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特許7196480蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20221220BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/136 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/131
H01M50/133
H01M50/136
H01M50/121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018170918
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020043016
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮
(72)【発明者】
【氏名】今井 将博
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-213965(JP,A)
【文献】特開2018-059536(JP,A)
【文献】特開2018-059625(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031148(WO,A1)
【文献】特開2017-126510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/105
H01M 50/131-50/136
H01M 50/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、
前記積層体の厚みは、75μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上であり、
前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層は、電解液耐性試験前における前記接着層の剥離強度(N/15mm)に対する、下記の電解液耐性試験後の前記接着層の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上である耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材。
<電解液耐性試験>
蓄電デバイス用外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、蓄電デバイス用外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
前記の<電解液耐性試験>を行った蓄電デバイス用外装材の上側(開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。
【請求項2】
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.2GPa以上である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記耐電解液性を有する前記接着層が、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記耐電解液性を有する前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記耐電解液性を有する前記接着層が、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
温度40℃、湿度90%RH雰囲気下における水蒸気透過度が0.1g/(m2・24h)以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1~6のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
【請求項8】
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、
前記積層体の厚みは、75μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上であり、
前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層は、電解液耐性試験前における前記接着層の剥離強度(N/15mm)に対する、下記の電解液耐性試験後の前記接着層の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上である耐電解液性を有する、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
<電解液耐性試験>
蓄電デバイス用外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、蓄電デバイス用外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
前記の<電解液耐性試験>を行った蓄電デバイス用外装材の上側(開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために包装材料(外装材)が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材/アルミニウム箔層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の外装材が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このようなフィルム状の外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-287971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、フィルム状の外装材には、蓄電デバイスのエネルギー密度をより一層高める観点などから、さらなる薄型化が求められている。
【0008】
また、近年、蓄電デバイスはあらゆる機器に使用されており形状が多様化している。一例として、フレキシブル性を有する蓄電デバイスが求められている。例えば、特許文献1に示すような蓄電デバイスは、成形性は有するものの、フレキシブル性は低い。そのため、従来の蓄電デバイス用外装材はフレキシブル性を有する蓄電デバイスへの適用が困難である。
【0009】
このような状況下、本開示は、厚みが薄く、良好なフレキシブル性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、バリア層及び積層体の厚みを、それぞれ所定値以下に設定し、さらに、熱融着性樹脂層の押し込み弾性率を所定値以上に設定することにより、厚みが薄く、良好なフレキシブル性を有する蓄電デバイス用外装材が得られることを見出した。
【0011】
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、
前記積層体の厚みは、75μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上である、蓄電デバイス用外装材。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、厚みが薄く、良好なフレキシブル性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することができる。また、本開示によれば、蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び蓄電デバイスを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図2】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図3】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図4】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、前記積層体の厚みは、75μm以下であり、前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上であることを特徴としている。
【0015】
以下、本開示の蓄電デバイス用外装材について詳述する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0016】
また、本開示において「ガスバリア性」、「ガスバリア性能」とは、特に断りが無い場合は、酸素等の気体および/または水蒸気の透過を阻止する機能を意味するものとする。
【0017】
(フレキシブル性)
本開示において「蓄電デバイス用外装材がフレキシブル性を有する」とは、例えば、蓄電デバイス用外装材を折り曲げた場合に、ガスバリア性を維持できる程度に、蓄電デバイス用外装材を構成するフィルムおよび接着層に破損が生じないことをいう。具体的に、「蓄電デバイス用外装材がフレキシブル性を有する」とは、例えば下記の特性1を充足することをいう。
【0018】
特性1:3回屈曲処理後の試験片(蓄電デバイス用外装材)について、水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下であり、かつ、酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下であること。
【0019】
フレキシブル蓄電デバイスにおいては、蓄電デバイス用外装材がこのようなフレキシブル性を備えていることが重要である。例えば、使用者の体の動きに対する追従性が高いウェアラブル端末に使用されるフレキシブル蓄電デバイスには、このような折り曲げ性に対する耐性を有する蓄電デバイス用外装材を用いることが求められる。
【0020】
特性1に関し、3回屈曲処理は以下の条件で行うものとする。それぞれ幅210mm×長さ297mm(A4サイズ)の長方形のサンプルを切り出し、サンプルの幅方向の両端の一方をゲルボフレックステスター(例えば、テスター産業社製、機種名BE1006)の円盤状の固定ヘッドに固定し、他方を固定ヘッドから離れて平行に配置されている同径の円盤状の駆動ヘッドに固定し、固定ヘッドおよび駆動ヘッドの外周にサンプルを円筒状となるように取り付ける。この試験片の両端をゲルボフレックステスター(テスター産業社製、機種名BE1006)の固定ヘッドと駆動ヘッドとで保持し、ASTM F392に準拠して、440度の角度でひねりを加えながら固定ヘッドと駆動ヘッドの間隔を7インチから3.5インチに狭めて、さらにひねりを加えた状態を維持したままヘッドの間隔を1インチまで狭め、その後、ヘッドの間隔を3.5インチまで広げて、さらにひねりを戻しながらヘッドの間隔を7インチまで広げるという往復運動を40回/minの速さで、温度25℃で3回行う。また、水蒸気透過度および酸素透過度の測定方法は、それぞれ、後述の「3.蓄電デバイス用外装材の特性」の項に記載の方法と同じである。フレキシブル性に特に優れる観点から、3回屈曲処理後の蓄電デバイス用外装材の水蒸気透過度は0.3g/(m2・24h)以下であり、かつ、3回屈曲処理後の酸素透過度が0.3cc/(m2・24h・atm)以下であることが特に好ましい。なお、水蒸気透過度の下限については、例えば、0.0g/(m2・24h)、0.1g/(m2・24h)などが挙げられ、酸素透過度の下限については、例えば、0.0cc/(m2・24h・atm)、0.1cc/(m2・24h・atm)などが挙げられる。
【0021】
1.蓄電デバイス用外装材の構成
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1から図4に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層2、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。本開示の蓄電デバイス用外装材において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。
【0022】
熱融着性樹脂層4とバリア層2との間は、接着層3により接着されていることが好ましい。また、基材層1とバリア層2との間は、接着層3により接着されていることが好ましい。なお、これらの接着層3は同一であっても異なってもよい。本開示においては、少なくとも熱融着性樹脂層4とバリア層2の間に配置される接着層3aが耐電解液性を有することが好ましい。
【0023】
また、基材層1及びバリア層2は、それぞれ、単層であってもよいし複層であってもよい。例えば、図3には、バリア層2を2層備える蓄電デバイス用外装材を図示している。
【0024】
また、バリア層2は、後述の通り、好ましくは金属箔またはガスバリア膜22により構成される。図2,3に示すように、バリア層2がガスバリア膜22により構成される場合には、ガスバリア膜22は、例えば、樹脂基材21の表面にガスバリア膜22が積層されたガスバリアフィルム20を用いることによって、蓄電デバイス用外装材10に積層することができる。
【0025】
図4に示す基材層1の上(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて、表面被覆層5などが設けられていてもよい。
【0026】
本開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みは、75μm以下である。蓄電デバイスの厚みを薄くしつつ、フレキシブル性を向上させる観点から、積層体の厚みの上限については、例えば70μm以下、好ましくは約65μm以下、より好ましくは約60μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約30μm以上が挙げられ、好ましい範囲としては、20~75μm程度、20~70μm程度、20~60μm程度、30~75μm程度、30~70μm程度、30~60μm程度が挙げられる。
【0027】
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。後述するガスバリアフィルム20の樹脂基材21が基材層1を構成していてもよい。
【0028】
基材層1を形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層1は、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
【0029】
基材層1が樹脂により形成されている場合、基材層1は、例えば、樹脂により形成された樹脂フィルムであってもよいし、樹脂を塗布して形成したものであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などがあげられる。
【0030】
基材層1を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層1を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
【0031】
基材層1を形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
【0032】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
基材層1は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
【0035】
基材層1は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
【0036】
基材層1において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層1が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層1が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層1の最外層に位置することが好ましい。
【0037】
基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着層3で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着層3で例示する接着剤と同様のものがあげられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01から1.0μm程度が挙げられる。
【0038】
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
基材層1の厚みについては、積層体の厚みを75μm以下としつつ、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3~50μm程度、好ましくは10~35μm程度が挙げられる。基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、それぞれ、好ましくは2~25μm程度が挙げられる。
【0040】
[バリア層2]
蓄電デバイス用外装材10において、バリア層2は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。また、蓄電デバイス用外装材10において、バリア層2の厚みは、14μm以下と非常に薄い。バリア層2は、複数層設けてもよく、バリア層2を複数層設ける場合には、バリア層2の合計厚みが14μm以下とする。
【0041】
バリア層2としては、例えば、バリア性を有する金属箔、ガスバリア膜などが挙げられる。ガスバリア膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、樹脂層などが挙げられ、樹脂層としてはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、プロピレン-ビニルアルコール共重合体(PVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などが挙げられる。
【0042】
図2,3に示すように、バリア層2がガスバリア膜22により構成される場合には、ガスバリア膜22は、樹脂基材21の表面にガスバリア膜22が積層されたガスバリアフィルム20を用いることによって、蓄電デバイス用外装材10に積層することができる。
【0043】
バリア層2は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層2を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼などが挙げられる。
【0044】
(金属箔)
バリア層2が金属箔により構成されている場合、バリア層2は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0045】
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、又はJIS H4000:2014 A8079P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。
【0046】
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0047】
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
【0048】
バリア層2が金属箔により構成されている場合、フレキシブル性とガスバリア性の両立の観点から、好ましい厚みとしては、上限については、好ましくは約9μm以下、より好ましくは約8μm以下が挙げられ、下限については好ましくは約1μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、1~14μm程度、1~9μm程度、1~8μm程度が挙げられる。
【0049】
また、バリア層2が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層1と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層2は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層2の表面に行い、バリア層2に耐腐食性を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層2が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層2とする。
【0050】
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、バリア層2(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層1との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層2表面の溶解、腐食、特にバリア層2がアルミニウム合金箔である場合にバリア層2表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層2表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層1とバリア層2とのデラミネーション防止、成形時の基材層1とバリア層2とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0051】
(ガスバリア膜22)
バリア層2がガスバリア膜22により構成されている場合、ガスバリア膜22が樹脂基材21に積層されたガスバリアフィルム20を用いることによって、ガスバリア膜22を蓄電デバイス用外装材10に積層することができる。
【0052】
ガスバリアフィルム20は、樹脂基材21と、樹脂基材21の片面または両面に配置されたガスバリア膜22とを有する。
【0053】
ガスバリア膜22は、樹脂基材21の片面または両面に配置され、ガスバリア性を有する膜である。上記ガスバリア膜22は、ガスバリアフィルム20のガスバリア性に主に寄与する。ガスバリア膜22は、無機物であってもよいし、有機物であってもよく、ガスバリア性が高いことから無機物が好ましい。有機物としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、プロピレン-ビニルアルコール共重合体(PVOH)、等が挙げられる。無機物としては、例えば、金属(合金を含む)、無機化合物等が挙げられる。また、無機物を含むガスバリア膜22としては、例えば、金属膜(例えば金属蒸着膜や金属箔)、無機化合物を主成分とする膜(以下、無機化合物膜と称する場合がある。)、有機部分および無機部分の混合化合物を主成分とする膜(有機無機複合膜と称する場合がある。)等が挙げられる。
【0054】
金属膜を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金を挙げることができる。フレキシブル性の観点から、金属膜は、アルミニウムであることが特に好ましい。
【0055】
無機化合物膜を構成する無機化合物としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属元素または非金属元素を含有する化合物が挙げられる。また、上記無機化合物としては、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、酸化珪素亜鉛等が挙げられる。具体的には、SiO2等の珪素酸化物、Al23等のアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。無機化合物は、単独で用いてもよいし、上述の材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0056】
有機無機複合膜を構成する有機部分および無機部分の混合化合物としては、例えば、樹脂部分と無機部分との混合化合物が挙げられる。有機部分を構成する樹脂としては、例えば、後述する樹脂基材21の構成材料として例示した樹脂を用いることができる。無機部分を構成する無機物としては、例えば、無機化合物膜の材料として例示した無機化合物を用いることができる。また、オーバーコート層の材料として後述するもののうち、単独でガスバリア性を示すものを用いることができる。具体的には、株式会社クラレ製のクラリスタCFなどを用いることができる。
【0057】
ガスバリア膜22は、コーティング等による塗布膜であってもよく、蒸着膜であってもよい。中でも樹脂基材21との密着性が高く、高ガスバリア性能を発揮することができる観点から蒸着膜であることが好ましい。上記ガスバリア膜22は、1回蒸着により形成された単膜であってもよく、複数回蒸着により形成された多層膜であってもよい。
ガスバリア膜22が多層膜である場合、同一組成の膜を組み合わせてもよく、異なる組成の膜を組み合わせてもよい。ガスバリア膜22が多層膜である場合、多層膜全体でガスバリア膜1層分とする。
【0058】
ガスバリア膜22の厚みは、所望のガスバリア性を発揮することが可能であれば特に限定されず、ガスバリア膜22の種類に応じて適宜設定することが出来る。ガスバリア膜22の厚みは、例えば5nm以上200nm以下の範囲内とすることができ、中でも10nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。なお、ガスバリア膜22が多層膜である場合は、上記厚みは1回あたりの厚みをいう。
上記ガスバリア膜22の厚みが上述の範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性を示すことができない場合がある。また、強度を確保できず経時劣化する場合がある。一方、上記ガスバリア膜22の厚みが上述の範囲を超えると、折り曲げ等の機械的な応力を受けたときに欠陥が発生しやすくなる場合や、フレキシブル性が低下する場合がある。また、ガスバリア膜が金属箔により構成されている場合、フレキシブル性とガスバリア性の両立の観点から、好ましい厚みとしては、上限については、8μm以下、6μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1μm以上8μm以下、2μm以上6μm以下が挙げられる。
【0059】
ガスバリア膜22の形成方法は、樹脂基材21の片面または両面に所望の厚みで成膜可能な方法であればよく、塗布法、蒸着法、圧着法等、ガスバリア膜22の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。
【0060】
樹脂基材21としては、上記ガスバリア膜22を支持可能であれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、樹脂シートが好適に用いられる。上記樹脂基材21が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。なお、本開示において「フィルム」と「シート」とは同義である。
【0061】
樹脂基材21に用いられる樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);ポリ(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂;各種のナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;アセタール樹脂;セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。
【0062】
蓄電デバイス用外装材に複数のガスバリアフィルムが用いられる場合、より熱融着性樹脂層に近い位置に配置されるガスバリアフィルムの樹脂基材21には、親水基含有樹脂が用いられることが好ましい。親水基含有樹脂は高温においても、酸素に対して良好なバリア性を発揮するため、蓄電デバイス用外装材としての酸素バリア性能を向上させることができるからである。なお、「親水基」とは、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合をつくり、水に対して親和性示す原子団をいうものであり、例えばヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH2)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(-SO3H)などの極性基や解離基を含む原子団がその性質を示す。親水基含有樹脂としては、例えば、PVA樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、多糖類などの天然高分子等が挙げられる。
【0063】
樹脂基材21には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂基材21は、表面処理が施されていてもよい。ガスバリア膜22との密着性を向上させることができるからである。
【0064】
樹脂基材21の厚みは、蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みが75μm以下となれば、特に限定されないが、下限については、好ましくは約6μm以上、より好ましくは約9μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは約50μm以下、より好ましくは約30μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、6~50μm程度、6~30μm程度、9~50μm程度、9~30μm程度が挙げられる。
【0065】
ガスバリアフィルム20における樹脂基材21およびガスバリア膜22の順序は特に限定されるものではなく、蓄電デバイス用外装材に共に用いられる、ガスバリアフィルム20以外の各層の層構成や、ガスバリアフィルム20の数などに応じて適宜設定することができる。また、蓄電デバイスに用いた際、最も外側に配置されるガスバリアフィルム20においては、樹脂基材21およびガスバリア膜22の順序は特に限定されないが、例えば図3に示すように、樹脂基材21を前述の基材層1とする場合には、ガスバリア膜22が熱融着性樹脂層4側となるようにする。
【0066】
ガスバリアフィルム20は、ガスバリア膜22の樹脂基材21とは反対の面側に、オーバーコート層(図示を省略する)を有していてもよい。オーバーコート層を有することで、ガスバリアフィルムのガスバリア性をさらに向上させることができるからである。
【0067】
オーバーコート層を構成する材料は、特に限定されず、一般にオーバーコート剤として用いられている材料を用いることができる。例えば、オーバーコート層の主成分として、有機部分および無機部分を含む混合化合物を用いることができる。
【0068】
上記混合化合物は、種々のものがあるが、例えば、株式会社クラレ社製のクラリスタCF(登録商標)などのリン酸アルミナ系の混合化合物、凸版印刷株式会社製のベセーラ(登録商標)などのアクリル酸亜鉛系の混合化合物、樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物、または、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される1種以上のアルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる原料液によるゾルゲル化合物などを用いることができる。上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などが挙げられる。本開示においては、ゾルゲル化合物をオーバーコート層に用いることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、樹脂基材21等の熱劣化を抑制することができるからである。
【0069】
オーバーコート層の厚みは、特に限定されないが、例えば、50nm以上500nm以下の範囲内とすることができる。
【0070】
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層4同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
【0071】
熱融着性樹脂層4の押し込み弾性率は、2.0GPa以上である。蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、良好なフレキシブル性を発揮させる観点から、熱融着性樹脂層4の押し込み弾性率は、下限については、好ましくは約2.2GPa以上、より好ましくは約2.5GPa以上が挙げられ、上限については、好ましくは約5.0GPa以下、より好ましくは約4.5GPa以下が挙げられ、好ましい範囲については、2.0~5.0GPa程度、2.0~4.5GPa程度、2.2~5.0GPa程度、2.2~4.5GPa程度、2.5~5.0GPa程度、2.5~4.5GPa程度、が挙げられる。熱融着性樹脂層4の押込み弾性率は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類や融点、添加剤などによって調整することができる。
【0072】
熱融着性樹脂層4の押込み弾性率は、ISO 14577:2015に準拠し、サンプルの断面に対して、約23℃約60%RHの環境で、ビッカース圧子(対面角136°の正四角錐のダイヤモンド圧子)を装着させた超微小負荷硬さ試験機を用いて、押し込み弾性率を測定する方法を用いる。測定は、押し込み速度0.1μm/秒、押し込み深さ2μm、保持時間5秒間、引き抜き速度0.1μm/秒で行う。超微小負荷硬さ試験機は、ピコデンターHM500(フィッシャー・インストルメンツ社製)が好ましい。1つの条件では、少なくとも5つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の押し込み弾性率の値とする。サンプルの断面は、サンプルの外周を硬化樹脂系接着剤で固めて固定し、固定したサンプルをダイヤモンドナイフで厚さ方向に切断し、サンプルの露出した断面である。また、押し込み弾性指数を算出する際の熱融着性樹脂層4の厚さは、切削断面の光学顕微鏡観察の計測により測定することができる。
【0073】
熱融着性樹脂層4の材料としては、加熱によって溶融し、融着することが可能であり、かつ、押し込み弾性率が2.0GPa以上という非常に高い値を有している熱可塑性樹脂が好ましく、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、環状ポリプロピレンなどの環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0074】
本開示においては、上述した中でも、熱融着性樹脂層4の材料がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又は環状ポリプロピレンであることが好ましい。これらの樹脂は、押し込み弾性率が高く、機械的強度に優れており、蓄電デバイス用外装材の総厚み及びバリア層2の厚みを薄くした場合にも、良好なフレキシブル性を発揮させることができるためである。
【0075】
熱融着性樹脂層4の融解温度(融点)としては、下限については、好ましくは約150℃以上、より好ましくは約160℃以上が挙げられ、上限については、好ましくは約270℃以下、より好ましくは約260℃以下が挙げられ、好ましい範囲としては、150~270℃程度、150~260℃程度、160~270℃程度、160~260℃程度が挙げられる。
【0076】
熱融着性樹脂層4の厚さは、蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の厚みが75μm以下となれば、特に限定されるものではなく、蓄電デバイス用外装材の総厚み及びバリア層2の厚みを薄くした場合にも、良好なフレキシブル性を発揮させる観点から、下限については、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上が挙げられ、上限については、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、20~50μm程度、25~50μm程度、20~40μm程度、25~40μm程度が挙げられる。
【0077】
[接着層3]
本開示における接着層3は、基材層1、バリア層2、熱融着性樹脂層4等の各層間に配置される層である。本開示においては、上記複数の接着層3のうち、少なくとも熱融着性樹脂層4とバリア層2との間に配置される接着層3aが、耐電解液性を有することが好ましい。また、本開示においては、複数の接着層3の全てが、耐電解液性を有することが好ましい。具体的には、図1図4に示す蓄電デバイス用外装材10においては接着層3aおよび3bの全てが、耐電解液性を有することが好ましい。
【0078】
「接着層3が耐電解液性を有する」とは、通常、接着層3が電解液によって劣化しにくいことをいう。接着層3の劣化は、通常、剥離強度にて規定される。接着層3の耐電解液性は、例えば、下記の電解液耐性試験前における接着層3の剥離強度(N/15mm)に対する、電解液耐性試験後の接着層3の剥離強度(N/15mm)の比率(剥離強度の維持率)が、50%以上であることをいい、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
電解液耐性試験の条件は以下の通りである。
まず、外装材を60mm(縦方向、MD)×150mm(横方向、TD)に裁断する。次に、裁断した蓄電デバイス用外装材を横方向において熱融着性樹脂層同士が対向するようにして2つ折りにし、横方向の対向する1辺と縦方向の1辺を面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着し、横方向の1辺が開口する袋状の外装材を作製する。次に、開口部から3gの電解液(1モル/リットルの6フッ化リン酸リチウム溶液、溶媒はエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比))を注入し、開口部を7mm幅で、面圧1MPa、温度190℃、3秒間の条件で熱融着する。次に、外装材の開口部を熱融着した部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置する。
【0080】
接着層の剥離強度の測定条件は以下の通りである。
前記の<電解液耐性試験>を行った外装材の上側(外装材の開口部を熱融着した部分)の1辺と、その両側の2辺を切断して、電解液を排出する。次に、電解液をよく拭き取り、TDの方向が試験片の長さ方向になるようにして、幅15mmの短冊状に切りとって試験片を得る。なお、試験片は、熱融着されていない部分から3つ取得する。次に、試験片の長さ方向の端部から、熱融着性樹脂層とガスバリアフィルムとの間を長さ方向に部分的に剥離させる。この時の剥離は、手で行う。次に、熱融着性樹脂層が上側になるようにして、熱融着性樹脂層と、ガスバリアフィルム等(熱融着性樹脂層の上に積層されていた積層体全体)とを、それぞれ固定(チャック)し、引張試験機(例えば、エー・アンド・デイ製の商品名テンシロン万能材料試験機RTG-12180)を用いて、引張速度50mm/分、剥離角度180°、剥離距離25mmの条件で剥離試験を行い、剥離距離が10~20mmの間の剥離強度(N/15mm)の平均値を、接着層の剥離強度とする。なお、剥離強度は、それぞれ3つの試験片について測定した平均値である。
【0081】
接着層3は、本開示の蓄電デバイス用外装材が用いられる蓄電デバイス用外装材の電解液に対し、上述した耐電解液性を有していればよいが、例えば、溶媒として、体積比で、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の割合で混合した混合溶媒と、電解質として6フッ化リン酸リチウムを用いた電解液に対する耐電解液性を有することが好ましい。
【0082】
本開示に用いられる接着層3としては、上述した耐電解液性を有していれば特に限定されず、蓄電デバイス用外装材が用いられる蓄電デバイス用外装材における電解液の種類に応じて適宜選択することができる。本開示の発明者らは、研究を重ねる中で、融解温度(融点)が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンを主剤とし、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂を硬化剤とする接着剤を用いた接着層3が、良好な耐電解液性を示すことを知見した。
【0083】
すなわち、本開示においては、耐電解液性を有する接着層3が、融解温度が50℃以上120℃以下の酸変性ポリオレフィンと、重量平均分子量が50以上2000以下のエポキシ樹脂との硬化物を含むことが好ましい。なお、接着層3に含まれる硬化物の構造、性質は、例えば、酸性ポリオレフィンの種類、エポキシ樹脂の種類、添加剤の有無、硬化条件等により変化するため、直接特定することは、通常、困難である。そこで、以下、接着層3に含まれる硬化物について、硬化前の接着剤の成分を挙げて説明する。
【0084】
酸変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたポリオレフィンを用いることが好ましい。さらに、酸変性ポリオレフィンは、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性されていてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステルでさらに変性された変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸またはその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとを併用して、ポリオレフィンを酸変性することにより得られるものである。本開示において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」または「メタアクリル酸エステル」を意味する。酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
酸変性されるポリオレフィンは、少なくともモノマー単位としてオレフィンを含む樹脂であれば特に限定されない。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方により構成することができ、ポリプロピレンにより構成することが好ましい。ポリエチレンは、例えば、ホモポリエチレンおよびエチレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。ポリプロピレンは、例えば、ホモポリプロピレンおよびプロピレンコポリマーの少なくとも一方により構成することができる。プロピレンコポリマーとしては、エチレン-プロピレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンコポリマーなどのプロピレンと他のオレフィンとのコポリマーなどが挙げられる。ポリプロピレンに含まれるプロピレン単位の割合は、蓄電デバイス用外装材の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下とすることがより好ましい。また、ポリエチレンに含まれるエチレン単位の割合は、蓄電デバイス用外装材の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下とすることがより好ましい。エチレンコポリマーおよびプロピレンコポリマーは、それぞれ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。また、エチレンコポリマーおよびプロピレンコポリマーは、それぞれ、結晶性、非晶性のいずれであってもよく、これらの共重合物または混合物であってもよい。ポリオレフィンは、1種類のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよいし、2種類以上のホモポリマーまたはコポリマーにより形成されていてもよい。
【0086】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、酸無水物としては、上記例示した不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましく、無水マレイン酸および無水イタコン酸がより好ましい。酸変性ポリオレフィンは、1種類の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよいし、2種類以上の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよい。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数が1以上30以下のアルコールとのエステル化物、好ましくは(メタ)アクリル酸と炭素数が1以上20以下のアルコールとのエステル化物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。ポリオレフィンの変性において、(メタ)アクリル酸エステルは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0088】
酸変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸またはその酸無水物の割合は、それぞれ、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、蓄電デバイス用外装材の絶縁性や耐久性をより高め得る。
【0089】
また、酸変性ポリオレフィン中における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、蓄電デバイス用外装材の絶縁性や耐久性をより高め得る。
【0090】
酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、それぞれ、6000以上200000以下であることが好ましく、8000以上150000以下であることがより好ましい。なお、本開示において、酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0091】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定として「Waters製、Alliance 2695」を用い、カラムは3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定する。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速1.0ml/min、サンプル注入量50μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行う。また、検量線は東ソー社製「polystyrene標準試料TSK standard」から作製する。
【0092】
また、酸変性ポリオレフィンの融解温度は、50℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがより好ましい。なお、本開示において、酸変性ポリオレフィンの融解温度とは、示差走査熱量測定における融解ピーク温度をいう。また、本開示においては、接着層3を構成する硬化物の融解温度が、上述した数値範囲であることが好ましい。本開示における硬化物の融解温度(溶融温度)は、JIS K 7121:2012の規定に準拠し、例えば、セイコーインスツルメンツ社製のEXSTAR6000を用いて測定することができる。
【0093】
酸変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法は、特に限定されず、例えば不飽和カルボン酸またはその酸無水物や、(メタ)アクリル酸エステルがポリオレフィンと共重合されていればよい。このような共重合としては、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられ、好ましくはグラフト共重合が挙げられる。
【0094】
エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、50以上2000以下の範囲にあればよい。蓄電デバイス用外装材の絶縁性や耐久性をより一層高める観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは100以上1000以下、より好ましくは200以上800以下が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。具体的な測定条件は、上述した酸変性ポリオレフィンにおける測定条件と同様であるため、ここでの記載は省略する。
【0095】
また、耐電解液性を有する接着層は、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、およびエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。
【0096】
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、ガスバリアフィルムとの密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
【0097】
接着層における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルムなどとの密着性を効果的に高めることができる。
【0098】
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0099】
接着層における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルムなどとの密着性を効果的に高めることができる。
【0100】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、前記のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0101】
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
接着層における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、ガスバリアフィルムなどとの密着性を効果的に高めることができる。
【0103】
また、耐電解液性を有する接着層は、酸素原子、複素環、C=N結合、およびC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物あってもよい。さらに、耐電解液性を有する接着層が、ウレタン樹脂、エステル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0104】
複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。接着層がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
【0105】
なお、接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
【0106】
また、接着層は、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
【0107】
[表面被覆層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性などの向上を目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層2とは反対側)に、表面被覆層5を備えていてもよい。表面被覆層5は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイスの最外層側に位置する層である。
【0108】
表面被覆層5は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
【0109】
表面被覆層5を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0110】
表面被覆層5は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。
【0111】
添加剤の材質については、特に制限されず、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。
【0112】
表面被覆層5の厚みとしては、表面被覆層5としての上記の機能を発揮し、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の厚み、基材層1の厚み、さらにバリア層2の厚みが本開示の前記所定範囲に設定されれば特に制限されないが、好ましい下限としては、約0.1μm以上、約0.5μm以上、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、好ましい上限としては、約5μm以下、約4μm以下、約3μm以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0.1~5μm程度、0.1~4μm程度、0.1~3μm程度、0.5~5μm程度、0.5~4μm程度、0.5~3μm程度、1~5μm程度、1~4μm程度、1~3μm程度、2~5μm程度、2~4μm程度、2~3μm程度が挙げられる。
【0113】
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施しておいてもよい。また、表面被覆層5の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層5やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤、エラストマー樹脂等の添加剤を含んでいてもよい。滑剤の具体例としては、例えば前述した滑剤が挙げられる。また、上述した微粒子は滑剤、アンチブロッキング剤、マット化剤として機能してもよい。
【0114】
表面被覆層5を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層5を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層5に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
【0115】
3.蓄電デバイス用外装材の特性
本開示の蓄電デバイス用外装材は、空気による蓄電デバイス素子の劣化を抑制可能な程度のガスバリア性を有する。本開示の蓄電デバイス用外装材は、酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下、中でも0.1cc/(m2・24h・atm)以下、特に0.05cc/(m2・24h・atm)以下であることが好ましい。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下、中でも0.1g/(m2・24h)以下であることが好ましく、特に0.05g/(m2・24h)以下であることが好ましい。蓄電デバイス用外装材が上述の範囲内のガスバリア性を有することにより、蓄電デバイス素子を良好に封止することができるからである。
【0116】
酸素透過度の測定は、JIS K7126-2:2006(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)に準拠して、温度23℃、湿度60%RHの条件下で酸素ガス透過度測定装置を使用して測定することができる。酸素ガス透過度測定装置としては、例えば米国MOCON社製OXTRANを用いることが出来る。測定は、蓄電デバイス用外装材の表面のうち、上記蓄電デバイス用外装材の厚み方向において熱融着性樹脂層に対してガスバリアフィルム側に位置する上記表面が酸素ガスに接するようにして上記装置内に装着し、透過面積50cm2の条件で行う。上記測定は、以下の手順で行う。まず、上記装置内にキャリアガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージする。上記キャリアガスは5%程度水素を含む窒素ガスを用いることができる。パージ後、上記装置内に試験ガスを流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後に、上記の温度および湿度の条件で測定を開始する。上記試験ガスは少なくとも99.5%(体積)の酸素を含んだ乾燥酸素を用いる。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の酸素透過度の値とする。本明細書において説明する酸素透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
【0117】
また、水蒸気透過度の測定は、JIS K7129-B:2008(プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法)、付属書B:赤外線センサ法)に準拠して、温度40℃、湿度90%RHの条件(条件3)で、水蒸気透過度測定装置を用いて、蓄電デバイス用外装材の外側(熱融着性樹脂層のガスバリアフィルムが配置された側)が高湿度側(水蒸気供給側)になるようにして、透過面積50cm2の条件で、測定する方法を用いる。水蒸気透過度測定装置は、パ-マトラン(PERMATRAN-W(登録商標)Model 3/33、米国企業のモコン(MOCON)社製)が好ましい。標準試験片としてNISTフィルム#3を用いる。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の水蒸気透過度の値とする。本明細書において説明する水蒸気透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
【0118】
4.蓄電デバイス用外装材の製造方法
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法においては、少なくとも、基材層1、バリア層2、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えている。バリア層の厚みは、14μm以下であり、積層体の厚みは、75μm以下であり、熱融着性樹脂層の押し込み弾性率は2.0GPa以上である。
【0119】
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着層3、バリア層2が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層2に接着層3の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層2又は基材層1を積層させて接着層3を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0120】
次いで、積層体Aのバリア層2上に、接着層3及び熱融着性樹脂層4をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層2上に、接着層3及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層3と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層2上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層2上に、接着層3を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層3上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層2と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層3を流し込みながら、接着層3を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)等が挙げられる。また、前記の通り、バリア層2としてガスバリア膜22を積層する場合には、樹脂基材21に予めガスバリア膜22が積層されたガスバリアフィルム20を積層することができる。
【0121】
表面被覆層5を設ける場合には、基材層1のバリア層2とは反対側の表面に、表面被覆層5を積層する。表面被覆層5は、例えば表面被覆層5を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層2を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層5を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層5を形成した後、基材層1の表面被覆層5とは反対側の表面にバリア層2を形成してもよい。
【0122】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層5/基材層1/必要に応じて設けられる接着層3/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層2/必要に応じて設けられる接着層3/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、接着層3の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、前述の通りである。
【0123】
本開示の蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0124】
5.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。
【0125】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
【0126】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池、コンデンサー、キャパシター等などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用することもできる。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0127】
また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、良好なフレキシブル性を有することから、例えば、ウェアラブル端末の動きに追従可能な蓄電デバイスへの適用が可能である。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、良好なフレキシブル性を有することから、加工性を高くすることができる。よって、例えば、種々の形状の蓄電デバイス、小型の蓄電デバイス、薄膜の蓄電デバイスの外装材に適用することが可能である。
【実施例
【0128】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0129】
・Al蒸着PET12:アルミニウム(Al)膜(厚み55nm)が片面に蒸着されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)
・Al23蒸着PET12:酸化アルミニウム(Al23)膜(厚み20nm)が片面に蒸着されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)
・Al6:アルミニウム箔(厚み6μm)
・Al40:アルミニウム箔(厚み40μm)
・PBT25:二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)
・PET12:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)
・PET16:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm)
・PET30:結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(会社名:東洋紡株式会社、製品名:SI-173)をTダイ法で押出成形したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)
・ON25:二軸延伸ナイロンフィルム(厚み25μm)
・COC30:Tダイ法で押出成形した環状オレフィンコポリマー(COC)フィルム(厚み30μm)
・LLDPE30:直鎖状短鎖分岐ポリエチレンフィルム(厚み30μm)
・CPP30:未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み30μm)
・CPP80:未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み80μm)
・EVOH30:エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(厚み30μm)
【0130】
【表1】
【0131】
[実施例1]
(接着剤の準備)
主剤として固形分が20質量%であり、融解温度(融点)50℃の酸変性ポリプロピレンを準備した。また、硬化剤として固形分が10質量%であり、重量平均分子量500のエポキシ樹脂を準備した。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定として「Waters製、Alliance 2695」を用い、カラムとして「Shodex GPC LF-804(昭和電工製、8.0mmI.D.×300mm)」を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定した。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速1.0ml/min、サンプル注入量50μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystyrene標準試料TSK standard」から作製した。
酸変性ポリプロピレンを10重量部、エポキシ樹脂を0.5重量部混合し、接着剤を得た。
【0132】
(蓄電デバイス用外装材の製造)
熱融着性樹脂層としてPBT25と、バリア層としてAL6と、基材層としてON25とをこの順に積層して蓄電デバイス用外装材を得た。具体的には、前述した接着剤を用いて、これら各層の間に接着層3を配置し、各層を接着層3で接合した。各層の接合方法は以下の通りである。蓄電デバイス用外装材において隣接して配置される二つの層のうち、一方の層に前述した接着剤を塗布量1.5g/m2となるように塗布して接着層3を形成した。次に、接着層3が配置された層と、他方の層とを接着層3を間に挟んで加圧することにより、各層を接合して、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0133】
[実施例2]
実施例1において、基材層としてON25の代わりにPET16を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0134】
[実施例3]
実施例2において、熱融着性樹脂層としてPBT25の代わりにPET30を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0135】
[実施例4]
実施例2において、熱融着性樹脂層としてPBT25の代わりにCOC30を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0136】
[実施例5]
熱融着性樹脂層としてPET30と、第一ガスバリアフィルムとしてAl蒸着PET12と、第二ガスバリアフィルムとしてAl蒸着PET12、第三ガスバリアフィルムとしてAl23蒸着PET12とをこの順に積層して蓄電デバイス用外装材を得た。第一ガスバリアフィルムと第二ガスバリアフィルムとは、第一ガスバリアフィルムのPETフィルム側と、第二ガスバリアフィルムのAl蒸着膜側とが向かい合うように配置した。第三ガスバリアフィルムはAl23蒸着側が第二ガスバリアフィルムにPETフィルム側と向かい合うように配置した。接着剤として、実施例1に記載の接着剤を塗布量1.5g/m2となるように塗布して接着層3を配置し、各フィルムを接合して、図3の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。
【0137】
[実施例6]
実施例5において、熱融着性樹脂層としてPET30の代わりにPBT25を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、図3の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、熱融着性樹脂層としてPBT25の代わりにCPP30を用い、基材層としてON25の代わりにPET16を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0138】
[比較例2]
比較例1において、熱融着性樹脂層としてCPP30の代わりにLLDPE30を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0139】
[比較例3]
比較例1において、熱融着性樹脂層としてCPP30の代わりにCPP80を用い、バリア層としてAL6の代わりにAL40を用い、基材層としてPET16の代わりにON15とPET12との積層体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。なお、基材層として用いたON15とPET12との積層体は、実施例1に記載の接着剤を塗布量1.5g/m2となるように塗布して接着層3を配置し、ON15とPET12とを接合したものである。
【0140】
[比較例4]
(接着剤の準備)
ポリエステルポリオールを主成分とする主剤(ロックペイント社製 製品名:RU-77T)、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤(ロックペイント社製 製品名:H-7)、および酢酸エチルの溶剤が、重量配合比が主剤:硬化剤:溶剤=10:1:14となるように混合された、2液硬化型の接着剤を準備した。
【0141】
(蓄電デバイス用外装材の製造)
接着剤として、上述した2液硬化型の接着剤を塗布量3.5g/m2となるように塗布して接着層3を配置したこと以外は、比較例1と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0142】
[実施例7]
比較例4において、熱融着性樹脂層としてCPP30の代わりにEVOH30を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、図1の模式図に示されるような積層構成を備える蓄電デバイス用外装材を得た。積層構成を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
[評価]
(耐電解液性(剥離強度))
各外装材に対し、電解液耐性試験を実施し、試験前後の熱融着性樹脂層とバリアフィルムとの剥離強度を測定した。
袋状の外装材の作製時における、熱融着の条件は、温度190℃、面圧1.0MPa、加熱・加圧時間3秒とした。また、電解液は、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウムを混合して得られたものとした。電解液耐性試験および剥離強度の測定条件については、上述した「1.外装材の構成 (1)接着層」の項で説明した通りである。耐電解液性の評価基準は、電解液耐性試験を行っていない各外装材について、同様に引張強度を測定して得られた剥離強度(初期剥離強度)を基準(100%)として、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
A:初期剥離強度の80%以上の剥離強度である。
B:初期剥離強度の70%以上80%未満の剥離強度である。
C:初期剥離強度の50%未満の剥離強度である。
【0145】
【表3】
【0146】
実施例1~6および比較例1~3では、耐電解液性に優れた接着剤を用いて接着層3が形成されていることが分かる。
【0147】
(押し込み弾性率の測定)
実施例1~7および比較例1~4で使用した各熱融着性樹脂層の押し込み弾性率の測定方法は、「2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層」の項で説明した通りである。測定結果を表4に示す。
【0148】
(水蒸気透過度)
実施例1~7および比較例1~4の蓄電デバイス用外装材における40℃、90%RHの水蒸気透過度を測定した。測定方法の詳細は、「3.蓄電デバイス用外装材の特性」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
【0149】
(酸素透過度)
実施例1~7および比較例1~4の蓄電デバイス用外装材における23℃、60%RHの酸素透過度を測定した。測定方法の詳細は、「3.蓄電デバイス用外装材の特性」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
【0150】
(フレキシブル性評価)
実施例1~7および比較例1~4の蓄電デバイス用外装材のフレキシブル性を評価した。評価方法の詳細は、上述した「蓄電デバイス用外装材がフレキシブル性を有する」の項で説明した通りである。結果を表4に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
表4に示される結果から明らかな通り、バリア層の厚みが14μm以下であり、積層体の厚みが75μm以下であり、熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が2.0GPa以上である実施例1~7の蓄電デバイス用外装材は、3回屈曲処理後の試験片の水蒸気透過度が0.5g/(m2・24h)以下であり、かつ、酸素透過度が0.5cc/(m2・24h・atm)以下である。実施例1~7の蓄電デバイス用外装材は、厚みが薄く、優れたフレキシブル性を備えている。
【0153】
以上の通り、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、
前記積層体の厚みは、75μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上である、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層は、耐電解液性を有する、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 耐電解液性を有する前記接着層が、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 耐電解液性を有する前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 耐電解液性を有する前記接着層が、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項6. 温度40℃、湿度90%RH雰囲気下における水蒸気透過度が0.1g/(m2・24h)以下である、項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1~6のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項8. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層の厚みは、14μm以下であり、
前記積層体の厚みは、75μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の押し込み弾性率が、2.0GPa以上である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【符号の説明】
【0154】
1 基材層
2 バリア層
3、3a、3b 接着層
4 熱融着性樹脂層
5 表面被覆層
10 蓄電デバイス用外装材
20 ガスバリアフィルム
21 樹脂基材
22 ガスバリア膜
図1
図2
図3
図4