(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電子機器の放熱構造
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20221220BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G06F1/20 C
H05K7/20 V
G06F1/20 B
(21)【出願番号】P 2018161544
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和樹
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-124299(JP,A)
【文献】特開2008-152418(JP,A)
【文献】特開2017-175080(JP,A)
【文献】特開2008-235932(JP,A)
【文献】特開平09-198483(JP,A)
【文献】特開2012-150395(JP,A)
【文献】特開2005-285522(JP,A)
【文献】特開2005-116564(JP,A)
【文献】登録実用新案第3132340(JP,U)
【文献】特開2005-222437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0074995(US,A1)
【文献】特開2017-194799(JP,A)
【文献】特開2020-088070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグイン物品が挿入されるスロットと、
前記スロットの側面に設けられた開口部からその一部が前記スロットの内側へと突出する放熱ユニットであって、前記プラグイン物品が前記スロットへ挿入されたときに前記プラグイン物品の放熱部と接触する受熱部、
前記受熱部が一主表面に取り付けられた放熱板、前記放熱板の他主表面に取り付けられた放熱器、前記放熱板の前記他主表面に取り付けられたファン、及び前記受熱部が前記スロットの前記開口部から前記スロットの内側へと突出するよう
前記放熱板を付勢する付勢部材を含む放熱ユニットと、を有する電子機器の放熱構造。
【請求項2】
前記放熱ユニットの前記付勢部材は、前記放熱板を、前記スロットへと押圧するバネである、請求項
1に記載の電子機器の放熱構造。
【請求項3】
前記放熱ユニットの前記付勢部材は、前記放熱板を前記スロットへと押圧するロケータプレート、ロケータホール及びピンを含む機構である、請求項
1に記載の電子機器の放熱構造。
【請求項4】
前記プラグイン物品はプラグインカードであり、
前記プラグインカードは、その一主表面に露出する放熱部であって、前記プラグインカードが前記スロットへ挿入されたときに前記放熱ユニットの前記受熱部と接触する放熱部を含む、請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の電子機器の放熱構造。
【請求項5】
前記受熱部は、前記スロットの内側へと突出する部分に傾斜面を有する、請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の電子機器の放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の放熱構造に関し、特にスロットにプラグイン物品が挿入される電子機器の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインカードのようなプラグイン物品がスロットに挿入される電子機器が、知られている。このような電子機器でスロットにプラグインカードが挿入された状態でのプラグインカードの熱を放熱するための手段としては、プラグインカードの発熱体からの熱を発熱体周囲の空気に放熱することが一般的である。特に発熱体の発熱が大きい場合には、ヒートシンクを発熱体に実装し、ヒートシンクの多数のフィンにより空気との接触面積を増やすことで、より多くの熱を空気中に放熱すること、また、発熱体周囲の空気の流速を増加させることで、より多くの熱を空気中に放熱するのが一般的である。
【0003】
図1は、電子機器の外観を説明するための斜視図である。
図1の電子機器は、スロットを有する電子通信機器200と、電子通信機器200が固定される例えば一対のキャビネットラックマウント300と、電子通信機器200のスロットに挿抜可能に挿入されるプラグインカード100とを含んで、構成される。
【0004】
図2Aは複数のプラグイン物品がスロットに挿入される電子機器の放熱構造の一例を説明するための概念図であり、
図2Bは一つのプラグイン物品がスロットに挿入される電子機器の放熱構造の一例を説明するための概念図である。
図2Aや
図2Bの電子回路基板110に搭載される部品からの熱は、ファンユニット202の働きによって矢印の方向へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-154888号公報
【文献】特開平10-198462号公報
【文献】特開平11-233987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1の電子通信機器200のスロットに挿入されたプラグインカード100が発熱性の部品である場合、そのプラグインカード100の放熱について考慮する必要がある。
【0007】
近年の、電子回路の高集積化により、LSI(Large Scale Integrated circuit)をはじめとする電子デバイスの消費電力は増加し、発熱体へのヒートシンクの実装や、発熱体周囲の空気の流速を増加させるためのファンの高速化、プラグインカードの容積の範囲への放熱では、限界にきている。
【0008】
例えば、プラグインカード内の発熱を、サブラックの筐体に伝達する場合、プラグインカードは挿抜可能な機能が必要であることから、挿入時にプラグインカードの放熱部とサブラックの受熱部が確実に密着する構造が必要である。ピザBOX型の筐体については、筐体の高さ寸法が50mm程度と小型の装置に用いられる筐体であり、ファンを用いた強制空冷仕様にする場合に適用可能なファンモータは50mm未満のものに限定され、風量の大きなファンを収容することが困難である。このため可能であれば、自然空冷化が望ましい。
【0009】
特許文献1は、パッケージングが密閉筐体にプラグイン実装される電子装置の冷却構造に関するものであり、パッケージングの発熱部品の面に熱的に接触するヒートシンクを密閉筐体に設けることが提案されている。特許文献1では、プラグイン実装されたパッケージングの発熱部品からの熱は、上記ヒートシンクへと移動し、さらに密閉筐体の外表面に露出した外部ヒートシンクへと移動して、密閉筐体の筐体外雰囲気へと放熱させている。
【0010】
特許文献2は、ICカードスロットを有する電子装置の放熱構造に関するものであり、ICカードからの熱はICカードの両側辺に位置するガイドレール部に伝熱され、さらにガイドレール部の外側の放熱フィンから放熱させることが、提案されている。
【0011】
特許文献3は、プラグインパッケージがプラグインされる電子機器筐体の冷却構造に関するものである。特許文献3では、プラグインパッケージが電子機器筐体にプラグインされたときに、プラグインパッケージの発熱部品に可動型ヒートシンクの熱伝導部材を接触させること、この熱伝導によって電子機器筐体の外部へ放熱させることが、提案されている。
【0012】
しかしながら特許文献1、特許文献2、特許文献3ではいずれも解決すべき課題がある。特許文献2のように、ICカードからの熱をICカードの両側辺に位置するガイドレール部に伝熱させる放熱構造では、ICカードの発熱体がICカードの中央に位置する場合、発熱体から放熱構造のガイドレール部が遠く、ICカードのケースは薄い金属板であるため、ガイドレール部までの放熱経路の断面積が小さい。また一般的に、コネクタ嵌合するICカードとガイドレール部の間はコネクタの実装位置の公差範囲内でのズレが生じるため、ICカードとガイドレール部とは面接触が困難である。このため、特許文献2の放熱構造では、ICカードとガイドレール部とは接触面積が小さいものとなり、放熱部までの熱抵抗が大きく、放熱部からの熱を効果的に放熱することが困難である。
【0013】
特許文献1の冷却構造では、プラグイン実装されるパッケージングの発熱部品の面にヒートシンクを接触させるため、パッケージングの発熱部品からヒートシンクを介して放熱部まで至る放熱経路が遠く、放熱経路の断面積が小さい。このため特許文献1の冷却構造では、プラグインパッケージの発熱部品からの熱を効果的に放熱することが困難である。
【0014】
特許文献3の冷却構造も特許文献1の冷却構造とほぼ同様であり、プラグインパッケージの発熱部品に可動型ヒートシンクの熱伝導部材を接触させるため、プラグインパッケージの発熱体から可動型ヒートシンクを介して放熱部まで至る放熱経路が遠く、放熱経路の断面積が小さい。このため特許文献3の冷却構造では、プラグインパッケージの発熱部品からの熱を効果的に放熱することが困難である。
【0015】
本発明の目的は、プラグイン物品がスロットへ挿入された状態で、プラグイン物品の放熱部からの熱を効率的にスロットの外側へと放出することができる電子機器の放熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明に係る電子機器の放熱構造は、
プラグイン物品が挿入されるスロットと、
上記スロットの側面に設けられた開口部からその一部が上記スロットの内側へと突出する放熱ユニットであって、上記プラグイン物品が上記スロットへ挿入されたときに上記プラグイン物品の放熱部と接触する受熱部、及び上記受熱部が上記スロットの上記開口部から上記スロットの内側へと突出するよう付勢する付勢部材を含む放熱ユニットと、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラグイン物品がスロットへ挿入された状態で、プラグイン物品の放熱部からの熱を効率的にスロットの外側へと放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電子機器の外観を説明するための斜視図である。
【
図2A】複数のプラグイン物品がスロットに挿入される電子機器の放熱構造の一例を説明するための概念図である。
【
図2B】一つのプラグイン物品がスロットに挿入される電子機器の放熱構造の一例を説明するための概念図である。
【
図3】実施形態のプラグイン物品の一例としてのプラグインカードを説明するための概観図である。
【
図4】実施形態のプラグインカードが電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカードと電子機器の断面図である。
【
図5】第1実施形態による電子機器の放熱構造を説明するための、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
【
図6】
図5の放熱ユニット22を説明するための、分解図である。
【
図7】
図5のプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
【
図8】第2実施形態による電子機器の放熱構造を説明するための、プラグインカードと電子機器の断面図である。
【
図9】
図8のプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
【
図10】放熱板を、スロットへと押圧するロケータプレート、ロケータホール及びピンを含む機構を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的な実施形態について説明する前に、実施形態を概観する。
図3は、実施形態のプラグイン物品の一例としてのプラグインカードを説明するための概観図である。
図4は、実施形態のプラグインカードが電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカードと電子機器の断面図である。
【0020】
図3はプラグイン物品の一例としてのプラグインカードであり、電子回路基板110や、放熱部に接触する放熱部120を含む。
図3の点線は、プラグインカードの大まかな外形を示しており、放熱部120の一主表面はプラグインカードの外形に面している。
【0021】
図3のプラグインカードは
図4の矢印に示すように、電子機器のスロットに対して挿抜可能であり、電子機器のスロットの中で前後に移動可能である。
図3のプラグインカードは
図4に示すように、電子機器のスロットに挿入され、プラグインカードに実装されるプラグインコネクタは電子機器のマザーボード210の表面のコネクタと嵌合し、電気的に接続される。実施形態の電子機器の放熱構造では、電子機器のスロットに対し
図4の矢印で示す上下方向に可動する放熱器260と、放熱器260と共に可動する受熱部250とをさらに含む。受熱部250は、プラグインカードが電子機器のスロットに挿入されたときに、プラグインカードの放熱部120の一主表面と広い面積に渡って接触し、密着する。プラグインカードの放熱部120からの熱は、受熱部250へと伝えられ、さらに放熱器260から放出される。
【0022】
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態による電子機器の放熱構造について、説明する。本実施形態では、プラグイン物品の一例としてのプラグインカード10がスロットに挿入される電子機器について説明する。
【0023】
(構成)
図5は、本実施形態による電子機器の放熱構造を説明するための、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
図6は、
図5の放熱ユニット22を説明するための、分解図である。
【0024】
図5のプラグインカード10は、電子機器のスロットに挿入されるプラグイン物品であり、発熱体からの熱が伝えられる放熱部11と、プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されたときに電子機器のコネクタに電気的に接続されるプラグインコネクタ13と、を含む。
図5のプラグインカード10の点線は大まかな外形を示しており、放熱部120の一主表面はプラグインカード10の外形に面している。このような構造は、例えばプラグインカード10のケーシングの一部に開口部が形成されており、この開口部から放熱部11が露出しているような態様で、実現される。放熱部11は、プラグインカード10内の電子デバイスの放熱面に実装された、高熱伝導性の、例えば金属等の高熱伝導性素材により形成される放熱プレートで構成することができる。
【0025】
図5の電子機器は、開口部20aを有する装置筐体20、ガイドレール21、放熱ユニット22、コネクタ23などを含む。
【0026】
ガイドレール21は、電子機器のスロットとしての装置筐体20に形成されており、電子機器のスロットへのプラグインカード10の挿抜方向を規制して、電子機器のスロットにプラグインカード10が挿入されたときにプラグインカード10のプラグインコネクタ13と電子機器のコネクタ23との安定的な接続を可能とする。
【0027】
放熱ユニット22は、受熱部25と、放熱フィンやヒートシンクなどの放熱器26と、放熱板26aと、バネ27と、ファン40と、を含む。放熱ユニット22の受熱部25は、装置筐体20の側面に設けられた開口部20aからのその一部が装置筐体20の内側へと突出している。受熱部25が装置筐体20の内側へと突出している範囲は、
図5に矢印と共に「放熱器可動ストローク」として示している。
【0028】
受熱部25は放熱板26aの一主表面に設けられ、放熱器26やファン40は放熱板26aの他主表面に設けられている。
図5の放熱ユニット22では、放熱器26やファン40が放熱板26aを中心にして受熱部25の真反対側に設けられた場合を示している。放熱ユニット22の受熱部25は、放熱のための機能部であるフィン本体の放熱器26と分離が可能で、プラグインカード10の外形に応じて交換が可能とすることができる。これにより、放熱器26、及び放熱ユニット22の一部である受熱部25のバリエーションにより、あらゆる外形仕様のプラグインカードに対応可能な機構を実現する。バネ27は、付勢部材の一例であり、受熱部25がスロットの開口部20aからスロットの内側へと突出するよう付勢する。
【0029】
放熱ユニット22の具体例について、
図6の分解図を参照して説明する。放熱ユニット22は、
図6に示すように、ネジ24、受熱部25、放熱器26、放熱板26a、バネ27、放熱ユニットベース28、カバー29などを含む。バネ27と放熱板26aとを介在させた状態で、カバー29と放熱ユニットベース28とがネジ24で固定される。そしてこのような放熱ユニット22は、放熱ユニットベース28と装置筐体20とがネジ24で固定され、装置筐体20に取り付けられる。バネ27は、プラグインカード10が挿入される装置筐体20の内側へと受熱部25が開口部20aから突出するよう、付勢する。バネ27は、プラグインカード10の挿入により、放熱器26の上面位置に受熱部25の位置が追従するよう、
図5に矢印で示す押圧方向へ押圧する。
【0030】
(動作)
本実施形態による電子機器の放熱構造の動作について説明する。
図7は、
図5のプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
【0031】
プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されていない状態では、
図5に「放熱器可動ストローク」として示す範囲だけ放熱ユニット22の受熱部25は装置筐体20の内側へと、バネ27の働きにより突出している。
【0032】
プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されてプラグインカード10の角部が放熱ユニット22の受熱部25に接触すると、放熱ユニット22は
図7の押圧方向の矢印とは反対方向へ押し上げられる。プラグインカード10が電子機器のスロットへ押し込まれると、プラグインカード10のプラグインコネクタ13と電子機器のコネクタ23とが嵌合し、安定的に接続される。そしてこのプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態では、プラグインカード10の放熱部11の一主表面と放熱ユニット22の受熱部25の一主表面とが広い面積に渡って接触し、密着した状態となる。バネ27の押圧方向で示す押圧力により、プラグインカード10の放熱部11と放熱ユニット22の受熱部25とが接触した状態が維持される。このようにプラグインカード10の抜挿に連動して、放熱ユニット22は可動可能な機構で構成される。
【0033】
(効果)
本実施形態によれば、プラグインカード10の放熱部11からの熱は、放熱ユニット22の受熱部25へと伝えられ、放熱ユニット22の放熱器26やファン40の働きにより装置筐体20の外部へと放出される。これにより、プラグインカード10が装置筐体20へ挿入された状態で、プラグインカード10の放熱部11からの熱を効率的に装置筐体20の外側へと放出することができる。本実施形態では、プラグインカード10の放熱部11からの熱は、装置筐体20の上方へと放出することができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による電子機器の放熱構造について、説明する。本実施形態では第1実施形態と同様に、プラグイン物品の一例としてのプラグインカード10がスロットに挿入される電子機器について説明する。また第1実施形態と同様な要素に対しては同じ参照番号を付して、その詳細な説明を省略することとする。
【0035】
(構成)
図8は、本実施形態による電子機器の放熱構造を説明するための、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
図8のプラグインカード10は、
図5のプラグインカード10と同様な、電子機器のスロットに挿入されるプラグイン物品である。
図8のプラグインカード10は、発熱体からの熱が伝えられる放熱部11と、プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されたときに電子機器のコネクタに電気的に接続されるプラグインコネクタ13と、を含む。
図8のプラグインカード10の点線は大まかな外形を示しており、放熱部120の一主表面はプラグインカード10の外形に面している。このような構造は、例えばプラグインカード10のケーシングの一部に開口部が形成されており、この開口部から放熱部11が露出しているような態様で、実現される。
【0036】
図8の電子機器は、開口部30aを有する装置筐体30、ガイドレール31、放熱ユニット32、コネクタ33、ファン50などを含む。
【0037】
ガイドレール31は、電子機器のスロットとしての装置筐体30に形成されており、電子機器のスロットへのプラグインカード10の挿抜方向を規制して、電子機器のスロットにプラグインカード10が挿入されたときにプラグインカード10のプラグインコネクタ13と電子機器のコネクタ33との安定的な接続を可能とする。
【0038】
放熱ユニット32は第1実施形態の放熱ユニット22と同様に、受熱部35と、放熱フィンやヒートシンクなどの放熱器36と、放熱板36aと、バネ37と、を含む。放熱ユニット32の受熱部35は、装置筐体30の側面に設けられた開口部30aからのその一部が装置筐体30の内側へと突出している。受熱部35が装置筐体30の内側へと突出している範囲は、
図8に矢印と共に「放熱器可動ストローク」として示している。受熱部35は第1実施形態の受熱部25と同様に、放熱板36aの一主表面に設けられている。本実施形態では第1実施形態とは異なり、放熱器36は放熱板36aの上記一主表面であって受熱部35が取り付けられた位置とは異なる位置に取り付けられている。放熱ユニット32の受熱部35は、放熱のための機能部であるフィン本体の放熱器36と分離が可能で、プラグインカード10の外形に応じて交換が可能とすることができる。これにより、放熱器36、及び放熱ユニット32の一部である受熱部35のバリエーションにより、あらゆる外形仕様のプラグインカードに対応可能な機構を実現する。バネ37は、付勢部材の一例であり、受熱部35がスロットの開口部30aからスロットの内側へと突出するよう、付勢する。より具体的にはバネ37は、受熱部35がスロットの開口部30aからスロットの内側へと突出するように、放熱板36aを付勢している。バネ37は、プラグインカード10の挿入により、放熱器36の上面位置に受熱部35の位置が追従するよう、
図8に矢印で示す押圧方向へ押圧する。
【0039】
(動作)
本実施形態による電子機器の放熱構造の動作について説明する。
図9は、
図7のプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態の、プラグインカード10と電子機器の断面図である。
【0040】
プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されていない状態では、
図8に「放熱器可動ストローク」として示す範囲だけ放熱ユニット32の受熱部35は装置筐体30の内側へと、バネ37の働きにより突出している。
【0041】
プラグインカード10が電子機器のスロットに挿入されてプラグインカード10の角部が放熱ユニット32の受熱部35に接触すると、放熱ユニット32は
図9の押圧方向の矢印とは反対方向へ押し上げられる。プラグインカード10が電子機器のスロットへ押し込まれると、プラグインカード10のプラグインコネクタ13と電子機器のコネクタ33とが安定的に接続される。そしてこのプラグインカード10が電子機器のスロットに挿入された状態では、プラグインカード10の放熱部11の一主表面と放熱ユニット32の受熱部35の一主表面とが広い面積に渡って接触した状態となる。バネ37の押圧方向で示す押圧力により、プラグインカード10の放熱部11と放熱ユニット32の受熱部35とが接触した状態が維持される。このようにプラグインカード10の抜挿に連動して、放熱ユニット32は可動可能な機構で構成される。
【0042】
(効果)
本実施形態によれば、プラグインカード10の放熱部11からの熱は、放熱ユニット32の受熱部35へと伝えられ、放熱ユニット32の放熱器36の働きにより装置筐体30の外部へと放出される。すなわち、
図8に一点鎖線の矢印で示す放熱経路に沿って、プラグインカード10の放熱部11からの熱は、放熱ユニット32の受熱部35、放熱板36a、放熱器36へと伝えられる。また放熱器36へ伝えられた熱は、ファン50の働きによりさらに外部へと排出される。これにより、プラグインカード10が装置筐体30へ挿入された状態で、プラグインカード10の放熱部11からの熱を効率的に装置筐体30の外側へと放出することができる。
【0043】
本実施形態によれば第1実施形態とは異なり、電子機器の装置背面方向へ放熱することができる。また放熱器36が受熱部35と同じく放熱板36aの一主表面に配置されていることにより、第1実施形態と比較して、装置の高さ寸法を小さくし、サーバーラック等、背面に放熱するようなアプリケーションに適用することができる。また
図8に示す放熱ユニット32の受熱部35からフィン根本までの放熱経路に沿って、ヒートパイプ等の高熱輸送デバイスを用いることで、筐体内の発熱を電子機器の装置背面側に放熱することができる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
以上好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限られるものではなく、様々な変更や異なる実現手段の採用が可能である。例えば、上述した実施形態では、受熱部がスロットの開口部からスロットの内側へと突出するよう付勢する付勢部材としてバネを用いた場合で説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、プラグインカードの挿抜に追従して、装置筐体の一部として可動可能な放熱器となるような機構で構成してもよい。例えば
図10に示すような、放熱器66の放熱板を、スロットへと押圧するロケータプレート61、ロケータホール62及びピン63を含む機構で構成することも考えられる。
図10のロケータプレート61は、破線で示されている。プラグインカードをスロットに挿入した後にロケータプレート61をスライドさせることで、放熱器66側に設けられたピン63がロケータホール62の形状に追従して下方向に移動させる。このようなプラグインカードの挿抜に追従して、装置筐体の一部として可動可能な放熱器となるような機構で構成できる。
【0045】
なお
図5の放熱ユニット22、
図8の放熱ユニット32や
図10の機構は、上述した説明から理解されるように交換可能に構成できる。また
図5の放熱ユニット22の放熱器26や受熱部25、
図8の放熱ユニット32の放熱器36や受熱部35は交換可能に構成できる。
【0046】
またプラグイン物品は、上述した実施形態のプラグインカードに限られず、電子機器のスロットに挿入されるプラグインモジュールやプラガブルモジュールでも実現できる。
【0047】
放熱ユニット22の受熱部25は
図5に示すように、スロットの内側へと突出する部分に傾斜面25aを有するように構成することができる。また放熱ユニット32の受熱部35は
図8に示すように、スロットの内側へと突出する部分に傾斜面35aを有するように構成することができる。これにより、スロットへのプラグインカード10の挿入と、放熱ユニット22、32の押し上げと、プラグインカード10の放熱部11の一主表面と放熱ユニット22、32の受熱部25、35の一主表面とが広い面積に渡って接触した状態への遷移とを、円滑化することができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10 プラグインカード
11 放熱部
20 装置筐体
20a 開口部
21 ガイドレール
22 放熱ユニット
23 コネクタ
24 ネジ
25 受熱部
25a 傾斜面
26 放熱器
26a 放熱板
27 バネ
28 放熱ユニットベース
28a 開口部
29 カバー
30 装置筐体
30a 開口部
31 ガイドレール
32 放熱ユニット
35 受熱部
35a 傾斜面
36 放熱器
36a 放熱板
37 バネ
40 ファン
50 ファン
61 ロケータプレート
62 ロケータホール
63 ピン
66 放熱器