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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】位置データ生成方法、および自動倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B65G1/04 539Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018151696
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026336
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】押川 誠享
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148624(JP,A)
【文献】特開平03-267206(JP,A)
【文献】特開2006-206223(JP,A)
【文献】特開2008-044732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段を備えたラックと、前記保管手段が配置される鉛直面に沿って荷物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搭載され前記保管手段との間で荷物を移載する移載装置とを備える自動倉庫において、前記保管手段のそれぞれの位置を示す位置データを生成する位置データ生成方法であって、
前記ラックの少なくとも1つの前記保管手段を基準保管手段とし、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を第一センサを用いて測定させ、基準位置データを生成する基準位置測定ステップと、
前記基準保管手段以外の前記保管手段から抽出された複数の前記保管手段を抽出保管手段とし、前記抽出保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第一センサとは種類が異なる第二センサを用いて測定させ、抽出位置データを生成する抽出位置測定ステップと、
前記基準保管手段、および前記抽出保管手段以外の前記保管手段を他保管手段とし、前記他保管手段の位置を示す他位置データを、前記基準位置データ、および前記抽出位置データに基づき生成する他位置データ生成ステップと、を含み
前記基準位置測定ステップは、
前記基準保管手段に前記第一センサを取り付け、
前記移載装置にターゲット治具を取り付け、
前記ターゲット治具の位置を前記第一センサを用いて測定させて前記基準位置データを生成する、
位置データ生成方法。
【請求項2】
鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段を備えたラックと、前記保管手段が配置される鉛直面に沿って荷物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搭載され前記保管手段との間で荷物を移載する移載装置とを備える自動倉庫において、前記保管手段のそれぞれの位置を示す位置データを生成する位置データ生成方法であって、
前記ラックの少なくとも1つの前記保管手段を基準保管手段とし、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を第一センサを用いて測定させ、基準位置データを生成する基準位置測定ステップと、
前記基準保管手段以外の前記保管手段から抽出された複数の前記保管手段を抽出保管手段とし、先に測定された基準位置データに基づき前記搬送装置を制御して前記移載装置を前記基準保管手段に位置させ、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第一センサとは種類が異なる第二センサを用いて測定させ、次に、前記移載装置を前記抽出保管手段に移動させ、前記抽出保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第二センサを用いて測定させ、前記基準保管手段と前記抽出保管手段との相対的位置関係を示す抽出位置データを生成する抽出位置測定ステップと、
前記基準保管手段、および前記抽出保管手段以外の前記保管手段を他保管手段とし、前記他保管手段の位置を示す他位置データを、前記基準位置データ、および前記抽出位置データに基づき生成する他位置データ生成ステップと
を含む位置データ生成方法。
【請求項3】
前記抽出位置測定ステップは、
前記基準保管手段、および前記抽出保管手段にそれぞれ取り付けられた二次元コードを、前記移載装置に取り付けられた前記第二センサを用いて測定させ、抽出位置データを生成する
請求項1または2に記載の位置データ生成方法。
【請求項4】
前記搬送装置は、複数の前記移載装置を備え、
前記基準保管手段と複数の前記移載装置とのそれぞれの位置関係を第一センサを用いて測定させ、前記移載装置同士の相対的位置関係を示す移載機データを生成し、前記移載機データ、および前記位置データを用いて前記搬送装置の停止位置を示す停止位置情報を生成する停止位置生成ステップをさらに含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置データ生成方法。
【請求項5】
前記搬送装置は、複数の前記移載装置を備え、
前記基準保管手段、または前記抽出保管手段と複数の前記移載装置とのそれぞれの位置関係を第二センサを用いて測定させ、前記移載装置同士の相対的位置関係を示す移載機データを生成し、前記移載機データ、および前記位置データを用いて前記搬送装置の停止位置を示す停止位置情報を生成する停止位置生成ステップをさらに含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置データ生成方法。
【請求項6】
鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段を備えたラックと、
前記保管手段が配置される鉛直面に沿って荷物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に搭載され前記保管手段との間で荷物を移載する移載装置と、
前記保管手段のそれぞれの位置を示す位置データを生成する位置データ生成装置とを備え、
前記位置データ生成装置は、
前記ラックの少なくとも1つの前記保管手段を基準保管手段とし、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を第一センサを用いて測定させ、基準位置データを生成する基準位置測定部と、
前記基準保管手段以外の前記保管手段から抽出された複数の前記保管手段を抽出保管手段とし、先に測定された基準位置データに基づき前記搬送装置を制御して前記移載装置を前記基準保管手段に位置させ、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第一センサとは種類が異なる第二センサを用いて測定させ、次に、前記移載装置を前記抽出保管手段に移動させ、前記抽出保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第二センサを用いて測定させ、前記基準保管手段と前記抽出保管手段との相対的位置関係を示す抽出位置データを生成する抽出位置測定部と、
前記基準保管手段、および前記抽出保管手段以外の前記保管手段を他保管手段とし、前記他保管手段の位置を示す他位置データを、前記基準位置データ、および前記抽出位置データに基づき生成する他位置データ生成部とを備える
自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を搬送装置により自動的に搬送して保管手段に保管する自動倉庫、および保管手段の位置データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の保管手段を備えたラックに対し、搬送装置に搭載された移載装置を用いて自動的に荷物を出し入れする自動倉庫は広く用いられている。
【0003】
移載装置が荷物を安全、確実に移載するためには、保管手段の正確な位置を把握する必要がある。例えば特許文献1には、複数の保管手段にそれぞれマークを付し、このマークを利用して各保管手段の位置を把握する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-158507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、小型の荷物を高密度で保管する様な自動倉庫の場合、ラックには多数の保管手段が配置されているため、自動倉庫の施工後などにおいて、保管手段の位置データを取得するための期間を長く確保しなければならないという課題が存在している。
【0006】
また、搬送装置のメンテナンス後、移載装置の取り替え後などにおいても、多数の保管手段の位置データを全ての保管手段に付されたマークを確認して位置データを取得し直す必要があるため、メンテナンス期間が長時間になるという課題もある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、短時間に精度よく保管手段の位置データを生成することができる位置データ生成装置、および自動倉庫の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の1つである位置データ生成方法は、鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段を備えたラックと、前記保管手段が配置される鉛直面に沿って荷物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搭載され前記保管手段との間で荷物を移載する移載装置とを備える自動倉庫において、前記保管手段のそれぞれの位置を示す位置データを生成する位置データ生成方法であって、前記ラックの少なくとも1つの前記保管手段を基準保管手段とし、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を第一センサを用いて測定させ、基準位置データを生成する基準位置測定ステップと、前記基準保管手段以外の前記保管手段から抽出された複数の前記保管手段を抽出保管手段とし、前記抽出保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第一センサとは種類が異なる第二センサを用いて測定させ、抽出位置データを生成する抽出位置測定ステップと、前記基準保管手段、および前記抽出保管手段以外の前記保管手段を他保管手段とし、前記他保管手段の位置を示す他位置データを、前記基準位置データ、および前記抽出位置データに基づき生成する他位置データ生成ステップとを含む。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の他の1つである自動倉庫は、鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段を備えたラックと、前記保管手段が配置される鉛直面に沿って荷物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搭載され前記保管手段との間で荷物を移載する移載装置と、前記保管手段のそれぞれの位置を示す位置データを生成する位置データ生成装置とを備え、前記位置データ生成装置は、前記ラックの少なくとも1つの前記保管手段を基準保管手段とし、前記基準保管手段と前記移載装置との位置関係を第一センサを用いて測定させ、基準位置データを生成する基準位置測定部と、前記基準保管手段以外の前記保管手段から抽出された複数の前記保管手段を抽出保管手段とし、前記抽出保管手段と前記移載装置との位置関係を前記第一センサとは種類が異なる第二センサを用いて測定させ、抽出位置データを生成する抽出位置測定部と、前記基準保管手段、および前記抽出保管手段以外の前記保管手段を他保管手段とし、前記他保管手段の位置を示す他位置データを、前記基準位置データ、および前記抽出位置データに基づき生成する他位置データ生成部とを備える。
【0010】
これらによれば、一部の保管手段の位置データである基準位置データと抽出位置データに基づいて他の保管手段の位置データを生成することができるため、短時間のティーチングで精度よく保管手段の位置データを生成することができる。
【0011】
また、前記基準位置測定ステップは、前記基準保管手段に前記第一センサを取り付け、前記移載装置にターゲット治具を取り付け、前記ターゲット治具の位置を前記第一センサを用いて測定させて前記基準位置データを生成してもよい。
【0012】
これによれば、基準位置データの精度を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記抽出位置測定ステップは、前記基準保管手段、および前記抽出保管手段にそれぞれ取り付けられた二次元コードを、前記移載装置に取り付けられた前記第二センサを用いて測定させ、抽出位置データを生成してもよい。
【0014】
これによれば、基準位置データと抽出位置データとの相対的な関係を簡単、高速に生成することが可能となる。
【0015】
また、前記搬送装置は、複数の前記移載装置を備え、前記基準保管手段と複数の前記移載装置とのそれぞれの位置関係を第一センサを用いて測定させ、前記移載装置同士の相対的位置関係を示す移載機データを生成し、前記移載機データ、および前記位置データを用いて前記搬送装置の停止位置を示す停止位置情報を生成する停止位置生成ステップをさらに含んでもよい。
【0016】
これによれば、移載装置の機差を示すデータを用いることで複数の搬送装置を備える場合でも位置データを減らすことができる。
【0017】
また、前記搬送装置は、複数の前記移載装置を備え、前記抽出位置測定ステップは、前記基準保管手段、または前記抽出保管手段と複数の前記移載装置とのそれぞれの位置関係を第二センサを用いて測定させ、前記移載装置同士の相対的位置関係を示す移載機データを生成し、前記移載機データ、および前記位置データを用いて前記搬送装置の停止位置を示す停止位置情報を生成する停止位置生成ステップをさらに含んでもよい。
【0018】
これによれば、移載装置の機差を示すデータを簡易かつ高速に取得することができる。
【0019】
なお、前記位置データ生成方法、および自動倉庫が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを実施することも本発明の実施に該当する。無論、そのプログラムが記録された記録媒体を実施することも本発明の実施に該当する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保管手段を多数備えるラックに対しても、搬送装置を用いるティーチングを短時間かつ精度よく保管手段の位置データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施の形態における自動倉庫を示す斜視図である。
図2図2は、荷物を保持する自動倉庫を示す斜視図である。
図3図3は、ラックの一部を示す斜視図である。
図4図4は、荷物当接部材を外した状態を示す斜視図である。
図5図5は、基礎部材に取り付けられた支持部材を示す斜視図である。
図6図6は、並んだ荷物当接部材の端部同士を荷物当接部材130の断面で示す平面図である。
図7図7は、位置データ生成装置の機能部を示すブロック図である。
図8図8は、基準位置データを生成するための測定の状態を示す斜視図である。
図9図9は、抽出位置データを生成するための測定の状態を示す斜視図である。
図10図10は、基準保管手段、抽出保管手段、および他保管手段の位置関係を示す図である。
図11図11は、移載機データを生成するための測定の状態を示す斜視図である。
図12図12は、基準保管手段、抽出保管手段、および他保管手段の他の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る自動倉庫、および位置データ生成方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0023】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0024】
図1は、実施の形態における自動倉庫を示す斜視図である。図2は、ラックに荷物が保された状態の自動倉庫を示す斜視図である。図3は、ラックの一部を示す斜視図である。図4は、荷物当接部材を外した状態を示す斜視図である。これらの図に示すように、自動倉庫101は、荷物200を保持する設備であって、ラック100と、搬送装置105と、移載装置106と、位置データ生成装置107とを備えている。
【0025】
ラック100は、鉛直面内において上下方向、および左右方向に並んで配置される複数の保管手段140を備える設備であり、本実施の形態の場合、基礎部材110と、保管手段140を形成する支持部材120、および荷物当接部材130を備えている。
【0026】
基礎部材110は、起立状態で配置され、ラック100の構造的基礎となる部材である。基礎部材110の形状、構造は特に限定されるものではなく、例えば板状の部材や、柱状の部材等を例示することができる。本実施の形態の場合、基礎部材110は、金属製の押し出し材を柱として鉛直面内に並べて配置し、これらを横方向に延在する押し出し材で連結した構造となっている。
【0027】
図5は、基礎部材に取り付けられた支持部材を示す斜視図である。同図に示すように、支持部材120は、一端部が基礎部材110に固定されることにより水平方向に延在し、図4などに示すように、水平面内に並んで配置される棒状の部材である。本実施の形態の場合、支持部材120は、鉄などのからなる剛性の高い板材を曲げ加工によって形成されており、荷物当接部材130の被保持部131を載置状態で保持するための載置面121を備えている。
【0028】
載置面121の幅(図中X軸方向の長さ)は、当接状態の2つの被保持部131を保持することができる幅を有しており、載置面121の長さ(図中Y軸方向の長さ)は、荷物当接部材130を介して荷物200を保持できる長さを有している。
【0029】
支持部材120を基礎部材110に取り付ける方法は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、基礎部材110の上下方向(Z軸方向)に延在する柱状の部材にボルトなどを用いて締結により固定されている。具体的には、柱状の部材はいわゆるアルミプロファイルと称される上下方向に延在するT溝を備えた部材であり、支持部材120は、T溝に嵌め込まれたTボルトを用いて締結により固定されている。
【0030】
また、支持部材120は、荷物当接部材130に係合し支持部材120の延在方向(図中Y軸方向)における荷物当接部材130の動きを規制する規制部122を備えている。本実施の形態の場合、規制部122は、支持部材120の基礎部材110側の端部において、支持部材120の幅方向(図中X軸方向)に突出する部分であり、幅方向の両側にそれぞれ配置されている。規制部122は、支持部材120を構成する板状の部材の一部を切り起こすことにより形成されている。
【0031】
水平面内に並ぶ支持部材120の少なくとも1つは、図4図6に示すように、載置面121から上方に突出し、荷物当接部材130と当接して荷物当接部材130の位置を決定する位置決定部123を備えている。本実施の形態の場合、位置決定部123は、水平面内に並ぶ支持部材120の最端部に配置されている。位置決定部123の形状は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、位置決定部123は、短いアングル状の部材であり、荷物当接部材130と側面と面接触するように支持部材120の載置面121に面接触して取り付けられている。
【0032】
また、支持部材120は、位置決定部123に対して複数の隣接する荷物当接部材130を一括して押しつける押圧機構124を備えている。押圧機構124の構造は特に限定されるものではなく、ネジの推力等を用いて押しつける構造を例示することができる。本実施の形態の場合、押圧機構124は、バネ等の付勢部材を備えており、付勢部材の付勢力により荷物当接部材130を一括して位置決定部123に押しつけている。付勢部材により荷物当接部材130を位置決定部123に押しつけることで、振動などにより押し付け力が緩むことがなく、安定して荷物当接部材130を位置決定部123に押しつけ続けることができる。
【0033】
荷物当接部材130は、支持部材120よりも軟質の材料から成り、支持部材120の長手方向(図中Y軸方向)に延在して支持部材120の載置面121に保持される被保持部131と、被保持部131の基礎部材110側の端部から水平面内において隣り合う支持部材120に向かって突出する連結部132とを有する部材である。本実施の形態の場合、荷物当接部材130は、図4図6に示すように、一対の被保持部131を備え、連結部132は、水平面内において隣り合う支持部材120のそれぞれに一対の被保持部131が保持されるように一対の被保持部131を架橋状に連結しており、隣り合う支持部材120に荷物当接部材130を架橋状に安定して載置できるものとなっている。また、隣接する荷物当接部材130の接触面積を大きくすることができ、荷物200の搬出入の際に発生する摩擦により荷物当接部材130がずれ動くことが抑制できる。さらに、被保持部131の間隔を一定に維持することができ、荷物当接部材130を並べて配置する際の被保持部131の先端のピッチの精度を向上させることができる。荷物当接部材130は、被保持部131と連結部132とが別体でも構わないが、本実施の形態の場合、被保持部131と連結部132とは一体に成形されている。
【0034】
また、荷物当接部材130の材質は支持部材120よりも軟質であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、樹脂が採用されている。樹脂の種類は、保管する荷物200の材質により選定することが好ましい。例えば、荷物200がポリプロピレンの容器である場合、搬出入時の摩擦や保管時の摩擦、支持部材120との関係を考慮してABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などが選定される。荷物当接部材130の材質は、支持部材120よりも復元力が高いことが好ましい。これによれば、支持部材120、および被保持部131の先端に不本意な力が加えられ、支持部材120に歪が発生した場合でも、被保持部131が復元することで、被保持部131の先端のピッチの精度を維持することが可能となる。
【0035】
荷物当接部材130は、図6に断面で示すように、隣接する荷物当接部材130と相互に係合する位置に、係合凹部133、および係合凸部134とを備えている。係合凹部133、および係合凸部134は、荷物当接部材130を接続した際に荷物当接部材130の位置決めを行うものである。本実施の形態の場合、係合凸部134の深さ、係合凸部134の高さは、押圧機構124の付勢力などに抗して隣接する荷物当接部材130の間を押し広げた際に係合が解除できる程度の深さ、および高さに設定されている。これにより、並んで押圧されている荷物当接部材130の中から不具合が発生した荷物当接部材130を抜き出し、別の荷物当接部材130を組み込むことが可能となる。
【0036】
保管手段140は、荷物200を保持して保管することができる部材であり、本実施の形態の場合、図1図3図6に示すように、隣り合う支持部材120、および支持部材120の上に載置された荷物当接部材130が保管手段140として機能している。なお、保管手段140は、本実施の形態に限定されるものではなく、荷物200の底面を支持して荷物200を保持する部材や、荷物の上面部分を引っ掛けて荷物を吊り下げた状態で保持する部材などを例示できる。
【0037】
搬送装置105は、保管手段140が配置される鉛直面に沿って荷物200を搬送する装置である。搬送装置105の種類は、特に限定されるものではなく、荷物200を吊り下げた状態で搬送する装置や、保管手段140の各段ごとに左右方向に走行する搬送車を備えた装置などを例示することができる。本実施の形態の場合、搬送装置105は、図1図2に示すように、いわゆるスタッカクレーンであり、左右方向に走行可能な台車151と、台車に対して鉛直方向に立設されるマスト152と、マスト152に対して昇降可能に取り付けられる昇降台153とを備えている。
【0038】
移載装置106は、搬送装置105に搭載されラック100の保管手段140との間で荷物200を移載する装置である。移載装置106の種類は特に限定されるものではなく、フォークを備え、パレット上に載置された荷物200をパレットごと掬って移載するもの、荷物200の両側面を挟んだ状態で移載するもの、保管手段140に保管された荷物200の奥側の面を引っ掛けて引き出し移載装置106に保持された荷物200の前側の面を押し出して保管手段140に移載するもの等を例示できる。本実施の形態の場合、荷物200を高密度で保管するラック100であり、荷物200の前面には、移載装置106が備える係合爪(図示せず)を引っ掛けることができる係合部が設けられている。移載装置106は、係合爪を保管手段140に向かって出没させることができ、係合爪を係合部に引っ掛けて荷物200を引き出し、荷物200の前面を係合爪などで押し出すことにより保管手段140に荷物200を保持させることができるものとなっている。
【0039】
位置データ生成装置107は、保管手段140の位置データを生成するいわゆるコンピュータであり、プログラムに基づく演算により実現される処理部として、図7に示すように、基準位置測定部171と、抽出位置測定部172と、他位置データ生成部173とを備えている。本実施の形態の場合、位置データ生成装置107は、停止位置生成部174を備えている。なお、位置データ生成装置107は、独立して存在する場合ばかりでなく、他の装置、例えば搬送装置105を制御する制御装置、自動倉庫101全体を統括する統括コンピュータ等に含まれていてもよい。
【0040】
基準位置測定部171は、図8に示すように、ラック100の少なくとも1つの保管手段140を基準保管手段141とし、基準保管手段141と移載装置106との位置関係を第一センサ161を用いて測定させ、基準位置データを生成する処理部である。
【0041】
基準保管手段141は、保管手段140から任意に選定することができるが、本実施の形態の場合、図10の破線で示すように、3×3のマトリクス状に並んだ保管手段140を1ブロックとし、支持部材120に取り付けられた位置決定部123に当接している荷物当接部材130を含むいずれか1つのブロックの中心の保管手段140を基準保管手段141としている。構造的に位置の基準となる荷物当接部材130とデータ上の位置の基準となる基準保管手段141とを1ブロックに包含することにより、生成される位置データの精度を向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態の場合、基準位置測定ステップにおいては、基準保管手段141に第一センサ161を取り付け、移載装置106にターゲット治具169を作業者が取り付けている。
【0043】
第一センサ161の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合は、測距センサが用いられている。また、鉛直面(図中ZX平面)内における基準保管手段141と移載装置106との位置関係を測距センサで測定するため、左右方向(図中X軸)においてターゲット治具169との距離を測定するための横センサ163と、昇降方向(図中Z軸)においてターゲット治具169との距離を測定するための縦センサ164とが第一センサ161としと基準保管手段141に取り付けられている。
【0044】
以上の様な準備を実施した後、基準位置測定部171は、移載装置106に対して位置関係が明確なターゲット治具169の位置を基準位置測定部171に対して位置関係が明確な第一センサ161(横センサ163、縦センサ164)を用いて測定させて基準位置データを生成する。基準位置データの形式は特に限定されるものではないが、例えば、設計値、および設計値とひも付けられた設計値と実測値との差分の形式を例示することができる。
【0045】
抽出位置測定部172は、図9に示すように、基準保管手段141以外の保管手段140から抽出された複数の保管手段140を抽出保管手段142とし、抽出保管手段142と搬送装置105に搭載される移載装置106との位置関係を第一センサ161とは種類が異なる第二センサ162を用いて測定させ、抽出位置データを生成する処理部である。
【0046】
抽出保管手段142は、基準保管手段141以外の保管手段140から任意に選定することができるが、本実施の形態の場合、3×3のマトリクス状に並んだ保管手段140を1ブロックとして設定しているため、基準保管手段141を含まないブロックについては、ブロックにおける基準保管手段141と同じ位置関係にある保管手段140(本実施の形態の場合はブロックの中心の保管手段140)が抽出保管手段142となる。
【0047】
また、本実施の形態の場合、抽出位置測定ステップにおいては、移載装置106に測定治具168を介して第二センサ162を作業者が取り付けている。また、基準保管手段141、および抽出保管手段142に作業者が二次元コード182をそれぞれ取り付けている。
【0048】
第二センサ162の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合は、二次元コードリーダが用いられている。二次元コードリーダは、二次元コード182が付されている面(鉛直面)内における二次元コード182の二次元コードリーダに対する相対的位置を検出することができる。具体的に例えば、二次元コードリーダは、二次元コードを撮像することができる撮像装置、および撮像結果を解析できる制御装置を備えており、制御装置は、撮像画像内の二次元コードの位置から鉛直面内における二次元コード182の二次元コードリーダに対する相対的位置を検出する。
【0049】
また、本実施の形態の場合、移載装置106と二次元コード182との距離を測定する第三センサ183も取り付けられている。
【0050】
以上の様な準備を実施した後、抽出位置測定部172は、保管手段140内において相対的位置関係が一定になるように設けられた二次元コード182を移載装置106に測定治具168を介して取り付けられた第二センサ162を用いて測定させ、抽出位置データを生成する。
【0051】
本実施の形態の場合、基準保管手段141を含むブロックにおいて、最初に抽出位置測定部172は、先に測定された基準位置データに基づき搬送装置105を制御して移載装置106を基準保管手段141に位置させ、基準保管手段141に付された二次元コード182を読み取って基準保管手段141の位置データを取得する。これは、基準保管手段141と抽出保管手段142との相対的位置関係示すデータの基準を作成するためである。
【0052】
次に、抽出位置測定部172は、基準保管手段141を含まない各ブロックについて抽出保管手段142として設定された保管手段140に移載装置106を順次移動させて二次元コード182を読み取り、抽出位置データを生成する。
【0053】
他位置データ生成部173は、基準保管手段141、および抽出保管手段142以外の保管手段140を他保管手段143とし、他保管手段143の位置を示す他位置データを、基準位置データ、および抽出位置データに基づき生成する処理部である。他位置データの生成方法は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、図10に示すように、基準保管手段141を含むブロックにおいては、基準位置データを基準とし、設計値を用いてそれぞれの他保管手段143の位置データを計算で求めて他位置データを生成している。抽出位置測定部172を含むブロックにおいては、抽出位置データを基準とし、設計値を用いてそれぞれの他保管手段143の位置データを計算で求めて他位置データを生成している。
【0054】
本実施の形態の場合、基準位置測定部171において生成された基準位置データ、抽出位置測定部172において基準位置データよりも簡易的な方法で測定された生成された抽出位置データ、および他位置データ生成部173で生成された他位置データを統合位置データ生成部175が統合して、搬送装置105を制御するための統合位置データを生成している。
【0055】
以上のように基準位置測定部171の位置についてティーチングを行い、基準位置測定部171を含まないブロックについては抽出保管手段142についてのみティーチングを行い、これらの結果をブロック単位で設計値に基づき他位置データに反映させて統合位置データを生成することで、保管手段140を多数備えたラックに対しても短時間で対応することが可能となる。特に、押圧機構124により複数の荷物当接部材130を一括して位置決定部123に押しつけるラック100の場合、設計値と実際の位置との差分の発生する傾向がラック100全体として一定であるため、正確な位置データを生成することが可能となる。
【0056】
本実施の形態の場合、1台の搬送装置105に対し、複数(本実施の形態の場合は2台)の移載装置106を備えているため、停止位置生成部174は、複数の移載装置106のそれぞれの位置関係を第一センサ161を用いて測定させ、移載装置106同士の相対的位置関係を示す移載機データを生成している。具体的には、図11に示すように、基礎位置データを生成するために、一方の移載装置106に作業者が取り付けたターゲット治具169を他の移載装置106に付け替え、基準保管手段141に取り付けられた第一センサ161である横センサ163と、縦センサ164とを用いてターゲット治具169の位置データを測定する。これにより基準保管手段141に対する一方の移載装置106位置データと他方の移載装置106の位置データを取得することができ、これらに基づき停止位置生成部174は、移載機データを生成する。移載機データの形式は特に限定されるものではないが、例えば、複数の移載装置106の位置関係を示す設計値、およびこの設計値とひも付けられた設計値と実測値との差分の形式を例示することができる。さらに停止位置生成部174は、移載機データ、および統合位置データを用いて移載装置106のそれぞれに対応した搬送装置105の停止位置を示す停止位置情報を生成する。
【0057】
上記実施の形態に係るラック100によれば、施工時に水平面内に並ぶ支持部材120のピッチにある程度の誤差が生じても、支持部材120に荷物当接部材130を載置することにより支持部材120の誤差に関係無く、被保持部131の先端のピッチの精度を高く維持することができる。従って、基準位置データと抽出位置データに基づいてラック100全体の保管手段140の位置データを生成し、これに基づき搬送装置105を制御しても正しく荷物200を移載することが可能となる。
【0058】
特に、押圧機構124により水平面内に並べられた複数の荷物当接部材130が位置決定部123に押しつけられているため、位置決定部123を基準に被保持部131の先端の位置が高精度に定まる。従って、全ての保管手段140に対してティーチングを行わず、短時間で位置データを生成しても搬送装置105は正しく荷物200を移載する位置に移載装置106を配置することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0060】
例えば、図12に示すように、基準保管手段141を、位置決定部123に当接する荷物当接部材130が形成するブロックの隅にある保管手段140に設定しても構わない。また、ブロックは3×3に限定されるものではなく、4×4やそれ以上でも構わない。また、3×4など縦と横の保管手段140の数が異なるブロックとしてもよい。
【0061】
また、停止位置生成部174は、基準保管手段141、または抽出保管手段142のいずれか1つと1台の搬送装置105に搭載される複数の移載装置106とのそれぞれの位置関係を第二センサを用いて測定させ、移載機データを生成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、自動倉庫などに利用可能であり、特に、定型の荷物を高密度に保管するラックを備えた自動倉庫に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 ラック
101 自動倉庫
105 搬送装置
106 移載装置
107 位置データ生成装置
110 基礎部材
120 支持部材
121 載置面
122 規制部
123 位置決定部
124 押圧機構
130 荷物当接部材
131 被保持部
132 連結部
133 係合凹部
134 係合凸部
140 保管手段
141 基準保管手段
142 抽出保管手段
143 他保管手段
151 台車
152 マスト
153 昇降台
161 第一センサ
162 第二センサ
163 横センサ
164 縦センサ
168 測定治具
169 ターゲット治具
171 基準位置測定部
172 抽出位置測定部
173 他位置データ生成部
174 停止位置生成部
175 統合位置データ生成部
182 二次元コード
183 第三センサ
200 荷物
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図5
図6
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図12