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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221220BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018147776
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023066
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】各務 克巳
(72)【発明者】
【氏名】出口 雅明
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0201022(US,A1)
【文献】国際公開第2018/056292(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225333(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、
前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、
前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、
前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、
前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、
前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、
前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、
前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、
前記第1供給流路及び前記第1帰還流路は、前記延在方向及び前記配列方向と直交する直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有し、
前記第2供給流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有し、
前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、
前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ前記第1供給流路及び前記第2供給流路に対して前記直交方向の一方に位置し、
前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、それぞれ、少なくとも一部がダンパ膜で画定されていることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1供給流路及び前記第2供給流路に設けられた前記ダンパ膜は、前記第1供給流路及び前記第2供給流路に対して前記直交方向の他方に位置し、
前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路に設けられた前記ダンパ膜は、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路に対して前記直交方向の一方に位置することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記直交方向における前記第1供給流路と前記第1帰還流路との間に、前記第1供給流路及び前記第1帰還流路のそれぞれと接する1枚の前記ダンパ膜が設けられ、
前記直交方向における前記第2供給流路と前記第2帰還流路との間に、前記第2供給流路及び前記第2帰還流路のそれぞれと接する1枚の前記ダンパ膜が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記直交方向における前記第1供給流路と前記第1帰還流路との間に、前記直交方向に互いに離隔した2枚の前記ダンパ膜が設けられ、
前記直交方向における前記第2供給流路と前記第2帰還流路との間に、前記直交方向に互いに離隔した2枚の前記ダンパ膜が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記ノズルは、前記直交方向の一方の端部に位置することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、
前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、
前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、
前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、
前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、
前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、
前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、
前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流入路及び前記第2流入路は、前記延在方向及び前記配列方向に沿った平面における前記圧力室の中心点に関して対称に配置されていることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記圧力室と前記第1出口とを接続する第1流出路と、前記圧力室と前記第2出口とを接続する第2流出路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流出路及び前記第2流出路は、前記中心点に関して対称で、かつ、前記延在方向及び前記配列方向と直交する直交方向に前記第1流入路及び前記第2流入路と重ならないように配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、
前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、
前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、
前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、
前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、
前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、
前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、
前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流入路及び前記第2流入路は、前記圧力室の前記配列方向の中心を通る前記延在方向に沿った軸に関して対称に配置されていることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記圧力室と前記第1出口とを接続する第1流出路と、前記圧力室と前記第2出口とを接続する第2流出路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流出路及び前記第2流出路は、前記軸に関して対称に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1供給流路及び前記第1帰還流路は、前記延在方向及び前記配列方向と直交する直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有することを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第2供給流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有することを特徴とする、請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、
前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ前記第1供給流路及び前記第2供給流路に対して前記直交方向の一方に位置することを特徴とする、請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記ノズルは、前記直交方向の一方の端部に位置することを特徴とする、請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、前記圧力室と前記第1出口とを接続する第1流出路と、前記圧力室と前記第2出口とを接続する第2流出路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、
前記ノズルは、前記圧力室に対して、前記延在方向及び前記配列方向と直交する直交方向の一方に位置し、
前記第1流出路及び前記第2流出路は、前記第1流入路及び前記第2流入路に対して、前記直交方向の一方に位置することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、前記圧力室と前記第1出口とを接続する第1流出路と、前記圧力室と前記第2出口とを接続する第2流出路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、
前記圧力室は、前記延在方向及び前記配列方向に沿った平面において、4以上の角部を有し、
前記第1流入路、前記第2流入路、前記第1流出路及び前記第2流出路は、それぞれ、互いに異なる前記4以上の角部のいずれかに接続することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、前記圧力室と前記第1出口とを接続する第1流出路と、前記圧力室と前記第2出口とを接続する第2流出路と、をさらに含み、
前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、
前記圧力室は、前記延在方向及び前記配列方向に沿った平面において、4以上の辺を有し、
前記第1流入路、前記第2流入路、前記第1流出路及び前記第2流出路は、それぞれ、互いに異なる前記4以上の辺のいずれかに接続することを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路を備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の液体吐出ヘッドは、複数の個別流路の入口に連通する第2共通流路(供給流路)と、複数の個別流路の出口に連通する第1共通流路(帰還流路)とを備えている。第2共通流路の一端に供給された液体は、第2共通流路の一端から他端に向かって流れる際に、第2共通流路に連通する複数の個別流路の入口に流れ込む。各個別流路に流入した液体は、一部はノズルから吐出され、残りは出口を介して第1共通流路に流れ込む。第1共通流路に流れ込んだ液体は、第1共通流路の一端から他端に向かって流れ、第1共通流路の他端から回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-030367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、各個別流路に対して、1つの入口及び1つの出口が設けられており、1つの入口に1つの第2共通流路(供給流路)、1つの出口に1つの第1共通流路(帰還流路)が接続されている。この場合、各個別流路の角部等において特に流速が低下し易くなり、気泡の排出や、沈降成分(液体に含まれる沈降が生じ得る成分。顔料等)の攪拌が、不十分になり得る。
【0005】
本発明の目的は、各個別流路において、流速が低下する部分が生じ難く、気泡の排出や沈降成分の攪拌が不十分になる問題を抑制できる液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る液体吐出ヘッドは、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、前記第1供給流路及び前記第1帰還流路は、前記延在方向及び前記配列方向と直交する直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有し、前記第2供給流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有し、前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、前記直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ前記第1供給流路及び前記第2供給流路に対して前記直交方向の一方に位置し、前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、それぞれ、少なくとも一部がダンパ膜で画定されていることを特徴とする。
本発明の第2観点に係る液体吐出ヘッドは、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、をさらに含み、前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流入路及び前記第2流入路は、前記延在方向及び前記配列方向に沿った平面における前記圧力室の中心点に関して対称に配置されていることを特徴とする。
本発明の第3観点に係る液体吐出ヘッドは、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記複数の個別流路の第1入口に連通する第1供給流路と、前記複数の個別流路の第2入口に連通する第2供給流路と、前記複数の個別流路の第1出口に連通する第1帰還流路と、前記複数の個別流路の第2出口に連通する第2帰還流路と、を備え、前記第1供給流路、前記第2供給流路、前記第1帰還流路及び前記第2帰還流路は、互いに同じ方向に延び、かつ、その延在方向と交差する配列方向に配列され、前記複数の個別流路は、前記延在方向に配列され、前記第1供給流路及び前記第2供給流路は、前記配列方向において前記複数の個別流路を挟む位置にあり、前記複数の個別流路は、それぞれ、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室と前記第1入口とを接続する第1流入路と、前記圧力室と前記第2入口とを接続する第2流入路と、をさらに含み、前記複数の個別流路のそれぞれにおいて、前記第1流入路及び前記第2流入路は、前記圧力室の前記配列方向の中心を通る前記延在方向に沿った軸に関して対称に配置されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
図2】ヘッド1の平面図である。
図3図2に示す領域IIIの拡大図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】プリンタ100の電気的構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るヘッド201の図4に対応する断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るヘッド301の図4に対応する断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係るヘッド401の平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】本発明の第5実施形態に係るヘッドの図3に対応する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0009】
プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1x、プラテン3、搬送機構4及び制御部5を備えている。
【0010】
プラテン3の上面に、用紙9が載置される。
【0011】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。制御部5の制御により搬送モータ4mが駆動されると、ローラ対4a,4bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0012】
ヘッドユニット1xは、ライン式(位置が固定された状態でノズル21(図2図4参照)から用紙9に対してインクを吐出する方式)であって、紙幅方向に長尺である。4つのヘッド1は、紙幅方向に千鳥状に配置されている。
【0013】
制御部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、各ヘッド1のドライバIC1d(図4及び図5参照)及び搬送モータ4mを制御し、用紙9上に画像を記録する。
【0014】
次いで、図2図4を参照し、ヘッド1の構成について説明する。
【0015】
ヘッド1は、流路基板11及びアクチュエータユニット12を有する。
【0016】
流路基板11は、図4に示すように、互いに接着された9枚のプレート11a~11iを有する。各プレート11a~11iには、流路基板11に設けられた流路や開口を構成する貫通孔が形成されている。
【0017】
流路基板11には、図2に示すように、複数の個別流路20と、それぞれ複数の個別流路20の第1入口20a1に連通する複数の第1供給流路31aと、それぞれ複数の個別流路20の第2入口20a2に連通する複数の第2供給流路31bと、それぞれ複数の個別流路20の第1出口20b1に連通する複数の第1帰還流路32aと、それぞれ複数の個別流路20の第2出口20b2に連通する複数の第2帰還流路32bと、複数の供給流路31a,31bを連結する供給連結流路41と、複数の帰還流路32a,32bを連結する帰還連結流路51とが形成されている。
【0018】
供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bは、互いに同じ方向(紙幅方向。以下、「延在方向」という。)に延び、搬送方向に沿った方向(以下、「配列方向」という。)に配列されている。本実施形態において、配列方向は延在方向と直交する。
【0019】
第1供給流路31a及び第1帰還流路32aは、図4に示すように、鉛直方向(以下、延在方向及び配列方向と直交する方向であり、以下、「直交方向」という。)に互いに重なっている。第2供給流路31b及び第2帰還流路32bは、鉛直方向に互いに重なっている。第1供給流路31a及び第2供給流路31bは、直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bに対して鉛直方向の上方(直交方向の他方)に位置する。第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bは、直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ第1供給流路31a及び第2供給流路31bに対して鉛直方向の下方(直交方向の一方)に位置する。
【0020】
第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組と、第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組とは、図2に示すように、配列方向に交互に配置されている。
【0021】
第1供給流路31aは、延在方向の一方の端部に設けられた入口31axを介して、供給連結流路41と連通している。第2供給流路31bは、延在方向の一方の端部に設けられた入口31bxを介して、供給連結流路41と連通している。第1供給流路31aの延在方向の先端31at及び第2供給流路31bの延在方向の先端31btは、共に閉じられており、複数の個別流路20に対して延在方向の他方に位置する。
【0022】
第1帰還流路32aは、延在方向の他方の端部に設けられた出口32axを介して、帰還連結流路51と連通している。第2帰還流路32bは、延在方向の他方の端部に設けられた出口32bxを介して、帰還連結流路51と連通している。第1帰還流路32aの延在方向の先端32at及び第2帰還流路32bの延在方向の先端32btは、共に閉じられており、複数の個別流路20に対して延在方向の一方に位置する。
【0023】
供給連結流路41及び帰還連結流路51は、それぞれ配列方向に延びている。供給連結流路41は、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bに対して延在方向の一方に位置する。帰還連結流路51は、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bに対して延在方向の他方に位置する。供給連結流路41及び帰還連結流路51は、流路基板11の延在方向の中心を通る配列方向及び直交方向に沿った平面に関して、対称に配置されている。
【0024】
供給連結流路41は、延在方向の他方の側面において、複数の第1供給流路31aの入口31ax及び複数の第2供給流路31bの入口31bxと連通している。帰還連結流路51は、延在方向の一方の側面において、複数の第1帰還流路32aの出口32ax及び複数の第2帰還流路32bの出口32bxと連通している。
【0025】
供給連結流路41は、供給口41xを介して、サブタンク7の貯留室7aと連通している。供給口41xは、供給連結流路41の配列方向の一方の端部に設けられており、複数の供給流路31a,31bの連結部(複数の供給流路31a,31bの入口31ax,31bx)に対して配列方向の一方に位置する。
【0026】
帰還連結流路51は、帰還口51xを介して、貯留室7aと連通している。帰還口51xは、帰還連結流路51の配列方向の一方の端部に設けられており、複数の帰還流路32a,32bの連結部(複数の帰還流路32a,32bの出口32ax,32bx)に対して配列方向の一方に位置する。
【0027】
サブタンク7は、ヘッド1に搭載されている。貯留室7aは、インクを貯留するメインタンク(図示略)と連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。
【0028】
複数の個別流路20は、延在方向において、供給連結流路41と帰還連結流路51との間に配置されている。供給流路31a,31bの入口31ax,31bxと、帰還流路32a,32bの出口32ax,32bxとの間に、複数の個別流路20が配置されている。
【0029】
個別流路20は、配列方向において、互いに隣接する第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組と第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組との間に配置されている。
【0030】
複数の個別流路20は、延在方向に配列され、それぞれ延在方向に延びる5つの列を形成している。5つの列は、配列方向に配列されている。個別流路20の各列に対して、配列方向の両側に、第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組と第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組とが配置されている。本実施形態では、配列方向に互いに隣接する2つの個別流路20の列の間に配置された第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組又は第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組は、当該2つの列に属する個別流路20に連通している。
【0031】
各個別流路20は、図3及び図4に示すように、ノズル21と、ノズル21に連通する圧力室22と、圧力室22と第1入口20a1とを接続する第1流入路23aと、圧力室22と第2入口20a2とを接続する第2流入路23bと、圧力室22と第1出口20b1とを接続する第1流出路24aと、圧力室22と第2出口20b2とを接続する第2流出路24bとを含む。圧力室22は、図3に示すように、延在方向及び配列方向に沿った平面において、延在方向に延びる矩形状であり、4つの角部c1~c1及び4つの辺s1~s4を有する。ノズル21は、圧力室22の直下に位置し、上記平面における圧力室22の中心点Oに設けられている。
【0032】
第1流入路23a及び第1流出路24aは、圧力室22の4つの辺s1~s4のうち、延在方向に延びる1つの辺s1から、配列方向に延びている。第2流入路23b及び第2流出路24bは、圧力室22の4つの辺s1~s4のうち、延在方向に延び、かつ、辺s1と配列方向に対向する辺s2から、配列方向に延びている。
【0033】
第1流入路23a及び第2流入路23bは、圧力室22の4つの角部c1~c4のうち、中心点Oに関して対称に配置された2つの角部c1,c2に、それぞれ接続している。第1流入路23a及び第2流入路23bは、中心点Oに関して対称に配置されている。第1入口20a1及び第2入口20a2も、中心点Oに関して対称に配置されている。
【0034】
第1流出路24a及び第2流出路24bは、圧力室22の4つの角部c1~c4のうち、中心点Oに関して対称に配置された2つの角部(上記角部c1,c2とは異なる角部)c3,c4に、それぞれ接続している。第1流出路24a及び第2流出路24bは、中心点Oに関して対称に配置されている。第1出口20b1及び第2出口20b2も、中心点Oに関して対称に配置されている。
【0035】
第1流入路23a及び第2流出路24bは、圧力室22の配列方向の中心を通る延在方向に沿った軸Aに関して対称に配置されている。第2流入路23b及び第1流出路24aは、圧力室22の配列方向の中心を通る延在方向に沿った軸Aに関して対称に配置されている。
【0036】
第1流出路24a及び第2流出路24bは、図4に示すように、第1流入路23a及び第2流入路23bに対して、鉛直方向の下方(直交方向の一方)に位置する。
【0037】
ノズル21は、プレート11h,11iに形成された貫通孔で構成されている。圧力室22は、プレート11a~11gに形成された貫通孔で構成されている。第1流入路23a及び第2流入路23bは、プレート11cに形成された貫通孔で構成されている。第1流出路24a及び第2流出路24bは、プレート11gに形成された貫通孔で構成されている。ノズル21は、各個別流路20において、鉛直方向の下方(直交方向の一方)の端部に位置する。
【0038】
供給流路31a,31bは、プレート11c,11dに形成された貫通孔で構成されている。帰還流路32a,32bは、プレート11f,11gに形成された貫通孔で構成されている。
【0039】
供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bには、それぞれダンパ膜35a,35b,37a,37bが設けられている。ダンパ膜35a,35bは、それぞれ、供給流路31a,31bの上面を画定している。ダンパ膜37a,37bは、帰還流路32a,32bの下面を画定している。具体的には、プレート11bには、供給流路31a,31bの上方に対応する部分に、ダンパ室34a,34bとなる貫通孔が形成されている。そして、ダンパ室34a,34bを覆うように、プレート11bの下面にダンパ膜35a,35bが取り付けられている。プレート11hには、帰還流路32a,32bの下方に対応する部分に、ダンパ室36a,36bとなる貫通孔が形成されている。そして、ダンパ室36a,36bを覆うように、プレート11hの上面にダンパ膜37a,37bが取り付けられている。
【0040】
ダンパ膜35a,35b,37a,37bは、プレート11a~11iよりも厚みの小さいフィルム状の部材である。
【0041】
ここで、流路基板11内におけるインクの流れについて説明する。図2及び図4中の矢印は、インクの流れを示す。
【0042】
図2に示すように、制御部5の制御により循環ポンプ7pが駆動されると、貯留室7a内のインクが、供給口41xから供給連結流路41に供給される。供給連結流路41に供給されたインクは、供給連結流路41内を配列方向の一方から他方に向かって移動しつつ、各供給流路31a,31bの入口31ax,31bxに流入する。第1供給流路31aの入口31axに流入したインクは、第1供給流路31a内を延在方向の一方から他方に向かって移動しつつ、個別流路20の第1入口20a1に流入する。第2供給流路31bの入口31bxに流入したインクは、第2供給流路31b内を延在方向の他方から一方に向かって移動しつつ、個別流路20の第2入口20a2に流入する。
【0043】
図4に示すように、各個別流路20において、第1供給流路31aから第1入口20a1に流入したインクは、第1流入路23aを通って圧力室22に入る。各個別流路20において、第2供給流路31bから第2入口20a2に流入したインクは、第2流入路23bを通って圧力室22に入る。圧力室22に入ったインクは、一部がノズル21から吐出され、残りが流出路24a,24bをそれぞれ通って、第1出口20b1から第1帰還流路32aに流入し、第2出口20b2から第2帰還流路32bに流入する。
【0044】
図2に示すように、第1帰還流路32aに流入したインクは、第1帰還流路32a内を延在方向の他方から一方に向かって移動して、出口32axから帰還連結流路51に流入する。第2帰還流路32bに流入したインクは、第2帰還流路32b内を延在方向の他方から一方に向かって移動して、出口32bxから帰還連結流路51に流入する。帰還連結流路51に流入したインクは、帰還連結流路51内を配列方向の他方から一方に向かって移動し、帰還口51xから貯留室7aに戻される。
【0045】
このように貯留室7aと複数の個別流路20との間でインクを循環させることで、各個別流路20内における気泡の排出やインクの増粘防止が実現される。また、インクが沈降成分(沈降が生じ得る成分。顔料等)を含む場合、当該成分が攪拌されて沈降が防止される。
【0046】
アクチュエータユニット12は、流路基板11の上面に配置され、複数の圧力室22を覆っている。
【0047】
アクチュエータユニット12は、図4に示すように、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。振動板12a及び共通電極12bは、複数の圧力室22を覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室22毎に設けられており、圧力室22のそれぞれと直交方向に対向している。
【0048】
複数の個別電極12d及び共通電極12bは、ドライバIC1dと電気的に接続されている。ドライバIC1dは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12dの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC1dは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12dに付与する。これにより、個別電極12dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12a及び圧電体12cにおいて個別電極12dと圧力室22とで挟まれた部分が、圧力室22に向かって凸となるように変形することにより、圧力室22の容積が変化し、圧力室22内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態のヘッド1は、各個別流路20に対して2つの入口(第1入口20a1及び第2入口20a2)と2つの出口(第1出口20b1及び第2出口20b2)が設けられている(図2図4参照)。この場合、各個別流路20に対して1つの入口及び1つの出口が設けられた場合に比べ、各個別流路20の角部等において流速が低下し難く、気泡の排出や沈降成分の攪拌が不十分になる問題を抑制できる。
【0050】
供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bがランダムに配置された場合、延在方向及び配列方向に沿った平面における流路全体のサイズが大型化し得る。この点、本実施形態では、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bが、互いに同じ方向(延在方向)に延び、かつ、配列方向に配列されている(図2参照)。複数の個別流路20は、延在方向に配列されている。このように、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bの延びる方向及び配列される方向が延在方向及び配列方向にそれぞれ規定されたことで、上記平面における流路全体のサイズの大型化を抑制できる。
【0051】
第1供給流路31a及び第2供給流路31bが複数の個別流路20に対して配列方向の一方に位置する場合、第1供給流路31a及び第2供給流路31bを直交方向に互いに異なる位置に設ける必要が生じ、直交方向においてヘッド1が大型化し得る。この点、本実施形態では、第1供給流路31a及び第2供給流路31bが、配列方向において複数の個別流路20を挟む位置にある(図2及び図4参照)。これにより、上記のような大型化を抑制できる。
【0052】
第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bが複数の個別流路20に対して配列方向の一方に位置する場合、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bを直交方向に互いに異なる位置に設ける必要が生じ、直交方向においてヘッド1が大型化し得る。この点、本実施形態では、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bが、配列方向において複数の個別流路20を挟む位置にある(図2及び図4参照)。これにより、上記のような大型化を抑制できる。
【0053】
第1供給流路31a及び第1帰還流路32aは、直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有する(図2及び図4参照)。これにより、配列方向において、流路の配置領域を小さくし、ヘッド1を小型化できる。
【0054】
第2供給流路31b及び第2帰還流路32bは、直交方向において少なくとも部分的に重なる部分を有する(図2及び図4参照)。これにより、配列方向において、流路の配置領域を小さくし、ヘッド1を小型化できる。
【0055】
第1供給流路31a及び第2供給流路31bが直交方向において互いに異なる位置にある場合、第1供給流路31aから個別流路20に供給されるインクの流れと、第2供給流路31bから個別流路20に供給されるインクの流れとが、直交方向に互いに異なる位置で生じる。また、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bが直交方向において互いに異なる位置にある場合、個別流路20から第1帰還流路32aを介して排出されるインクの流れと、個別流路20から第2帰還流路32bを介して排出されるインクの流れとが、直交方向に互いに異なる位置で生じる。この点、本実施形態では、第1供給流路31a及び第2供給流路31bが直交方向において互いに同じ位置にある(図4参照)。第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bは、直交方向において互いに同じ位置にあり、それぞれ第1供給流路31a及び第2供給流路31bに対して直交方向の一方に位置する。これにより、第1供給流路31aから個別流路20に供給されるインクの流れと、第2供給流路31bから個別流路20に供給されるインクの流れとが、直交方向に互いに同じ位置で生じ、かつ、個別流路20から第1帰還流路32aを介して排出されるインクの流れと、個別流路20から第2帰還流路32bを介して排出されるインクの流れとが、直交方向に互いに同じ位置で生じる。そのため、個別流路20内においてインクの流れの衝突が生じ易くなること等から、沈降成分の攪拌効果が高まる。
【0056】
各個別流路20において、ノズル21は、直交方向の一方の端部に位置する(図4参照)。この場合、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bが各個別流路20におけるノズル21と同じ側(下側)に位置するため、ノズル21近傍の気泡を個別流路20から第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bを介して排出し易い。また、第1供給流路31a及び第2供給流路31bが各個別流路20におけるノズル21と反対側に位置することで、第1供給流路31a及び第2供給流路31bから各個別流路20に供給されたインクがノズル21に向かってスムーズに流れることとなり、吐出に係る駆動力を抑えつつ、ノズル21からインクを吐出させることができる。
【0057】
第1供給流路31a、第2供給流路31b、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bは、それぞれ、少なくとも一部がダンパ膜35a,35b,37a,37bで画定されている(図4参照)。この場合、ダンパ膜35a,35b,37a,37bにより、複数の個別流路20間の流体的クロストークを抑制できる。
【0058】
第1供給流路31a及び第1帰還流路32aに対して設けられたダンパ膜がこれら流路31a,32a間に位置する場合、各流路31a,32aに対するダンパ性能を調整し難い。同様に、第2供給流路31b及び第2帰還流路32bに対して設けられたダンパ膜がこれら流路31b,32b間に位置する場合、各流路31b,32bに対するダンパ性能を調整し難い。この点、本実施形態では、第1供給流路31a及び第2供給流路31bに設けられたダンパ膜35a,35bが、第1供給流路31a及び第2供給流路31bに対して直交方向の他方に位置する(図4参照)。第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bに設けられたダンパ膜37a,37bは、第1帰還流路32a及び第2帰還流路32bに対して直交方向の一方に位置する。このように、本実施形態では、各流路31a,32a,31b,32bに対して個別にダンパ膜が設けられているため、各流路31a,32a,31b,32bに対するダンパ性能を調整し易い。また、各流路31a,32a,31b,32bの側面には、個別流路の入口20a1,20a2又は出口20b1,20b2に繋がる開口が設けられているため、ダンパ膜を設け難いが、本実施形態では、各流路31a,32a,31b,32bの上面又は下面にダンパ膜を設けており、ダンパ膜の設置が容易である。
【0059】
各個別流路20において、第1流入路23a及び第2流入路23bは、延在方向及び配列方向に沿った平面における圧力室22の中心点Oに関して対称に配置されている(図3参照)。この場合、圧力室22の中心点Oにおいてインクの流れの衝突が生じ、圧力室22全体における沈降成分の攪拌効果が高まる。
【0060】
各個別流路20において、第1流出路24a及び第2流出路24bは、中心点Oに関して対称で、かつ、直交方向に第1流入路23a及び第2流入路23bと重ならないように配置されている(図3参照)。この場合、圧力室22の中心点Oにおいて、中心点Oから各出口20b1,20b2に向かう方向のインクの流れがさらに生じることで、沈降成分の攪拌効果がより一層高まる。
【0061】
第1流出路24a及び第2流出路24bは、第1流入路23a及び第2流入路23bに対して直交方向の一方に位置し、各個別流路20におけるノズル21と同じ側に位置する(図4参照)。そのため、ノズル21近傍の気泡を個別流路20から第1流出路24a及び第2流出路24bを介して排出し易い。
【0062】
第1流入路23a、第2流入路23b、第1流出路24a及び第2流出路24bは、それぞれ、圧力室22における互いに異なる角部c1~c4のいずれかに接続している(図3参照)。圧力室22の角部c1~c4は、特に流速が低下し易く、気泡が滞留し易い部分である。本実施形態によれば、角部c1~c4に流入路23a,23bや流出路24a,24bが接続されたことで、角部c1~c4にインクの流れが生じ易く、気泡が滞留し難くなる。
【0063】
<第2実施形態>
続いて、図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。本実施形態は、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bに設けられるダンパ膜の構成が、第1実施形態と異なる。
【0064】
具体的には、第1実施形態では、供給流路31a,31bの上面にダンパ膜35a,35b、帰還流路32a,32bの下面にダンパ膜37a,37bが設けられている(図4参照)。
【0065】
本実施形態では、直交方向における第1供給流路31aと第1帰還流路32aとの間に、第1供給流路31a及び第1帰還流路32aのそれぞれと接する1枚のダンパ膜235が設けられている。ダンパ膜235は、第1供給流路31aの下面及び第1帰還流路32aの上面を画定している。直交方向における第2供給流路31bと第2帰還流路32bとの間に、第2供給流路31b及び第2帰還流路32bのそれぞれと接する1枚のダンパ膜237が設けられている。ダンパ膜237は、第2供給流路31bの下面及び第2帰還流路32bの上面を画定している。具体的には、プレート11eに形成された貫通孔234,236を覆うように、プレート11eの下面にダンパ膜235,237が取り付けられている。
【0066】
本実施形態によれば、ダンパ膜235によって第1供給流路31aと第1帰還流路32aとの間で圧力波を打ち消し合うことができ、ダンパ膜237によって第2供給流路31bと第2帰還流路32bとの間で圧力波を打ち消し合うことができる。
【0067】
<第3実施形態>
続いて、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。本実施形態は、供給流路31a,31b及び帰還流路32a,32bに設けられるダンパ膜の構成が、第1実施形態と異なる。
【0068】
具体的には、第1実施形態では、供給流路31a,31bの上面にダンパ膜35a,35b、帰還流路32a,32bの下面にダンパ膜37a,37bが設けられている(図4参照)。
【0069】
本実施形態では、直交方向における第1供給流路31aと第1帰還流路32aとの間に、直交方向に互いに離隔した2枚のダンパ膜335a,335bが設けられている。直交方向における第2供給流路31bと第2帰還流路32bとの間に、直交方向に互いに離隔した2枚のダンパ膜337a,337bが設けられている。ダンパ膜335a,337aは、それぞれ、貫通孔334,336を覆うように、プレート11eの上面に取り付けられている。ダンパ膜335a,337aは、それぞれ、プレート11eに形成された貫通孔334,336を覆うように、プレート11eの上面に取り付けられている。ダンパ膜335b,337bは、それぞれ、貫通孔334,336を覆うように、プレート11eの下面に取り付けられている。
【0070】
本実施形態によれば、2枚のダンパ膜335a,335b;337a,337b間の空間による圧力波の減衰効果が得られる。
【0071】
<第4実施形態>
続いて、図8及び図9を参照し、本発明の第4実施形態に係るヘッド401について説明する。本実施形態は、各個別流路における流入路及び流出路の構成が、第1実施形態と異なる。
【0072】
具体的には、第1実施形態では、各個別流路20において、第1流入路23a及び第2流入路23bと、第1流出路24a及び第2流出路24bとが、それぞれ、延在方向及び配列方向に沿った平面における圧力室22の中心点Oに関して対称に配置されている(図3参照)。
【0073】
本実施形態では、各個別流路420において、第1流入路423a及び第2流入路423bと、第1流出路424a及び第2流出路424bとが、それぞれ、圧力室22の配列方向の中心を通る延在方向に沿った軸Aに関して対称に配置されている。
【0074】
本実施形態によれば、第1流入路423a及び第2流入路423bが軸Aに関して対称に配置されたことで、圧力室22における軸A上の部分(第1流入路423a及び第2流入路423bと配列方向に対向する部分)においてインクの流れの衝突が生じ、圧力室22全体における沈降成分の攪拌効果が向上する。
【0075】
さらに、第1流出路424a及び第2流出路424bも軸Aに関して対称に配置されたことで、圧力室22の軸A上の部分(第1流出路424a及び第2流出路424bと配列方向に対向する部分)において、当該部分から各出口20b1,20b2に向かう方向のインクの流れがさらに生じ、沈降成分の攪拌効果がより一層高まる。
【0076】
<第5実施形態>
続いて、図10を参照し、本発明の第5実施形態に係るヘッドについて説明する。本実施形態は、各個別流路における流入路の構成が、第1実施形態と異なる。
【0077】
具体的には、第1実施形態では、各個別流路20において、第1流入路23a及び第2流入路23bは、圧力室22の4つの辺s1~s4のうち、延在方向に延びる2つの辺s1,s2に、それぞれ接続している(図3参照)。辺s1に第1流入路23a及び第1流出路24aが接続し、辺s2に第2流入路23b及び第2流出路24bが接続している。配列方向に延びる2つの辺s3,s4には、流入路及び流出路が接続していない。
【0078】
本実施形態では、各個別流路520において、第1流入路523a及び第2流入路523bは、圧力室22の4つの辺s1~s4のうち、配列方向に延びる2つの辺s3,s4に、それぞれ接続している。第1流入路523a及び第2流入路523bは、延在方向及び配列方向に沿った平面において、屈曲又は湾曲した形状を有する。辺s1に第1流出路24aが接続し、辺s2に第2流出路24bが接続し、辺s3に第1流入路523aが接続し、辺s4に第2流入路523bが接続している。
【0079】
本実施形態によれば、第1流入路523a、第2流入路523b、第1流出路24a及び第2流出路24bが、それぞれ圧力室22の互いに異なる辺s1~s4に接続することで、圧力室22内において、様々な方向にインクが流れることになり、沈降成分の攪拌効果がより一層高まる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0081】
上述の実施形態では、各個別流路に2つの入口及び2つの出口が設けられているが、3つ以上の入口及び/又は3つ以上の出口が設けられてよい。この場合、各個別流路に対し、3つ以上の供給流路及び/又は3つ以上の帰還流路が接続してよい。
【0082】
第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路は、それぞれ、複数設けられることに限定されず、1つだけ設けられてもよい。
【0083】
第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路は、互いに同じ方向に延びることに限定されず、互いに異なる方向に延びてもよい。
【0084】
上述の実施形態(図2及び図4)では、第1供給流路31a及び第1帰還流路32aが、直交方向と直交する平面における各流路の略全域において、直交方向に重なるが、これに限定されない。即ち、第1供給流路及び第1帰還流路は、直交方向において少なくとも部分的に重なればよい。したがって、例えば、第1供給流路及び第1帰還流路の延在方向の位置が若干ずれていてもよい。同様に、上述の実施形態(図2及び図4)では、第2供給流路31b及び第2帰還流路32bが、直交方向と直交する平面における各流路の略全域において、直交方向に重なるが、これに限定されない。即ち、第2供給流路及び第2帰還流路は、直交方向において少なくとも部分的に重なればよい。したがって、例えば、第2供給流路及び第2帰還流路の延在方向の位置が若干ずれていてもよい。
【0085】
第1供給流路及び第2供給流路が、複数の個別流路に対して配列方向の一方に位置してもよい。同様に、第1帰還流路及び第2帰還流路が、複数の個別流路に対して配列方向の一方に位置してもよい。
【0086】
供給連結流路及び帰還連結流路の位置は、特に限定されない。例えば、供給連結流路及び帰還連結流路は、第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路に対して延在方向の一方に位置し、直交方向に互いに重なってもよい。なお、第1供給流路及び第2供給流路は、供給連結流路によって互いに連結されず、個別に貯留室に接続してもよい。同様に、第1帰還流路及び第2帰還流路は、帰還連結流路によって互いに連結されず、個別に貯留室に接続してもよい。
【0087】
第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路において、個別流路の入口や出口に繋がる開口が設けられた側面に、ダンパ膜を設けてもよい。第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路に、ダンパ膜を設けなくてもよい。
【0088】
第1供給流路、第2供給流路、第1帰還流路及び第2帰還流路における直交方向の位置関係は、特に限定されない。例えば、第1供給流路及び第2供給流路が直交方向に互いに異なる位置にあってもよい。第1帰還流路及び第2帰還流路が直交方向に互いに異なる位置にあってもよい。第1供給流路及び第2供給流路が、第1帰還流路及び第2帰還流路に対して下方(直交方向の一方)に位置してもよい。
【0089】
上述の実施形態(図2)では、配列方向に互いに隣接する2つの個別流路20の列の間に配置された第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組又は第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組が、当該2つの列に属する個別流路20に連通している。しかしながら、これに限定されず、個別流路20の列毎に、第1供給流路31a及び第1帰還流路32aの組及び第2供給流路31b及び第2帰還流路32bの組が配置されてもよい。
【0090】
複数の個別流路は、列をなすことに限定されず、ランダムに配置されてもよい。
【0091】
各個別流路の構成(例えば、圧力室の形状、圧力室とノズルとの連通態様)は、特に限定されない。例えば、圧力室は、延在方向及び配列方向に沿った平面において、正方形、平行四辺形、菱形、正円形、楕円形等であってもよい。また、ノズルの直上に、圧力室が設けられることに限定されず、圧力室とノズルとを連通させる別の流路が設けられてもよい。各個別流路に含まれるノズルの数及び圧力室の数は、それぞれ、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0092】
第1流入路、第2流入路、第1流出路及び第2流出路の位置は、特に限定されない。例えば、上述の実施形態(図3)では、第1流出路24a及び第2流出路24bが、それぞれ第1流入路23a及び第2流入路23bと直交方向に重ならないが、それぞれ第1流入路23a及び第2流入路23bと直交方向に重なってもよい。辺s1の延在方向の中央に、直交方向に互いに重なる第1流入路23a及び第1流出路24aが接続し、辺s2の延在方向の中央に、直交方向に互いに重なる第2流入路23b及び第2流出路24bが接続してもよい。つまり、第1流入路、第2流入路、第1流出路及び第2流出路は、それぞれ、圧力室の角部に接続しなくてもよい。また、第1流入路、第2流入路、第1流出路及び第2流出路が、直交方向に互いに同じ位置にあってもよい。第1流入路及び第2流入路が、第1流出路及び第2流出路に対して下方(直交方向の一方)に位置してもよい。
【0093】
アクチュエータは、圧電素子を用いたピエゾ方式のものに限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
【0094】
ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0095】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0096】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0097】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1;201;301;401 ヘッド(液体吐出ヘッド)
20;420;520 個別流路
20a1 第1入口
20a2 第2入口
20b1 第1出口
20b2 第2出口
21ノズル
23a;423a;523a 第1流入路
23b;423b;523b 第2流入路
24a;424a 第1流出路
24b;424b 第2流出路
31a 第1供給流路
31b 第2供給流路
32a 第1帰還流路
32b 第2帰還流路
35a,35b,37a,37b;235,237;335a,335b,337a,337b ダンパ膜
100 プリンタ
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