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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221220BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221220BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B15/085 Z
B32B27/28 102
B32B27/20 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018133132
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011390
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】永田 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】増田 勇作
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030313(JP,A)
【文献】特開2004-050605(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088104(WO,A1)
【文献】特開2013-028061(JP,A)
【文献】特開2005-247409(JP,A)
【文献】特開2017-222151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331638(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103171200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から、基材フィルム、金属蒸着フィルム、シーラントフィルムを少なくともこの順
に押出樹脂層を介して積層してなる積層体であって、
前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面側には、アンカーコート剤層が設けられてなり、
前記シーラントフィルムの酸素透過度が、0.8cc/m・day・atm以下であり、
前記アンカーコート剤層と前記シーラントフィルムとの積層体の酸素透過度が、1.0cc/m・day・atm以下であること
を特徴とする積層体。
【請求項2】
前記シーラントフィルム同士を熱融着した際のシール強度が、50N/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記シーラントフィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体の表裏両面に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が積層された共押出フィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記アンカーコート剤層が、無機層状鉱物を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性と紫外線遮蔽性を有する積層包装材料を用いた、厚みと重みのある物を梱包、輸送した際に、ピンホールの発生し難い包装袋用積層体に関し、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素や紫外線の侵入により品質が容易に劣化するような内容物の包装に利用する包装袋に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用薬液等の充填容器として従来使用されていたガラス壜は、重く、衝撃による破損の危険性があるほか、嵩張るため、輸送や保管に不便である等の不具合があり、近年では、ガラス壜に代えて、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック素材からなる軟質の袋ないし袋状の容器が多く用いられている。
【0003】
このような容器は、ハンドリング(取扱い)性の良さや、容器の軽量化、ゴミの容積低減などの観点から、例えば特許文献1のような柔軟なプラスチック製の一次容器に充填されている場合が多い。
【0004】
このような容器に充填されている内容液の中でも、特にアミノ酸液や糖、電解質液などの薬液は、酸素によって著しく変質し、ビタミンは近紫外線によって容易に劣化してしまうものも多い。
【0005】
他方で、これらの薬液を直接体内に注入することもあることから、これらの薬液と直接接触する袋状容器は、容器自体からの成分の溶出で薬液に悪影響を与えることの無いように、無添加のプラスチックを使用した容器を用いることが多い。
【0006】
しかしながら、無添加のプラスチックを使用した容器では、先に示したような薬液の変質や劣化を防止できるような高度な酸素バリア性や紫外線遮蔽性を保証することは困難である。
【0007】
そこで、近年では薬液を充填密封した1次容器をバリア性の高い外装袋で2次包装することが行われている。
【0008】
上述のような酸素バリア性と紫外線遮蔽性を有するバリア層としては、例えば金属箔などを例示することができるが、金属箔をプラスチックフィルムとラミネート加工した場合には、バリア効果は優れるもののポリ袋タイプに比べて袋が硬くなることは避けられず、用途によっては取り扱いに難点があり、また価格的にも高価なものになっている。
【0009】
これに対して、金属蒸着フィルムを用いる考え方もあるが、一般の金属蒸着フィルムは、加工工程上で、ロールとの接触などにより金属蒸着膜が傷付き易いこともあり、比較的傷の発生し難いドライラミネート法が用いられる場合が多い。
【0010】
しかし、ドライラミネート法を用いる場合には、接着剤層の膜厚も薄く、搬送中の衝撃などによるピンホールの発生を抑制するために、補強層を要する場合が多い。
【0011】
中には、特許文献2のように、ナイロン層/エチレン-ビニルアルコール共重合体層/ナイロン層からなる共押共延伸フィルムであるバリア層と金属蒸着フィルムとを、予めドライラミネートして、アルミ層を保護した後に、この予めドライラミネートしたフィルムに対して最外層と最内層とを押出樹脂を介してラミネート加工する、所謂サンドイッチラ
ミネートする方法なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平10-314272号公報
【文献】特開2004-050605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような状況に鑑み、金属蒸着フィルムを酸素バリア層および紫外線遮蔽層として用いながら、追加的な補強層を用いることなく、安価に薬液用の外装袋を提供できる積層体を作製しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、外側から、基材フィルム、金属蒸着フィルム、シーラントフィルムを少なくともこの順に押出樹脂層を介して積層してなる積層体であって、
前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面側には、アンカーコート剤層が設けられてなり、前記シーラントフィルムの酸素透過度が、0.8cc/m ・day・atm以下であり、
前記アンカーコート剤層と前記シーラントフィルムとの積層体の酸素透過度が、1.0cc/m ・day・atm以下であることを特徴とする積層体である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記シーラントフィルム同士を熱融着した際のシール強度が、50N/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記シーラントフィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体の表裏両面に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が積層された共押出フィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記アンカーコート剤層が、無機層状鉱物を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属蒸着フィルムをバリア層ならびに紫外線遮蔽層として用いながら、追加的な補強層を必要とせず、薬液用の外装袋として使用可能な押出ラミネート積層体の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の積層体の構成例を示す断面図である。
図2】金属蒸着フィルムとアンカーコート剤層の例を示す断面図である。
図3】シーラントフィルムの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。
【0021】
なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の積層体の構成例を示す断面図である。
【0023】
図1は、基材フィルム(11)、金属蒸着面に酸素バリア性を有するアンカーコート剤層(13)が設けられた金属蒸着フィルム(14)、酸素バリア性を有するシーラントフィルム(15)の各層が、押出樹脂層(12)を介してラミネートされている構成例が示されている。
【0024】
図1では、酸素バリア性を有するシーラントフィルム(15)が、単一の層として示されているが、実際には後述する多層の共押出フィルムによって形成されている。
【0025】
ここで、基材フィルム(11)は、従来公知のフィルムを何れも使用することができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、6-ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどが挙げられるが、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、特に限定されるものではない。特に延伸されたフィルムなどが好ましく、コスト面や取扱いの容易性などを考慮すると、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムなどを好適に用いることができる。
【0026】
基材フィルムの厚みとしては、加工性を考慮すると、10~50μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
また、基材フィルム(11)には、必要に応じて適宜印刷層などを設けることができる。印刷層としては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など従来公知のバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤、界面活性剤などが任意に添加されてなるインキなどを用いて構成することができる。
【0028】
印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷など従来公知の手法を任意に用いることができる。
【0029】
また、基材フィルム(11)の表面には、コロナ処理やオゾン処理といった易接着処理が施されていてもよい。
【0030】
金属蒸着フィルム(14)は、図2に示すように、蒸着フィルム基材(141)上に、金属蒸着膜(142)を設けたもので、少なくとも金属蒸着膜(142)上には、アンカーコート剤層(13)が積層されている。
【0031】
また、蒸着フィルム基材(141)の金属蒸着膜(142)が設けられていない面側には、酸素バリア性を有するアンカーコート剤層(13)や、酸素バリア性を特に有しない接着層などを別途設けていても良い。
【0032】
蒸着フィルム基材(141)は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロプレンなどのポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムなどを用いることができる。
【0033】
中でも、機械的強度や取扱いの容易性などを考慮すると、延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好適に用いることができる。
【0034】
蒸着フィルム基材(141)の厚さは、3~200μm程度とすることができるが、よ
り好ましくは、6~50μmである。
【0035】
金属蒸着膜(142)は、酸素バリア性の付与と紫外線の遮蔽を目的として設けられ、金属としては、従来公知の材料をいずれも用いることができるが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケルなどを例示することができるが、アルミニウムを好適に用いることができる。
【0036】
金属蒸着膜(142)を有する金属蒸着フィルム(14)としての酸素バリア性は、JIS K7126による酸素透過度が、1.0cc/m・day・atm(温度22℃、湿度65%RH条件下)以下であることが望ましい。
【0037】
また、金属蒸着フィルム(14)としての紫外線遮蔽性としては、日本電色工業(株)製 SZ-Σ80による光透過率が、0.1%以下であることが望ましい。
【0038】
上述のような金属蒸着膜(142)の膜厚としては、5~300nm程度の範囲とすることができるが、より好ましくは、10~100nmの範囲である。
【0039】
金属蒸着膜(142)を形成する方法としては、従来公知の薄膜形成法であればいずれを用いても良く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法などを例示することができる。
【0040】
金属蒸着膜(142)の形成に先立って、蒸着フィルム基材(141)の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、イオンボンバード処理などの表面処理が施されても何ら問題ない。
【0041】
上述のような金属蒸着フィルム(14)を酸素バリア層として用いようとする場合、金属蒸着フィルムに対する後加工工程において、金属蒸着フィルム(14)の搬送経路中に、金属蒸着面が、装置内のロールやコーティング用の版、あるいは巻取り状態の金属蒸着フィルム(14)を巻き出す際の裏面の蒸着フィルム基材(141)などとの、擦れなどが生じることによって、金属蒸着膜(142)の部分的欠落が発生し、本来金属蒸着フィルム(14)の有する酸素バリア性が、損なわれる場合があった。
【0042】
このような問題に対し、本発明者らは、上述のような金属蒸着膜(142)の部分的欠落が発生した場合であっても、低下した酸素バリア性を補填することが可能な層構成とすることで、追加的な補強層を用いることなく薬液用の外装袋として使用可能な積層体とする手法を見出した。
【0043】
即ち、金属蒸着フィルム(14)の金属蒸着膜(142)側に、酸素バリア性を有するアンカーコート剤層(13)を設けるとともに、シーラントフィルム(15)として、酸素バリア性を有するフィルムを用いるというものである。
【0044】
このようなアンカーコート剤層(13)は、主剤として、例えば、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、イミン系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂またはアルキルチタネート等を用いることができ、これらは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
またアンカーコート剤層(13)には、用いる樹脂に応じて、硬化剤や触媒、安定剤、開始剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0046】
アンカーコート剤層(13)に酸素バリア性を付与する手法としては、従来公知の手法をいずれも用いることができるが、例えば、無機層状鉱物等を添加する方法などを例示することができる。
【0047】
無機層状鉱物とは、極薄の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物のことであり、無機層状鉱物としては、水中で膨潤・へき開するものが好ましく、これらの中でも、特に水への膨潤性を有する性質を有する粘土化合物が好ましく用いられるが、この粘土化合物は、天然のものでも良いし、合成されたものでも良い。
【0048】
無機層状鉱物の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物などの含水ケイ酸塩、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディカイト、ナクライト、アンチゴライト、クリソタイルなどのカオリナイト-蛇紋石族粘土鉱物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライトなどのバーミキュライト族粘土鉱物、白雲母、金雲母、シデロフィライトなどの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど雲母またはマイカ族粘土鉱物などが挙げられる。
【0049】
これらの無機層状鉱物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上述のような無機層状鉱物等の添加により、酸素バリア性を付与したアンカーコート剤層(13)の厚さとしては、乾燥後の塗布量として3.0~5.0g/m程度であることが望ましい。
【0051】
乾燥後の塗布量が3.0g/m未満の場合には、金属蒸着フィルムの低下した酸素バリア性を補うのに不十分な場合があり、また5.0g/mを超える場合には、酸素バリア効果に比べて、塗布量過剰となりコスト的にも不利となる。
【0052】
アンカーコート剤層(13)の塗布性、接着性を改良するために、アンカーコート剤層形成に先立って、金属蒸着フィルム(14)表面に、コロナ処理などが施されてあっても良い。
【0053】
このようなアンカーコート剤層(13)は、従来公知のコーティング法を用いて設けることができ、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法などを例示することができるが、中でもグラビアコート法を好適に用いることができる。
【0054】
図3は、酸素バリア性を有するシーラントフィルム(15)の構成例を示す断面図である。
【0055】
シーラントフィルム(15)は、ヒートシールが可能で、酸素バリア性を有するものであれば、任意のフィルムを用いることができるが、図3に示すように、酸素バリア性樹脂層(151)の両面側をシーラント材層(152)で挟むサンドイッチ状の積層構造を有する共押出フィルムを好適に用いることができる。
【0056】
酸素バリア性樹脂層(151)は、従来公知の酸素バリア性を有する樹脂であれば、いずれも用いることができ、例えば、6-ナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド樹脂や、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などを例示することができる。
【0057】
このような酸素バリア性樹脂の中でも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を好適に用いることができ、厚さは1~10μm程度とすることができる。
【0058】
また、シーラント材層(152)は、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂などを例として、挙げることができる。
【0059】
中でも、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を好適に用いることができ、厚さは10~30μm程度とすることができる。
【0060】
上述のようなシーラントフィルム(15)は、JIS K7126による酸素透過度が、0.8cc/m・day・atm(温度22℃、湿度65%RH条件下)以下であり、かつシーラントフィルム同士を熱融着した際のシール強度が、50N/15mm以上であることが望ましい。
【0061】
またシーラントフィルム(15)において、酸素バリア性樹脂層(151)とシーラント材層(152)との間には、接着剤層などを設けていても良い。
【0062】
このようなシーラントフィルム(15)を用いることにより、金属蒸着フィルム(14)における金属蒸着膜(142)の部分的欠落が発生し、本来金属蒸着フィルム(14)の有する酸素バリア性が、損なわれた場合でも、積層体(1)としての酸素バリア性を補うことが可能となる。
【0063】
また、薬液を充填した1次容器のような重量を有するものに対する外装袋として用いても、十分なシール強度を有することで、安易に外装袋が破れることのない、安全な外装袋を提供することが可能となる。
【0064】
以上のような、基材フィルム(11)、アンカーコート剤層(13)を含む金属蒸着フィルム(14)、シーラントフィルム(15)の各層は、サンドイッチラミネート法により、押出樹脂層(12)を介して積層されている。
【0065】
押出樹脂層(12)は、一般的に上市されている押し出し樹脂を使用することが可能であり、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)やポリプロピレン樹脂(PP)、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、やエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、更にはアイオノマーやエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、又はエチレン-アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA)などを用いることができる。
【0066】
押出樹脂層の厚さは、10~30μm程度であることが望ましい。この様に、押出樹脂層を用いたサンドイッチラミネート法を用いることにより、接着剤樹脂をコーティングしてラミネートするドライラミネート法に比べて、厚い樹脂層を設ける事が可能となる。
【0067】
従って、ドライラミネート法を用いた場合に必要とされた補強層などを設けなくとも、薬液を充填した1次包装袋を封入した後の運搬作業における衝撃等でもピンホールの発生しない薬液用の外装袋を提供可能な積層体とすることができる。
【実施例
【0068】
以下に示す実施例は、1例を示すものであり、本発明は必ずしも以下に示したものに限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
下記に示すように、表層の基材フィルムにポリプロピレンを用いて、金属蒸着フィルム、シーラントフィルムと順にサンドイッチラミネート法により貼りあわせて積層体サンプル1を作製した。
【0070】
その際に、金属蒸着フィルムの金属蒸着面側には、酸素バリア性を有するアンカーコート剤層として、下記に示すアンカーコート剤層を設けた。
【0071】
また、得られた積層体のシーラントフィルム同士のヒートシール強度は、54N/15mmであった。
【0072】
(基材フィルム)
延伸プロピレンフィルム(OPP) … フタムラ化学(株)製 FOS 50μm
(金属蒸着フィルム)
アルミニウム蒸着したPETフィルム … 尾池パックマテリアル(株)製
JC-V8 12μm
(シーラントフィルム)
共押出フィルム(LLDPE/EVOH/LLDPE) … タマポリ(株)製
マルチトロン(登録商標)ZEA-101 60μm
(酸素透過度:0.5cc/m・day・atm)
(押出樹脂層)
低密度ポリエチレン(LDPE) … 日本ポリエチレン(株)製
LC600A 20μm
(アンカーコート剤層)
2液硬化型ポリエステルポリオール … DIC(株)製
PASLIM VM001 4.8μm
【0073】
<比較例1>
シーラントフィルムとして酸素バリア性を有しないLLDPEフィルム(エルスマート(登録商標) 三井化学東セロ(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル2を作製した。
【0074】
<比較例2>
アンカーコート剤層として、酸素バリア性を有しないウレタン系材料(A3210 三井化学(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル3を作製した。
【0075】
<比較例3>
アンカーコート剤層として、酸素バリア性を有しないウレタン系材料(A3210 三井化学(株)製)を用い、シーラントフィルムとして、酸素バリア性を有しないLLDPE(エルスマート(登録商標) 三井化学東セロ(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル4を作製した。
【0076】
上述のようにして、作製した各積層体サンプルにつき、以下に示す実験1ならびに実験2の2種類の評価を実施した。
【0077】
<実験1>
上記実施例1、比較例1、比較例2、比較例3によって作製した各積層体サンプル1~4と、それぞれのサンプルで使用した加工前の金属蒸着フィルムについて、温度22℃、湿度65%RH条件下でのJIS K7126による酸素透過度の測定を実施し、その測定結果を表1に示す
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1ならびに比較例1~3の結果より、アンカーコート剤層やシーラントフィルムについて、酸素バリア性を有するものを用いることで、積層体作製時の加工工程による酸素バリア性の劣化を補う効果を有することが判った。
【0080】
また、比較例1、比較例2の結果より、温度22℃、湿度65%RHの条件下においては、アンカーコート剤層のみを、酸素バリア性を有するものとするよりも、シーラントフィルムのみを、酸素バリア性を有するものとした場合の方が、酸素バリア性の劣化を補えることが判った。
【0081】
<実験2>
実験1の結果より、積層体作製時の加工工程における酸素バリア性の劣化を補う効果が確認された実施例1、比較例1、比較例2の各積層体サンプルについて、温度40℃、湿度70%RHの高温高湿環境下での酸素透過度を実験1と同様の手法で測定し、測定した結果を表2に示す
【0082】
【表2】
【0083】
比較例1、比較例2の結果より、アンカーコート層あるいはシーラントフィルムのいずれか片方のみを、酸素バリア性を有するものとした場合には、温度22℃、湿度65%RHの環境下にいては、ある程度の酸素バリア性を維持できたとしても、温度40℃、湿度70%RHの高温高湿環境下では、酸素透過度が1.0cc/m・day・atm付近あるいはそれ以上の値を示していることが判る。
【0084】
医療用などの薬液を充填した1次容器を入れるための外装袋の場合には、1.0cc/m・day・atm以下の値を求められており、比較例1ならびに比較例2に示すような構成では、使用目的に耐えることができない。
【0085】
これに対して、実施例1に示す積層体の構成とすることで、高温高湿の環境下であっても安定した酸素バリア性を確保できることが判った。
【0086】
以上の結果より、本発明の積層体を用いることにより、薬液を充填した1次容器に対する外装袋用として十分な特性を有すると伴に、酸素バリア性等を満たすための追加的な補強層を特に用いることなく、安価な外装袋用の積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 … 積層体
11 … 基材フィルム
12 … 押出樹脂層
13 … アンカーコート剤層
14 … 金属蒸着フィルム
141… 蒸着フィルム基材
142… 金属蒸着膜
15 … シーラントフィルム
151… ガスバリア性樹脂層
152… シーラント材層
図1
図2
図3