(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221220BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2021534897
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 KR2020004616
(87)【国際公開番号】W WO2020226285
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0054063
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン テ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ナク ギ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジョーン ソプ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157128(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0090744(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立てた二次電池をSOC45%から65%まで充電するフォーメーション段階、
前記フォーメーション段階において充電された二次電池をエージングするエージング段階、及び
前記二次電池の電圧値の変化を測定する低電圧検査段階を含み、
前記低電圧検査段階は、SOC30%以下の区間で電圧値を測定する、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記フォーメーション段階は、充電と同時に前記二次電池を加圧する、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記フォーメーション段階は、30℃から65℃の温度で行われる、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記フォーメーション段階は、SOCに応じた初期、中期、末期の3段階フォーメーション区間を有し、各区間毎に充電速度又は加圧力のフォーメーション条件が異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記初期のフォーメーション区間は0.1Cから0.3Cの充電速度、0.1kgf/cm
2から1.0kgf/cm
2の圧力で、
前記中期のフォーメーション区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、0.1kgf/cm
2から1.0kgf/cm
2の圧力で、
前記末期のフォーメーション区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、7kgf/cm
2から13kgf/cm
2の圧力でフォーメーションする、請求項4に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記初期のフォーメーション区間の上限はSOC1%から7%であり、上記中期のフォーメーション区間の上限はSOC15%から19%である、請求項5に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記エージング段階は60℃以上の温度で二次電池を安定化する高温エージング段階を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項8】
20℃から30℃の温度で二次電池を安定化する常温エージング段階をさらに含む、請求項7に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記エージング段階の後に前記二次電池の内部を脱ガスする段階、並びに、前記二次電池の満充電及び満放電する段階をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記満充電及び満放電段階の後に前記二次電池の出荷充電する段階をさらに含む、請求項9に記載の二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記フォーメーション段階の前に、組立てた二次電池を常温で熟成するプリエージング段階をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記低電圧検査段階は、電圧降下量により不良二次電池を選別することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記電圧値の変化を測定する段階は、SOC5%から25%の区間で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年05月09日付韓国特許出願第10-2019-0054063号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池の製造方法に関するものであって、具体的には、充電時間を短縮して二次電池の量産性を確保し、製造された二次電池の性能の偏差を減少させて低電圧不良の選別を容易にし、異物や内部段落による低電圧不良のほかにリチウムプレーティング、ウエッティング、ガス等のフォーメーション状態の不均一性による不良も選別できるのみならず、低電圧不良の検出時間を短縮する二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池への需要が急激に増加しており、そのような二次電池の中でも高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使われている。
【0004】
リチウム二次電池は、電極組立体が電解液と共に電池ケースに格納されて組立てられた後、活性化工程を経る。上記活性化工程は、組立てられた電池を充電、エージング、及び放電する過程を通じて電池構造を安定化させ、使用可能な状態になるようにする。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、製造工程または使用中の多様な原因により、多様な形態の不良が発生し得る。特に、製造済みの二次電池の一部においては、自己放電率以上の電圧降下挙動を示す現象を見せたりもするが、このような現象を低電圧という。
【0006】
このような二次電池の低電圧不良現象は、内部に位置した金属異物に起因する場合が多く、代表的だと言える。特に、二次電池の正極板に鉄や銅のような金属異物が存在する場合、このような金属異物は負極にてデンドライトとして成長し得る。さらに、このようなデンドライトは、二次電池の内部短絡を引き起こし、二次電池の故障や損傷、ひどい場合には発火の原因になり得る。
【0007】
従来には、プリエージングされた電池をSOC10%から30%の範囲に一次充電し、エージング工程中、選択された2つの時点でそれぞれのOCV(Open Circuit Voltage;開放回路電圧)を測定し、OCVの変化値(電圧降下量)と基準値を比較して電圧降下量が基準値未満の二次電池を良品として判定する方式で、低電圧不良を選別してきた。
【0008】
しかし、上記した方法は、良品の電圧降下量と不良品の電圧降下量が同一のレベルで現れる領域があるので、正確な低電圧不良の選別が困難であった。なお、従来の方法はリチウムプレーティング、ガス等のフォーメーション状態の不均一性による不良を選別し得ないという短所があった。従って、良品の電圧降下量は低減させ、フォーメーションの不均一による低電圧不良を検出する活性化方法が必要である、というのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、良品の電圧降下量を減少させて分散を改善し、低電圧不良の検出力を向上させる二次電池の活性化方法を提供するためのものである。
【0010】
なお、本発明は、充電時間及び低電圧不良の検出時間を短縮して量産性を確保する二次電池の製造方法を提供することを技術的解決課題とする。
【0011】
本発明のまた他の目的は、異物による低電圧不良のみならず、フォーメーションの不均一による不良を検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の二次電池の製造方法は、組立てた二次電池をSOC45%から65%まで充電するフォーメーション段階、上記フォーメーション段階において充電された二次電池をエージングするエージング段階、及び電圧値の変化を測定する低電圧検査段階を含み、上記低電圧検査段階はSOC30%以下の区間で電圧値を測定することを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記フォーメーション段階は充電と同時に加圧する。
【0014】
このとき、上記フォーメーション段階は30℃から65℃の温度で行われることであり得る。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記フォーメーション段階は、SOCによって初期、中期、末期の3段階のフォーメーション区間を有し、各区間ごとに充電速度又は加圧力のフォーメーション条件が異なり得る。
【0016】
このとき、上記初期のフォーメーション区間は0.1Cから0.3Cの充電速度、0.1kgf/cm2から1.0kgf/cm2の圧力、上記中期のフォーメーション区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、0.1kgf/cm2から1.0kgf/cm2の圧力、上記末期のフォーメーション区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、7kgf/cm2から13kgf/cm2の圧力でフォーメーションすることであり得る。
【0017】
また、上記初期のフォーメーション区間の上限はSOC1%から7%であり、中期のフォーメーション区間の上限はSOC15%から19%であり得る。
【0018】
本発明の一実施形態において、上記エージング段階は60℃以上の温度で二次電池を安定化する高温エージング段階を含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、20℃から30℃の温度で二次電池を安定化する常温エージング段階をさらに含む。
【0020】
本発明の一実施形態において、上記エージング段階の後に脱ガスする段階、満充電及び満放電する段階をさらに含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、上記満充電及び満放電段階の後に出荷充電する段階をさらに含む。
【0022】
本発明の一実施形態において、上記フォーメーション段階の前に、組立てた二次電池を常温で熟成するプリエージング段階をさらに含む。
【0023】
本発明の一実施形態において、上記低電圧検査段階は、電圧降下量により不良二次電池を選別することである。
【0024】
本発明の一実施形態において、上記低電圧検査段階は、SOC10%から30%の区間で行われる。
【0025】
本発明は上記方法により製造されたリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の二次電池の製造方法は、良品の電圧降下量は減少させ、かつ不良品の電圧降下量を増加させることにより、低電圧不良の検出力を向上させ、低電圧検査に要する時間を短縮させるという効果がある。
【0027】
なお、本発明の二次電池の製造方法は、SEI被膜が安定に形成されるため、充電に要する時間が短縮され、二次電池の量産性が確保されるという効果がある。
【0028】
なお、本発明の二次電池の製造方法は、負極の容量あたり電圧変化率が大きい区間で低電圧検査を行う。そのため、フォーメーション工程の不均一性による低電圧不良も検出するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】充電を通じてリチウムイオンが負極活性物質内に挿入される段階を図示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る二次電池の製造方法の順番を示した図面である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る二次電池の製造方法の順番を示した図面である。
【
図4】電池のSOCに係る電圧とdV/dSOCを表すグラフである。
【
図5】負極のSOCに係る電圧を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照し、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的、あるいは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はかれ自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づき、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈すべきである。
【0031】
したがって、本発明に記載された実施例と図面に図示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではない。そのため、本出願時点に、これらを代替し得る多様な均等物及び変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係る二次電池の製造方法の順番を図示したものであって、それを参照すると、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、組立てた二次電池をSOC45%から65%まで充電するフォーメーション段階、上記フォーメーション段階において充電された(フォーメーションされた)二次電池をエージングするエージング段階、電圧値の変化を測定する低電圧検査段階を含み、上記低電圧検査段階はSOC30%以下の区間で電圧値を測定することを特徴とする。
【0033】
上記フォーメーション段階は、負極のSEI(固体電解質界面、Solidelectrolyte interface、以下「SEI」と称する)被膜層を形成する段階であって、組立てた二次電池を二次電池容量(SOC;State Of Charge)の45%から65%までの高率で充電することが特徴である。
【0034】
良品の二次電池の電圧降下量を低減させて分散を改善させるためには、負極のSEI被膜を均一かつ安定に形成する必要があるが、それは負極の体積を最大に膨張させてからこそ達成し得る。本発明の発明者は、1次充電時にSOC45%から65%で充電を行うと、SEI被膜が可能な限り均一に形成され、良品の電圧降下量が低減することを発見し、本発明に至ることになった。
【0035】
図1には、充電に係るリチウムイオンの層間挿入段階が図示されている。それを参照すると、充電の進行につれ、リチウムイオンが負極の層状構造内に挿入されながら段階4(Stage4)から段階1(Stage1)へと安定化される。ただし、1次充電時に段階2(Stage2)が完了する時点まで充電されなければ、安定なSEI層が形成されない。ここで、段階2が完了する充電地点とは、負極活物質の種類によって差はあるが、通常SOC45%からSOC65%のレベルである。従来には、活性化工程の1次充電時にSOC30%になる地点まで充電したが、それは段階3(Stage3)から段階2(Stage2)へと変換される区間であって、負極の体積が十分に膨張されなかった状態で充電が終了されるので、SEI被膜が安定に形成されなかった。
【0036】
したがって、上記フォーメーション工程の1次充電時に、SOC45%未満で充電を行うと、本発明の目的達成が難しくなるため、望ましくない。
【0037】
上記フォーメーション段階の充電条件は、当業界に公知された方法によって充電が行い得る。具体的には、3.0から4.0Vの充電電圧、1.3C以下のCレート(C-rate)で充電が行い得る。ただし、このような充電電圧及び充電速度の場合、二次電池の種類や特性によって異なり得、これに限るものではない。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態において、上記フォーメーション段階は、上記フォーメーション工程の充電過程から発生するガスが電極、電極と分離膜との間に閉じ込められるガストラップ(gas trap)現象及びリチウムプレーティングを防止するために、充電と同時に二次電池を加圧することが好ましい。
【0039】
このように、フォーメーション段階において二次電池を加圧することで、負極にSEI被膜が均一に形成され、容量及び抵抗等の電池の性能を最大に発現させ得るという長所があり、充放電時間が短縮されるという効果がある。上記加圧はジグ(jig)等を用いて行い得るが、二次電池を加圧し得る手段であれば、それに制限されるのではない。
【0040】
本発明の一実施形態において、上記フォーメーション段階は30℃から65℃の温度で行われることが好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態において、上記フォーメーション段階は、SOCによって初期、中期、末期という3段階のフォーメーション区間を有し、各区間ごとに充電速度又は加圧力のフォーメーション条件が異なるように設定することができる。
【0042】
具体的に、上記初期区間は0.1Cから0.3Cの充電速度、0.1kgf/cm2から1.0kgfcm2の圧力、上記中期区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、0.1kgf/cm2から1.0kgf/cm2の圧力、上記末期区間は0.7Cから1.3Cの充電速度、7kgf/cm2から13kgf/cm2の圧力で二次電池をフォーメーションすることである。
【0043】
ここで、上記初期区間とは、SOC0%からSOC1%から7%までのフォーメーション区間を、上記中期区間とは、上記初期区間以降からSOC15%から19%のフォーメーション区間を、上記末期区間とは、上記中期区間の以降からSOC45%から65%までのフォーメーション区間を意味することであり得る。
【0044】
このように、フォーメーション区間を複数の段階に設定し、各フォーメーション区間毎に充電速度や加圧力を異なるように設定してフォーメーションすることにより二次電池の容量及び抵抗性能を向上させ、良品の性能偏差を減少させることにより不良電池の検出力を向上させるという効果がある。
【0045】
その後、上記フォーメーションされた二次電池を安定化させるエージング段階を行う。上記エージング段階は、一定の温度及び湿度を維持して、電池をさらに安定化させる段階である。
【0046】
上記エージング段階は、60℃以上の高温環境でエージングする高温エージング段階及び/又は20℃から30℃の温度で二次電池を安定化する常温エージング段階を含むことができる。
【0047】
上記高温エージング段階は、前のフォーメーション段階で形成されたSEI被膜を安定化させる段階であって、フォーメーションされた電池を常温ではない高温でエージングする場合、SEI被膜の安定化がさらに加速するという利点がある。SEI被膜を安定化させ、二次電池の性能偏差が減少する本発明の目的上、上記フォーメーション工程の後に高温エージングを行うことが好ましい。
【0048】
本発明においては、このような高温エージング段階を60℃以上の温度条件、好ましくは65℃から75℃の温度条件で実施して、良品のSEI被膜安定化を加速化させかつ良品の自己放電量を減少させ、低電圧検出を向上させるという効果を有することになる。上記高温エージングを60℃未満の温度で行うことになると本発明の目的達成が難しく、温度が過度に高い場合には電池性能、例えば、容量及び寿命が低下されるという問題があるため、好ましくない。
【0049】
本発明の一実施形態において、上記高温エージング段階は18時間から36時間、更に好ましくは21時間から24時間が行われる。高温エージング時間が18時間未満の場合には、SEI被膜の安定化が不十分であるため、本発明の目的達成が困難である。また、高温エージング時間が36時間を超える場合には、エージング時間が長期化して生産性の側面において好ましくない。
【0050】
高温エージングによりSEI被膜が安定化した二次電池を、常温で安定化させる常温エージングを行い得る。上記常温エージング段階は20℃から30℃、詳細には22℃から28℃、さらに詳細には23℃から27℃、なおさら詳細には25℃から27℃で行われ得る。
【0051】
本発明の一実施形態において、上記常温エージング工程と同時に、又は常温エージング工程の終了後に、電解液含浸、副反応発生および組立て部品異常の可否を検査する工程が行われ得る。上記検査は、常温エージングが始まるスタート点と常温エージングが完了する終了点とでそれぞれ二次電池OCVを測定してその電圧値の変化を確認する。このような電圧値の差が予め設定した基準値の範囲を超える場合には、生産された電池を不良として判断し得る。
【0052】
図3は、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法の順序図であって、これを参照すると、上記エージング段階の後に脱ガス工程を行う段階、満充電及び満放電工程を行う段階、出荷充電する段階、電圧値の変化を測定する段階を含む二次電池の製造方法が開示されている。
【0053】
上記脱ガス(Degassing)工程は、上記フォーメーション工程及びエージング段階を経て二次電池内部に生成された副反応ガスを除去するためのものである。このような脱ガス工程には、本願発明の出願時点に公知された多様な脱ガス技術が採用され得る。例えば、上記脱ガス工程は、一側が長く延長形成されたパウチ型二次電池において、延長形成された部分を切開し、切開された部分をシーリングする方式で脱ガス工程が行われ得る。ただし、このような脱ガス技術は当業者に広く知られているので、より詳細な説明は省略する。
【0054】
上記満充電及び満放電の工程は、電池の活性化及び不良電池を選別するために、電池を完全に充電させた後、完全に放電させる工程である。
【0055】
上記出荷充電段階は、電池を完全に放電した後、製品の出荷のために充電する段階である。
【0056】
出荷充電が完了された二次電池は、電圧値の変化を測定する段階を通じて低電圧不良を検出することになる。上記電圧値の変化を測定する段階は、出荷充電された電池を一定の温度及び湿度の条件の下で安定化させて電圧(OCV)を測定することを含む。具体的には、出荷充電した電池の安定化が始まるスタート点で電池のOCVを測定し、それから12時間から300時間、24時間から240時間、36時間から120時間以降の時点で電池のOCVを測定する。そして、その電圧値の変化を確認し、このような電圧値の差が予め設定した基準値の範囲を超える場合には、生産された電池を不良として判断し得る。
【0057】
図4は、電池のSOCに応じた電圧とdV/dSOCを図示しているが、それを参照すると、SOC17%およびSOC54%である地点のdV/dSOCが最も大きい。このようにdV/dSOCが大きいSOCの区間で電圧降下量の測定を通じて低電圧検査を行う場合、良品と比べて不良品の自己放電量がはるかに大きくなるため、不良品の検出力が向上されるという効果がある。しかし、このように低電圧検査を行う区間を単に電池のdV/dSOC又はdV/dQが大きい区間として設定して低電圧検査を行うことは、フォーメーション不良により負極被膜の状態が不均一な低電圧不良セルを検出するには十分ではない。dV/dSOCまたはdV/dQが大きい区間であっても、フォーメーション不良の電池が検出されないことがあり得るからである。
【0058】
そこで、本発明は、負極のdV/dSOCが大きい区間においての電圧降下量の測定を通じた低電圧検査を行うことを特徴とする。負極のリチウムプレーティング、電解液含浸の不十分性、ガストラップ等のようなフォーメーション不良が原因で、負極被膜の状態が不均一な電池の場合は、自己放電量が大きくなる。そのため、不良品の検出感度を向上させ得るという効果がある。
【0059】
図5は、負極のSOCに係る電圧を図示している。それを参照すると、SOC30%以下の区間においてのdV/dSOC(グラフの傾き)が大きい。そのため、上記SOCの区間においての低電圧検査を行う場合、フォーメーション不良の電池を検出するのが容易である。検出力向上の面において、SOC5%から25%の区間で低電圧検査を行うことがより好ましく、SOC10%未満にSOCを設定することが現実的に困難であれば、SOC10%からSOC30%の充電量区間、好ましくはSOC10%からSOC20%の区間で上記低電圧検査を行うこともあり得る。
【0060】
本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、上記フォーメーション工程を行う前に、組立てた二次電池を一定の温度及び湿度の条件下で熟成させるプリエージング段階を行い得る。
【0061】
まず、プリエージング段階において、電極活物質及びバインダーを含む電極合剤を電極集電体に塗布し、それぞれ正極及び負極を製造した後、上記正極と上記負極との間に分離膜を介在して電極組立体を準備する。
【0062】
このように準備された電極組立体を電池ケースに格納した後に電解液を注入し、電池ケースを密封して電池を製造することになる。
【0063】
このような電池を製造する段階は、特に制限されることなく、公知された方法によって行い得る。
【0064】
なお、上記電極組立体は、正極、負極及び上記正極及び上記負極との間に介在されている分離膜を含む構造であれば、特に制限はなく、例えば、ゼリーロール型、スタック型又はスタック/折り畳み型などが使用され得る。
【0065】
上記電池ケースは、電池の包装のための外装材として使用されるものであれば、特に制限されなく、円筒形、角形又はパウチ型が使用され得る。
【0066】
上記電解液は、有機溶媒及びリチウム塩を含み、添加剤を選択的にさらに含み得る。
【0067】
上記有機溶媒は、電池の充放電過程において酸化反応等による分解を最小限に抑えられるものであれば制限はなく、例えば、環状カーボネート、線状カーボネート、エステル、エーテル又はケトンなどであり得る。これらは単独で使うことができ、2種以上を混用して使用され得る。
【0068】
上記有機溶媒のうち、特にカーボネート系の有機溶媒が好ましく使用され得るが、環状カーボネートとしてはエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)が挙げられ、線状カーボネートとしてはジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)が代表的である。
【0069】
上記リチウム塩は、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiBF4、LiBF6、LiSbF6、LiN(C2F5SO2)2、LiAlO4、LiAlCl4、LiSO3CF3及びLiClO4など、通常リチウム二次電池の電解液として使用されるリチウム塩が制限なく使用され得る。そして、これらは単独に使用され得、2種以上を混用して使用され得る。
【0070】
なお、上記電解液には、選択的に、添加剤がさらに含まれ得る。SEI膜を安定的に形成するための上記添加剤としては、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸フルオロエチレン、環状亜硫酸塩、飽和スルトン、不飽和スルトン、非環状スルホン、リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiODFB)及びこれらの誘導体からなる群れから選択されるある一つまたはそれらのうちに2種以上の混合物が使用され得るが、これに限定されない。
【0071】
上記環状亜硫酸塩としてはエチレンスルフィート、メチルエチレンスルフィート、エチルエチレンスルフィート、4,5-ジメチルエチレンスルフィート、4,5-ジエチルエチレンスルフィート、プロピレンスルフィート、4,5-ジメチルプロピレンスルフィート、4,5-ジエチルプロピレンスルフィート、4,6-ジメチルプロピレンスルフィート、4,6-ジエチルプロピレンスルフィートおよび1,3-ブチレングリコールスルフィートなどが挙げられ、飽和スルトンとしては1,3-プロパンスルトンおよび1,4-ブタンスルトンなどが挙げられ、不飽和スルトンとしてはエテンスルトン、1,3-プロペンスルトン、1,4-ブチエンスルトンおよび1-メチル-1,3-プロペンスルトンなどが挙げられ、非環状スルホンとしてはジビニルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルエチルスルホンおよびメチルビニルスルホンなどが挙げられる。
【0072】
このような添加剤は、負極に堅固なSEI被膜を形成することで、低温出力特性を改善させることはもちろん、高温サイクル作動時に発生し得る正極表面の分解を抑制し、電解液の酸化反応を防止するために上記電解液に添加される。
【0073】
上記電池ケースがパウチ型である場合に、アルミニウム層を含むアルミニウム積層パウチが使用され得る。上記電解液を注入した後に、上記アルミニウム積層パウチの開封された部分を熱溶接又は熱融着することで、密封し得る。
【0074】
上記プリエージング段階(S100)で注入された電解液による電池の含浸(Wetting)が行われる。
【0075】
より具体的には、二次電池は、充電時に電子が導線に乗って負極へと移動し帯電されると、電荷中性(charge neutrality)を成すためにリチウムイオンが負極に吸蔵(intercalation)される。このとき、リチウムイオンは、電解液の含浸された部位、すなわち、イオンの移動経路が保たれる部位(wetting area)では吸蔵が可能である。しかし、電解液の非含浸部位(non-wettingarea)では吸蔵が相対的に難しくなる。
【0076】
したがって、プリエージングする段階を通じて、電解液が上記正極及び上記負極にうまくしみ込むように、電池を常温、常圧の条件で0.5から72時間を熟成させることができる。例えば、上記プリエージングする段階は20℃から30℃、詳しくは22℃から28℃、より詳しくは23℃から27℃、さらに詳しくは25℃から27℃で実施され得る。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、多様な他の形態に変形され得、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0078】
[製造例1]
正極活物質として機能するLi[Ni0.6Mn0.2Co0.2]O2を96.7重量部、導電材として機能するグラファイトを1.3重量部、結合剤として機能するポリビニリデンフルオライド(PVdF)を2.0重量部で混合し、正極合剤を調製した。得られた正極合剤を溶媒として機能する1-メチル-2-ピロリドンに分散させることによって正極合剤スラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウムホイルの両面にそれぞれコーティング、乾燥及び圧着して正極を製造した。
【0079】
負極活物質として機能する人造黒鉛と天然黒鉛(重量比:90:10)を97.6重量部、結合剤として機能するスチレンブタジエンゴム(SBR)を1.2重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)を1.2重量部で混合して、負極合剤を調製した。この負極合剤を溶媒として機能するイオン交換水に分散させることによって負極合剤スラリーを製造した。このスラリーを厚さ20μmの銅ホイルの両面にそれぞれコーティング、乾燥及び圧着して負極を製造した。
【0080】
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を3:3:4(体積比)の組成で混合した有機溶媒に、LiPF6が1.0Mの濃度になるように溶解させて非水性電解液を製造した。
【0081】
上記の製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレーターが介在されるように積層し、それをパウチに格納した後、上記電解液を注入してリチウム二次電池の組立てを完了した。
【0082】
[製造例2]
上記の製造例のようにリチウム二次電池を製造し、かつ正極、負極、分離膜を組立てる過程において微細短絡抵抗が1kΩレベルになるように、100μmの銅粒子を投入して不良電池の組立てを完了した。
【0083】
[実施例1]
上記製造例1の組立てたリチウム二次電池10個を準備して、25℃の常温で24時間熟成させてプリエージングし、プリエージングされた二次電池をフォーメーションジグに取り付けた後、45℃の温度で加圧して充電するジグフォーメーション工程を行った。このとき、フォーメーション工程はSOCに応じた3段階の区間に分け、SOC0%からSOC1%までの初期区間は0.2Cの充電速度と0.5kgf/cm2の圧力、SOC1%からSOC17%までの中期区間は1Cの充電速度と0.5kgf/cm2の圧力、SOC17%からSOC60%までの末期区間は1Cの充電速度、10kgf/cm2の圧力でフォーメーション工程を行った。その後、24時間を65℃の温度で高温エージングを行い、12時間を25℃の温度で常温エージングを行った。
【0084】
その後、脱ガス工程を行い、脱ガスされた電池を満充電及び満放電した後、SOC17%レベルに出荷充電を行った。
【0085】
[実施例2]
上記実施例1において、フォーメーション工程時の末期区間をSOC50%まで充電したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0086】
[実施例3]
上記実施例1において、SOC30%レベルに出荷充電したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0087】
[比較例1]
上記製造例1の組立てたリチウム二次電池10個を準備して、25℃の常温で24時間熟成させてプリエージングし、プリエージングされた二次電池をフォーメーションジグに取付けた後に加圧して充電するジグフォーメーション工程を行った。このとき、フォーメーション工程はSOCに応じた3段階の区間に分け、SOC0%からSOC5%までの初期区間は0.2Cの充電速度と0.5kgf/cm2の圧力、SOC5%からSOC17%までの中期区間は0.7Cの充電速度と0.5kgf/cm2の圧力、SOC17%からSOC30%までの末期区間は0.7Cの充電速度と10kgf/cm2の圧力でフォーメーション工程を行った。その後、24時間を65℃の温度で高温エージングを行い、12時間を25℃の温度で常温エージングを行った。
【0088】
その後、脱ガス工程を行い、脱ガスされた電池を満充電及び満放電した後、SOC30%レベルに出荷充電を行った。
【0089】
[参照例1]
上記製造例2の電池10個を準備し、上記実施例1と同様の方法で二次電池を製造した。
【0090】
[参照例2]
上記製造例2の電池10個を準備し、上記実施例3と同様の方法で二次電池を製造した。
【0091】
[参照例3]
上記製造例2の電池10個を準備し、上記比較例1と同様の方法で二次電池を製造した。
【0092】
[実験例1-充電時間の測定]
【0093】
上記実施例1、2及び比較例1の製造工程のうち、フォーメーション工程の充填時間(1次充電時間)及び満充電時間をそれぞれ測定した後にその平均値を計算し、その結果を表1に表した。
【0094】
【0095】
上記表1を参照すると、1次フォーメーション時にSOC60%のレベルで充電した実施例1の電池は、SOC30%レベルで充電した比較例1の電池と比べて充電時間が短縮され、量産性を確保するという効果がある。
【0096】
「実験例2]
上記実施例1の電池に対して、それぞれ出荷充電が終了した後にOCV(OCV1)を測定し、そこから表2に記載された時点毎のOCV(OCV2)を測定した。測定されたOCV1及びOCV2を用いてΔOCV(=OCV1-OCV2)を計算し、ΔOCVの最大値(良品のΔOCV最大値)を求めた。
【0097】
上記参照例1の電池に対しても、出荷充電が終了した後にOCV(OCV1)を測定し、そこから表2に記載された時点毎のOCV(OCV2)を測定した。測定されたOCV1及びOCV2を用いてΔOCV(=OCV1-OCV2)を計算して、ΔOCVの最小値(不良品のΔOCV最小値)を求めた。
【0098】
そして、不良品のΔOCV最小値から上記良品のΔOCV最大値を引いた値を表2に表した。
【0099】
上記実施例3の電池及び参照例2の電池に対しても、上記と同様の方法で、不良品のΔOCV最小値から上記良品のΔOCV最大値を引いた値を表2に表し、上記比較例1及び参照例3の電池に対しても、上記と同様の方法で、不良品のΔOCV最小値から上記良品のΔOCV最大値を引いた値を表2に表した。
【0100】
【0101】
上記表2を参照すると、実施例1の方法で活性化工程及び低電圧検査を行う場合、良品の電圧降下量は減少され、不良品の電圧降下量は増加され、良品の電圧降下量の最小値と不良品の電圧降下量の最大値との差は4日目に0.8mVになることが確認できる。
【0102】
その反面、比較例1の方法で活性化工程及び低電圧検査を行う場合には、良品の電圧降下量の最小値と不良品の電圧降下量の最大値との差が13.5日になってから0.7mVになることが確認できる。
【0103】
上記のように、1次フォーメーション時に、充電SOCを上向させ、低電圧検査の区間をSOC30%以下に設定する本発明の二次電池の製造方法は、短時間内に良品と不良品を明らかに区分し得るという効果がある。