4】
請求項
2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記側面仕切り板は、前記作業室内の側面と30度乃至45度の角度で当接するよう傾斜し、
前記背面仕切り板は、前記作業室内の側面と30度乃至45度の角度で当接するよう傾斜している
こと特徴とする安全キャビネット。
【請求項5】
請求項
2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記気流仕切り板の下端は、前記前面シャッターの下端より上方である
ことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項6】
請求項
5に記載の安全キャビネットにおいて、
前記気流仕切り板は、前記気流仕切り板と前記前面シャッターとの間の前面シャッター裏面気流を、前記作業室内の装置設置領域の気流より、風速をおさえるものである
ことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項7】
請求項
1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記作業室内の下面を構成し、前記装置を設置する作業台において、装置周囲に沿って排気用スリットを設けた
ことを特徴とする安全キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療用や工業用や医薬品の開発や病原体等の研究などに使用する安全キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の操作・観察やウイルス等の病原体の研究やワクチン開発等の医薬品の開発などで病原体等を取り扱う場合には、安全キャビネットが使用される。
【0003】
安全キャビネットの一例として、特許文献1には、作業室内の上部に吹き出し用HEPAフィルタを設けるとともに、作業室内の前部に開閉可能な前面シャッターを設け、下方後方に後部グリルを、下方前方に前面グリルが設けられる。そして、吹き出し用HEPAフィルタから一様に作業室内に空気を供給し、作業室内の底面を形成する作業台の前面グリルと後部グリルから空気を吸い込むことにより、一様に空気が上から下に下降し、作業室内を清浄にする安全キャビネット、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安全キャビネットを用いれば、細胞の操作・観察や病原体等を作業室内で取り扱うことによる汚染を防止し、かつ、病原体等が作業室内内から作業者側に漏洩することを防止することができる。
【0006】
特許文献1に開示された安全キャビネットでは、作業者は安全キャビネットの正面に座り、前面シャッターの下方の作業開口部から作業室内作業室内に腕を挿入して作業を行うが、バイオ3Dプリンタなどの細胞製造用機械や搬送用機械などの装置を安全キャビネット内に設置して取り扱うことは考慮されていない。つまり、作業室内に装置を設置した場合の作業室内全体のダウンフロー風速について考慮されていない。
【0007】
本発明は、安全キャビネット内でバイオ3Dプリンタなどの細胞製造用機械や搬送用機械などの装置を設置した場合に、細胞や病原体等が汚染されることを防止する安全キャビネットを提供することを目的とする。
【0008】
また、細胞や病原体等が作業室内作業室内内から作業者側に漏洩することを防止することができる安全キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の「安全キャビネット」の一例を挙げるならば、前面シャッターの内側に形成された負圧状態を保持する作業室内と、前記作業室内の下面側、前記作業室内の側面側および前記作業室内の背面側と安全キャビネットの外側部分とから形成される循環流路とを備え、前記作業室内に装置を搭載する安全キャビネットにおいて、前記作業室内の上部よりも前記作業室内の下部が広い水平断面積となるように、仕切り板を有するものである。
【0010】
また、本発明の「安全キャビネット」の他の一例を挙げるならば、作業室内作業室内の前面の開口部と前面シャッターを有し、前記作業室内作業室内に上方から清浄空気を供給する安全キャビネットであって、装置を設置する作業台において、作業台下の排気循環流路につながる装置を設置する作業台の面の装置外周に沿って、排気用スリットを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業室内上側の左右側面と背面に仕切り板を設けることにより、作業室内の層流を保証できる高風速、例えば0.45m/s相当のダウンフロー気流を保持できる。
【0012】
また、作業室内前方上側に仕切りを備えることにより、作業室内の層流を保証できる高風速、例えば0.45m/s相当のダウンフロー気流を保持できる。
【0013】
また、装置の稼働による発塵を外部に漏らすことなく清浄度を確保でき、かつ、作業室内内から作業者側に漏洩することを防止する安全キャビネットを提供できる。
【0014】
さらに、前面シャッター作業室側内面の清浄空気と、作業室内前方上側の仕切りの内面の清浄空気の2層の清浄空気により、強力なエアバリアを形成することができ、装置の稼働や人の作業によるコンタミネーションを抑制できる。
【0015】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】実施例1の安全キャビネットの正面図である。
【
図1B】実施例1の安全キャビネットの断面図である。
【
図2A】実施例2の安全キャビネットの斜視図である。
【
図2B】実施例2の安全キャビネットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を説明する前に、安全キャビネットの気流の流れを説明する。
【0018】
図3Aに、安全キャビネットの概略正面図を示し、
図3Bに、
図3AのA-A’断面を左方より見た安全キャビネットの概略断面図を示す。
【0019】
安全キャビネットは、再生医療用や工業用等の各種キャビネットを含む。以下の説明では、医薬品の開発や病原体等の研究に用いる安全キャビネットとして、具体的に説明する。
【0020】
安全キャビネット100の内部に、前面を前面シャッター103で構成した作業室内102を配置している。作業室内102は、前面シャッターの内側に形成された負圧状態を保持する。前面シャッター103の下方に作業開口部104を形成し、作業者は、作業開口部104から作業室内102に腕を挿入し、前面シャッター103を通して作業室内102内を見ながら作業を行う。
【0021】
作業室内102の下面は作業台101からなり、作業台101の前面シャッター103側に前面スリット104aを配置している。安全キャビネットファン106を運転した場合、圧力チャンバ109を加圧する。圧力チャンバ109には、吹き出し用HEPAフィルタ111が接続され、圧力チャンバ109内の塵埃を吹き出し用HEPAフィルタ111でろ過し、清浄化した空気を吹き出し、吹き出し用整流板107で整流化した後、作業室内102内に吹き出し気流113として供給する。
【0022】
圧力チャンバ109には、上方に排気用HEPAフィルタ110も接続されている。圧力チャンバ109で加圧された空気は、排気用HEPAフィルタ110でろ過され、安全キャビネット排気口108を通り、排気空気114として安全キャビネット100から排気される。
【0023】
安全キャビネット100から排気される空気(排気空気114)と等しい量の空気(流入気流112)が前面シャッター103の下方の作業開口部104から、安全キャビネット100内に入る。その空気は、前面シャッター103の下方の作業開口部104に発生する流入気流112である。流入気流112は、作業室内102の吹き出し気流113の一部とともに、前面スリット104aに吸込まれる。この空気は作業台101の下方を通る。流入気流112は、作業室内102の前面シャッター103の反対面に形成した後部スリット105aから、吹き出し気流113の一部とともに吸込まれ、循環流路105を通り、安全キャビネットファン106に吸込まれる。循環流路105は、作業室内102の下面側、作業室内の側面側および作業室内の背面側と安全キャビネットの外側部分とから形成される。つまり、作業開口部104から吸い込まれた流入気流112を、作業台101下部(作業室内102の下面)、作業室内102の側面および背面と安全キャビネット100の本体部分とから構成される流路により、循環する。循環流路105を通る流入気流112は、安全キャビネットファン106に吸い込まれ、排気空気114として安全キャビネット100から排出される。
【0024】
作業室内102内では病原体等を含む塵埃、エアロゾルを取り扱っているため、循環流路105、圧力チャンバ109内にも、病原体等を含む塵埃、エアロゾルが存在する。この塵埃、エアロゾルは、作業室内102に空気を供給する際には吹き出し用HEPAフィルタ111により、安全キャビネット100から空気を排気する際には、排気用HEPAフィルタ110により、それぞれ除去される。
【0025】
作業者は安全キャビネット100の正面に座り、作業開口部104から作業室内102に腕を挿入し、前面シャッター103を通して作業室内102内を見ながら作業を行う。
【0026】
このような安全キャビネットにおいて、日本産業規格JIS K 3800-2009では、気流バランスの確認のための吹出し風速試験は、キャビネット内の撤去できる部品を撤去した後、規定の点において風速試験を実施する、とある。
【0027】
安全キャビネットなどの開放系システムでは、安全キャビネットの作業室内においてバイオ3Dプリンタなどの細胞製造用機械や搬送用機械などが設置されても、作業室内内ダウンフロー風速を一定値、例えば、0.45m/s±20%(0.36~0.54m/s)とすることが要求される。
【0028】
この要求を満足させることは、従来の安全キャビネットファン106だけでは、能力的に不足する。そのため、排気用送風機の追加、または、大容量の循環用送風機が必要となり、安全キャビネットを大型化させる要因となる。大型化した安全キャビネットは、既存の設置スペースに設置や設置スペースへの搬入が不可能となる場合がある。
【0029】
また、消費電力や騒音を増大させてしまうので、好ましくない。消費電力の増大は、脱酸素時代の要求にも合致するものではない。
【0030】
本実施例の安全キャビネットによれば、安全キャビネット内でバイオ3Dプリンタなどの細胞製造用機械や搬送用機械などの装置を設置した場合において、作業室内の層流を保証できる高風速のダウンフロー気流を保持できる。
【0031】
また、本実施例の安全キャビネットによれば、作業室内102内に設置される装置の設置個所の周辺部の清浄度を確保できる。
【0032】
また、本実施例の安全キャビネットによれば、作業室内から作業者側に漏洩することを防止することができる。
【0033】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0034】
図1A、
図1Bは、実施例1に係るバイオハザード対策用クラスIIキャビネットに相当する安全キャビネット100の構造例を示したものである。
図1Aは、その正面図である。
図1Bは、
図1Aに示した安全キャビネット100のA-A’断面を左方より見た断面図である。
【0035】
本実施例による安全キャビネットは、作業室内の前面の開口部と前面シャッターを有し、作業室内作業室内に上方から清浄空気を供給し、作業室内上側の左右側面と背面に仕切り板を設け、さらに作業室内前方上側に仕切りを備えるものである。
【0036】
図1Aに、本発明の実施例1の安全キャビネット100を示す。作業室内102内は、照明灯により作業に適した照度が維持されている。また、作業室内102の背面上部には、殺菌灯が装備されるのが一般的である。この殺菌灯は、作業前後の作業室内102の殺菌を、70%アルコール等での清拭による除染と合わせて補助的に使用される。
【0037】
安全キャビネット100の性能として、作業者が内部で取り扱っている細菌・ウイルスに感染しないことが極めて重要であるところ、この機能は、前面シャッター103により作業室内102と安全キャビネット100外との空気を隔離することによって得られる。
【0038】
実施例1の安全キャビネット100は、作業室内上側の左右に側面仕切り板130と背面仕切り板131を備えている。
【0039】
側面仕切り板130と背面仕切り板131は、吹き出し用整流板107の開口を抑制する形で付いており、吹き出し気流113の吹き出し部を制限する。それにより、従来の安全キャビネットファン106のままで、大幅な構造の変更無しで、吹き出し気流113の風速は早くなり、層流の目安となる風速0.45m/s±20%(0.36~0.54m/s)を保持できるようになる。
【0040】
側面仕切り板130と背面仕切り板131は、吹き出し用整流板107の150mm程度下方から外側へ傾斜している。この傾斜は、安全キャビネット100の作業室内の側面と側面仕切り板130と背面仕切り板131と角度120で当接する傾斜であり、30度~45度程度である。側面仕切り板130と背面仕切り板131の傾斜により、吹き出し気流113の巻き上げを最小とし、吹き出し気流113の淀みを抑えている。作業台101近辺では、側面仕切り板130も背面仕切り板131も無い構造とし、装置の設置スペースと作業スペースを確保している。
【0041】
作業台101に設置する装置は、様々な形状が考えられるので、側面仕切り板130と背面仕切り板131は上下スライド式として作業室内102の上部空間を調整できるようにし、設置する装置に合わせた形状にできるようにしてもよい。
【0042】
その場合、側面仕切り板130と背面仕切り板131は、100mm~200mm程度上下にスライドする構成とする。作業室内102に設置される機械によるが、より多く機械に対応することを考慮すると、50mm~300mmだけ上下ストロークできる構成とすることが望ましい。側面仕切り板130と背面仕切り板131が上下にスライドすることにより、装置で清浄度が必要な部分や作業域まで層流を保持したままのダウンフロー風速を維持できるようになり、清浄度を確保できるようになる。
【0043】
側面仕切り板130と背面仕切り板131を傾斜させ、上下にスライドする構成を説明したが、側面仕切り板130と背面仕切り板131の傾斜を調整する機構を設けても良い。また、側面仕切り板130と背面仕切り板131は、基本的に直線の仕切り版として説明したが、作業室内102に凸の曲線で構成しても良い。
【0044】
即ち、作業室内102の水平断面積に着目すると、側面仕切り板130と背面仕切り板131等の仕切り版により、作業室内102の上部(吹き出し用整流板107)付近が最も小さくなり、側面仕切り板130と背面仕切り板131が作業室内102の側面に当接する箇所まで、徐々に広くなるように構成する。
【0045】
また、作業室内前方上側の気流仕切り板132を設けることで、層流と高清浄度が必要な装置設置部に高風速な清浄空気を確保できる。
【0046】
実施例1の安全キャビネット100において、気流仕切り板132は、前面シャッター103から作業室内102の奥行方向へ所定距離、例えば、30mm~100mmのところに設置される。気流仕切り板132は、吹き出し用整流板107に当接し、作業室内102の下方に向かい、吹き出し用整流板107から下方向に長さ300mmの仕切り板であり、吹き出し用整流板107からの気流を、吹き出し気流113と前面シャッター裏面気流133とに仕切る。前面シャッター103の下端が作業台101から上方に200mmに位置するように前面シャッターを取り付ける。気流仕切り板132の下端は、前面シャッター103の下端より250mm上方に位置する。本実施例の安全キャビネットでは、作業台101から前面シャッター103の下端まで(距離A)、前面シャッター103の下端から気流仕切り板132の下端まで(距離B)、気流仕切り板の縦方向の長さ(距離C)は、それぞれ200mm、250mm、300mmである。距離A、距離B、距離Cは、4:5:6の比率で構成すると、風速の高まった気流仕切り板132の裏面気流のエアバリア効果を助長し、装置の搬送部の稼働や人の手作業によるコンタミネーションを抑制することができる。距離A、B、Cの比率は、作業室内102に設置される機械の大きさにより、±10~20%の範囲で調整することができる。
【0047】
また、気流仕切り板132により、前面シャッター103の作業室内102側の面の前面シャッター裏面気流133を上げることなく、従来の安全キャビネット相当の風速(0.30~0.40m/s)のままとする。これにより、安定した流入気流112によるエアバリアを維持でき、安全キャビネット並みの安定した気流封じ込め性能である気流バランス性能を維持することができる。前面シャッター裏面気流133の風速が強すぎると、作業者の腕に風速の強いダウンフロー気流が直接当たることにより、コンタミネーションを抑制することができない。気流仕切り板132を設けることにより、前面シャッター裏面気流133の風速を0.30~0.40m/sにすることができ、効果的にコンタミネーションの抑制をすることができる。
【0048】
また、0.60m/s程度の高風速な流入気流112と側面仕切り板130と背面仕切り板131で仕切られたことによる、作業室内102の風速0.45m/sの高いダウンフロー気流により、その間の前面シャッター裏面気流133を風速0.30~0.40m/sという周囲より低い風速に抑えることで、流入気流112と吹き出し気流113が気流仕切り板132の作業室内102側に当たることにより、コアンダー効果で風速の高まった気流仕切り板132の裏面気流のエアバリア効果を助長し、装置の搬送部の稼働や人の手作業によるコンタミネーションを抑制することができる。
【実施例2】
【0049】
図2A、
図2Bに、実施例2の安全キャビネットを示す。
図2Aは実施例2の安全キャビネットの斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示した安全キャビネット100のA-A’断面を上方より見た断面図である。
【0050】
実施例2の安全キャビネットの作業台101には、設置する装置の外周に合わせて排気循環流路134(
図1B参照)に貫通する作業台排気スリット135が複数設けてある。
【0051】
作業台排気スリット135は、安全キャビネット100の作業室内上側の左右側面と背面、作業開口部104の近く、即ち、作業台101に設置される装置の周辺部(作業台101の周辺部)に複数設けられる。
【0052】
作業台排気スリット135により、装置の搬送部が稼働したり、人が装置を操作したりすることにより発生した塵埃が、作業室内102に淀むことなく、排気循環流路134に排気され、排気用HEPAフィルタ110(
図3B参照)または吹き出し用HEPAフィルタ111(
図3B参照)により清浄化される。
【符号の説明】
【0053】
100 安全キャビネット
101 作業台
102 作業室内
103 前面シャッター
104 作業開口部
105 循環流路
106 安全キャビネットファン
107 吹き出し用整流板
108 排気口
109 圧力チャンバ
110 排気用HEPAフィルタ
111 吹き出し用HEPAフィルタ
112 流入気流
113 吹き出し気流
114 排気空気
130 側面仕切り板
131 背面仕切り板
132 気流仕切り板
133 前面シャッター裏面気流
134 排気循環流路
135 作業台排気スリット
【要約】
高い風速を保持した層流を維持でき、装置が稼働したり、人が装置を操作したりすることによるコンタミネーションを極力抑制することができる。
作業室内の前面の開口部と前面シャッターを有し、前記作業室内に上方から清浄空気を供給する安全キャビネットであって、作業室内上側の左右側面と背面に仕切り板を設け、さらに作業室内前方上側に仕切りを備える。