(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20221220BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A23L19/00 D
A23G3/34 101
(21)【出願番号】P 2020040650
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2020-04-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595172827
【氏名又は名称】有限会社松野屋
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】清 野 重 美
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-104406(JP,A)
【文献】特開平09-131159(JP,A)
【文献】特開2010-200648(JP,A)
【文献】特開昭49-133544(JP,A)
【文献】特開昭57-002633(JP,A)
【文献】特開平09-037718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選果した完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際か、または、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際かの、少なくとも新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用して梅表皮にメイラード反応による発色促進処理を施すと共に、交ぜ返し処理を実施するようにしてオレンジ色の甘梅としたところで、梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、新たな完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、これら新たな完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この新しい完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用した発色促進処理を施し、太陽光の照射のメイラード反応を促進させる作用によって新しい完熟梅の果皮および果肉が、好ましい艶をもった深みのある褐色に発色し、前記オレンジ色の甘梅の鮮明なオレンジ色とは大きく異なる、より味わい深い熟成を表現させると共に、交ぜ返し処理を実施することによって褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなることを特徴とする梅菓子の製造方法。
【請求項2】
選果した完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のため、60~80℃に加温して発酵を抑える際か、または、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のため、60~80℃に加温して発酵を抑える際かの、少なくとも新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用して梅表皮にメイラード反応による発色促進処理を施すと共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中からこれらオレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この新しい完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用した発色促進処理を施し、太陽光の照射のメイラード反応を促進させる作用によって新しい完熟梅の果皮および果肉が、好ましい艶をもった深みのある褐色に発色し、前記オレンジ色の甘梅の鮮明なオレンジ色とは大きく異なる、より味わい深い熟成を表現させると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施し、これら新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなることを特徴とする梅菓子の製造方法。
【請求項3】
熟成砂糖溶液は、使用前に裏漉し処理を施し、不足分を補充する場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、裏漉し処理が施された熟成砂糖溶液と混合するか、または、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合としてて溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液を追加、混合するかの少なくとも何れか一方を行い、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬する工程に用いるようにした、請求項1または請求項2何れか一記載の梅菓子の製造方法。
【請求項4】
選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、請求項1ないし請求項4何れか一の梅菓子の製造方法に記載の最後の褐色の甘梅を取り出した後の熟成砂糖溶液を用い、この熟成砂糖溶液の中に該新たな完熟梅を埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、これら新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出した上、該褐色の甘梅の製造過程を経た熟成砂糖溶液は、新たな完熟梅から褐色の甘梅を造る工程に繰り返して使用するようにした、請求項1ないし請求項3何れか一記載の梅菓子の製造方法に記載の最後の褐色の甘梅を取り出し、獲得した熟成砂糖溶液を、別ロットの褐色の甘梅の製造工程に、熟成砂糖溶液として用いるようにした、請求項1ないし請求項3何れか一記載の梅菓子の製造方法。
【請求項5】
熟成砂糖溶液から取り出した褐色の甘梅を、40~50℃の範囲で一週間に亘って陰干しして乾燥させ、糖度75以上の褐色の甘梅干しとし、該褐色の甘梅干しの表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにした、請求項1ないし請求項4何れか一記載の梅菓子の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5何れか一記載の梅菓子の製造方法における、完熟梅または新たな完熟梅の少なくとも何れか一方が、完熟梅に至らない段階の若梅、半完熟梅または赤焼け梅の少なくとも何れか一に置き換えられ、これら完熟梅に至らない段階の選果された梅果実を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった上、熟成砂糖溶液の中に浸漬状とするようにした、請求項1ないし請求項5何れか一記載の梅菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梅干しに代表される梅の加工技術に関するものであり、特に、加工果実としての利用範囲が狭い梅を使って、所謂高級菓子を含めた食品の製造技術に関連する分野に属す高品質の新規な梅菓子を製造可能とする新規な製造方法、およびその製造方法によって製造された梅菓子を提供しようとするものであり、梅菓子の製造に必要な食品材料や調味料、およびそれらの調合、調理、包装、輸送などに関する技術分野を初め、それらの分野には属していないが、そこでの技術的思想の創作内容を取り入れたと同定されるような類いのものを製造、提供する分野についてまでをも含むのは勿論のこと、それらの分野に係って行う、あるいは、高級菓子の生産設備や施設、ならびにそれらを施設する分野は勿論のこと、その製造および設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部晶々それらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的な甘梅は、完熟梅の1つ1つの軸を取り、竹串で突いて複数箇所に孔を開け、約3%程度の濃度とした塩水に没した状態で約3日間程度浸けた後、水気を切ってから3~4%濃度とした酢入りの熱湯に少しずつ入れて湯がき、湯がき上がった梅は、熱湯から引き上げ、ホワイトリカー、三温糖、上白糖等が混ぜ合わされた砂糖溶液中で40分間程度に渡って煮詰め、その後、ワックスペーパーで密閉して空気に触れない状態を実現し、常温にて発酵させないように保存してから、さらに、発酵を確実に阻止するために3日目~4日目に1度、全ての梅を砂糖液中から取り出して砂糖液のみを再加熱して殺菌処理し直し、煮詰められて熱い状態の砂糖液中に再び梅を戻すが、砂糖液の減少分だけ再度砂糖を煮溶かして砂糖液を作り、梅が外気に露出しない状態に没して浸けられた状態となるようにし、殺菌を兼ねた砂糖液の濃度を高める工程を3度程に分けて実施した後、砂糖液に浸けた状態で密閉し、発酵しないように注意して常温にて2週間程保存すれば、ようやく甘梅が完成するという、非常に手間と時間とを要し、工場において大量生産するにしても非常に高価な食品となってしまうものであった。
【0003】
また、一般的な甘梅は、その表皮が砂糖溶液の浸透処理により、豊かな色合いと艶とを有して伝統的な高級菓子として珍重されてきたという歴史を有しており、表皮が湿潤状態にある故、食する際には必ず和菓子小皿にのせ、和菓子フォークや箸などを用いる必要があり、多くの焼き菓子類などのように気軽に手掴みして口にしてしまうと、手指がべ夕ついてしまうという欠点を有するものであり、下記の特許文献1(1)に提案されているもののように、開発済みの効率的な生産によって価格を抑えることに成功しても、こうした取り扱いの気難しさが、日常的に気軽に食されるまでに大衆化し、安定的な大量消費に結び付けることを極めて困難なものとしていた。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況に鑑み、本願出願人は、その打開策となるものとして、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、約4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、必要に応じて、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、完熟梅の糖度が62以上で型崩れのない甘梅に仕上げるようにし、より効率的に、略理想的な形や色、艶風味や食感を有する甘梅の製造に最適な製造方法を既に開発し、実用化済みとしている。
【0005】
さらに、本願出願人は、下記に示す特許文献1(2)に示したように、同特許文献1(1)に提案されている甘梅の製造方法によって製造された、糖度が62以上で型崩れのない甘梅を、40~50℃の範囲で一週間に亘って陰干しして乾燥させ、甘梅の糖度75以上とした上、甘梅の表面全体に麦芽糖粉末または顆粒をまぶしてなり、高級菓子としてだけではなく、より気軽に手掴みでも手指を汚すことなく食することが可能であり、しかも食べ盛りの子供達にも大いに好まれ、一層の消費の拡大が期待できる梅菓子を既に開発済みとしている。
【0006】
このようにして、本願出願人は、伝統的な甘梅の製造方法における生産性の悪さや、甘梅の表面のベタつきによる食べ難さなどの欠点を悉く解決し、より多くの人々に高品質の甘梅を、より気軽に手掴みでも食すことができるよう提供できるものとしてきたが、甘梅の商品展開の上では、外観色がオレンジ色の甘梅、および、外観色がオレンジ色の甘梅を40~50℃の範囲で一週間に亘って陰干しして乾燥させ、糖度75以上の褐色の甘梅干しとし、該褐色の甘梅干しの表面全体に麦芽糖粉末または顆粒をまぶして製造されたオレンジ色の甘梅干しが商品化されているが、それ以外の商品展開が難しいという課題があり、新たな甘梅の商品開発を模索していた。
【文献】(1)特許第3197197号明細書 (2) 特許第4418459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
上述したとおり、本願出願人は、従前までに開発済みとしてきたオレンジ色の甘梅およびオレンジ色の甘梅干しなどに加えて販売できる新たな梅菓子の商品化を模索している中、高品質のオレンジ色の甘梅を製造する過程で発生する使用済みの砂糖溶液は、その砂糖溶液の中に浸漬状とされた完熟梅から溶出した梅果汁および梅のエキスが豊富に含有されたものとなっているにも拘らず、次回生産以降のオレンジ色の甘梅の品質を一定に保つ目的から、オレンジ色の甘梅の生産には用いることができず、これまで廃棄処分せざるを得ないという事情があった。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、本願出願人が、既に開発済みとしたオレンジ色の甘梅とは色合いが異なる新たな甘梅商品の開発を実現化することができる上、オレンジ色の甘梅の生産によって発生する梅果汁および梅のエキスが豊富に含まれた熟成砂糖溶液を有効活用し、より一層経済的に生産可能とする新たな甘梅の製造技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に亘って試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な梅菓子の製造方法、および、それによって製造された新規な梅菓子を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の梅菓子の製造方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、選果した完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、これら完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、殺菌処理を併用すると共に、交ぜ返し処理を実施するようにしてオレンジ色の甘梅としたところで、梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、新たな完熟梅を塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、これら新たな完熟梅を所定の条件に保持して砂糖濃度を高める濃縮処理を継続する一方、殺菌処理を併用すると共に、交ぜ返し処理を実施することによって褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなる構成を要旨とする梅菓子の製造方法である。
【0010】
この基本的な構成からなる梅菓子の製造方法は、より具体的に示すと、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中より該オレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにしてなる構成を要旨とする梅菓子の製造方法である。
【0011】
さらに具体的には、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中より該オレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅としたところで、この熟成砂糖溶液の中より該褐色の甘梅を取り除き、該褐色の甘梅の製造過程を経た熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにした構成からなる梅菓子の製造方法となる。
【0012】
(関連する発明1)
上記した梅菓子の製造方法に関連し、この発明には、それによって製造された梅菓子も包含している。
即ち、傷や腐敗箇所のない選果された完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中より該オレンジ色の甘梅を取り除き、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにした、この発明の基本をなす梅菓子の製造方法によって製造された梅菓子である。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、この発明の梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子によれば、従前までとは異なり、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、本願出願人が、既に開発済みとしていたオレンジ色の甘梅とは色合いが大きく異なる新たな甘梅商品の開発を実現化することができる上、従前までであれば、オレンジ色の甘梅の生産に使用した砂糖溶液はその用途を失って再利用されることなく廃棄処分せざるを得なかったものが、一度、オレンジ色の甘梅の生産に使用された砂糖溶液には梅のエキスが豊富に含まれており、これを熟成砂糖溶液として有効利用し、より経済的に新規且つ特徴的な褐色の表皮および果肉をもつ甘梅の効率的な製造を実現化することができる上、梅果実から抽出された梅のエキスを豊富に含む熟成砂糖溶液を用い、それ以外の着色料などを一切使用することなく、より自然で味わい深い色合いに発色された褐色の甘梅は、食品としての安全性に優れるのは勿論のこと、健康の増進に大いに役立つものとなり、オレンジ色の甘梅よりもさらに深い熟成度の外観を呈し、従前までの、それ以外の何れの梅菓子とも充分に差別化された外的美観をもつ高品質の梅菓子として提供することができるという秀でた特徴を発揮する。
【0014】
加えて、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用して梅表皮にメイラード反応による発色促進処理を施すことにより、新たな完熟梅に、熟成砂糖溶液の加温、浸透および太陽光が作用し、その表皮および果肉までが、他の方法では成し得ない深みと艶のある褐色に変化し、オレンジ色の甘梅とは明確に異なる、より濃色の褐変によって甘梅の熟成度が視覚的に表現された全く新規な外観色の梅菓子を提供するという格段の効果を得ることができる。
【0015】
そして太陽光照射処理によって照射する太陽光および太陽熱は、砂糖溶液の濃縮処理過程で必要となる加温のための熱源としても、また、その過程で発生する危険性が極めて高く、製品価値をなくしてしまう虞のある醗酵現象を阻止するための加熱殺菌用の熱源としても、この透過による太陽熱を有効活用して製造原価の高騰を抑制し、光熱費の削減を図ることも可能となって、それだけ経済的に甘梅を製造することが可能になり、全体として、安定した品質の梅菓子を、極めて効率的且つ経済的に大量生産することが保証されるという秀でた特徴を発揮することになる。
【0016】
また、熟成砂糖溶液は、使用前に裏漉し処理を施し、不足分を補充する場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、裏漉し処理が施された熟成砂糖溶液と混合するか、または、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液を追加、混合するかの少なくとも何れか一方を行い、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬する工程に用いるようにすることによって、梅菓子の高品質を一貫して維持し、安定生産することができるものとなる。
この褐色の甘梅の生産の過程で獲得した熟成砂糖溶液を、次回以降の褐色の甘梅の生産に繰り返して利用して行くようにすることにより、熟成の度合いを次第に高め、従前までの製造方法では得ることのできない新たな外観色および香味を呈する梅菓子を永続的に提供し続けることができるものとなる。
【0017】
そして、この発明の梅菓子の製造方法には、完熟した梅果実だけではなく、それ以外の若取り梅果実、半完熟の梅果実、そして、商品価値の極めて劣る赤変した梅果実に至っても、同様に梅菓子に製品化可能とする極めて効果的且つ新規な製造方法を確立し得たものであり、あらゆる成長過程の梅であっても、傷や病気に冒されていない限り、果実のままで価値ある梅菓子としての商品化ができ、梅栽培農家の収入を安定させる上で大いに役立つだけではなく、消費者にとっても、効能のある秀でた自然食品を比較的手軽に食味できるようにして、その独特の風味を楽しみながら健康維持管理にも役立てることが可能になるという一石二鳥の恩恵を受けることができることになる。
【0018】
さらに、糖度が62以上となり型崩れのない状態で熟成砂糖溶液から取り出された褐色の甘梅は、40~50℃の範囲で一週間に亘って陰干し乾燥させ、糖度が75以上となるよう調整し、褐色の甘梅干しとした後に、その表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにすることにより、褐色の甘梅干しの表面に付着した麦芽糖の乾燥状態を維持可能とし、熟成砂糖溶液に浸漬して製造されたままの褐色の甘梅とは、ひと味違う外観と食感、食味とを得ることができ、従前までの甘梅と同様に高級菓子として食することができる外、和菓子フォークなどを使用せずに、手掴みして口にした場合にも、表面に付着した麦芽糖が手指に熟成砂糖溶液の付着するのを防止するものとなり、他の焼き菓子類などと同様に、日常的なおやつやデザートなどとしても気軽に食すことができ、しかも麦芽糖は、外の砂糖類に比べてカロリーが少なく、血糖値の急激な上昇を起こさないなどの特徴を有し、健康管理に気を遣う高齢者から食べ盛りの子供達に至る幅広い消費者層に大いに歓迎されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
梅菓子の製造に使用する梅は、大梅の品種のもので、傷や汚れが付いていないようできるだけ厳正に選果した完熟梅を採用するのが、その出来上がりの豪華さ、果肉の豊かさからして望ましいと言えるが、完熟した中梅、小梅であっても勿論製造することが可能であることはいうまでもない。
甘梅を製造する段階にあっては、後述する実施例にも示すように、4%濃度の塩水による低温、塩蔵処理は、害虫除去と表皮上に残存する不純物処理とに欠くことができず、また、果肉を引き締め、糖熟の進行を止める作用も果たし、以降の処理工程を円滑且つ確実に実施することを保証することにも繋がっていく重要な工程であり、所定個数毎容器に並べ、大型冷蔵庫の中で、梅の組織に影響を来すことのない1~10℃、望ましくは5℃前後の温度に維持して約72時間程度の時間を掛けて保管するようにする。
【0020】
低温、塩蔵処理工程を終えた完熟梅は、果実に傷を付けないようにして容器から取り出し、十分に水切りを行わなければならない。続いて、所定の割合、即ち、水1に対して砂糖が0.4の重量混合比とした砂糖溶液を90~100℃で加熱して十分に溶かし、他の容器に重なり状とならないよう制限された個数で並べ置いた完熟梅にかけ、完熟梅全てが砂糖溶液中に没した状態を実現し、次の砂糖溶液の濃縮工程に移行する。
【0021】
砂糖溶液の濃縮工程で最も重要な部分は、この過程でいかに醗酵を確実に阻止して果肉の崩れを防止し、表皮に皺を発生させることのない加工を実現するかに掛かっており、この濃縮工程は、少なくとも毎日1日当り40℃以上の温度に10時間以上確保されるようにすべきであり、この処理は、加工処理場内を適宜ヒーターで暖房する必要があって、主として気温の上がる日中を当てるようにすることによって暖房経費を節約することが可能である。
1日の間のその余の時間帯は、完熟梅果肉内への砂糖成分の浸透、定着を図るため常温、安定処理期間とするようにし、この濃縮期間には、約10~15日間程度、その間の平均室温や完熟梅の完熟程度等を考慮しながら、主として表皮の変化を観察しつつ、慎重且つ十分に時間を掛けて進行させるのが良い。
【0022】
この濃縮処理を継続するための浸漬期間中、最も注意を要するのが砂糖溶液によって完熟梅に醗酵現象を来たしてしまわないよう高温処理することにあり、所定期間毎、例えば3~4日(期間内の平均室温や果実の性状の違い等を考慮する)に1度程度、60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理が必ず併用されなければならない。
加温程度が60℃未満では、十分な殺菌効果が期待できず、その後において醗酵現象を来す虞があり、また、80℃を超えて不必要な高温にまで加熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切ではない。
【0023】
また、この期間中には、必要に応じ、完熟梅全体に均質な砂糖溶液の浸透を促す上から、数次の交ぜ返し処理を実施すべきであり、表皮に傷を付けたり、果肉に割れを生じさせたりすることのないよう注意深く実施するのが良く、濃縮期間は、完熟梅の糖度が、均質に62以上に達するようになるまでの期間をその目安としなければならない。
糖度62未満では、製造後に醗酵を来す虞がある上、風味や形、艶の保持などが難しくなり、菓子としての商品価値を損ねることが懸念される。
また、糖度が64を越すと表皮上に砂糖の結晶化現象が起きて干し柿様の甘梅となることから、極めて潤いのある甘梅としての製品化を図るか、干し柿様の甘梅とするかにより、糖度を62~64内に止どめるか、64を超えるものとするか、製品の意図に応じて吟味した製造を必要とするところであり、本願発明の梅菓子を効率的に製造するには、この段階において糖度64以上まで上昇させてしまうのが望ましい。
【0024】
この完熟梅以外の梅果実を用いた梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子は、上記した完熟梅による甘梅の製造工程の中、低温による塩蔵処理の時間が、完熟梅に比較して表皮が固いことから塩水の浸透性が悪く、完熟梅の場合の浸漬時間の約2倍前後の時間を要することにあり、そして、最も肝要なのは、塩蔵処理を終えて水切り後、砂糖溶液の濃縮のための加温、加熱浸漬処理に移行するに先立ち、全く異なる凍結処理工程を追加しなければならないことである。
この凍結処理工程は、-30~-20℃という極低温で迅速に凍結し、果肉内部までを完全に凍結してから凍結状のままの果実に90~100℃に加熱した砂糖溶液を浸し、以降は、上記の完熟梅に施したと同様の処理工程を実施することにより、これら完熟梅以外の果実にあっても、略完熟梅に匹敵する程の風味と形、色艶とを備えた甘梅の製造を可能とし、それらの特徴を活かした梅菓子を提供、可能にするものとなる。
【0025】
なお、砂糖溶液の濃縮のための加温、加熱浸漬処理の期間中での、醗酵を阻止する殺菌処理の段階で、60~80℃の加熱段階に、太陽熱の利用による加熱費の節約を兼ね、果実を日光浴させることにより、黄色っぽく変色していく表皮および果肉の色艶を、好ましいオレンジ色に発色させる効果があることから、梅果実を砂糖溶液に浸漬した状態のまま太陽光照射を併用する処理は、梅表皮および果肉の発色促進処理であるということができる。
そして、この日光浴の効果は、上記した完熟梅の製造過程においても、完熟梅自体で発現していく明るい黄色が、鮮やかで艶のあるオレンジ色に発色していく作用を有していることも確認できており、何れの製造方法においても、この日光浴の工程を経過させ、所謂メイラード反応を伴って発色するよう導くことが、その商品価値を高める上で極めて有効な製造方法であるといえる。
【0026】
また、前述のように、完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状とした上、濃縮処理および交ぜ返し処理を繰り返し、糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅とした後、該オレンジ色の甘梅を取り除き、獲得した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液は、後の褐色の甘梅の製造に用いることとなる。
【0027】
この後に続き、砂糖溶液(オレンジ色の甘梅を取り除いた後に、残された砂糖溶液には、梅果汁および梅エキスが含まれているので、使用前の砂糖溶液との混同を避けるために、以降、熟成砂糖溶液と呼ぶこととする。)から取り出されたオレンジ色の甘梅は、その後40~50℃の範囲で一週間に亘り、糖度75以上となるまで陰干し乾燥させ、表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶし、オレンジ色の甘梅干しとすることが可能であり、例えば、この陰干し乾燥期間に40℃未満の温度に設定してしまうと、効率的な乾燥と十分な殺菌効果とを得ることができず、また、50℃を超えるまで加熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切ではなく、さらに、40~50℃の範囲であっても一週間未満では、十分な糖度濃縮処理を行うことができず、一週間を超えてしまうとオレンジ色の甘梅干しの乾燥が進み過ぎて変色や皺、ひび割れなどを発生し、外観や食感を悪化させてしまうこととなり、さらに、この期間中、直射日光に晒してしまうと、オレンジ色の甘梅干しの変色や変質、食味の悪化などを招いてしまうことから、必ず陰干ししなければならない。また、オレンジ色の甘梅干しの日光浴による表皮・果肉の発色促進処理の工程に関しては、前記砂糖溶液の濃縮処理の工程にて既に示したとおりである。
【0028】
また、オレンジ色の甘梅干しの表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶす麦芽糖付着工程にあっては、オレンジ色の甘梅干しの糖度が、必ず75以上に調整されていなければならず、75未満のオレンジ色の甘梅干しの表面に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方を付着させると、レンジ色の甘梅干しの表面から染み出す砂糖溶液が浸透し、麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方を溶かしてしまい、梅菓子の外観や食感だけでなく、手掴みしても手指を汚さないという優れた特徴を得ることができなくなってしまう。
また、麦芽糖粉末か麦芽糖顆粒かの何れか一方、または、それらの適宜比率による混合物を使用するのが望ましいが、麦芽糖は、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、乳糖、パラチノース、表現を変えていうとグラニュー糖、黒砂糖、三温糖、またはそれらを加えたきな粉などに置き換えることが可能である。
【0029】
オレンジ色の甘梅の素材となる完熟梅は、完熟梅に至らない段階、即ち、若梅(青梅)、半完熟梅、あるいは太陽光を受けてその表皮が赤変してしまった梅等、完熟梅以外の梅果実に置き換えることが可能である。
したがって、オレンジ色の甘梅の製造過程では、傷や腐敗箇所のない選果された若梅や半完熟梅または赤焼け梅の何れか一を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった梅果実を、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、この梅果実を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間に亘り、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することにより、これら梅果実を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅としたところで、この砂糖溶液の中からオレンジ色の甘梅を取り除き、オレンジ色のこれら甘梅の製造過程を経て梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得するようにしたものとすることができる上、さらに、このオレンジ色の甘梅を、40~50℃の範囲で一週間に亘り、陰干し乾燥させ、甘梅の糖度が75以上とした上、甘梅の表面全体に麦芽糖粉末または顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにし、オレンジ色の甘梅干しとすることが可能である。
【0030】
オレンジ色の甘梅を製造する過程で使用済みとなった砂糖溶液には、完熟梅からオレンジ色の甘梅に至る過程で溶け出した梅果汁および梅エキスが含まれており、この発明では、この梅果汁および梅エキスを含んだ砂糖溶液を熟成砂糖溶液と称することとし、該熟成砂糖溶液は、この発明の褐色の甘梅の製造に用いるものであって、該褐色の甘梅の製造工程では、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液をそのまま使用するのではなく、熟成砂糖溶液を用いることが最大の特徴であり、それ以外の各工程にあっては、基本的に該オレンジ色の甘梅の製造工程と同様の工程を経るものであると言うことができ、しかも、該褐色の甘梅の製造工程に用いる熟成砂糖溶液は、先ず、該オレンジ色の甘梅の製造の工程を経ることによって獲得されるものであるから、該褐色の甘梅の製造には、該オレンジ色の甘梅の製造工程を経ることが不可欠であると言うことになる。
【0031】
この発明の褐色の甘梅の製造工程は、基本的には、傷や腐敗箇所のない選果された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、熟成砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにすることにあり、各工程は、熟成砂糖溶液を使用すること、および、この熟成砂糖溶液の取り扱いや調整技術などに関連すること以外は、前記オレンジ色の甘梅の製造工程と殆ど同じ製造工程を経ることになる。
オレンジ色の甘梅に加工する完熟梅(梅果実)と、褐色の甘梅に加工する完熟梅(梅果実)とを、説明上、明らかにするため、実質的には同じ条件で選果された完熟梅(梅果実)を、オレンジ色の甘梅に加工する梅果実を完熟梅とし、褐色の甘梅に加工する梅果実を新たな完熟梅として示すこととする。
【0032】
この発明の褐色の甘梅の製造工程に使用する熟成砂糖溶液は、使用前に裏漉し処理を施し、不足分を補充する場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、裏漉し処理が施された熟成砂糖溶液と混合するか、または、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合とした砂糖溶液を追加、混合するかの何れか一方を行い、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬する工程に用いるようにするのが良い。
【0033】
褐色の甘梅の素材となる新たな完熟梅を用いた梅菓子の他に、完熟梅に至らない段階、即ち、若梅(青梅)、半完熟梅、あるいは太陽光を受けてその表皮が赤変してしまった梅等、完熟梅以外の新たな梅果実を用いることができる。
即ち、褐色の甘梅を製造する過程では、傷や腐敗箇所のない選果された若梅、半完熟梅または赤焼け梅の何れか一の新たな梅果実を、約4%濃度の塩水中で約72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行ってから冷凍処理して果肉内部まで凍結状となし、この凍結状となった新たな梅果実を砂糖溶液の中に埋没状とした上、以降、該新たな梅果実をこの砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理を併用すると共に、この砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理を実施することによって該新たな梅果実を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし、この砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出すようにする梅菓子の製造工程、および、それによって製造された梅菓子がそれである。
【0034】
新しい完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射を併用しない場合には新しい完熟梅の果皮および果肉が黄色っぽく変色してしまい、商品価値を低下させてしまうが、太陽光照射処理を併用した発色促進処理を施す場合には、熟成砂糖溶液の濃縮および加温のための光熱費を削減してより経済的な生産を実現化するのは勿論のことであるが、さらに、太陽光の照射のメイラード反応を促進させる作用によって新しい完熟梅の果皮および果肉が、好ましい艶をもった深みのある褐色に発色し、前記オレンジ色の甘梅の鮮明なオレンジ色とは大きく異なる、より味わい深い熟成を表現した新規な外観をもつ褐色の甘梅とすることができる。
【0035】
熟成砂糖溶液から取り出した褐色の甘梅は、その後、さらに、40~50℃の範囲で一週間に亘り、陰干しして乾燥させ、糖度75以上の褐色の甘梅干しとした上、該褐色の甘梅干しの表面全体に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶすようにして新規な梅菓子である褐色の甘梅干しとすることができる。
この陰干し乾燥期間に40℃未満の温度に設定してしまうと、効率的な乾燥と十分な殺菌効果とを得ることができず、また、50℃を超えるまで加熱してしまうと、果肉の崩れに繋がることになって適切ではなく、さらに、40~50℃の範囲であっても一週間未満では、十分に糖度を濃縮することができず、一週間を超えてしまうと褐色の甘梅の乾燥が進み過ぎて変色や皺、ひび割れなどを発生し、外観や食感を悪化させてしまうこととなり、さらに、この期間中、直射日光に晒してしまうと、褐色の甘梅の異常な変色や変質、食味の悪化などを招いてしまうことから、必ず陰干ししなければならず、褐色の甘梅の日光浴による表皮および果肉の発色処理に関しては、前述の通り、新たな完熟梅を熟成砂糖溶液の中に浸漬状とする10~15日間程度の期間中に実施する殺菌処理のための加温の際に、太陽光照射処理を併用する発色促進処理によって行うのが良い。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面は、この発明の梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【
図1】オレンジ色の甘梅干しの製造工程を示すフローチャートである。
【
図2】完熟梅の前処理工程を示すフローチャートである。
【
図3】褐色の甘梅干しの製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】若梅(青梅)、半完熟梅、赤変した梅等の完熟梅以外の梅果実の前処理工程を示すフローチャートである。
【実施例1】
【0037】
図1ないし
図3に示す事例は、傷や腐敗箇所のない選果(10)された完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理(11)した後、水切り(12)を行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90~100℃に加熱した砂糖溶液の中に埋没状(2)とした上、以降、該完熟梅を砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持して砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理(20)を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理(21)を併用すると共に、均質な砂糖溶液の浸透を促す数次の交ぜ返し処理(4)を実施することにより、これら完熟梅を糖度が62以上で型崩れのないオレンジ色の甘梅とした(5)ところで、この砂糖溶液の中から、これらオレンジ色の甘梅を取り除き(6)、該オレンジ色の甘梅の製造過程を経て梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得し、傷や腐敗箇所のない選果(10)された新たな完熟梅を、4%濃度の塩水中で72時間程度の間、1~10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理(11)した後、水切り(12)を行い、この熟成砂糖溶液の中に埋没状とし(B)た上、以降、該新たな完熟梅をこの熟成砂糖溶液の中に浸漬状としたまま、10~15日間程度の間、この熟成砂糖溶液の温度を、毎日、少なくとも10時間は40℃以上に保持し、この熟成砂糖溶液の濃度を高める濃縮処理(B0)を継続する一方、この浸漬期間中に、所定期間毎に60~80℃に加温して発酵を抑える殺菌処理(B1)を併用すると共に、この熟成砂糖溶液の均質な浸透を促す数次の交ぜ返し処理(D)を実施することによって該新たな完熟梅を糖度が62以上で型崩れのない褐色の甘梅とし(E)、この熟成砂糖溶液から褐色の甘梅を取り出す(F)ようにしてなる、この発明の梅菓子の製造方法における代表的な一実施例を示すものである。
【0038】
図1ないし
図3に示すように、この実施例1は、この発明の梅菓子の製造方法の中で最も代表的な製造方法を示すものであり、概ね、
図1および
図2に示す、オレンジ色の甘梅干しの製造工程(1),~(9),(B)によって、オレンジ色の甘梅を製造する過程を経て熟成砂糖溶液を獲得する工程と、
図2および
図3に示す、褐色の甘梅干しの製造工程(1),(A),~(J)により、該熟成砂糖溶液を利用して、褐色の甘梅干しを製造する工程とから成り立っている。
【0039】
即ち、この実施例1は、
図1および
図2に示すように、完熟梅の前処理工程(1)から開始することとなる。
完熟梅の前処理工程(1)は、粒の大きさを揃え、外観の確認を行った完熟梅(10)の軸を取り、枝、葉等の大きなゴミを取り除いた後、移動可能な大型容器等に4%の塩水を作り、この塩水中に完熟梅を完全に没した状態とした上、大型の冷蔵室にて5℃前後の低温保存により、約3日間程度に渡る塩蔵処理(11)を行い、塩蔵処理(11)を開始してから72時間(前記約3日間程度)以上を経過した完熟梅を、冷蔵室から運び出して大型の笊に移し、暫くそのまま放置して十分に塩水を切り(12)、比較的浅めのトレイの中に、それら塩水を切った完熟梅が重なり合ってしまわない個数分だけ収容するようにする。
【0040】
次に、
図1および
図2に示すように、オレンジ色の甘梅干しの製造工程に従い、完熟梅の前処理工程(1)で塩水を切り(12)、比較的浅めのトレイの中に重なり合ってしまわない個数分だけ収容した完熟梅を、日光を通すビニルハウスかガラス張りの温室内に並べ置き(3)、夫々のトレイ内に、加熱された砂糖溶液を注ぎ、トレイ内の完熟梅全体が、完全に砂糖溶液中に沈んでしまうようにし、完熟梅全体が空気中に露出しないで砂糖溶液中に完全に没する状態(2)とする。この際に使用する砂糖溶液は、砂糖を1、水を0.4の重量混合割合にして十分に混合、撹拌し、90℃~100℃にまで加熱して煮溶かしたものとする。
なお、これら砂糖溶液を注がれたトレイは、3~5段程度で作業者がトレイ内部を確認できる範囲の高さにしつらえた多段式の棚に並べ置くようにして収容効率を良くすると共に、各棚に載置したトレイに、平均して日光が注がれるようその構造を配慮したものとする。
【0041】
また、このビニルハウス内またはガラス張りの温室内には、灯油ヒーターが配されていて、毎日、10時間は、少なくとも40℃を切ることのない室温に維持できるよう、日照具合を考慮しながら該ヒーターを作動させ、注意深く温度管理する。そして、完熟梅のでき不出来や、日毎の平均室温等にも左右されるが、少なくとも10日間程度、最適には12~13日程度に亘、砂糖溶液の濃縮処理工程(20)を継続する。
その間、3日に1回程度の割合で砂糖溶液が60℃以上80℃以下に達するまでヒーターで室温を上昇させ、砂糖溶液による醗酵を抑えるための加温殺菌処理(21)を実施するが、併せてトレイ中の完熟梅を静かに動かす交ぜ返し処理(4)も実施するものとし、完熟梅の変形や部分的な変色を防止すると共に、砂糖溶液の浸透具合が平均化されるようにする。
なお、砂糖溶液が減少気味で完熟梅が十分に浸漬状とならず、部分的に空気に晒されてしまう虞を生じたときには、濃度を調整し、加温した同様の砂糖溶液を補充する必要がある。
【0042】
その間、陽射しを透過させるビニルハウス内またはガラス張りの温室内に特別な配置で並べ置くようにしたことから、完熟梅は、砂糖溶液漬け(2)と、日中の太陽光照射による発色促進処理(3)とによって梅表皮および果肉にメイラード反応が起こり、色付きがより進んで、極めて鮮やかなオレンジ色に発色(3)し、日光浴をさせていないものでは到達し得ない色合いと色艶とを有する見事なオレンジ色の甘梅に造り上げられる。
こうして、濃縮処理(20)を継続しながら、トレイ内の要所々々の完熟梅の糖度を検出し、その糖度が62に達した頃合を見計らって、この濃縮処理工程(2),(20),(21)を終了(5)し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却するか、または、加温状態を維持したままかの何れかの状態にあるオレンジ色の甘梅を、トレイ内から取り出し、別のトレイ上に、互いに接触しないよう配列、載置して、元のトレイ内に残された梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得する(6)。
【0043】
このようにして製造したオレンジ色の甘梅を、互いに接触しないよう配列、載置したトレイは、灯油ヒーターが設置され、直射日光が当たらないよう適度に遮光された屋内に搬入し、通気性を確保できるよう多段式の棚内に並べ置きして室温を40~50℃の範囲に調整し、一週間に亘って陰干し乾燥処理(8)するが、この陰干し乾燥室内は、送風ファンや送風機などの設置により、気温の均一化を図り、オレンジ色の甘梅の均質な乾燥を得るようにするのが望ましい。
【0044】
この陰干し乾燥処理(8)の間は、乾燥の開始から数日後を目安に、任意複数個のオレンジ色の甘梅の糖度測定を1回/1日以上の割合で開始し、乾燥開始から一週間後を目処に糖度75以上となった時点でオレンジ色の甘梅干しが完成し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却させ、常温になったところで各オレンジ色の甘梅干しの表面全体に、型崩れや皺などを生じないよう注意しながら、麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方を、薄く均等にまぶし、過剰に付着した麦芽糖粒子を除去して仕上げ(9)、注意深く所定個数毎、ドーム型透明蓋を有した合成樹脂製のケーキ用トレイに収容したり、蓋付きの合成樹脂製またはガラス製の透明な瓶に纏めて収容したり、一個毎、パラフィン紙製かまたは和紙がラミネート加工された樹脂フィルム製かの何れか一方の小袋に収容して包装したり、一個毎、内壁がパラフィンコートされた厚紙製の個包装箱または内壁に合成樹脂フィルムがラミネート加工された厚紙製の個包装箱の何れか一方に詰めて包装したり、一個毎、小ドーム型の透明蓋を有した合成樹脂製の和菓子用トレイに収容した上、厚紙製の外包装帯を巻き掛けて装飾したり、さらに、それらの何れか選択されたものを折箱に詰め合わせたりするなど様々な包装形態によって一つ一つ丁寧に包装することにより、包装に透明部分を有する場合には、透明部分を透視することができ、また、不透明な包装の場合には、開封されたときに、表皮に皺がなく、形崩れもしていない極めてふくよかな形で、十分に柔らかく、表面に鏤められた白い麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方の合間から覗く、オレンジの色合いも鮮やかな梅菓子が製品化される
前記砂糖溶液よりオレンジ色の甘梅を取り出し(6)、獲得した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液は、褐色の甘梅の製造に用いる場合(7),(B)に、
図3に示すように、褐色の甘梅干しの製造工程に従って利用することとなる。
【0045】
図2および
図3に示すように、褐色の甘梅干しの製造工程は、先ず、熟成砂糖溶液中に残存する果肉片などの固形物を裏漉し処理(A)し、梅果汁および梅エキスのみを含んだ熟成砂糖溶液としておき、新たな完熟梅の前処理工程(1)を実施し、粒の大きさを揃え、外観の確認を行った新たな完熟梅(10)の軸を取り、枝、葉等の大きなゴミを取り除いた後、移動可能な大型容器等に4%の塩水を作り、この塩水中に該新たな完熟梅を完全に没した状態とした上、大型の冷蔵室にて略5℃前後の低温保存によって3日間程度に渡る塩蔵処理(11)を行い、塩蔵処理(11)を開始してから72時間(前記約3日間程度)以上を経過した該新たな完熟梅を冷蔵室から運び出し、大型の笊に移して暫くそのまま放置して十分に塩水を切り(12)、比較的浅めのトレイの中に、それら塩水を切った新たな完熟梅が、重なり合ってしまわない個数分だけ収容する。
【0046】
次に、
図3に示すように、褐色の甘梅干しの製造工程従い、新たな完熟梅の前処理工程(1)にて塩水を切り(12)、比較的浅めのトレイの中に重なりあってしまわない個数分だけ収容した新たな完熟梅を、日光を通すビニルハウスかガラス張りの温室内に並べ置き(C)、夫々のトレイ内に、加熱された熟成砂糖溶液を注ぎ、トレイ内の新たな完熟梅全体が、完全に熟成砂糖溶液中に沈んでしまうようにし、新たな完熟梅全体が空気中に露出しないで熟成砂糖溶液中に完全に没する状態(B)とする。
この際に使用する熟成砂糖溶液が、必要量に達していない場合には、同じ製造工程の別ロットで獲得し、同様に裏漉し処理(A)が施された熟成砂糖溶液と混合するのが望ましいが、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として十分に混合、撹拌し、90℃~100℃にまで加熱して煮溶かした砂糖溶液を該熟成砂糖溶液に追加、混合し充分に撹拌して混ぜ合わせ、必要量を満たした上、新たな完熟梅を浸漬するようにすることができる。
なお、これら熟成砂糖溶液を注がれたトレイは、3~5段程度で作業者がトレイ内部を確認できる範囲の高さにしつらえた多段式の棚に並べ置くようにして収容効率を良くすると共に、各棚に載置したトレイに平均して日光が注がれるようその構造を配慮したものとする。
【0047】
また、このビニルハウス内またはガラス張りの温室内には、灯油ヒーターが配されていて、毎日、10時間は、少なくとも40℃を切ることのない室温に維持できるよう、日照具合を考慮しながら該ヒーターを作動させ、注意深く温度管理をしていく。そして、新たな完熟梅のでき不出来や、日毎の平均室温等にも左右されるが、少なくとも10日間程度、最適には12~13日程度に亘、熟成砂糖溶液の濃縮処理工程(B0)を継続する。
その間、3日に1回程度の割合で熟成砂糖溶液が60℃以上80℃以下に達するまで室温をヒーターで上昇させ、熟成砂糖溶液による醗酵を抑えるための加温殺菌処理(B1)を実施するが、併せてトレイ中の新たな完熟梅を静かに動かす交ぜ返し処理(D)も実施するものとし、新たな完熟梅の変形や部分的な変色を防止すると共に、熟成砂糖溶液の浸透具合が平均化されるようにする。
【0048】
なお、熟成砂糖溶液が減少気味で新たな完熟梅が十分に浸漬状とならず、部分的に空気に晒されてしまう虞を生じたときには、同様の熟成砂糖溶液を補充する必要があり、別ロットのオレンジ色の甘梅を製造する過程(1),~(7),(B)で獲得した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を、裏漉し(A)した熟成砂糖溶液を補充するか、または、別ロットの褐色の甘梅を製造する過程(A),~(G)で獲得した熟成砂糖溶液を裏漉し(A)した熟成砂糖溶液を補充するかの何れか一方とするのが望ましいが、新たに、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として十分に混合、撹拌し、90℃~100℃にまで加熱して煮溶かした砂糖溶液を、減少気味の熟成砂糖溶液に補充し、充分に撹拌して混ぜ合わせたものを熟成砂糖溶液として使用することができる。
【0049】
その間、陽射しを透過させるビニルハウス内またはガラス張りの温室内に特別な配置で並べ置くようにしたことから、新たな完熟梅は、熟成砂糖溶液漬け(B)と、日中の太陽光照射による発色促進処理(C)とによって梅表皮および果肉にメイラード反応が起こり、色付きがより進んで、深みのある褐色に着色(C)し、日光浴をさせていないものでは到達し得ない色合いと色艶とを有する見事な褐色の甘梅に造り上げられる。
こうして、濃縮処理(B0)を継続しながら、トレイ内の要所々々の新たな完熟梅の糖度を検出し、その糖度が62に達した頃合を見計らって、この濃縮処理工程(B),(B0),(B1)を終了(E)し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却するか、または、加温状態を維持したままかの何れかの状態にある褐色の甘梅を、トレイ内より取り出し、別のトレイ上に、互いに接触しないよう配列、載置して、元のトレイ内に残された梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液を獲得(F)し、この褐色の甘梅の製造で獲得(F)した梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液は、別ロットの褐色の甘梅の製造に使用(G)することができ、同様に使用し続けて熟成砂糖溶液の熟成度をさらに高めながら使い続けることができる。
【0050】
このようにして製造した褐色の甘梅を、互いに接触しないよう配列、載置したトレイは、灯油ヒーターが設置され、直射日光が当たらないよう適度に遮光された屋内に搬入し、通気性を確保できるよう多段式の棚内に並べ置きして室温を40~50℃の範囲に調整し、一週間に亘って陰干し乾燥処理(H)するが、この陰干し乾燥室内は、送風ファンや送風機などの設置により、気温の均一化を図り、褐色の甘梅の均質な乾燥を得るようにするのが望ましい。
【0051】
この陰干し乾燥処理(H)の間は、乾燥の開始から数日後を目安に、任意複数個の褐色の甘梅の糖度測定を1回/1日以上の割合で開始し、乾燥開始から一週間後を目処に糖度75以上となった時点で褐色の甘梅干しが完成し、トレイ毎、加工場内に移動して自然冷却させ、常温になったところで各褐色の甘梅干しの表面全体に、型崩れや皺などを生じないよう注意しながら、麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方を、薄く均等にまぶし、過剰に付着した粉末、顆粒を除去して仕上げ(J)、注意深く所定個数毎、ドーム型透明蓋を有した合成樹脂製のケーキ用トレイに収容したり、蓋付きの合成樹脂製またはガラス製の透明な瓶に纏めて収容したり、一個毎、パラフィン紙製かまたは和紙がラミネート加工された樹脂フィルム製かの何れか一方の小袋に収容して包装したり、一個毎、内壁がパラフィンコートされた厚紙製の個包装箱または内壁に合成樹脂フィルムがラミネート加工された厚紙製の個包装箱の何れか一方に詰めて包装したり、一個毎、小ドーム型の透明蓋を有した合成樹脂製の和菓子用トレイに収容した上、厚紙製の外包装帯を巻き掛けて装飾したり、さらに、それらの何れか選択されたものを折箱に詰め合わせたりするなど、様々な包装形態によって一つ一つ丁寧に包装することにより、包装に透明部分を有する場合には、透明部分を透視することができ、また、不透明な包装の場合には、開封されたときに、表皮に皺がなく、形崩れもしていない極めてふくよかな形で、十分に柔らかく、表面に鏤められた白い麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方の合間から覗く、深みの有る褐色の梅菓子が製品化される。
【0052】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりのこの発明の梅菓子の製造方法、およびそれによって製造された梅菓子によれば、その製造過程における甘梅の製造が、従前に行われていた甘梅の製造方法に比較して、確実にその製造工程を簡素化することができ、人件費等を削減して製造コストの大幅な削減が可能となる上、品質を安定させた大量生産が可能となり、しかも実施例1の
図1および
図2に示したように、甘梅を所定温度範囲の下、陰干し乾燥処理(8)することによって糖度を75以上に調整し、褐色の甘梅干しとし、該褐色の甘梅干しの表面に麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶす(9)ことにより、麦芽糖の溶解を確実に防止して、表面の乾燥状態を保つと共に、褐色の甘梅干し内部の乾燥を防ぎ、果肉の柔らかさを保つことが可能となる。
【0053】
特に、実施例1の
図3に示した褐色の甘梅干しの製造工程のように、陽射しを透過させ得るビニルハウス等の施設内に、しかも日光浴可能な配置とした多段式の棚内に並べ置く製造を実施した場合には、熟成砂糖溶液の濃縮処理過程(B0)で必要となる加温のための熱源としても、また、その過程で発生する危険性が極めて高く、製品価値をなくしてしまう虞のある醗酵現象を阻止するための加熱殺菌処理(B1)用の熱源としても、この透過による太陽熱を有効活用して製造原価の高騰を抑制し、光熱費の削減を図ることも可能となって、それだけ経済的に褐色の甘梅を製造することが可能になり、全体として、安定した高品質の梅菓子を、極めて効率的且つ経済的に大量生産することが保証されるという、秀れた特徴を発揮することになる。
【0054】
しかも、この日光浴は、新たな梅果実の深みのある濃厚な褐色への発色作用(C)に極めて有効であり、製品価値を高めると共に、オレンジ色の甘梅と明確に差別化する上で極めて特徴ある製造工程となっている。
このように、この実施例の製造方法は、従前までの製造方法を単に応用しただけでは、複数回に渡り、熟成砂糖溶液か新たな梅果実を取り出し、分離して、熟成砂糖溶液を殺菌温度まで再加熱し、再度新たな梅に戻すといった繁雑な工程が必要であったが、ハウス内に並べ置いたまま、室温調整を所定の期間と温度とに制御しながら繰り返し作業を実施するだけで、新たな梅果実はもとよりのこと、トレイや熟成砂糖溶液等といった器具、素材の移し代えのように人手を煩わす作業が大幅に削減されて省力化される秀でた褐色の甘梅干しの製造工程となっており、また、
図1に示すように、梅果汁および梅エキスを含んだ熟成砂糖溶液の獲得する過程で行うレンジ色の甘梅の製造工程も同様に、製造工数を大幅に削減できるものとなる。
【0055】
さらに、熟成砂糖溶液に梅果実を浸漬したまま太陽光を照射する工程は、褐色の甘梅の製造過程における人件費削減によって得られる利益に加え、製品を痛めたり、雑菌が混入したりする機会が大幅に少なくなって、高品質の梅菓子の製造が極めて容易に実現可能になるという実用価値の高いものとなっている。
【0056】
加えて、糖度を75以上に調整した褐色の甘梅干しの表面に、麦芽糖粉末または麦芽糖顆粒の少なくとも何れか一方をまぶしたことにより、褐色の甘梅干し特有の表面のベタつきを、確実に防止できるものとなり、従前までであれば、和菓子フォークや箸などを使用せずに食することができなかった褐色の甘梅干しを、手掴みでも手指を汚さずに口にすることが可能となり、高級菓子としてだけでなく、他の焼き菓子類と同様の食べ方を実現化することができ、しかも他の砂糖類よりカロリーが少なく、血糖値の急激な上昇を起こさないという特徴を持つ麦芽糖の使用により、健康管理に注意を払う高齢者や育ち盛りの子供達にも、日常の御八つやデザートとして安心して提供することができるという理由などから、大量消費を見込むことができるという秀でた利点が得られることになる。
【実施例2】
【0057】
実施例1に示した梅菓子の製造方法における完熟梅または新たな完熟梅の少なくとも何れか一方は、完熟梅に至らない段階の若梅(青梅)、半完熟梅、あるいは太陽光を受けてその表皮が赤変してしまった梅等、完熟梅以外の梅果実に置き換えて使用することが可能であり、それら完熟梅以外の何れかの梅果実の中、若梅を使用する場合には、
図4に示すように、完熟梅以外の何れかの梅果実の前処理工程(1)を実施するのが良い。
【0058】
即ち、粒の大きさを揃え、外観の確認を行った若梅(10)の軸を取り、枝、葉等の大きなゴミを取り除いた後、移動可能な大型容器等に4%の塩水を作り、この塩水中に該若梅を完全に没した状態とした上、大型の冷蔵室にて略5℃前後の低温保存により、約5日間程度に渡る塩蔵処理(11)を実施する。この塩蔵処理(11)の時間は、前記完熟梅(および新たな完熟梅)の場合と違って、若梅は、果肉、果皮とも堅い構造をしていることから、処理効果を得るために、完熟梅よりも長い120時間程度に亘る低温保存を実施するのが良い。
【0059】
塩蔵処理(11)を開始してから120時間(前記約5日間)以上を経過した該若梅を冷蔵室から運び出し、大型の笊に移して暫くそのまま放置して十分に塩水を切る水切り処理(12)を済ませる。
この後、記述した完熟梅(または新たな完熟梅)の場合であれば、所定濃度とした砂糖溶液(または熟成砂糖溶液)中に浸漬して濃縮処理(29),(B0)に入ることとなるが、この若梅の場合には、その濃縮処理(29),(B0)に入る前処理として、水気の切れた若い梅を、次の濃縮工程において必要となるトレイ中に収容した上-30~―20℃という極低温に維持できる冷凍室内に移し、効率良く凍結処理(13)を実施して果肉内部まで凍結状としてしまわなければならない。この工程を実施することにより、以降の濃縮処理(29),(B0)による果皮の皺寄りと、果肉崩れとを確実に防止することが初めて可能となるものであって、極めて重要な工程となる。
【0060】
冷凍室から取り出した若梅は、完全に凍結状としたままトレイ毎、ビニルハウス内の多段式棚に移し変え、以下、前記したオレンジ色の甘梅干しの製造工程(2),~(9),(B)、または、褐色の甘梅干しの製造工程(A),~(J)の何れか一方と同じように、所定濃度で90~100℃まで加熱して煮溶かした砂糖溶液(または熟成砂糖溶液)中に浸漬し(2),(B)、所定の濃縮処理(20),(B0)をハウス内で実施する。その際に、完熟梅の場合と異なり、日光浴(3),(C)を確実に実施するようにしないと、砂糖溶液を用いた場合に黄変自体も不十分で、まして奇麗なオレンジ色への発色を促進できず、または、熟成砂糖溶液に浸漬した場合には、深みのある褐色の定着を促すことが不可能となる。
【0061】
(実施例2の作用・効果)
実施例2の梅菓子の製造方法によれば、
図4に示すように、完熟した梅果実だけではなく、それ以外の若取り梅果実、半完熟の梅果実、そして、商品価値の極めて劣る赤変した梅果実に至っても、同様に梅菓子への製品化を可能とする極めて効果的且つ新規な製造方法を確立し得たものであり、あらゆる成長過程の梅であっても、傷や病気に冒されていない限り、価値ある梅菓子としての商品化が可能となる。
【0062】
しかも、完熟した梅果実だけに留まらず、若取り梅果実や半完熟の梅果実、さらに、極めて商品価値に劣る赤焼けした梅果実に至るあらゆる梅果実を、高品質な梅菓子の素材とすることができることから、従前までであれば、傷や損傷など無いにも拘わらず、製品として出荷出来ず、止む無く処分せざるを得なかった梅果実の殆どを、大小に拘わらず、高級感に優れた梅菓子として生産、出荷することができるようになり、梅栽培農家の収入を安定させる上で大いに役立つだけでなく、消費者にとっても、着色料および保存料が無添加で、梅果実由来の天然のクエン酸を含み、効能のある秀でた自然食品を比較的手軽に食味できるようにして、その独特の風味を楽しみながら健康維持管理にも役立てることが可能になるという一石二鳥の恩恵を受けることができることになる。
【0063】
(結 び)
叙述の如く、この発明の梅菓子の製造方法、および、それによって製造された梅菓子は、従前までに伝統的に受け継がれてきていた甘梅の製造方法に対し、その製造効率上からも、コスト上からも遥かに有利なものとなっていて、高品質な梅菓子の製造が比較的安価にして大量生産することが可能となり、梅栽培農家の収入安定、梅菓子製造者にとっては規模拡大による高収益の保証、延いては、消費者にとっては手間隙を掛けて自家製造するまでもなく、高品質の梅菓子の手軽な入手が可能になるという、三者三様に秀でた効果がもたらされる結果、我が国を代表する果実でありながら、生食に不向きな性状故に、その有効利用の道がなかなか開けてこなかった梅果実が、この発明の梅菓子、およびその製造方法の確立により、大いに期待できるものになるという効果は、高く評価されて然るべきであるといえよう。
【符号の説明】
【0064】
1 完熟梅の前処理工程
10 同 完熟梅の選果作業
11 同 完熟梅の塩蔵処理
12 同 完熟梅の水切り処理
13 同 完熟梅以外の梅果実の冷凍処理
2 完熟梅の加熱砂糖溶液中への浸漬処理
20 同 砂糖溶液の濃縮処理
21 同 砂糖溶液の加熱殺菌処理
3 太陽光照射を併用した発色促進処理
4 砂糖溶液の混ぜ返し処理
5 オレンジ色の甘梅への仕上げ
6 オレンジ色の甘梅を取り出し熟成砂糖溶液を得る工程
7 熟成砂糖溶液の使用の判断
8 オレンジ色の甘梅の陰干し乾燥処理
9 麦芽糖粒子をまぶしてオレンジ色の甘梅干しを完成する工程
A 熟成砂糖溶液の裏漉し処理
B 熟成砂糖溶液に新たな完熟梅を浸漬する工程
B0 同 熟成砂糖溶液の濃縮処理
B1 同 熟成砂糖溶液の加熱殺菌処理
C 太陽光照射を併用した発色促進処理
D 熟成砂糖溶液の混ぜ返し処理
E 褐色の甘梅への仕上げ
F 褐色の甘梅を取り出し熟成砂糖溶液を得る工程
G 熟成砂糖溶液の使用の判断
H 褐色の甘梅の陰干し乾燥処理
J 麦芽糖粒子をまぶして褐色の甘梅を完成する工程