(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】循環式穀物乾燥機の使用方法
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F26B17/14 K
F26B17/14 L
(21)【出願番号】P 2018033920
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】折場 浩信
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013323(JP,A)
【文献】実開昭58-177789(JP,U)
【文献】実開平03-061294(JP,U)
【文献】特開平11-101682(JP,A)
【文献】特開平05-223455(JP,A)
【文献】米国特許第05551167(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に貯留部、該貯留部の下部に乾燥部を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体に付設される揚穀機を備え、前記乾燥機本体に上方から投入される穀物を前記貯留部から前記乾燥部へ通過させて前記乾燥機本体の下方から排出し、前記排出された穀物を前記揚穀機により揚穀して前記乾燥機本体の上部へ還流させることで、穀物を循環させながら乾燥させる循環式穀物乾燥機であって、
複数台の前記循環式穀物乾燥機を配設してなる施設における循環式穀物乾燥機の使用方法において、
乾燥させる穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合には、前記乾燥させる穀物を前記各乾燥機本体に順次投入して循環させながら乾燥させる一方、前記乾燥させる穀物を全ての乾燥機本体に投入した後は、乾燥後の穀物を他の循環式穀物乾燥機に順送りに
直接移動させることなく
テンパリングを行うべく機外へ排出するに際し、前記乾燥後の穀物を前記各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、残りの乾燥させる穀物を新たに乾燥させる穀物として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行うものであり、
前記乾燥させる穀物は第1水分状態の穀物であって、
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合には、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第2水分状態の穀物として機外へ排出し、
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超えない場合には、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第2水分状態よりも水分値の低い第3水分状態の穀物として機外へ排出する循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項2】
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合であって、前記第1水分状態の穀物
の全てを前記各乾燥機本体に投入した後は、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第2水分状態の穀物として機外へ排出するに際し、前記第2水分状態の穀物を前記各乾燥機本体から排出しながら同時に、先に機外へ排出した第2水分状態の穀物を新たに乾燥させる穀物として前記各乾燥機本体に投入することを順次行い、前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第3水分状態の穀物として機外へ排出する請求項
1記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項3】
機外へ排出する第2水分状態の穀物が存在しなくなった場合であって、先に機外へ排出した第2水分状態の穀物が存在する場合には、前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第3水分状態の穀物として機外へ排出するに際し、前記第3水分状態の穀物を前記各乾燥機本体から排出しながら同時に、残りの前記第2水分状態の穀物を新たに乾燥させる穀物として前記乾燥機本体に投入することを順次行い、残りの前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第3水分状態の穀物として機外へ排出する請求項
2記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項4】
第2水分状態の穀物を機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を熱風乾燥運転として乾燥しながら機外へ排出する請求項
1乃至3のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項5】
第3水分状態の穀物として機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を通風乾燥運転としてクーリングしながら機外へ排出する請求項
1乃至3のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項6】
乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記乾燥機本体内の複数の高さ位置に設けられる水分計により排出される穀物と投入される穀物の各水分層の高さ位置を把握し、及び/又は、前記乾燥機本体から排出される穀物の排出量に基づいて前記乾燥機本体内の前記排出される穀物の残量を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出する請求項
1乃至5のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【請求項7】
乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記新たに乾燥させる穀物の投入を開始すると同時に前記穀物と略同じ比重の分銅を前記乾燥機本体に上方から投入し、前記分銅の高さ位置により排出される穀物と投入される穀物の境界の高さ位置を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出する請求項
1乃至5のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる循環式穀物乾燥機の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米や麦などの穀物の乾燥処理を循環式穀物乾燥機により行うことは周知である(特許文献1~3を参照)。
前記循環式穀物乾燥機は、特許文献1に記載されるように、上部に貯留部、該貯留部の下部に乾燥部を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体に付設される揚穀機を備え、前記乾燥機本体に上方から投入される穀物を前記貯留部から前記乾燥部へ通過させて前記乾燥機本体の下方から排出し、前記排出された穀物を前記揚穀機により揚穀して前記乾燥機本体の上部へ還流させることで、穀物を循環させながら乾燥させるものである。
【0003】
ところで、カントリーエレベータやライスセンター等の穀物乾燥調製施設では、特許文献2,3に記載されるように、複数台の循環式穀物乾燥機を配設して穀物の乾燥処理が行われているが、例えば当日の荷受量が多い場合には各乾燥機を複数回転稼働させる必要があり、翌日荷受できる量に影響を及ぼす虞があるため、前記各乾燥機をできるだけ効率よく使用することが重要となる。
【0004】
また、1台の循環式穀物乾燥機により穀物の乾燥処理を行う施設でも、当日の荷受量が乾燥機本体の容量を超える場合には乾燥機を2回転以上稼働させる必要があり、翌日荷受できる量に影響を及ぼす虞があるため、前記乾燥機をできるだけ効率よく使用することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-308244号公報
【文献】実開昭51-155867号公報
【文献】特公昭53-33498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる循環式穀物乾燥機の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
上部に貯留部、該貯留部の下部に乾燥部を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体に付設される揚穀機を備え、前記乾燥機本体に上方から投入される穀物を前記貯留部から前記乾燥部へ通過させて前記乾燥機本体の下方から排出し、前記排出された穀物を前記揚穀機により揚穀して前記乾燥機本体の上部へ還流させることで、穀物を循環させながら乾燥させる循環式穀物乾燥機であって、
複数台の前記循環式穀物乾燥機を配設してなる施設における循環式穀物乾燥機の使用方法において、
乾燥させる穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合には、前記乾燥させる穀物を前記各乾燥機本体に順次投入して循環させながら乾燥させる一方、前記乾燥させる穀物を全ての乾燥機本体に投入した後は、乾燥後の穀物を他の循環式穀物乾燥機に順送りに直接移動させることなくテンパリングを行うべく各循環式穀物乾燥機外へ排出するに際し、前記乾燥後の穀物を前記各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、残りの乾燥させる穀物を新たに乾燥させる穀物として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行う。
【0008】
本発明は、
前記乾燥させる穀物が第1水分状態の穀物であって、
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合には、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第2水分状態の穀物として機外へ排出し、
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超えない場合には、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第2水分状態よりも水分値の低い第3水分状態の穀物として機外へ排出する。
【0009】
本発明は、
前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合であって、前記第1水分状態の穀物の全てを前記各乾燥機本体に投入した後は、前記第1水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第2水分状態の穀物として機外へ排出するに際し、前記第2水分状態の穀物を前記各乾燥機本体から排出しながら同時に、先に機外へ排出した第2水分状態の穀物を新たに乾燥させる穀物として前記各乾燥機本体に投入することを順次行い、前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第3水分状態の穀物として機外へ排出することが好ましい。
【0010】
本発明は、
機外へ排出する第2水分状態の穀物が存在しなくなった場合であって、先に機外へ排出した第2水分状態の穀物が存在する場合には、前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を前記第3水分状態の穀物として機外へ排出するに際し、前記第3水分状態の穀物を前記各乾燥機本体から排出しながら同時に、残りの前記第2水分状態の穀物を新たに乾燥させる穀物として前記乾燥機本体に投入することを順次行い、残りの前記第2水分状態の穀物が乾燥した後の穀物を第3水分状態の穀物として機外へ排出することが好ましい。
【0011】
本発明は、
前記第1水分状態の穀物が生穀物、前記第2水分状態の穀物が半々乾穀物、前記第3水分状態の穀物が半乾穀物であることが好ましく、第2水分状態の穀物を機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を熱風乾燥運転として乾燥しながら機外へ排出することが好ましい。
ここで、本発明において、半々乾穀物とは、生穀物の水分状態と半乾穀物の水分状態の中間の水分状態の穀物をいう。
【0012】
また、本発明は、
前記第1水分状態の穀物が生穀物、前記第2水分状態の穀物が半々乾穀物、前記第3水分状態の穀物が半乾穀物であることが好ましく、第3水分状態の穀物を機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を通風乾燥運転(送風運転)としてクーリングしながら機外へ排出することが好ましい。
【0013】
また、上記目的を達成するため、参考発明は、
上部に貯留部、該貯留部の下部に乾燥部を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体に付設される揚穀機を備え、前記乾燥機本体に上方から投入される穀物を前記貯留部から前記乾燥部へ通過させて前記乾燥機本体の下方から排出し、前記排出された穀物を前記揚穀機により揚穀して前記乾燥機本体の上部へ還流させることで、穀物を循環させながら乾燥させる循環式穀物乾燥機の使用方法において、
乾燥させる穀物量が、前記乾燥機本体の容量を超える場合には、乾燥後の穀物を機外へ排出するに際し、前記乾燥後の穀物を前記乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、残りの乾燥させる穀物を新たに乾燥させる穀物として前記乾燥機本体に上方から投入することを特徴とする。
【0014】
本発明は、
乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記乾燥機本体内の複数の高さ位置に設けられる水分計により排出される穀物と投入される穀物の各水分層の高さ位置を把握し、及び/又は、前記乾燥機本体から排出される穀物の排出量に基づいて前記乾燥機本体内の前記排出される穀物の残量を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、
乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記新たに乾燥させる穀物の投入を開始すると同時に前記穀物と略同じ比重の分銅を前記乾燥機本体に上方から投入し、前記分銅の高さ位置により排出される穀物と投入される穀物の境界の高さ位置を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、乾燥後の穀物を機外へ排出するに際し、前記乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するので、乾燥後の穀物を乾燥機本体から排出した後に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に投入する場合に比べ、乾燥機本体内の穀物の入れ換えにかかる時間を半分に短縮することができる。
したがって、本発明の循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0017】
本発明は、複数台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設において、乾燥させる穀物が第1水分状態の穀物であって、前記第1水分状態の穀物の量が、複数台の前記循環式穀物乾燥機における各乾燥機本体の合計の容量を超える場合に、前記第1水分状態の穀物を第3水分状態の穀物まで2段階に分けて乾燥することとすれば、循環式穀物乾燥機毎の待ち時間のバラツキをなくし、施設全体としての循環式穀物乾燥機の稼働率を向上させることができる。
したがって、本発明の循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、複数台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設において、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0018】
本発明は、第2水分状態の穀物を機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を熱風乾燥運転として乾燥しながら機外へ排出することとすれば、前記乾燥機本体からの排出時間を利用して前記穀物を前記第2水分状態まで乾燥させることができるので、乾燥時間を短縮することができる。
また、前記第2水分状態の穀物を前記乾燥機本体から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に投入するので、一部の新たに乾燥させる穀物については投入時間を利用した乾燥が期待できる。
したがって、本発明の循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、複数台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設において、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0019】
本発明は、第3水分状態の穀物を機外へ排出するに際し、各循環式穀物乾燥機を通風乾燥運転としてクーリングしながら機外へ排出することとすれば、前記乾燥機本体からの排出時間を利用して前記穀物の穀温を外気と同程度に下げることができる。
したがって、本発明の循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、複数台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設において、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0020】
本発明は、乾燥後の穀物を乾燥機本体から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記乾燥機本体内の複数の高さ位置に設けられる水分計により排出される穀物と投入される穀物の各水分層の高さ位置を把握し、及び/又は、前記乾燥機本体から排出される穀物の排出量に基づいて前記乾燥機本体内の前記排出される穀物の残量を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することとすれば、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え完了を適切に検知することができる。
【0021】
本発明は、乾燥後の穀物を乾燥機本体から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記新たに乾燥させる穀物の投入を開始すると同時に前記穀物と略同じ比重の分銅を前記乾燥機本体に上方から投入し、前記分銅の高さ位置により排出される穀物と投入される穀物の境界の高さ位置を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することとすれば、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え完了を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はカントリーエレベータの平面模式図を示す。
図2はカントリーエレベータの概略説明図を示す。
図1及び
図2に示すカントリーエレベータは、穀物を荷受け処理するための各種設備を収容する機械棟1、穀物を乾燥処理するための循環式穀物乾燥機を格納する乾燥棟2、及び穀物を貯留するためのサイロ列3を備える。
【0024】
前記機械棟1には、収穫された穀物、例えば生籾を受け入れる荷受ホッパ11、前記穀物から夾雑物等を除去する粗選機12、前記粗選した後の穀物を計量する計量器13等が収容される。
【0025】
前記乾燥棟2には、6台の循環式穀物乾燥機21が並設して格納される。前記循環式穀物乾燥機21は、上部に貯留部、該貯留部の下部に乾燥部を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体に付設される揚穀機を備え、前記乾燥機本体に上方から投入される穀物を前記貯留部から前記乾燥部へ通過させて前記乾燥機本体の下方から排出し、前記排出された穀物を前記揚穀機により揚穀して前記乾燥機本体の上部へ還流させることで、穀物を循環させながら乾燥させる周知のものである。
【0026】
前記サイロ列3には、10基の本サイロ31が2列に設けられ、前記本サイロに囲まれる空間に4基の間隙サイロ32が設けられる。
【0027】
前記カントリーエレベータにおいて、荷受ホッパ11で荷受けした生穀物は、粗選機12で粗選され、計量器13で計量された後、揚穀機41により揚穀され、横送りコンベア51から揚穀機42及び横送りコンベア52を経て各循環式穀物乾燥機21の各乾燥機本体に上方から順次投入される。このとき、各乾燥機本体の合計容量を超える生穀物が存在する場合は、残りの生籾を前記横送りコンベア51及び横送りコンベア53を経て間隙サイロ32又は本サイロ31に投入し一時的に貯留してもよい。また、これに限らず、各乾燥機本体の合計容量を超える生穀物は、荷受工程側に備えた荷受タンク又は一時貯留ビン(図示せず)に一時的に貯留してもよい。
【0028】
前記各循環式穀物乾燥機21で乾燥処理された後の穀物は、目標水分状態となって各乾燥機本体の下方から順次排出され、各循環式穀物乾燥機外へ排出された後、横送りコンベア54から揚穀機43及び横送りコンベア53を経て間隙サイロ32又は本サイロ31に投入されテンパリングが行われる。
【0029】
また、各乾燥機本体の合計容量を超える生穀物が存在する場合であって、例えば前記間隙サイロ32又は本サイロ31に投入され一時的に貯留された生穀物は、前記各循環式穀物乾燥機21で前記乾燥処理された後の穀物の前記各機外への排出にともない、前記間隙サイロ32又は本サイロ31の下方から排出され、横送りコンベア55から横送りコンベア56及び揚穀機42を経て前記各循環式穀物乾燥機21の各乾燥機本体に上方から順次投入される。
【0030】
そして、前記各循環式穀物乾燥機21で乾燥処理された後の穀物は、目標水分状態となって各乾燥機本体の下方から順次排出され、各機外へ排出された後、横送りコンベア54から揚穀機43及び横送りコンベア53を経て間隙サイロ32又は本サイロ31に投入されテンパリングが行われる。
【0031】
なお、前記間隙サイロ32又は本サイロ31に投入されテンパリングが行われた前記目標水分状態の穀物は、必要に応じ、前記各循環式穀物乾燥機21で再度の乾燥処理が行われる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態における循環式穀物乾燥機の使用方法について説明する。
ここでは、乾燥機本体の容量が30t(トン)の循環式穀物乾燥機21を使用して、約24%の水分状態の生籾を、乾減率(1時間当たりの水分減少率)0.6%で熱風乾燥させ、約17%の水分状態の半乾籾を得る場合を例とする。
なお、前記乾燥機本体へ30tの穀物を投入するのに必要な時間(投入時間)と、前記乾燥機本体から30tの穀物を排出するのに必要な時間(排出時間)は、ともに1時間であると仮定する。
【0033】
<実施例1>
図3は、6台の循環式穀物乾燥機21を並設してなる施設において、各乾燥機本体の合計容量180tを超える1日の荷受量210tの生籾を、約24%の水分状態から約17%の水分状態の半乾籾まで、1段階で一気に乾燥処理する場合の循環式穀物乾燥機の使用方法のタイムチャートの一例を示す。
【0034】
本実施例では、まず、投入1巡目において、第1乾燥機から第6乾燥機まで、生籾30tを各乾燥機本体に順次投入する。
各乾燥機では、各乾燥機本体への生籾の投入後、順次、乾燥処理が行われるが、乾減率0.6%で乾燥するよう熱風温度が制御され、前記生籾は、約24%の水分状態から約17%の水分状態まで約12時間かけて水分値が低下する。
【0035】
前記各乾燥機において前記乾燥処理が終了した後は、第1乾燥機から第6乾燥機まで、半乾籾を各乾燥機本体から順次排出し、各機外への排出を行う。そして、前記各機外へ排出した半乾籾を間隙サイロ32又は本サイロ31に投入しテンパリングを行う。
【0036】
次に、第1乾燥機から第6乾燥機までの全ての乾燥機本体に生籾を投入した後は、さらに30tの生籾が残るため、前記第1乾燥機を2回転稼働させ、投入2巡目において、第1乾燥機の乾燥機本体に残りの生籾を投入し、乾燥処理を行い、半乾籾を前記乾燥機本体から排出して機外への排出を行い、さらに、前記半乾籾を間隙サイロ32又は本サイロ31に投入しテンパリングを行う。
【0037】
ここで、本実施例では、投入1巡目において約17%の水分状態まで水分値が低下した半乾籾を第1乾燥機外へ排出するに際し、前記半乾籾を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入2巡目において残りの生籾を新たに乾燥させる生籾として前記乾燥機本体に上方から投入する。
【0038】
本実施例によれば、投入1巡目において半乾籾を乾燥機本体から排出した後に、投入2巡目において残りの生籾を前記乾燥機本体に投入する場合に比べ、乾燥機本体内の籾の入れ換えにかかる時間を半分の1時間に短縮することができる。
したがって、本実施例による循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、6台の循環式穀物乾燥機を並設してなる施設において、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0039】
なお、本実施例では、投入1巡目及び投入2巡目とも、前記半乾籾を各機外へ排出するに際し、第1乾燥機から第6乾燥機までの各乾燥機を通風乾燥運転(送風運転)としてクーリングしながら機外へ排出することが好ましく、その場合、前記各乾燥機本体からの排出時間を利用して前記半乾籾の穀温を外気と同程度に下げることができる。なお、この通風乾燥運転(送風運転)は、外気温度が低い場合に乾減率(1時間当たりの水分減少率)0.3%程度の乾燥が可能な場合もある。
【0040】
<実施例2>
図4は、6台の循環式穀物乾燥機21を並設してなる施設において、各乾燥機本体の合計容量180tを超える1日の荷受量270tの生籾を、約24%の水分状態から約17%の水分状態の半乾籾まで、2段階に分けて乾燥処理する場合の循環式穀物乾燥機の使用方法のタイムチャートの一例を示す。
【0041】
本実施例では、1段目の乾燥として、生籾を約24%の第1水分状態から約21%の第2水分状態の籾(以下、「半々乾籾」という。)まで乾燥処理し、2段目の乾燥として、前記半々乾籾を約21%の第2水分状態から約17%の第3水分状態の半乾籾まで乾燥処理する。
【0042】
本実施例では、まず、投入1巡目において、第1乾燥機から第6乾燥機まで、生籾30tを各乾燥機本体に順次投入する。
各乾燥機では、各乾燥機本体への生籾の投入後、順次、1段目の乾燥処理が行われ、前記生籾は、乾減率0.6%で約24%の第1水分状態から約21%の第2水分状態まで約5時間かけて水分値が低下する。
【0043】
前記各乾燥機において前記1段目の乾燥処理が終了した後は、第1乾燥機から第6乾燥機まで、半々乾籾を各乾燥機本体から順次排出し、各機外への排出を行う。そして、前記各機外へ排出した半々乾籾を間隙サイロ32又は本サイロ31に投入しテンパリングを行う。
【0044】
次に、第1乾燥機から第6乾燥機までの全ての乾燥機本体に生籾を投入した後は、さらに90tの生籾が残るため、投入2巡目において、第1乾燥機から第3乾燥機まで、残りの生籾を新たに乾燥させる生籾として各乾燥機本体に順次投入し、1段目の乾燥処理を行った後、半々乾籾を前記各乾燥機本体から排出して各機外への排出を行い、さらに、前記半々乾籾を間隙サイロ32又は本サイロ31に投入しテンパリングを行う。
【0045】
他方、投入2巡目において、残りの生籾の全てを第1乾燥機から第3乾燥機の各乾燥機本体に投入した後は、第4乾燥機から第6乾燥機まで、1段目の乾燥処理が終了した後に各乾燥機から機外へ排出した約21%の第2水分状態の半々乾籾であって、間隙サイロ32又は本サイロ31に投入してテンパリングを行った後の半々乾籾を新たに乾燥させる籾として、各乾燥機本体に順次投入する。
【0046】
第4乾燥機から第6乾燥機の各乾燥機では、各乾燥機本体への半々乾籾の投入後、順次、2段目の乾燥処理が行われ、前記半々乾籾は、乾減率0.6%で約21%の第2水分状態から約17%の第3水分状態まで約7時間かけて水分値が低下する。
【0047】
前記第4乾燥機から第6乾燥機の各乾燥機において前記2段目の乾燥処理が終了した後は、第4乾燥機から第6乾燥機まで、半乾籾を各乾燥機本体から順次排出し、各機外への排出を行う。そして、各機外へ排出した半乾籾を本サイロ31に投入し貯留する。
【0048】
第4乾燥機から第6乾燥機まで、各乾燥機本体に半々乾籾を投入した後は、さらに180tの半々乾籾を新たに乾燥させる必要があるため、投入3巡目において、第1乾燥機から第6乾燥機まで、半々乾籾を新たに乾燥させる籾として各乾燥機本体に順次投入し、2段目の乾燥処理を行った後、半乾籾を前記各乾燥機本体から排出して各機外への排出を行い、さらに、前記半乾籾を本サイロ31に投入し貯留する。
【0049】
ここで、本実施例では、投入1巡目において1段目の乾燥処理が終了し、約21%の第2水分状態まで水分値が低下した半々乾籾を第1乾燥機から第3乾燥機の各機外へ排出するに際し、前記半々乾籾を各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入2巡目において残りの生籾を新たに乾燥させる生籾として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行う。
【0050】
また、投入1巡目において1段目の乾燥処理が終了し、約21%の第2水分状態まで水分値が低下した半々乾籾を第4乾燥機から第6乾燥機の各機外へ排出するに際し、前記半々乾籾を各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入2巡目において先に機外へ排出しテンパリングを行った後の半々乾籾を新たに乾燥させる籾として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行う。
【0051】
本実施例では、投入2巡目において1段目の乾燥処理が終了し、約21%の第2水分状態まで水分値が低下した半々乾籾を第1乾燥機から第3乾燥機の各機外へ排出するに際し、前記半々乾籾を各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入3巡目において先に機外へ排出しテンパリングを行った後の半々乾籾を新たに乾燥させる籾として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行う。
【0052】
また、投入2巡目において2段目の乾燥処理が終了し、約17%の第3水分状態まで水分値が低下した半乾籾を第4乾燥機から第6乾燥機の各機外へ排出するに際し、前記半乾籾を各乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入3巡目において先に機外へ排出しテンパリングを行った後の半々乾籾を新たに乾燥させる籾として前記各乾燥機本体に上方から投入することを順次行う。
【0053】
本実施例によれば、6台の循環式穀物乾燥機を並設してなる施設において、生籾の1日の荷受量が、各乾燥機本体の合計の容量を超える場合には、前記生籾を半乾籾まで2段階に分けて乾燥処理するので、乾燥機毎の待ち時間のバラツキをなくし、施設全体として循環式穀物乾燥機の稼働率を向上させることができ、
図4に示す例では翌日の荷受量に影響を与えない。
【0054】
また、本実施例においても、乾燥機本体からの乾燥後の籾の排出と、新たに乾燥させる籾の乾燥機本体への投入を同時に行うので、乾燥機本体から乾燥後の籾を排出した後に、新たに乾燥させる籾を前記乾燥機本体に投入する場合に比べ、乾燥機本体内の籾の入れ換えにかかる時間を半分の1時間に短縮することができる。
したがって、本実施例による循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、6台の循環式穀物乾燥機を並設してなる施設において、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0055】
ここで、本実施例では、1段目の乾燥処理が終了した後に半々乾籾を各乾燥機の機外へ排出するに際し、前記各乾燥機を熱風乾燥運転として乾燥しながら機外へ排出することができる。その場合、各乾燥機本体からの排出時間を利用して籾を第2水分状態まで乾燥させることができるので、乾燥時間を約1時間短縮することができる。
また、前記半々乾籾を前記乾燥機本体から排出しながら同時に、新たに乾燥させる籾を前記乾燥機本体に投入するので、一部の新たに乾燥させる籾については投入時間を利用した乾燥が期待できる。
【0056】
本実施例では、2段目の乾燥処理が終了した後に半乾籾を各乾燥機の機外へ排出するに際し、前記各乾燥機を通風乾燥運転(送風運転)としてクーリングしながら機外へ排出することができる。その場合、各乾燥機本体からの排出時間を利用して前記半乾籾の穀温を外気と同程度に下げることができる。
【0057】
<実施例3>
図5は、1台の循環式穀物乾燥機21を配設してなる施設において、乾燥機本体の容量30tを超える1日の荷受量60tの生籾を、約24%の水分状態から約17%の水分状態の半乾籾まで、乾燥処理する場合の循環式穀物乾燥機の使用方法のタイムチャートの一例を示す。
【0058】
本実施例では、投入1巡目において、乾燥機における乾燥機本体への生籾の投入後、約12時間をかけて乾燥処理が行われる。前記乾燥機において乾燥処理が終了した後は、約17%の水分状態の半乾籾を前記乾燥機本体から排出し、機外への排出を行い、さらに、前記半乾籾を本サイロ31に投入し貯留する。
【0059】
次に、投入2巡目において、乾燥機における乾燥機本体へ残りの生籾を投入し、乾燥処理を行い、半乾籾を前記乾燥機本体から排出し、機外への排出を行い、さらに、前記半乾籾を本サイロ31に投入し貯留する。
【0060】
ここで、本実施例においても、投入1巡目において約17%の水分状態まで水分値が低下した半乾籾を機外へ排出するに際し、前記半乾籾を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、投入2巡目において残りの生籾を新たに乾燥させる生籾として前記乾燥機本体に上方から投入する。
【0061】
本実施例によっても、投入1巡目において半乾籾を乾燥機本体から排出した後に、投入2巡目において残りの生籾を前記乾燥機本体に投入する場合に比べ、乾燥機本体内の籾の入れ換えにかかる時間を半分の1時間に短縮することができる。
したがって、本実施例による循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、1台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設においても、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができる。
【0062】
上記各実施例において、乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記乾燥機本体内の複数の高さ位置に設けられる水分計により排出される穀物と投入される穀物の各水分層の高さ位置を把握し、及び/又は、前記乾燥機本体から排出される穀物の排出量に基づいて前記乾燥機本体内の前記排出される穀物の残量を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することとすれば、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え完了を適切に検知することができる。
【0063】
また、上記各実施例において、乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に上方から投入するに際し、前記新たに乾燥させる穀物の投入を開始すると同時に前記穀物と略同じ比重の分銅、例えば巻き上げ装置付きの分銅を前記乾燥機本体に上方から投入し、前記分銅の高さ位置により排出される穀物と投入される穀物の境界の高さ位置を把握することで、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え状況を検出することとすれば、前記乾燥機本体内における穀物の入れ換え完了を適切に検知することができる。
【0064】
上記各実施例では、6台又は1台の循環式穀物乾燥機を配設してなる施設を例としたが、これに限るものでなく、乾燥機の設置台数は適宜増減することができる。
【0065】
上記各実施例では、生籾を1段階で乾燥処理する場合と、2段階に分けて乾燥処理する場合について説明したが、生籾を3段階以上に分けて乾燥処理することもできる。
また、上記各実施例では、生籾を乾燥させて水分値が約17%の半乾籾を得る場合について説明したが、さらに水分値の低い乾燥籾を得ることもできる。
【0066】
上記実施例では、生籾を原料として乾燥処理する場合を例として説明したが、乾燥籾を原料として乾燥処理することもできる。
また、上記実施例では、籾を原料としたが、麦等のその他の穀物を原料として乾燥処理することもできる、
【0067】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の循環式穀物乾燥機の使用方法によれば、循環式穀物乾燥機を効率よく使用することができるため有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 機械棟
11 荷受ホッパ
12 粗選機
13 計量器
2 乾燥棟
21 循環式穀物乾燥機
3 サイロ列
31 本サイロ
32 間隙サイロ
41 揚穀機
42 揚穀機
43 揚穀機
51 横送りコンベア
52 横送りコンベア
53 横送りコンベア
54 横送りコンベア
55 横送りコンベア
56 横送りコンベア