(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】光学式液滴検出器のコーティング
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20221219BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20221219BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20221219BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2021571862
(86)(22)【出願日】2019-06-08
(86)【国際出願番号】 US2019036186
(87)【国際公開番号】W WO2020251517
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】スパングラー,ジョーダン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,エリック,トーマス
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/166119(WO,A1)
【文献】特開2011-93155(JP,A)
【文献】特開2007-296670(JP,A)
【文献】特開2012-187274(JP,A)
【文献】特表2002-520606(JP,A)
【文献】特開2006-150637(JP,A)
【文献】特開2007-118264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - G01N 37/00
B05C 5/00 - B05C 21/00
B41J 2/00 - B41J 2/525
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷液の液滴を媒体上に分配するためのプリントヘッドであって、前記液滴が前記プリントヘッドから空中を通る液滴経路に沿って移動する、プリントヘッドと、
前記液滴経路を横切って光を放射する光源と、
前記光源から受け取った前記光の強度を検出するための検出器であって、前記液滴経路が前記光源から前記検出器までの光路と交差している、検出器と、
前記液滴経路と前記検出器との間において前記光路上に配置されたコーティングであって、前記コーティングが閾値量の前記光を吸収する、コーティングと
を含む、装置。
【請求項2】
前記コーティングは、前記検出器に直接付与されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コーティングは、前記光路と交差する均一な厚みを有している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コーティングによって吸収される前記光の前記閾値量は、前記厚みによって決定される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記コーティングは、特定のエネルギーを有する光を吸収する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記特定のエネルギーは、前記コーティングの全体に印加される電圧によって調整可能であり、
前記電圧によって、前記コーティングのバンドギャップが調節される。請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記特定のエネルギーは、前記コーティングの全体に印加される磁界によって調整可能であり、
前記磁界によって、前記コーティングのバンドギャップが調節される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
ノズルを介して印刷液の液滴を吐出し、前記液滴が、空中を通る液滴経路に沿って前記ノズルから受け皿まで移動し、
光源から光路に沿って検出器に光を放射し、前記光路が、前記液滴経路と交差しており、
前記光源からの前記光のうちの第1の部分を前記液滴経路上の前記液滴によって吸収し、
前記光源からの前記光のうちの第2の部分をコーティングによって吸収し、前記第2の部分が閾値量に限定されており、
前記検出器において前記光の強度を検出すること
を含む、方法。
【請求項9】
前記コーティングによって吸収される光の前記閾値量を調節することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値量を調節することは、前記コーティングの厚みを変えることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の部分を吸収することは、特定のエネルギーを有する光子を吸収することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記特定のエネルギーは、前記コーティングの全体に印加される電圧によって調整可能であり、
前記電圧によって、前記コーティングのバンドギャップが調節される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記特定のエネルギーは、前記コーティングの全体に印加される磁界によって調整可能であり、
前記磁界によって、前記コーティングのバンドギャップが調節される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
印刷液を受け取るための受け皿と、
媒体の上方の第1の位置から前記受け皿の上方の第2の位置まで移動する可動プリントヘッドと、
前記可動プリントヘッドに配置され、液滴経路を介して印刷液の液滴を前記受け皿に分配するノズルと、
前記液滴経路を横切って光を放射する光源と、
前記液滴が前記光源と検出器との間を移動するときに前記光源から受け取った前記光の強度を検出するための検出器と、
前記検出器に配置されたコーティングであって、閾値量の光を吸収するコーティングと
を含む、装置。
【請求項15】
前記コーティングが均一な厚みを有しており、前記コーティングによって吸収される前記光の前記閾値量が、前記均一な厚みによる、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
印刷装置は、情報の提示に使用されることが多い。特に、印刷装置は、ユーザが容易に取り扱い、閲覧し、すなわち読むことができる出力の生成に使用される場合がある。したがって、印刷装置による電子フォームからの出力の生成は、情報の提示及び処理に使用される。印刷装置によっては、印刷液を使用して出力を生成するものがある。そのような印刷装置では、印刷液は一般に、媒体に付与される。
【図面の簡単な説明】
【0002】
ここで、例としてのみ、以下の添付の図面を参照する。
【
図1】ノズルの状態を監視するための例示的装置を示す概略図である。
【
図2】ノズルの状態を監視するための別の例示的装置を示す概略図である。
【
図3】
図2に示した装置の例示的コントローラを示す概略図である。
【
図4A】薄いコーティングが付与された検出器を示す概略図である。
【
図4B】
図4Aに示した検出器の応答曲線を任意単位で示す図である。
【
図5A】厚いコーティングが付与された検出器を示す概略図である。
【
図5B】
図5Aに示した検出器の応答曲線を任意単位で示す図である。
【
図6】ノズルの状態を監視する方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
[詳細な説明]
一部の印刷装置は、流体を使用して出力を生成する。例えば、印刷装置は、文書、画像、又は三次元物体を生成する場合がある。そのような印刷装置では、一般に、流体供給システムを使用して、リザーバのような印刷装置の一部からプリントヘッドに液体を供給し、そこで流体は、ノズルを介して紙のような媒体に対して吐出され、画像を生成する。時間の経過とともに、ノズルの状態は劣化する。例えば、機械的劣化により、ノズルの状態は劣化して、応答性が低下したり、完全に動作しなくなったりする場合がある。他の例では、乾燥した印刷液及び/又は汚れのような堆積物のノズルの周りへの蓄積により、ノズルの状態は、劣化する可能性がある。
【0004】
プリントヘッド上のノズルの状態を監視及び/又は確認するために、印刷装置は、光学式液滴検出システムを使用する場合がある。そのようなプロセスの間、光学式液滴検出システムは、ノズルから液滴を分配し、又は吐出することができる。液滴は光線を通過できるため、検出器を使用して、光線を通過する印刷液の特性(例えば、印刷液の液滴の量、印刷液の液滴のサイズ及び形状、及び/又は印刷液の軌道)を判定し、それによって、ノズルの状態を推測することができる。例えば、液滴の相対密度が大幅に変化した場合、光線を通過する液滴の量は、検出器の信号レベルに小さな変化をもたらすことがある。したがって、吐出された液滴の量や液滴密度を正確に判定し、ノズルの状態の確認に使用することは、難しい場合がある。
【0005】
一般に、光学式液滴検出プロセスは、受け皿の上方で実行され、プリントヘッドの各ノズルは、液滴の小さなバーストを吐出する。例えば、正常なノズルは、約8個~20個の液滴、すなわち、約3~10ピコリットル(pL)を吐出できるのに対し、正常でないノズルは、テスト手順中に液滴を吐出しないか、又は数個の数滴しか吐出しない場合がある。
【0006】
以下に説明する例では、光子を吸収できるコーティングが、光学式液滴検出システムの検出器に付与される。このコーティングは、可飽和吸収現象を利用して、光学式液滴検出システムの信号対雑音比を向上させるのに使用することができる。したがって、特定の照度レベルに相当する特定量の光子を吸収するようにコーティングを調整することで、コーティングは、ノズルが正常であるとみなされるか否かを判定するために使用される閾値強度の付近における信号対雑音比を向上させることができる。
【0007】
本明細書で使用される場合、絶対的向き(例えば、「上」、「下」、「垂直」、「水平」など)を示唆する用語の使用は、例示の都合上のものであり、特定の図に示された向きを指している。ただし、これらの用語を、限定的な意味で解釈すべきではない。様々な構成要素は、実際には、図示説明されたものと同じ向きで使用されることも、異なる向きで使用されることも企図されているからである。
【0008】
図1を参照すると、ノズルの状態を監視するための装置の全体が、10で示されている。装置10は、印刷装置の一部であってもよいし、ノズルの状態を監視するために印刷装置上で動作し、若しくは印刷装置と共に動作する別個の構成要素であってもよい。例えば、装置10は、プリントヘッド上のノズルの状態を評価するために、プリントヘッドに近接して取り付けられる場合がある。装置10は、様々なコントローラのような追加のコンポーネント、及びユーザ若しくは管理者との間で情報をやりとりするための追加のインターフェース又はディスプレイを含む場合がある。他の例では、装置10は印刷装置と一体化され、インターフェースやコントローラが、印刷装置又は別の計算装置によって管理されるように構成される場合がある。さらに、いくつかの例では、装置10は、印刷処理中にノズルの状態を監視するために使用される場合がある。他の例では、装置10は、任意の媒体から離れた場所で使用される場合があり、例えば、廃棄物受け皿の中で使用される場合がある。この例では、装置10は、プリントヘッド15、光源20、検出器25、及びコーティング30を含む。
【0009】
プリントヘッド15は一般に、例えば印刷液の液滴を媒体上に分配する。プリントヘッド15が液滴を分配する態様は、制限されない。この例では、プリントヘッド15は、液滴がプリントヘッド15から空気中を液滴経路に沿って移動するように、圧力によって印刷液の液滴を吐出することができる。プリントヘッド15に提供される印刷液の供給源も、制限されない。例えば、プリントヘッド15は、タンク、リザーバ、又は他の印刷液源から印刷液を受け取ることができる。例えば、プリントヘッド15は、流体ラインを介して印刷液を吸引するためのモーター及び/又は真空吸引器を含む場合がある。他の例では、プリントヘッド15は、毛細管現象を利用して、印刷液を引き込むことができる。さらに別の例では、プリントヘッド15は、印刷液が重力によってプリントヘッド15に送達されるようなタンクを含む場合がある。いくつかの例では、プリントヘッド15は、印刷液の複数の供給源を含む場合があり、印刷液の各供給源が、異なる印刷液を提供できる場合がある。例えば、印刷装置は、黒、シアン、マゼンタ、及び黄色のような異なる色について、別個の印刷液のタンクを有する場合がある。各供給源からの印刷液は、プリントヘッド15上の異なるノズルに送られる場合がある。したがって、印刷動作中に、プリントヘッド15は、出力画像に応じて、異なる色の混合物を分配し、媒体上に堆積させることができる。
【0010】
いくつかの例では、プリントヘッド15は、コントローラやマイクロプロセッサのような様々な制御コンポーネントをさらに含む場合がある。コントローラやマイクロプロセッサは、印刷ジョブに対応する電気信号を受信することができる。次に、プリントヘッド15は、ノズルを調整して、印刷液を媒体上に分配し、画像や文書を生成することができる。上で説明したように、制御コンポーネントは、装置10の制御、及び/又は、プリントヘッド15上のノズルの状態を検出若しくは維持するための他のシステムの制御に使用される場合がある。
【0011】
光源20は、プリントヘッド15からの液滴が移動する液滴経路を横切って光を放射する。光源20は、特に制限されるものではなく、フィラメント光源であっても、発光ダイオードであっても、又はレーザーであってもよい。いくつかの例では、光源20は、液滴経路を横切る狭い光路を通るように光を集束させるための様々なミラー及び光学レンズを含む場合がある。特に、光源20からの光路は、光源20から検出器25までの任意の経路を含む。この例は、光源20から検出器25までの直線光路を示しているが、他の例は、異なる光路を有していてもよく、光源20と検出器25は、プリントヘッド15からもっと離れた異なる位置に配置されてもよい。例えば、ミラーやプリズムのような様々な光学部品を使用して、液滴経路と交差する光路を設計することができる。
【0012】
この例では、検出器25は、液滴経路及びコーティング30のような他の構成要素を通過した後に光源20から受け取った光の強度を検出する。光の強度の測定方法は、特に制限されない。例えば、検出器25は、フォトダイオードを含む場合があり、フォトダイオードの両端の電圧を使用して光の強度を測定することができる。他の例では、検出器25は、フォトレジスタや、他のタイプの光検知構成要素を含む場合がある。
【0013】
コーティング30は、液滴経路と検出器25との間の光路上に配置されている。したがって、光源20からの光は、まず液滴経路を通過し、次にコーティング30を通過することになる。この例では、コーティング30は、検出器25の窓に直接付与されてもよいし、又は検出器25の光検知要素に直接付与されてもよい。他の例では、コーティング30は、液滴経路と検出器25との間の光路上に配置された別個の基板に付与される場合がある。さらに別の例では、コーティング30は、コーティング30と同様の特性を有する基板で置換されてもよい。
【0014】
コーティング30の特性は、入射光の強度が閾値量を下回る場合、実質的にすべての光を吸収するものである。閾値量を超えると、コーティング30は、光がコーティング30を通過することを可能にする。例えば、コーティング30は、光の強度が増加するにつれて光の吸収が減少する可飽和吸収現象を示す場合がある。コーティング30を作成する材料は、特に制限されず、可飽和吸収特性を有する任意の材料であってよい。この例では、コーティング30はグラフェンを含む。ただし、他の例では、コーティング30は、GaAsのような半導体化合物、金ナノロッド、カーボンナノチューブ、量子ドット、及び一部の金属イオンのような、他の材料から作成される場合がある。
【0015】
プリントヘッド15によって分配される印刷液が比較的少量であるため、液滴経路を通過する光の強度の変化は、比較的小さいことがあることを理解されたい。したがって、周囲光の変動、機械的振動による光路の変化、熱膨張などにより、システムノイズが発生し、それが検出器25での測定の精度に悪影響を及ぼす可能性がある。この例では、コーティング30は、閾値量の光を吸収すると、液滴経路における液滴の密度の変化に応じて、実質的に二値応答を検出器25に提供するように較正されている。例えば、コーティング30によって吸収される光の閾値は、プリントヘッド15の正常なノズルが液滴を分配しているときに液滴経路を通過する光の強度のすぐ上であるが、液滴が存在しないときに液滴経路を通過する光の強度よりは低くなるように較正される場合がある。したがって、プリントヘッド15の正常なノズルが液滴を分配しているときは、光源20からの光はコーティングによって吸収され、検出器25に実質的に信号は生成されないことになる。液滴密度が所定の大きさを下回ると、液滴経路を通過する光源20からの光の量は増え、したがってコーティング30の光の閾値量を超えて増加する。そして、コーティング30に到達する光の強度が閾値量を超えると、光がコーティング30を通過して検出器25に到達し始め、実質的に二値応答が生成されることになる。
【0016】
この例では、コーティング30は、特定のバンドギャップ内で可飽和吸収現象を示し、特定のエネルギー(すなわち、波長)を有する光を吸収することができる。光を特定の波長に制限することによって、信号対雑音比のさらなる向上を達成することができる。例えば、光源20は単色光源であってもよく、検出器25は、検出器25が狭い範囲のエネルギーを有する光子に応答するようなフィルタを含む場合がある。さらに、グラフェンのような一部の材料の場合、コーティング30が可飽和吸収を示すバンドギャップを調整することで、特定のエネルギーを有する光子を放射する広く様々な光源に適応することができる。コーティング30のバンドギャップを調整する方法は、特に制限されない。例えば、バンドギャップは、コーティングの全体に電圧を印加し、その電圧を調節することによって調整することができる。他の例では、コーティング30のバンドギャップは、コーティングの全体に磁界を印加することによって調整する場合もある。
【0017】
図2を参照すると、ノズルの状態を監視するための別の装置の全体が、10aで示されている。装置10aの同様の構成要素には、添え字「a」が後ろに付加される点を除き、装置10の対応する部材と同様の参照符号が付されている。装置10aは、印刷装置の一部であってもよいし、又は別個の構成要素であってもよい。この例では、装置10aは、可動プリントヘッド15a、複数のノズル17a-1、17a-2、17a-3(一般に、これらのノズルは、本明細書では「ノズル17a」と呼ばれ、これらは包括的に「ノズル17a」と呼ばれる。この命名法は、この説明の他の場所でも使用される)、光源20a、検出器25a、コーティング30a、受け皿35a、及びコントローラ100を含む。
【0018】
可動プリントヘッド15aは、ノズル17aを収容しており、紙のような媒体の上方の位置から、ノズル17aの状態を監視できる受け皿35aの上方の位置まで移動するように構成されている。可動プリントヘッド15aが移動する態様は、特に制限されない。例えば、可動プリントヘッド15aは、モーターを使用してレールに沿って移動することができる。例えば、受け皿35aは、印刷装置の端部に配置されてもよく、ローラーを使用して、媒体が可動プリントヘッド15aに対して移動されてもよい。したがって、可動プリントヘッド15aは、印刷ジョブと印刷ジョブの間に、ノズル17aの状態を監視するために、印刷装置の端部まで移動される場合がある。この例では、受け皿35aは、ノズル17aの状態を判定するための試験中に印刷液を受け取り、その後、試験に使用された印刷液を捨てるように構成されている。受け皿35aは、廃印刷液を受け取ることができる任意の容器又は材料であってよい。例えば、受け皿は、基板、織物、又は容器であってもよい。
【0019】
ノズル17aは、可動プリントヘッド15aに配置され、ノズル17aの状態を監視するときに、印刷液の液滴50を受け皿35aに分配するように構成されている。ノズル17aが液滴50を分配する態様は、制限されない。この例では、ノズル17aは、圧力によって印刷液の液滴50を吐出することができ、その結果、液滴50は、液滴経路に沿って移動することになり、例えば
図2に示されるようにノズル17a-2から受け皿35aまで空中を移動することになる。
【0020】
光源20aは、ノズル17aからの液滴経路を横切って光を放射する。光源20aは、特に制限されるものではなく、フィラメント光源であっても、発光ダイオードであっても、又はレーザーであってもよい。いくつかの例では、光源20aは、液滴経路を横切って移動するように光を集束させるための様々なミラー及び光学レンズを含む場合がある。
【0021】
この例では、検出器25aは、液滴50が光源20aと検出器25aとの間を移動するときに、光源20aから受け取った光の強度を検出する。光の強度の測定方法は、特に制限されない。例えば、検出器25aは、フォトダイオードを含む場合があり、フォトダイオードの両端の電圧を使用して光の強度を測定することができる。図示のように、光源20aからの光の強度は、光が液滴50を通過する際に減少する。例えば、液滴50は、光源20aからの光の一部を吸収する場合がある。他の例では、液滴50は、光源20aからの光の一部を検出器から遠ざかるように反射する場合もある。
【0022】
コーティング30aは、検出器25aに、光源20aの側に配置されている。したがって、光源20aからの光は、液滴50を通過した後、検出器25aの感光性エレメントに到達する前に、コーティング30aを通過することになる。
【0023】
この例では、コーティング30aは、閾値量の光を吸収する。閾値量の光を吸収した後、コーティング30aは、光がコーティング30aを通過して検出器25aの感光性エレメントに到達することを可能にする。この例では、コーティング30aは、検出器25aの全体にわたって均一な厚みを有している。この例では、コーティング30aによって吸収される光の閾値量は、検出器25aに堆積されたコーティング30aの厚みによる場合がある。したがって、コーティング30aは、コーティング30aの厚みを調節することによって較正することができる。
【0024】
図3を参照すると、コントローラ100がさらに詳細に示されている。この例では、コントローラ100は、可動プリントヘッド15a、光源20a、及び検出器25aと通信している。他の例では、コントローラ100は、もっと少ない構成要素と通信していてもよく、例えば、ノズル17aの状態を監視するために、検出器25aのみと通信している場合がある。この例では、コントローラ100は、通信インターフェース105、メモリストレージユニット110、プリントヘッドコントローラ115、及びノズル評価エンジン120を含む。
【0025】
通信インターフェース105は、外部装置と通信して、コマンド又は他のデータを送受信するように構成されている。この例では、外部装置は、印刷装置であってもよいし、ノズル17aの状態を監視するための他の装置であってもよい。他の例では、例えば印刷装置が遠隔的に管理される例では、通信インターフェース105は、サーバーと通信して、状態データをサーバーに提供する場合がある。通信インターフェース105がデータを送受信する態様は制限されず、例えば、有線接続を介して電気信号を送受信することが挙げられる。例えば、装置10aがオンボード診断システムの一部のような印刷装置の一部である例では、通信インターフェース105は、印刷装置に接続される場合がある。他の例では、通信インターフェース105は、例えばBluetooth(登録商標)接続を介して無線信号を送受信したり、スキャニングデバイスから赤外線信号や無線信号を送受信したりする場合がある。さらに別の例では、通信インターフェース105は、ローカルエリアネットワークやインターネットを介して通信するためのネットワークインターフェースであってもよく、通信インターフェース105はリモートサーバーと通信する場合がある。
【0026】
メモリストレージユニット110は、非一時的機械読み取り可能記憶媒体を含む場合があり、これは、任意の電子的、磁気的、光学的、又は他の物理的記憶装置であってよい。この例では、メモリストレージユニット110にオペレーティングシステムが記憶される場合があり、これを実行することで、装置10aに一般的機能を提供することができる。例えば、様々なアプリケーションをサポートするためである。オペレーティングシステムの例としては、Windows(登録商標)、macOS(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)、Linux(登録商標)、及びUnix(登録商標)が挙げられる。メモリストレージユニット110には、可動プリントヘッド15a、光源20a、及び検出器25aを操作するためにプリントヘッドコントローラ115によって実行可能な種々の命令がさらに記憶される場合があり、また、例えば通信インターフェース105や様々な入出力装置(図示せず)のような装置10aの他の構成要素又は他の装置と通信するために、ハードウェアドライバが記憶される場合がある。
【0027】
この例では、メモリストレージユニット110は、ノズル17aの状態データを記憶するためのデータベースをさらに保持する場合がある。この例では、メモリストレージユニット110は、検出器25aからのデータの処理の後、ノズル評価エンジン120から、ノズル17aの状態データを受信することができる。この例では、各ノズル17aに識別子が関連付けられており、ノズル評価エンジン120は、各ノズル17aに対して、合格又は不合格を割り当てることができる。結果は、管理者による読み出しに備えて、若しくは通信インターフェース105を介した外部装置へのその後の伝送に備えて、メモリストレージユニット110に記憶される場合がある。
【0028】
プリントヘッドコントローラ115は、可動プリントヘッド15aを制御する。この例では、プリントヘッドコントローラ115は、光源20aを制御することで、ノズル17a-2からの液滴50の分配に光パルスのタイミングを合わせることもできる。いくつかの例では、プリントヘッドコントローラ115が光源20aと通信する必要がないように、光源20aの電源は、継続的にオンにされている場合があることを理解されたい。また、プリントヘッドコントローラ115は、印刷装置内における可動プリントヘッド15aの移動にも使用される場合がある。例えば、プリントヘッドコントローラ115は、可動プリントヘッド15aを受け皿35aの上方に位置決めするために使用される場合がある。他の例では、プリントヘッドコントローラ115は、通常の印刷動作中にプリントヘッドの制御に使用されるものと同じコントローラであってもよい。
【0029】
ノズル評価エンジン120は、ノズル17aの状態が満足なものであるか否かを判定する。ノズル17aの状態が所定の基準を満たす場合、ノズル評価エンジン120は、ノズル17aを合格と判定し、その結果をメモリストレージユニット110に書き込む。ノズル17aの状態が所定の基準を満たさない場合、ノズル評価エンジン120は、ノズル17aを不合格と判定し、その結果をメモリストレージユニット110に書き込む場合がある。いくつかの例では、ノズル17aの故障により、追加のアクションが発動される場合もある。例えば、可動プリントヘッド15aが、故障したノズル17aのバックアップとしての働きをする別のノズルをさらに含む場合、ノズル評価エンジン120は、プリントヘッドコントローラ115に、バックアップノズルの使用を開始するように指示する場合がある。他の例では、印刷装置でエラーコードが生成される場合、及び/又は、ノズル17aが修理されるまですべての印刷動作が停止される場合がある。別の例では、ノズル17aが正常でないと判定された場合、印刷装置は、プリントヘッド15aのクリーニングや拭き取り、あるいはノズル17aの整備吐出の実施のような、種々の整備ルーチンを実行する場合がある。
【0030】
ノズル評価エンジン120がノズル17aの合格又は不合格を判定する態様は、特に制限されない。この例では、ノズル評価エンジン120は、検出器25aから信号を受信して、測定された光の強度が所定の閾値を上回っているか下回っているかを示すことができる。コーティング30aは、閾値を下回る信号を実質的に提供しないため、この閾値は、比較的少量の受信信号に設定される場合がある。したがって、液滴50の密度が非常に低くなると、検出器25aは有意な信号を測定することになる。
【0031】
図4A~
図4B及び
図5A~
図5Bを参照すると、
図4Aのコーティング30aと
図5Aのコーティング30bとの間の検出器25bの応答作用が、
図4B及び
図5Bにそれぞれ、同じ任意単位を使用して示されている。図示のように、コーティング30bは、コーティング30cよりも薄い。そのため、コーティング30bで吸収できる光の閾値量は、コーティング30cで吸収できる光の閾値量よりも低くなるであろう。コーティング30cはコーティング30bよりも多くの光子を吸収することができるため、応答曲線の屈曲部は、右にシフトしている。したがって、ノズル17aを合格又は不合格と判定できる閾値液滴密度は、コーティングの厚みを調節することによって較正できると理解するべきである。
【0032】
図6を参照すると、ノズルの状態を監視する方法のフロー図が、200で示されている。方法200の説明を助けるために、方法200が、装置10aを用いて実施されてもよいものと仮定する。実際、方法200は、装置10aが使用される1つの方法であってもよく、方法200の以下の説明は、様々な構成要素を有する装置10aのさらなる理解につながる場合がある。
【0033】
ブロック210から開始して、ノズル17a-2は、印刷液の液滴50を吐出し、液滴50は液滴経路に沿って受け皿35aに向かって移動する。ノズル17a-2が液滴50を吐出する態様は、特に制限されない。この例では、可動プリントヘッド15aがノズル17a-2を制御して圧力によって液滴50を吐出することができ、それによって液滴50は空中を受け皿35aまで移動する。ノズル17a-2に供給される印刷液の供給源も、制限されない。例えば、ノズル17a-2は、タンク、リザーバ、又は他の印刷液供給源から可動プリントヘッド15aを介して印刷液を受け取ることができる。ノズル17a-2に圧力を生成するために、可動プリントヘッド15aは、 サーマルインクジェット機構又はピエゾインクジェット機構を使用して、印刷液を、ノズル17a-2を通して押し出す。他の例では、モーター又はポンプを使用して印刷液を加圧してもよい。いくつかの例では、可動プリントヘッド15aは、複数の供給源から印刷液を受け取ることができ、印刷液の各供給源が、異なる印刷液を提供する場合がある。例えば、可動プリントヘッド15aは、シアン、マゼンタ、及び黄色のような異なる色について、別個の印刷液のタンクを有する場合がある。各供給源からの印刷液は、ノズル17a-1、ノズル17a-2、及びノズル17a-3にそれぞれ送られる場合がある。したがって、印刷動作中に、可動プリントヘッド15aは、異なる色の混合物を分配し、媒体上に堆積させることにより、出力画像を生成することができる。したがって、ノズル17a-1、ノズル17a-2、及びノズル17a-3の各々は、それらの状態を判定するために、個別に試験される場合がある。
【0034】
次に、ブロック220で、光源20aは、検出器25aに入る前に液滴50の液滴経路と交差する光路に沿って光を放射する。光源20aから検出器25aまで光が進む態様は制限されず、光の方向を変えるためのミラーやプリズムのような光学部品を含んでいてもよい。
【0035】
ブロック230は、光が液滴50を通って光源20aから検出器25aへ進む際に、光の一部を吸収することを含む。光を吸収する態様は、特に制限されない。この例では、印刷液は、光源20aからの光に対して不透明である場合がある。したがって、光が液滴50を通過するときに、液滴は、光源20aからの光の一部を吸収することになる。一般に、液滴50の密度は比較的小さいため、ノズル17aが正常である場合、光の大部分は通過することができる。上限の液滴の吐出は、高い液滴密度であることを意味する。ノズル17aが正常でない場合、液滴密度は低下する可能性があり、光源20aからのより多くの光が通過することになることを理解されたい。したがって、吸収される光の部分は、正常なノズル17aの方が多く、正常でないノズル17aの方が少なくなる。
【0036】
ブロック240は、コーティング30aを使用して光の別の部分を吸収することを含む。この例では、コーティング30aは、閾値量未満の光を吸収することができる。したがって、コーティング30aに入射する光の量が閾値量を下回ると、コーティング30aは、残りの光の実質的にすべてを吸収することになり、検出器25aの感光性エレメントに実質的に光が到達しないことになる。したがって、検出器25aは、正常なノズルを示す信号をコントローラ100に提供しなくなる。あるいは、コーティング30aに入射する光の量が閾値量を超えた場合、コーティング30aは、コーティング30aに入射する光子の一部を閾値量まで吸収する。その後、余分な光子は、コーティング30aを通過して、検出器25aの感光性エレメントに到達することになる。したがって、検出器25aは、光が検出されたこと、及びノズル17aが正常でないことを示す信号を、コントローラ100に提供する。
【0037】
いくつかの例では、コーティング30aによって吸収される光の閾値量を調節することにより、コーティング30aを較正できることを理解されたい。例えば、複数の層を用いることにより、コーティング30aの厚みを変えることができる。コーティング30aがグラフェンであるこの例では、コーティング30aに種々の層を追加することにより、より多くの光子を吸収することができる。さらに、コーティング30aは、特定のバンドギャップ内で特定のエネルギーを有する光子を吸収することができることを理解されたい。いくつかの例では、コーティング30aの全体に電圧を印加するか、又はコーティング30aに磁界を印加することによって、バンドギャップを調節することができる。
【0038】
ブロック250で、検出器25aは、感光性エレメントに入射する光の量を検出する。光の強度を測定する態様は、特に制限されない。例えば、検出器25aの感光性エレメントは、フォトダイオード又はフォトレジスタを含む場合がある。この例では、検出器の応答から、感光性エレメントに測定可能な光があるか否かを判定することで、二値応答を得る。他の例では、検出器25aは、合格又は不合格の二値応答の代わりに、測定値をコントローラ100に提供する場合がある。
【0039】
上に提供した様々な例の特徴及び態様は、本開示の範囲内に同様に含まれるさらなる例と組み合わされてもよいことを認識されたい。