(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】調光シート、調光装置、および、調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1334 20060101AFI20221220BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221220BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221220BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20221220BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221220BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02B5/22
G02F1/13 505
G02F1/1343
G02F1/1335 500
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2018088944
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲志
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-151081(JP,A)
【文献】特表2010-531468(JP,A)
【文献】特開2000-214443(JP,A)
【文献】特開2017-031379(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0143526(KR,A)
【文献】特開2005-202391(JP,A)
【文献】特開2017-187775(JP,A)
【文献】特開平09-325333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1334
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/1335
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明状態と、散乱による不透明状態とを切り替える調光シートであって、
第1の透明電極層と、
第2の透明電極層と、
前記透明電極層間に位置する第1の垂直配向層と、
前記透明電極層間に位置する第2の垂直配向層と、
誘電異方性の値が負である液晶化合物を含む液晶組成物と、前記液晶組成物で埋められた複数の区画を前記垂直配向層間で垂直方向に区切るポリマーネットワークと、を備えた調光層と、を備え、
前記ポリマーネットワークは、重合性液晶モノマーの重合体であり、前記液晶化合物の長軸方向を垂直方向に規制するための前記重合性液晶モノマーのメソゲンを含み、前記メソゲンの長軸方向が前記調光層の厚み方向の全体で垂直方向と平行であり、
前記ポリマーネットワークが区切る区画の中に、全周囲を前記ポリマーネットワークで囲まれた前記区画であって、当該区画のなかの前記液晶組成物と、前記第1の垂直配向層、および前記第2の垂直配向層とが接しない、直径が0.5μm以上10μm以下の孤立した球状を有する、前記区画を含
み、
前記液晶組成物は、前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの境界で界面活性機能を発現することによって前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの相溶性を高める可溶化剤を含む
調光シート。
【請求項2】
前記重合性液晶モノマーは、紫外線重合性液晶モノマーである
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記第1の透明電極層を支持して紫外線を透過する第1の透明基材と、
前記第1の透明基材における前記第1の透明電極層側の面とは反対側の面に貼り付けられた第1の紫外線吸収層とをさらに備える
請求項2に記載の調光シート。
【請求項4】
前記第2の透明電極層を支持して紫外線を透過する第2の透明基材と、
前記第2の透明基材における前記第2の透明電極層側の面とは反対側の面に貼り付けられた紫外線吸収層とをさらに備える
請求項
3に記載の調光シート。
【請求項5】
前記調光層の厚みは、5μm以上50μm以下である
請求項1から
4のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の調光シートと、
前記調光シートを駆動する駆動回路と、を備える
調光装置。
【請求項7】
誘電異方性の値が負である液晶化合物を含む液晶組成物と、前記液晶組成物で埋められた複数の区画を垂直配向層間で垂直方向に区切るポリマーネットワークと、を有した調光層を備えて、透明状態と、散乱による不透明状態とを切り替える調光シートの製造方法であって、
前記液晶化合物と重合性液晶モノマーとを含む重合性液晶組成物を第1の垂直配向層と第2の垂直配向層との間に配置して、前記液晶化合物および前記重合性液晶モノマーを垂直配向させることと、
前記液晶化合物および前記重合性液晶モノマーが垂直配向した状態で前記重合性液晶モノマーを重合して、前記液晶化合物の長軸方向を垂直方向に規制するための前記重合性液晶モノマーのメソゲンを繰り返し単位に含め、かつ、前記メソゲンの長軸方向を前記調光層の厚み方向の全体で垂直方向と平行にする前記ポリマーネットワークを形成することと、を含み、
前記ポリマーネットワークを形成することでは、前記ポリマーネットワークが区切る区画の中に、全周囲を前記ポリマーネットワークで囲まれた前記区画であって、当該区画のなかの前記液晶組成物と、前記第1の垂直配向層、および前記第2の垂直配向層とが接しない、直径が0.5μm以上10μm以下の孤立した球状を有する、前記区画を含
み、
前記液晶組成物は、前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの境界で界面活性機能を発現することによって前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの相溶性を高める可溶化剤を含む
調光シートの製造方法。
【請求項8】
前記重合性液晶モノマーは、紫外線重合性液晶モノマーであり、
前記ポリマーネットワークを形成することでは、紫外線を透過する第1の透明基材で前記第1の垂直配向層を支持し、前記第1の透明基材を通して前記重合性液晶組成物に紫外線を照射し、
前記第1の透明基材における前記ポリマーネットワーク側の面とは反対側の面に、第1の紫外線吸収層を貼りつけることをさらに含む
請求項
7に記載の調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物で埋められる区画を垂直配向層間に区切るポリマーネットワークを備えた調光シート、調光装置、および、調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、第1の透過電極層と第2の透明電極層との間に、ポリマーネットワークを備える。ポリマーネットワークは、三次元の網状を有した構造体であり、複数の区画を透明電極層間で垂直方向に区切る。液晶化合物を含む液晶組成物は、ポリマーネットワークに区切られた各区画を埋める。透明電極層間に印加される電圧の変更は、液晶化合物の分極の向きを区画内で変える。
【0003】
調光シートの状態は、透明と不透明とに切り替えられる。透明状態の調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させる。不透明状態の調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させない。ノーマル型の調光シートは、駆動電圧の印加開始によって不透明状態から透明状態に切り替わる。リバース型の調光シートは、駆動電圧の印加開始によって透明状態から不透明状態に切り替わる(例えば、特許文献1,2参照)。リバース型の調光シートは、駆動電圧の非印加期間に透明性を示し、透明状態を定常的に要する用途にて省電力化を可能とする。
【0004】
リバース型の調光シートは、ポリマーネットワークを第1の垂直配向層と第2の垂直配向層とで挟む。ポリマーネットワークを挟む垂直配向層は、駆動電圧の非印加期間に、各液晶化合物の長軸方向を垂直方向に統一する。垂直方向に配向した各液晶化合物は、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-187775号公報
【文献】WO2016/072498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、リバース型の調光シートでは、液晶化合物と垂直配向層との距離が大きいほど、垂直配向層から液晶化合物に作用する規制力が小さい。例えば、垂直配向層に接する液晶化合物は、垂直配向層から大きい規制力を受けるが、垂直配向層間の途中に位置する液晶化合物は、垂直配向層から殆ど規制力を受けない。
【0007】
結果として、垂直配向層に接する液晶化合物の配向方向は、駆動電圧の印加終了時に垂直方向へ直ぐに変わるが、垂直配向層間の途中に位置する液晶化合物の配向方向は、駆動電圧の印加終了時に直ぐには変わらない。そして、配向方向の変化の遅れは、調光シートでの調光の応答を遅らせる。
本発明は、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度を向上可能にした調光シート、調光装置、および、調光シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための調光シートは、透明状態と、散乱による不透明状態とを切り替える調光シートであって、第1の透明電極層と、第2の透明電極層と、前記透明電極層間に位置する第1の垂直配向層と、前記透明電極層間に位置する第2の垂直配向層と、誘電異方性の値が負である液晶化合物を含む液晶組成物と、前記液晶組成物で埋められた複数の区画を前記垂直配向層間で垂直方向に区切るポリマーネットワークと、を備えた調光層と、を備える。前記ポリマーネットワークは、重合性液晶モノマーの重合体であり、前記液晶化合物の長軸方向を垂直方向に規制するための前記重合性液晶モノマーのメソゲンを含み、前記メソゲンの長軸方向が前記調光層の厚み方向の全体で垂直方向と平行である。
【0009】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法は、負の誘電異方性を有した液晶化合物を含む液晶組成物と、前記液晶組成物で埋められた複数の区画を垂直配向層間で垂直方向に区切るポリマーネットワークと、を有した調光層を備えて、透明状態と、散乱による不透明状態とを切り替える調光シートの製造方法である。調光シートの製造方法は、前記液晶化合物と重合性液晶モノマーとを含む重合性液晶組成物を第1の垂直配向層と第2の垂直配向層との間に配置して、前記液晶化合物および前記重合性液晶モノマーを垂直配向させることと、前記液晶化合物および前記重合性液晶モノマーが垂直配向した状態で前記重合性液晶モノマーを重合して、前記液晶化合物の長軸方向を垂直方向に規制するための前記重合性液晶モノマーのメソゲンを繰り返し単位に含め、かつ、前記メソゲンの長軸方向を前記調光層の厚み方向の全体で垂直方向と平行にする前記ポリマーネットワークを形成することと、を含む。
【0010】
上記構成によれば、ポリマーネットワークでのメソゲンの姿勢が、駆動電圧の印加終了時に、液晶化合物の配向方向を垂直方向に統一する。ポリマーネットワークによる配向方向の規制は、各垂直配向層の近傍のみならず、調光層での厚み方向の全体に広がる。結果として、駆動電圧の印加終了時に、調光シートでの調光の応答が速められる。
【0011】
ポリマーネットワークが区切る区画の大きさが小さいほど、単位体積に占めるポリマーネットワークの表面積は大きい。単位体積に占めるポリマーネットワークの表面積は、調光の応答を速めるための有効な面積である。そこで、上記調光シートでは、前記重合性液晶モノマーが紫外線重合性液晶モノマーであってもよい。この構成によれば、紫外線の照射によってポリマーネットワークが形成可能であるから、照射位置や照射強度の調整によって、調光層での各区画が微細化可能である。そして、各区画の微細化が可能な上記構成は、調光の応答をさらに向上可能である。
【0012】
上記調光シートにおいて、前記液晶組成物は、前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの相溶性を高める可溶化剤を含んでもよい。また、上記調光シートの製造方法において、前記液晶組成物は、前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとの相溶性を高める可溶化剤を含んでもよい。
【0013】
上記構成によれば、前記液晶化合物と前記重合性液晶モノマーとが均一に分布するため、微細化された各区画を調光層で均一に配置可能である。結果として、調光シートの全体で不透明性の均一化と透明性の均一化とが実現可能である。
【0014】
上記調光シートは、前記ポリマーネットワークが区切る区画の中に、全周囲を前記ポリマーネットワークで囲まれた前記区画を含んでもよい。また、上記調光シートの製造方法において、前記ポリマーネットワークを形成することでは、前記ポリマーネットワークが区切る区画の中に、全周囲を前記ポリマーネットワークで囲まれた前記区画を含めてもよい。
【0015】
上述したように、駆動電圧の印加終了時での調光の応答は、ポリマーネットワークと液晶化合物との接触によって速まる。全周囲がポリマーネットワークで囲まれる区画は、区画を埋める液晶組成物のほぼ全体と、ポリマーネットワークとを接触させて、それによって、駆動電圧の印加終了時での調光の応答をさらに速める。
【0016】
上記調光シートは、前記第1の透明電極層を支持して紫外線を透過する第1の透明基材と、前記第1の透明基材における前記第1の透明電極層側の面とは反対側の面に貼り付けられた第1の紫外線吸収層とをさらに備えてもよい。また、上記調光シートの製造方法において、前記重合性液晶モノマーは、紫外線重合性液晶モノマーであり、前記ポリマーネットワークを形成することでは、紫外線を透過する第1の透明基材で前記第1の垂直配向層を支持し、前記第1の透明基材を通して前記重合性液晶組成物に紫外線を照射し、前記第1の透明基材における前記ポリマーネットワーク側の面とは反対側の面に、第1の紫外線吸収層を貼りつけることをさらに含んでもよい。
【0017】
上記構成では、第1の透明基材上に位置する紫外線重合性液晶モノマーに第1の透明基材を通して紫外線が照射され、それによって、ポリマーネットワークが形成可能である。一方で、調光層が形成された第1の透明基材に第1の紫外線吸収層が貼り付けられ、それによって、調光層に紫外線が照射される、すなわち、液晶組成物に紫外線が照射されることが抑制可能である。それゆえに、上記第1の透明基材、および、紫外線吸収層を備える構成は、調光の応答を速められ、かつ、調光層の耐候性を高められる。
【0018】
上記調光シートにおいて、前記第2の透明電極層を支持して紫外線を透過する第2の透明基材と、前記第2の透明基材における前記第2の透明電極層側の面とは反対側の面に貼り付けられた紫外線吸収層とをさらに備えてもよい。
【0019】
上記構成では、透明基材間に位置する紫外線重合性液晶モノマーに各透明基材を通して紫外線を照射し、それによって、ポリマーネットワークが形成可能である。そのため、液晶化合物の長軸方向を垂直方向に統一する規制力は、調光層における厚み方向の全体で均一化される。
【0020】
上記調光シートにおいて、前記調光層の厚みは、5μm以上50μm以下であってもよい。この構成によれば、液晶化合物の長軸方向を垂直方向に統一する規制力は、調光層の面方向で均一化される。
上記課題を解決するための調光装置は、上記調光シートと、前記調光シートを駆動する駆動回路と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る調光シート、調光装置、および、調光シートの製造方法によれば、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】調光装置の一実施形態における調光シートの層構成を示す断面図。
【
図2】透明状態の調光層における構成を示す構成図。
【
図3】不透明状態の調光層における構成を示す構成図。
【
図4】調光シートの製造方法の一実施形態における工程の流れを示すフロー図。
【
図5】調光シートの製造方法の一実施形態における塗布工程を示す断面図。
【
図6】調光シートの製造方法の一実施形態における配向工程を示す断面図。
【
図7】調光シートの製造方法の一実施形態における露光工程を示す断面図。
【
図8】変更例の調光装置における調光シートの層構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、調光シート、調光装置、および、調光シートの製造方法を具体化した一実施形態を説明する。調光シートは、リバース型であり、駆動電圧の印加開始時に透明状態から不透明状態に切り替わり、駆動電圧の印加終了時に不透明状態から透明状態に切り替わる。調光シートは、平面状の透明部材に積層されたり、曲面を含む透明部材に積層されたり、巻き取られた状態で保管されたりする。
【0024】
図1が示すように、調光シートは、第1の透明基材11、第1の透明電極層12、第1の垂直配向層13、調光層30、第2の垂直配向層23、第2の透明電極層22、および、第2の透明基材21を備える。調光装置は、調光シートと駆動回路40とを備える。
【0025】
各透明電極層12,22、各垂直配向層13,23、および、調光層30は、第1の透明基材11と第2の透明基材21との間に位置する。各垂直配向層13,23、および、調光層30は、第1の透明電極層12と第2の透明電極層22との間に位置する。調光層30は、第1の垂直配向層13と第2の垂直配向層23との間に位置する。調光シートでは、表面に近い順に、第1の透明基材11、第1の透明電極層12、第1の垂直配向層13、調光層30、第2の垂直配向層23、第2の透明電極層22、および、第2の透明基材21が位置する。
【0026】
各透明基材11,21は、可視光と紫外光とを透過する。第1の透明電極層12は、第1の透明基材11に直接接続されて、第1の透明基材11は、第1の透明電極層12を支持する。第2の透明電極層22は、第2の透明基材21に直接接続されて、第2の透明基材21は、第2の透明電極層22を支持する。なお、透明電極層12,22は、接着層やバリア層などの機能層を介して透明基材11,21に支持されてもよい。
【0027】
各透明基材11,21を構成する材料は、樹脂、もしくは、無機化合物である。樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンである。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素などである。なお、各透明基材11,21は、樹脂の表面に無機化合物の被膜を備えた積層体であってもよい。
【0028】
各透明基材11,21の厚さは、例えば、50μm以上200μm以下である。各透明基材11,21の厚さが50μm以上であれば、調光シートをロールツーロールで製造する際に、各透明基材11,21にシワなどが発生することが抑制される。各透明基材11,21の厚さが200μm以下であれば、調光シートでの透明性が確保されやすい。
【0029】
各透明電極層12,22は、可視光と紫外光とを透過する。各透明電極層12,22は、駆動回路40に接続されている。駆動回路40は、第1の透明電極層12と第2の透明電極層22との間に駆動電圧を印加する。駆動電圧は、透明電極層12,22間で極性を反転させる交流電圧である。
【0030】
各透明電極層12,22を構成する材料は、導電性樹脂、もしくは、金属酸化物である。導電性樹脂は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールである。金属酸化物は、例えば、アンチモン添加酸化錫(ATO)、フッ素添加酸化錫(FTO)、錫添加酸化インジウム(ITO)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)である。
【0031】
各透明電極層12,22の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。各透明電極層12,22の厚さが0.1μm以上であれば、各透明電極層12,22に起因した内部抵抗の増大が抑制される。各透明電極層12,22の厚さが10μm以下であれば、調光シートでの透明性が確保されやすい。
【0032】
各垂直配向層13,23は、可視光と紫外光とを透過する。各垂直配向層13,23は、駆動電圧の非印加時に、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向に統一する。各垂直配向層13,23は、駆動電圧の印加時に、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向以外の方向に変更可能にする。垂直方向は、各透明電極層12,22の面方向と直交する方向であり、垂直方向以外の方向は、例えば、水平方向である。調光層30は、駆動電圧の印加開始時に、透明状態から不透明状態に切り替わり、駆動電圧の印加終了時に、不透明状態から透明状態に切り替わる。透明状態の調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させる。不透明状態の調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させない。
【0033】
各垂直配向層13,23を構成する材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレートである。各垂直配向層13,23を形成するための配向処理は、ラビング処理、偏光照射処理、微細加工処理である。
【0034】
図2が示すように、調光層30は、ポリマーネットワーク31Aと液晶組成物33とを含む。調光層30の厚みは、例えば、5μm以上50μm以下である。調光層30の厚みが5μm以上であれば、調光シートでの不透明性を確保しやすい。調光層30の厚みが50μm以下であれば、ポリマーネットワーク31Aの規制力が調光層30の厚みの全体で均一に得られやすい。調光層30を形成するための塗布膜の厚みの均一性が得られやすい観点においては、調光層30の厚みが30μm以上であることが好ましい。
【0035】
ポリマーネットワーク31Aは、高分子化合物から構成される繊維が三次元の網状を有する構造体である。ポリマーネットワーク31Aは、液晶組成物33で埋まる区画32を透明電極層12,22間で垂直方向に区切る。ポリマーネットワーク31Aが区切る区画32は、調光層30の厚み方向に重なる複数の区画32を含む。
【0036】
なお、ポリマーネットワーク31Aが区切る複数の区画32は、全周囲をポリマーネットワーク31Aで囲まれた区画32を含有可能である。すなわち、ポリマーネットワーク31Aが区切る区画32は、各垂直配向層13,23と液晶組成物33とが接しない孤立した区画32を含有可能である。孤立した区画32が球状である場合、孤立した区画32の直径は、例えば、0.5μm以上10μm以下であり、好ましくは、1μm以上5μm以下である。また、調光層30の全重量に対するポリマーネットワーク31Aの重量は、単位体積に占めるポリマーネットワーク31Aの表面積を高めるうえで、20質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0037】
ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、重合性液晶モノマーの重合体である。重合性液晶モノマーは、液晶性を発現する剛直構造であるメソゲン31Bと、重合可能な末端基である重合性官能基とを含む。ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、重合性液晶モノマーのメソゲン31Bを繰り返し単位に含む。繰り返し単位を構成するメソゲン31Bは、部分構造として、2個以上の6員環を直鎖状に連結した構造を含む。ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、メソゲン31Bの他に、ポリエチレンなどの屈曲鎖を繰り返し単位に含んでもよい。
【0038】
ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、常温で液晶性を有してもよいし、常温で液晶性を有しなくてもよい。ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、重合性液晶モノマーのメソゲン31Bを主鎖に含む構造(主鎖型)を有する。ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、重合性液晶モノマーのメソゲン31Bを側鎖に含む構造(側鎖型)を有してもよいし、主鎖型と側鎖型との組み合わせであってもよい。なお、
図2および
図3のポリマーネットワーク31Aでは、主鎖型を例示する。
【0039】
重合性液晶モノマーは、室温でネマチック相を有する。重合性液晶モノマーのメソゲン31Bは、2個以上の6員環を直鎖状に連結した構造を有し、例えば、液晶化合物35のメソゲンと同一である。重合性液晶モノマーの重合性官能基は、紫外線感受性重合開始剤の作用によって重合を開始する。重合性液晶モノマーの重合性官能基は、メソゲン31Bを含む直鎖状構造の一端、もしくは、両端に位置する。重合性液晶モノマーの重合性官能基は、例えば、アリル基、アシル基、ビニル基、ビニルオキシ基である。重合性液晶モノマーは、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0040】
ポリマーネットワーク31Aは、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向に統一する規制力をメソゲン31Bの配置によって有する。ポリマーネットワーク31Aでの各メソゲン31Bの長軸方向は、垂直方向と平行である。これによって、ポリマーネットワーク31Aは、液晶化合物35の長軸方向が垂直方向に統一される状態を安定させて、液晶化合物35の長軸方向が水平方向から垂直方向に切り替わりやすくする。また、ポリマーネットワーク31Aは、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向から水平方向に変えるための閾値電圧を高める。
【0041】
液晶化合物35は、室温でネマチック相を有する。液晶化合物35は、誘電異方性の値が負である液晶化合物を含む。液晶化合物35は、耐候性を高める観点から、分極基としてフッ素を含むことが好ましい。誘電異方性の値が負である液晶化合物35は、例えば、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ジシアノベンゼン系液晶、ナフタレン系液晶、ピリダジン系液晶、アゾキシ系液晶、ナフタレン系液晶である。
【0042】
液晶化合物35は、誘電異方性の値がほぼゼロである液晶化合物を含有可能である。誘電異方性の値がほぼゼロである液晶化合物35は、誘電異方性の値が負である液晶化合物35同士の短軸方向での分子間相互作用を緩和する。誘電異方性の値がほぼゼロである液晶化合物35は、垂直方向から水平方向に配向方向を切り替える負荷を液晶組成物33で軽減する。誘電異方性の値がほぼゼロである液晶化合物35は、誘電異方性の値が負である液晶化合物35と同一の剛直構造を有することが好ましく、例えば、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶である。
【0043】
液晶組成物33は、液晶化合物35の他に、可溶化剤、消泡剤、酸化防止剤、二色性色素、および、色素の少なくとも一種を含有可能である。可溶化剤は、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとの相溶性を高める。可溶化剤は、重合性液晶組成物の中で液晶化合物35と重合性液晶モノマーとを均一に分布させる。可溶化剤は、例えば、液晶化合物35と重合性モノマーとの境界で界面活性機能を発現するフルオロカーボン系化合物である。
【0044】
[調光装置の作用]
図2が示すように、駆動電圧の非印加期間では、ポリマーネットワーク31Aでのメソゲン31Bの配置が、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向に規制する。結果として、調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させる透明状態を保つ。
【0045】
図3が示すように、駆動電圧の印加期間では、透明電極層12,22間に印加される電圧が、液晶化合物35の長軸方向を水平方向に規制する。結果として、調光シートは、調光シートの後ろに位置する物体を視覚で認知させない不透明状態を保つ。
【0046】
そして、駆動電圧の印加終了時に、ポリマーネットワーク31Aでのメソゲン31Bの配置が、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向に再び規制する。ポリマーネットワーク31Aによる配向方向の規制は、各垂直配向層13,23の近傍のみならず、調光層30での厚み方向の全体に広がる。結果として、駆動電圧の印加終了時に、調光シートでの調光の応答速度が高められる。
【0047】
なお、調光層30の厚みが厚いほど、垂直配向層13,23による規制力が弱まるため、調光シートの透明性は低く、調光シートの不透明性は高い。また、調光層30の厚みが薄いほど、調光シートの透明性は高く、調光シートの不透明性は低い。そのため、透明性を高めるために調光層30の厚みを薄くすると、透明性は高まるが、不透明性は低下してしまう。反対に、不透明性を高めるために調光層30の厚みを厚くすると、不透明性は高まるが、透明性は低下してしまう。
【0048】
一方、ポリマーネットワーク31Aによる配向方向の規制は、厚みの増加に起因した透明性の低下を抑制する。そのため、ポリマーネットワーク31Aが規制力を有する構成であれば、調光層30の厚みを保つことによって、駆動電圧の印加による不透明性を保ちつつ、駆動電圧の非印加による透明性を高められる。あるいは、調光層30の厚みを厚くすることによって、駆動電圧の非印加による透明性を保ちつつ、駆動電圧の印加による不透明性を高められる。
【0049】
また、単位体積に占めるポリマーネットワーク31Aの表面積は、調光の応答を速める有効面積である。そして、ポリマーネットワーク31Aが区切る区画32の大きさが小さいほど、有効面積は大きい。この点、紫外線の照射によってポリマーネットワーク31Aが形成可能であるから、調光層30での各区画32が微細化可能である。さらに、液晶組成物33が可溶化剤を含む場合、液晶組成物33の中で液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが均一に分布されて、調光層30での各区画32の微細化がさらに促進可能である。そして、各区画32の微細化が可能であるから、調光の応答速度がさらに高まる。
【0050】
また、駆動電圧の印加終了時での調光の応答は、ポリマーネットワーク31Aと液晶化合物35との接触によって速まる。全周囲がポリマーネットワーク31Aで囲まれる構成は、区画32を埋める液晶組成物33のほぼ全体と、ポリマーネットワーク31Aとを接触させて、それによって、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度をさらに高める。
【0051】
そのうえ、液晶組成物33とポリマーネットワーク31Aとの界面は、駆動電圧の印加期間に光を散乱させて調光シートに不透明性を与える。そして、ポリマーネットワーク31Aが規制力を有する場合、ポリマーネットワーク31Aは、全周囲をポリマーネットワーク31Aで囲むことが可能であって、小さな区画32を区切ることが可能ともなる。言い換えれば、ポリマーネットワーク31Aでの高分子化合物の密度を密にすることが可能である。結果として、全周囲がポリマーネットワーク31Aで囲まれる区画32では、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度が高まり、かつ、駆動電圧の印加時では不透明性も高まる。また、垂直配向層13,23とポリマーネットワーク31Aとの密着性も高まる。
【0052】
なお、ポリマーネットワーク31Aが規制力を有しない従来構成では、全周囲がポリマーネットワークで囲まれると、寧ろ、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度は低下してしまう。そのため、ポリマーネットワーク31Aが規制力を有しない従来構成では、ポリマーネットワーク31Aが区切る区画32は、全周囲をポリマーネットワーク31Aで囲まないような、大きな区画32に限られている。言い換えれば、ポリマーネットワーク31Aでの高分子化合物の密度を疎にせざるを得ない。結果として、全周囲をポリマーネットワーク31Aで囲まれない大きな区画32では、光の散乱による不透明性も自ずと制限されている。また、垂直配向層13,23とポリマーネットワーク31Aとの密着性も得られ難い。
【0053】
[調光シートの製造方法]
図4が示すように、調光シートの製造方法は、塗布工程(ステップS11)、配向工程(ステップS12)、および、露光工程(ステップS13)を含む。
図5が示すように、塗布工程(ステップS11)では、重合性液晶組成物30Pが第1の垂直配向層13に塗布される。第1の垂直配向層13は、第1の透明電極層12と第1の透明基材11との積層体に支持されている。重合性液晶組成物30Pは、液晶化合物35を含む液晶組成物と、重合性液晶モノマーとを含む。
【0054】
重合性液晶組成物30Pを構成する液晶組成物は、液晶化合物35の他に、紫外線反応性重合開始剤を含む。液晶組成物33は、誘電異方性の値がほぼゼロである液晶化合物35、重合禁止剤、消泡剤、酸化防止剤、二色性色素、色素、および、可溶化剤の少なくとも一種を含有可能である。塗布方法は、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法のいずれか一種である。
【0055】
図6が示すように、配向工程(ステップS12)では、第1の垂直配向層13と第2の垂直配向層23との間に重合性液晶組成物30Pが配置されて、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向する。第1の垂直配向層13に塗布された重合性液晶組成物30Pは、塗布工程において、可視光を散乱させて混濁している。一方、第2の垂直配向層23が重合性液晶組成物30Pと接触すると、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向し、それによって、重合性液晶組成物30Pは可視光の散乱を抑えて透明になる。
【0056】
図7が示すように、露光工程(ステップS13)では、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向した状態で、重合性液晶組成物30Pに紫外線Eが照射される。照射される紫外線Eの波長は、好ましくは390nm以下であり、より好ましくは250nm以上370nm以下である。紫外線Eは、第1の透明基材11に向けて照射され、かつ、第2の透明基材21に向けて照射される。第1の垂直配向層13に照射される紫外線Eは、第1の垂直配向層13から第2の垂直配向層23に向けて照射される。第2の垂直配向層23に照射される紫外線Eは、第2の垂直配向層23から第1の垂直配向層13に向けて照射される。
【0057】
紫外線Eを照射された重合性液晶モノマーは、重合性液晶モノマーの重合体である高分子化合物を生成する。多数の高分子化合物は、多数の微細な区画32を垂直配向層13,23間に区切る。各区画32は、液晶組成物33に埋められている。これによって、多数の高分子化合物からなるポリマーネットワーク31Aが形成される。ポリマーネットワーク31Aを構成する高分子化合物は、重合性液晶モノマーのメソゲン31Bを繰り返し単位に含む。ポリマーネットワーク31Aでの各メソゲン31Bの長軸方向は、調光層30の厚み方向の全体にわたり、垂直方向と平行である。そして、ポリマーネットワーク31Aでのメソゲン31Bの配置は、駆動電圧の非印加時において、液晶化合物35の長軸方向を垂直方向に規制する。
【0058】
また、ポリマーネットワーク31Aの形成が進行する過程において、ポリマーネットワーク31Aは、液晶化合物35のネマチック相を保つ。そのため、ポリマーネットワーク31Aの形成と、液晶化合物35のネマチック相での分離とに、詳細な温度の調整が不要となる。なお、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向しない状態でポリマーネットワーク31Aの形成が進行すると、液晶化合物35をネマチック相で分離(重合相分離)するために、詳細な相分離温度の管理などのような露光条件の調整が強いられる。
【0059】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)ポリマーネットワーク31Aによる配向方向の規制によって、駆動電圧の印加終了時には、調光シートでの調光の応答速度が高められる。
(2)駆動電圧の印加による不透明性が保たれつつ、駆動電圧の非印加による透明性が高められる。あるいは、駆動電圧の非印加による透明性が保たれつつ、駆動電圧の印加による不透明性が高められる。また、液晶組成物33が二色性色素を含有する場合、不透明状態での色の濃さや鮮やかさが向上可能である。
【0060】
(3)紫外線Eの照射によってポリマーネットワーク31Aが形成可能であるから、各区画32が微細化可能である。そして、各区画32の微細化が可能であるから、上記(1)に準じた効果と相まって、調光の応答速度がさらに高められる。
【0061】
(4)また、区画32の微細化は、孤立した区画32を形成可能であるから、駆動電圧の印加終了時での調光の応答速度がさらに高められ、かつ、駆動電圧の印加時に不透明性が高められる。
【0062】
(5)液晶組成物33が可溶化剤を含む場合、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとの分布の均一化が図られるため、微細化された各区画32を調光層30で均一に配置可能である。結果として、調光シートでの不透明性と、調光シートでの透明性との均一化が図られる。
【0063】
(6)各透明基材11,21を通して重合性液晶モノマーに紫外線Eを照射する場合、調光層30の厚み方向において、重合性液晶モノマーでの重合速度のばらつきが抑制されて、ポリマーネットワーク31Aでの規制力の均一化が図られる。
【0064】
(7)調光層30の厚みが5μm以上50μm以下である場合、調光層30の面内において、重合性液晶モノマーでの重合速度のばらつきが抑制されて、ポリマーネットワーク31Aでの規制力の均一化が図られる。
【0065】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
[紫外線吸収層]
・
図8が示すように、調光シートは、第1の透明基材11に対する第1の透明電極層12の側とは反対側に、紫外線吸収層14をさらに備えることも可能である。
・また、調光シートは、第2の透明基材21に対する第2の透明電極層22の側とは反対側に、紫外線吸収層24をさらに備えることも可能である。
【0066】
調光シートの製造方法において、各紫外線吸収層14,24は、露光工程の後、すなわち、ポリマーネットワーク31Aが形成された後に、透明基材11,21に貼り付けられる。
【0067】
上記変更例であれば、紫外線Eの照射によってポリマーネットワーク31Aが形成可能であって、かつ、紫外線吸収層14,24の貼り付けによって、調光層30に紫外線が照射されること、すなわち、液晶組成物33に紫外線が照射されることが抑制可能である。それゆえに、建物の窓や車両の窓などのように、調光シートが外気に曝される使用では、調光の応答速度が高められ、かつ、調光層30の耐候性が高められる。
[判定工程]
【0068】
・調光シートの製造方法は、配向工程と露光工程との間に、積層体での全光線透過率を測定して、全光線透過率が所定値以上であるか否かを判定する工程を含み、全光線透過率が所定値以上であることを条件として露光工程を実行することも可能である。
【0069】
すなわち、配向工程(ステップS12)では、液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向したか否かが、重合性液晶組成物30Pの全光線透過率によって判定可能である。液晶化合物35と重合性液晶モノマーとが垂直配向したとき、第1の透明基材11、第1の透明電極層12、第1の垂直配向層13、重合性液晶組成物、第2の垂直配向層23、第2の透明電極層22、第2の透明基材21での全光線透過率は、例えば、80%以上である。そして、重合性液晶組成物30Pを含む積層体での全光線透過率が、80%以上となるときに、判定工程から露光工程(ステップ13)に移行する。
判定工程を含む製造方法であれば、上記(1)から(7)に準じた効果の再現性が高められる。
【0070】
・重合性液晶モノマーは、熱によって重合を開始する熱重合性液晶モノマーに変更可能である。なお、紫外線重合性液晶モノマーは、上記(3)、(4)に準じた効果が得られるうえで好ましい。重合性液晶モノマーの重合性官能基は、メソゲン31Bを含む直鎖状構造の側鎖に位置することも可能である。
【0071】
・調光層30が取り得る光透過率は、不透明状態に対応する第1の値と、透明状態に対応する第2の値とのみであってもよいし、調光層30は、印加される駆動電圧の大きさに応じて、第1の値と第2の値との間の中間値を取り得ることが可能な構成でもよい。
【符号の説明】
【0072】
E…紫外線、11…第1の透明基材、12…第1の透明電極層、13…第1の垂直配向層、14,24…紫外線吸収層、21…第2の透明基材、22…第2の透明電極層、23…第2の垂直配向層、30…調光層、30P…重合性液晶組成物、31A…ポリマーネットワーク、31B…メソゲン、32…区画、33…液晶組成物、35…液晶化合物、40…駆動回路。