(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】圧延機及び金属板の圧延方法
(51)【国際特許分類】
B21B 31/18 20060101AFI20221219BHJP
B21B 13/14 20060101ALI20221219BHJP
B21B 27/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B21B31/18 Z
B21B13/14 G
B21B13/14 Z
B21B27/06
(21)【出願番号】P 2021573682
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003115
(87)【国際公開番号】W WO2021152716
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 優太
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-367308(JP,A)
【文献】特開2013-226573(JP,A)
【文献】特開2005-052864(JP,A)
【文献】実開昭61-046001(JP,U)
【文献】特開2002-066608(JP,A)
【文献】特開平08-132115(JP,A)
【文献】特開平08-267114(JP,A)
【文献】特開平06-154805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向にシフト可能であり、前記軸方向の端部にテーパ部を有し、かつ、金属板を圧延するためのロールを備えた圧延機であって、
前記軸方向における前記テーパ部
の一部の領域を加熱して、前記テーパ部
の前記領域において径方向に突出する膨張部を形成するように構成された加熱部を備える圧延機。
【請求項2】
前記加熱部は、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームの少なくとも1つにより前記テーパ部を加熱するように構成された
請求項1に記載の圧延機。
【請求項3】
軸方向にシフト可能であり、前記軸方向の端部にテーパ部を有し、かつ、金属板を圧延するためのロールを備えた圧延機であって、
前記テーパ部を加熱して、前記テーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するように構成された加熱部を備え、
前記加熱部は、電磁誘導コイルと、前記電磁誘導コイルにより生成される磁束が流れる磁路を制限するための電磁シールドと、を含
む
圧延機。
【請求項4】
前記加熱部は、前記金属板の板幅方向における端よりも前記板幅方向における内側に前記膨張部を形成するように構成された
請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧延機。
【請求項5】
前記加熱部を前記軸方向に沿って動かすことにより、前記加熱部による前記軸方向における前記テーパ部の加熱位置を変更可能に構成された加熱制御部を備える
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧延機。
【請求項6】
前記金属板の板幅方向における板端位置を検出するように構成された板端検出部と、
検出された前記板端位置に基づいて、前記加熱部による前記軸方向における前記テーパ部の加熱位置を決定するように構成された加熱制御部と、を備える
請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧延機。
【請求項7】
前記板端検出部は、前記金属板の進行方向において前記ロールの入側に設けられた
請求項6に記載の圧延機。
【請求項8】
前記板端検出部は、前記金属板の進行方向において前記ロールの出側に設けられた
請求項6に記載の圧延機。
【請求項9】
前記金属板を圧延するためのロールをそれぞれ含む複数の圧延スタンドを備え、
前記複数の圧延スタンドの少なくとも1つに前記加熱部が設けられ、
前記板端検出部は、前記複数の圧延スタンドのうち前記金属板の進行方向において隣り合う2つの圧延スタンドの間に設けられた
請求項6乃至8の何れか一項に記載の圧延機。
【請求項10】
前記金属板の板幅方向の端部における厚さに関するパラメータを検出するように構成された板厚検出部と、
検出された前記パラメータに基づいて、前記ロールの前記軸方向におけるシフト量を決定するように構成されたロール制御部と、を備える
請求項1乃至9の何れか一項に記載の圧延機。
【請求項11】
軸方向の端部にテーパ部を有するロールを用いて金属板を圧延し、前記ロールを前記軸方向にシフトさせる金属板の圧延方法であって、
前記軸方向における前記テーパ部
の一部の領域を加熱して前記テーパ部
の前記領域において径方向に突出する膨張部を形成するステップを備える
金属板の圧延方法。
【請求項12】
前記膨張部を形成するステップでは、前記金属板の板幅方向における端よりも前記板幅方向における内側に前記膨張部を形成する
請求項11に記載の金属板の圧延方法。
【請求項13】
前記金属板の板幅方向における板端位置を検出するステップと、
検出された前記板端位置に基づいて、前記軸方向における前記テーパ部の加熱位置を決定するステップと、を備える
請求項11又は12に記載の金属板の圧延方法。
【請求項14】
前記テーパ部を加熱するための加熱部を前記軸方向に沿って動かすことにより、前記加熱位置を変更するステップを備える
請求項11乃至13の何れか一項に記載の金属板の圧延方法。
【請求項15】
前記金属板の板幅方向の端部における厚さに関するパラメータを検出するステップと、
検出された前記パラメータに基づいて、前記ロールの前記軸方向におけるシフト量を決定するステップと、を備える
請求項11乃至14の何れか一項に記載の金属板の圧延方法。
【請求項16】
軸方向の端部にテーパ部を有するロールを用いて金属板を圧延し、前記ロールを前記軸方向にシフトさせる金属板の圧延方法であって、
電磁誘導コイルと、前記電磁誘導コイルにより生成される磁束が流れる磁路を制限するための電磁シールドと、を含む加熱部を用いて、前記テーパ部を加熱して前記テーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するステップを備える
金属板の圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延機及び金属板の圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延機による金属板の圧延においては、圧延条件によって、板幅方向端部の板厚が他の部分に比べて薄くなる現象、いわゆるエッジドロップが生じることがある。エッジドロップの発生は歩留まりの低下につながり得るため、エッジドロップを抑制するための工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧延機の作業ロール(ワークロール)の端部にテーパ部を設け、作業ロールを軸方向にシフトさせて、テーパ部に圧延材の幅方向端部を位置させて圧延を行うことで、エッジドロップを抑制できることが記載されている。また、特許文献1には、圧延材の板幅方向端部を加熱又は冷却することにより、エッジドロップ等を抑制して、圧延材の断面プロファイルを平坦なものとすることが記載されている。
【0004】
特許文献2はエッジドロップの抑制を目的とするものではないが、特許文献2には、ワークロールの端部のうち鋼板(圧延材)端部と接触する領域を加熱して膨張部を形成することにより、冷間圧延時に鋼板端部の圧下率を増加させることで、耳割れ発生を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-170508号公報
【文献】特許第6152837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、軸方向端部にテーパ部を有するワークロールの軸方向におけるシフト量を大きくすることで、ロール間ギャップを調整できる軸方向範囲(又は板幅方向範囲)が広くなるため、より精度良くエッジドロップを制御することができると考えられる。一方、ワークロールのシフト量を大きくすると、ロール間ギャップが大きくなる軸方向位置にて局所的に板厚が大きくなる現象(エッジアップ)が生じやすくなり、この場合、圧延方向(圧延材の進行方向)における張力が板幅方向端部にて急峻に変化(エッジタイト)して板切れを起こす場合がある。
【0007】
この点、特許文献1に記載される圧延機では、上述のエッジアップや、エッジタイトによる板切れを抑制することについて考慮されていないため、ワークロールのシフト量を大きくとることが難しい。このため、エッジドロップの抑制効果は限定的である。また、特許文献2に記載される圧延機では、ワークロールの端部に膨張部を設けることにより、圧延材における耳割れの発生が抑制される一方で、エッジドロップの発生は助長されると考えられる。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、エッジドロップを効果的に抑制可能な圧延機及び金属板の圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機は、
金属板を圧延するためのロールであって、軸方向にシフト可能であり、かつ、前記軸方向の端部にテーパ部を有するロールと、
前記テーパ部を加熱して、前記テーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するように構成された加熱部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、エッジドロップを効果的に抑制可能な圧延機及び金属板の圧延方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る圧延機の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す圧延スタンドを金属板の搬送方向に視た図である。
【
図3】一実施形態に係る圧延機の概略構成図である。
【
図4】一実施形態に係る圧延機のワークロールの端部近傍を模式的に示す図である。
【
図5】一実施形態に係る圧延機の制御装置の概略構成図である。
【
図6】一実施形態に係る圧延機におけるエッジドロップの制御について説明するための模式図である。
【
図7】一実施形態に係るワークロールのシフトの制御の一例のフローチャートである。
【
図8】一実施形態に係る加熱部による加熱位置の制御の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1及び
図3は、それぞれ、一実施形態に係る圧延機の概略構成図である。
図2は、
図1に示す圧延スタンドを金属板の搬送方向にて下流側から上流側に視た図である。
図4は、一実施形態に係る圧延機のワークロールの端部近傍を模式的に示す図である。
図5は、一実施形態に係る圧延機の制御装置の概略構成図である。
【0014】
図1及び
図3に示すように、圧延機1は、少なくとも1つの圧延スタンド10を含む。圧延スタンド10は、圧延材である金属板50を挟むように設けられる一対のワークロール12A,12Bと、一対の中間ロール18A,18Bと、一対のバックアップロール22A,22Bと、を備えている。また、圧延スタンド10は、一対のワークロール12A,12Bに荷重を加えて金属板50を圧下するための圧下装置(不図示;例えば油圧シリンダ)を備えている。
【0015】
図2に示すように、一対のワークロール12A,12Bは、それぞれ、軸受箱16a,16bに収容される軸受(不図示)によって回転可能に支持される。一対の中間ロール18A,18Bは、それぞれ、軸受箱20a,20bに収容される軸受(不図示)によって回転可能に支持される。一対のバックアップロール22A,22Bは、それぞれ、軸受箱24a,24bに収容される軸受(不図示)によって回転可能に支持される。中間ロール18A,18B及びバックアップロール22A,22Bは、ワークロール12A,12Bを支持するように構成されている。
【0016】
ワークロール12A,12Bには、スピンドル(不図示)等を介してモータ(不図示)が接続されており、ワークロール12A,12Bは、モータによって回転駆動されるようになっている。金属板50の圧延時には、圧下装置で金属板50を圧下しながらモータによりワークロール12A,12Bを回転させることで、ワークロール12A,12Bと金属板50との間に摩擦力が生じ、この摩擦力によって金属板50がワークロール12A,12Bの出側へと送られるようになっている。
【0017】
図3に示すように、圧延機1は、複数の圧延スタンド10を備えていてもよい。
図3に示す例示的な実施形態では、圧延機1は、金属板50の搬送方向に沿って間隔を空けて配置された複数の圧延スタンド10A~10Dを備えている。この圧延機1では、金属板50は、圧延スタンド10A~10Dで順次圧延されるようになっている。
【0018】
幾つかの実施形態に係るワークロール12A,12Bは、軸方向にシフト可能に構成されている。幾つかの実施形態では、圧延機1は、ワークロール12A、12Bを軸方向にシフトさせるように構成されたロール駆動部26を有する。
図1~
図3に示す例示的な実施形態では、ワークロール12A,12Bに対して、ロール駆動部26A,26Bとしてのシフトシリンダがそれぞれ設けられており、シフトシリンダを駆動することにより、ワークロール12A,12Bを軸方向に沿って動かすことが可能になっている。
【0019】
図2に示すように、幾つかの実施形態に係るワークロール12A,12Bは、軸方向の端部13に設けられたテーパ部14を有する。テーパ部14は、ワークロール12A,12Bの軸方向端に近づくに従い先細る形状を有している。幾つかの実施形態では、
図2に示すように、一対のワークロール12A,12Bのうち、一方のワークロール12Aの一方側の端部にテーパ部14が設けられるとともに、他方のワークロール12Bの反対側の端部にテーパ部14が設けられていてもよい。あるいは、幾つかの実施形態では、一対のワークロール12A,12Bの各々の両端部にテーパ部14が設けられていてもよい。
【0020】
幾つかの実施形態において、圧延スタンド10には、テーパ部14を加熱するための加熱部30(30A,30B)が設けられている。加熱部30は、ワークロール12(12A,12B)のテーパ部14に、径方向に突出する膨張部15(
図4参照)を形成するように構成される。
【0021】
なお、
図4は、ワークロール12の軸方向におけるワークロール12、加熱部30及び金属板50の位置関係を示す模式図であり、圧延スタンド10を特定の方向から視た図ではない。ただし、金属板50については、金属板50の進行方向に直交する断面が示されている。
【0022】
加熱部30は、テーパ部14の近傍に設置され、軸方向におけるテーパ部14の一部の領域を加熱するように構成される。ワークロール12が回転すると、加熱部30によってテーパ部14の上述の領域が円周状に加熱され、その結果、該領域においてワークロール12の熱膨張により径方向に突出する円周状の膨張部15が形成される。
【0023】
なお、
図1~
図3において、加熱部30は、金属板50の進行方向においてワークロール12の下流側に位置しているが、幾つかの実施形態では、加熱部30はワークロール12の上流側に位置していてもよい。
【0024】
ここで、
図4において、符号52’は、ワークロール12のテーパ部14に膨張部15が形成されていない状態で圧延したと仮定したときの金属板50の表面の形状を示す。また、
図4において、直線L1は、金属板50の板幅方向中央部の規定位置における表面52の位置を示し、直線L2は、板幅方向における金属板50の板端54の位置を示し、直線L3は、板幅方向におけるエッジドロップ量又はエッジアップ量の計測位置(板端部の位置)を示す(後述する
図6においても同様である)。
【0025】
なお、金属板50のエッジドロップ量又はエッジアップ量は、金属板50の板幅方向中央部の規定位置における板厚と、上述の計測位置における板厚の差として算出することができる。上述の規定位置及び計測位置は、例えば板端54から規定距離の位置として定義することができる。一例では、上述の規定位置は、板端54からの板幅方向の距離が115mmの位置であり、上述の計測位置は、板端54からの板幅方向の距離が15mmの位置である。
【0026】
従来、軸方向の端部にテーパ部を設けたワークロールを軸方向にシフトさせて、テーパ部に圧延材の幅方向端部を位置させて圧延を行うことで、エッジドロップを抑制できることが知られている。そして、テーパ部を有するワークロールの軸方向におけるシフト量を大きくすることで、一対のワークロール12間のギャップ(ロール間ギャップ)を調整できる軸方向範囲(又は板幅方向範囲)が広くなるため、より精度良くエッジドロップを制御することができると考えられる。一方、目標のエッジアップ量U
A(
図4参照)を達成すべく、ワークロールのシフト量を大きくすると、例えば
図4中の符号52’で示すように、ロール間ギャップが大きくなる軸方向位置にて局所的に板厚が大きくなりやすく、この場合、圧延方向(金属板50の進行方向)における張力が板幅方向端部にて急峻に変化(エッジタイト)して板切れを起こす場合がある。
【0027】
これに対し、上述の実施形態に係る圧延機1によれば、加熱部30によりワークロール12の端部13に設けられたテーパ部14に径方向に突出する膨張部15を形成するようにしたので、
図4に示すように、金属板50の表面形状は符号52で示す形となり、膨張部15により金属板50の板幅方向の端部13の板厚の局所的な増大が抑制される。これにより、金属板50の端部13における張力の急激な変化(エッジタイト)を抑制し、端部13における板切れを抑制することができるので、ワークロール12のシフト量を増大させることができ、エッジアップ量を目標値U
Aに近付けやすくなる。よって、金属板50の圧延において発生し得るエッジドロップを適切に制御して効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、加熱部30は、軸方向に沿って移動可能に構成されている。幾つかの実施形態では、圧延機1は、加熱部30を軸方向に沿って動かすように構成された加熱部駆動部(不図示)を有する。この場合、ワークロール12の軸方向において加熱部30を移動させることで、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を変更することができる。よって、該加熱位置を適切に調節することで、金属板50に生じ得るエッジタイトを効果的に抑制することができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、例えば
図4に示すように、加熱部30は、金属板50の板幅方向における板端54よりも板幅方向における内側に膨張部15を形成するように構成される。なお、本明細書において、板幅方向において金属板50の板端54から中央に向かう方向を板幅方向の内側の向きとし、板幅方向において金属板50の中央から板端54に向かう方向を板幅方向の外側の向きとする。
【0030】
上述の実施形態によれば、テーパ部14のうち、金属板50の板幅方向の板端54の位置(板端位置)よりも内側の部位に膨張部15を形成するようにしたので、板端54よりも内側の位置で発生しやすいエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ワークロール12のシフト量を増大させることができ、金属板50の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、加熱部30は、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームの少なくとも1つによりテーパ部14を加熱するように構成される。
【0032】
上述の実施形態によれば、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームによりテーパ部を加熱するようにしたので、テーパ部14を局所的に加熱しやすい。したがって、テーパ部14において膨張部15を形成する位置や範囲を精度良く調節することができ、これにより、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、例えば
図4に示すように、加熱部30は、電磁誘導コイル32と、電磁シールド34と、を含む。電磁シールド34は、電磁誘導コイル32により生成される磁束が流れる磁路を制限するように構成される。電磁シールド34は、アースされた導体で形成されていてもよい。
図4に示す例示的な実施形態では、ワークロール12の軸方向において電磁誘導コイル32の両側に、電磁シールド34がそれぞれ設けられている。これにより、軸方向において、上述の磁路が制限されるようになっている。
【0034】
上述の実施形態によれば、電磁シールド34によって電磁誘導コイル32により生成される磁束が流れる磁路を制限するようにしたので、電磁誘導コイル32によるテーパ部14の加熱範囲を制限しやすくなる。したがって、テーパ部14において膨張部15を形成する位置や範囲をより精度良く調節することができ、これにより、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。
【0035】
複数の圧延スタンド10を含むタンデム式の圧延機1の場合(例えば
図3参照)、複数の圧延スタンド10のうち、最下流側の圧延スタンド10よりも上流側に位置する圧延スタンド10のうち少なくとも1つに加熱部30が設けられていてもよい。あるいは、複数の圧延スタンド10のうち、最上流側の圧延スタンド10に加熱部30が設けられていてもよい。
図3に示す例示的な実施形態では、最下流側の圧延スタンド10Dよりも上流側に位置する圧延スタンド10A~10Cのうち、圧延スタンド10A及び圧延スタンド10Bの各々に加熱部30が設けられている。
【0036】
金属板50のエッジドロップは、タンデム圧延機を用いた冷間圧延で問題となることが多い。この点、上述の実施形態では、複数の圧延スタンド10のうち、上流側に位置する圧延スタンド10に、テーパ部14を有し軸方向にシフト可能なワークロール12及び加熱部30を設ける。すなわち、金属板50の温度が比較的高く柔軟である位置の圧延スタンド10に上述のワークロール12及び加熱部30を設けたので、特に冷間圧延を行う場合において、エッジアップを効果的に抑制し、これによりエッジドロップを効果的に抑制することができる。
【0037】
図1及び
図3に示すように、幾つかの実施形態では、圧延機1は、圧延機1を制御するための制御装置90を備えていていてもよい。
図5に示すように、制御装置90は、加熱部30によるテーパ部14の加熱を制御するための加熱制御部92と、ワークロール12の軸方向のシフトを制御するためのロール制御部94と、を含んでいてもよい。
【0038】
制御装置90は、計測器(例えば、後述する板端検出部40又は板厚検出部48)から検出結果を示す信号を受け取り、これらの検出結果に基づいて制御を行うように構成されていてもよい。
【0039】
制御装置90は、プロセッサ、メモリ(RAM)、補助記憶部及びインターフェース等を含んでいてもよい。制御装置90は、インターフェースを介して、上述の種計測器からの信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、メモリに展開されるプログラムを処理するように構成される。
【0040】
制御装置90での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装され、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムはメモリに展開される。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0041】
加熱制御部92は、金属板50の板幅方向における板端位置に基づいて、加熱部30によるテーパ部14の軸方向における加熱位置を決定するように構成されている。加熱制御部92は、前述のようにして決定された加熱位置にてテーパ部14を加熱するように、加熱部30を移動させるように構成されていてもよい。
【0042】
加熱制御部92により、金属板50の板端位置に基づいて、ワークロール12の軸方向におけるテーパ部14の加熱位置を決定することで、金属板50の板端位置が変化する場合であっても、板端位置に応じて加熱位置を調節して、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。
【0043】
加熱制御部92は、板端検出部40により検出された板端位置に基づいて、上述の加熱位置を決定するように構成されていてもよい。板端検出部40として、例えば、エッジ位置計、形状計、又は、エッジドロップ計を用いることができる。
【0044】
エッジ位置計は、放射線(例えばX線やガンマ線)を用いて板端位置を検出するように構成されていてもよい。放射線を用いることで、エッジ位置計を小型化しやすい。このため、エッジ位置計を圧延スタンド10の近くに設置しやすく、あるいは、圧延機1が複数の圧延スタンド10を含む場合に、隣り合う圧延スタンド10の間にエッジ位置計を配置しやすい。
【0045】
形状計は、金属板50の板幅方向における張力分布を計測するように構成されていてもよい。金属板50の板幅方向における張力は、金属板50が存在する位置においては正の値となるのに対し、金属板50が存在しない位置においてゼロとなる。したがって、板幅方向における張力分布から、板端位置を把握することができる。
【0046】
エッジドロップ計は、板端部を含む板幅方向範囲において、板厚分布を計測するように構成されていてもよい。金属板50の板幅方向における板厚は、金属板50が存在する位置においては正の値となるのに対し、金属板50が存在しない位置においてゼロとなる。したがって、板幅方向における板厚分布から、板端位置を把握することができる。また、エッジドロップ計は、上述の板厚分布に基づいて、金属板50のエッジドロップ量を検出するように構成されていてもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、板端検出部40は、金属板50の進行方向においてワークロール12の入側に設けられる。この場合、板端検出部40により検出した板端位置をフィードフォワードすることで、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を適切に制御することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、板端検出部40は、金属板50の進行方向においてワークロール12の出側に設けられる。この場合、板端検出部40により検出した板端位置をフィードバックすることで、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を適切に制御することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、板端検出部40は、複数の圧延スタンド10のうち金属板50の進行方向において隣り合う2つの圧延スタンド10の間に設けられる。この場合、板端検出部40により検出した板端位置をフィードバック又はフィードフォワードすることで、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を適切に制御することができる。また、複数の圧延スタンド10の入側又は出側における板端位置を検出する場合に比べて、板端検出位置を加熱位置に近付けやすいので、加熱位置の制御の応答性を良好にしやすくなる。
【0050】
ロール制御部94は、金属板50の板幅方向の端部における厚さに関するパラメータに基づいて、ワークロール12のシフト量を決定するように構成されている。例えば、ロール制御部94は、金属板50の板幅方向の端部における厚さ分布に基づいて、ワークロール12のシフト量を決定するように構成されていてもよい。あるいは、ロール制御部94は、金属板50のエッジドロップ量に基づいて、ワークロール12のシフト量を決定するように構成されていてもよい。
【0051】
ロール制御部94は、前述のようにして決定されたシフト量だけワークロール12が移動するように、ロール駆動部26(シフトシリンダ)を制御するように構成されていてもよい。
【0052】
ロール制御部94は、板厚検出部48により検出された上述の厚さに関するパラメータに基づいて、ワークロール12のシフト量を決定するように構成されていてもよい。板厚検出部48として、例えば、エッジドロップ計を用いることができる。
【0053】
板厚検出部48は、金属板の進行方向においてワークロール12の入側又は出側に設けられていてもよい。この場合、板厚検出部48により検出した板厚に関するパラメータをフィードフォワード又はフィードバックすることで、ワークロール12のシフトを適切に制御することができる。
【0054】
図1に示す例示的な実施形態では、圧延機1は、ワークロール12の入側に設けられたエッジドロップ計42と、ワークロール12の出側に設けられたエッジドロップ計44及びエッジ位置計46と、を備えている。
【0055】
図3に示す例示的な実施形態では、圧延機1は、複数の圧延スタンド10A~10Dの入側に設けられたエッジドロップ計42と、複数の圧延スタンド10A~10Dの出側に設けられたエッジドロップ計44と、複数の圧延スタンド10のうち、隣り合う圧延スタンド10Bと圧延スタンド10Cとの間に設けられたエッジ位置計46と、を備えている。
【0056】
図1及び
図3に示す例示的な実施形態では、加熱制御部92は、エッジドロップ計42、エッジドロップ計44又はエッジ位置計46のうち少なくとも1つの検出結果に基づいて、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を決定するように構成される。また、ロール制御部94は、エッジドロップ計42又はエッジドロップ計44のうち少なくとも1つの検出結果に基づいて、ワークロール12のシフト量を決定するように構成される。
【0057】
次に、
図6~
図8を参照して、幾つかの実施形態に係る圧延機1におけるエッジドロップの制御について説明する。
図6は、一実施形態に係る圧延機におけるエッジドロップの制御について説明するための模式図である。
図7は、ワークロール12のシフトの制御の一例のフローチャートであり、
図8は、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置の制御の一例のフローチャートである。なお、
図6中の直線L4は、板幅方向における、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を示す。
【0058】
一実施形態では、
図7に示すフローチャートに基づき、ロール制御部94により、ワークロール12のシフトを制御する。まず、ワークロール12の入側又は出側に設けられたエッジドロップ計(板厚検出部48)でエッジドロップ量Edを検出する(ステップS102)。
【0059】
ここで、金属板50のエッジドロップ量Edは、金属板50の中央部の規定位置における板厚と、金属板50の板端(
図6中のP
0の位置)から、板幅方向にて内向きに規定距離だけ離れた計測位置P
Ed(
図6参照)における板厚との差である。板厚方向にて、金属板50からワークロール12に向かう方向を正の向きと定義し、上述の規定位置における金属板50の表面の板厚方向の位置座標をH
0とし、上述の計測位置P
Edにおける金属板50の表面の板厚方向の位置座標をHとすれば、エッジドロップ量Edは、(H-H
0)で表される。なお、この説明においては、エッジドロップ量Edが正のときは、上述の計測位置での板厚が中央部よりも大きい状態(エッジアップが生じた状態)であり、エッジドロップ量Edが負のときは、上述の計測位置での板厚が中央部よりも小さい状態(エッジドロップが生じた状態)である。
【0060】
次に、ステップS102で検出したエッジドロップ量Edと、エッジドロップ量の目標値Ed
Aとの偏差であるエッジドロップ偏差ΔEdを算出する(ステップS104)。
図6において、曲線105は、エッジドロップ量が目標値Ed
Aであるときの金属板50の表面形状の一例を示し、このとき、計測位置P
Edにおける金属板50の表面の位置座標はH
Aである。なお、エッジドロップ量の目標値Ed
Aは(H
A-H
0)で表されるから、エッジドロップ偏差ΔEd=(Ed-Ed
A)=(H-H
A)が成り立つ。
【0061】
次に、ステップS104で算出したエッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲内であるか否かを判断する(ステップS106)。エッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲内である場合(ステップS106のYes)、ワークロール12の軸方向にてシフトさせる必要はないため、ワークロール12の軸方向位置を変更せず、ステップS102に戻ってエッジドロップ量の検出を継続する。
【0062】
ステップS106でエッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲外である場合(ステップS106のNo)、エッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲に入るように、ワークロール12のシフト量を決定する(ステップS108~S112)。
【0063】
ステップS106でエッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲外であり(ステップS106のNo)、かつ、エッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲よりも大きい場合(ステップS108のYes;
図6の曲線106参照)、ワークロール12を外向きにシフトさせることでテーパ部14におけるロール間ギャップを縮小させ(ステップS110)、エッジドロップ偏差ΔEdを規定範囲に近付ける。これにより、エッジドロップを適切に制御することができる。
【0064】
なお、
図6において、曲線106は、エッジアップ量が比較的大きいときの金属板50の表面形状の一例を示し、このとき、計測位置P
Edにおける金属板50の表面の位置座標はH
1である。この場合、エッジドロップ偏差ΔEdは(H
1-H
A)で表され、(H
1-H
A)が規定範囲よりも大きい場合に、上述のように、ステップS110にてワークロール12を外向きにシフトさせる。
【0065】
一方、ステップS106でエッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲外であり(ステップS106のNo)、かつ、エッジドロップ偏差ΔEdが規定範囲よりも小さい場合(ステップS108のNo;
図6の曲線107参照)、ワークロール12を内向きにシフトさせることでテーパ部14におけるロール間ギャップを拡大させ(ステップS112)、エッジドロップ偏差ΔEdを規定範囲に近付ける。これにより、板端部における板厚を大きくすることで、エッジドロップを抑制することができる。
【0066】
なお、
図6において、曲線107は、エッジドロップ量が比較的大きいときの金属板50の表面形状の一例を示し、このとき、計測位置P
Edにおける金属板50の表面の位置座標はH
2である。この場合、エッジドロップ偏差ΔEdは(H
2-H
A)で表され、(H
2-H
A)が規定範囲よりも小さい場合に、上述のように、ステップS110にてワークロール12を内向きにシフトする。
【0067】
ここで、ステップS112でのワークロール12の内向きへのシフト量には制限値(上限値)が設定されている。すなわち、ステップS112では、ワークロール12のシフト量が制限値を超えない範囲で、ワークロール12を内向きにシフトさせる。この制限値は、エッジタイトによる板切れが起きないように設定されるものである。上述の制限値は経験に基づいて設定されてもよい。
【0068】
一実施形態では、
図8に示すフローチャートに基づき、加熱制御部92により、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を制御する。まず、板端検出部40でワークロール12の軸方向(すなわち板幅方向)における金属板50の板端位置(
図6におけるP
0の位置)を検出する(ステップS202)。
【0069】
次に、軸方向における加熱部30の位置(一実施形態では、加熱部30の中心位置;
図6におけるP
Hの位置)と、ステップS202で検出した板端位置との偏差ΔWdを算出する(ステップS204)。
【0070】
ステップS204で算出した軸方向の位置の偏差ΔWdが規定範囲よりも小さい場合(ステップS206のNo)、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置は適切な範囲内であると判断し、ステップS202に戻って板端位置の検出を継続する。一方、ステップS204で算出した軸方向の位置の偏差ΔWdが規定範囲よりも大きい場合には(ステップS206のYes)、該偏差ΔWdが規定範囲内となるように、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を決定し、このように決定した加熱位置を加熱するように、加熱部30を軸方向に沿って動かす(ステップS208)。
【0071】
上述の板幅方向の位置の偏差ΔWdの規定範囲は、圧延機1にて金属板50にエッジアップが生じ得る軸方向位置範囲内に、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置が位置するように設定される。上述の偏差ΔWdは、上述した金属板50のエッジドロップ量の計測位置PEdに基づいて設定されてもよい。
【0072】
このように、加熱部30によるテーパ部14の加熱位置を調節することにより、テーパ部14の適切な位置に膨張部15を形成することができ、金属板50に生じ得るエッジタイトを抑制することができる。これにより、エッジタイトによる金属板50の端部における板切れを抑制することができるので、ワークロール12のシフト量を増大させることができる。例えば、
図7のフローチャートにおけるステップS112でのワークロール12の内向きへのシフト量の制限値(上限値)をより大きく設定することができる。こうして、ワークロール12のシフト量を増大させて、金属板50のエッジドロップ(エッジドロップ量及びエッジアップ量)を適切に制御することができ、よって、金属板50の圧延において発生し得るエッジドロップを効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0073】
以下、幾つかの実施形態に係る圧延機及び金属板の圧延方法について概要を記載する。
【0074】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機は、
金属板を圧延するためのロール(例えば上述のワークロール12)であって、軸方向にシフト可能であり、かつ、前記軸方向の端部にテーパ部を有するロールと、
前記テーパ部を加熱して、前記テーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するように構成された加熱部と、
を備える。
【0075】
上記(1)の構成によれば、加熱部によりロールの端部に設けられたテーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するようにしたので、金属板(圧延材)の板幅方向の端部のエッジタイトを抑制することができる。これにより、エッジタイトによる金属板の端部における板切れを抑制することができるので、ロールのシフト量を増大させることができる。よって、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップを効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0076】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記加熱部は、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームの少なくとも1つにより前記テーパ部を加熱するように構成される。
【0077】
上記(2)の構成によれば、電磁誘導コイル、熱媒体又はレーザビームによりテーパ部を加熱するようにしたので、テーパ部を局所的に加熱しやすい。したがって、テーパ部において膨張部を形成する位置や範囲を精度良く調節することができ、これにより、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0078】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記加熱部は、電磁誘導コイルと、前記電磁誘導コイルにより生成される磁束が流れる磁路を制限するための電磁シールドと、を含む。
【0079】
上記(3)の構成によれば、電磁シールドによって電磁誘導コイルにより生成される磁束が流れる磁路を制限するようにしたので、電磁誘導コイルによるテーパ部の加熱範囲を制限しやすくなる。したがって、テーパ部において膨張部を形成する位置や範囲をより精度良く調節することができ、これにより、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0080】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記加熱部は、前記金属板の板幅方向における端よりも前記板幅方向における内側に前記膨張部を形成するように構成される。
【0081】
上記(4)の構成によれば、テーパ部のうち、金属板の板幅方向の端の位置(板端位置)よりも内側の部位に膨張部を形成するようにしたので、板端よりも内側の位置で発生しやすいエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0082】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記圧延機は、
前記加熱部を前記軸方向に沿って動かすことにより、前記加熱位置を変更可能に構成された加熱制御部を備える。
【0083】
上記(5)の構成によれば、ロールの軸方向において加熱部によるテーパ部の加熱位置を変更することができるので、該加熱位置を適切に調節することで、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0084】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記圧延機は、
前記金属板の板幅方向における板端位置を検出するように構成された板端検出部と、
検出された前記板端位置に基づいて、前記加熱部による前記軸方向における前記テーパ部の加熱位置を決定するように構成された加熱制御部と、を備える。
【0085】
上記(6)の構成によれば、金属板の板端位置に基づいて、ロールの軸方向におけるテーパ部の加熱位置を決定するようにしたので、金属板の板端位置が変化する場合であっても、板端位置に応じて加熱位置を調節することで、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0086】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記板端検出部は、前記金属板の進行方向において前記ロールの入側に設けられる。
【0087】
上記(7)の構成によれば、ロールの入側における板端位置を検出するようにしたので、該検出位置をフィードフォワードすることで、加熱部による加熱位置を適切に制御することができる。よって、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができ、これにより、ロールのシフト量を増大させて、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0088】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記板端検出部は、前記金属板の進行方向において前記ロールの出側に設けられる。
【0089】
上記(8)の構成によれば、ロールの出側における板端位置を検出するようにしたので、該検出位置をフィードバックすることで、加熱部による加熱位置を適切に制御することができる。よって、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができ、これにより、ロールのシフト量を増大させて、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0090】
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(8)の何れかの構成において、
前記圧延機は、
前記金属板を圧延するためのロールをそれぞれ含む複数の圧延スタンドを備え、
前記複数の圧延スタンドの少なくとも1つに前記加熱部が設けられ、
前記板端検出部は、前記複数の圧延スタンドのうち前記金属板の進行方向において隣り合う2つの圧延スタンドの間に設けられる。
【0091】
上記(9)の構成によれば、複数の圧延スタンドの間における板端位置を検出するようにしたので、該検出位置をフィードバック又はフィードフォワードすることで、加熱部による加熱位置を適切に制御することができる。また、複数の圧延スタンドの入側又は出側における板端位置を検出する場合に比べて、板端検出位置を加熱位置に近付けやすいので、加熱位置の制御の応答性を良好にしやすくなる。よって、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができ、これにより、ロールのシフト量を増大させて、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0092】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、
前記圧延機は、
前記金属板の板幅方向の端部における厚さに関するパラメータを検出するように構成された板厚検出部と、
検出された前記パラメータに基づいて、前記ロールの前記軸方向におけるシフト量を決定するように構成されたロール制御部と、を備える。
【0093】
上記(10)の構成によれば、上記(1)の構成により金属板のエッジタイトを抑制することで、金属板の端部における板切れを抑制することができるので、ロールのシフト量をより大きい値として決定することができる。よって、ロールのシフト量を増大させて、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップを効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0094】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属板の圧延方法は、
軸方向の端部にテーパ部を有するロールを用いて金属板を圧延するステップと、
前記ロールを前記軸方向にシフトさせるステップと、
前記テーパ部を加熱して前記テーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するステップと、を備える。
【0095】
上記(11)の方法によれば、ロールの端部に設けられたテーパ部を加熱することによりテーパ部に径方向に突出する膨張部を形成するようにしたので、金属板(圧延材)の板幅方向の端部のエッジタイトを抑制することができる。これにより、エッジタイトによる金属板の端部における板切れを抑制することができるので、ロールのシフト量を増大させることができる。よって、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップを効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0096】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の方法において、
前記膨張部を形成するステップでは、前記金属板の板幅方向における端よりも前記板幅方向における内側に前記膨張部を形成する。
【0097】
上記(12)の方法によれば、テーパ部のうち、金属板の板幅方向の端の位置(板端位置)よりも内側の部位に膨張部を形成するようにしたので、板端よりも内側の位置で発生しやすいエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0098】
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)又は(12)の方法において、
前記圧延方法は、
前記金属板の板幅方向における板端位置を検出するステップと、
検出された前記板端位置に基づいて、前記軸方向における前記テーパ部の加熱位置を決定するステップと、を備える。
【0099】
上記(13)の方法によれば、金属板の板端位置に基づいて、ロールの軸方向におけるテーパ部の加熱位置を決定するようにしたので、金属板の板端位置が変化する場合であっても、板端位置に応じて加熱位置を調節することで、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0100】
(14)幾つかの実施形態では、上記(11)乃至(13)の何れかの方法において、
前記圧延方法は、
前記テーパ部を加熱するための加熱部を前記軸方向に沿って動かすことにより、前記加熱位置を変更するステップを備える。
【0101】
上記(14)の方法によれば、ロールの軸方向において加熱部によるテーパ部の加熱位置を変更することができるので、該加熱位置を適切に調節することで、上述のエッジタイトを効果的に抑制することができる。よって、ロールのシフト量を増大させることができ、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップをより効果的に抑制することができる。
【0102】
(15)幾つかの実施形態では、上記(11)乃至(14)の何れかの方法において、
前記圧延方法は、
前記金属板の板幅方向の端部における厚さに関するパラメータを検出するステップと、
検出された前記パラメータに基づいて、前記ロールの前記軸方向におけるシフト量を決定するステップと、を備える。
【0103】
上記(15)の方法によれば、上記(11)の方法により金属板のエッジタイトを抑制することで、金属板の端部における板切れを抑制することができるので、ロールのシフト量をより大きい値として決定することができる。よって、ロールのシフト量を増大させて、金属板の圧延において発生し得るエッジドロップを効果的に抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0105】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0106】
1 圧延機
10,10A~10d 圧延スタンド
12,12A,12B ワークロール
13 端部
14 テーパ部
15 膨張部
16a,16b 軸受箱
18A,18B 中間ロール
20a,20b 軸受箱
22A,22B バックアップロール
24a,24b 軸受箱
26,26A,26B ロール駆動部
30 加熱部
32 電磁誘導コイル
34 電磁シールド
40 板端検出部
42 エッジドロップ計
44 エッジドロップ計
46 エッジ位置計
48 板厚検出部
50 金属板
52 表面
54 板端
90 制御装置
92 加熱制御部
94 ロール制御部