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特許7196436コイル対、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】コイル対、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20221220BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20221220BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H01F38/14
H01F27/28 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018123048
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020005412
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-073976(JP,A)
【文献】特開2012-244763(JP,A)
【文献】特開2012-190882(JP,A)
【文献】特開2012-120411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H01F 38/14
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型電力伝送用のコイル対において、
送電又は受電用の第1コイルであって、第1コイル巻回線が巻回されてなる第1コイルと、
送電時には当該送電すべき電力が供給され、受電時には受電された電力が出力される第2コイルであって、前記第1コイルに対して同心に積層された第2コイルと、
を備え、
前記第2コイルは、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つ前記コイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、
前記第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされており、
前記コイル対の前記径方向における前記第2コイルの位置が、当該径方向における前記第1コイルの位置に相当する位置であり、
前記第2コイルの最外周に巻回された前記第2コイル巻回線の前記径方向における位置が、前記第1コイルの最外周に巻回された前記第1コイル巻回線の前記径方向における位置に相当する位置とされ、
前記第2コイルの最内周に巻回された前記第2コイル巻回線の前記径方向における位置が、前記第1コイルの最内周に巻回された前記第1コイル巻回線の前記径方向における位置に相当する位置とされていることを特徴とするコイル対。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル対において、
前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された複数の前記第1コイル巻回線が、絶縁部を挟んで積層されて構成されていることを特徴とするコイル対。
【請求項3】
請求項2に記載のコイル対において、
前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された二つの前記第1コイル巻回線が前記絶縁部を挟んで積層されて構成されており、
一の前記第1コイル巻回線が前記第1コイルの外周側から内周側に向けて同心に巻回されており、
他の前記第1コイル巻回線が前記第1コイルの内周側から外周側に向けて同心に且つ前記一の前記第1コイル巻回線と反対方向に巻回されており、
前記一の前記第1コイル巻回線の最内周端部と、前記他の前記第1コイル巻回線の最内周端部と、が接続されており、
前記一の前記第1コイル巻回線の最外周端部と、前記他の前記第1コイル巻回線の最外周端部と、が開放されていることを特徴とするコイル対。
【請求項4】
請求項2に記載のコイル対において、
前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された二つの前記第1コイル巻回線が前記絶縁部を挟んで積層されて構成されており、
一の前記第1コイル巻回線の両端部と、他の前記第1コイル巻回線の両端部と、それぞれ開放されており、
前記一の前記第1コイル巻回線と、前記他の前記第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されていることを特徴とするコイル対。
【請求項5】
非接触型電力伝送用のコイル対において、
送電又は受電用の第1コイルであって、それぞれが同心に巻回された二つの第1コイル巻回線が、絶縁部を挟んで積層されて構成された第1コイルと、
送電時には当該送電すべき電力が供給され、受電時には受電された電力が出力される第2コイルであって、前記第1コイルに対して同心に積層された第2コイルと、
を備え、
前記第2コイルは、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つ前記コイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、
前記第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされており、
一の前記第1コイル巻回線の両端部と、他の前記第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、
前記一の前記第1コイル巻回線と、前記他の前記第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されていることを特徴とするコイル対。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイル対において、
前記第2コイルは、前記第2コイル巻回線が一回より多く五回以下に巻回されて構成されていることを特徴とするコイル対。
【請求項7】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイル対である送電コイル対と、
伝送すべき電力を前記送電コイル対に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする送電装置。
【請求項8】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイル対であって、前記送電装置に対向して配置される受電コイル対と、
当該受電コイル対に接続された入力手段と、
を備えることを特徴とする受電装置。
【請求項9】
請求項7に記載の送電装置と、
当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイル対に対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【請求項10】
送電装置と、
請求項8に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイル対が当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル対、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属する。より詳細には、非接触型電力伝送用のコイル対並びに当該コイル対を用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばリチウムイオン電池等からなる蓄電池を搭載した電気自動車が普及しつつある。このような電気自動車では、蓄電池に蓄えた電力を使ってモータを駆動して移動することとなるため、蓄電池への効率のよい充電が求められる。そこで、電気自動車に対して充電用プラグ等を物理的に接続することなくそれに搭載されている蓄電池を充電する方法として、互いに離隔して対向された受電コイルと送電コイルを用いる、いわゆるワイヤレス電力伝送に関する研究が行われている。ワイヤレス電力伝送の方式としては、一般には、電界結合方式、電磁誘導方式及び磁界共鳴方式等がある。これらの方式を、例えば使用周波数、水平及び垂直それぞれの方向の位置自由度並びに伝送効率等の観点から比較した場合、電気自動車に搭載されている蓄電池を充電するためのワイヤレス電力伝送の方式としては、コンデンサを使った電界結合方式又はコイルを使った磁界共鳴方式が有望視されており、これらに対する研究開発も活発に行われている。このような背景技術を開示した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、一回巻き(1ターン)のループコイルと、五回転半巻き(5.5ターン)のオープンコイルと、を用いて磁界共鳴方式により電力伝送を行うコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-200045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1では、コイル全体として伝送効率を向上させることは記載されているものの、コイル全体としての共振周波数を低周波数化することについては、何ら言及又は検討がされていない。よって、上記特許文献1に開示されている技術は、コイル全体としての共振周波数の低周波数化に寄与することがない。このことは、当該共振周波数の調整において各コイルの長さを短くすることができず、結果的に、各コイルの電気抵抗による電力損失や発熱を抑制することができないと言う問題点があった。
【0005】
また上記共振周波数の低周波数化は、上記ワイヤレス電力伝送システムをそれが用いられる国等の法規や規制に適用させる際にも必要とされるところであるが、上記特許文献1に開示されている技術では、結果として上記法規等への適用についても寄与がない。
【0006】
そこで本発明は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、共振周波数を低周波数化することが可能な非接触型電力伝送用のコイル対並びに当該コイル対を用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、非接触型電力伝送用のコイル対において、送電又は受電用の第1コイルであって、第1コイル巻回線が巻回されてなる第1コイルと、送電時には当該送電すべき電力が供給され、受電時には受電された電力が出力される第2コイルであって、前記第1コイルに対して同心に積層された第2コイルと、を備え、前記第2コイルは、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つ前記コイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、前記第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされており、前記コイル対の前記径方向における前記第2コイルの位置が、当該径方向における前記第1コイルの位置に相当する位置であり、前記第2コイルの最外周に巻回された前記第2コイル巻回線の前記径方向における位置が、前記第1コイルの最外周に巻回された前記第1コイル巻回線の前記径方向における位置に相当する位置とされ、前記第2コイルの最内周に巻回された前記第2コイル巻回線の前記径方向における位置が、前記第1コイルの最内周に巻回された前記第1コイル巻回線の前記径方向における位置に相当する位置とされている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、第1コイルに対して同心に積層される第2コイルが、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つコイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされているので、コイル対全体としての共振周波数を低減することができる。
また、最外周に巻回された第2コイル巻回線のコイル対の径方向における位置が、最外周に巻回された第1コイル巻回線の当該径方向における位置に相当する位置とされ、最内周に巻回された第2コイル巻回線の当該径方向における位置が、最内周に巻回された第1コイル巻回線の当該径方向における位置に相当する位置とされている。よって、結果的に、最外周に巻回された第2コイル巻回線と、最内周に巻回された第2コイル巻回線と、が離れることとなり、効果的に共振周波数を低減することができる。
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコイル対において、前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された複数の第1コイル巻回線が、絶縁部を挟んで積層されて構成されている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、第1コイルが、それぞれが同心に巻回された複数の第1コイル巻回線が絶縁部を挟んで積層されて構成されているので、コイル対としての伝送効率及び反射率を向上させることができる。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコイル対において、前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された二つの前記第1コイル巻回線が前記絶縁部を挟んで積層されて構成されており、一の前記第1コイル巻回線が前記第1コイルの外周側から内周側に向けて同心に巻回されており、他の前記第1コイル巻回線が前記第1コイルの内周側から外周側に向けて同心に且つ前記一の前記第1コイル巻回線と反対方向に巻回されており、前記一の前記第1コイル巻回線の最内周端部と、前記他の前記第1コイル巻回線の最内周端部と、が接続されており、前記一の前記第1コイル巻回線の最外周端部と、前記他の前記第1コイル巻回線の最外周端部と、が開放されている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、一の第1コイル巻回線が第1コイルの外周側から内周側に向けて同心に巻回されており、他の第1コイル巻回線が第1コイルの内周側から外周側に向けて同心に且つ一の第1コイル巻回線と反対方向に巻回されており、一の第1コイル巻回線の最内周端部と、他の第1コイル巻回線の最内周端部と、が接続されており、一の第1コイル巻回線の最外周端部と、他の第1コイル巻回線の最外周端部と、が開放されているので、コイル対全体としての共振周波数を低減させつつ、コイル対としての伝送効率を向上させることができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のコイル対において、前記第1コイルは、それぞれが同心に巻回された二つの前記第1コイル巻回線が前記絶縁部を挟んで積層されて構成されており、一の前記第1コイル巻回線の両端部と、他の前記第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、前記一の前記第1コイル巻回線と、前記他の前記第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、一の第1コイル巻回線の両端部と、他の第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、一の第1コイル巻回線と、他の第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されているので、コイル対全体としての共振周波数を低減させつつ、コイル対としての伝送効率を向上させることができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、非接触型電力伝送用のコイル対において、送電又は受電用の第1コイルであって、それぞれが同心に巻回された二つの第1コイル巻回線が、絶縁部を挟んで積層されて構成された第1コイルと、送電時には当該送電すべき電力が供給され、受電時には受電された電力が出力される第2コイルであって、前記第1コイルに対して同心に積層された第2コイルと、を備え、前記第2コイルは、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つ前記コイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、前記第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされており、一の前記第1コイル巻回線の両端部と、他の前記第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、前記一の前記第1コイル巻回線と、前記他の前記第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、第1コイルに対して同心に積層される第2コイルが、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つコイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされているので、コイル対全体としての共振周波数を低減することができる。
また、第1コイルが、それぞれが同心に巻回された二つの第1コイル巻回線が絶縁部を挟んで積層されて構成されているので、コイル対としての伝送効率及び反射率を向上させることができる。
更に、一の第1コイル巻回線の両端部と、他の第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、一の第1コイル巻回線と、他の第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されているので、コイル対全体としての共振周波数を低減させつつ、コイル対としての伝送効率を向上させることができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイル対において、前記第2コイルは、前記第2コイル巻回線が一回より多く五回以下に巻回されて構成されている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、第2コイル巻回線が一回より多く五回以下に巻回されて第2コイルが構成されているので、効果的に共振周波数を低減させつつ、伝送効率を向上させることができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイル対である送電コイル対と、伝送すべき電力を前記送電コイル対に出力する出力手段と、を備える。
【0020】
上記の課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイル対であって、前記送電装置に対向して配置される受電コイル対と、当該受電コイル対に接続された入力手段と、を備える。
【0021】
上記の課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の送電装置と、当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイル対に対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
【0022】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、送電装置と、請求項8に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイル対が当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
【0023】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の発明によれば、電力伝送システムを構成する送電装置に備えられた送電コイル対又は受電装置に備えられた受電コイル対の少なくともいずれか一方が請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコイル対であるので、電力伝送システム全体としての共振周波数を低減できることで電力損失や発熱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面によれば、第1コイルに対して同心に積層される第2コイルが、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つコイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、第2コイル巻回線の両端部が、コイル対の最外周部で外部接続用端子とされているので、コイル対全体としての共振周波数を低減することができる。
また、最外周に巻回された第2コイル巻回線のコイル対の径方向における位置が、最外周に巻回された第1コイル巻回線の当該径方向における位置に相当する位置とされ、最内周に巻回された第2コイル巻回線の当該径方向における位置が、最内周に巻回された第1コイル巻回線の当該径方向における位置に相当する位置とされている。よって、結果的に、最外周に巻回された第2コイル巻回線と、最内周に巻回された第2コイル巻回線と、が離れることとなり、効果的に共振周波数を低減することができる。
一方、本発明の他の側面によれば、第1コイルに対して同心に積層される第2コイルが、第2コイル巻回線が、同心且つ同一巻回方向且つコイル対における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、第2コイル巻回線の両端部が外部接続用端子とされているので、コイル対全体としての共振周波数を低減することができる。
また、第1コイルが、それぞれが同心に巻回された二つの第1コイル巻回線が絶縁部を挟んで積層されて構成されているので、コイル対としての伝送効率及び反射率を向上させることができる。
更に、一の第1コイル巻回線の両端部と、他の第1コイル巻回線の両端部と、がそれぞれ開放されており、一の第1コイル巻回線と、他の第1コイル巻回線と、が相互に絶縁されているので、コイル対全体としての共振周波数を低減させつつ、コイル対としての伝送効率を向上させることができる。
【0025】
従って、コイル対としての共振周波数を調整する場合に、複数のコイルそれぞれの巻回線の長さを短くすることができ、巻回線の電気抵抗による電力損失や発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態のコイルの構造を示す平面図(i)である。
図3】第1実施形態のコイルの構造を示す平面図(ii)である。
図4】第1実施形態のコイルの構造を示す平面図(iii)である。
図5】第1実施形態のコイルの構造を示す平面図(iv)である。
図6図5のA-A’部分の断面図である。
図7】第1実施形態のコイルの構造による効果としての反射・伝送効率-周波数の関係を示す図である。
図8】第2実施形態のコイルの構造を示す平面図(i)である。
図9】第2実施形態のコイルの構造を示す平面図(ii)である。
図10】第2実施形態のコイルの構造を示す平面図(iii)である。
図11】第2実施形態のコイルの構造を示す平面図(iv)である。
図12】第2実施形態のコイルの構造を示す平面図(v)である。
図13】第3実施形態のコイルの構造を示す平面図である。
図14】第2実施形態及び第3実施形態それぞれのコイルの構造による効果としての反射・伝送効率-周波数の関係を示す図である。
図15】第4実施形態のコイルの構造を示す平面図(i)である。
図16】第4実施形態のコイルの構造を示す平面図(ii)である。
図17】第4実施形態のコイルの構造を示す平面図(iii)である。
図18】第4実施形態のコイルの構造による効果としての反射・伝送効率-周波数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、電気自動車に搭載されている充電池を充電するための電力を、当該充電池を備えた電気自動車に対して磁界共鳴方式により非接触で電送する電力伝送システムに対して、本発明を適用した場合の実施形態である。
【0028】
ここで、各実施形態の磁界共鳴方式による電力伝送システムは、電力を送る送電コイルと、当該送電コイルから離隔して向き合うように(即ち対向するように)配置され且つ送電コイルから送られた電力を受電する受電コイルと、を備える。そして上記送電コイルは、後述する送電ループコイルと、後述する送電オープンコイルと、が、同心に積層されて構成されている。また上記受電コイルは、後述する受電オープンコイルと、後述する受電ループコイルと、が、同心に積層されて構成されている。
【0029】
(I)第1実施形態
初めに、本発明に係る第1実施形態について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0030】
(i)第1実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について
第1実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について、図1を用いて説明する。なお図1は、第1実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、第1実施形態の電力伝送システムSは、受電部RV及び上記受電コイルRCを備えた受電装置Rと、送電部TR及び上記送電コイルTCを備えた送電装置Tと、により構成されている。このとき受電装置Rは上記電気自動車に搭載され、且つ当該電気自動車に搭載されている図示しない蓄電池に接続されている。一方送電装置Tは、当該電気自動車が移動又は停車する位置の地面に設置されている。そして、当該蓄電池を充電する場合、受電装置Rの受電コイルRCと送電装置Tの送電コイルTCとが対向するように電気自動車が運転又は停車される。なお、第1実施形態の電力伝送システムSによる上記蓄電池の充電に際しては、停車している電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その停車位置の下方の地面に設置された送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから電力を伝送するように構成することができる。またこの他、移動中の電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その電気自動車が移動している道路の一定距離の区間に設置された複数の送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから連続的に電力を伝送するように構成してもよい。このとき、送電部TRが本発明の「出力手段」の一例に相当し、受電部RVが本発明の「入力手段」の一例に相当する。
【0032】
一方上記送電コイルTCは、送電ループコイルTLと、送電オープンコイルTOと、を備えている。また上記受電コイルRCは、受電オープンコイルROと、受電ループコイルRLと、を備えている。このとき送電ループコイルTLには、送電すべき電力が送電部TRから入力される。そして送電オープンコイルTOは、送電ループコイルTLに対して同心に積層され且つその両端が開放されている。他方受電オープンコイルROは、送電オープンコイルTOに対向するように配置され且つその両端が開放されている。そして受電ループコイルRLは、受電オープンコイルROに対して同心に積層され、且つ磁界共鳴方式により送電コイルTCから受電した電力を受電部RVに出力する。このとき、送電コイルTC又は受電コイルRCが本発明の「コイル対」の一例に相当し、送電オープンコイルTO又は受電オープンコイルROが本発明の「第1コイル」の一例に相当し、送電ループコイルTL又は受電ループコイルRLが本発明の「第2コイル」の一例に相当する。
【0033】
以上の構成において、送電装置Tの送電部TRは、例えば電力伝送システムSが用いられる国における電波法等の法規等に対応しつつ、受電装置Rに伝送すべき電力を送電コイルTCに出力する。このとき上記法規等は、例えば人体への影響を考慮して漏洩磁界が予め決められた所定のレベル以下になるように規制している。また、全ての送電装置Tと上記受電装置Rとの間における相互接続利用が可能となるためには、結果的に、両者が予め決められた所定範囲の周波数を利用する必要があり、このため上記所定範囲の周波数又は周波数帯域は、上記法規等としてのISO(International Organization for Standardization)又はIEC(International Electrotechnical Commission)等の国際機関の推奨に従う必要がある。また、送電コイルTCと受電コイルRCとの間の所定の位置ずれも考慮した伝送効率の下限値も上記国際機関により規定されているため、高い電力伝送効率が要求される。
【0034】
一方、上記磁界共鳴方式により送電コイルTCからの電力を受電した受電装置Rの受電コイルRCは、当該受電した電力を受電部RVに出力する。これにより受電部RVは、当該電力に対応した出力(例えば85キロヘルツの高周波電力となる)を、例えば図示しない電力変換ユニットによりDC(直流)電流に変換し、電気自動車の蓄電池に出力する。これにより当該蓄電池には、必要量の電力が充電される。
【0035】
(ii)送電コイルTC(受電コイルRC)の構成について
次に、上述した第1実施形態の電力伝送システムSに用いられる、第1実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構成について、図2乃至図6を用いて説明する。なお、実施形態の送電コイルTCと受電コイルRCとは、基本的に同じ構成を備える。即ち、上記送電ループコイルTLの構成と上記受電ループコイルRLの構成とは基本的に同一である。また、上記送電オープンコイルTOの構成と上記受電オープンコイルROの構成とは基本的に同一である。更に、上記送電ループコイルTLと上記送電オープンコイルTOとの送電コイルTC内における位置関係と、上記受電ループコイルRLと上記受電オープンコイルROとの受電コイルRC内における位置関係と、は基本的に同一である。よって以下の説明では、送電コイルTCについて、その構造を説明する。また、図2乃至図5は実施形態の送電コイルTCの構造を示す平面図であり、図6は実施形態の送電コイルTCの構造を示す部分断面図である。なお図2乃至図5は、送電装置Tにおいて、送電部TR側から送電コイルTCを見た場合の平面図である。
【0036】
図2にその平面図を示すように、実施形態の送電コイルTCは、送電ループコイルTLと、図2において図示されない送電オープンコイルTOと、が、絶縁性のフィルムBF1(詳細は後述する)を介して図2の紙面方向に積層されて構成される。また送電オープンコイルTOは、後述する二つのコイルCL1及びコイルCL2が、それぞれに絶縁性のフィルムBF2(詳細は後述する)を介して図2の紙面方向に積層されて構成される。なお第1実施形態では、送電ループコイルTLと送電オープンコイルTOとの間の絶縁のためにフィルムBF1を用い、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁のためにフィルムBF2を用いているが、これらの他に、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料を用いることもできる。また、送電コイルTCとして発生した熱を効率良く放熱するため、例えばセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更に、送電ループコイルTL、コイルCL1及びコイルCL2をそれぞれ構成する後述の銅薄膜線の巻回の中心は、相互に同一又は略同一とされている。なお、コイルCL1又はコイルCL2を構成する銅薄膜線が本発明の「第1コイル巻回線」の一例に相当する。
【0037】
そして図2に示すように、送電ループコイルTLは、例えば銅薄膜線が、同じ巻回方向且つ送電コイルTCの径方向の一方(即ち、その外周側から内周側に向けた方向又はその内周側から外周側に向けた方向のいずれか一方)に二回転(2ターン)巻回されて構成されており、その両端部(図2に示す場合は右辺部の中央上部)が送電コイルTCの最外周部に引き出されて、送電部TRに接続される接続用端子O1及び接続用端子O2とされている。この、送電ループコイルTLを構成する銅薄膜線が、本発明の「第2コイル巻回線」の一例に相当する。また、送電ループコイルTLを構成する銅薄膜線が、図2に示す右辺部中央において相互に絶縁されつつ例えばジャンパー線を用いて交差されることで、上記同じ巻回方向の二回転が形成されている。更に、送電ループコイルTLを構成する上記銅薄膜線は、送電ループコイルTLの全周に渡って例えば同一幅及び同一厚さとされている。更にまた送電ループコイルTLでは、図2におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が曲線部により接続されている。ここで、送電ループコイルTLを構成する上記銅薄膜線における一巻回目の銅薄膜線と、二巻回目の銅薄膜線との間の距離wは、送電ループコイルTL自体の位置が積層方向においてコイルCL1及びコイルCL2に重なる位置となる範囲において、なるべく長いことが望ましい。
【0038】
次に、上記フィルムBF1を介して上記送電ループコイルTLの直下に積層されている、送電オープンコイルTOを構成するコイルCL1の構成について、図3を用いて説明する。なお図3は、当該コイルCL1のみを取り出して示す平面図である。また図3では、図面の明確化のため、コイルCL1を構成する銅薄膜線の巻回の一部の記載を省略している。
【0039】
図3に示すように、送電オープンコイルTOを構成するコイルCL1は、その最外周部が開放端T1とされている。そしてコイルCL1は、当該開放端T1から始まる反時計回りに、その最外周部から最内周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に十七回転半(17.5ターン)巻回されて構成されている。またその最内周部には、図3の紙面方向においてその直下に積層されているコイルCL2との間の電気的接続を構成するためのビアVが接続されている。なおコイルCL1を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL1の全周に渡って例えば同一厚さとされているが、その幅は、コイルCL1の内側になるに従って太くなるように形成されている。更にコイルCL1では、図3におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。そして、コイルCL1を構成する銅薄膜線の幅は、上記直線部では一定とされ、上記曲線部において、コイルCL1の内側になるに従って太くなるように形成されている。
【0040】
次に、上記フィルムBF2を介して上記コイルCL1の直下に積層されているコイルCL2の構成について、図4を用いて説明する。なお図4は、当該コイルCL2のみを取り出して示す平面図である。また図4では、図面の明確化のため、コイルCL2を構成する銅薄膜線の巻回の一部の記載を省略している。
【0041】
図4に示すように、上記コイルCL1と共に送電オープンコイルTOを構成するコイルCL2は、その最内周部に、上記コイルCL1との電気的接続を構成するための上記ビアVが接続されている。即ち、コイルCL1とコイルCL2との接続は直列接続とされている。そしてコイルCL2は、当該ビアVから始まる時計回りに(即ち、コイルCL1と反対の方向に)、その最内周部から最外周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に十七回転半(17.5ターン)巻回されて構成されている。またその最外周部が開放端T2とされている。なおコイルCL2を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL2の全周に渡って例えば同一厚さとされているが、その幅は、コイルCL2の外側になるに従って細くなるように形成されている。更にコイルCL2では、図4におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。そして、コイルCL2を構成する銅薄膜線の幅は、上記直線部では一定とされ、上記曲線部において、コイルCL2の外側になるに従って細くなるように形成されている。
【0042】
ここで、上記コイルCL1及び上記コイルCL2をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係としては、それぞれの巻回数が十七回転半で同じことから、上記反時計方向に巻回されているコイルCL1の銅薄膜線の位置と、上記時計方向に巻回されているコイルCL2の銅薄膜線の位置と、が、コイルCL1及びコイルCL2それぞれの巻回の中心から見て一致するように、それぞれの銅薄膜線が巻回されている。そして、それぞれの最内周部に接続されているビアVにより、コイルCL1とコイルCL2とが直列に接続されている。これにより、コイルCL1の最外周部から最内周部への巻回を当該最内周部で反対方向に切り返す(折り返す)ことで、コイルCL2が最内周部から最外周部へ巻回されていることになる。
【0043】
次に、上記送電ループコイルTL並びに上記送電オープンコイルTO(即ち上記コイルCL1及び上記コイルCL2)をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係について、図5を用いて説明する。なお図5は、送電ループコイルTLと、コイルCL1と、の重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTLを実線で、その直下にフィルムBF1(図5において図示を省略している)を介して積層されている送電オープンコイルTOのコイルCL1を破線で、それぞれ示している。なお上述したように、コイルCL1及びコイルCL2をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係は、図5においては全く同一となる。
【0044】
図5に破線で示すように、外周から内周に向けて巻回され且つその最内周部でビアVによりコイルCL2と接続されるコイルCL1では、その四分の一周ごとに、銅薄膜線の巻回におけるピッチ(即ち、各辺において隣り合う銅薄膜線の中心線の、巻回における径方向の距離。以下、同様。)の四分の一ずつその直線部の位置が内周側にずれるように、各曲線部が形成されて銅薄膜線が巻回されている。一方図5に実線で示すように、送電ループコイルTLを構成する銅薄膜線(図2に示すように二回転巻回される)は、図2に示す交差位置を除いて、コイルCL1の外縁付近及び内縁付近にそれぞれ沿って積層されており、接続用端子O1及び接続用端子O2がそれぞれ巻回の外側に突出する形状とされている。これらにより、送電ループコイルTLと送電オープンコイルTO(コイルCL1及びコイルCL2)とが積層されている送電コイルTCでは、図5に示すように、上下左右それぞれの辺では、送電ループコイルTLと送電オープンコイルTO(コイルCL1及びコイルCL2)を構成する銅薄膜線が重なるように積層されている。
【0045】
次に、上記送電ループコイルTLとコイルCL1及びコイルCL2との積層状態、及びコイルCL1とコイルCL2との接続状態について、図5に示すA-A’部分の断面図として、図6を用いて説明する。
【0046】
図6に示すように、図2乃至図5における左辺部では、コイルCL1とコイルCL2とがフィルムBF2を挟んで積層されており、それぞれがビアVにより電気的に接続されている。このビアVの位置で、コイルCL1の上記反時計方向の巻回が切り返されて(折り返されて)、コイルCL2の上記時計方向の巻回が形成されている。一方、コイルCL1及びコイルCL2からなる送電オープンコイルTOと送電ループコイルTLとは、フィルムBF1(図2参照)を挟んで積層されている。
【0047】
(iii)送電コイルTC及び受電コイルRCの製造方法について
次に、第1実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの製造方法について説明する。
【0048】
当該製造方法としては、基本的には従来と同様の、下記(a)-1乃至(a)-11の各工程を含む第1製造方法、又は下記(b)-1乃至(b)-12の各工程を含む第2製造方法等を用いることができる。
(a)第1製造方法
(a)-1:フィルムBF2の両面全体に銅薄膜を形成する。
(a)-2:上記(a)-1で形成された銅薄膜(両面)の上にそれぞれレジストを塗布する。
(a)-3:上記(a)-2で塗布したレジストを、それぞれの面についてコイルCL1及びコイルCL2の銅薄膜線にパターニングする。
(a)-4:上記(a)-3のパターニング後にエッチング処理を施し、コイルCL1及びコイルCL2としての銅薄膜線を形成する。
(a)-5:上記ビアVを形成して送電オープンコイルTOとする。
(a)-6:フィルムBF1の片面全体に銅薄膜を形成する。
(a)-7:上記(a)-6で形成された銅薄膜の上にレジストを塗布する。
(a)-8:上記(a)-7で塗布したレジストを送電ループコイルTLの銅薄膜線にパターニングする。
(a)-9:上記(a)-8のパターニング後にエッチング処理を施し、送電ループコイルTLとしての銅薄膜線を形成する。
(a)-10:上記(a)-5の送電オープンコイルTOと、上記(a)-9の送電ループコイルTLと、を貼り合わせて送電コイルTCを形成する。
(a)-11:接続用端子O1及び接続用端子O2と、送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)とを接続する。
(b)第2製造方法
(b)-1:フィルムBF2の両面全体に銅薄膜を形成する。
(b)-2:ビアVに相当する位置にレーザ等により貫通穴形成する。
(b)-3:貫通穴を含む全体に対して無電解銅めっき法および電解銅めっき法による銅めっき処理を施し、ビアVを形成する。
(b)-4:上記(b)-3で形成された銅めっきの片面にレジストを塗布する。
(b)-5:上記(b)-4で塗布したレジストをコイルCL1の銅薄膜線にパターニングする。
(b)-6:上記(b)-5のパターニング後にエッチング処理を施し、コイルCL1としての銅薄膜線を形成する。
(b)-7:フィルムBF1の片面全体に銅薄膜を形成する。
(b)-8:上記(b)-7の銅薄膜を形成した面の反対の面と上記(b)-6のコイルCL1面を、フィルムBF1を介して貼り合わせる(図6参照)。
(b)-9:上記(b)-8で貼り合わせたものの両面の銅薄膜の上にレジストを塗布する。
(b)-10:上記(b)-9で両面に塗布したレジストのそれぞれを、コイルCL2の銅薄膜線及び送電ループコイルTLの銅薄膜線にそれぞれパターニングする(図6参照)。
(b)-11:上記(b)-10のパターニング後にエッチング処理を施し、コイルCL2の銅薄膜線及び送電ループコイルTLの銅薄膜線をそれぞれ形成する。
(b)-12:接続用端子O1及び接続用端子O2と送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)とを接続する。
【0049】
(iv)第1実施形態の電力伝送システムの効果について
次に、第1実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCを含む第1実施形態の電力伝送システムSを用いて電力伝送を行った場合の効果について、本願の発明者による実験結果(シミュレーション結果)を踏まえて、図7を用いて説明する。なお以下の説明では、第1実施形態の電力伝送システムSを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果を、比較例の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果に対比させつつ、説明する。ここで上記比較例としては、一辺が100ミリメートルの正方形形状で一回転(1ターン)巻き構造のループコイルと、当該ループコイルの中心軸と同軸に配置され且つ当該ループコイルと同じ一辺100ミリメートルの正方形形状で筒状に十七回転半(17.5ターン)巻き構造の二つのコイルを含むオープンコイル(即ち、第1実施形態の送電オープンコイルTO又は受電オープンコイルROと同一構造のオープンコイル)と、からなる送電コイル及び受電コイルを含む電力伝送システムを用いた。
【0050】
図7に、反射率を示すSパラメータ(S11)と周波数との関係を◆マーク(第1実施形態)及び▲マーク(比較例)で示すと共に、伝送効率を示すSパラメータ(S21)と共振周波数との関係を■マーク(第1実施形態)及び●マーク(比較例)で示すように、第1実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCを含む第1実施形態の電力伝送システムSを用いた場合では、伝送効率(SパラメータS21)が高くなると共に反射率(SパラメータS11)が低くなる共振周波数が、比較例に比べて低減されていることが判る。
【0051】
以上説明したように、第1実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCを含む第1実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送によれば、送電オープンコイルTO(又は受電オープンコイルRO)に対して同心に積層される送電ループコイルTL(又は受電ループコイルRT)が、それを構成する銅薄膜線が、同心且つ同一巻回方向且つ送電コイルTC(又は受電コイルRC)における同一径方向に、一の層内で二回以上巻回されて構成されており、更に、送電オープンコイルTO(又は受電オープンコイルRO)を構成する銅薄膜線の両端部が、送電コイルTC(又は受電コイルRC)の最外周部で接続用端子O1及び接続用端子O2とされているので、送電コイルTC(又は受電コイルRC)全体としての共振周波数を低減することができる。
【0052】
また、送電オープンコイルTO(又は受電オープンコイルRO)、それぞれが同心に巻回されたコイルCL1及びコイルCL2がフィルムBF2を挟んで積層されて構成されているので、送電コイルTC(又は受電コイルRC)としての伝送効率及び反射率を向上させることができる。
【0053】
更に、コイルCL1の最内周部とコイルCL2の最内周部とがビアVにより接続されており、一方コイルCL1の最外周端部とコイルCL2の最外周端部がそれぞれ開放端T1及び開放端T2とされているので、送電コイルTC(又は受電コイルRC)としての共振周波数を低減させつつ、電力伝送における伝送効率を向上させることができる。
【0054】
更にまた、最外周に巻回された送電ループコイルTL(又は受電ループコイルRL)の銅薄膜線の送電コイルTC(又は受電コイルRC)の径方向における位置が、最外周に巻回された送電オープンコイルTO(又は受電オープンコイルRO)の銅薄膜線の当該径方向における位置に対応する位置とされ、最内周に巻回された送電ループコイルTL(又は受電ループコイルRL)の銅薄膜線の送電コイルTC(又は受電コイルRC)の径方向における位置が、最内周に巻回された送電オープンコイルTO(又は受電オープンコイルRO)の銅薄膜線の当該径方向における位置に対応する位置とされているので、結果的に、送電ループコイルTL(又は受電ループコイルRL)における最外周に巻回された銅薄膜線と、最内周に巻回された銅薄膜線と、が図2に示す距離wだけ離れることとなり、効果的に共振周波数を低減することができる。
【0055】
(II)第2実施形態
次に、本発明の他の実施形態である第2実施形態について、図8乃至図12を用いて説明する。
【0056】
以下に説明する第2実施形態の電力伝送システムは、上述した第1実施形態の電力伝送システムSに対して、第2実施形態の送電コイル及び受電コイルの構成のみが異なっており、その他の構成及びその製造方法は第1実施形態の電力伝送システムと同様である。よって以下の説明では、当該構成が異なる部分についてのみ説明し、その他の当該同様の構成及び製造方法については説明を省略する。また、第1実施形態の電力伝送システムSと同様に、第2実施形態の送電オープンコイルの構成と第2実施形態の受電オープンコイルの構成とは基本的に同一である。よって以下の説明では、第2実施形態の送電オープンコイルについて、その構造を説明する。更に、図8乃至図12は第2実施形態の送電オープンコイルの構造を示す平面図であり、第2実施形態の送電装置において、第2実施形態の送電部側から第2実施形態の送電コイルを見た場合の平面図である。このとき、図8乃至図12では、第1実施形態の電力伝送システムSと同様の構成部材については、同様の部材番号を付している。
【0057】
図8にその平面図を示すように、第2実施形態の送電コイルTC1は、送電ループコイルTL1と、図2において図示されない第2実施形態の送電オープンコイルと、が、第1実施形態の送電コイルTCと同様の絶縁性のフィルムBF1を介して図8の紙面方向に積層されて構成される。また第2実施形態の送電オープンコイルは、後述する二つのコイルCL11及びコイルCL12が、第1実施形態のフィルムBF2を介して図8の紙面方向に積層されて構成される。なお第2実施形態でも、フィルムBF1又はフィルムBF2の他に絶縁用として、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料やセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更に、第2実施形態の送電ループコイル並びにコイルCL11及びコイルCL12をそれぞれ構成する銅薄膜線の巻回の中心は、相互に同一又は略同一とされている。
【0058】
そして図8に示すように、送電ループコイルTL1は、例えば銅薄膜線が、同じ巻回方向且つ送電コイルTC1の径方向の一方に三回転(3ターン)巻回されて構成されており、その両端部(図8に示す場合は右辺部の中央上部)が送電コイルTC1の最外周部に引き出されて、送電部TRに接続される接続用端子O1及び接続用端子O2とされている。また、送電ループコイルTL1を構成する銅薄膜線が、図8に示す右辺部中央において相互に絶縁されつつ例えばジャンパー線を用いて交差されることで、上記同じ巻回方向の三回転が形成されている。更に、送電ループコイルTL1を構成する上記銅薄膜線は、送電ループコイルTL1の全周に渡って例えば同一幅及び同一厚さとされている。更にまた送電ループコイルTL1では、図8におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が曲線部により接続されている。ここで、送電ループコイルTL1を構成する上記銅薄膜線における各巻回の銅薄膜線間の距離は、送電ループコイルTL1自体の位置が積層方向においてコイルCL11及びコイルCL12に重なる位置となる範囲において、第1実施形態の送電ループコイルTLと同様に、なるべく長いことが望ましい。
【0059】
次に、上記フィルムBF1を介して上記送電ループコイルTL1の直下に積層されている、第2実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL11の構成について、図9を用いて説明する。なお図9は、当該コイルCL11のみを取り出して示す平面図である。
【0060】
図9に示すように、第2実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL11は、その最外周部が開放端T11とされている。そしてコイルCL1は、当該開放端T11から始まる反時計回りに、その最外周部から最内周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に十回転半(10.5ターン)巻回されて構成されている。またその最内周部には、図9の紙面方向においてその直下に積層されているコイルCL12との間の電気的接続を構成するためのビアVが接続されている。なおコイルCL1を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL1の全周に渡って例えば同一幅及び同一厚さとされている。更にコイルCL11では、図9におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。
【0061】
次に、上記フィルムBF2を介して上記コイルCL11の直下に積層されているコイルCL12の構成について、図10を用いて説明する。なお図10は、当該コイルCL12のみを取り出して示す平面図である。
【0062】
図10に示すように、上記コイルCL11と共に第2実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL12は、その最内周部に、上記コイルCL11との電気的接続を構成するための上記ビアVが接続されている。即ち、コイルCL11とコイルCL12との接続は直列接続とされている。そしてコイルCL12は、当該ビアVから始まる時計回りに(即ち、コイルCL11と反対の方向に)、その最内周部から最外周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に五回転半(5.5ターン)巻回されて構成されている。またその最外周部が開放端T12とされている。なおコイルCL12を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL2の全周に渡って例えば同一幅及び同一厚さとされている。更にコイルCL12では、図10におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。
【0063】
ここで、上記コイルCL11及び上記コイルCL12をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係としては、それらの巻回数が十回転半と五回転半で異なっているが、上記反時計方向に巻回されているコイルCL11の銅薄膜線の位置と、上記時計方向に巻回されているコイルCL12の銅薄膜線の位置と、が、コイルCL11及びコイルCL12それぞれの巻回の中心から見て一致するように、それぞれの銅薄膜線が巻回されている。そして、それぞれの最内周部に接続されているビアVにより、コイルCL11とコイルCL12とが直列に接続されている。これにより、コイルCL11の最外周部から最内周部への巻回を当該最内周部で反対方向に切り返す(折り返す)ことで、コイルCL12が最内周部から最外周部へ巻回されていることになる。このため結果として、図9及び図10に示すように、コイルCL11を構成する銅薄膜線の幅は、コイルCL12を構成する銅薄膜線の幅よりも狭くなっている。
【0064】
次に、上記送電ループコイルTL1並びに第2実施形態の送電オープンコイル(即ち上記コイルCL11及び上記コイルCL12)をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係について、図11及び図12を用いて説明する。なお図11は、送電ループコイルTL1と、コイルCL11と、の重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL1を実線で、その直下にフィルムBF1(図11において図示を省略している)を介して積層されているコイルCL11を破線で、それぞれ示している。また図12は、第2実施形態の送電オープンコイルのコイルCL11と、コイルCL12と、の重なり状況を示す平面図であり、コイルCL11を実線で、その直下にフィルムBF2(図12において図示を省略している)を介して積層されているコイルCL12を破線で、それぞれ示している。
【0065】
図11に破線で示すように、外周から内周に向けて巻回され且つその最内周部でビアVによりコイルCL12と接続されるコイルCL11では、その四分の一周ごとに、銅薄膜線の巻回におけるピッチの四分の一ずつその直線部の位置が内周側にずれるように、各曲線部が形成されて銅薄膜線が巻回されている。一方図11に実線で示すように、送電ループコイルTL1はコイルCL11の幅に沿って積層されており、接続用端子O1及び接続用端子O2がそれぞれ巻回の外側に突出する形状とされている。
【0066】
次に図12に破線で示すように、内周から外周に向けて巻回され且つその最内周部でビアVによりコイルCL11と接続されるコイルCL12でも、その四分の一周ごとに、銅薄膜線の巻回におけるピッチの四分の一ずつその直線部の位置が内周側にずれるように、各曲線部が形成されて銅薄膜線が巻回されている。一方図12に実線で示すように、上記コイルCL11はコイルCL12の外縁に沿って積層されており、ビアVによりそれらが直列に接続されている。
【0067】
以上の図11及び図12に示したとおり、送電ループコイルTL1と第2実施形態の送電オープンコイルのコイルCL11及びコイルCL12とが積層されている送電コイルTC1では、上下左右それぞれの辺では、送電ループコイルTL1とコイルCL11及びコイルCL12を構成する各銅薄膜線がそれぞれ略重なるように積層されている。
【0068】
以上説明したように、第2実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1を含む第2実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、第1実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送の効果に加えて、送電ループコイルTL1を構成する銅薄膜線の巻回数が三回であるので、効果的に共振周波数を低減させつつ、伝送効率を向上させることができる。
【0069】
(III)第3実施形態
次に、本発明の更に他の実施形態である第3実施形態について、図13及び図14を用いて説明する。
【0070】
以下に説明する第3実施形態の電力伝送システムは、上述した第2実施形態の電力伝送システムに対して、第3実施形態の送電コイル(及び受電コイル)における送電ループコイル(及び受電ループコイル)の構成のみが異なっており、第3実施形態の送電オープンコイル(及び受電オープンコイル)を含むその他の構成及びその製造方法は、第2実施形態の電力伝送システムと同様である。よって以下の説明では、当該構成が異なる部分についてのみ説明し、その他の当該同様の構成及び製造方法については説明を省略する。また、第1実施形態の電力伝送システムSと同様に、第3実施形態の送電ループコイルの構成と第3実施形態の受電ループコイルの構成とは基本的に同一である。よって以下の説明では、第3実施形態の送電ループコイルについて、その構造を説明する。更に、図13は第3実施形態の送電ループコイルの構造を示す平面図であり、第3実施形態の送電装置において、第3実施形態の送電部側から第3実施形態の送電コイルを見た場合の平面図である。このとき、図13では、第1実施形態の電力伝送システムSと同様の構成部材については、同様の部材番号を付している。
【0071】
図13にその平面図を示すように、第3実施形態の送電コイルTC2は、送電ループコイルTL2と、図13において図示されない第3実施形態の送電オープンコイルと、が、第1実施形態の送電コイルTCと同様の絶縁性のフィルムBF1を介して図13の紙面方向に積層されて構成される。なお第3実施形態でも、フィルムの他に絶縁用として、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料やセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更に、送電ループコイルTL2並びに第3実施形態の送電オープンコイルのコイルCL11及びコイルCL12をそれぞれ構成する銅薄膜線の巻回の中心は、相互に同一又は略同一とされている。
【0072】
そして図13に示すように、送電ループコイルTL2は、例えば銅薄膜線が、同じ巻回方向且つ送電コイルTC2の径方向の一方に五回転(5ターン)巻回されて構成されており、その両端部(図13に示す場合は右辺部の中央上部)が送電コイルTC2の最外周部に引き出されて、送電部TRに接続される接続用端子O1及び接続用端子O2とされている。また、送電ループコイルTL2を構成する銅薄膜線が、図13に示す右辺部中央において相互に絶縁されつつ例えばジャンパー線を用いて交差されることで、上記同じ巻回方向の五回転が形成されている。更に、送電ループコイルTL2を構成する上記銅薄膜線は、送電ループコイルTL2の全周に渡って例えば同一幅及び同一厚さとされている。更にまた送電ループコイルTL2では、図13におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が曲線部により接続されている。ここで、送電ループコイルTL2を構成する上記銅薄膜線における各巻回の銅薄膜線間の距離は、送電ループコイルTL2自体の位置が積層方向において第3実施形態のコイルCL11及びコイルCL12に重なる位置となる範囲において、第1実施形態の送電ループコイルTLと同様に、なるべく長いことが望ましい。
【0073】
以上説明したように、第3実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2を含む第3実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、第1実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送の効果に加えて、送電ループコイルTL2を構成する銅薄膜線の巻回数が五回であるので、更に効果的に共振周波数を低減させつつ、伝送効率を向上させることができる。
【0074】
(IV)第2実施形態の電力伝送システム及び第3実施形態の電力伝送システムの効果について
次に、第2実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1を含む第2実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果、及び、第3実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2を含む第3実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果について、本願の発明者による実験結果(シミュレーション結果)を踏まえて、それぞれ図14を用いて説明する。なお以下の説明では、第2実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果、及び第3実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果を、それぞれ、比較例の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果に対比させつつ、説明する。ここで上記比較例としては、一辺が100ミリメートルの正方形形状で一回転(1ターン)巻き構造のループコイルと、当該ループコイルの中心軸と同軸に配置され且つ当該ループコイルと同じ一辺100ミリメートルの正方形形状を有し、且つ第2実施形態又は第3実施形態の送電オープンコイルと同様の構成のオープンコイルと、からなる送電コイル及び受電コイルを含む電力伝送システムを用いた。
【0075】
図14に、反射率を示すSパラメータ(S11)と周波数との関係を▲マーク(第2実施形態)及び★マーク(第3実施形態)並びに◆マーク(比較例)で示すと共に、伝送効率を示すSパラメータ(S21)と共振周波数との関係を▼マーク(第2実施形態)及び●マーク(第3実施形態)並びに■マーク(比較例)で示すように、第2実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1を含む第2実施形態の電力伝送システムを用いた場合、及び第3実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2を含む第3実施形態の電力伝送システムを用いた場合共に、伝送効率(SパラメータS21)が比較例よりも高くなると共に反射率(SパラメータS11)が比較例より低くなり、全体的に比較例に比して伝送効率として向上していることが判る。
【0076】
(V)第4実施形態
最後に、本発明の更に他の実施形態である第4実施形態について、図15乃至図18を用いて説明する。
【0077】
(i)第4実施形態の送電コイル(受電コイル)の構成について
以下に説明する第4実施形態の電力伝送システムは、上述した第1実施形態の電力伝送システム又は第2実施形態の電力伝送システムに対して、第4実施形態の送電コイル(及び受電コイル)における送電オープンコイル(及び受電オープンコイル)の構成のみが異なっており、第4実施形態の送電ループコイル(及び受電ループコイル)を含むその他の構成及びその製造方法は、第1実施形態の電力伝送システム又は第2実施形態の電力伝送システムと同様である。よって以下の説明では、当該構成が異なる部分についてのみ説明し、その他の当該同様の構成及び製造方法については説明を省略する。また、第1実施形態の電力伝送システムS又は第2実施形態の電力伝送システムと同様に、第4実施形態の送電オープンコイルの構成と第4実施形態の受電オープンコイルの構成とは基本的に同一である。よって以下の説明では、第4実施形態の送電オープンコイルについて、その構造を説明する。更に、図15乃至図17は第4実施形態の送電オープンコイルの構造を示す平面図であり、第4実施形態の送電装置において、第4実施形態の送電部側から第4実施形態の送電コイルを見た場合の平面図である。このとき、図15乃至図17では、第1実施形態の電力伝送システムS又は第2実施形態の電力伝送システムと同様の構成部材については、同様の部材番号を付している。
【0078】
初めに、第1実施形態の電力伝送システムS又は第2実施形態の電力伝送システムと同様のフィルムBF1を介して第4実施形態の送電ループコイルの直下に積層されている、第4実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL21の構造について、図15を用いて説明する。なお図15は、当該コイルCL21のみを取り出して示す平面図である。
【0079】
図15に示すように、第4実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL21は、その最外周部及び最内周部が、それぞれに開放端T21-1及び開放端T21-2とされている。そしてコイルCL21は、開放端T21-1から始まる反時計回りに、その最外周部から最内周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に約十回転半(約10.5ターン)巻回されて構成されており、その最内周部が上記開放端T21-2とされている。即ち、第4実施形態の送電オープンコイルでは、上記コイルCL21と、当該コイルCL21と共に第4実施形態の送電オープンコイルを構成する後述のコイルCL22と、が、相互に絶縁されており、第1実施形態乃至第3実施形態のビアVは、第4実施形態の送電オープンコイルには存在しない。一方コイルCL21を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL21の全周に渡って例えば同一厚さとされているが、その幅は、第1実施形態のコイルCL1と同様に、コイルCL21の内側になるに従って太くなるように形成されている。更にコイルCL21では、図15におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。そして、コイルCL21を構成する銅薄膜線の幅は、上記直線部では一定とされ、上記曲線部において、コイルCL21の内側になるに従って太くなるように形成されている。
【0080】
次に、第1実施形態の電力伝送システムS又は第2実施形態の電力伝送システムと同様のフィルムBF2を介して上記コイルCL21の直下に積層されているコイルCL22の構成について、図16を用いて説明する。なお図16は、当該コイルCL22のみを取り出して示す平面図である。
【0081】
図16に示すように、上記コイルCL21と共に第4実施形態の送電オープンコイルを構成するコイルCL22は、その最内周部及び最外周部が、それぞれに開放端T22-2及び開放端T22-1とされている。そしてコイルCL22は、開放端T22-2から始まる時計回りに(即ち、コイルCL21と反対の方向に)、その最内周部から最外周部に向けて、例えば銅薄膜線が渦巻き状に約二回転半(約2.5ターン)巻回されて構成されており、その最外周部が上記開放端T22-1とされている。またコイルCL22を構成する上記銅薄膜線は、コイルCL22の全周に渡って例えば同一厚さとされているが、その幅は、第1実施形態のコイルCL2と同様に、コイルCL22の外側になるに従って細くなるように形成されている。更にコイルCL22では、図16におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに、互いに平行な直線部が設けられており、各直線部が、略同心円弧状の曲線部によりそれぞれ接続されている。そして、コイルCL22を構成する銅薄膜線の幅は、上記直線部では一定とされ、上記曲線部において、コイルCL22の外側になるに従って細くなるように形成されている。
【0082】
他方、上記コイルCL21及び上記コイルCL22をそれぞれ構成する銅薄膜線同士の位置関係としては、当該コイルCL21の巻回の中心の位置と、コイルCL22の巻回の中心の位置と、が一致又は略一致するように、当該コイルCL21とコイルCL22とが積層されている。また、コイルCL21とコイルCL22とでは、それらの巻回数が約十回転半と約二回転半で異なっているが、コイルCL21の銅薄膜線部分の当該コイルCL21の径方向の位置(範囲)と、コイルCL22の銅薄膜線部分の当該コイルCL22の径方向の位置(範囲)と、が、コイルCL21及びコイルCL22それぞれの巻回の中心から見て一致又は略一致するように、それぞれの銅薄膜線が巻回されている。
【0083】
次に、第4実施形態の送電オープンコイル(即ち上記コイルCL21及び上記コイルCL22)を構成する銅薄膜線同士の位置関係について、図17を用いて説明する。なお図17は、第4実施形態の送電オープンコイルのコイルCL21と、コイルCL22と、の重なり状況を示す平面図であり、コイルCL21を実線で、その直下にフィルムBF2(図17において図示を省略している)を介して積層されているコイルCL22を破線で、それぞれ示している。
【0084】
図17に実線で示すように、外周から内周に向けて巻回され且つその両端部が開放端T21-1及び開放端21-2とされているコイルCL21では、その四分の一周ごとに、銅薄膜線の巻回におけるピッチの四分の一ずつその直線部の位置が内周側にずれるように、各曲線部が形成されて銅薄膜線が巻回されている。また図17に破線で示すように、内周から外周に向けて巻回され且つその両端部が開放端T22-2及び開放端T22-1とされているコイルCL22でも、その四分の一周ごとに、銅薄膜線の巻回におけるピッチの四分の一ずつその直線部の位置が外周側にずれるように、各曲線部が形成されて銅薄膜線が巻回されている。
【0085】
以上の図17に示した通り、第4実施形態の送電オープンコイルのコイルCL21及びコイルCL22が積層されている第4実施形態の送電コイルでは、上下左右それぞれの辺では、コイルCL21及びコイルCL22を構成する各銅薄膜線がそれぞれ略重なるように積層されている。
【0086】
(ii)第4実施形態の電力伝送システムの効果について
次に、上記第4実施形態の送電コイルを備える第4実施形態の送電コイルと、当該第4実施形態の送電コイルと同様の構成を備える第4実施形態の受電コイルと、を含む第4実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果について、本願の発明者による実験結果(シミュレーション結果)を踏まえて、図18を用いて説明する。なお以下の説明では、第4実施形態の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果を、比較例の電力伝送システムを用いて電力伝送を行った場合の効果のシミュレーション結果に対比させつつ、説明する。
【0087】
ここで以下の図18を用いた説明では、第4実施形態の送電オープンコイル(図15乃至図17参照)と第1実施形態の送電ループコイルTLとが同心に積層された送電コイルと、第4実施形態の送電オープンコイルと同様の構成の受電オープンコイルと当該送電ループコイルTLと同様の構成の受電ループコイルとが同心に積層された受電コイルと、を用いて電力伝送を行った場合の実験結果を、第1実施例として説明する。また、第4実施形態の送電オープンコイルと第2実施形態の送電ループコイルTL1とが同心に積層された送電コイルと、第4実施形態の送電オープンコイルと同様の構成の受電オープンコイルと当該送電ループコイルTL1と同様の構成の受電ループコイルとが同心に積層された受電コイルと、を用いて電力伝送を行った場合の実験結果を、第2実施例として説明する。更に上記比較例としては、一辺が150ミリメートルの正方形形状で一回転(1ターン)巻き構造のループコイルと、当該ループコイルの中心軸と同軸に配置され且つ当該ループコイルと同じ一辺150ミリメートルの正方形形状を有し更に第4実施形態の送電オープンコイルと同様の構成のオープンコイルと、からなる送電コイル及び受電コイルを含む電力伝送システムを用いた。
【0088】
図18に、反射率を示すSパラメータ(S11)と共振周波数との関係を◆マーク(第1実施例)及び★マーク(第2実施例)並びに▲マーク(比較例)でそれぞれ示すと共に、伝送効率を示すSパラメータ(S21)と共振周波数との関係を■マーク(第1実施例)及び●マーク(第2実施例)並びに▼マーク(比較例)でそれぞれ示すように、第4実施形態の送電コイル及び受電コイルを含む第4実施形態の電力伝送システムを用いた場合は、伝送効率(SパラメータS21)が比較例よりも高くなると共に反射率(SパラメータS11)が比較例より概ね低くなり、全体的に比較例に比して伝送効率として向上していることが判る。これに加えて、上記第4実施形態の電力伝送システムを用いた場合は、共振周波数としても低周波数化が実現されており、これにより、第4実施形態の電力伝送システムとしての共振周波数を調整する場合に、コイルCL21及びコイルCL22それぞれの銅薄膜線の長さを短くすることができ、当該銅薄膜線の電気抵抗による電力損失や発熱を抑制することができる。
【0089】
以上説明したように、第4実施形態の送電コイル及び受電コイルを含む第4実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、第1実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送の効果(第1実施形態のコイルCL1及びコイルCL2それぞれの最内周部が接続されると共に、コイルCL1及びコイルCL2それぞれの最外周端部が開放端T1及び開放端T2とされていることによる共振周波数の低減化と伝送効率の向上との両立の効果を除く)に加えて、送電オープンコイル(又は受電オープンコイル)を構成するコイルCL21及びコイルCL22それぞれの両端部が開放端T21-1、開放端T21-2、開放端T22-1及び開放端T22-2とされているので、効果的に共振周波数を低減させつつ、伝送効率を向上させることができる。
【0090】
なお、上記第2実施形態の電力伝送システムでは銅薄膜線が三回転巻回されて送電ループコイルTL1が構成されており、また上記第3実施形態の電力伝送システムでは銅薄膜線が五回転巻回されて送電ループコイルTL2が構成されていたが、これ以外に、銅薄膜線が一回転より多く、五回転以下に巻回されて送電ループコイルが構成されている場合にも、上記第2実施形態の電力伝送システム乃至上記第4実施形態の電力伝送システムと同様の効果を奏し得ることが本発明の発明者により確認されている(図14及び図18参照)。
【0091】
また上述した各実施形態では、送電オープンコイルを構成する各コイルについて、それぞれの最外周部の開放端が巻回における同じ位置となり、それぞれの最内周部も巻回における同じ位置となるように構成したが、これ以外に、開放端の位置並びに最内周部の位置のいずれか又は双方が異なる位置に形成されていてもよい。
【0092】
更に、上述した各実施形態における送電オープンコイル又は受電オープンコイルそれぞれを構成する各コイルが形成されている層を入れ換えても(即ち、送電ループコイル又は受電ループコイルから見た当該各コイルの位置(順番)を入れ換えても)、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
更にまた、上述した各実施形態において、送電ループコイル又は受電ループコイル、或いは、開放端とされている送電オープンコイル又は受電オープンコイルの端部に対して、直列又は並列にコンデンサを更に接続して、送電ループコイル又は受電ループコイル、或いは、送電オープンコイル又は受電オープンコイルとしての寄生容量を調整することで、共振周波数の更なる低周波数化を図るように構成してもよい。このとき、送電オープンコイル又は受電オープンコイルとのいずれかの開放端に対して直列にコンデンサを接続する場合は、当該開放端のいずれかに接続されていないコンデンサの端子を開放端とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上それぞれ説明したように、本発明は非接触の電力伝送の分野に利用することが可能であり、特に電気自動車に搭載された蓄電池を充電するための電力伝送の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0095】
S 電力伝送システム
R 受電装置
T 送電装置
V ビア
RV 受電部
RC、RC1、RC2 受電コイル
TR 送電部
TC、TC1、TC2 送電コイル
TL、TL1、TL2 送電ループコイル
TO 送電オープンコイル
RO 受電オープンコイル
RL 受電ループコイル
O1、O2 接続用端子
BF1、BF2 フィルム
CL1、CL2、CL11、CL12、CL21、CL22 コイル
T1、T2、T11、T12、T21-1、T21-2、T22-1、T22-2 開放端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18