(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ワークの加工装置、ワークの加工方法及び加工部品
(51)【国際特許分類】
B21J 5/12 20060101AFI20221220BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20221220BHJP
B21K 21/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B21J5/12 A
B21J5/06 C
B21K21/08
(21)【出願番号】P 2018200740
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592061050
【氏名又は名称】大川精螺工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳史
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123450(JP,A)
【文献】特開平05-305383(JP,A)
【文献】特開昭60-213331(JP,A)
【文献】特開平01-293927(JP,A)
【文献】特開平03-027840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/12
B21J 5/06
B21K 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、前記軸部の軸方向に沿って設けられると共に前記軸部から半径方向外側に突出する板状の羽根部と、前記軸部の先端部側から中間部側に向かって前記羽根部が前記軸部から徐々に突出するように傾斜させた傾斜面と、を有する加工用治具を備え、
筒状部を備えたワークと前記加工用治具とを軸方向に相対的に移動させ、前記筒状部に前記軸部を挿入すると共に、前記羽根部の傾斜面を前記筒状部の端面に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成し、前記スリットの軸方向端面に内周面側に傾斜する傾斜部を形成するワークの加工装置。
【請求項2】
前記羽根部を前記筒状部に押し付けるときに、前記筒状部の外周面側を支える支持部を有し、
前記軸部の中心から前記羽根部の半径方向外側端部までの最大長さは、前記筒状部の半径よりも大きく、
前記支持部に前記羽根部が挿入される溝部が設けられている請求項1に記載のワークの加工装置。
【請求項3】
前記ワークと前記加工用治具とを軸方向に相対的に移動させる方向が鉛直方向とされると共に前記ワークが前記加工用治具よりも上方に配置されており、 水平方向に開閉可能なシャッタを備え、
前記ワークの加工後に前記ワークと前記加工用治具とが離れる方向に相対的に移動するときに、前記ワークの上下方向下側で前記シャッタが閉止される構成とされている請求項1又は請求項2に記載のワークの加工装置。
【請求項4】
前記加工用治具には、前記羽根部が前記軸部の周方向に複数並べて配置されており、
複数の前記羽根部の傾斜面を前記筒状部の端面に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成し、前記スリットの軸方向端面に内周面側に傾斜する傾斜部を形成する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のワークの加工装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のワークの加工装置を用いてワークを加工するワークの加工方法であって、
前記加工用治具と前記ワークとを軸方向に相対的に移動させ、
前記筒状部に前記軸部を挿入すると共に、前記羽根部の傾斜面を前記筒状部の端面に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成し、前記スリットの軸方向端面に内周面側に傾斜する傾斜部を形成するワークの加工方法。
【請求項6】
前記スリットを形成するときに前記ワークを保持する貫通孔を備えた保持部材を備え、
前記ワークの加工後に前記ワークと前記加工用治具とが離れる方向に相対的に移動するときに、前記スリットを形成するときにできた前記ワークの切り裂き片が前記貫通孔の角部に当たることで、前記切り裂き片を脱離させる請求項5に記載のワークの加工方法。
【請求項7】
前記軸部の周方向に複数並べて配置された前記羽根部の傾斜面を前記筒状部の端面に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成し、前記スリットの軸方向端面に内周面側に傾斜する傾斜部を形成する請求項5又は請求項6に記載のワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工装置、ワークの加工方法及び加工部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光プラグを受ける光プラグ受けを備えた光通信用モジュールにおいて、光プラグのプラグフェルールが挿入される光プラグ受けのスリーブに切削加工を行うことにより、スリーブの軸方向にスリットを入れる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2017/038704号公報(例えば、段落番号0048を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の光通信用モジュールでは、円筒状のスリーブの軸方向にスリットを形成する具体的な切削加工方法については記載されていない。また、円筒状のスリーブと本体部とを別部品で構成し、組み立て時にスリーブと本体部とを接合している。
【0005】
例えば、切削加工用の回転刃を用いてスリーブの軸方向の一部にスリットを形成する場合、スリーブにおけるスリットの縁部に、半径方向内側に突出するバリが発生しやすい。このため、スリーブにプラグフェルールを挿入したときに、スリーブとプラグフェルールとの接触が安定化しない可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができるワークの加工装置、ワークの加工方法及び加工部品を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載のワークの加工装置は、軸部と、前記軸部の軸方向に沿って設けられると共に前記軸部から半径方向外側に突出する突出部と、前記軸部の先端部側から中間部側に向かって前記突出部が前記軸部から徐々に突出するように傾斜させた傾斜面と、を有する加工用治具を備え、本体部の軸方向の一端部側に筒状部が設けられたワークと、前記加工用治具とを軸方向に相対的に移動させ、前記筒状部に前記軸部を挿入すると共に、前記突出部を前記筒状部に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成する。
【0008】
第1態様に記載のワークの加工装置によれば、加工用治具には、軸部の軸方向に沿って半径方向外側に突出する突出部と、軸部の先端部側から中間部側に向かって突出部が軸部から徐々に突出するように傾斜させた傾斜面とが設けられている。そして、本体部の軸方向の一端部側に筒状部が設けられたワークと、加工用治具とを軸方向に相対的に移動させ、筒状部に軸部を挿入すると共に、突出部を筒状部に押し付けることで、筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成する。このとき、突出部に押されて筒状部が軸方向に切り裂かれ、この切り裂かれた部分がスリットとなる。これにより、切削加工によって筒状部にスリットを形成する場合と比べて、筒状部におけるスリットの縁部にバリが発生しにくい。このため、スリットを備えた筒状部に挿入部材を挿入したときに、筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができる。また、切削加工によって筒状部にスリットを形成した後、例えば、バリを切削ドリルなどで切除する場合に比べて、突出部を筒状部に押し付けてスリットを形成するため、バリを除去する工程が不要となり、筒状部にスリットを効率よく形成することができる。
【0009】
第2態様に記載のワークの加工装置は、第1態様に記載の加工装置において、前記突出部を前記筒状部に押し付けるときに、前記筒状部の外周面側を支える支持部を有する。
【0010】
第2態様に記載のワークの加工装置によれば、突出部を筒状部に押し付けるときに、筒状部の外周面側を支持部で支えるため、筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを安定して形成することができる。
【0011】
第3態様に記載のワークの加工装置は、第1態様又は第2態様に記載の加工装置において、前記突出部を前記筒状部に押し付けるときに、前記傾斜面によって、前記筒状部における前記スリットの前記本体部の側の軸方向端面に、断面視にて前記筒状部の外周面側に対して前記筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部を形成する。
【0012】
第3態様に記載のワークの加工装置によれば、突出部を筒状部に押し付けるときに、傾斜面によって、筒状部におけるスリットの本体部側の軸方向端面に、断面視にて筒状部の外周面側に対して筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部を形成する。傾斜部を形成したとき、筒状部の内周面側の傾斜部から半径方向内側に突出するバリが発生しにくい。このため、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触をより安定化させることができる。
【0013】
第4態様に記載のワークの加工装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つに記載の加工装置において、前記加工用治具には、前記突出部が前記軸部の周方向に複数並べて配置されており、複数の前記突出部により、前記筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成する。
【0014】
第4態様に記載のワークの加工装置によれば、加工用治具には、突出部が軸部の周方向に複数並べて配置されている。そして、複数の突出部を筒状部に押し付けることで、複数の突出部により、筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成する。このため、筒状部に複数のスリットを効率よく形成することができる。
【0015】
第5態様に記載のワークの加工方法は、軸部と、前記軸部の軸方向に沿って設けられると共に前記軸部から半径方向外側に突出する突出部と、前記軸部の先端部側から中間部側に向かって前記突出部が前記軸部から徐々に突出するように傾斜させた傾斜面と、を有する加工用治具と、本体部の軸方向の一端部側に筒状部が設けられたワークと、を軸方向に相対的に移動させ、前記筒状部に前記軸部を挿入すると共に、前記突出部を前記筒状部に押し付けることで、前記筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成する。
【0016】
第5態様に記載のワークの加工方法によれば、加工用治具には、軸部の軸方向に沿って半径方向外側に突出する突出部と、軸部の先端部側から中間部側に向かって突出部が軸部から徐々に突出するように傾斜させた傾斜面とが設けられている。そして、本体部の軸方向の一端部側に筒状部が設けられたワークと、加工用治具とを軸方向に相対的に移動させ、筒状部に軸部を挿入すると共に、突出部を筒状部に押し付けることで、筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成する。このとき、突出部に押されて筒状部が軸方向に切り裂かれ、この切り裂かれた部分がスリットとなる。これにより、切削加工によって筒状部にスリットを形成する場合と比べて、筒状部におけるスリットの縁部にバリが発生しにくい。このため、スリットを備えた筒状部に挿入部材を挿入したときに、筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができる。また、切削加工により筒状部にスリットを形成した後、バリを切削ドリルなどで切除する場合に比べて、突出部を筒状部に押し付けてスリットを形成するため、バリを除去する工程が不要となり、筒状部にスリットを効率よく形成することができる。
【0017】
第6態様に記載のワークの加工方法は、第5態様に記載のワークの加工方法において、前記突出部を前記筒状部に押し付けるときに、前記傾斜面によって、前記筒状部における前記スリットの前記本体部の側の軸方向端面に、断面視にて前記筒状部の外周面側に対して前記筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部を形成する。
【0018】
第6態様に記載のワークの加工方法によれば、突出部を筒状部に押し付けるときに、傾斜面によって、筒状部におけるスリットの本体部側の軸方向端面に、断面視にて筒状部の外周面側に対して筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部を形成する。傾斜部を形成したとき、筒状部の内周面側の傾斜部から半径方向内側に突出するバリが発生しにくい。このため、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触をより安定化させることができる。
【0019】
第7態様に記載のワークの加工方法は、第5態様又は第6態様に記載のワークの加工方法において、前記軸部の周方向に複数並べて配置された前記突出部により、前記筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成する。
【0020】
第7態様に記載のワークの加工方法によれば、軸部の周方向に複数並べて配置された突出部により、筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成する。このため、筒状部に複数のスリットを効率よく形成することができる。
【0021】
第8態様に記載の加工部品は、本体部の軸方向の一端部側に設けられた筒状部と、前記筒状部に先端部から軸方向に沿って形成されたスリットと、前記筒状部における前記スリットの前記本体部の側の軸方向端面に設けられ、断面視にて前記筒状部の外周面側に対して前記筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部と、を有する。
【0022】
第8態様に記載の加工部品によれば、本体部の軸方向の一端部側に筒状部が設けられており、筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットが形成されている。筒状部におけるスリットの本体部の側の軸方向端面には、断面視にて筒状部の外周面側に対して筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部が設けられている。例えば、加工用治具の突出部を筒状部に押し付けることで、筒状部に先端部から軸方向に沿ってスリットを形成する場合、筒状部の内周面側の傾斜部から半径方向内側に突出するバリが発生しにくい。このため、筒状部に挿入部材を挿入したときに、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができる。
【0023】
第9態様に記載の加工部品は、第8態様に記載の加工部品において、前記スリットは、前記筒状部の周方向に複数並べて配置されている。
【0024】
第9態様に記載の加工部品によれば、スリットは、筒状部の周方向に複数並べて配置されており、筒状部における複数のスリットの本体部の側の軸方向端面には、断面視にて筒状部の外周面側に対して筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部が設けられている。筒状部に先端部から軸方向に沿って複数のスリットを形成する際に、筒状部の内周面側の傾斜部から半径方向内側に突出するバリが発生しにくい。このため、複数のスリットを備えた筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができる。
【0025】
第10態様に記載の加工部品は、第8態様又は第9態様に記載の加工部品において、充電用コネクタの雌型接続端子として用いられる。
【0026】
第10態様に記載の加工部品によれば、加工部品は、充電用コネクタの雌型接続端子として用いられている。このため、筒状部に雄型接続端子の挿入部材を挿入したときに、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触を安定化させ、電気的接続の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るワークの加工装置、ワークの加工方法及び加工部品によれば、スリットを備えた筒状部と挿入部材との接触を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(A)は、第1実施形態の雌型接続端子を示す軸方向に沿った断面図であり、(B)は、(A)中の1B-1B線に沿った断面図である。
【
図2】第1実施形態の雌型接続端子のスリットの軸方向に沿った断面図である。
【
図3】第1実施形態の雌型接続端子を製造するためのワークと、パンチを示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の雌型接続端子を製造するためのワークの筒状部にパンチを用いて複数のスリットを形成する状態を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態の雌型接続端子を製造するためのワークの筒状部を支えるガイド部を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークをパンチ側に移動させる第1工程を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークをパンチに接触させる第2工程を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークの筒状部にパンチを押し付けて複数のスリットを形成する途中の第3工程を示す断面図である。
【
図9】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークの筒状部にパンチを押し付けて複数のスリットを形成した第4工程を示す断面図である。
【
図10】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークをパンチから離れる側に移動させ、シャッタを閉止する第5工程を示す断面図である。
【
図11】第1実施形態の雌型接続端子を製造するための加工装置の一例を示す断面図であって、ワークをパンチから離れる側にさらに移動させ、ワークの切り裂き片が脱離する第6工程を示す断面図である。
【
図12】比較例の雌型接続端子を製造する工程であって、切削加工用の回転刃により筒状部にスリットを形成する状態を示す断面図である。
【
図13】比較例の雌型接続端子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1~
図9を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1(A)には、第1実施形態の雌型接続端子が軸方向に沿った断面図にて示されており、
図1(B)には、第1実施形態の雌型接続端子が軸方向と直交する方向の断面図にて示されている。
図1(A)、(B)に示されるように、雌型接続端子10は、本体部12と、本体部12の軸方向の一端部側に設けられた筒状部14と、筒状部14に先端部14Aから軸方向に沿って形成された複数のスリット16と、を備えている。ここで、雌型接続端子10は、加工部品の一例である。
【0031】
雌型接続端子10は、例えば、電気自動車に搭載されるバッテリーに充電するための充電コネクタの雌型接続端子として使用される。充電コネクタには、挿入部材の一例としての雄型接続端子30が設けられており、雄型接続端子30が雌型接続端子10の筒状部14に挿入されることで、雌型接続端子10と雄型接続端子30とが電気的に接続される。本実施形態では、一例として、雌型接続端子10は、電気自動車に設けられており、雄型接続端子30は、充電設備のスタンド側に設けられているが、本発明はこれらに限定されず、雌型接続端子10と雄型接続端子30を逆に設けてもよい。
【0032】
本体部12は、略円柱状の中間部12Aと、中間部12Aから筒状部14と反対側に延在された筒状の基部12Bと、を備えている。基部12Bは、略円筒状とされており、基部12Bの中心部には、穴部18が設けられている。中間部12Aの軸方向の一部には、半径方向外側に突出するフランジ部20が設けられている。
【0033】
筒状部14は、本体部12の軸方向の一端部から軸方向に沿って延在されている。筒状部14は、略円筒状とされている。筒状部14の内側には、軸方向に沿って穴部22が設けられている。穴部22の内径は、軸方向でほぼ等しい。穴部22の軸方向の本体部12側には、略円錐状に窪んだ窪み部22Aが設けられている。また、筒状部14の先端部14Aの内周面には、先端部14A側に向かうにしたがって内径が徐々に拡大されたテーパ部14Bが設けられている。
【0034】
スリット16は、筒状部14の周方向に複数並べて配置されている。スリット16は、筒状部14の先端部14Aで開口されている。言い換えると、筒状部14の本体部12と反対側は、複数のスリット16によって周方向に分割されている。本実施形態では、筒状部14の軸方向に沿って8本のスリット16が設けられている。
【0035】
本実施形態では、フランジ部20を除いた中間部12Aと基部12Bと筒状部14の外径は、ほぼ等しいが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、筒状部14の先端部14A側が筒状部14の本体部12側よりも外径が小さくなる形状でもよい。
【0036】
図2に示されるように、筒状部14におけるスリット16の本体部12側の軸方向端面には、断面視にて筒状部14の外周面側に対して筒状部14の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部24が設けられている。言い換えると、傾斜部24は、断面視にて筒状部14の内周面側に対して筒状部14の外周面側が筒状部14の先端部14A側に位置するように傾斜している。なお、
図1(A)では、雌型接続端子10の構成を分かりやすくするため、傾斜部24の図示を省略している。
【0037】
図3には、雌型接続端子10を製造するためのワーク40と、加工用治具の一例としてのパンチ52とが斜視図にて示されている。パンチ52は、後述する加工装置50に設けられている(
図6参照)。
図3に示されるように、ワーク40は、本体部12と、本体部12の軸方向の一端部側に設けられた筒状部14と、を備えている。筒状部14の中心部には、予め軸方向に沿って穴部22が形成されている。筒状部14の穴部22は、例えば、切削加工、塑性加工などによって棒状部材に穴部をあけることで形成することができる。筒状部14は、周方向に沿って連続している。本実施形態では、パンチ52によってワーク40の筒状部14に軸方向に沿ってスリット16(
図1参照)を形成する。
【0038】
パンチ52は、軸部52Aと、軸部52Aの軸方向の一端部に設けられると共に軸部52Aの外径よりも外径が大きいフランジ部52Bと、を備えている。さらに、パンチ52は、軸部52Aの軸方向に沿って設けられると共に軸部52Aから半径方向外側に突出した複数の突出部54を備えている。
【0039】
軸部52Aは、略円筒状とされており、中心部に軸方向に沿って貫通孔55を備えている。軸部52Aの外径は、ワーク40の筒状部14の内径よりも僅かに小さく、軸部52Aがワーク40の筒状部14に挿入可能とされている。また、本実施形態では、軸部52Aの軸方向の長さは、ワーク40の筒状部14の軸方向の長さよりも長い。
【0040】
突出部54は、軸部52Aの周方向に複数並べて配置されている。本実施形態では、複数の突出部54は、軸部52Aから略放射状に突出している。突出部54は、軸部52Aの半径方向に沿って配置された板状の羽根部で構成されている。突出部54は、軸部52Aの先端部(フランジ部52Bと反対側)に近い位置からフランジ部52Bに繋がるように配置されている。突出部54には、軸部52Aの先端部側から軸部52Aの中間部側に向かって突出部54が軸部52Aから徐々に突出するように傾斜した傾斜面54Aが設けられている。
【0041】
本実施形態では、突出部54は、8個設けられており、雌型接続端子10(
図1(A)参照)の8本のスリット16と対応する位置に設けられている。
【0042】
図4に示されるように、加工装置50(
図6参照)により、ワーク40とパンチ52とを軸方向に相対的に移動させ、ワーク40の筒状部14にパンチ52の軸部52Aを挿入すると共に、複数の突出部54を筒状部14に押し付ける。これにより、複数の突出部54によって、筒状部14が先端部14Aから切り裂かれて複数の切り裂き片42が形成されると共に、複数の切り裂き片42により筒状部14の切り裂かれた部分(切欠き部)に複数のスリット16が形成される。複数の切り裂き片42は、筒状部14の本体部12側の部位から突出部54の傾斜面54Aに沿って広がる(反り返った)湾曲形状とされている。
【0043】
図5に示されるように、加工装置50(
図6参照)には、ワーク40の筒状部14の外周面側を支えるガイド部58が設けられている。ここで、ガイド部58は、支持部の一例である。ガイド部58は、略円形状の筒部であり、中心部にワーク40の筒状部14が挿入される貫通孔58Aを備えている。さらに、ガイド部58は、貫通孔58Aから放射状に延びた複数の溝部58Bを備えている。すなわち、溝部58Bは、ガイド部58の半径方向に沿って配置されている。溝部58Bは、ガイド部58の軸方向に貫通している。本実施形態では、溝部58Bは、パンチ52の8個の突出部54の位置に合わせて8個設けられている。
【0044】
貫通孔58Aの内径は、ワーク40の筒状部14の外径よりも僅かに大きく、ワーク40の筒状部14が挿入された状態で筒状部14の外周面側がガイドされるようになっている。溝部58Bの幅(ガイド部58の周方向の幅)は、突出部54の幅(突出部54の厚み)よりも僅かに大きく、溝部58Bに突出部54が挿入されると共に、溝部58Bと突出部54とが上下方向に相対的に移動可能とされている。さらに、複数の突出部54を筒状部14に押し付けたときに、筒状部14が先端部14Aから切り裂かれた複数の切り裂き片42が溝部58Bの中に入り込むようになっている(
図9参照)。溝部58Bの半径方向の長さは、筒状部14からの切り裂き片42の半径方向の長さよりも長い。
【0045】
図6には、ワーク40を加工するための加工装置50の一例が断面図にて示されている。
図6に示されるように、加工装置50は、基台60と、基台60上に設けられると共にパンチ52を支持する支持台62と、を備えている。また、加工装置50は、基台60上に配置された複数のばね部材64と、複数のばね部材64上に配置されると共にガイド部58を支持する環状の支持部材66と、を備えている。
【0046】
また、加工装置50は、支持部材66上にガイド部58を介して取り付けられた複数のばね部材70と、複数のばね部材70の上に配置されると共にワーク40をガイドする下側保持部材72と、を備えている。また、加工装置50は、下側保持部材72に挿通されると共にワーク40の筒状部14が外装された状態で保持される保持棒74を備えている。上下方向の下側保持部材72と支持部材66との間には、水平方向に開閉可能なシャッタ76A、76Bが設けられている。さらに、加工装置50は、ワーク40を上方側から保持する上側保持部材78を備えている。
【0047】
支持台62は、上下方向に沿ってスライドピン80が挿通される貫通孔82Aを備えた下側支持部82と、パンチ52の下部が支持される上側支持部84と、を備えている。上側支持部84は、パンチ52のフランジ部52Bが挿入される下側孔部84Aと、パンチ52の突出部54が挿通されると共に下側孔部84Aの内径よりも内径が小さい上側孔部84Bと、を備えている。上側支持部84では、下側孔部84Aと上側孔部84Bとが上下方向に繋がっており、下側孔部84Aと上側孔部84Bとの間に段差84Cが形成されている。段差84Cにフランジ部52Bの上面が接触した状態で、下側孔部84A内のフランジ部52Bの下側に環状体86が挿入されている。環状体86の下端部は、下側支持部82の上面に接触している。上側支持部84の上部には、パンチ52の軸部52Aの外周面に接触する保持部88が設けられている。
【0048】
スライドピン80は、略円柱状とされており、上下方向に沿って配置されている。スライドピン80は、基台60の貫通孔に挿通されており、上下方向にスライドする構成とされている。スライドピン80は、図示しない移動装置(例えば、油圧シリンダなど)により、上下方向上側に蹴り出されるようになっている。
【0049】
保持棒74は、スライドピン80の上部に連結されており、上下方向に沿って配置されている。保持棒74は、略円柱状の軸部74Aと、軸部74Aの軸方向の一端部(本実施形態では下端部)に設けられると共に軸部74Aから半径方向外側に突出するフランジ部74Bと、を備えている。軸部74Aの外径は、ワーク40の筒状部14の内径よりも小さい。また、軸部74Aの外径は、パンチ52の軸部52Aの貫通孔55の内径よりも僅かに小さい。これにより、保持棒74の軸部74Aがパンチ52の軸部52Aの貫通孔55に挿通された状態で、軸部52Aに対して保持棒74が上下方向に移動するようになっている。
【0050】
保持棒74のフランジ部74Bの外径は、スライドピン80の軸部の外径とほぼ等しい。保持棒74のフランジ部74Bは、下側支持部82の貫通孔82Aに挿入可能とされている。これにより、保持棒74は、上下方向下側に移動し、フランジ部74Bが下側支持部82の貫通孔82Aに挿入される位置に移動するようになっている(
図7参照)。
【0051】
パンチ52のフランジ部52Bは、保持棒74の上下方向上側への移動を規制するストッパとしての機能を有する。すなわち、保持棒74のフランジ部74Bがパンチ52のフランジ部52Bに接触することで、保持棒74がそれより上に移動しないようになっている。
【0052】
下側保持部材72は、ワーク40の筒状部14が挿入される下側貫通孔72Aと、ワーク40のフランジ部20が挿入されると共に下側貫通孔72Aの内径よりも内径が大きい上側貫通孔72Bと、を備えている。下側保持部材72では、下側貫通孔72Aと上側貫通孔72Bとが上下方向に繋がっており、下側貫通孔72Aと上側貫通孔72Bとの間に段差72Cが形成されている。下側貫通孔72Aの内径は、ワーク40の筒状部14の外径よりも僅かに大きい。これにより、下側保持部材72の下側貫通孔72Aと筒状部14とが上下方向に相対的に移動するようになっている。
【0053】
シャッタ76A、76Bは、図示しない開閉手段により水平方向に移動する構成とされている。シャッタ76A、76Bは、
図6に示す開放位置と、シャッタ76A、76Bが互いに重なる閉止位置(
図10参照)とに移動するようになっている。シャッタ76A、76Bは、枠体104と、枠体104に支持されると共に枠体104の厚みよりも厚みが薄い薄板部106と、を備えている。図示を省略するが、シャッタ76A、76Bは、平面視にて左右対称とされており、薄板部106に互いに向かい合う方向に開口する略U字状の開口部を備えている。シャッタ76A、76Bが閉止位置に移動した状態では、一方のシャッタ76Aの枠体104の内側に、他方のシャッタ76Bの枠体104が入り込む。そして、シャッタ76A、76Bの枠体104と薄板部106の一部が重なり合うことで、シャッタ76A、76Bの開口部が略円形状となり、この略円形状の空間にワーク40が挿通されるようになっている(
図10参照)。
【0054】
上側保持部材78は、下側保持部材72と対向する位置に配置されている。上側保持部材78は、断面視にて逆U字状に形成された本体部92と、本体部92に挿通される挿入ピン94と、挿入ピン94を本体部92の下部側に向けて押すばね部材96と、を備えている。上側保持部材78の本体部92は、図示しない移動装置(例えば、油圧シリンダなど)により上下方向に移動する構成とされている。
【0055】
本体部92は、略円筒状とされており、中心部にばね部材96が配置される穴部92Aを備えている。また、本体部92は、穴部92Aの下部に繋がると共に穴部92Aの内径よりも内径が小さい上側貫通孔92Bと、上側貫通孔92Bの下部に繋がると共に上側貫通孔92Bの内径よりも内径が大きい下側貫通孔92Cと、を備えている。下側貫通孔92Cの内径は、穴部92Aの内径よりも小さい。
【0056】
本体部92では、穴部92Aの下部に底壁部92Dが設けられており、底壁部92Dに上側貫通孔92Bの上端部が開口している。また、本体部92では、上側貫通孔92Bと下側貫通孔92Cとの間に段差が形成されている。
【0057】
挿入ピン94は、略円柱状とされており、軸部94Aと、軸部94Aの軸方向の一端部(本実施形態では上端部)に半径方向外側に突出したフランジ部94Bと、を備えている。上側貫通孔92Bの内径は、挿入ピン94の軸部94Aの外径よりも僅かに大きい。上側貫通孔92B及び下側貫通孔92Cには、挿入ピン94の軸部94Aが挿通されており、挿入ピン94が上下方向に移動するようになっている。下側貫通孔92Cの内径は、ワーク40の基部12Bの外径よりも僅かに大きく、ワーク40の基部12Bが下側貫通孔92Cに挿入されるようになっている。
【0058】
ばね部材96の上端部は、本体部92の上部に取り付けられた取付部100に支持されており、ばね部材96の下端部は、挿入ピン94のフランジ部94Bに接触している。これにより、ばね部材96が挿入ピン94のフランジ部94Bを押すことで、挿入ピン94のフランジ部94Bが本体部92の底壁部92Dに接触する位置まで挿入ピン94が移動している。
【0059】
次に、本実施形態の作用及び効果であって、ワーク40の加工方法について説明する。
【0060】
図示を省略するが、加工装置50では、初期状態で上側保持部材78が上下方向の最も上側の待機位置(最上点)に移動している。すなわち、初期状態では、上側保持部材78は、
図6に示す上側保持部材78よりも上下方向上側に移動している。この状態で、加工装置50の下側保持部材72の所定の位置にワーク40が供給される。より具体的には、ワーク40は、筒状部14が保持棒74の軸部74Aに外挿されるように配置され、筒状部14が下側保持部材72の下側貫通孔72Aに挿入される(
図6参照)。これにより、ワーク40が保持棒74及び下側保持部材72の初期位置にセットされる。
【0061】
その後、
図6に示されるように、上側保持部材78を矢印Aに示す上下方向下側に移動させる(下降させる)。上側保持部材78の挿入ピン94の軸部94Aがワーク40の基部12Bに挿入される。この状態では、シャッタ76A、76Bが開放位置に移動している。
【0062】
上側保持部材78を更に矢印A方向に下降させると、挿入ピン94に押されることによって、ワーク40と保持棒74とスライドピン80とが下側保持部材72に対して上下方向下側に移動する。そして、ワーク40のフランジ部20が下側保持部材72の上側貫通孔72Bに挿入され、段差72Cに接触する(
図7参照、ワーク40と保持棒74とスライドピン80の位置は図示省略)。
【0063】
図7に示されるように、上側保持部材78を更に矢印A方向に下降させると、挿入ピン94に押されることによって、複数のばね部材70が圧縮されて下側保持部材72が下がり、上側保持部材78の本体部92の下面が下側保持部材72の上面に接触する。このとき、上側保持部材78では、ばね部材96が圧縮され、挿入ピン94が本体部92の底壁部92Dから離れて上下方向上側に移動する。
【0064】
図8に示されるように、上側保持部材78を更に矢印A方向に下降させると、上側保持部材78及び下側保持部材72にガイドされた状態でワーク40が上下方向下側に移動する。すなわち、下側保持部材72は、複数のばね部材64が圧縮されることで、上下方向下側に移動する。これにより、ワーク40の筒状部14にパンチ52の軸部52Aが挿入されると共に、パンチ52の複数の突出部54がワーク40の筒状部14に押し付けられることで、筒状部14に先端部から軸方向に沿って複数のスリット16が形成される(
図4参照)。すなわち、突出部54に押されて筒状部14が切り裂かれてスリット16が形成され、筒状部14が切り裂かれた切り裂き片42は、ガイド部58の溝部58Bに入り込む。このとき、
図5に示すガイド部58の貫通孔58Aの壁面によって筒状部14の外周面側が支えられることで、筒状部14に複数のスリット16がスムーズに形成される。
図4に示されるように、筒状部14が切り裂かれた切り裂き片42は、突出部54の傾斜面54Aに沿って湾曲した形状(反り返った形状)となる。
【0065】
図9に示されるように、上側保持部材78を更に下降させると、上側保持部材78の本体部92にガイドされた状態でワーク40が下がり、上側保持部材78が最下点に到達することで、パンチ52の突出部54による筒状部14のスリット16の形成が終了する。上記の加工工程では、パンチ52の傾斜面54Aによって、
図2に示されるように、筒状部14におけるスリット16の本体部12側の軸方向端面に、断面視にて筒状部14の外周面側に対して筒状部14の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部24が形成される。
【0066】
その後、上側保持部材78を上昇させると共に、スライドピン80を上昇させる。上側保持部材78の上昇に伴い、複数のばね部材64と複数のばね部材70の元に戻り始める(圧縮が徐々に解除される)。
【0067】
図10に示されるように、上側保持部材78を矢印B方向に上昇させ、下側保持部材72がシャッタ76A、76Bよりも上側に上昇した状態で、シャッタ76A、76Bが閉止される。シャッタ76A、76Bは、開口部(図示省略)によりワーク40の周囲を囲んだ状態となる。
【0068】
図11に示されるように、シャッタ76A、76Bが閉止された状態で、上側保持部材78を矢印B方向に上昇させると共に、スライドピン80を上下方向上側に蹴り出すことで、保持棒74によりワーク40が下側保持部材72に対して上下方向上側に移動する。これにより、ワーク40の切り裂き片42が下側保持部材72の下側貫通孔72Aの角部に当たり、ワーク40から切り裂き片42が脱離してシャッタ76A、76Bの上に落ちる。その後、図示を省略するが、上側保持部材78が最上点の待機位置まで上昇し、ワーク40が供給されたときと同じ状態に戻る。また、シャッタ76A、76Bと下側保持部材72との間にエアを吹き付けるエアブローにより、シャッタ76A、76B上から切り裂き片42が除去される。
【0069】
これにより、ワーク40の加工が完了し、
図1(A)、(B)に示されるように、筒状部14に複数のスリット16を備えた雌型接続端子10が製造される。なお、雌型接続端子10は、筒状部14の先端部14A側の外径を本体部12の中間部12Aの外径よりも小さくするような加工を行ってもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態では、ワーク40の筒状部14にパンチ52の軸部52Aを挿入すると共に、パンチ52の突出部54を筒状部14に押し付けることで、筒状部14に先端部14Aから軸方向に沿ってスリット16を形成する。このとき、突出部54に押されて筒状部14が切り裂かれた部分がスリット16となる。このため、本実施形態では、切削加工により筒状部にスリットを形成する場合と比べて、筒状部14におけるスリット16の縁部にバリが発生しにくい。このため、雌型接続端子10におけるスリット16を備えた筒状部14に、雄型接続端子30を挿入したときに、雌型接続端子10の筒状部14と雄型接続端子30との接触を安定化させることができる。また、本実施形態では、切削加工により筒状部にスリットを形成した後、バリを切削ドリルなどで除去する場合に比べて、突出部54を筒状部14に押し付けてスリット16を形成するため、バリを除去する工程が不要となり、筒状部14にスリット16を効率よく形成することができる。
【0071】
また、本実施形態では、突出部54を筒状部14に押し付けるときに、筒状部14の外周面側をガイド部58の貫通孔58Aの壁面で支える。このため、筒状部14に先端部14Aから軸方向に沿ってスリット16を安定して形成することができる。
【0072】
また、本実施形態では、突出部54を筒状部14に押し付けるときに、突出部54の傾斜面54Aによって、筒状部14におけるスリット16の本体部12側の軸方向端面に、断面視にて筒状部14の外周面側に対して筒状部の内周面側が深く傾斜するように切り欠かれた傾斜部24を形成する。傾斜部24を形成したとき、筒状部14の内周面側の傾斜部24から半径方向内側に突出するバリが発生しにくい。このため、雌型接続端子10の筒状部14と雄型接続端子30との接触をより安定化させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、パンチ52には、突出部54が軸部52Aの周方向に複数並べて配置されている。そして、複数の突出部54を筒状部14に押し付けることで、複数の突出部54により、筒状部14に先端部14Aから軸方向に沿って複数のスリット16を形成する。このため、筒状部14に複数のスリット16を効率よく形成することができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、ワーク40を加工することで、充電用コネクタの雌型接続端子10を製造する。このため、雌型接続端子10の筒状部14に雄型接続端子30を挿入したときに、スリット16を備えた筒状部14と雄型接続端子30との接触を安定化させ、電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0075】
図12には、ワーク40を加工して比較例の雌型接続端子を製造する方法が断面図にて示されている。また、
図13には、比較例の雌型接続端子が断面図にて示されている。
図12に示されるように、比較例では、ワーク40の筒状部14に切削加工によりスリット16を形成する。より具体的には、切削加工用の回転刃202を筒状部14の先端部14Aから当てることで、筒状部14に先端部14Aから軸方向にスリット16を形成する。図示を省略するが、同様に回転刃202を筒状部14の他の位置の先端部14Aから当てることで、筒状部14の他の位置の先端部14Aから軸方向にスリット16を形成する。そして、
図13に示されるように、筒状部14に先端部14Aから軸方向に複数のスリット16を形成することで、雌型接続端子200が製造される。
【0076】
比較例では、切削加工用の回転刃202により筒状部14にスリット16を1本毎に形成しなければならず、作業効率が悪い。また、
図13に示されるように、切削加工用の回転刃202により筒状部14にスリット16を形成するときに、筒状部14におけるスリット16の縁部に、スリット16の軸方向に沿って筒状部14の半径方向内側に突出するバリ204が発生しやすい。また、切削加工用の回転刃202の外周全体の半分より少ない円弧部(本実施形態では外周全体の約1/4の部分)が筒状部14に当たることで、筒状部14にスリット16が形成される(
図12参照)。このため、筒状部14におけるスリット16の本体部12側の軸方向端面に、断面視にて筒状部14の外周面側に対して筒状部14の内周面側が浅く傾斜するように切り欠かれた傾斜部206が形成される。言い換えると、傾斜部206は、断面視にて筒状部14の外周面側に対して筒状部14の内周面側が筒状部14の先端部14A側に位置するように傾斜している。このため、筒状部14におけるスリット16の傾斜部206から筒状部14の半径方向内側に突出するバリ204が発生しやすい。したがって、雌型接続端子200の筒状部14と雄型接続端子30との接触が安定しない可能性がある。
【0077】
これに対して、本実施形態の雌型接続端子10では、パンチ52の突出部54を筒状部14に押し付けることで、筒状部14に先端部14Aから軸方向に沿ってスリット16を形成する。このため、切削加工により筒状部にスリットを形成する場合と比べて、筒状部14におけるスリット16の縁部にバリが発生しにくい。したがって、雌型接続端子10の筒状部14と雄型接続端子30との接触を安定化させることができる。
【0078】
なお、上記実施形態において、筒状部のスリットの本数や寸法は変更が可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、充電用コネクタの雌型接続端子10を例として説明したが、本発明は、これに限定するものではない。例えば、スリットを備えた筒状部に挿入部材が挿入される構成であれば、他の接続機器などに本発明を適用することができる。
【0080】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0081】
10 雌型接続端子(加工部品の一例)
12 本体部
14 筒状部
14A 先端部
16 スリット
24 傾斜部
40 ワーク
50 加工装置
52 パンチ(加工用治具の一例)
52A 軸部
54 突出部
54A 傾斜面
58 ガイド部(支持部の一例)