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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】安定なニモジピン非経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4422 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K31/4422
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/26
A61P9/06
A61P9/10
A61P9/12
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020160951
(22)【出願日】2020-09-25
(62)【分割の表示】P 2018553182の分割
【原出願日】2017-04-12
(65)【公開番号】P2021011488
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】62/322,008
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522266586
【氏名又は名称】アカスティ ファーマ ユー.エス.、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コテイル、エス.、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アムレシュ
(72)【発明者】
【氏名】スンサンカール、プラサンナ
(72)【発明者】
【氏名】カビュル、ヴィマル
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511594(JP,A)
【文献】特開昭59-206305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296191(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101129366(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4422
A61K 9/107
A61K 47/10
A61K 47/26
A61P 9/10
A61P 9/06
A61P 9/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニモジピン注射濃縮製剤であって、
注射濃縮製剤中のニモジピンがミセル中に含まれ、該製剤が安定かつ透明であるように、
約0.01~約5mg/mlの濃度のニモジピン又は薬学的に許容されるニモジピン塩と、
注射濃縮製剤の約5%w/v~約40%w/vである、エタノールからなる有機溶媒と、
注射濃縮製剤の約49.5%w/v~約89.0%w/vである、薬学的に許容される水性担体と、
任意の防腐剤と、
有効量の単一の親水性界面活性剤であって、該単一の親水性界面活性剤はポリソルベート80であり、ポリソルベート80は注射濃縮製剤の約6%w/v~約10%w/vである上記単一の親水性界面活性剤と
を含み、
ポロキサマー、リン脂質、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、プロピレングリコール及びグリセロールを含まない、
上記ニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項2】
約0.5mg/ml~約5mg/mlの濃度のニモジピン又は薬学的に許容されるニモジピン塩、約6%w/v~約10%w/vの単一の親水性界面活性剤、約5%w/v~約40%w/vの有機溶媒、及び注射用水を含む約49.5%w/v~約89.0%w/vの薬学的に許容される水性担体を含む、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項3】
前記濃縮製剤の総容量が、約1ml~約10mlである、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項4】
前記ニモジピン注射濃縮製剤が、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、注射用滅菌水、デキストロース、乳酸リンゲル注射液、及び完全静脈栄養(TPN)からなる群から選択される担体を用いてニモジピン0.01mg/mlの希釈物としての濃度になるまで希釈したとき、透明のままであり、かつニモジピンの沈殿を示さない、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項5】
前記ニモジピン注射濃縮製剤が、薬学的に許容される水性注射媒体で希釈したとき、2%w/v未満のアルコールを含む単一の250ml輸液バッグ又は輸液ボトルの投与を可能にし、該希釈注射媒体は、透明なミセル溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さない、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項6】
クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル及びプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾアート、フェノール、塩素化フェノール化合物、アルコール、第四級化合物、水銀、及び上述のいずれかの混合物からなる群から選択される有効量の防腐剤を含む、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項7】
前記ニモジピンが約0.01mg/ml~約1.0mg/mlの濃度で存在するように、注射用の薬学的に許容される担体を用いて約50ml~約1000mlの容量になるまで希釈され、前記有機溶媒が、製剤の2%w/v未満であり、前記ニモジピンが、実質的にミセルの形態で存在し、希釈製剤は、透明なミセル溶液のままであり、かつニモジピンの結晶の沈殿を示さない、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項8】
ニモジピンを含有するミセルのメジアン粒径が、約0.5ナノメートル~約350ナノメートルの範囲である、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項9】
ニモジピンを含有するミセルのメジアン粒径が、約0.5ナノメートル~約350ナノメートルの範囲である、請求項7に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項10】
請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤を含む静脈投与用溶液を3週間の期間にわたって連続的に注入することを含む、動脈瘤、クモ膜下出血、血管攣縮性狭心症、プリンツメタル狭心症、安定狭心症、急性心筋梗塞、心筋不全、不整脈、全身性高血圧、肺高血圧症、うっ血性心不全、冠動脈手術及び肥大性心筋症からなる群から選択される状態を治療するための医薬の製造における請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤の使用。
【請求項11】
前記ニモジピンの注入速度が、約0.05mgニモジピン/時間~約5mgニモジピン/時間であり、及び前記静脈注射用のニモジピン用量が、5時間毎に約2~10mgである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ニモジピン又は薬学的に許容されるニモジピン塩を前記有機溶媒と混合し、ニモジピンと有機溶媒の該混合物に前記親水性界面活性剤を添加し、その後、約0.5ml~約4mlの薬学的に許容される注射用の水性媒体を添加し、ニモジピンがミセル中に含まれるニモジピン濃縮製剤を調製することを含む、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤を調製する方法。
【請求項13】
前記希釈製剤が約4.5~約8のpHを有する、請求項7に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項14】
40℃±2℃/75%RH±5%RHの条件に少なくとも6ヶ月間さらされたときに安定であり、又は25℃±2℃/60%RH±5%RHの条件に少なくとも12ヶ月間さらされたときに安定である、請求項1に記載のニモジピン注射濃縮製剤。
【請求項15】
ヒトに非経口投与するのに適した直接的に注入可能なニモジピン注射製剤であって、
ニモジピンがミセル中に実質的に含まれるように、
約0.01mg/ml~約1.0mg/mlの濃度のニモジピン又は薬学的に許容されるニモジピン塩と、
製剤の2%w/v未満を構成するエタノールからなる薬学的に許容される有機溶媒と、
薬学的に許容される水性担体と、
有効量の単一の親水性界面活性剤であって、該単一の親水性界面活性剤はポリソルベート80であり、ポリソルベート80は製剤の約0.01%w/v~約2.5%w/vである上記単一の親水性界面活性剤とを含み、
該製剤が、約50ml~約1000mlの容量であり、かつ薬学的に許容される容器に入っており、該製剤が安定で透明なミセル溶液であり、かつニモジピンの沈殿を示さず、ポロキサマー、リン脂質、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、プロピレングリコール及びグリセロールを含まない、
上記ヒトに非経口投与するのに適した直接的に注入可能なニモジピン注射製剤。
【請求項16】
ニモジピンを含有するミセルのメジアン粒径が、約0.5ナノメートル~約350ナノメートルの範囲である、請求項15に記載の直接的に注入可能なニモジピン注射製剤。
【請求項17】
40℃±2℃/75%RH±5%RHの条件に少なくとも6ヶ月間さらされたときに安定であり、又は25℃±2℃/60%RH±5%RHの条件に少なくとも12ヶ月間さらされたときに安定である、請求項15に記載の直接的に注入可能なニモジピン注射製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的な静脈内(IV)投与に適した、防腐剤を含まない安定なニモジピン非経口溶液を提供する。この非経口溶液組成物は、ニモジピン(約0.01~約5mg/mlの範囲の濃度)と、親水性界面活性剤と、共溶媒(好ましくはエタノール)とからなる。投与される製剤中のエタノールの最終濃度は、好ましくは、約2%(w/v)未満である。
【背景技術】
【0002】
ニモジピンは、血管拡張特性を有する脂溶性置換1,4-ジヒドロピリジンであり、クモ膜下出血(SAH)後の脳血管攣縮によって引き起こされる虚血性神経障害の予防及び治療が適応となる。現在、虚血性脳損傷には、ニモジピン治療が第一選択治療である。ヒトでは、ニモジピンは、経口投与後急速に吸収され、一般に、1時間以内にピーク濃度が達成される。最終消失半減期は、約8~9時間であるが、初期排出速度は、これよりはるかに速く、1~2時間の半減期に相当する。その結果、頻繁な(4時間毎の)投与が必要である。ニモジピンは、ほぼ排他的に代謝産物の形態で排泄され、未変化の薬物として尿中で回収されるのは1%未満である。多くの代謝物が同定されており、全てが、不活性であるか、又は親化合物よりも活性がかなり低い。初回通過による代謝が大きいため、経口投薬後のニモジピンバイオアベイラビリティは、平均で13%である。このバイオアベイラビリティは、肝硬変患者において有意に増加し、Cmaxは通常の約2倍であり、この患者群では用量を下げる必要がある。
【0003】
米国市場で現在承認されている製品は、経口固形剤及び液体剤形のニモジピンである。ニモジピンは、経口剤形であるNIMOTOP(登録商標)の液体充填カプセル(Bayer Pharmaceuticals Corp.)及び同等のジェネリック薬として米国で上市されている。NIMOTOP(登録商標)のカプセル剤及びそのジェネリック薬には、それぞれ、30mgのニモジピンが含まれ、一般に2カプセル60mg用量で投与され、4時間毎に投与される。患者が意識不明であるか、又は嚥下できない場合には、ニモジピンカプセルの内容物をシリンジに取り、経口又は経鼻(例えば、経鼻胃)の管を介して投与される。この用量を投与する医師は、無意識に、又は不適切な取り扱いのために、カプセルから液体用量全量よりも少ない量を取り出してしまうことがあり、そのため、不完全な投薬のリスクがかなりあり、医療従事者に過度の負担をかけることがある。不完全な投薬は、含まれる投与量が比較的少なかったり、市販のカプセル中の薬物濃度が高かったりすると深刻である。したがって、医師が高濃度の少量の液体を市販カプセルから全量投薬できないと、ニモジピンの著しい過少投薬となる。また、FDAは、標準的な針が、経口シリンジに適合しないため、カプセル内の製剤を静脈用シリンジを用いて取り出すという、経鼻胃管を介した経口ニモジピン投与に関連する警告を発している。カプセルからニモジピン製剤を取り出すための静脈用シリンジの使用は、薬物が口又は経鼻胃管ではなく静脈内投与される可能性を高める。
【0004】
SAH後の疾患の進行を迅速かつ効果的に治療するか、又は制御するために、ニモジピンの静脈内投与が通常好ましい。静脈内(IV)ニモジピンは、欧州で承認され、Bayerによって、Nimotop(登録商標)の商品名で欧州で販売されている。欧州及び他の規制されている市場で入手可能な、現在市販されている注射可能なニモジピン(BayerのNimotop(登録商標))は、大量の有機溶媒(約23.7%のエタノールと17%のポリエチレングリコール400)を含有する。Nimotop中の大量のエタノールは、アルコール依存症又はアルコール代謝障害、妊娠中又は授乳中の女性にとって有害である。また、高濃度のエタノールは、注射部位で痛みや刺激を引き起こす可能性がある。静脈投与用Nimotopは、最も多くは、3週間まで連続的に注入される。Bayerの静脈投与用Nimotop溶液中のアルコール含有量が高いため、三方活栓を介し、生理食塩水及びデキストロースを同時注入することによって希釈される。
【0005】
ニモジピンは水溶性が悪く、水性注射液として配合することが困難である。だから、Nimotop静脈輸液は、ニモジピンを可溶化するための共溶媒として23.7%までのアルコールを利用している。
【0006】
米国特許第5,114,956号は、ニモジピンを含有する非経口製剤を記載しており、30~70重量%、好ましくは45~70重量%の水、15~40重量%、好ましくは15~30重量%の、好ましくは平均分子量が200、400及び600のプロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコール、15~30重量%、好ましくは15~25重量%のエタノールからなる溶媒100重量部に対して0.01~0.4重量%のニモジピンを含有し、適切な場合、通常の補助物質及び/又は添加剤を含む。
【0007】
FDAは、出版された文献を含め、そのAdverse Event Reporting System(AERS)及び他の情報源を通じて、1989~2009年に31例のニモジピンの異常を特定し、25例は、FDAによれば経口カプセルの内容物を静脈内投与したことに関するものである。同機関によると、ニモジピンを静脈から摂取した4人の患者が死亡しており、一方、別の5人は、重篤な反応を起こし、1人の患者は、恒久的な被害を受けた。
【0008】
嚥下することが困難に感じるか又は嚥下することができない患者及び意識のない患者にとって、投与が容易なニモジピン剤形の医学的需要がまだ存在し、まだこの需要は満たされていない。さらなる必須事項は、薬物の不適切な投与の結果として、生命を脅かす重大な薬物過誤をなくすという需要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、堅牢であり、安定しており、投与が容易なニモジピン点滴注射の開発により、既に承認されているニモジピン剤形の溶解度不足を解決することを目的する。本発明の別の目的は、ニモジピン輸液の組成物及び製剤、及びその投与を提供することである。
【0010】
上の目的及び他の目的によれば、本発明は、さらに、一部には、ニモジピン注射濃縮製剤であって、約0.01mg/ml又は約0.5mg/mlから約5mg/mlまでの濃度のニモジピン基剤又は薬学的に許容されるニモジピン塩と、有機溶媒と、水性担体と、有効量の親水性界面活性剤とを含み、その結果、濃縮製剤中のニモジピンがミセル中に含まれる、ニモジピン注射濃縮製剤に関する。特定の好ましい実施形態では、本発明は、一部には、ニモジピン注射濃縮製剤であって、約0.5mg/ml~約5mg/mlの濃度のニモジピンと、約30%(w/w)より多く、約90%(w/w)までの量の有機溶媒と、約0.005~約30%、好ましくは約0.5%又は1%から約15%までの親水性界面活性剤と、約30~約80%の濃縮製剤を含む薬学的に許容される注射用水性担体とを含み、濃縮物中のニモジピンがミセル中に含まれる、ニモジピン注射濃縮製剤に関する。好ましい実施形態では、製剤は、安定であり、透明である。特定の実施形態では、親水性界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、注射用水であり、ニモジピンは、実質的にミセル中に含まれる。特定の好ましい実施形態では、有機溶媒は、エタノールを含むか、又はエタノールからなる。特定の実施形態では、単位用量の濃縮物を注射用水で総容量5mlになるまで希釈し、薬学的に許容される容器(例えばアンプル又はバイアル)に封入する。特定の実施形態では、ニモジピン注射濃縮物は、有効量の防腐剤をさらに含む。ニモジピン注射濃縮物の特定の好ましい実施形態では、ミセル又はナノエマルジョンのメジアン粒径は、約0.5ナノメートル~約350ナノメートル、又は約0.5ナノメートル~約200ナノメートル、又は約5ナノメートル~約50ナノメートルの範囲である。好ましくは、ニモジピン濃縮製剤は透明であり、結晶ニモジピン沈殿物を含有しない。特定の好ましい実施形態では、ニモジピンは、実質的にミセル中にナノエマルジョンとして含まれる。本発明は、さらに、一部には、適切な注射媒体で希釈され、その結果、注射用希釈製剤が、約2%未満、又は好ましくは約1%(w/v)未満の有機溶媒(例えばアルコール)を含む、本発明のニモジピン濃縮製剤(例えば、上述のもの)に関する。好ましい実施形態では、溶液は、主として水性媒体であり、希釈注射媒体は、透明溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さない。好ましい実施形態では、濃縮物は、適切な注射媒体で希釈したとき、ヒト患者への単一の250ml輸液バッグ又は輸液ボトルの非経口投与を可能にし、希釈製剤は、2%未満、又は好ましくは1%(w/v)未満の有機溶媒(例えばアルコール)を含む。特定の実施形態では、濃縮物及び希釈溶液は、さらに、有効量の薬学的に許容される防腐剤を含む。特定の好ましい実施形態では、製剤に含まれるニモジピンの実質的に全て又は全てがミセル中に含まれる。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、一部には、ニモジピン注射濃縮製剤であって、約0.5mg/ml~約5mg/mlの濃度のニモジピンと、約1%~約15%の親水性界面活性剤と、製剤注射濃縮物の約10%~約90%を構成する注射用の薬学的に許容される担体とを含み、注射用の薬学的に許容される担体が、水溶液、有機溶媒、油及びシクロデキストリンからなる群から選択され、その結果、ニモジピンが、実質的に、濃縮注射液、懸濁物、エマルジョン又は複合体にミセル又はコロイド粒子又は包接複合体として含まれ、この製剤が、安定であり、透明である、ニモジピン注射濃縮製剤に関する。特定の実施形態では、親水性界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、注射用水であり、約0.5%~約30%の薬学的に許容される親水性界面活性剤(又は本明細書では乳化剤ともいう)をさらに含み、ニモジピンは、実質的にミセル中に含まれる。他の実施形態では、薬学的に許容される担体は、有機溶媒であり、濃縮物は、注射用水をさらに含む。他の実施形態では、薬学的に許容される担体は、油であり、約0.005%~約30%、より好ましくは約0.5%~約15%の薬学的に許容される親水性界面活性剤をさらに含み、ニモジピンは、実質的にミセル中に含まれる。特定の好ましい実施形態では、親水性界面活性剤(乳化剤)は、リン脂質及びポリエチレングリコールからなる群から選択される。特定の実施形態では、単位用量の濃縮物を注射用水で総容量5mlになるまで希釈し、薬学的に許容される容器(例えばアンプル又はバイアル)に封入する。特定の実施形態では、ニモジピン注射濃縮物は、有効量の防腐剤をさらに含む。ニモジピン注射濃縮物の特定の好ましい実施形態では、ミセル又はナノエマルジョンのメジアン粒径は、約0.5ナノメートル~約350ナノメートル、又は約0.5ナノメートル~約200ナノメートル、又は約5ナノメートル~約50ナノメートルの範囲である。好ましくは、ニモジピン濃縮製剤は透明であり、結晶ニモジピン沈殿物を含有しない。好ましくは、ニモジピン濃縮製剤は、安定である。特定の好ましい実施形態では、ニモジピンは、実質的にミセル中にナノエマルジョンとして含まれる。
【0012】
本発明は、さらに、一部には、ヒトに直接的に注入可能なニモジピン製剤(希釈することなく、例えば、非経口投与に適したもの)に関し、約0.01mg/ml~約1.0mg/mlの濃度のニモジピンと、水溶液、有機溶媒、油及びシクロデキストリンからなる群から選択される薬学的に許容される担体(例えば、注射用)とを含み、この製剤は、容量が約50ml~約1000mlであり、薬学的に許容される容器(例えば、バッグ又はバイアル)に入っており、存在する場合には、有機溶媒は、ニモジピンがミセル中の希釈した注射液に実質的に含まれ、製剤が透明溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さないように、好ましくは、製剤の2%(w/v)未満、又は1%(w/v)未満の有効量の親水性界面活性剤を含む。好ましい実施形態では、親水性界面活性剤は、直接注入可能な(すぐに使用できる)製剤の0.01%~約2.5%(w/v)である。特定の実施形態では、親水性界面活性剤は、非イオン性親水性界面活性剤であり、特定の実施形態では、最も好ましくは、ポリソルベート80を含むか、又はポリソルベート80からなる。特定の実施形態では、有機溶媒は、エタノールを含むか、又はエタノールからなる。特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される水性担体は、注射用水を含む。特定の好ましい実施形態では、親水性界面活性剤は、直接注入可能な製剤の約0.01%~約2.5%の量で含まれる。特定の好ましい実施形態では、製剤は、40℃±2℃/75%RH±5%RHの条件に少なくとも6ヶ月間さらされたときに安定であり、又は25℃±2℃/60%RH±5%RHの条件に少なくとも12ヶ月間さらされたときに安定である。特定の好ましい実施形態では、ニモジピンは、実質的にミセル中にナノエマルジョンとして含まれる。
【0013】
他の実施形態では、薬学的に許容される担体は、β-シクロデキストリンであり、ここで、ニモジピンは、包接複合体内に実質的に含まれる。特定の実施形態では、単位用量の濃縮物を注射用水で総容量5mlになるまで希釈し、薬学的に許容される容器(例えばアンプル又はバイアル)に封入する。特定の好ましい実施形態では、有機溶媒は、エタノールを含む。
【0014】
有機溶媒が薬学的に許容される担体中に含まれる本発明の実施形態では、有機溶媒は、例えば濃縮物の少なくとも25%、特定の実施形態では濃縮物の少なくとも40%を構成していてもよい。
【0015】
特定の好ましい実施形態では、ニモジピン濃縮物は、約1ml~約10ml、好ましくは約5mlの容量を有し、アンプル又はバイアルに入っている。
【0016】
特定の実施形態では、ニモジピン注射濃縮物を、注射用水、生理食塩水、デキストロース又は他の一般に入手可能な輸液で0.01mg/mlの濃度まで希釈しても透明溶液のままであり、ニモジピンの結晶沈殿を示さない。ニモジピン注射濃縮物を、好ましくは、適切な注射媒体で希釈することができ、主に水性媒体中に、例えば、1%(w/v)未満のアルコールを含む単一の100ml、又は好ましくは250mlの輸液バッグ又は輸液ボトルの投与を可能にし、希釈注射媒体は、透明溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さない。
【0017】
本発明は、さらに、一部には、ヒトに注射するのに適したニモジピン製剤に関し、約0.01mg/ml~約1.0mg/mlの濃度のニモジピンと、水溶液、有機溶媒、油及びシクロデキストリンからなる群から選択される薬学的に許容される担体(例えば、注射用)とを含み、この製剤は、容量が約50ml~約1000mlであり、存在する場合には、有機溶媒は、ニモジピンが、ミセル又はコロイド粒子又は包接複合体として、希釈した注射液、懸濁物、エマルジョン又は複合体の中に実質的に含まれ、この製剤が透明溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さないように、好ましくは、製剤の2%(w/v)未満の有効量の親水性界面活性剤を含む。特定の実施形態では、親水性界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、有機溶媒であり、注射用水をさらに含む。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、油であり、約0.005%~約30%、より好ましくは約0.5~約15%、特定の実施形態では、約0.005%~約3.0%の薬学的に許容される親水性界面活性剤(又は本明細書では乳化剤ともいう)をさらに含み、ニモジピンは、実質的にミセル中に含まれる。特定の好ましい実施形態では、ニモジピンは、実質的にミセル中にナノエマルジョンとして含まれる。
【0018】
特定の好ましい実施形態では、乳化剤は、リン脂質及びポリエチレングリコールからなる群から選択される。他の実施形態では、薬学的に許容される担体は、β-シクロデキストリンであり、ここで、ニモジピンは、包接複合体内に実質的に含まれる。特定の好ましい実施形態では、ニモジピン製剤は、連続的な静脈内注入のために単一の輸液バッグ又はボトル内に入っている。ニモジピン製剤の特定の好ましい実施形態では、ニモジピンのミセル又はナノエマルジョン又は複合体のメジアン粒径は、約0.5ナノメートル~約350ナノメートル、又は約0.5ナノメートル~約200ナノメートル、又は約5ナノメートル~約50ナノメートルの範囲である。好ましくは、ニモジピン製剤は透明であり、結晶ニモジピン沈殿物を含有しない。好ましくは、ニモジピン製剤は、安定である。注射又は注入によるニモジピン製剤の投与は、肝臓によるニモジピンの初回通過代謝を最小限に抑えることができ、注射によって投与されるニモジピン製剤は、経口ニモジピン製剤と比較してバイオアベイラビリティが著しく改善される。本発明のニモジピン注射用製剤のおかげで、(例えば、ヒト)患者の血漿及びCSF中で、一定レベルのニモジピンを維持することができる。
【0019】
上述の代替的な実施形態では、ニモジピン製剤を、経口摂取又は経鼻摂取のための適切な薬学的担体(例えば、適切な水溶液)で希釈する。
【0020】
上述のニモジピン濃縮物及び製剤の特定の好ましい実施形態では、水性担体は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、注射用滅菌水、デキストロース及び乳酸リンゲル注射液からなる群から選択される。
【0021】
上述のニモジピン濃縮物及び製剤の特定の好ましい実施形態では、油は、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油及びピーナッツ油からなる群から選択される。
【0022】
特定の好ましい実施形態では、ニモジピン製剤は、1つ以上の防腐剤をさらに含む。適切な防腐剤の例としては、例えば、フェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル及びプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾアート、フェノール、塩素化フェノール化合物、アルコール、第四級化合物、水銀、及び上述のいずれかの混合物が挙げられる。
【0023】
さらなる実施形態では、親水性界面活性剤は、製剤の約0.01%~約2.5%を構成し、特定の好ましい実施形態では、親水性界面活性剤は、希釈されたニモジピン製剤中に少なくとも0.1%含まれる。
【0024】
特定の好ましい実施形態では、有機溶媒は、製剤(希釈製剤)の少なくとも1%を構成する。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体は、製剤の約0.1%~約15%を構成する。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、ニモジピン製剤は、pHが約3~約9、ある好ましい実施形態では、好ましくはpHが約4.5から約7.5又は8までである。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明は、約0.5mg/ml~約5mg/mlの濃度のニモジピンを薬学的に許容される担体と混合し、その結果、注射用の薬学的に許容される担体は、約10%~約90%の濃縮物を含むことと;その後に、約1%~約15%の親水性界面活性剤を加え、濃縮注射液、懸濁物、エマルジョン又は複合体を調製することと;場合により、約0.5ml~約4.0mlの注射用の薬学的に許容される担体を加え、ニモジピン濃縮製剤を調製することとを含む、静脈内投与のためのニモジピン製剤(濃縮物)を調製する方法に関する。好ましくは、ニモジピン濃縮製剤は透明であり、結晶ニモジピン沈殿物を含有しない。この方法は、さらに、ニモジピン濃縮物を、水溶液、有機溶媒、油及びシクロデキストリンからなる群から選択される注射用の薬学的に許容される担体で、約50ml~約1000mlの容量になるまで希釈することを含んでいてもよく、存在する場合には、有機溶媒は、製剤の2%(w/v)未満含まれ、製剤は、透明溶液のままであり、ニモジピンの結晶沈殿を示さない。ニモジピン濃縮物又は希釈製剤の特定の好ましい実施形態では、ニモジピンのミセル又はナノエマルジョン又は複合体のメジアン粒径は、約0.5ナノメートル~約350ナノメートル、又は約0.5ナノメートル~約200ナノメートル、又は約5ナノメートル~約50ナノメートルの範囲である。
【0028】
本発明は、さらに、本発明の静脈用ニモジピン溶液を約3週間にわたって連続的に注入することを含む、動脈瘤、クモ膜下出血、血管攣縮性狭心症、プリンツメタル狭心症、安定狭心症、急性心筋梗塞、心筋不全、不整脈、全身性高血圧、肺高血圧、うっ血性心不全、冠動脈手術及び肥大性心筋症からなる群から選択される状態を有するヒト患者を治療する方法に関する。ニモジピンの注入速度は、例えば、ニモジピン約0.05mg/時間~ニモジピン約5mg/時間であってもよい。特定の実施形態では、静脈注射用のニモジピン用量は、5時間毎に約2~10mgが投与される。特定の実施形態では、ニモジピン製剤は、静脈内ボーラス、静脈内注入、動脈内、口腔内、又は経鼻胃管を用いた鼻腔内投与によって投与される。特定の実施形態では、この方法は、さらに、ニモジピンの2.5×10-5モル濃度溶液になるまでさらに希釈し、動脈瘤をクリッピングした後であり、かつ投与されるニモジピンの静脈内注入の前に、露出した動脈を洗浄し、患者の転帰を改善することを含む。希釈製剤は、輸液セット及びバッグに入っていてもよい。さらなる実施形態では、輸液バッグは、光劣化からニモジピンをさらに保護するために、紫外線(UV)保護バッグで覆われている。他の好ましい実施形態では、ニモジピン製剤は、連続注入として投与される。本発明の方法では、肝臓による初回通過代謝が最小限に抑えられ、バイオアベイラビリティが改善される。したがって、(例えば、ヒト)患者の血漿及びCSFにおいて、ニモジピンの一貫したレベルが維持される。
【0029】
本発明は、連続的な非経口投与のための活性物質としてニモジピン基剤又は任意の許容可能な薬学的塩を含有する新規な医薬組成物に関する。
【0030】
特に、非経口投与のための溶液の形態で入手可能な本発明は、投与前にさらなる希釈を必要としない、注入のために準備された、滅菌防腐剤を含まないプレミックスである。
【0031】
特に、非経口投与のための溶液の形態で入手可能な本発明は、適切な媒体(例えば、生理食塩水)で、注入によって投与するための溶液へと希釈することができる、濃縮注射液の形態である。本明細書で使用される場合、「単位用量」との用語は、哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位が、活性成分として、所定量のニモジピンを含有している。本発明によるニモジピンの適切な単位用量の例としては、適切な容器(例えばアンプル又はバイアル)中の透明溶液又はミセル又はナノエマルジョンが挙げられる。
【0032】
「~を含む(comprising)」との用語は、この用語の後に列挙された要素を含有するか、包含するか、及ぶか、又は含むことを意味すると解釈されるが、他の引用されていない要素を除外するものではない。
【0033】
「治療上有効量」は、ある疾患を治療するために動物に投与されるとき、その疾患の治療を行うのに十分な量を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、ある疾患を「治療する」又は「治療」との用語は、その疾患にかかりやすいと思われるが、その疾患の症状をまだ経験していないか、又は示していない動物において、疾患が発生するのを予防すること(予防的処置)、その疾患を抑制すること(その進行を遅らせるか、又は止めること)、その疾患の症状又は副作用を緩和させること(一時的にやわらげる処置)、その疾患を緩和すること(その疾患を逆行させること)を含む。
【0035】
「安定」とは、40℃で1ヶ月間保存した後、濃縮静脈内輸液(生成物)の実質的な分解が観察されないことを意味する。好ましい実施形態では、水不溶性ニモジピンと界面活性剤とを含む濃縮静脈内輸液に関して「安定」との用語は、48時間保存した後に、ニモジピンの約5%未満が分解し(好ましくは、4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1.5%未満、又は1%未満が分解し)、沈殿が観察されないことを意味するか、又はニモジピンミセル構造が、オートクレーブによる121℃で30分間の最終滅菌プロセス中に熱的に安定であり、コロイド構造の平均直径が、最終滅菌プロセスの前及び後のコロイド構造、又はその両方と比較して、約50ナノメートルを超えて変化しないことを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「非経口」との用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術を含む。
【0037】
明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の表示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、近似値であり、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメータは、有効数字の桁数及び通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、0.9%塩化ナトリウム溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
図2図2は、5%デキストロース溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
図3図3は、乳酸リンゲル溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
図4図4は、時間経過に伴う例3のニモジピン製剤の濃度のグラフ表示であり、この製剤は、ニモジピン濃度が2mg/mlであり、褐色バイアル及び透明ガラスバイアルに入っており、UV光にさらされる。
図5図5は、最終滅菌前の例3のミセル分布のグラフ表示である。
図6図6は、最終滅菌後の例3のミセル分布のグラフ表示である。
図7図7は、ラットにおける試験生成物(例14)の参照(経口溶液)及び静脈内連続注入の後のニモジピンの平均血漿濃度-時間プロファイルのグラフ表示である。
図8図8は、ニモジピンの静脈内連続注入製剤で治療されたラットにおけるニモジピンの平均CSF濃度を示すグラフ表示である。
図9図9は、ニモジピンの静脈内連続注入溶液及び参照経口溶液で治療されたラットにおけるニモジピンの血漿濃度標準偏差(SD)を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ニモジピンは、ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬である。ニモジピンは、イソプロピル2-メトキシエチル1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-4-(m-ニトロフェニル)-3,5-ピリジンジカルボキシラートである。ニモジピンは、分子量が418.5であり、分子式がC2126である。ニモジピンは、これらの細胞へのカルシウムイオンの移動を阻害し、そのため、血管平滑筋の収縮を阻害する。平滑筋細胞の収縮過程は、カルシウムイオンに依存しており、脱分極時にこれらの細胞に、遅いイオン膜貫通電流として入る。動物実験では、ニモジピンは、体内の他の場所の動脈よりも、脳動脈に対して大きな影響を及ぼした。これは、おそらく、ニモジピンがきわめて親油性であり、血液脳関門を通過することができるからであろう。ニモジピン治療されたクモ膜下出血(SAH)患者の脳脊髄液では、12.5ng/mLという高濃度のニモジピンが検出されている。ヒトにおけるニモジピンの作用の正確な機構は不明である。臨床試験は、SAH後の脳血管攣縮によって引き起こされる神経障害の重症度に対し、ニモジピンの好ましい効果を示すが、この薬物が、これらの動脈の痙攣を予防又は緩和するという動脈造影の証拠はない。しかし、利用した動脈造影法が、血管攣縮に対して、臨床的に有意義な効果がもしあれば検出するのに十分なものであったかどうかは不明である。
【0040】
淡黄色結晶性粉末としてのニモジピンは、水にほとんど溶けない(2.5μg/ml、25℃)。したがって、その固有の溶解度は、濃縮され、安定であり、希釈可能な注射用医薬製剤の開発には課題となる。本発明は、堅牢であり、安定しており、投与が容易なニモジピン点滴注射の開発により、既に承認されているニモジピン剤形の溶解度不足を解決することを目的する。本発明の別の目的は、ニモジピン輸液の組成物及び製剤、及びその投与を提供することである。
【0041】
薬学的に許容される液体製剤の2つの重要な態様(例えば、非経口用)は、担体(溶媒)への薬物の溶解度と、最終製剤の安定性である(限定されないが、製剤が、薬物が溶液から析出するのを防ぐ能力を含む)。従来技術は、経口用及び注射用の剤形のために、難水溶性の薬物を可溶化させるために使用される賦形剤の例が豊富である。このような賦形剤としては、有機溶媒、界面活性剤、トリグリセリド、シクロデキストリン及びリン脂質が挙げられる。
【0042】
エタノールなどの有機溶媒の使用は、注射による活性成分(薬物)の沈殿、痛み、炎症及び溶血の可能性があるために、非経口製剤では制限されている。エタノールは、従来の市販の形態のニモジピンにおいて、溶解性及び安定性の両方の理由のために使用される。既に報告されているように、欧州で現在市販されているニモジピン製剤は、23.7%のエタノールを含む。
【0043】
従来の静脈内ニモジピン製剤とは対照的に、本発明の静脈内ニモジピン製剤は、ニモジピンと、親水性界面活性剤と、少量の有機溶媒とを含む溶液であり、ニモジピンは、混合することによって、少量の有機溶媒に溶解し、さらに、このニモジピン溶液を、親水性界面活性剤と合わせ、透明溶液中にニモジピンのミセルが生成する。
【0044】
濃縮物
本発明の一態様は、ニモジピン注射濃縮物に関する。このような実施形態では、ニモジピンを、薬学的に許容される担体と混合し、濃縮注射液、懸濁物、エマルジョン又は複合体を調製する。その後、有効量の親水性界面活性剤を添加する。場合により、注射用の薬学的に許容される媒体は、最終的なニモジピン濃縮製剤を調製するために、比較的少量(例えば、5ml)添加される。
【0045】
本発明の一実施形態では、ニモジピンを少量の有機溶媒に、例えば混合することによって溶解することによって、濃縮物を調製してもよい。その後、特定の好ましい実施形態では、得られたニモジピン溶液を有効量の親水性界面活性剤と合わせ、透明溶液中にニモジピンのミセルが生成する。その後、最終的なニモジピン濃縮製剤を調製するために、注射用の適切な医薬媒体(例えば、注射用水)を添加する。特定の好ましい実施形態では、有機溶媒は、例えば、エタノール95%であってもよく、親水性界面活性剤は、ポリソルベート80であってもよい。得られた製剤は、ニモジピンを含む安定なミセルを含む。
【0046】
本発明の別の実施形態では、適切な量のニモジピンを、安定なミセルを生成するのに十分な時間、有機溶媒及び親水性界面活性剤と一緒に混合することによって、濃縮物を調製してもよい。その後、最終的なニモジピン濃縮製剤を調製するために、注射用の適切な医薬媒体(例えば、注射用水)を添加する。特定の好ましい実施形態では、有機溶媒は、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、親水性界面活性剤は、ポリソルベート80であってもよい。有機溶媒が含まれる本発明の特定の実施形態では、有機溶媒は、注射濃縮物中の製剤の少なくとも25%(特定の実施形態では少なくとも40%)を構成し、最終希釈注射液中の少なくとも1%を構成する。他の好ましい実施形態では、溶媒は、注射濃縮物の約10~約90重量%、好ましくは30重量%より多く約90重量%までを構成し、最終希釈注射液中、約0.1~約4重量%を構成する。
【0047】
本発明の別の実施形態では、適切な量のニモジピンを、透明溶液が得られるまで、薬学的に許容される油担体及び親水性界面活性剤と混合し、少なくとも1つの薬学的に許容される乳化剤を添加し、ナノエマルジョン及び/又は自己乳化性濃縮製剤を製造することによって、濃縮物を調製してもよい。自己乳化性製剤は、注射用水又は任意の一般的に入手可能な静脈内輸液で希釈すると、ナノエマルジョンを生成する。このような実施形態では、ニモジピンは、好ましくは、油相にあり、油相は、好ましくは、大豆油、中鎖グリセリド、オレイン酸、オレイン酸エチルであり、他の薬学的に許容される賦形剤を単独で、又は乳化剤及び注射用水と組み合わせて含む。特定の実施形態では、乳化剤は、例えば、リン脂質であるリポイド80及び/又はPEG400であってもよい。ミセル又はナノエマルジョンのメジアン粒径は、約0.5ナノメートル~約350ナノメートルの範囲である。油担体が含まれる本発明の特定の実施形態では、油担体は、注射濃縮物中の製剤の約1~約30%を構成し、最終希釈注射液の約0.005%~約3%を構成する。他の好ましい実施形態では、油は、注射濃縮物中の製剤の約5~約20重量%を構成し、最終希釈注射液の約0.025%~約2%を構成する。乳化剤の量は、注射濃縮物中の製剤の約1~約30%を構成し、最終希釈注射液の約0.005%~約3%を構成していてもよい。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態では、適切な量のニモジピンを、親水性界面活性剤と一緒に、安定なニモジピン包接複合体生成するのに十分な時間、適切な量のシクロデキストリン(例えばβ-シクロデキストリン)水溶液中で混合する。このような実施形態では、シクロデキストリンは、好ましくは、注射濃縮物中の製剤の約5~約45%を構成し、最終希釈注射液の約0.025%~約4.5%を構成する。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、親水性界面活性剤は、注射濃縮物中の製剤の少なくとも約8%を構成し、最終希釈注射液中の少なくとも0.1%を構成する。他の好ましい実施形態では、親水性界面活性剤は、注射濃縮物の製剤の約1~約15重量%を構成し、最終希釈注射液の約0.01%~約2.5%を構成する。
【0050】
特定の好ましい実施形態では、親水性界面活性剤は、薬学的に許容される非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は、好ましくは、希釈後の注射用の薬学的に許容される媒体(例えば、水溶液)からの薬物基質の沈殿を阻害するのに十分な量で含まれる。非イオン性界面活性剤は、薬物基質と安定なミセルを生成し、薬物を可溶化することができ、さらなる光安定性を薬物に付与することができる。
【0051】
大まかな指針としてHLB値を用いると、親水性界面活性剤は、HLB値が10より大きく、特に12~17である化合物であると考えられる。親水性非イオン性界面活性剤は、油中よりも水中の方が可溶性が高い(HLBが10より大きい)。
【0052】
本発明の製剤に有用な薬学的に許容される非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン化合物、エトキシル化アルコール、エトキシル化エステル、エトキシル化アミド、ポリオキシプロピレン化合物、プロポキシル化アルコール、エトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマー、及びプロポキシル化エステル、アルカノールアミド、アミンオキシド、多価アルコールの脂肪族エステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル及びグルコース(デキストロース)エステルが挙げられる。さらなる例は、天然ヒマシ油又はポリエトキシル化ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物である。エトキシル化ヒマシ油は、1分子当たりのエチレンオキシド含有量が、25~100モルのエチレンオキシド、好ましくは、1分子当たり35~60モルのエチレンオキシドであってもよい。天然ヒマシ油又はポリエトキシル化ヒマシ油を、約1:35~約1:60のモル比でエチレンオキシドと反応させてもよく、場合により、生成物からポリエトキシル化成分を除去してもよい。本発明で有用な非イオン性親水性界面活性剤としては、さらに、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセニド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸(モノ-及びジ-)酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリグリセリル脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレンステロール及びその類似体;ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレン水素化植物油;ステロール中の、ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素化植物油からなる群から選択される少なくとも1つの成分との反応混合物;糖エステル、糖エーテル;スクログリセリド;脂肪酸塩、胆汁酸塩、リン脂質、リン酸エステル、カルボキシラート、サルファート、スルホナートが挙げられる。さらに具体的には、非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20)及び他のTween類、ソルビタンエステル、グリセロールエステル、例えば、Myrj及びグリセロールトリアセタート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標)EL)及び他のCremophor類、スルホサクシナート、アルキルサルファート(SLS);PEGグリセリル脂肪酸エステル、例えば、PEG-8グリセリルカプリラート/カプラート(Labrasol)、PEG-4グリセリルカプリラート/カプラート(Labrafac Hydro WL 1219)、PEG-32グリセリルラウレート(Gelucire 444/14)、PEG-6グリセリルモノオレエート(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6グリセリルリノレート(Labrafil M 2125 CS);プロピレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、例えば、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールカプリラート/カプラート;Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミタート、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物を含んでいてもよい。ポリエチレングリコール(PEG)自体は界面活性剤として機能しないが、種々のPEG-脂肪酸エステルは、有用な界面活性剤特性を有する。PEG-脂肪酸モノエステルの中でも、ラウリン酸、オレイン酸及びステアリン酸のエステルが最も有用である。
【0053】
PEG-脂肪酸モノエステルの例としては、PEG-8ラウレート、PEG-8オレエート、PEG-8ステアレート、PEG-9オレエート、PEG-10ラウレート、PEG-10オレエート、PEG-12ラウレート、PEG-12オレエート、PEG-15オレエート、PEG-20ラウレート及びPEG-20オレエートが挙げられる。ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、PEG-20ジラウレート、PEG-20ジオレエート、PEG-20ジステアレート、PEG-32ジラウレート、PEG-32ジオレエート、PEG-20グリセリルラウレート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-40グリセリルラウレート、PEG-20グリセリルオレエート、及びPEG-30グリセリルオレエートは、本発明の組成物中の界面活性剤として使用するのにも適している。親水性界面活性剤は、上述のいずれかの混合物をさらに含んでいてもよい。
【0054】
本発明の製剤中の特に好ましい親水性非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80は、空気-水界面での変性を最小限に抑えるためにタンパク質非経口製剤に一般的に使用される界面活性剤である。ポリソルベート80は、ミセル形成のために溶解度を高める目的で、小分子の注射用溶液製剤に使用されることもある。ポリソルベートは、ソルビタンエステルの非イオン性界面活性剤である。本発明において有用なポリソルベートとしては、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられる。他の好適な好ましい界面活性剤としては、ポロキサマー、ポロキサマー407、トランスクトールが挙げられる。界面活性剤は、医薬組成物における使用に適した任意の界面活性剤であってもよい。適切な界面活性剤は、イオン性親水性界面活性剤又は疎水性界面活性剤であってもよい。適切な親水性界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性又は非イオン性であってもよいが、非イオン性親水性界面活性剤が現時点で好ましい。好ましくは、本発明のニモジピン製剤は、少なくとも1つの非イオン性親水性界面活性剤を含む。
【0055】
しかし、他の実施形態では、ニモジピン製剤は、2種以上の非イオン性親水性界面活性剤の混合物、ならびに少なくとも1種類の非イオン性親水性界面活性剤及び少なくとも1種の疎水性界面活性剤を含む混合物を含んでいてもよい。
【0056】
特定の実施形態では、界面活性剤は、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第6,363,471号に記載されている界面活性剤のうち1つ以上であってもよい。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、有機溶媒は、アルコール(例えばエタノール)であり、可溶化剤は、ポリソルベートである。
【0058】
上述の実施形態では、ニモジピンを、ミセルと呼ばれるコロイド粒子の形成を介して可溶化剤として表面活性剤を用いて可溶化し、水性製剤中、共溶媒及び/又は適切な基質を用いることによって安定化させる。これにより、ニモジピン分子を取り囲むミセル又は微小コロイド粒子が形成され、これを、周囲にある水分子から単離するが、透明な水溶液が形成される。液体製剤は、非経口投与、経鼻投与又は経口投与としての使用に適している。
【0059】
ポリソルベートなどの水混和性界面活性剤分子は、疎水性部分と親水性部分とからなり、えり抜きの水にほとんど溶けない薬物を可溶化することができる。界面活性剤のモノマー濃度が、臨界ミセル濃度に達すると、界面活性剤が自己集合し、ミセルを生成することもできる。したがって、界面活性剤は、直接的な共溶媒効果によって、又はミセルへの取り込みのいずれかによって、薬物分子を可溶化することができる。市販の可溶化された経口製剤中及び注射用製剤中の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH 40)、ポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート80(Tween 80)、d-トコフェロールポリエチレングリコール1000サクシナート(TPGS)、Solutol HS-15、ソルビタンモノオレエート(Span 80)、ポリオキシル40ステアレート、Labrafil M-1944CS、Labrafil M-2125CS、Labrasol、Gellucire 44/14及びSoftigen 767を含む種々のポリグリコール化グリセリドが挙げられる。
【0060】
本発明では、ニモジピン製剤は、好ましくは、直径が約10nmのコロイド構造(ミセル)を形成する。他の好ましい実施形態では、コロイド構造の平均直径は、約0.5nm~約200nm、より好ましくは約5nm~約50nmで変動する。本発明では、ニモジピンミセル構造は、121℃で30分間のオートクレーブ処理による最終滅菌プロセス中、熱的に安定である。
【0061】
油性担体を使用する実施形態では、製剤は、例えば、Intralipid(10~20%大豆油)、Liposyn(10~20%ベニバナ油)及びLipofundid MCT/TCL(5~10%大豆油と中鎖トリグリセリド)を含む市販のエマルジョンの形態で油性担体を含んでいてもよい。ニモジピンは油溶性であり、ニモジピンが油相に分配されるので、水中油型エマルジョンでの静脈内投与用に配合することができる。
【0062】
特定の好ましい実施形態では、ニモジピン注射用製剤は、シクロデキストリン包接複合体である。適切なシクロデキストリンとしては、限定されないが、β-デキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、1つ以上のヒドロキシブチルスルホナート部分を含むβ-シクロデキストリン、例えば、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及び米国特許第6,610,671号又は米国特許第6,566,347号(いずれも参照により組み込まれる)に記載されるシクロデキストリンが挙げられる。一実施形態では、ニモジピン注射用製剤は、水浴中、複合体形成を増加させるために時折約60℃で加熱しつつ、ニモジピン、親水性界面活性剤及びβ-シクロデキストリンを48~78時間かけて連続的に混合することによって作られるβ-シクロデキストリン包接複合体を含む。
【0063】
任意の適切な薬学的に許容される水混和性有機溶媒を本発明に使用することができる。適切な有機溶媒の選択は、一部には、活性物質(ニモジピン)の溶媒への溶解度、溶媒が水に混和する程度、溶媒の忍容性に依存する。溶媒は、生理学的に許容されるものでなければならない。本発明で使用可能な溶媒の例としては、限定されないが、種々のアルコール、例えば、エタノール、グリコール、グリセリン、プロピレングリコール、種々のポリエチレングリコール及びジメチルイソソルビド(DMI)が挙げられる。さらなる有用なアルコールとしては、限定されないが、メタノール(メチルアルコール)、エタノール、(エチルアルコール)、1-プロパノール(n-プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(t-ブチルアルコール)、1-ペンタノール(n-ペンチルアルコール)、3-メチル-1-ブタノール(イソペンチルアルコール)、2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)、シクロペンタノール(シクロペンチルアルコール)、1-ヘキサノール(n-ヘキサノール)、シクロヘキサノール(シクロヘキシルアルコール)、1-ヘプタノール(n-ヘプチルアルコール)、1-オクタノール(n-オクチルアルコール)、1-ノナノール(n-ノニルアルコール)、1-デカノール(n-デシルアルコール)、2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、ジフェニルメタノール(ジフェニルカルビノール)、トリフェニルメタノール(トリフェニルカルビノール)、グリセリン、フェノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、3-エトキシ-1,2-プロパンジオール、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ペンタンジオール、3,4-ペンタンジオール、及び3,5-ペンタンジオールが挙げられる。
【0064】
乳化剤が濃縮物に組み込まれる実施形態では、乳化剤は、薬学的に許容されるポリエチレングリコールであってもよい。ポリエチレングリコールは、様々な分子量を有する多くの異なるグレードで利用可能である。例えば、ポリエチレングリコールは、PEG200;PEG 300;PEG 400;PEG540(ブレンド);PEG 600;PEG 900;PEG 1000;PEG1450;PEG 1540;PEG2000;PEG 3000;PEG 3350;PEG 4000;PEG4600及びPEG8000として入手可能である。特定の実施形態では、ニモジピン濃縮物を調製するために使用されるポリエチレングリコールは、好ましくはPEG400である。
【0065】
本発明のニモジピン濃縮物は、後の希釈のために(例えば、ヒト患者への投与部位及び投与時に)、単位用量で、任意の薬学的に許容される容器(例えば、アンプル、バイアル)に入っていてもよい。
【0066】
希釈
本発明の注射用ニモジピン製剤は、好ましくは、透明であり、ミセル又は包接複合体などの中にニモジピンを含有しており、これを、注射用の薬学的に許容される担体(例えば、注射用水)で希釈し、本明細書に記載され、開示されるようなミセル、包接複合体である非イオン性界面活性剤ナノ粒子の熱力学的に安定な分散物を生成する。希釈されたニモジピン製剤は安定であり、すなわち、ニモジピンは、広い範囲の水硬度及び広いpH範囲で広い温度範囲にわたって相分離しない。したがって、本明細書に開示するニモジピン注射濃縮物を、注射用水、生理食塩水、デキストロース又は一般に入手可能な輸液で0.01mg/mlの濃度まで希釈しても透明溶液のままであり、ニモジピンの沈殿を示さない。
【0067】
本発明によれば、ニモジピン製剤は、例えば、主に水性媒体中に2%(w/v)未満又は1%未満のアルコールを含むIVニモジピンが入った単一の250ml輸液バッグ又は輸液ボトルの投与を可能にし、これは、IV Nimotopと比較して明確な改善である。この製剤中のアルコール含有量が少ないことは、当業者に知られている多くの利点、例えば、本発明のニモジピン製剤を、アルコール依存症、アルコール代謝障害、妊娠中及び授乳中の患者への投与に適したものにするという利点を与える。
【0068】
本発明は、ニモジピンのミセル製剤であり、大幅に向上した水溶解度と、光安定性を含む安定性を与える。ニモジピンは、元の濃度の250倍まで水で希釈しても、この製剤から沈殿しない。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、ニモジピン注射濃縮物を、注射用水又は任意の一般的に入手可能な静脈内輸液を含む輸液バッグ中で希釈する。注入容量は、約50ml~約1000mlの範囲であってもよい。本発明は、単一の輸液バッグ中での製剤の希釈を提供し、薬物の沈殿を防ぐために、2種類の他の共注入溶液と共にNimotop溶液を注入するために三方活栓補助器を必要とするBayerのNimotop静脈内注射とは異なる特定の期間にわたって注入される。本発明は、希釈及び/又は投与の際に沈殿せず、安全性及び有効性を改善した単一の輸液を提供する。
【0070】
特定の好ましい実施形態では、ニモジピン注射は、ニモジピンの2.5×10-5モル濃度溶液になるまでさらに希釈し、動脈瘤をクリッピングした後であり、かつ投与されるニモジピンの静脈内注入の前に、さらされた動脈をリンスし、患者の転帰を改善することができる。
【0071】
特定の好ましい実施形態では、新規な溶媒を含まない(例えば、エタノールなどの有機溶媒が1%(w/v)未満の)ニモジピン製剤は、静脈内ボーラス、静脈内注入、動脈内、口腔内、経鼻胃管を用いて鼻腔内投与することができる。
【0072】
特定の好ましい実施形態では、一般に入手可能な輸液で希釈した後のニモジピンの注射、輸液セット及び輸液バッグは、光分解からさらに保護するために紫外線(UV)保護バッグで覆うことができる。
【0073】
本発明の化合物は、必要に応じて従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを最終的に含有する製剤で、非経口投与することができる。
【0074】
注射用製剤、例えば滅菌注射用の水性懸濁物又は油性懸濁物は、適切な分散剤又は湿潤剤と懸濁化剤とを用いて、公知の技術に従って配合することができる。滅菌した注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌した注射用溶液又は懸濁物であってもよい。許容されるビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウムである。さらに、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を使用してもよく、さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用することができる。静脈内投与に適した担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールならびに及びそれらの混合物を含む溶液が挙げられる。
【0075】
製剤は、水性ビヒクルを含んでいてもよい。水性ビヒクルとしては、一例として、限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸リンゲル注射液が挙げられる。非水性の非経口ビヒクルとしては、一例として、限定されないが、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油及びピーナッツ油が挙げられる。
【0076】
静菌濃度又は抗真菌濃度での抗菌剤が、複数用量容器に封入された非経口製剤に添加されなければならず、抗菌剤としては、フェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル及びプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ホウ酸、p-ヒドロキシベンゾアート、フェノール、塩素化フェノール化合物、アルコール、第四級化合物、水銀、及び上述の混合物が挙げられる。等張剤としては、一例として、限定されないが、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。バッファーには、ホスファート及びシトラートが含まれる。酸化防止剤には重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔薬には、塩酸プロカインが含まれる。懸濁剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)が挙げられる[金属イオンの捕捉剤又はキレート化剤としては、EDTAが挙げられる]。薬学的に許容されるpH調整剤としては、例として、限定されないが、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸が挙げられる。本発明のニモジピン製剤は、さらに、生理学的に許容される成分(例えば、典型的な体液との等張性を達成するために従来から使用されている塩化ナトリウムなどの物質、生理学的に適合するpH範囲を確立し、ニモジピンの溶解度を高めるためのpHバッファー、防腐剤、安定化剤及び酸化防止剤など)を含んでいてもよい。
【0077】
特定の好ましい実施形態では、注射用水及び他の一般的に入手可能な静脈内輸液で希釈した後の注射用製剤、最終希釈溶液のpHは約3~約9、特定の好ましい実施形態では、約4.5~約8である。本発明のいくつかの実施形態では、薬学的に許容されるバッファー又はアルカリ化剤を用いてpHが調整され、適切なアルカリ化剤及びバッファーとしては、限定されないが、NaOH、KOH、トリエチルアミン、メグルミン、L-アルギニン、リン酸ナトリウム緩衝液(三塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム又はo-リン酸のいずれか)、重炭酸ナトリウム、及び上述のいずれかの混合物が挙げられる。
【0078】
特定の他の実施形態では、等張化剤を添加することによって製剤を等張性にしてもよく、等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容される糖、塩又はこれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられ、例えば、限定されないが、デキストロース及び塩化ナトリウムが挙げられる。等張化剤は、約100mOsm/kg~約500mOsm/kg、又は約200mOsm/kg~約400mOsm/kg、又は約280mOsm/kg~約320mOsm/kgの量で存在してもよい。
【0079】
ニモジピンによる治療
本発明によれば、静脈用ニモジピン溶液は、限定されないが、動脈瘤、クモ膜下出血、血管攣縮性狭心症、プリンツメタル狭心症、安定狭心症、急性心筋梗塞、心筋不全、不整脈、全身性高血圧、肺高血圧、うっ血性心不全、冠動脈手術及び肥大性心筋症などの状態を治療することができる。
【0080】
ニモジピンは、動脈瘤性クモ膜下出血後の虚血性神経障害の治療に適応である。注入用のNimotop(登録商標)0.02%溶液(Bayer plc)に関し、推奨される治療は以下の通りである。最初の2時間の処置のために、1mgのニモジピン、すなわち、5mlのNimotop溶液(約15μg/kg bw/h)を、中央カテーテルを介して1時間毎に注入すべきである。忍容性が十分であれば、血圧の重大な低下が観察されない限り、用量を2時間後に2mgニモジピン、すなわち、1時間当たり10mlのNimotop(約30μg/kg bw/h)まで増やすべきである。体重が70kg未満であるか、又は血圧が不安定な患者は、1時間当たり0.5mgニモジピン(2.5mlのNimotop溶液)の用量から、又は必要な場合はもっと少量から開始しなければならない。米国では、経口投与用のNimotopカプセルも入手可能であり、それぞれ、グリセリン、ペパーミント油、精製水及びポリエチレングリコール400のビヒクル中に30mgのニモジピンを含有する。経口用量は、4時間毎に60mgを連続して21日間、好ましくは、食事の1時間前以降、又は食事から2時間以内である。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、IVニモジピン溶液を約3週間の期間にわたって連続的に注入することができる。注入速度は、患者の忍容性に基づいて滴定することができ、血圧の低下を回避することができる。好ましい注入速度は、例えば、ニモジピン約0.05mg/時間~ニモジピン約5mg/時間である。現在米国FDAが承認している経口剤形では、用量滴定は不可能である。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、医薬品の有効性及び安全性を下げることなく、IVニモジピンの用量を、4時間毎に60mgの現在承認されている経口用量と比較して、5時間毎に約2~10mgまで下げる。現在の米国FDAが承認している経口ニモジピン薬物製品は、初回通過代謝が高く、多くの代謝産物を生じ、その全てが、不活性であるか、又は親化合物よりもかなり活性が低い。経口投薬後のニモジピンバイオアベイラビリティは、平均で13%である。初回通過代謝は、静脈内投与によって回避され、現在承認されている経口剤形に関連する対象(患者)間の変動性が低下する。また、単一のバッグ及び/又はボトルによる本発明のニモジピン製剤の連続静脈内注入は、意識のない患者及び経口剤形を嚥下することが困難な患者に有効濃度のニモジピンを投与するための簡便な方法である。
【0083】
本発明に係る製剤の以下の例は、本発明を何ら限定するものではなく、本明細書に記載の様々な製剤の単なるサンプルである。
【0084】
例1~4
例1~4の製剤を以下のようにして調製した。透明溶液が観察されるまで、撹拌し、混合しつつ、ニモジピンをエタノールに加えた。次いで、撹拌し、混合しつつ、界面活性剤としてポリソルベート80を30分かけて添加し、安定なミセルを形成させた。次いで、注射用水を用い、容量を5mlまで増やし、ニモジピン注射濃縮製剤を調製した。ニモジピン注射濃縮物を、任意の量の一般に使用される静脈内輸液で希釈することができる。例1~4の成分を以下の表1に示す。
【表1】
【0085】
例5
化学的相互作用を理解し、ニモジピン結晶が希釈後に沈殿するかどうかを観察するために、例3のニモジピン製剤を、種々の一般的に使用される静脈内輸液(0.9%塩化ナトリウム、5%デキストロース及び乳酸リンゲル液)を用いて行った希釈試験で試験した。以下の表2に示すように、これら3種類の異なるIV輸液でこの製剤を希釈した後、ニモジピン結晶の沈殿は観察されなかった。
【表2】
【0086】
図1は、0.9%塩化ナトリウム溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
【0087】
図2は、5%デキストロース溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
【0088】
図3は、乳酸リンゲル溶液中の試験濃度(0.2mg/ml、0.02mg/ml及び0.01mg/ml)での例3の製剤のニモジピン濃度のグラフ表示である。
【0089】
この新規なニモジピン製剤の光分解を理解するために、例3の濃縮製剤を、さらに、制御されたUVキャンバー下で、UV光に48時間さらした。ニモジピン製剤を、同じ条件下で、褐色ガラスバイアルと透明バイアルに入れて保存した。以下の表3に示すように、褐色ガラスバイアルと透明バイアルの両方で光分解は観察されなかった。この結果は、例3の濃縮(ミセル)製剤が、ニモジピンに光安定性を与えるという結論を裏付けている。
【表3】
【0090】
図4は、例3のニモジピン製剤をUV光にさらした時間のグラフ表示であり、この製剤は、ニモジピン濃度が2mg/mlであり、褐色バイアル及び透明ガラスバイアルに入っている。このプロットは、時間経過に伴うニモジピン濃度を示す。
【0091】
例6~8
例6~8では、ニモジピン濃縮物を次のように調製する。撹拌し、ニソルジピンをポリソルベート80及びポリエチレングリコール400に加え、30分間混合して安定なミセルを生成し、注射用水を用い、容量が5mlにする。防腐剤としてベンジルアルコールを加えた。このニモジピン注射濃縮物を、任意の量の一般に使用される静脈内輸液で希釈することができる。例6~8の製剤を以下の表4にさらに詳細に示す。
【表4】
【0092】
例9~11
例9~11では、ニモジピン濃縮物を以下のように調製する。撹拌し、混合しつつ、透明溶液が観察されるまで、ポリソルベート80及び大豆油にニオジピンを添加し、乳化剤としてリン脂質Lipoid 80及びPEG400を添加し、ナノエマルジョン及び/又は自己乳化性製剤を製造する。このニモジピン注射濃縮物を、任意の量の一般に使用される静脈内輸液で希釈し、ナノエマルジョンを生成することができる。例9~11の製剤を以下の表5にさらに詳細に示す。
【表5】
【0093】
例12
例12では、ニモジピン濃縮物を以下のように調製する。撹拌し、混合しつつ、β-シクロデキストリンを注射用水に15分かけて添加し、撹拌しつつ、上述の分散物にニモジピン及びポリソルベート80を加え、48時間混合し、透明溶液を得る。60℃まで加熱した水浴を用いて加熱して、包接複合体の割合を増加させた。
例12の製剤を以下の表6にさらに詳細に示す。
【表6】
【0094】
例13
例13では、例3のニモジピン濃縮物に対し、121℃で30分間オートクレーブすることによる最終滅菌プロセスを行う。図5は、粒径約10nmにピークを有する最終滅菌前の例3のミセル粒度分布を示すグラフである。粒径分布は、Malvern Zetasizer Nano ZSを用い、温度25℃で測定した。図6は、粒径約10nmにピークを有する最終滅菌(121℃のオートクレーブで30分間)後の例3のミセル粒度分布を示すグラフである。粒径分布は、Malvern Zetasizer Nano ZSを用い、温度25℃で測定した。これらの結果に基づいて、例3の製剤は安定であると考えられる。
【0095】
例14
例14の製剤を以下のようにして調製した。透明溶液が観察されるまで、撹拌し、混合しつつ、ニモジピンをエタノールに加えた。次いで、撹拌し、混合しつつ、界面活性剤としてポリソルベート80を30分かけて添加し、安定なミセルを形成させた。次いで、この溶液に十分な注射用水を加え、5mlのニモジピン注射濃縮物を生成した。このニモジピン注射濃縮物を、任意の量の一般に使用される静脈内輸液でさらに希釈することができる。例14の成分を以下の表7に示す。
【表7】
【0096】
例15(安定性)
褐色ガラスボトルを例3の製剤(5mLの濃縮物)、例3の製剤(100mlの注入準備が終わったもの)、例14の製剤(5mLの濃縮物)で満たし、ゴム栓とフリップオフシールを付し、以下の条件で安定性試験を行った。
-40℃±2℃/75%RH±5%RHでのICH促進条件;及び
-25℃±2℃/60%RH±5%RHでのICH室温条件。
【0097】
サンプルを分析し、ニモジピンアッセイで不純物を測定した。また、本発明の製剤例の物理的安定性、物理的外観及びpHドリフトを記録した。例3の濃縮物の安定性を以下の表8に示す。
【表8】

例3のすぐに注入可能な実施形態の安定性を以下の表9に示す。
【表9】

例14の濃縮物の安定性を以下の表10に示す。
【表10】
【0098】
例16(in vivo試験)
健康なWistarラットでin vivo試験を実施し、例14に従って作製したニモジピン連続静脈内注入による薬物放出を評価した。血漿及びCSF(脳脊髄液)薬物動態及び相対バイオアベイラビリティを評価するために、0.73mgのニモジピン単回静脈内注入(4時間)対5.5mgのニモジピン経口溶液(Nymalize)の単回投与の並行研究を行った。薬物動態研究は、6匹の健康なラット(雄3匹及び雌3匹)で行った。試験製剤は、連続静脈内注入として制御された速度で4時間にわたって投与(連続注入)されるニモジピンの単一の0.73mg用量(D5W輸液での希釈後の濃度が0.182mg/ml)であった。参照製品は、ニモジピン5.5mgの経口溶液Nymalizeであり(ニモジピンの経口バイオアベイラビリティは平均13%であり、したがって経口用量はそれに応じて調整され)、強制経口投与によって経口投与された。投与の15分後、30分後、及び1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後及び24時間後に血液試料を採取した。CSFサンプルを、投与から1時間後、2時間後、4時間後及び24時間後に採取した。全サンプルを、有効な分析LC-MS法を用いて分析した。
【表11】
【0099】
連続注入による4時間にわたる0.73mgの単回用量の投与後、平均Cmaxは1.92時間のメジアンTmaxで249ng/mLであることが判明した。平均AUC0-t及びAUC0-無限大はそれぞれ1081及び1084ng*hr/mLであることが判明した。平均排出半減期は3.68時間であった。クリアランス及び分配量は、それぞれ11.4mL/分及び3.66Lであった。
【0100】
5.5mg経口溶液用量の単回投与後、平均Cmaxは、0.75時間のメジアンTmaxで479ng/mLであることが判明した。AUC0-t及びAUC0-無限大はそれぞれ1850及び1850ng*hr/mLであることが判明した。平均排出半減期は2.6時間であった。相対バイオアベイラビリティは、静脈内持続注入試験製品に対して22.6%であることが判明した。
【0101】
薬物動態結果は、表12、13及び図7に報告している[ラットにおける試験生成物(例14)の参照(経口溶液)及び静脈内連続注入の後のニモジピンの平均血漿濃度-時間プロファイル]。
【表12】

【表13】

【表14】
【0102】
4時間にわたり投与された0.73mgの単回投与の注入持続期間にわたり、CSFにおいて、一貫したレベルのニモジピンが観察された。ニモジピンCSFレベルの範囲は、1.26~1.56ng/mlであると測定された。一貫したニモジピンCSF濃度は、注入から1時間以内に達成された。CSF/血漿比は、4時間までの注入では一貫しており、0.0064~0.0075の範囲であることが判明した。ニモジピンの静脈内連続注入製剤で治療されたラットにおけるニモジピンの血漿濃度及びCSF濃度を表14及び図8に報告している。
【0103】
初回通過による代謝が大きいため、ニモジピンの経口バイオアベイラビリティは、この試験では平均で22%である。経口治療期間中、血漿濃度及び濃度曲線の形状は、ラット間でかなり変動し、これはおそらく初回通過による排除の変動性を反映しており、ニモジピンの平均経口バイオアベイラビリティが低いことも反映している。
【0104】
連続静脈内注入ニモジピンの絶対バイオアベイラビリティは、100%である。静脈内注入製剤のバイオアベイラビリティの増加は、薬物動態の変動性も減少させる。さらに、静脈内注入後の初回通過の影響の回避は、CYP3A4誘導又は阻害に関連する薬物-薬物相互作用の影響を減少させる可能性を有する。ニモジピンの静脈内連続注入溶液及び参照経口溶液で治療されたラットにおけるニモジピンの血漿濃度標準偏差(SD)を表15及び図9に報告している。
【表15】
【0105】
本発明の安定なミセルニモジピン製剤を連続静脈内注入として投与すると、肝臓による初回通過代謝が最小限に抑えられ、バイオアベイラビリティが改善されると結論することができる。したがって、血漿及びCSFにおいて、ニモジピンの一貫したレベルが維持される。
【0106】
結論
ニモジピン濃縮物及び希釈製剤は、異なるが同等の方法を用いて製造することができ、これらの製剤は本明細書に具体的に言及したもの以外の他の界面活性剤、担体及び乳化剤を使用できることは当業者には明らかであろう。そのような明らかな変更は、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9