(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置および熱伝導積層体
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G03G15/20 515
(21)【出願番号】P 2018164381
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和善
(72)【発明者】
【氏名】小柳 聖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴亮
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072780(JP,A)
【文献】特開2016-153856(JP,A)
【文献】特開2015-179147(JP,A)
【文献】特開2015-118365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録材に接触する接触部と、
記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、
前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、
前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短
く、
前記加熱源の前記発熱部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短く、
前記高熱伝導部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と中央部とで等しいことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とは、前記幅方向の中央部では重なっていないことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
搬送される記録材に接触する接触部と、
記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、
前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、
前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、
前記高熱伝導部は、前記幅方向の全域に亘って前記発熱部に重なっていない領域を有することを特徴とす
る定着装置。
【請求項4】
前記高熱伝導部は、前記発熱部に重なっていない領域が、当該発熱部に対して前記搬送方向の上流側に位置することを特徴とする
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱源は、前記幅方向に沿って設けられ、前記発熱部に電力を供給する電極部を備え、
前記高熱伝導部は、前記発熱部に重なっていない領域が、前記電極部に重なっていることを特徴とする
請求項3に記載の定着装置。
【請求項6】
前記高熱伝導部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短いことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱源の前記発熱部は、前記幅方向の両端部において、前記搬送方向の全域で前記高熱伝導部と重なっていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記加熱源の前記発熱部は、前記幅方向の中央部と比較して当該幅方向の両端部の発熱量が大きいことを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
搬送される記録材に接触する接触部と、
記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、
前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、
前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、
前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面に接触するように設けられ、前記高熱伝導部と比較して熱伝導率が低い低熱伝導部をさらに有し、
前記高熱伝導部は、前記低熱伝導部を介して前記加熱源の前記反対面上に積層され、
前記低熱伝導部は、前記高熱伝導部と同じ形状を有していることを特徴とす
る定着装置。
【請求項10】
搬送される記録材に接触する接触部と、
記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、
前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、
前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、
前記高熱伝導部は、それぞれが、前記搬送方向に延びる板状形状を有し、前記発熱部と当該搬送方向に重なっている長さが前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短い複数の板状部材と、熱伝導性の粘性液体とが交互に積層されていることを特徴とす
る定着装置。
【請求項11】
記録材への画像形成を行う画像形成手段と、当該画像形成手段により形成された画像を記録材に定着する定着装置とを備え、当該定着装置が、
請求項1乃至10の何れかに記載の定着装置により構成された画像形成装置。
【請求項12】
それぞれが、金属からなり、長手方向に延びる板状形状を有し、且つ当該長手方向に交差する短手方向に沿った長さが、当該長手方向の両端部と比較して当該長手方向の中央部で短い複数の金属板と、
熱伝導性の粘性液体と
が交互に積層され、他の部材から供給された熱を前記長手方向に伝導する熱伝導積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置および熱伝導積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、基板に発熱体が設けられた加熱体と、この加熱体に摺動するフィルムとを備える定着装置において、加熱体のフィルムとの接触側とは反対側に高熱伝導部材を設けることで非通紙部の昇温を抑制する技術が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定着装置では、例えば、加熱源を用いて記録材に接触するベルト等の接触部を加熱し、加熱した接触部を記録材に接触させて、記録材上の画像を記録材に定着する。
このような定着装置では、例えば加熱源と比較して幅が小さい記録材に画像を定着する際に、両端部の非通紙領域において加熱源からの熱が消費されずに、接触部の温度が過度に上昇してしまうおそれがある。これを抑制するために、定着装置では、例えば接触部等と比べて熱伝導率が高い高熱伝導部を加熱源に重ねて設ける場合がある。
定着装置においてこのような高熱伝導部を設けた場合、例えば高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しいと、加熱源により接触部の加熱を開始する立ち上げの際に、接触部を予め定めた温度まで加熱するために要する時間が長くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、搬送される記録材に接触する接触部と、記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、前記加熱源の前記発熱部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短く、前記高熱伝導部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と中央部とで等しいことを特徴とする定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とは、前記幅方向の中央部では重なっていないことを特徴とする請求項1に記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、搬送される記録材に接触する接触部と、記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、前記高熱伝導部は、前記幅方向の全域に亘って前記発熱部に重なっていない領域を有することを特徴とする定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記高熱伝導部は、前記発熱部に重なっていない領域が、当該発熱部に対して前記搬送方向の上流側に位置することを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記加熱源は、前記幅方向に沿って設けられ、前記発熱部に電力を供給する電極部を備え、前記高熱伝導部は、前記発熱部に重なっていない領域が、前記電極部に重なっていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記高熱伝導部は、前記搬送方向に沿った長さが、前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短いことを特徴とする請求項3に記載の定着装置である。
請求項7に記載の発明は、前記加熱源の前記発熱部は、前記幅方向の両端部において、前記搬送方向の全域で前記高熱伝導部と重なっていることを特徴とする請求項6に記載の定着装である。
請求項8に記載の発明は、前記加熱源の前記発熱部は、前記幅方向の中央部と比較して当該幅方向の両端部の発熱量が大きいことを特徴とする請求項7に記載の定着装置である。
請求項9に記載の発明は、搬送される記録材に接触する接触部と、記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面に接触するように設けられ、前記高熱伝導部と比較して熱伝導率が低い低熱伝導部をさらに有し、前記高熱伝導部は、前記低熱伝導部を介して前記加熱源の前記反対面上に積層され、前記低熱伝導部は、前記高熱伝導部と同じ形状を有していることを特徴とする定着装置である。
請求項10に記載の発明は、搬送される記録材に接触する接触部と、記録材の搬送方向に交差する幅方向に延びる発熱部と、当該発熱部を支持する支持部とを備え、前記接触部に対向する対向面および反対面を有し、当該接触部を加熱する加熱源と、前記加熱源の前記発熱部と少なくとも一部で重なるように、前記幅方向に沿って前記反対面上に設けられ、前記支持部および前記接触部を構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い高熱伝導部とを有し、前記高熱伝導部と前記加熱源の前記発熱部とが重なっている領域の前記搬送方向に沿った長さは、前記幅方向の両端部と比べて当該幅方向の中央部で短く、前記高熱伝導部は、それぞれが、前記搬送方向に延びる板状形状を有し、前記発熱部と当該搬送方向に重なっている長さが前記幅方向の両端部と比較して当該幅方向の中央部で短い複数の板状部材と、熱伝導性の粘性液体とが交互に積層されていることを特徴とする定着装置である。
請求項11に記載の発明は、記録材への画像形成を行う画像形成手段と、当該画像形成手段により形成された画像を記録材に定着する定着装置とを備え、当該定着装置が、請求項1乃至10の何れかに記載の定着装置により構成された画像形成装置である。
請求項12に記載の発明は、それぞれが、金属からなり、長手方向に延びる板状形状を有し、且つ当該長手方向に交差する短手方向に沿った長さが、当該長手方向の両端部と比較して当該長手方向の中央部で短い複数の金属板と、熱伝導性の粘性液体とが交互に積層され、他の部材から供給された熱を前記長手方向に伝導する熱伝導積層体である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
請求項2の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが幅方向の中央部で重なっている場合と比較して、幅方向の中央部における接触部の温度上昇を促進することができる。
請求項3の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
請求項4の発明によれば、高熱伝導部の発熱部に重なっていない領域が発熱部に対して搬送方向の下流側に位置する場合と比較して、記録材に接触する前に接触部の温度むらを低減することができる。
請求項5の発明によれば、高熱伝導部の発熱部に重なっていない領域が電極部に重なっていない場合と比較して、加熱源が搬送方向に大型化することを抑制しながら高熱伝導部を搬送方向に大きくすることができる。
請求項6の発明によれば、高熱伝導部の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と幅方向の中央部とで等しい場合と比較して、高熱伝導部と発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短い状態を、簡易な形状の発熱部によっても実現することができる。
請求項7、8の発明によれば、発熱部が幅方向の両端部において搬送方向の全域で高熱伝導部と重なっていない場合と比較して、接触部の幅方向の両端部における過度な温度上昇を抑制することができる。
請求項9の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
請求項10の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
請求項11の発明によれば、高熱伝導部と加熱源の発熱部とが重なっている領域の搬送方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
請求項12の発明によれば、短手方向に沿った長さが長手方向の両端部と中央部とで等しい場合と比較して、例えば接触部を加熱する加熱源上に設けた場合に接触部の加熱に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】(a)~(b)は、定着装置の構成を説明する図である。
【
図4】加熱源および高熱伝導部の構成を説明する図である。
【
図5】(a)~(c)は、加熱源および高熱伝導部の構成を説明する図である。
【
図6】(a)~(c)は、実施形態2が適用される加熱源および高熱伝導部の構成を説明する図である。
【
図7】(a)~(c)は、実施形態3が適用される加熱源および高熱伝導部の構成を説明する図である。
【
図8】(a)~(c)は、実施形態4が適用される加熱源および高熱伝導部の構成を説明する図である。
【
図9】(a)~(b)は、実施形態5が適用される加熱源、高熱伝導部および低熱伝導部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1は、画像形成装置1の全体構成図である。
画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタである。
画像形成装置1は、画像形成手段の一例としての画像形成部10を備える。画像形成部10は、各色の画像データに基づき、記録材の一例である用紙Pへの画像形成を行う。
【0010】
また、画像形成装置1には、制御部30、画像処理部35が設けられている。
制御部30は、画像形成装置1に設けられた各機能部を制御する。
画像処理部35は、パーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置4等からの画像データに対して画像処理を施す。
【0011】
画像形成部10には、一定の間隔を置いて並列的に配置された4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(以下、総称して単に「画像形成ユニット11」とも称する)が設けられている。
各画像形成ユニット11は、現像器15(後述)に収納されるトナーを除いて、同様に構成されている。各画像形成ユニット11は、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像(画像)を形成する。
【0012】
画像形成ユニット11の各々には、感光体ドラム12、感光体ドラム12の帯電を行う帯電器200、感光体ドラム12への露光を行うLEDプリントヘッド(LPH)300が設けられている。
感光体ドラム12は、帯電器200による帯電が行われる。さらに、感光体ドラム12は、LPH300により露光され、感光体ドラム12には、静電潜像が形成される。
さらに、各画像形成ユニット11には、感光体ドラム12に形成された静電潜像を現像する現像器15、感光体ドラム12の表面を清掃するクリーナ(不図示)が設けられている。
【0013】
また、画像形成部10には、感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が転写される中間転写ベルト20、感光体ドラム12にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール21が設けられている。
また、画像形成部10には、中間転写ベルト20上に転写されたトナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール22、用紙Pに転写されたトナー像をこの用紙Pに定着させる定着装置40が設けられている。
【0014】
定着装置40には、加熱源を備えた定着ベルトモジュール50、および、加圧ロール60が設けられている。
定着ベルトモジュール50は、用紙搬送経路R1の図中左側に配置されている。加圧ロール60は、用紙搬送経路R1の図中右側に配置されている。さらに、定着ベルトモジュール50に対して、加圧ロール60が押し当てられている。
【0015】
定着ベルトモジュール50は、用紙Pに接触するフィルム状の定着ベルト51を備える。
接触部の一例としてのこの定着ベルト51は、例えば、最外層に位置し用紙Pに接触する離型層と、離型層の一つ内側に位置する弾性層と、この弾性層を支持する基層とにより構成される。
さらに、定着ベルト51は、無端状に形成され、図中反時計周り方向に循環移動する。また、定着ベルト51の内周面51Aには、潤滑のための潤滑剤が塗布されており、後述する加熱源等と定着ベルト51との摺動抵抗が減じられている。なお、潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素オイル等の液体状オイル、固形物質と液体とを混合させたグリース等、さらにこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。これらの潤滑剤は、熱伝導性の粘性液体の一例である。
【0016】
定着ベルト51は、図中下方から搬送されてくる用紙Pに接触する。そして、定着ベルト51のうちの用紙Pに接触した部分が、用紙Pとともに移動する。さらに、定着ベルト51は、加圧ロール60とともに用紙Pを挟み、この用紙Pを加圧および加熱する。
さらに、定着ベルトモジュール50には、定着ベルト51の内側に、定着ベルト51を加熱する加熱源(後述)が設けられている。
【0017】
加圧部材の一例としての加圧ロール60は、用紙搬送経路R1の図中右側に配置されている。加圧ロール60は、定着ベルト51の外周面51Bに押し当てられ、定着ベルト51と加圧ロール60との間を通る用紙P(用紙搬送経路R1を通る用紙P)を加圧する。
また、加圧ロール60は、モータ(不図示)により、図中時計回り方向に回転する。加圧ロール60が、時計回り方向に回転すると、定着ベルト51が、加圧ロール60から駆動力を受けて反時計回り方向に回転する。
【0018】
画像形成装置1では、画像処理部35が、PC3や画像読取装置4からの画像データに対して画像処理を施し、画像処理が施された画像データが、各画像形成ユニット11に供給される。
そして、例えば、黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器200により帯電され、画像処理部35から送信された画像データに基づいて発光するLPH300により露光される。
【0019】
これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色の画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は、現像器15により現像され、感光体ドラム12上には、黒(K)色のトナー像が形成される。
同様に、画像形成ユニット11Y,11M,11Cでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0020】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に、一次転写ロール21により順次静電吸引されて、中間転写ベルト20上には、各色トナーが重畳されたトナー像が形成される。
中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が位置する箇所(二次転写部T)に搬送される。そして、このトナー像が二次転写部Tに搬送されるタイミングに合わせて、用紙収容部1Bから二次転写部Tへ用紙Pが供給される。
【0021】
二次転写部Tでは、二次転写ロール22により形成される転写電界により、中間転写ベルト20上のトナー像が、搬送されてきた用紙Pに一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト20から剥離され、定着装置40まで搬送される。
【0022】
定着装置40では、用紙Pを、定着ベルトモジュール50と加圧ロール60とで挟む。具体的には、用紙Pを、反時計回り方向へ循環移動している定着ベルト51と、時計回り方向へ回転している加圧ロール60とで挟む。
これにより、用紙Pの加圧および加熱が行われて、用紙P上のトナー像が、この用紙Pに定着される。そして、定着が終了した後の用紙Pは、排出ロール500によって、用紙積載部1Eへ搬送される。
【0023】
図2、および
図3(a)~(b)は、定着装置40の構成を説明する図である。
図2は、定着装置40の断面図であり、より具体的には、定着ベルト51の後述する幅方向の中央部における定着装置40の断面図である。また、
図3(a)~(b)は、後述する加熱源52の構成を説明する図である。
【0024】
図2に示すように、定着装置40には、定着ベルトモジュール50、加圧ロール60が設けられている。
定着ベルトモジュール50には、用紙Pへのトナー像の定着に用いられる定着ベルト51が設けられ、この定着ベルト51が、用紙Pのうちのトナー像が形成された面に押し当てられる。
【0025】
加圧ロール60は、定着ベルト51の外周面51Bに押し当てられ、定着ベルト51と加圧ロール60との間を通る用紙Pを加圧する。
具体的には、加圧ロール60は、定着ベルト51の外周面51Bに接触するよう配置され、用紙Pが加圧されながら通過する領域であるニップ部Nを、定着ベルト51との間に形成する。本実施形態では、このニップ部Nを用紙Pが通過する過程で、用紙Pの加熱および加圧が行われて、用紙Pへのトナー像の定着が行われる。
以下の説明において、このニップ部Nにおける定着ベルト51の移動方向を、定着ベルト51の移動方向、または、単に移動方向と称する場合がある。なお、ニップ部Nにおける定着ベルト51の移動方向と、ニップ部Nを通過する用紙Pの搬送方向とは、一致する。また、この移動方向に直交する定着ベルト51の幅方向を、定着ベルト51の幅方向、または単に幅方向と称する場合がある。
【0026】
また、
図2に示すように、定着ベルトモジュール50には、定着ベルト51の内側に、定着ベルト51を加熱する加熱源52と、加熱源52からの熱を受ける高熱伝導部53とが設けられている。さらに、定着ベルトモジュール50には、定着ベルト51の内側に、高熱伝導部53を加熱源52に押し付ける押し付け部材54と、加熱源52、高熱伝導部53および押し付け部材54を支持する支持部材55とが設けられている。さらにまた、定着ベルトモジュール50には、定着ベルト51の内側に、加熱源52の温度を検知する温度センサ57が設けられている。
【0027】
加熱源52は、板状に形成され、定着ベルト51の移動方向および幅方向に沿うように設けられている。さらに、加熱源52は、定着ベルト51に対向する対向面52A、およびこの対向面52Aの反対側に位置する反対面52Bを有する。また、加熱源52は、対向面52Aと反対面52Bとを結ぶ2つの側面52Cを有する。この例では、加熱源52の対向面52Aは、定着ベルト51の内周面に接触している。
本実施形態では、加熱源52から定着ベルト51へ熱が供給されて、定着ベルト51の加熱が行われる。また、本実施形態では、定着ベルト51を介し、加熱源52の対向面52Aに対して、加圧ロール60が押し当てられている。
【0028】
図3(a)~(b)に示すように、加熱源52は、板状の基層521と、基層521の定着ベルト51側の表面に形成され且つ
図2の紙面と直交する方向である定着ベルト51(
図2参照)の幅方向に沿って延びる発熱層522および給電層523を備える。また、加熱源52は、絶縁性を有し、発熱層522および給電層523を被覆する保護層524を備える。
【0029】
加熱源52の基層521は、SUS等の金属材料から形成される基材上にガラス等からなる絶縁層が積層された構造を有する。また、基層521は、窒化アルミニウムやアルミナ等の絶縁性のセラミックス等から構成されてもよい。基層521の厚さは、定着ベルト51の幅方向に亘って一定となっている。言い換えると、基層521の厚さは、定着ベルト51の幅方向における両端部と中央部とで等しくなっている。さらに付言すると、基層521の熱容量は、定着ベルト51の幅方向における両端部と中央部とで等しくなっている。
【0030】
加熱源52の発熱層522は、発熱部の一例であって、電力が供給されることで発熱する抵抗発熱体である。発熱層522は、例えばAgPd等により構成される。この例では、発熱層522は、
図3(a)に示すように、定着ベルト51の幅方向に沿って設けられている。また、この例では、発熱層522の厚さは、定着ベルト51の幅方向に亘って一定となっている。さらに、定着ベルト51の移動方向に沿った発熱層522の径は、定着ベルト51の幅方向に亘って一定となっている。
なお、発熱層522による発熱量は、発熱層522に供給される電力および発熱層522の厚さが一定の場合、発熱層522に対する通電方向に直交する方向(この例では、定着ベルト51の移動方向)の径に反比例する。すなわち、発熱層522による発熱量は、定着ベルト51の移動方向に沿った発熱層522の径が小さいほど大きい。
【0031】
加熱源52の給電層523は、電極部の一例であって、発熱層522における幅方向の両端部にそれぞれ接続され、発熱層522に対して電力を供給する。給電層523は、例えば、Agや、発熱層522と比べてAgの含有比率が高いAgPd等の、発熱層522と比べて抵抗の低い金属により構成される。なお、給電層523は、発熱層522とは異なり、電流を流した場合であってもほとんど発熱しない。
この例では、
図3(a)に示すように、給電層523は、発熱層522に対して定着ベルト51の移動方向の上流側に隣接し且つ定着ベルト51の幅方向に沿って延びる延伸部523Aを有している。この例では、給電層523の延伸部523Aは、幅方向の一端(
図3(a)における右端)が折れ曲がることで、発熱層522の一端に接続されている。
【0032】
加熱源52の保護層524は、基層521上に設けられた発熱層522および給電層523を被覆し、これらを保護する。保護層524は、絶縁性を有する例えばガラスの焼成体により形成される。
【0033】
押し付け部材54(
図2参照)は、高熱伝導部53(
図2参照)と支持部材55(
図2参照)との間に設けられ、高熱伝導部53を加熱源52の反対面52Bに押し付ける。また、押し付け部材54は、高熱伝導部53の後述する複数の高熱伝導部材531同士を密着させる。
押し付け部材54は、例えば、圧縮ばねやゴム等の弾性を有する部材により構成され、弾性復元力によって高熱伝導部53を加熱源52に押し付ける。
【0034】
高熱伝導部53は、加熱源52の反対面52Bに接触配置され、加熱源52からの熱を受ける。なお、本実施形態の説明において接触配置とは、高熱伝導部53が加熱源52の反対面52Bに直接積層されている形態の他、例えば熱伝導性を有するグリース等を介して積層されている形態も含む。言い換えると、加熱源52は、高熱伝導部53に熱を供給する構成となっている。なお、加熱源52は、他の部材の一例である。
また、本実施形態の高熱伝導部53は、それぞれが板状の形状を有する複数の高熱伝導部材531が熱伝導性を有するグリース等を介して積層されることで構成されている。高熱伝導部53は、複数の高熱伝導部材531が積層されることで、全体としてブロック状の形状を有している。
【0035】
高熱伝導部53を構成するそれぞれの高熱伝導部材531は、定着ベルト51と、加熱源52における基層521および保護層524とを構成する材料の少なくとも一部と比較して熱伝導率が高い材料からなる。それぞれの高熱伝導部材531は、定着ベルト51を構成する材料と比較して熱伝導率が高い材料からなることが好ましい。
高熱伝導部材531を構成する材料としては、例えば、銅やアルミニウム等、又はSUS等の合金といった金属が挙げられる。また、それぞれの高熱伝導部材531を構成する材料は、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
本実施形態では、高熱伝導部53が、それぞれが板状の形状を有する複数の高熱伝導部材531が積層された構造を有することで、押し付け部材54により押し付けられた場合にそれぞれの高熱伝導部材531が独立して変形する。これにより、例えば高熱伝導部53がブロック状の単一の部材からなる場合と比較して、加熱源52の反対面52Bに対する高熱伝導部53の密着性を良好にすることができる。
【0037】
高熱伝導部53は、加熱源52のうち温度が高い部分の熱を、加熱源52のうち温度が低い部分へ供給する。
定着処理が行われる用紙Pの幅が小さい場合、加熱源52の幅方向における両端部であって加熱源52のうち用紙Pに接触しない部分である非通紙領域の温度が上昇する。かかる場合、加熱源52および定着ベルト51において幅方向に温度むらが生じる場合がある。そして、その後に幅が大きい用紙Pの定着処理を行うと、定着むらが生じるおそれがある。
これに対し、高熱伝導部53が設けられていると、加熱源52のうち温度が高い部分の熱が、加熱源52のうち温度が低い部分へ供給され、加熱源52および定着ベルト51の温度むらが低減される。
【0038】
ところで、加熱源52からの熱を受ける高熱伝導部53を設けた定着装置40では、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、加熱源52の発熱層522で発生した熱が、定着ベルト51だけでなく高熱伝導部53にも伝導する。このため、加熱源52の発熱層522と高熱伝導部53との関係によっては、加熱源52の発熱層522で発生した熱が定着ベルト51に伝わりにくくなり、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が長くなる場合がある。例えば、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが定着ベルト51の移動方向に重なっている長さが、定着ベルト51の幅方向の両端部と中央部とで等しい場合には、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が長くなりやすい。
【0039】
これに対し、本実施形態の定着装置40では、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが定着ベルト51の移動方向に重なっている長さを、定着ベルト51の幅方向の両端部と比べて中央部で長くすることで、定着ベルト51を加熱するのに要する時間が長くなることを抑制する。
以下、高熱伝導部53の構成および高熱伝導部53と加熱源52との関係について、詳細に説明する。
【0040】
図4、
図5(a)~(c)は、本実施形態が適用される加熱源52および高熱伝導部53の構成を説明する図である。
図4は、加熱源52および高熱伝導部53を示した斜視図である。また、
図5(a)は、加熱源52および高熱伝導部53を
図4のVA方向から見た平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVB部での断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のVC部での断面図である。なお、
図5(a)~(c)では、複数の高熱伝導部材531(
図4参照)を区別せずにまとめて高熱伝導部53として示している。また、以下では、複数の高熱伝導部材531を区別せずにまとめて高熱伝導部53として説明する場合がある。
【0041】
上述したように、高熱伝導部53は、全体として定着ベルト51の幅方向に沿って延びるブロック状の形状を有している。この例では、
図5(a)等に示すように、高熱伝導部53の幅方向に沿った長さは、加熱源52における発熱層522の幅方向に沿った長さと等しくなっている。
【0042】
また、
図4および
図5(a)に示すように、高熱伝導部53は、移動方向の上流側において幅方向に沿って延びる平面状の上流側面53Cと、上流側面53Cに対して移動方向の下流側で対向し、幅方向に沿って延びる下流側面53Dとを有している。この例では、下流側面53Dは、移動方向に沿った上流側面53Cからの距離が、幅方向の両端部と比較して幅方向の中央部で短くなっている。
これにより、本実施形態の高熱伝導部53は、移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比較して幅方向の中央部で短くなっている。言い換えると、本実施形態の高熱伝導部53は、幅方向の中央部に位置する短尺部53Aと、短尺部53Aの幅方向の両端部に位置し短尺部53Aと比較して移動方向に沿った長さが長い長尺部53Bとを有している。なお、この例では、短尺部53Aにおける幅方向の両端部は、長尺部53Bに近づくに従い移動方向に沿った長さが徐々に長くなっている。
【0043】
また、上述したように、加熱源52の発熱層522は、幅方向の一端から他端に亘って、定着ベルト51の移動方向に沿った長さが等しくなっている。
そして、本実施形態では、
図5(a)~(c)に示すように、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。ここで、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域とは、加熱源52に対して高熱伝導部53が積層される方向(
図5(a)において紙面に直交する方向)から見た場合に高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域を意味する。また、この領域の移動方向に沿った長さには、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっていない場合の長さ(すなわち、長さが0の場合)も含む。
【0044】
より具体的には、
図5(a)~(b)に示すように、幅方向の中央部では、高熱伝導部53の短尺部53Aと、加熱源52の発熱層522とは重なっていない。言い換えると、幅方向の中央部では、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、0となっている。
一方、
図5(a)、(c)に示すように、幅方向の両端部では、高熱伝導部53の長尺部53Bと、加熱源52の発熱層522とが重なっている。
これにより、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さ(
図5(c)において符号D1で示す)が、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。
【0045】
なお、本実施の形態において、高熱伝導部53または発熱層522の幅方向の両端部とは、高熱伝導部53または発熱層522の幅方向の両端に位置し幅方向に予め定めた長さを有する領域を意味する。同様に、高熱伝導部53または発熱層522の幅方向の中央部とは、高熱伝導部53または発熱層522の幅方向の中央に位置し幅方向に予め定めた長さを有する領域を意味する。
【0046】
そして、本実施形態では、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さがこのような関係を有することで、例えば、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比べて、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が短くなる。
【0047】
具体的に説明すると、幅方向の中央部では、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の両端部と比べて短いことで、加熱源52の発熱層522で発生した熱が、高熱伝導部53ではなく定着ベルト51へ伝導しやすくなる。この結果、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、発熱層522で発生した熱により定着ベルト51の温度が上昇しやすくなり、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が短くなる。
【0048】
ここで、上述したように、本実施形態では、幅方向の中央部では、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっていない。これにより、例えば、幅方向の中央部において高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている場合と比べて、加熱源52の発熱層522で発生した熱が、高熱伝導部53により伝導しにくくなり、定着ベルト51により伝導しやすくなる。この結果、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、幅方向の中央部において高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている場合と比べて発熱層522で発生した熱により定着ベルト51の温度がより上昇しやすくなり、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間がより短くなる。
【0049】
また、定着処理が行われる用紙の幅が小さい場合、上述したように、加熱源52の幅方向の両端部である非通紙領域の温度が上昇する。
これに対し、本実施形態では、幅方向の両端部において、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の中央部と比べて長いことで、発熱層522で発生した熱が高熱伝導部53に伝導しやすくなっている。そして、幅方向の両端部において高熱伝導部53へ伝導した熱は、高熱伝導部53を幅方向に伝導し、加熱源52のうち温度が低い部分である幅方向の中央部へ供給される。これにより、加熱源52および定着ベルト51の温度むらがより低減されやすくなる。
【0050】
ここで、
図5(c)等に示すように、幅方向の両端部では、加熱源52の発熱層522は、移動方向の全域で高熱伝導部53と重なっている。これにより、幅方向の両端部において加熱源52の発熱層522が高熱伝導部53と重なっていない領域を有する場合と比べて、発熱層522で発生した熱が高熱伝導部53へより伝導しやすくなる。この結果、加熱源52の幅方向の両端部である非通紙領域の温度が上昇した場合に、加熱源52および定着ベルト51の温度むらがより低減されやすくなる。
【0051】
さらに、
図5(a)に示すように、本実施形態の高熱伝導部53は、幅方向の一端から他端に亘って連続して加熱源52の発熱層522に重ならない領域を有している。これにより、加熱源52のうち温度が高い部分から高熱伝導部53へ伝導した熱が、この発熱層522に重ならない領域を幅方向へ伝導することで、加熱源52のうち温度が低い部分へ供給されやすくなる。これにより、例えば、加熱源52の幅方向の両端部である非通紙領域の温度が上昇した場合に、加熱源52および定着ベルト51の温度むらがより低減されやすくなる。
特に、本実施形態では、高熱伝導部53のうち上流側面53Cに隣接する移動方向の上流側の領域が、幅方向の一端から他端に亘って連続して発熱層522に重ならない領域となっている。これにより、高熱伝導部53によってニップ部Nに到達する前に定着ベルト51の温度むらが低減されやすくなる。
【0052】
また、本実施形態では、高熱伝導部53において幅方向の一端から他端に亘って連続して発熱層522に重ならない領域が、加熱源52における給電層523の延伸部523Aに重なるようになっている。これにより、高熱伝導部53の幅方向の一端から他端に亘って連続して発熱層522に重ならない領域が給電層523に重ならない場合と比べて、加熱源52が移動方向に大型化することを抑制しながら高熱伝導部53を移動方向に大きくすることができる。
【0053】
[実施形態2]
続いて、本発明の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明は省略する。
図6(a)~(c)は、実施形態2が適用される加熱源52および高熱伝導部53の構成を説明する図である。
図6(a)は、加熱源52および高熱伝導部53を、加熱源52に対して高熱伝導部53が積層される方向(
図4のVA方向に対応する方向)から見た平面図である。
図6(b)は、
図6(a)のVIB部での断面図であり、
図6(c)は、
図6(a)のVIC部での断面図である。なお、
図6(a)~(c)では、複数の高熱伝導部材531(
図4参照)を区別せずにまとめて高熱伝導部53として示している。
【0054】
実施形態2の高熱伝導部53は、実施形態1の高熱伝導部53と同様の形状を有している。すなわち、高熱伝導部53は、幅方向の中央部に位置する短尺部53Aと、短尺部53Aの幅方向の両端部に位置し短尺部53Aと比較して移動方向に沿った長さが長い長尺部53Bとを有している。
【0055】
また、実施形態2の加熱源52は、発熱層522の形状が、実施形態1の発熱層522と異なっている。
具体的に説明すると、実施形態2の発熱層522は、定着ベルト51の移動方向に沿った径が、幅方向の中央部と比較して幅方向の両端部で短くなっている。ここで、上述したように、発熱層522は、定着ベルト51の移動方向に沿った径が小さいほど、抵抗が高く発熱量が大きい。したがって、実施形態2の加熱源52では、幅方向の中央部と比べて幅方向の両端部のほうが、発熱層522に電力が供給された際の発熱量が大きい。
【0056】
そして、実施形態2では、高熱伝導部53および加熱源52の発熱層522が上述した形状を有することで、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。
これにより、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比べて、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が短くなる。
【0057】
さらに、
図6(a)、(c)等に示すように、加熱源52の発熱層522のうち発熱量が大きい幅方向の両端部は、移動方向の全域で高熱伝導部53と重なっている。これにより、発熱層522の幅方向の両端部で発生した熱が高熱伝導部53へより伝導しやすくなり、高熱伝導部53によって加熱源52および定着ベルト51の温度むらがより低減されやすくなる。
【0058】
[実施形態3]
続いて、本発明の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明は省略する。
図7(a)~(c)は、実施形態3が適用される加熱源52および高熱伝導部53の構成を説明する図である。
図7(a)は、加熱源52および高熱伝導部53を、加熱源52に対して高熱伝導部53が積層される方向(
図4のVA方向に対応する方向)から見た平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のVIIB部での断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のVIIC部での断面図である。なお、
図7(a)~(c)では、複数の高熱伝導部材531(
図4参照)を区別せずにまとめて高熱伝導部53として示している。
【0059】
実施形態3の加熱源52における発熱層522は、定着ベルト51の移動方向に沿った径が、幅方向の中央部と比較して幅方向の両端部で長くなっている。これにより、実施形態3の加熱源52では、幅方向の中央部と比べて幅方向の両端部のほうが、発熱層522に電力が供給された際の発熱量が小さい。
また、高熱伝導部53は、全体として幅方向に長尺の立方体形状を有している。言い換えると、高熱伝導部53を構成するそれぞれの高熱伝導部材531が、幅方向に長尺の長方形状を有している。これにより、実施形態3の高熱伝導部53は、移動方向に沿った長さが、幅方向の中央部と幅方向の両端部とで等しくなっている。
【0060】
そして、実施形態3では、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。言い換えると、実施形態3では、幅方向の中央部において高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さ(
図7(b)において符号D2で示す)が、幅方向の両端部において高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さ(
図7(c)において符号D3で示す)と比較して短くなっている(D2<D3)。
【0061】
これにより、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比べて、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が短くなる。
また、実施形態3では、加熱源52の発熱層522が、幅方向の中央部と比較して幅方向の両端部で移動方向に沿った径が長い形状を有することで、高熱伝導部53の形状を
図7(a)に示した立方体等の単純な形状にすることができる。
【0062】
[実施形態4]
続いて、本発明の実施形態4について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明は省略する。
図8(a)~(c)は、実施形態4が適用される加熱源52および高熱伝導部53の構成を説明する図である。
図8(a)は、加熱源52および高熱伝導部53を、加熱源52に対して高熱伝導部53が積層される方向(
図4のVA方向に対応する方向)から見た平面図である。
図8(b)は、
図8(a)のVIIIB部での断面図であり、
図8(c)は、
図8(a)のVIIIC部での断面図である。なお、
図8(a)~(c)では、複数の高熱伝導部材531(
図4参照)を区別せずにまとめて高熱伝導部53として示している。
【0063】
図8(a)に示すように、実施形態4の加熱源52は、定着ベルト51の移動方向に間隙を介して並び、それぞれが定着ベルト51の幅方向に沿って延びる複数(この例では2つ)の発熱層522を有している。具体的には、実施形態4の発熱層522は、加熱源52における移動方向の上流側に位置し幅方向に沿って延びる上流側発熱層522Bと、上流側発熱層522Bに対して間隙を介して移動方向の下流側に並び幅方向に沿って延びる下流側発熱層522Cとを有している。また、上流側発熱層522Bおよび下流側発熱層522Cは、給電層523の延伸部523Aに対して幅方向の一端で接続されている。
【0064】
発熱層522の上流側発熱層522Bは、定着ベルト51の移動方向に沿った径が、幅方向の一端から他端に亘って等しくなっている。一方、発熱層522の下流側発熱層522Cは、定着ベルト51の移動方向に沿った径が、幅方向の中央部と比較して幅方向の両端部で長くなっている。
【0065】
また、高熱伝導部53は、実施形態3と同様に、全体として幅方向に長尺の立方体形状を有している。言い換えると、高熱伝導部53を構成するそれぞれの高熱伝導部材531が、幅方向に長尺の長方形状を有している。これにより、実施形態4の高熱伝導部53は、移動方向に沿った長さが、幅方向の中央部と幅方向の両端部とで等しくなっている。
【0066】
そして、実施形態4では、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と加熱源52の発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。具体的には、高熱伝導部53と発熱層522の下流側発熱層522Cとが重なっている領域の移動方向に沿った長さが、幅方向の両端部と比べて幅方向の中央部で短くなっている。なお、発熱層522の上流側発熱層522Bは、幅方向の一端から他端に亘って、移動方向の全域で高熱伝導部53と重なっている。
【0067】
これにより、実施形態1と同様に、高熱伝導部53と発熱層522とが重なっている領域の移動方向に沿った長さが幅方向の両端部と中央部とで等しい場合と比べて、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間が短くなる。
【0068】
[実施形態5]
続いて、本発明の実施形態5について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明は省略する。
図9(a)~(b)は、実施形態5が適用される加熱源52、高熱伝導部53および後述する低熱伝導部56の構成を説明する図である。
図9(a)は、加熱源52、高熱伝導部53および低熱伝導部56を示した斜視図である。また、
図9(b)は、
図9(a)のIXB部での断面図である。
【0069】
図9(a)~(b)に示すように、実施形態5の高熱伝導部53は、実施形態1の高熱伝導部53と同様の形状を有している。すなわち、高熱伝導部53は、幅方向の中央部に位置する短尺部53Aと、短尺部53Aの幅方向の両端部に位置し短尺部53Aと比較して移動方向に沿った長さが長い長尺部53Bとを有している。
また、図示は省略するが、実施形態5の加熱源52における発熱層522は、実施形態1の発熱層522と同様の形状を有している。すなわち、発熱層522の移動方向に沿った径は、幅方向の全域に亘って一定となっている。
【0070】
さらに、実施形態5では、
図9(a)~(b)に示すように、加熱源52の反対面52Bと高熱伝導部53との間に、高熱伝導部53と比較して熱伝導率が低い低熱伝導部56を有している。言い換えると、高熱伝導部53は、低熱伝導部56を介して加熱源52の反対面52B上に設けられている。
低熱伝導部56は、加熱源52を構成する材料と比較して熱伝導率が低いことが好ましい。低熱伝導部56は、例えば、ポリイミド等の耐熱性を有する樹脂材料等からなる薄膜フィルムにより構成される。また、加熱源52に対して低熱伝導部56および高熱伝導部53が積層される方向から見た低熱伝導部56の形状は、高熱伝導部53の形状と等しい。
【0071】
実施形態5では、加熱源52と高熱伝導部53との間に低熱伝導部56を有することで、低熱伝導部56を有していない場合と比べて、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、定着ベルト51を予め定めた温度まで加熱するのに要する時間がより短くなる。
具体的に説明すると、実施形態5では、熱伝導率が低い低熱伝導部56によって、加熱源52の発熱層522で発生した熱が高熱伝導部53へ伝導することが抑制される。これにより、加熱源52の発熱層522で発生した熱が定着ベルト51へ伝導しやすくなる。この結果、加熱源52により定着ベルト51の加熱を開始する立ち上げの際に、発熱層522で発生した熱により定着ベルト51の温度が上昇しやすくなる。
【0072】
また、実施形態5では、上述したように、低熱伝導部56の形状が高熱伝導部53の形状と等しくなっている。そして、高熱伝導部53が低熱伝導部56を介さずに直接、加熱源52に接している部分が存在しない。これにより、加熱源52の発熱層522で発生した熱が直接、高熱伝導部53へ伝導することが抑制され、発熱層522で発生した熱が定着ベルト51へより伝導しやすくなっている。
【0073】
また、定着ベルト51が予め定めた温度まで加熱されると、それに伴って低熱伝導部56の温度も上昇することになる。そして、低熱伝導部56の温度が上昇すると、低熱伝導部56を介して高熱伝導部53に対して徐々に熱が伝導する。
ここで、例えば定着処理が行われる用紙の幅が小さく、加熱源52の幅方向の両端部である非通紙領域の温度が上昇した場合には、加熱源52の幅方向の両端部から低熱伝導部56を介して高熱伝導部53へ熱が伝導する。そして、幅方向の両端部において高熱伝導部53へ伝導した熱は、高熱伝導部53を幅方向に伝導し、加熱源52のうち温度が低い部分である幅方向の中央部へ供給される。これにより、加熱源52および定着ベルト51の温度むらが低減される。
【符号の説明】
【0074】
1…画像形成装置、40…定着装置、50…定着ベルトモジュール、51…定着ベルト、52…加熱源、53…高熱伝導部、56…低熱伝導部、522…発熱層、523…給電層、531…高熱伝導部材