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特許7196386ポリアミド-イミドブロック共重合体、その製造方法およびこれを含むポリアミド-イミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ポリアミド-イミドブロック共重合体、その製造方法およびこれを含むポリアミド-イミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20221220BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221220BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08G73/14
C08J5/18 CFG
C08J7/00 304
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021543264
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2020004821
(87)【国際公開番号】W WO2020209625
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0041556
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ギエウン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジェ グ
(72)【発明者】
【氏名】リム、ユーン ビン
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】リム、スン ジューン
(72)【発明者】
【氏名】キム、セ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウー ハン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506479(JP,A)
【文献】特開2004-333672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135251(US,A1)
【文献】特表2020-525575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される第1繰り返し単位、
下記化学式2で表される第2繰り返し単位、および
下記化学式3で表される第3繰り返し単位
を含む、
ポリアミド-イミドブロック共重合体:
[化学式1]
【化22】
[化学式2]
【化23】
[化学式3]
【化24】
上記化学式1~化学式3中、
Aは下記で表される化合物から選択されるいずれか1つであり、
【化29】

は、Y と結合する場合は-NH-であり、それ以外は単結合であり、
は、-NH-であり、
~E は、Y と結合する場合は-NH-であり、それ以外は単結合であり、
~E は、-NH-であり、
は、Y と結合する場合は-NH-であり、それ以外は単結合であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、トリアシルハライドおよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される3価の有機基であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、ジアシルハライドおよびジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される2価の有機基であり、
、YおよびYはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して下記化学式Y-1またはY-2で表される化合物で表される化合物であり、但し、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基および2-イソシアナトエチル(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換され、
[化学式Y-1]
【化26】
[化学式Y-2]
【化27】
上記化学式Y-1および化学式Y-2中、
はそれぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基または2-イソシアナトエチル(メタ)アクリロイル基であり、
はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O) -、-Si(CH -、-(CH -(ここで1≦p≦10)、-(CF -(ここで1≦q≦10)、-C(CH -、-C(CF -、または-C(=O)NH-であり、
n3、n4およびn5はそれぞれ独立して0~4であり、但し、n3、n4およびn5のうちの少なくとも1つは1以上であり、
繰り返し単位総100モルに対して、Y、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位の総和は10モル%~80モル%である。
【請求項2】
前記ポリアミド-イミドブロック共重合体に含まれる繰り返し単位総100モルに対して、Y、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位の総和は30モル%~70モル%である、
請求項1に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体。
【請求項3】
前記Zは、下記で表される化合物から選択されるいずれか1つである、
請求項1又は2に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体:
【化30】
【請求項4】
前記Zは、下記で表される化合物から選択されるいずれか1つである、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体:
【化31】
【請求項5】
前記第1繰り返し単位は、下記化学式1-1で表される繰り返し単位を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体:
[化学式1-1]
【化32】
前記化学式1-1中、
は、請求項1で定義した通りである。
【請求項6】
前記第2繰り返し単位は、下記化学式2-1で表される繰り返し単位を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体:
[化学式2-1]
【化33】
上記化学式2-1中、
は請求項1で定義した通りである。
【請求項7】
前記第3繰り返し単位は、下記化学式3-1で表される繰り返し単位を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体:
[化学式3-1]
【化34】
上記化学式3-1中、
は、請求項1で定義した通りである。
【請求項8】
前記第1繰り返し単位に対して、第2繰り返し単位および第3繰り返し単位の総和のモル比が10:90~90:10である、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体。
【請求項9】
重量平均分子量が5,000~300,000g/molである、
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体。
【請求項10】
ジアミン化合物をジアンハイドライド化合物と反応させてポリアミック酸ブロックを形成する段階と、
前記ポリアミック酸ブロック形成段階の結果物とトリアシルハライドよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物および芳香族ジアシルハライドよび芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物を混合し、これを反応させてポリアミドブロックを形成する段階と、
前記ポリアミック酸ブロックおよびポリアミドブロックを含む混合物に、(メタ)アクリロイル基を含む化合物および2-イソシアナトエチル(メタ)アクリロイル基を含む化合物のうちの少なくとも1つの化合物を添加してイミド化する段階と、
を含み、
前記ジアミン化合物総100モルに対して、水酸基が置換されたジアミン化合物は10モル%~80モル%で含まれ、
前記イミド化段階で、ポリアミック酸ブロックおよびポリアミドブロックに含まれている水酸基が(メタ)アクリロイル基または2-イソシアナトエチル(メタ)アクリロイル基で置換される、
ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法:
【請求項11】
前記(メタ)アクリレート基を含む化合物は、(メタ)アクリル酸無水物((Meth)acrylic anhydride)であり、
前記2-イソシアナトエチル(メタ)アクリロイル基を含む化合物は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート(2-Isocyanatoethyl(meth)acrylate)である、
請求項1に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記イミド化する段階は20℃~100℃で行われる、
請求項10又は11に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれか1項に記載のポリアミド-イミドブロック共重合体を含む、
ポリアミド-イミドフィルム。
【請求項14】
ASTM D1925基準による黄変指数(Y.I.)が1.5~1.75である、
請求項1に記載のポリアミド-イミドフィルム。
【請求項15】
モジュラスが4.0GPa~5.0GPaである、
請求項1または1に記載のポリアミド-イミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
【0002】
本出願は、2019年4月9日付の韓国特許出願第10-2019-0041556号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、ポリアミド-イミドブロック共重合体、その製造方法およびこれを含むポリアミド-イミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0004】
芳香族ポリアミド-イミド樹脂は、ほとんど非結晶性構造を有する高分子であって、堅固な鎖構造により優れた耐熱性、耐薬品性、電気的特性、および寸法安定性を示す。このようなポリイミド樹脂は、電気/電子、宇宙、航空および自動車などの材料として幅広く使用されている。
【0005】
しかし、全芳香族ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性にもかかわらずほとんど不溶、不融して成形および加工性が低下して、樹脂の加工のために通常の加工装置を使用しにくいという問題があった。
【0006】
また、ポリイミド樹脂は、イミド鎖内に存在するπ電子のCTC(charge transfer complex)の形成により濃い茶色を呈する限界があるため、使用上多くの制限が伴う。
【0007】
前記制限を解消し、無色透明なポリイミド樹脂を得るために、トリフルオロメチル(-CF)基などの強い電子求引基を導入してπ電子の移動を制限する方法;主鎖にスルホン(-SO2-)基、エーテル(-O-)基などを導入して曲がった構造を作って前記CTCの形成を減らす方法;または脂環式化合物を導入してπ電子の共鳴構造の形成を阻害する方法などが提案された。
【0008】
しかし、前記提案によるポリイミド樹脂は、曲がった構造または脂環式化合物によって十分な耐熱性を示しにくく、これを使用して製造されたフィルムは劣悪な機械的物性を示す限界が依然として存在する。
【0009】
また、ポリイミド樹脂の大部分は前駆体であるポリアミック酸がイミド化されて形成されるが、300℃以上の高温の硬化工程で最終的な硬化が行われることによって電気配線や基板の物性を低下させ、特に半導体保護膜として用いられる場合、半導体の電気的性質を低下させるか、または半導体特性を破壊するという問題をもたらす。
【0010】
そこで、最近はフレキシブルディスプレイ素材として使用するために、優れた光特性、機械的特性および耐薬品性とともに低温硬化が可能なポリアミドイミド共重合体の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、無色透明でかつ優れた耐熱性、耐薬品性および機械的物性を示すポリアミド-イミドブロック共重合体を提供する。
【0012】
本発明は、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体を含むポリアミド-イミドフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、下記化学式1で表される第1繰り返し単位、下記化学式2で表される第2繰り返し単位および下記化学式3で表される第3繰り返し単位を含む、ポリアミド-イミドブロック共重合体が提供される:
【0015】
[化学式1]
【0016】
【化1】
【0017】
[化学式2]
【0018】
【化2】
【0019】
[化学式3]
【0020】
【化3】
【0021】
上記化学式1~化学式3中、
Aはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、置換または非置換の4価の有機基であり、
、E、E、E、E、EおよびEはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して単結合または-NH-であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、トリアシルハライド、トリアミンおよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される3価の有機基であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、ジアシルハライド、ジアミンおよびジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される2価の有機基であり、
、YおよびYはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して炭素数6~30の2価の芳香族有機基であり、前記芳香族有機基は、単独で存在するか;2個以上の芳香族有機基が互いに結合して2価の縮合環を形成するか;または2個以上の芳香族有機基が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで1≦p≦10)、-(CF-(ここで1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、または-C(=O)NH-により連結され、但し、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つは(メタ)アクリレート基および下記化学式4で表される官能基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換され、
[化学式4]
【化4】
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、
Lはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、直接結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
繰り返し単位総100モルに対して、Y、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位の総和は10モル%~80モル%である。
【0022】
本発明によれば、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法が提供される。また、本発明によれば、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体を含むポリアミド-イミドフィルムが提供される。
【0023】
以下、本発明の実施形態によるポリアミド-イミドブロック共重合体、その製造方法およびこれを含むポリアミド-イミドフィルムについて詳しく説明する。
【0024】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためであり、本発明を限定することを意図しない。
【0025】
本明細書で使用される単数形態は文句にこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0026】
明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0027】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で用いられ、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素とも名付けられ得、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けられ得る。
【0028】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。
【0029】
I.ポリアミド-イミドブロック共重合体
【0030】
本発明の一実施形態によれば、上述した化学式1で表される第1繰り返し単位、下記化学式2で表される第2繰り返し単位および下記化学式3で表される第3繰り返し単位を含むポリアミド-イミドブロック共重合体が提供される。
【0031】
ポリアミド-イミド共重合体は多様な分野で適用され、様々な物性を同時に満足させることが要求される。本発明者らの継続的な研究結果、ポリアミド-イミドブロック共重合体を製造するにあたって、アミドブロックに3個の反応性置換基を有するブランチャー(brancher)構造を含み、アミドおよびイミドブロックのうちの少なくとも1つに架橋可能な光硬化性官能基を特定のモル比で導入して共重合されたポリアミド-イミド系ブロック共重合体は、無色透明でかつ優れた機械的物性を示すことができることが確認された。
【0032】
前記ポリアミドブロック内のブランチャーは、共重合体内に安定したネットワーク構造を付与でき、分子内架橋のみならず、分子間相互作用を向上させて向上した物性を実現することができる。さらに、前記光硬化性官能基は、分子間架橋結合を誘導して前記ネットワーク構造を堅固にすることができ、フィルムの耐薬品性を向上させることができることを確認した。また、溶解度を向上させてフィルムとして製造時に溶液工程への適用が容易であることを確認した。
【0033】
以下、各繰り返し単位について具体的に説明する。
【0034】
(i)イミド繰り返し単位:第1繰り返し単位
【0035】
[化学式1]
【0036】
【化5】
【0037】
上記化学式1中、
Aはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、置換または非置換の4価の有機基であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して単結合または-NH-であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して炭素数6~30の2価の芳香族有機基であり、前記芳香族有機基は、単独で存在するか;2個以上の芳香族有機基が互いに結合して2価の縮合環を形成するか;または2個以上の芳香族有機基が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで1≦p≦10)、-(CF-(ここで1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、または-C(=O)NH-により連結され、但し、Yは(メタ)アクリレート基および下記化学式4で表される官能基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換され得る。繰り返し単位内の光硬化性官能基の置換比率は後述する:
【0038】
[化学式4]
【0039】
【化6】
【0040】
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、
Lはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、直接結合または炭素数1~10のアルキレンである。
【0041】
好ましくは、前記Aは、下記で表される化合物から選択されるいずれか1つであり得る:
【0042】
【化7】
【0043】
好ましくは、前記Yは、下記化学式Y-1またはY-2で表される化合物であり得る:
【0044】
[化学式Y-1]
【0045】
【化8】
【0046】
[化学式Y-2]
【0047】
【化9】
【0048】
上記化学式Y-1および化学式Y-2中、
はそれぞれ独立して、(メタ)アクリレート基または化学式4で表される官能基であり、
[化学式4]
【化10】
およびLは上述した通りであり、
n3、n4およびn5はそれぞれ独立して、0~4であり、但し、n3、n4およびn5のうちの少なくとも1つは1以上であり、
はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで1≦p≦10)、-(CF-(ここで1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、または-C(=O)NH-である。
【0049】
好ましくは、前記第1繰り返し単位は、下記化学式1-1で表される繰り返し単位を含む:
【0050】
[化学式1-1]
【0051】
【化11】
【0052】
上記化学式1-1中、
は先に定義した通りである。
【0053】
(ii)アミド繰り返し単位:第2繰り返し単位および第3繰り返し単位
【0054】
第2繰り返し単位
【0055】
[化学式2]
【0056】
【化12】
【0057】
上記化学式2中
、EおよびEはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して単結合または-NH-であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、トリアシルハライド、トリアミンおよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される3価の有機基であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、炭素数6~30の2価の芳香族有機基であり、前記芳香族有機基は、単独で存在するか;2個以上の芳香族有機基が互いに結合して2価の縮合環を形成するか;または2個以上の芳香族有機基が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで1≦p≦10)、-(CF-(ここで1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、または-C(=O)NH-により連結され、但し、Yは(メタ)アクリレート基および上述した化学式4で表される官能基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換され得る。繰り返し単位内の光硬化性官能基の置換比率は後述する。
【0058】
好ましくは、前記Zは、下記で表される化合物から選択されるいずれか1つであり得る:
【0059】
【化13】
【0060】
好ましくは、前記Yは、上述した化学式Y-1またはY-2で表される化合物であり得る。
【0061】
好ましくは、前記第2繰り返し単位は、下記化学式2-1で表される繰り返し単位を含む:
【0062】
[化学式2-1]
【0063】
【化14】
【0064】
上記化学式2-1中、
は先に定義した通りである。
【0065】
第3繰り返し単位
【0066】
[化学式3]
【化15】
上記化学式3中、
、EおよびEはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、それぞれ独立して単結合または-NH-であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、ジアシルハライド、ジアミンおよびジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物から誘導される2価の有機基であり、
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、炭素数6~30の2価の芳香族有機基であり、前記芳香族有機基は、単独で存在するか;2個以上の芳香族有機基が互いに結合して2価の縮合環を形成するか;または2個以上の芳香族有機基が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-(CH-(ここで1≦p≦10)、-(CF-(ここで1≦q≦10)、-C(CH-、-C(CF-、または-C(=O)NH-により連結され、但し、Yは(メタ)アクリレート基および上述した化学式4で表される官能基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換され得る。繰り返し単位内の光硬化性官能基の置換比率は後述する。
【0067】
好ましくは、前記Zは、下記で表される化合物から選択されるいずれか1つであり得る:
【0068】
【化16】
【0069】
好ましくは、前記Yは、上述した化学式Y-1またはY-2で表される化合物であり得る。
【0070】
好ましくは、前記第3繰り返し単位は、下記化学式3-1で表される繰り返し単位を含む:
【0071】
[化学式3-1]
【0072】
【化17】
【0073】
上記化学式3-1中、
は先に定義した通りである。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体に含まれる繰り返し単位総100モルに対して、Y、YおよびYが(メタ)アクリレート基および上述した化学式4で表される官能基からなる群から選択される1つ以上の光硬化性官能基で置換された繰り返し単位を10モル%~80モル%、好ましくは30モル%~70%モル含む。
【0075】
前記光硬化性官能基を含む繰り返し単位が前記含有量の範囲に含まれることによって、前記ポリイミド系ブロック共重合体は無色透明でかつ向上した機械的物性を示すことができる。また、フィルムの耐薬品性をさらに改善することができる。
【0076】
具体的には、アミドおよびイミドブロックのうちの少なくとも1つに特定構造の光硬化性官能基を含むことによって、分子間架橋構造の形成で機械的物性が向上する。また、上記の含有量の範囲で末端に光硬化性官能基を含むことで、溶解度に優れて多様な溶媒を使用することができる。また、共重合体の製造工程中で、化学的イミド化工程と光硬化性官能基の導入工程が同時に行われるので、低温の化学的イミド化工程でも共重合が容易で無色透明な共重合体を製造することができる。
【0077】
光硬化性官能基が上記の下限範囲を外れて少量含まれる場合、分子間架橋が微小で機械的物性の向上効果が低下し、上記の上限範囲を外れて過剰に含まれる場合、フィルムとして製造時、壊れやすくて耐久性が低下することがある。
【0078】
前記総繰り返し単位100モルは、ポリアミド-イミドブロック共重合体に含まれる繰り返し単位全体を意味し、例えば、イミド繰り返し単位である第1繰り返し単位とアミド繰り返し単位である第2繰り返し単位および第3繰り返し単位の総和を100モルに換算したことを意味し、前記Y、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位は、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位および第3繰り返し単位中で繰り返し単位内のY、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位の総和を意味する。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミド-イミドブロック共重合体は、前記イミド繰り返し単位である第1繰り返し単位に対して、アミド繰り返し単位である第2繰り返し単位および第3繰り返し単位の総和のモル比が10:90~90:10であり、好ましくは30:70~70:30である。前記モル比を満たすことによって、共重合体の熱的特性、機械的特性および光学的特性を同時に向上させることができる。
【0080】
前記イミド繰り返し単位である第1繰り返し単位に対して、アミド繰り返し単位のモル比が上記の下限範囲を外れる場合、溶解度が低下し、黄色度が上昇してフィルムの透明度が顕著に低下し、上記の上限範囲を外れる場合、モジュラスが減少し、機械的物性が低下することがある。
【0081】
本発明の一実施形態によるポリアミド-イミドブロック共重合体は、重量平均分子量(GPC測定)が5,000~300,000g/mol、好ましくは15,000~150,000g/molであり得る。前記重量平均分子量を満たす場合、本発明が目的とする機械的特性、熱的特性および光学的特性をさらに向上させることができる。
【0082】
II.ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法
【0083】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、上述したポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0084】
従来の反応性を高めるために光硬化性官能基である(メタ)アクリレートなどを含むポリアミド-イミド共重合体を製造するためには、通常のイミド化段階以外に水酸基を(メタ)アクリレートで置換する段階を含む二段階以上の合成過程により製造された。このような従来の重合方法のイミド化段階は、高温で行われる熱的イミド化反応で行われ、これにより製造されるポリイミドの褐変で透明性が要求される製品への適用が難しいという問題があった。また、(メタ)アクリレート基などの光硬化性官能基に置換する段階は反応性が低くて、置換量を目的に合わせて調節しにくいという問題があった。
【0085】
本発明者らの継続的な研究結果、ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法において、化学的イミド化反応と光硬化性官能基の置換反応を同時に行うことによって上述した問題を解決するとともに、反応効率も顕著に改善されることを確認した。
【0086】
具体的には、前記単一反応段階により相対的に低温の工程でイミド化が行われることで製造される共重合体の熱的変性などの問題が発生せず、また、イミド化とともに繰り返し単位に特定の光硬化性置換基を導入することにより、製造される共重合体が優れた溶解度を示して溶液工程が容易であり、分子間架橋結合で機械的物性がいずれも優れたポリアミド-イミド共重合体を製造できることを確認した。
【0087】
本発明の一実施形態によるポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法は、まず、ジアミン化合物をジアンハイドライド化合物と反応させてポリアミック酸ブロックを形成する段階を含む。
【0088】
前記段階で使用される単量体成分は、最終的に製造される共重合体が上述した化学式1で表される繰り返し単位を満たすように適切に選択される。特に、前記ジアミン化合物は、水酸基を含むジアミン化合物を含むことができ、前記水酸基によってイミド化反応で、化学式イミド化反応とともに光硬化性置換基が導入されて優れた物性を有するポリアミド-イミド共重合体を製造することができる。
【0089】
例えば、前記水酸基を含むジアミン化合物は、好ましくは芳香族ジアミンであり、例えば、3,3'-ジヒドロキシベンジジン(3,3'-dihydroxybenzidine、DHBZ)、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-hydroxy-4-aminophenyl)hexafluoropropane)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane)またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
また、前記ジアンハイドライド化合物は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(bicyclo[2.2.2]oct-7-ene-2,3,5,6-tetracarboxylic dianhydride、BTDA)、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA),4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4'-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-oxydiphthalic anhydride、ODPA)、ピロメリット酸無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(4-(2,5-dioxotetrahydrofuran-3-yl)-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene-1,2-dicarboxylicanhydride、DTDA)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
次に、本発明の一実施形態によるポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法は、前記ポリアミック酸ブロック形成段階の結果物として、トリアシルハライド、トリアミンおよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物および芳香族ジアシルハライド、芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物を混合し、これを反応させてポリアミドブロックを形成する段階を含む。
【0092】
前記段階で使用される単量体成分は、最終的に製造される共重合体が上述した化学式2および化学式3で表される繰り返し単位の構造を満たすように適切に選択される。特に、トリアシルハライド、トリアミンおよびトリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことによって、ポリアミドブロック内のブランチャー構造の導入で共重合体中に安定したネットワークが形成され、したがって、機械的物性をさらに向上させることができる。
【0093】
前記ブランチャー構造の導入に使用される単量体成分としては、例えば、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸トリクロリド(benzene-1,3,5-tricarbonyl trichloride)、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸(benzene-1,3,5-tricarboxylic acid)、ベンゼン-1,3,5-トリアミン(benzene-1,3,5-triamine)、ベンゼン-1,2,4-トリアミン(benzene-1,2,4-triamine)、シクロヘキサン-1,3,5-トリアミン(cyclohexane-1,3,5-triamine)、シクロヘキサン-1,2,4-トリアミン(cyclohexane-1,2,4-triamine)、およびピリミジン-2,4,6-トリアミン(pyrimidine-2,4,6-triamine)からなる群から選択される1種以上の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
また、前記ジアミン化合物は、水酸基を含むジアミン化合物を含むことができ、前記水酸基によってイミド化反応の付加反応でアミドブロック内でも光硬化性官能基の導入が可能である。水酸基を含むジアミン化合物の例としては、先にポリアミック酸ブロックの形成段階で使用された成分を同様に使用することができる。
【0095】
また、前記ジアシルハライドとしては、例えば、イソフタロイルジクロリド(isophthaloyl dichloride)、テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride)などが挙げられ、前記ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸(isophthalic acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記ポリアミック酸ブロックおよびポリアミドブロックを形成するために使用されるジアミン化合物総100モルに対して、水酸基が置換されたジアミン化合物は10モル%~80モル%で含まれ、好ましくは30モル%~70モル%で含まれる。前記含有量比は、上述したポリアミド-イミド共重合体で、Y、YおよびYが光硬化性官能基で置換された繰り返し単位のモル比に対応する。
【0097】
前記水酸基は後述するイミド化段階で、光硬化性官能基で置換され得る。上記の含有量の範囲を満たすことによって、製造される共重合体の熱的安定性、機械的物性および今後の溶液工程のための工程効率を全て顕著に改善させることができる。
【0098】
本発明の一実施形態によるポリアミド-イミドブロック共重合体の製造方法は、前記ポリアミック酸ブロックおよびポリアミドブロックを含む混合物に、(メタ)アクリレート基を含む化合物および上述した化学式4で表される官能基を含む化合物のうちの少なくとも1つの化合物を添加してイミド化する段階を含む。
【0099】
前記イミド化段階で、前記(メタ)アクリレート基を含む化合物および前記化学式4で表される官能基を含む化合物の種類は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート基を含む化合物は(メタ)アクリル酸無水物((Meth)acrylic anhydride)であり、前記化学式4で表される官能基を含む化合物は2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート(2-Isocyanatoethyl(meth)acrylate)であり得る。
【0100】
前記イミド化段階では、ポリアミック酸ブロックの化学的イミド化反応とともに、ブロック内の水酸基に光硬化性官能基を導入する工程を同時に行うことができる。
【0101】
具体的には、前記イミド化段階は20℃~100℃の低温で行うことができ、従来の高温の熱的イミド化段階に比べて重合される共重合体の熱的安定性を向上させることができ、黄変などが発生せず、透明フィルムに適用することが容易である。また、前記化学的イミド化反応は反応性に優れて、目的とする含有量の範囲で光硬化性官能基に置換し得る。前記光硬化性官能基により分子間架橋結合で共重合体の機械的物性を向上させることができ、前記光硬化性官能基の優れた溶解度でフィルム形成時、溶液工程が容易である。
【0102】
前記イミド化段階により、ポリアミック酸ブロックおよびポリアミドブロックに含まれている水酸基が(メタ)アクリレート基または下記化学式4で表される官能基で置換される:
【0103】
[化学式4]
【0104】
【化18】
【0105】
はそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、
Lはそれぞれの繰り返し単位で同一または異なり、直接結合または炭素数1~10のアルキレンである。
【0106】
前記ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造工程で、目的とする効果に影響を与えない範囲内でその他の添加剤、例えば、架橋剤、硬化促進剤、リン系難燃剤、消泡剤、レベリング剤、ゲル防止剤、またはこれらの混合物をさらに含み得る。また、塗布性向上のために有機溶媒をさらに含むこともできる。
【0107】
前記有機溶媒の具体的な例としては、ジメチルスルホキシド;N-メチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF);N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc);N-メチルホルムアミド(NMF);メタノール、エタノール、2-メチル-1-ブタノールおよび2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択されるアルコール;γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、3-ヘキサノン、3-ヘプタノン、3-オクタノン、アセトンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択されるケトン;テトラヒドロフラン;トリクロロエタン;およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
III.ポリアミド-イミドフィルム
【0109】
本発明の他の一実施形態によれば、上述したポリアミド-イミドブロック共重合体を含むポリアミド-イミドフィルムが提供される。
【0110】
上述のように、本発明に係るフィルムは熱的安定性に優れ、かつ機械的物性に優れ、優れた光学的特性を実現することができる。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記ポリアミド-イミドフィルムは20~100μmの厚さを有する試験片に対して、ASTM D1925により測定された黄変指数(yellow index、Y.I.)が1.5~1.75であり、好ましくは1.5~1.7である。上記の範囲の黄変指数の値を満たすことによって、優れた光学的特性を有するので、様々な電気電子製品に適用しやすい。
【0112】
本発明の一実施形態において、前記ポリアミド-イミドフィルムは、ASTM D648に伴うモジュラス4.0GPa~5.0GPaである。好ましくは4.2GPa~5.0GPaであり得る。上記の範囲のモジュラス値を満たすことによって、優れた機械的物性を有するので、様々な電気電子製品に適用しやすい。前記モジュラスは、DMAq800を用いて測定される。
【0113】
前記ポリアミド-イミドフィルムは、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体を使用して乾式法、湿式法などの通常の方法によって製造される。例えば、前記ポリアミド-イミドフィルムは、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体を含む溶液を任意の支持体上にコーティングして膜を形成し、前記膜から溶媒を蒸発させて乾燥する方法で得られる。必要に応じて、前記ポリアミド-イミドフィルムに対する延伸および熱処理を行うことができる。また、本発明に係るポリアミド-イミドブロック共重合体を使用する場合、末端に光硬化性置換基によって溶解度が顕著に向上して溶液工程を容易に行うことができる。
【0114】
本発明に係るポリアミド-イミドフィルムは、無色の透明性とともに高い機械的物性、光学的物性が求められる多様な成形品の材料に用いることができる。例えば、前記ポリアミド-イミドブロック共重合体を含むポリアミド-イミドフィルムは、ディスプレイ用基板、ディスプレイ用保護フィルム、タッチパネル、フレキシブル(flexible)またはフォルダブル(foldable)機器のカバーフィルムなどに適用される。
【発明の効果】
【0115】
本発明に係るポリアミド-イミドブロック共重合体は、熱的安定性および耐薬品性に優れ、かつ機械的物性に優れ、優れた光学的特性を実現できる、ポリアミド-イミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0116】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0117】
[製造例]ポリアミド-イミドブロック共重合体の製造
【0118】
製造例1
【0119】
機械的撹拌機、窒素注入口、温度調節装置および冷却器が備えられた4つ口フラスコに窒素を通過させながら、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン[2,2-Bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane、BisAPAF]3.63g(9.91mmol)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル[2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-diamino biphenyl、TFMB]6.34g(19.8mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)183gに溶かした。その後、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4'-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)8.00g(18.0mmol)を投入し、40℃で3時間程度攪拌した。テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride、TPC)2.38g(11.7mmol)を入れた後、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(1,3,5-benzenetricarbonyl trichloride、BTT)0.05g(0.188mmol)をさらに入れて、3時間程度攪拌した。その後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)1.39g(15.76mmol)、ピリジン35.60g(450mmol)、メタクリル酸無水物34.69g(225mmol)を添加した後、60℃で一晩攪拌した。反応が終了した後、攪拌中の反応溶液に過剰のエタノール(2L)を滴下して沈殿物を生成させた。得られた沈殿物は減圧ろ過して分離し、エタノールで3回洗浄した後、常温真空条件で24時間程度乾燥して、メタクリレート基を有するポリアミド-イミド共重合体(A-1)15gを得た。
【0120】
ポリアミド-イミド共重合体(A-1)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は33モル%であることを確認した。
【0121】
製造例2
【0122】
前記製造例1で2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルのモル比0.33:0.66の代わりに0.20:0.79を使用したことを除いては同様の方法で、ポリアミド-イミド共重合体(A-2)16gを得た。
【0123】
ポリアミド-イミド共重合体(A-2)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は20モル%であることを確認した。
【0124】
製造例3
【0125】
前記製造例1で2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルのモル比0.33:0.66の代わりに0.5:0.49を使用したことを除いては同様の方法で、ポリアミド-イミド共重合体(A-3)16gを得た
【0126】
ポリアミド-イミド共重合体(A-3)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は50モル%であることを確認した。
【0127】
製造例4
【0128】
前記製造例1でメタクリル酸無水物225mmolの代わりに2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート225mmolを使用したことを除いては同様の方法で、ポリアミド-イミド共重合体(A-4)15gを得た。したがって、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は33モル%であることを確認した。
【0129】
比較製造例1
【0130】
機械的撹拌機、窒素注入口、温度調節装置および冷却器が備えられた4つ口フラスコに窒素を通過させながら、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン[2,2-Bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane、BisAPAF]3.63g(9.91mmol)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル[2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-diamino biphenyl、TFMB]6.34g(19.8mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)183gに溶かした。その後、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4'-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)8.00g(18.0mmol)を投入し、40℃で3時間程度攪拌した。テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride、TPC)2.44g(12.001mmol)を入れた後、さらに3時間程度攪拌した。その後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)1.39g(15.76mmol)、ピリジン35.60g(450mmol)、メタクリル酸無水物34.69g(225mmol)を添加した後、60℃で一晩攪拌した。反応が終了した後、攪拌中の反応溶液に過剰のエタノール(2L)を滴下して沈殿物を生成させた。得られた沈殿物は減圧ろ過して分離し、エタノールで3回洗浄した後、常温真空条件で24時間程度乾燥して、メタクリレート基を有するポリアミドイミド共重合体(B-1)15gを得た。
【0131】
ポリアミド-イミド共重合体(B-1)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は33モル%であることを確認した。
【0132】
比較製造例2
【0133】
前記製造例1で2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルのモル比0.33:0.66の代わりに0.05:0.94を使用したことを除いては同様の方法で、ポリアミドイミド共重合体(B-2)15gを得た。
【0134】
ポリアミド-イミド共重合体(B-2)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は5モル%であることを確認した。
【0135】
比較製造例3
【0136】
前記製造例1で2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルのモル比0.33:0.66の代わりに0.90:0.09を使用したことを除いては同様の方法で、ポリアミドイミド共重合体(B-3)15gを得た。
【0137】
ポリアミド-イミド共重合体(B-3)の1H-NMRの分析結果、水酸基(-OH)が全てメタクリレート基で置換されたものとして計算された。したがって、メタクリレートで置換された繰り返し単位のモル比は90モル%であることを確認した。
【0138】
比較製造例4
【0139】
下記化学式a-1で表される繰り返し単位および化学式a-2で表される繰り返し単位を含むポリイミド系ブロック共重合体(B-4)を使用した。化学式a-1:化学式a-2繰り返し単位のモル比は、50:50である。
【0140】
[化学式a-1]
【0141】
【化19】
【0142】
[化学式a-2]
【0143】
【化20】
【0144】
実施例および比較例
【0145】
前記製造例および比較製造例で得られたポリアミド-イミドブロック共重合体試料をメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)に溶かして約15wt%の溶液を製造した。前記溶液をガラス板の上にバーコーター(Bar Coater)装置によりcastingし、この時、乾燥温度90℃で15分間乾燥後、UV硬化装置を用いて光硬化を進行した。その後、170℃で15分間熱処理し、剥離して、50μmの厚さを有する実施例および比較例のポリアミド-イミドフィルムを製造した。
【0146】
【表1】
【0147】
*光硬化性官能基で置換された繰り返し単位の総和の含有量を示し、a-1は光硬化性官能基でメタクリレート基に置換された構造であり、a-2は
【化21】
に置換された構造であり、a-3はカルボキシ基に置換された構造である。
【0148】
試験例
【0149】
前記実施例および比較例で製造したポリアミド-イミドフィルムを下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0150】
1)黄変指数(Y.I.,Yellow Index)
【0151】
実施例および比較例で製造したポリアミド-イミドフィルムサンプル(厚さ50±2μm)に対して、COH-400 Spectrophotometer(NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES社製)を用いてASTM D1925の基準により黄色指数を測定し、その結果を表2に示す。
【0152】
2)ガラス転移温度(Tg)
【0153】
実施例および比較例で製造した高分子フィルムサンプル(厚さ50±2μm)に対して、TMA IC600装置を用いてガラス転移温度を測定し、その値を下記表2に示す。
【0154】
3)モジュラス(Modulus)
【0155】
実施例および比較例で製造した高分子フィルムサンプル(厚さ50±2μm)に対して、DMA q800を用いてモジュラス(Modulus、GPa)を測定し、その結果を表2に示す。
【0156】
4)耐薬品性
【0157】
実施例および比較例で製造した高分子フィルムサンプル(厚さ50±2μm)に対して、耐薬品性を評価した。
【0158】
製造されたフィルムサンプルをアセトンおよびN-メチル-1,2-ピロリドン(NMP)にそれぞれ浸漬した後、室温(25℃)で5分間放置した後、取り出してフィルムの変化を下記の基準により評価した。
【0159】
<評価基準>
○ 優秀-フィルムの変化がない
△ 普通-変化が観察される(部分的な膨張)
X 不良-フィルム表面が溶解する
【0160】
【表2】
【0161】
上記表2から分かるように、本発明に係る特定の繰り返し単位と特定のモル比の光硬化性官能基を含む共重合体を使用する場合、熱的安定性および耐薬品性に優れ、かつ機械的物性に優れ、優れた光学的特性を実現できることを確認した。
【0162】
比較例1は、3次元架橋構造を含まない共重合体を使用し、本発明の実施例に比べてすべての特性が低下することを確認することができた。
【0163】
比較例2は、光硬化性官能基が含まれている繰り返し単位が5モル%に過ぎず、耐薬品性および耐久性が実施例に比べて低下することを確認することができた。
【0164】
比較例3は、光硬化性官能基が含まれている繰り返し単位が90モル%で、過硬化したフィルムは非常に脆くて壊れやすく、したがって、物理的特性が実施例に比べて低下することを確認することができた。
【0165】
比較例4は、本発明の光硬化性官能基の代わりにカルボキシ基末端を含む場合で、薄膜の透明度が顕著に低下し、物理的特性が実施例に比べて低下することを確認することができた。