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特許7196462ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法
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  • 特許-ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20221220BHJP
   F27B 21/08 20060101ALN20221220BHJP
   F27B 21/06 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C22B1/20 C
C22B1/20 J
F27B21/08 F
F27B21/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018156547
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029603
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 一暁
(72)【発明者】
【氏名】松村 勝
(72)【発明者】
【氏名】原 恭輔
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221164(JP,A)
【文献】特開昭51-147402(JP,A)
【文献】特公昭49-020841(JP,B1)
【文献】特開昭61-195927(JP,A)
【文献】実開昭58-037496(JP,U)
【文献】特開平09-279261(JP,A)
【文献】特開平06-330190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に至る進行方向に循環移動する複数のパレットに対して、それぞれ原料充填層を下層と表層とに分けて形成し、下層の固体可燃物の濃度を表層の固体可燃物の濃度より低くして焼結鉱を製造する、ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法であって、
進行方向上流のパレット内の原料充填層を上方から点火する点火器と、該点火器の下流側に離間して配置されて、原料充填層の上面の全幅をフレーム加熱して再点火するフレーム加熱装置とを備えて、これら点火器とフレーム加熱装置との間には、原料充填層の上面がフレーム加熱されずに下方吸引により大気が吸引される大気吸引領域を設けるようにして、
(i-1)前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
(ii-1)前記表層の固体可燃物の濃度が4.0~5.5質量%で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.8~3.3質量%であるか、又は、
(ii-2)前記表層の固体可燃物の濃度が5.5質量%超で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.3~3.5質量%であり、
前記複数のパレットのうち、進行方向上流のパレット内の原料充填層に対して前記点火器により上方から点火し、原料充填層の点火部が進行方向下流側に移動した後、点火器による点火完了後30秒以上3分以内に該点火部に対して前記フレーム加熱装置により再点火を行うことを特徴とする、ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下50mmまでの層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記下層が、少なくとも原料層の表面下150mmを起点として下方に存在する層を含み、前記表層と前記下層の間に中間層を有し、該中間層の固体可燃物の濃度が、前記表層の固体可燃物の濃度よりも低く、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度より高いことを特徴とする、請求項1又は2に記載のドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記ドワイトロイド式焼結機は、上流から下流に至る進行方向に循環移動する複数のパレットと、前記複数のパレットのうち、進行方向上流のパレット内の原料充填層を上部から点火する点火器と、前記複数のパレットの下方から大気を吸引する風箱と、前記点火器の下流側に離間して配置され、前記原料充填層の上面の全幅をフレーム加熱して再点火するフレーム加熱装置とを備えたものであり、前記点火器及び前記フレーム加熱装置の間には、原料充填層に大気吸引領域が形成されるようにすることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製造工程で使用する主要な高炉装入原料である焼結鉱の製造方法に係り、特に、生産性の高い焼結鉱の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、高炉製銑プロセスの主原料は、焼結鉱である。焼結鉱を得るにあたり、一般には、先ず、焼結原料となる鉄鉱石、返鉱、製鋼ダスト等の含鉄原料粉、炭材、CaOを含む副原料を所定の割合で配合し、混合して得られた混合物を造粒又は塊成化して焼結原料とする。次に、この焼結原料をドワイトロイド(DL)式焼結機のパレット内に原料充填層を形成しながら載置し、載置した原料充填層の上部から点火器により点火する。そして、パレットを連続的に移動させながらパレットの下方から空気を吸引することにより酸素が供給され、原料充填層内の炭材の燃焼が上層から下層に向けて進行して、炭材の燃焼熱により順次焼結が起こる。このようにして得られた焼結部(シンターケーキ)は、所定の粒度に粉砕し、ふるい分け等により整粒して、高炉の主原料である焼結鉱となる。
【0003】
このようなDL式焼結機による焼結鉱の製造方法において、焼結鉱製造の生産性は、主に歩留と焼成速度の掛け合わせで決定される。従来から歩留を向上させる試みはなされているが、一般に、原料充填層の最表層から50~100mmにおいては歩留が低くなってしまう。これは、焼結機において、原料充填層が点火器を出た後、上方から常温の空気が吸引されて冷却されるため、表層は、鉱石類が溶融して焼結反応するのに必要な最高到達温度が低くなることが原因のひとつと考えられる。
【0004】
一方で、焼成速度を向上させるためには、焼成反応を進めるための燃焼による発熱速度を増加させる必要があり、焼成速度を上げるためには、通気量を増やすことが重要になる。ここで、図2には、原料充填層の焼結反応が進む際の様子について、焼結機の進行方向における原料充填層の断面が模式的に示されている。すなわち、DL式焼結機のパレット内に装入された原料充填層に対して、その上方に設けられた点火器6により点火されて焼結反応が開始し、下方に設けられた排気ブロア9で上方から空気8を吸引することで、パレットが進行方向10に進むにつれて焼結反応が進行する。
【0005】
パレット内に装填された原料充填層は、焼結反応の進行の視点から大別すると、図2に示したように、焼結反応が未だ進んでいない原料層1、燃焼が起きている燃焼帯2、及び、焼結がほぼ完了した焼結完了層3とからなる。このうち、燃焼帯2は、焼結反応の進行とともにその厚みが増大する。その理由は、焼結反応に寄与する熱が、通気により表層4から下層5に伝わるのに加え、下層5に存在するコークスの燃焼熱が加わり、表層4に比べて下層5には熱が蓄積されるためである。そして、この燃焼帯2は、高温で、融液が多いことから、通気抵抗が圧倒的に大きくなる。
【0006】
そこで、この燃焼帯が必要以上に厚くならないようにするために、原料充填層の表層及び下層のうち、通気抵抗が高くなる下層の固体可燃物濃度を小さくして、下層の燃焼帯(赤熱帯とも呼ばれる)の厚みを減少させることで、通気量を増加させるようにした焼結鉱の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、下層の固体可燃物濃度の低下により歩留は落ちるものの、焼成速度の上昇が歩留の低下を補うことから、トータルの生産性は従来方法よりも向上するとしている。また、特に、表層の固体可燃物濃度を所定の値以上にすることで、表層の加熱量が増加して、歩留も向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-221164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した特許文献1の方法において、表層の固体可燃物の濃度を下層の固体可燃物の濃度よりも高くして焼結鉱を製造すると、固体可燃物の一部が未燃のまま残ってしまうことがあり、多いときには、未燃分が表層に添加された固体可燃物の数%に達することが新たに判明した。当然のことながら、表層の固体可燃物の濃度が高くなればなるほど未燃分は増加してしまうため、この点において更なる改良の余地がある。
【0009】
そこで、本発明者らは、この問題について鋭意検討した結果、進行方向上流のパレット内の原料充填層に点火して、原料充填層の点火部が進行方向下流側に移動した後、再び、この点火部に対して再点火を行うようにすることで、表層の固体可燃物の未燃分を低減して、熱として有効活用できるようになることから、結果的に焼結生産性を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、表層の固体可燃物の濃度を高くしながらも、未燃分を減らして熱として有効活用できるようにすることで、焼成速度を高めつつ、歩留まりを高めて、生産性を更に向上させることができる焼結鉱の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)上流から下流に至る進行方向に循環移動する複数のパレットに対して、それぞれ原料充填層を下層と表層とに分けて形成し、下層の固体可燃物の濃度を表層の固体可燃物の濃度より低くして焼結鉱を製造する、ドワイトロイド式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法であって、
(i-1)前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
(ii-1)前記表層の固体可燃物の濃度が4.0~5.5質量%で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.8~3.3質量%であるか、又は、
(ii-2)前記表層の固体可燃物の濃度が5.5質量%超で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.3~3.5質量%であり、
前記複数のパレットのうち、進行方向上流のパレット内の原料充填層に対して上方から点火し、原料充填層の点火部が進行方向下流側に移動した後、該点火部に対して再点火を行うことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2)前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下50mmまでの層を含むことを特徴とする(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)前記下層が、少なくとも原料層の表面下150mmを起点として下方に存在する層を含み、前記表層と前記下層の間に中間層を有し、該中間層の固体可燃物の濃度が、前記表層の固体可燃物の濃度よりも低く、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度より高いことを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
(4)前記点火部を再点火するのは、最初の点火完了後、30秒以上3分以内であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
(5)前記ドワイトロイド式焼結機は、上流から下流に至る進行方向に循環移動する複数のパレットと、前記複数のパレットのうち、進行方向上流のパレット内の原料充填層を上部から点火する点火器と、前記複数のパレットの下方から大気を吸引する風箱と、前記点火器の下流側に離間して配置され、前記原料充填層の上面の全幅をフレーム加熱して再点火するフレーム加熱装置とを備えたものであり、前記点火器及び前記フレーム加熱装置の間には、原料充填層に大気吸引領域が形成されるようにすることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明における焼結鉱の製造方法によれば、表層の固体可燃物の濃度を高くしながらも、未燃分を減らして熱として有効活用できるようにすることで、焼成速度を高めつつ、歩留まりを高めて、生産性を更に向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明において、原料充填層の焼結反応が進む様子を焼結機進行方向における断面で模式的に示した説明図である。
図2図2は、従来技術において、原料充填層の焼結反応が進む様子を焼結機進行方向における断面で模式的に示した説明図である。
図3図3は、一般的なドワイトロイド式焼結機の様子を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明においては、上流から下流に至る進行方向に循環移動するドワイトロイド(DL)式焼結機の複数のパレットに対して、それぞれ原料充填層を下層と表層とに分けて形成し、下層の固体可燃物の濃度を表層の固体可燃物の濃度より低くして焼結鉱を製造するにあたり、進行方向上流のパレット内の原料充填層に対して上方から点火し、原料充填層の点火部が進行方向下流側に移動した後、該点火部に対して再点火を行うようにする。
【0015】
ここで、図3には、一般的なDL式焼結機が示されている。焼結機は、粉末状の金属酸化物に、生石灰、酸化ケイ素、粉コークス等の凝結材および燃料を添加し、水分を加えて混練した焼結原料をパレット中に装入して、上部からバーナー火炎により粉コークスや無煙炭等の燃料(固体可燃物)に着火し、着火した燃料の燃焼熱により焼結させて、焼結鉱を製造する装置であり、ホッパ11、パレット12、レール又はトラックガイド13、駆動輪14、遊動輪15、ダクト9、風箱16、及び点火器6を備えて構成される。
【0016】
このうち、ホッパ11は、上方から焼結原料が供給され、下部排出口からパレット12内に所定量の焼結原料を装入する原料供給部である。
パレット12は、2枚の側壁と底部からなる台車であって、上部および進行方向前後が開口されている。底部には、パレット幅方向に沿って延びるスリット状の開口が複数形成されている。複数のパレット12が進行方向に隙間なく配置されることで、焼結機長手方向にわたる容器を形成する。そして、パレット12は、駆動輪14によって給鉱側から押し出され、レール13の上を所定の速度で走行して排鉱部に至る。そこで遊動輪15とトラックガイド13とに誘導されて反転し、下側のレール13に沿って駆動輪14に戻る。
【0017】
ダクト9は、図示を略したが、排気ブロアに接続されており、排気ブロアを動作させると、パレット12の下に配置された風箱16より下方空間の空気を吸い出し、これに伴い、パレット12の上方から常温の空気が導入され、点火器6によって点火された焼結原料の燃焼を維持すると共に、燃焼後の焼結鉱を冷却する。
点火器6は、例えば、パレット12の上部を覆う箱状体から構成され、内部に点火用のバーナーを複数備えている点火炉とされる。
【0018】
このような焼結機では、ホッパ11に焼結原料が供給されると、下部排出口から所定量の焼結原料が循環するパレット12内に装入され、原料充填層が形成される。その際、ホッパ11を2系統に分けて、原料充填層の下層と表層で固体可燃物濃度を偏析させるようにしてもよい。焼結原料が装入されたパレット12は、駆動輪14の駆動とともに、点火器6に進行し、点火器6により原料充填層はその上方から点火される。点火された焼結原料は、風箱16を通じたダクト9の吸い出しに伴う上方からの空気により燃焼が維持された燃焼帯を形成しつつ、空気により冷却されながら燃焼帯が下方に移動していき、遊動輪15の部分に到達するまでに燃焼帯が原料充填層の下端まで到達して原料充填層全体が焼結完了層となり、遊動輪15上を下方に移動しながら途中で破断した後、落下し、クラッシャーによって破砕され、篩分けされて所定径の焼結鉱が製造される。このときの焼結反応が進行する様子は、先の図2に示したとおりである。
【0019】
このような従来の一般的なDL式焼結機に対して、本発明では、図1に示したように、例えば、点火器6の下流側に、点火器6と所定の間隔で離間して、原料充填層の上面をフレーム加熱するフレーム加熱装置7を設けるなどして、原料充填層に対して最初に点火した原料充填層の点火部が進行方向下流側に移動した後に、この点火部に対して再点火を行うことができるようにする。すなわち、本発明に係る焼結鉱の製造方法では、上流から下流に至る進行方向に循環移動する複数のパレット12と、これら複数のパレットのうち、進行方向上流のパレット内の原料充填層を上部から点火する点火器6と、これらに加えて、更に、点火器6の下流側に離間して配置され、原料充填層の上面の全幅をフレーム加熱して再点火することができるフレーム加熱装置7を備えたDL式焼結機を用いることができる。また、これによって、点火器6及びフレーム加熱装置7との間には、原料充填層に大気吸引領域17が形成される。
【0020】
ここで、フレーム加熱装置7としては、例えば、パレットの進行方向に直行する幅方向に配列された複数のバーナーを有して、フレーム加熱装置7により原料充填層の幅方向全体がフレーム加熱されるものなどを挙げることができる。また、「フレーム加熱」とは、フレーム、すなわち火炎を用いて加熱することであり、フレーム(火炎)が、加熱対象物である原料充填層の上面に吹き付けられ、炎が表面に直接接している状態で加熱することを意味している。これは、燃料を原料充填層内に吹き込んで原料充填層内で燃焼加熱させるものではなく、いわゆる原料充填層の外部からの燃焼加熱である。そして、本発明において、「フレーム加熱」という場合には、点火器6での点火を行い、所定の大気吸引領域17での吸引を行った後に再点火して行う加熱工程のことを意味する。
【0021】
本発明においては、フレームが原料充填層の上面に直接噴射されて加熱されることで、原料充填層自体を十分に加熱でき、原料充填層内の固体可燃物の燃焼効率が向上し、同時に原料充填層の上部空間の空気をも加熱できる。原料充填層の上部空間の空気が加熱されるために、冷たい空気による温度低下が防止され、また、直接フレームが原料充填層の上面に吹き付けられ、点火器6で点火できなかった燃え残りの固体可燃物を余さず点火することができるため、原料充填層内の固体可燃物による加熱の効率が優れている。
【0022】
また、本発明における「大気吸引領域17」とは、点火器6と、フレーム加熱装置7との間の領域であり、下方吸引により大気が吸引されるものの、上面からはバーナー等による直接加熱が行われない領域のことをいう。点火器6により点火されると、原料充填層には、燃焼帯2が形成され、点火器6とフレーム加熱装置7の間に設けた大気吸引領域17における大気吸引によって、上層から下層へ焼結反応が進行するため、特に上層側の燃焼帯2が拡大する。一方、点火器6での点火後、引き続きすぐにバーナー加熱を行うと、バーナーの火炎により原料充填層の上方空間の酸素濃度が低下する。本発明では、大気吸引領域17において上面からの火炎バーナー等の燃焼加熱が行われていないため、燃焼帯2に十分に酸素が供給されることから、この大気吸引領域17での原料充填層内の固体可燃物の燃焼が促進される。
【0023】
本発明において、フレーム加熱を開始するタイミングに関して、先ず、ホッパ11から装入された原料充填層の上面(表面)に、点火器6により点火すると、原料充填層に含まれる粉コークス等の燃料(固体可燃物)が燃焼する。点火中の燃料の燃焼においては、下方吸引する場合もしない場合もありうるが、この燃焼は、点火器6による点火が完了するまでは、着火はするものの、下層方向に焼結は進行しない。これは、点火バーナー加熱により原料充填層の上方の酸素濃度が薄くなるため、酸素の供給が制限され、下方吸引しなければ、もちろん、下方吸引したとしても、原料充填層中の燃料の燃焼が停滞するからである。
【0024】
着火が完了し、点火器6から下流方向にパレット(図1において原料充填層は長手方向に連続して図示されているが、実際の原料充填層は、各箱型のパレット中に載置されている。)が移動し、大気吸引領域17に原料充填層が移動すると、そこから、下方より大気吸引することにより、燃焼帯2が降下し、上面より下面に向かって進行する。このとき、原料充填層中の厚さ方向に含まれるすべての燃料が一度に燃焼を開始するものではない。最初は、表面の燃料のみが燃焼し、表面の燃料の燃焼が終了すると、順次、火面が下部方向に移動する。すなわち、焼結中において、原料充填層中で燃料が燃焼している部分(燃焼帯2)は、燃料が燃焼し終わった焼結完了層3と、燃料がこれから燃焼する原料充填層に挟まれた、深さ方向にある程度の厚さを有する。また、フレーム加熱装置7で加熱されている最中は、点火器6での加熱中と同様に、フレーム加熱中は、下方吸引しても、しなくても、燃焼前線は進行せず、停滞している。これは、フレーム加熱により原料充填層の上方の酸素濃度が薄くなるため、酸素の供給が制限され、原料充填層中の燃料の燃焼が停滞するからである。
【0025】
そのため、フレーム加熱を開始するタイミングが遅すぎると、大気吸引領域17の原料充填層の上面が冷却されて温度が落ち切ってしまい、改めて加熱しても、フレーム加熱による歩留向上の効果が低下してしまう。一方、フレーム加熱を開始するタイミングが早すぎると、十分な長さの大気吸引領域17が確保できず、原料充填層の上面が1100℃以上となる高温保持時間が十分に確保できないおそれがある。これは、最初の点火に引き続き連続して加熱しても、あるいは、十分な大気吸引領域17を設けないと、原料充填層内部の燃料に、十分な大気吸引が行われないことから酸素不足となり、原料充填層の表層の焼結に必要な時点での熱を供給することができない。そこで、代表的なDL式焼結機の実機でのパレット移動速度(2.5m/min)に基づけば、フレーム加熱を開始する(原料充填層の点火部を再点火する)のは、最初の点火完了後、30秒以上3分以内であるのがよいと言うことができる。
【0026】
また、本発明において、原料充填層を下層と表層とに分けて形成し、下層の固体可燃物の濃度を表層の固体可燃物の濃度より低くして焼結鉱を製造するにあたり、具体的には、
(i-1)前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
(ii-1)前記表層の固体可燃物の濃度が4.0~5.5質量%で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.8~3.3質量%であるか、又は、
(ii-2)前記表層の固体可燃物の濃度が5.5質量%超で、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度が2.3~3.5質量%となるようにする。このような固体可燃物の濃度偏析を設けることで、焼成速度を高めつつ、尚且つ、歩留を高めて、生産性を向上させることができる。
【0027】
ここで、固体可燃物の質量は、燃料の炭材として使用するコークス、無煙炭、灰分、廃プラスチック等の固体可燃物の発熱量を、全てコークスの発熱量に換算して算出したコークス相当質量である。また、固体可燃物濃度は、固体可燃物、石灰石、生石灰、鉱石等(返鉱を含む)を混練して造粒した装入原料の全体の質量に対する、固体可燃物の質量の割合である。
【0028】
上記(ii-1)、(ii-2)の条件は、先の特許文献1で示される試験結果に基づくものである。すなわち、表層の固体可燃物濃度を4.0~8.0質量%の範囲で6条件を設定し(固体可燃物としてコークスのみ使用)、それぞれの条件において、下層の固体可燃物濃度を2.8~4.0質量%の範囲で変えて、実際にDL式焼結機で焼結鉱を製造する試験を行い、表層及び下層の固体可燃物濃度と生産性(1日当たり、かつ、パレット1m2当たりの生産量[t])の関係、表層及び下層の固体可燃物濃度と歩留(1日当たりの焼結鉱全体の歩留[質量%])の関係、及び、表層及び下層の固体可燃物濃度と焼成速度(1日当たりの石炭の平均焼成速度[mm/min])の関係を調べて抽出した条件である。
【0029】
ここで、焼結鉱の生産性とは、単位時間(1日)当たりの焼結鉱の生産量[t]を焼結機の有効面積(=焼結機幅×機長)[m2]で除したものである。歩留とは、焼結機で生産された焼結鉱をクラッシャーで破砕したものに対して篩掛けを行って回収した焼結鉱の割合(全焼結鉱質量に対し、回収した5mm以上の焼結鉱の質量割合)である。焼成速度とは、焼結層(焼結反応が進行する原料充填層)内の燃焼反応面が、下方に進行していく速度であり、層厚をBPT到達までの時間で除したもの(BTPとは、Burn Through Pointの略であり、焼結機の排ガスが最高温度になる位置のこと)である。
【0030】
ちなみに、下層の固体可燃物濃度を3.6%未満とすることで、焼成速度を大幅に速くすることができる。これは、歩留の低下を補って、従来技術よりも生産性を向上させることになる。この理由については、下層の固体可燃物濃度が少なくなることで、下層の燃焼帯(赤熱帯)が必要以上に厚くならず、下層の通気抵抗が低下して通気量が増加するためである。
【0031】
また、下層の固体可燃物濃度が3.6%未満からさらに低下すると、歩留の低下の程度が緩和され、表層の固体可燃物濃度が5.5%を超えると、歩留の低下の程度が緩和されるとともに、歩留の絶対値も向上する。この理由は、表層の固体可燃物濃度を増加すると、表層の歩留が向上し、その結果、全体の歩留も増加するためである。更には、下層の固体可燃物濃度が低減すると、焼成速度は増加する傾向にある。特に、下層の固体可燃物濃度が3.3%以下になると、焼成速度が急激に増加する。表層の固体可燃物濃度が5.5%を超えると、下層の固体可燃物濃度が3.3%超、3.5%以下の範囲でも、焼成速度は、表層の固体可燃物濃度が5.5%以下の場合よりも高い値を示す。
【0032】
焼結鉱の生産性は歩留と焼成速度の掛け合わせで決まる。そのため、上記の試験結果に基づき、従来よりも生産性を向上させるために、(ii-1)表層の固体可燃物の濃度を4.0~5.5質量%とし、かつ、下層の固体可燃物の濃度を2.8~3.3質量%、好ましくは3.0~3.3質量%とするか、又は、(ii-2)表層の固体可燃物の濃度を5.5質量%超とし、かつ、下層の固体可燃物の濃度を2.3~3.5質量%、好ましくは2.5~3.5質量%とする。なお、本発明においては、フレーム加熱を含めた2段階加熱を採用するため、表層の固体可燃物を有効活用することができることから、(ii-1)、(ii-2)の条件では、先の特許文献1で規定するものより下層の固体可燃物濃度の下限値は小さくでき、下層(場合によっては中間層を含めて)の固体可燃物濃度をより少なくすることで、燃焼帯(赤熱帯)が厚くなるのを抑制することができる。
【0033】
ところで、先の特許文献1では、表層の固体可燃物濃度が増加すると、表層の熱量が下層に伝わり、下層の固体可燃物濃度の減少による熱量不足に起因する歩留の低下を抑制するとしながらも、表層の固体可燃物濃度を8.0%超にしても、焼結鉱の生産性は向上しないとしている。その理由については、表層の固体可燃物濃度をある程度以上に増加すると、表層が高温で燃焼反応が生じるのに必要な酸素が不足し、表層に存在するコークスが完全に燃焼しきらないためであるとしているが、本発明のように、フレーム加熱を含めた2段階の加熱を行うことで、この問題は解消される。すなわち、現時点における知見では、表層の固体可燃物濃度を9.0%にしても燃え残りの問題は生じない。
【0034】
また、原料充填層の表層の厚みについて、表層の厚みが25mmと薄い場合でも、下層の固体可燃物の濃度が2.8~3.3質量%(又は2.3~3.5質量%)であれば、従来技術よりも生産性が向上するが、その向上効果は小さいため、好ましくは、表層厚みは50mm以上とするのがよい。一方で、表層厚みが厚くなると、生産性は向上するが、50mmで飽和し、100mm以上にしても生産性は向上しない。この理由は、表層厚みを厚くするのに伴い、表層の歩留は向上するが、焼成速度が低下するためである。そのため、表層は、少なくとも原料層の表面から表面下50mmまでの間の層を含むのが望ましい。
【0035】
更に、本発明においては、固体可燃物の濃度偏析は、表層と下層の2段のみとする(2段偏析)ことに限定されずに、例えば、表層と下層の中間に中間層を設けて多段偏析としてもよい。また、上層と下層において、一方又は双方に、上述した表層及び/又は下層の濃度の範囲内で、濃度勾配や濃度変動をつけても構わない。上述した2段偏析では、50mm超の部分を下層とするが、中間層を設ける場合は、下層は、少なくとも原料層の表面下150mmを起点として、それよりも下方の層を含むようにするのがよい。その際、中間層の固体可燃物の濃度を表層の固体可燃物の濃度より低くし、下層の濃度より高くすると、2段偏析において、表層よりすぐ下の層で固体可燃物の濃度が低くなることで温度差が大きくなって歩留が低下する影響を少なくすることができる。
【0036】
また、原料充填層に固体可燃物の濃度偏析を設けるにあたっては、表層及び下層(場合によっては更に中間層)に供給する焼結原料を別々の原料系統で調製して、別々の装入装置(ホッパ)から装入するようにしてもよく、或いは、分級機能を備えた装入装置を利用して、固体可燃物の濃度偏析を形成しながら焼結原料を装入するようにしてもよい。
【実施例
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
【0038】
(実験例1)
原料ホッパから切り出した原料に水分を添加して水分量が7.0質量%になるように調整し、また、平均固体可燃物濃度を3.3質量%にして造粒して、ドラムフィーダーからDL式焼結機のパレットに装入装置を用いて装入することで、原料充填層の下層として330mmの厚さで形成した。そのとき、造粒機において原料に添加する固体可燃物の量を変化させ、下層に装入する焼結原料の固体可燃物濃度を2.8~3.5質量%の範囲で変化させた。
【0039】
また、別の原料系統において、上記と同様に原料ホッパから切り出した原料に水分を添加して水分量が7.0質量%になるように調整し、また、平均固体可燃物濃度を3.5質量%にして造粒して、ドラムフィーダーからDL式焼結機のパレットに装入装置を用いて装入することで、原料充填層の中間層を125mmの厚さで形成した。そのとき、造粒機において原料に添加する固体可燃物の量を変化させ、中間層に装入する焼結原料の固体可燃物濃度を3.3~4.0質量%の範囲で変化させた。
【0040】
更にまた、別の原料系統において、やはり原料ホッパから切り出した原料に水分を添加して水分量が7.0質量%になるように調整し、また、平均固体可燃物濃度を5.0質量%にして造粒して、ドラムフィーダーからDL式焼結機のパレットに装入装置を用いて装入することで、原料充填層の表層を25mmの厚さ(実験番号5については厚さ50mm)で形成した。そのとき、造粒機において原料に添加する固体可燃物の量を変化させ、表層に装入する焼結原料の固体可燃物濃度を3.4~6.0質量%の範囲で変化させた。
【0041】
このようにして準備した実験番号1~5の原料充填層について、表層、中間層、及び下層の各層ごとに、それらを形成する焼結原料の充填厚み、固体可燃物濃度、焼結原料の粒度を表1にまとめて示す。この実験例1では、固体可燃物として粉コークス、無煙炭、スケールを使用しており、固体可燃物の質量は、その発熱量を全てコークスの発熱量に換算して算出したコークス相当質量とした。そして、固体可燃物濃度(C濃度:質量%)は、各層において、固体可燃物、焼結鉱、石灰石、及びその他の副原料を混練して造粒した焼結原料(装入原料)の全体の質量に対する、固体可燃物の質量(コークス相当質量)の割合を表す。
【0042】
【表1】
【0043】
次に、上記で準備した実験番号1~5の原料充填層について、それぞれ、図1に示したように、焼結機の下部から排気ブロアで空気を吸引するとともに、点火器6で原料充填層の表層に着火(点火)した。また、実験番号3~5については、点火器6で原料充填層の表層に点火した後、およそ2.5m/minの移動速度で移動するパレット12の移動に伴い、原料充填層の点火部が進行方向下流側に3.75m程度移動したところで、該点火部に対してフレーム加熱装置7で再点火を行った。このとき、原料充填層の点火部を再点火するのは、最初の点火からおよそ90秒後である。また、排気ブロアの吸引圧は1000mmAqになるように吸引空気量を調整し、焼結が終了するまでこれを維持した。そして、焼結が完了したことを示す排ガス温度が一旦上昇したあと、下降するBTP(Burn Through Point)が確認された時点で焼結を終了した。
【0044】
焼結終了後、原料充填層の表層の部分、中間層の部分、下層の部分からそれぞれ焼結鉱を抜き出し、燃焼性の炭素(C)割合を分析して、未燃分の固体可燃物の質量割合を算出した。その際、コークス相当質量に換算して未燃コークス濃度(未燃C:質量%)を求めて、表層で確認された未燃コークス濃度、及び各層の値を平均して求めた原料充填層全体での未燃コークス濃度を算出した。
また、焼結機の排鉱部から排出した焼結鉱について、クラッシャーで破砕した後、篩にかけて5mm以上のものを製品として歩留を求めた。これらの結果を表1にまとめて示す。なお、実験番号1の原料充填層(再点火なし、固体可燃物の濃度偏析なし)から焼結鉱を得るまでに要した時間を基準にして、表1には、各実験番号に係る原料充填層から焼結鉱を得るのに要した時間を記している。
【0045】
表1に示した結果より、先ず、実験番号1と2を比較すると、上層、中層、下層で固体可燃物の割合の偏析をつけることで歩留及び焼結時間の改善が見られる。また、実験番号3~5のように、偏析をつけたことに加えて再点火を行うことで、更に歩留まり改善が見られる。但し、実験番号3及び5では、実験番号2の場合に比べて僅かに焼結時間が長くなってしまうが、実験番号4のように原料充填層全体での固体可燃物濃度を低くすることで、歩留を維持したまま焼結時間を短くできることが分かる。したがって、本発明によれば、表層の固体可燃物の濃度を高くしながらも、未燃分を減らして熱として有効活用できるようになり、焼成速度を高めつつ、歩留まりを高めて、生産性に優れて焼結鉱を製造することができるようになる。
【符号の説明】
【0046】
1:原料層、2:燃焼帯、3:焼結完了層、4:表層、5:下層、6:点火器、7:フレーム加熱装置、8:空気、9:ダクト、10:パレット進行方向、11:ホッパ、12:パレット、13:レール又はトラックガイド、14:駆動輪、15:遊動輪、16:風箱、17:大気吸引領域。
図1
図2
図3