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特許7196486生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20221220BHJP
   A61B 5/029 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/029
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018175033
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020044123
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】松下 和征
(72)【発明者】
【氏名】小澤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】梅川 英之
(72)【発明者】
【氏名】湯川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】赤松 学
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-213773(JP,A)
【文献】特開2007-144125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144111(US,A1)
【文献】特開2012-205673(JP,A)
【文献】特開2015-008953(JP,A)
【文献】特開2008-279126(JP,A)
【文献】特開平09-108188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0047202(US,A1)
【文献】特開2006-231012(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190413(WO,A1)
【文献】特開2016-187539(JP,A)
【文献】特開2009-082175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 5/029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の測定対象である被測定者の呼吸のリズムが、呼吸状態に応じて測定値が変化する前記生体情報の測定に適したリズムとして予め定めた基準となるリズムに近づくように、前記被測定者に対して前記基準となるリズムを報知する報知部と、
前記報知部で報知される前記基準となるリズムに従って呼吸を行う前記被測定者の前記生体情報を測定する測定部と、
前記被測定者の呼吸のリズムを検出する検出部と、
を備え
前記報知部は、前記被測定者が呼気し終えた後で、かつ、前記被測定者が吸気を開始する前に呼吸を停止するように前記基準となるリズムを報知すると共に、前記検出部で検出された前記被測定者の呼吸のリズムと、前記基準となるリズムのずれの大きさに応じて、前記基準となるリズムを報知し始めてから前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間を調整した前記基準となるリズムを報知する
生体情報測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記被測定者の心機能に関する生体情報を測定する
請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記被測定者の血中における酸素濃度を表す値から酸素循環時間を測定する
請求項2記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記基準となるリズムにおいて、前記被測定者に呼吸の停止を報知するための報知形態が、呼気の開始を報知する報知形態、及び吸気の開始を報知する報知形態と異なるように、前記基準となるリズムを報知する
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間は、予め取得している前記被測定者の安静時における呼吸の周期よりも長い周期で、前記基準となるリズムを報知する
請求項記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記報知部は、前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間は、吸気の長さよりも呼気の長さの方が長くなるように、前記基準となるリズムを報知する
請求項又は請求項記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記検出部で検出された前記被測定者の呼吸のリズムと、前記基準となるリズムのずれの大きさが大きくなるに従って、前記基準となるリズムを報知し始めてから前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間が長くなるように、前記基準となるリズムを報知する
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記報知部は、前記ずれの大きさが許容範囲を超えた場合、前記被測定者に呼吸を前記基準となるリズムに合わせるように報知する
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1~請求項の何れか1項に記載の生体情報測定装置の各部として機能させるための生体情報測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センサを用いて生体から抽出した動脈血の吸光度信号に基づいて酸素飽和度の変化を算出する装置において、生体への吸気酸素量を変化させると共にその変化させた時点を基準点とし、該基準点から動脈血の酸素飽和度が変化する時点までの時間を測定することを特徴とする酸素運搬の循環時間測定方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、被検体の呼吸又は息止め動作を指示するための表示をする指示表示装置を備えた医用画像撮影装置であって、撮影開始からの経過時間を計測する計測装置と、前記計測装置の計測結果に基づき息止め残り時間が予め定められた時間に達したか否かを判定する判定装置と、前記判定装置の判定結果に基づき前記指示表示装置の制御を開始する制御装置と、を備えることを特徴とする医用画像撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-231012号公報
【文献】特開2010-5192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えば酸素循環時間のように血中における酸素濃度を表す値から生体情報を測定する測定手法の開発が進められている。
【0006】
血中における酸素濃度を表す値は被測定者の呼吸状態に応じて変化するため、生体情報を精度よく測定するためには、被測定者の呼吸状態が生体情報の測定に適したリズムに近づくように、被測定者の呼気及び吸気の開始時期を誘導してやることが好ましい。
【0007】
本発明は、自分の意思に基づいて被測定者に自由に呼吸をさせる場合と比較して、呼吸状態に応じて測定値が変化する生体情報の測定精度を高めることができる生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の生体情報測定装置の発明は、生体情報の測定対象である被測定者の呼吸のリズムが、呼吸状態に応じて測定値が変化する前記生体情報の測定に適したリズムとして予め定めた基準となるリズムに近づくように、前記被測定者に対して前記基準となるリズムを報知する報知部と、前記報知部で報知される前記基準となるリズムに従って呼吸を行う前記被測定者の前記生体情報を測定する測定部と、前記被測定者の呼吸のリズムを検出する検出部と、を備え、前記報知部は、前記被測定者が呼気し終えた後で、かつ、前記被測定者が吸気を開始する前に呼吸を停止するように前記基準となるリズムを報知すると共に、前記検出部で検出された前記被測定者の呼吸のリズムと、前記基準となるリズムのずれの大きさに応じて、前記基準となるリズムを報知し始めてから前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間を調整した前記基準となるリズムを報知する。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記測定部は、前記被測定者の心機能に関する生体情報を測定する。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記測定部は、前記被測定者の血中における酸素濃度を表す値から酸素循環時間を測定する。
【0012】
請求項記載の発明は、前記報知部は、前記基準となるリズムにおいて、前記被測定者に呼吸の停止を報知するための報知形態が、呼気の開始を報知する報知形態、及び吸気の開始を報知する報知形態と異なるように、前記基準となるリズムを報知する。
【0013】
請求項記載の発明は、前記報知部は、前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間は、予め取得している前記被測定者の安静時における呼吸の周期よりも長い周期で、前記基準となるリズムを報知する。
【0014】
請求項記載の発明は、前記報知部は、前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間は、吸気の長さよりも呼気の長さの方が長くなるように、前記基準となるリズムを報知する。
【0016】
請求項記載の発明は、前記報知部は、前記検出部で検出された前記被測定者の呼吸のリズムと、前記基準となるリズムのずれの大きさが大きくなるに従って、前記基準となるリズムを報知し始めてから前記被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間が長くなるように、前記基準となるリズムを報知する。
【0017】
請求項記載の発明は、前記報知部は、前記ずれの大きさが許容範囲を超えた場合、前記被測定者に呼吸を前記基準となるリズムに合わせるように報知する。
【0018】
請求項記載の生体情報測定プログラムの発明は、コンピュータを、請求項1~請求項の何れか1項に記載の生体情報測定装置の各部として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、記載の発明によれば、自分の意思に基づいて被測定者に自由に呼吸をさせる場合と比較して、呼吸状態に応じて測定値が変化する生体情報の測定精度を高めることができる、という効果を有する。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、被測定者の呼吸状態に応じて、被測定者の心機能に関する生体情報を測定することができる、という効果を有する。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、被測定者の血中における酸素濃度を表す値から、酸素循環時間を測定することができる、という効果を有する。
【0023】
請求項記載の発明によれば、呼吸の停止を報知する報知形態を、呼気の開始又は吸気の開始を報知する報知形態と同じにした場合と比較して、呼吸の停止を被測定者に分かりやすく報知することができる、という効果を有する。
【0024】
請求項記載の発明によれば、被測定者の安静時における呼吸の周期に合わせて基準となるリズムを報知する場合と比較して、被測定者の緊張を和らげることができる、という効果を有する。
【0025】
請求項記載の発明によれば、吸気の長さと呼気の長さを同じにした場合と比較して、被測定者の緊張を和らげることができる、という効果を有する。
【0027】
請求項記載の発明によれば、被測定者の呼吸のリズムが基準となるリズムに近づくまで、被測定者の呼吸のリズムを誘導することができる、という効果を有する。
【0028】
請求項記載の発明によれば、基準となるリズムに対する被測定者の呼吸のリズムにずれがあることを報知することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】血中の酸素飽和度の測定例を示す模式図である。
図2】生体に吸収される光の吸光量の変化例を示すグラフである。
図3】酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る生体情報測定装置の構成例を示す図である。
図5】発光素子及び受光素子の配置例を示す図である。
図6】発光素子及び受光素子の他の配置例を示す図である。
図7】呼吸の停止及び再開に伴う血中の酸素飽和度の変化例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る生体情報測定装置の電気系統における要部構成例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】被測定者の呼吸状態と、酸素飽和度の変化例を示す図である。
図11】呼吸の基準リズムの報知形態の一例を示す図である。
図12】第2実施形態に係る生体情報測定装置の電気系統における要部構成例を示す図である。
図13】第2実施形態に係る測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、機能が同じ構成要素及び処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
【0031】
<第1実施形態>
生体情報測定装置10は生体8に関する情報(生体情報)のうち、特に循環器系に関する生体情報を測定する装置である。循環器系とは、例えば血液のような体液を体内で循環させながら輸送するための器官群を総称するものである。
【0032】
循環器系に関する生体情報には複数の種類が存在するが、血液を血管に送り出す心臓の状態を示す値の1つとして、例えば心臓から拍出される血液量を表す心拍出量(CO:Cardiac Output)が挙げられる。
【0033】
心拍出量が基準値より低下すると例えば左心不全の疑いがあり、心拍出量が基準値より増加すると例えば右心不全の疑いがあることが知られているなど、心拍出量は様々な心臓疾患の検査、又は投薬効果の確認に利用されている。
【0034】
心拍出量の測定方法には、例えば心拍出量の測定対象者である被測定者の肺動脈に、先端にバルーンが付いたカテーテルを挿入し、バルーンを膨張及び収縮させながら血中の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度から心拍出量を算出する方法が用いられる。ここで血中の酸素飽和度とは、血中の酸素濃度を示す値の一例であり、血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを示す値であり、血中の酸素飽和度が低下するにつれて、例えば貧血等の症状が発生しやすくなることを示すものである。
【0035】
しかしながら、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法では、被測定者の血管にカテーテルを挿入する必要があるため外科的処置が必要となり、他の測定方法に比べて被測定者における侵襲性が高くなる。
【0036】
したがって、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法よりも被測定者の負担が少なくなるように、被測定者の脈波から得られる酸素飽和度を用いて心拍出量を測定する方法が研究されている。脈波とは、心臓による血液の送り出しに伴う血管の拍動変化を示す値である。
【0037】
まず、図1を参照して、生体情報のうち、血中の酸素飽和度の測定方法について説明する。
【0038】
図1に示すように、血中の酸素飽和度は、被測定者の体(生体8)に向けて発光素子1から光を照射し、受光素子3で受光した、被測定者の体内に張り巡らされている動脈4、静脈5、及び毛細血管6等で反射又は透過した光の強さ、すなわち反射光又は透過光の受光量を用いて測定される。
【0039】
図2は、例えば生体8に吸収される光量の変化量を示す概念図である。図2に示すように、生体8における吸光量は、時間の経過と共に変動する傾向が見られる。
【0040】
更に、生体8における吸光量の変動に関する内訳について見てみると、主に動脈4によって吸光量が変動し、静脈5及び静止組織を含むその他の組織では、動脈4に比べて吸光量が変動しないとみなせる程度の変動量であることが知られている。これは、心臓から拍出された動脈血は脈波を伴って血管内を移動するため、動脈4が動脈4の断面方向に沿って経時的に伸縮し、動脈4の厚みが変化するためである。なお、図2において、矢印94で示される範囲が、動脈4の厚みの変化に対応した吸光量の変動量を示す。
【0041】
図2において、時刻taにおける受光量をIa、時刻tbにおける受光量をIbとすれば、動脈4の厚みの変化による光の吸光量の変化量ΔAは、(1)式で表される。
【0042】
(数1)
【0043】
ΔA=ln(Ib/Ia)・・・(1)
【0044】
これに対して、図3は、動脈4を流れる酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)及び酸素と結合していないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。図3において、グラフ96が酸化ヘモグロビンにおける光の吸光量を表し、グラフ97が還元ヘモグロビンにおける光の吸光量を表す。
【0045】
図3に示すように、酸化ヘモグロビンは還元ヘモグロビンと比較して、約850nm近辺の波長を有する赤外線(infrared:IR)領域99の光を吸収しやすく、還元ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと比較して、特に約660nm近辺の波長を有する赤色領域98の光を吸収しやすいことが知られている。
【0046】
更に、酸素飽和度は、異なる波長における吸光量の変化量ΔAの比率と比例関係があることが知られている。
【0047】
したがって、他の波長の組み合わせに比べて、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとで吸光量の差が現われやすい赤外光(IR光)と赤色光を用いて、IR光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔARedとの比率をそれぞれ算出することで、(2)式によって酸素飽和度Sが算出される。なお、(2)においてkは比例定数である。
【0048】
(数2)
【0049】
S=k(ΔARed/ΔAIR)・・・(2)
【0050】
すなわち、血中の酸素飽和度を算出する場合、それぞれ異なる波長の光を照射する複数の発光素子1を生体8に照射する。具体的には、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1を生体8に用いる。この場合、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1との発光期間は重複してもよいが、望ましくは発光期間が重複しないよう発光させる。そして、各々の発光素子1による反射光又は透過光を受光素子3で受光して、各受光時点における受光量から(1)式及び(2)式、又は、これらの式を変形して得られる公知の式を算出することで、酸素飽和度が測定される。
【0051】
上記(1)式を変形して得られる公知の式として、例えば(1)式を展開して、光の吸光量の変化量ΔAを(3)式のように表してもよい。
【0052】
(数3)
【0053】
ΔA=lnIb-lnIa・・・(3)
【0054】
また、(1)式は(4)式のように変形することができる。
【0055】
(数4)
【0056】
ΔA=ln(Ib/Ia)=ln(1+(Ib-Ia)/Ia) ・・・(4)
【0057】
通常、(Ib-Ia)≪Iaであることから、ln(Ib/Ia)≒(Ib-Ia)/Iaが成り立つため、(1)式の代わりに、光の吸光量の変化量ΔAとして(5)式を用いてもよい。
【0058】
(数5)
【0059】
ΔA≒(Ib-Ia)/Ia ・・・(5)
【0060】
以降では、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1とを区別して説明する必要がある場合、IR光を照射する発光素子1を「発光素子1A」といい、赤色光を照射する発光素子1を「発光素子1B」ということにする。
【0061】
こうした方法によれば、発光素子1及び受光素子3を被測定者の体表に近づけることで血中の酸素飽和度が測定されるため、血管にカテーテルを挿入して血中の酸素飽和度を測定するよりも被測定者の負担が少なくなる。
【0062】
そして、測定された被測定者の酸素飽和度を用いて、生体情報測定装置10は後述する方法により心拍出量を算出する。
【0063】
図4は、生体情報測定装置10の構成例を示す図である。図4に示すように、生体情報測定装置10は光電センサ11、脈波処理部12、受付部13、酸素飽和度測定部14、タイマ15、通知部16、酸素循環時間測定部17、及び心拍出量測定部18を含む。
【0064】
光電センサ11は、約850nmの波長を中心波長とするIR光を照射する発光素子1A、約660nmの波長を中心波長とする赤色光を照射する発光素子1B、及びIR光及び赤色光を受光する受光素子3を備える。
【0065】
図5に光電センサ11における発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置例を示す。図5に示すように、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3は、生体8の一方の面に向かって並べて配置される。この場合、受光素子3は、生体8の毛細血管6等で反射されたIR光及び赤色光を受光する。
【0066】
しかしながら、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置は、図5の配置例に限定されない。例えば、図6に示すように、発光素子1A及び発光素子1Bと、受光素子3とをそれぞれ生体8を挟んで対向する位置に配置するようにしてもよい。この場合、受光素子3は、生体8を透過したIR光及び赤色光を受光する。
【0067】
ここでは一例として、発光素子1A及び発光素子1Bは、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)のような面発光レーザ素子として説明するが、これに限らず、端面発光レーザ素子であってもよい。また、発光素子1A及び発光素子1BはLED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0068】
光電センサ11には、被測定者の体の部位に光電センサ11を取り付けるための図示しないクリップが備えられており、IR光及び赤色光が光電センサ11から外部に漏れないように、光電センサ11は図示しないクリップによって被測定者の体表に接触するように取り付けられる。被測定者の生体8で反射又は透過したIR光及び赤色光を受光素子3でできるだけ正確に受光するためには、光電センサ11を被測定者の体表に接触するように配置することが好ましいが、被測定者の生体8で反射したIR光及び赤色光、又は被測定者の生体8を透過したIR光及び赤色光が受光素子3で受光される範囲内で、光電センサ11を体表から離した位置に取り付けてもよい。
【0069】
光電センサ11は、受光素子3で受光したIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を例えば電圧値に変換して脈波処理部12に通知する。
【0070】
発光素子1A及び発光素子1Bからは予め定めた光量が照射されているため、光電センサ11で受光したIR光及び赤色光のそれぞれの受光量から、生体8におけるIR光及び赤色光の吸光量が得られる。
【0071】
したがって、脈波処理部12は、光電センサ11から受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を用いて、IR光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号と、赤外光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号をそれぞれ生成する。脈波処理部12は、受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量に対応する電圧値が、脈波信号の生成に適した予め定めた範囲に含まれるように電圧値を増幅する。そして、脈波処理部12は、公知のフィルタ等を用いてノイズ成分を除去したそれぞれの脈波信号を生成する。
【0072】
脈波処理部12は、生成したそれぞれの脈波信号を酸素飽和度測定部14に通知する。
【0073】
酸素飽和度測定部14は、脈波処理部12から脈波信号を受け付けると、受け付けた脈波信号から被測定者の酸素飽和度を測定する。具体的には、酸素飽和度測定部14は脈波信号を用いて、動脈4の厚みの変化によるIR光の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光の吸光量の変化量ΔARedとをそれぞれ(1)式に従って算出する。そして、酸素飽和度測定部14は、算出した変化量ΔAIRと変化量ΔARedを用いて、例えば(2)式から被測定者の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度を酸素循環時間測定部17に通知する。
【0074】
以降では一例として、酸素飽和度測定部14が被測定者の酸素飽和度を測定する例について説明するが、酸素飽和度測定部14は、被測定者の酸素飽和度の時間変化を示す値であればどのような値を測定してもよい。例えば、酸素飽和度測定部14は、酸素飽和度の逆数、又は変化量ΔARedと変化量ΔAIRの比率といった、酸素飽和度の時間変化と相関関係を有する値を測定してもよい。
【0075】
受付部13は、被測定者の呼吸状態を受け付ける受付手段の一例である。具体的には、被測定者又は被測定者の生体情報を測定する医療従事者等の測定者によって操作される入力装置を介して呼吸の停止を通知する指示を受け付けた場合、受付部13は被測定者の呼吸が停止したとみなす。また、入力装置から呼吸の再開を通知する指示を受け付けた場合、受付部13は被測定者の呼吸が再開されたとみなす。
【0076】
そして、受付部13は、例えば呼吸の停止及び呼吸の再開といった被測定者の呼吸状態を通知部16に通知する。
【0077】
タイマ15は、時間を計測する計測装置の一例であり、指定した時点からの累積時間を計測する。
【0078】
通知部16は、酸素飽和度の測定精度が予め定めた精度以上となるように、呼気及び吸気の開始タイミング、並びに呼吸の停止及び呼吸の再開タイミングを被測定者に通知する。
【0079】
図7のグラフは、被測定者の特定の部位における血中の酸素飽和度の変化例を示しており、横軸は時間を表し、縦軸は酸素飽和度の逆数を表している。
【0080】
被測定者が時刻t0で呼吸を停止すると、被測定者における血中の酸素飽和度が減少し始める。被測定者が呼吸を停止する期間として予め定めた規定時間の経過後(時刻t1)に被測定者が呼吸を再開しても、呼吸の再開により血中に取り込まれた酸素が肺から特定の部位まで到達するのには時間がかかるため、時刻t1の後も被測定者における血中の酸素飽和度は減少する。そのうち、呼吸の再開により血中に取り込まれた酸素が肺から特定の部位まで到達するため、被測定者における血中の酸素飽和度は増加に転じる。血中の酸素飽和度が減少から増加に転じる箇所を「変曲点」といい、変曲点が現れた時刻を時刻t2とすれば、酸素循環時間は時刻t1と時刻t2の差分によって表される。
【0081】
すなわち、酸素循環時間とは、肺から特定の部位まで酸素が運搬されるのに要する時間を表し、「酸素運搬時間」とも呼ばれる。
【0082】
酸素飽和度から測定される酸素循環時間は、呼吸を停止するまでの呼吸状態、及び呼吸の停止期間のばらつきによって測定精度もばらつく傾向があるため、酸素循環時間の測定に適した基準となる呼吸のリズム(以降、「呼吸の基準リズム」という)が予め定められている。
【0083】
ここで「呼吸のリズム」とは、息を吐く時間及び量、並びに息を吸う時間及び量によって表される呼吸状態のことであり、時間軸に沿った波形として表される。呼吸の基準リズムは、呼吸を波形として表す場合に用いられる構成要素、すなわち、呼気の開始時期、強さ、及び長さと、吸気の開始時期、強さ、及び長さと、呼吸の停止時期及び長さと、呼吸の再開時期と、呼吸の停止前及び再開後における呼吸の回数を規定するものであり、本実施の形態に係る基準となるリズムの一例である。なお、呼吸の基準リズムのうち、呼吸の停止期間を規定する時間を、特に「規定時間」ということにする。
【0084】
呼吸の基準リズムは生体情報測定装置10における酸素循環時間の測定精度が予め定めた精度以上となるように生体情報測定装置10の実機による実験や生体情報測定装置10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められている。
【0085】
通知部16は、呼吸の基準リズムに従って、被測定者に呼吸の停止を通知するまでは、被測定者の呼吸のリズムを、測定に伴う緊張が和らぐようなリズムに近づけるように誘導するリズムを通知し、被測定者に呼吸の停止を通知した後は、被測定者における呼吸の停止期間が規定時間に近づくように呼吸の再開通知を被測定者に通知する。そして、通知部16は、入力装置から呼吸の再開を通知する指示を受け付けた場合、酸素循環時間測定部17にも被測定者の呼吸が再開したことを通知する。なお、被測定者に呼吸の基準リズムを通知する通知部16は、本実施の形態に係る報知部の一例である。
【0086】
酸素循環時間測定部17は、通知部16から被測定者の呼吸が再開したことを受け付けると、呼吸の再開を受け付けた時刻を時刻t1として記憶する。そして、酸素循環時間測定部17は、酸素飽和度測定部14で測定される酸素飽和度を監視して、酸素飽和度の変曲点を検知する。酸素循環時間測定部17は、酸素飽和度の変曲点を検知した時刻を時刻t2として記憶し、時刻t1と時刻t2の差分で表される時間を酸素循環時間として測定する。なお、「変曲点を検知」するとは、酸素循環時間の測定に実質的に影響がない範囲で、変曲点から多少ずれた位置を検知する場合を含む。
【0087】
そして、酸素循環時間測定部17は、測定した酸素循環時間を心拍出量測定部18に通知する。このように酸素循環時間測定部17は、酸素循環時間を測定する測定手段の一例である。
【0088】
なお、酸素循環時間の測定部位は、被測定者における光電センサ11の取り付け位置によって決定されるが、本実施の形態では一例として、光電センサ11を被測定者の末梢部位に装着する。より具体的には指先に装着し、肺から指先まで酸素が運搬される場合の酸素循環時間を測定する。これは、他の部位に比べて肺からの距離が長くとれることにより酸素循環時間が長くなることから、他の部位に光電センサ11を取り付けた場合と比較して、精度の高い酸素循環時間が得られるためである。なお、「末梢部位」とは、被測定者の体の首、肩、股関節よりも末梢側にある部位をいう。
【0089】
したがって、肺から指先までの酸素循環時間を、特にLFCT(Lung to Finger Circulation Time)ということがある。本実施の形態においても、光電センサ11を被測定者の指先に取り付け、酸素循環時間測定部17でLFCTを測定する例について説明するが、光電センサ11の取り付け部位は指先に限られない。得られる酸素循環時間の測定誤差が予め定めた範囲内に含まれるような部位であれば、被測定者の何れの部位に光電センサ11を取り付けてもよい。なお、「指先」とは被測定者の手の指先を指すが、足の指先に光電センサ11を取り付けてもよい。
【0090】
心拍出量測定部18は酸素循環時間測定部17から受け付けたLFCTを用いて、被測定者の心拍出量を測定する。心拍出量は、例えばLFCTと心拍出量の関係を表す予め求められた演算式によって算出される。
【0091】
なお、心拍出量測定部18は心拍出量の他に、心拍出量に関する情報を測定してもよい。「心拍出量に関する情報」とは、心拍出量と相関関係が認められる情報であり、例えば心係数及び1回拍出量等が含まれる。
【0092】
「心係数」とは、被測定者の体格差による心拍出量の違いを補正するため、被測定者の心拍出量を被測定者の体表面積で割った値である。また、「1回拍出量」とは、心臓が1回の収縮によって動脈4へ拍出する血液の量を示す値であり、心拍出量を被測定者の1分間の心拍数で割ることで求められる。
【0093】
上述した生体情報測定装置10は、例えばコンピュータを用いて構成される。図8は、コンピュータ20を用いて構成された生体情報測定装置10における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0094】
コンピュータ20は、本実施の形態に係る報知部及び測定部として機能するCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、不揮発性メモリ24、及び入出力インターフェース(I/O)25を備える。そして、CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、及びI/O25がバス26を介して各々接続されている。なお、コンピュータ20で用いられるオペレーションシステムに制限はない。
【0095】
不揮発性メモリ24は、不揮発性メモリ24に供給される電力が遮断された場合であっても記憶した情報を維持する記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクであってもよい。
【0096】
I/O25には、例えば光電センサ11、入力ユニット27、表示ユニット28、及び通信ユニット29が接続される。
【0097】
光電センサ11はI/O25と有線又は無線によって接続される。なお、生体情報測定装置10と光電センサ11とが分離されるように、それぞれを別体として構成してもよく、生体情報測定装置10と光電センサ11とが一体化されるように、それぞれを同じ筺体に収容する構成としてもよい。
【0098】
入力ユニット27は、例えば被測定者の指示を受け付けてCPU21に通知するユニットである。入力ユニット27には、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が含まれる。一例として、入力ユニット27は、呼吸の停止を通知するボタン、及び呼吸の再開を通知するボタンを含む。
【0099】
したがって、被測定者はボタンを押下して、呼吸の停止及び呼吸の再開を生体情報測定装置10に通知する。以降では、呼吸の停止を通知するボタンを「呼吸の停止ボタン」といい、呼吸の再開を通知するボタンを「呼吸の再開ボタン」という。
【0100】
なお、呼吸の停止及び再開を必ずしもボタンで通知する必要はなく、例えばタッチパネルの押下、キーボードの押下、又はマウスの操作でCPU21に通知してもよい。また、呼吸の停止と再開のタイミングは必ずしも被測定者等が自ら指示する必要はなく、後述するように、カウンタやタイマ等によって生体情報測定装置10側で行ってもよい。
【0101】
表示ユニット28は、例えばCPU21で処理された情報を視覚的に表示するユニットである。表示ユニット28には、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)、又はプロジェクタ等の表示装置が用いられる。
【0102】
なお、表示ユニット28は必ずしも生体情報測定装置10に必要なユニットではなく、例えば呼吸の基準リズムを被測定者に報知するものであればどのような種類のユニットがI/O25に接続されてもよい。
【0103】
例えば呼吸の基準リズムを被測定者に音声で報知する場合、表示ユニット28の代わりにスピーカーユニットを接続してもよい。また、例えば呼吸の基準リズムを被測定者に体感を通して報知する場合、表示ユニット28の代わりに振動ユニットを接続してもよい。更には、例えば表示ユニット28、スピーカーユニット、及び振動ユニットのように、呼吸の基準リズムを被測定者に報知するユニットを2つ以上組み合わせて、呼吸の基準リズムを被測定者に報知してもよい。
【0104】
通信ユニット29は、例えばインターネット等の通信回線と生体情報測定装置10を接続する通信プロトコルを備え、通信回線に接続される他の外部装置と生体情報測定装置10との間でデータ通信を行う。通信ユニット29は無線LAN(Local Area Network)の他、約10m前後の見通し距離の通信に用いられるブルートゥース(登録商標)や約10cm前後の近接距離の通信に用いられる近距離無線通信(Near Field Communication:NFC)等に対応してもよい。
【0105】
通信ユニット29における通信回線への接続形態は有線であっても無線であってもよい。生体情報測定装置10が通信回線に接続される他の外部装置とデータ通信を行う必要がなければ、必ずしも通信ユニット29をI/O25に接続する必要はない。
【0106】
I/O25に接続されるユニットは上述した例に限られず、例えば心拍出量やLFCTといった生体情報の測定結果を印字する印字ユニット等、他のユニットをI/O25に接続してもよい。
【0107】
次に、図9及び図10を用いて、生体情報測定装置10の動作について説明する。
【0108】
図9は、被測定者の指先に光電センサ11が取り付けられた状態で、被測定者から入力ユニット27を介して心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU21によって実行される測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0109】
図10は、図9に示した測定処理が実行される場合の被測定者の呼吸状態(波形80)と、酸素飽和度の変化例(波形82)を示す図である。
【0110】
生体情報測定装置10は心拍出量の測定指示を受け付けると、少なくとも心拍出量の測定が終了するまで被測定者の酸素飽和度を測定し続ける。
【0111】
また、上述したように、呼吸の基準リズムを報知する報知手段に制約はないが、特に断りがない場合、ここでは一例として表示ユニット28を用いて被測定者に報知するものとする。
【0112】
測定処理を規定する生体情報測定プログラムは、例えば生体情報測定装置10のROM22に予め記憶されている。生体情報測定装置10のCPU21は、ROM22に記憶される生体情報測定プログラムを読み込み、測定処理を実行する。
【0113】
まず、ステップS10において、CPU21は表示ユニット28を制御して、被測定者に吸気を開始するように指示する画像を表示することで、被測定者に吸気の開始タイミングを報知する。当該処理により、被測定者が吸気を開始することになる。例えば図10に示す時刻t-2が吸気の開始を報知した時刻となる。
【0114】
ステップS20において、CPU21はタイマ15を起動して、被測定者に吸気の開始を報知してからの経過時間を測定する。CPU21は、例えばCPU21に内蔵されるタイマ機能を用いて経過時間を測定してもよく、また、I/O25に接続される外部のタイマユニットを用いて経過時間を測定してもよい。
【0115】
ステップS30において、CPU21は被測定者の吸気の開始に伴い、吸気の回数を計測する吸気カウンタを1つカウントアップする。吸気カウンタはRAM23に記憶されており、測定処理を開始する毎に“0”に初期化されている。1回の吸気と1回の呼気の組み合わせを呼吸1回とすれば、吸気カウンタは吸気の回数を表すと共に、呼吸の回数を表すカウンタでもある。
【0116】
ステップS40において、CPU21は、ステップS20で起動したタイマ15のタイマ値Tが閾値T1であるか否かを判定する。閾値T1は、被測定者に呼吸の停止を報知するまでの呼吸の基準リズムにおける吸気の長さを規定する値である。閾値T1は、心拍出量の測定に伴って被測定者に生じる緊張が和らぐような呼吸となるように予め設定された値であり、生体情報測定装置10の実機による実験等により求められ、例えば不揮発性メモリ24に記憶される。
【0117】
安静時には、これ以上吸気できないといった状態、すなわち息を吸い切った状態まで吸気することはないため、安静時の呼吸状態に近づくように、閾値T1は、被測定者が息を吸い切った状態とならない程度の値に設定することが好ましい。
【0118】
タイマ15のタイマ値Tが閾値T1未満の場合、被測定者の吸気の長さが閾値T1で表される期間に達していないことになるため、ステップS40の判定処理を繰り返し実行して、タイマ15のタイマ値Tを監視する。
【0119】
一方、タイマ15のタイマ値Tが閾値T1である場合には、被測定者の吸気の長さが閾値T1で表される期間に達したことになるため、ステップS50に移行する。
【0120】
ステップS50において、CPU21は表示ユニット28を制御して、今度は被測定者に呼気を開始するように指示する画像を表示することで、被測定者に呼気の開始タイミングを報知する。当該処理により、被測定者が呼気を開始することになる。例えば図10に示す時刻t-1が、呼気の開始を報知した時刻となる。
【0121】
ステップS60において、CPU21はタイマ15を停止した後、再び起動して、被測定者に呼気の開始を報知してからの経過時間を測定する。
【0122】
ステップS70において、CPU21は、ステップS60で起動したタイマ15のタイマ値Tが閾値T2であるか否かを判定する。閾値T2は、被測定者に呼吸の停止を報知するまでの呼吸の基準リズムにおける呼気の長さを規定する値である。閾値T2は、心拍出量の測定に伴って被測定者に生じる緊張が和らぐような呼吸となるように予め設定された値であり、生体情報測定装置10の実機による実験等により求められ、例えば不揮発性メモリ24に記憶される。
【0123】
安静時には、これ以上呼気できないといった状態、すなわち息を吐き切った状態まで呼気することはないため、安静時の呼吸状態に近づくように、閾値T2は、被測定者が息を吐き切った状態とならない程度の値に設定することが好ましい。
【0124】
タイマ15のタイマ値Tが閾値T2未満の場合、被測定者の呼気の長さが閾値T2で表される期間に達していないことになるため、ステップS70の判定処理を繰り返し実行して、タイマ15のタイマ値Tを監視する。
【0125】
一方、タイマ15のタイマ値Tが閾値T2である場合には、被測定者の呼気の長さが閾値T2で表される期間に達したことになるため、ステップS80に移行する。
【0126】
なお、閾値T2の値は、閾値T1の値よりも大きい値に設定される。これにより、被測定者の呼吸が、吸気の長さよりも呼気の長さの方が長くなるように誘導されることになる。吸気よりも呼気の長さを長くした場合、交感神経に比べて副交感神経の方が活発に活動し始めることから、緊張が和らぎやすくなる。
【0127】
ステップS80において、CPU21は、ステップS30で更新される吸気カウンタのカウンタ値Nが閾値N1であるか否かを判定する。閾値N1は、心拍出量の測定指示を受け付けてから被測定者に呼吸の停止を報知するまでの呼吸の回数を規定した値であり、心拍出量の測定に伴って被測定者に生じる緊張が和らぐような呼吸の回数、例えば、数回から数十回程度に設定される。閾値N1は、例えば不揮発性メモリ24に記憶される。
【0128】
吸気カウンタのカウンタ値Nが閾値N1未満の場合、被測定者は閾値N1で表される回数まで呼吸を繰り返していないため、ステップS10に移行する。
【0129】
一方、ステップS10~S80を繰り返し実行して被測定者の呼吸の回数が閾値N1に達した場合、ステップS90に移行する。
【0130】
ステップS90において、CPU21は表示ユニット28を制御して、被測定者に呼吸を停止するように指示する画像を表示することで、被測定者に呼吸の停止タイミングを報知する。当該処理により、被測定者が呼吸を停止することになる。すなわち、図10に示す時刻t0が呼吸の停止を報知した時刻となる。なお、被測定者に呼吸を停止するように指示する画像を表示した時点を時刻t0としてもよいし、表示された画像に基づき、被測定者等が自ら呼吸の停止ボタン等で呼吸を停止したことを示した時点を時刻t0としてもよい。
【0131】
ステップS100において、CPU21はタイマ15を停止した後、再び起動して、被測定者に呼吸の停止を報知してからの経過時間を測定する。
【0132】
ステップS110において、CPU21は、ステップS100で起動したタイマ15のタイマ値Tが閾値T3であるか否かを判定する。閾値T3は、呼吸の停止期間を規定する規定時間であり、生体情報測定装置10における酸素循環時間の測定精度が高くなるように、生体情報測定装置10の実機による実験や生体情報測定装置10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められ、例えば不揮発性メモリ24に記憶される。
【0133】
タイマ15のタイマ値Tが閾値T3未満の場合、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達していないため、ステップS110の判定処理を繰り返し実行して、タイマ15のタイマ値Tを監視する。
【0134】
一方、タイマ15のタイマ値Tが閾値T3である場合には、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達したため、ステップS120に移行する。
【0135】
ステップS120において、CPU21は表示ユニット28を制御して、被測定者に呼吸を再開するように指示する画像を表示することで、被測定者に呼吸の再開タイミングを報知する。当該処理により、被測定者が呼吸を再開することになる。すなわち、図10に示す時刻t1が呼吸の再開を報知した時刻となる。なお、被測定者に呼吸を再開するように指示する画像を表示した時点を時刻t1としてもよいし、表示された画像に基づき、被測定者等が自ら呼吸の再開ボタン等で呼吸を再開したことを示した時点を時刻t1としてもよい。
【0136】
呼吸の停止を報知する報知タイミングを考慮せずに呼吸の停止を報知した場合、被測定者は息を吸った状態で呼吸を停止することがある。この場合、呼吸の再開が報知されると、被測定者は呼気から始めるため、呼吸の再開時に吸気から始める場合と比較して、測定したLFCTが実際のLFCTよりも長くなり、LFCTの測定精度が低下することになる。
【0137】
しかしながら、CPU21は、被測定者が呼気し終えた後で、かつ、吸気を開始する前に呼吸を停止するように被測定者に報知しているため、被測定者はステップS120で呼吸の再開が報知された場合、吸気から開始することになる。
【0138】
CPU21は、被測定者に呼吸の再開タイミングを報知した時刻を時刻t1としてRAM23に記憶する。
【0139】
ステップS130において、CPU21は酸素飽和度の変化を監視し、酸素飽和度の変曲点を検知した時点の時刻t2を取得して、取得した時刻t2をRAM23に記憶する。CPU21は、酸素飽和度の変曲点の出現時刻t2と、ステップS120でRAM23に記憶した呼吸の再開時刻t1の差分をLFCTとして取得する。具体的には、CPU21は、ステップS120で被測定者に呼吸の再開を報知した後、タイマ15を停止してから再び起動して、被測定者に呼吸の再開を報知してから酸素飽和度の変曲点が検知されるまでの経過時間をLFCTとして取得すればよい。
【0140】
ステップS140において、CPU21は、ステップS130で取得したLFCTを用いて、例えば(6)式から心拍出量を測定する。更に、CPU21は、測定した心拍出量を用いて心拍出量に関する情報を算出してもよい。以上により、図9に示した測定処理を終了する。
【0141】
なお、被測定者は緊張すると、安静時における呼吸の周期よりも呼吸の周期が短くなる傾向が見られる。呼吸の周期が短くなると呼吸のリズムが変化するため、安静時に比べてLFCTの測定精度が低下することになる。一方、こうした緊張状態では、被測定者は生体情報測定装置10が報知するタイミングよりも早めに呼吸を行う傾向が見られる。
【0142】
したがって、生体情報測定装置10は、被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間は、被測定者の呼吸の周期が安静時における呼吸の周期よりも長い周期となるように、閾値T1及び閾値T2を設定しておくことが好ましい。
【0143】
被測定者の呼吸の周期を安静時における呼吸の周期より長めに誘導することで、緊張により短くなった呼吸の周期が、安静時における呼吸の周期に近づくことがある。
【0144】
なお、安静時における被測定者の呼吸の周期は、被測定者に呼吸センサ等を取り付けることで予め取得しておき、取得した被測定者毎の呼吸の周期を不揮発性メモリ24に記憶しておけばよい。生体情報測定装置10は、例えば報知する呼吸の周期が安静時における被測定者の呼吸の周期より長くなるように、自律的に閾値T1及び閾値T2を設定してもよいし、生体情報測定装置10の使用者が、報知する呼吸の周期が安静時における被測定者の呼吸の周期より長くなるような閾値T1及び閾値T2を設定してもよい。
【0145】
閾値T1、閾値T2、閾値T3、及び閾値N1といった各種パラメータは、入力ユニット27を介して設定することも、通信ユニット29を介して外部装置から設定すること可能である。
【0146】
図11は、図9に示した測定処理によって、表示ユニット28に表示される呼吸の基準リズムの報知形態の一例を示す図である。
【0147】
表示ユニット28における呼吸の基準リズムの報知形態は、図11に示すように、例えば波形80、棒グラフ84、又は円グラフ86等によって表される。
【0148】
図11の例では、波形80が減少から増加に転じる変曲点(極小点ともいう:時刻t-2)が吸気の開始時期を表し、波形80が増加から減少に転じる変曲点(極大点ともいう:時刻t-1)が呼気の開始時期を表す。また、波形80が減少したまま変化が見られなくなる最初の箇所(時刻t0)が呼吸の停止時期を表し、波形80の変化が見られなくなった状態から増加に転じる箇所(時刻t1)が呼吸の再開時期を表す。
【0149】
棒グラフ84で呼吸の基準リズムを表す場合、斜線が施された棒グラフ84の高さによって呼吸の基準リズムが表される。棒グラフ84の高さが減少から増加に転じる場合(時刻t-2)が吸気の開始時期を表し、棒グラフ84の高さが増加から減少に転じる場合(時刻t-1)が呼気の開始時期を表す。また、棒グラフ84の高さが減少し、バツ印が表示された場合(時刻t0)が呼吸の停止時期を表し、バツ印の表示から上向きの矢印の表示に変わった場合(時刻t1)が呼吸の再開時期を表す。
【0150】
円グラフ86で呼吸の基準リズムを表す場合、円グラフ86の大きさによって呼吸の基準リズムが表される。円グラフ86の大きさが減少から増加に転じる場合(時刻t-2)が吸気の開始時期を表し、円グラフ86の大きさが増加から減少に転じる場合(時刻t-1)が呼気の開始時期を表す。また、円グラフ86の大きさが減少し、バツ印が表示された場合(時刻t0)が呼吸の停止時期を表し、円グラフ86に上向きの矢印の表示が行われた場合(時刻t1)が呼吸の再開時期を表す。
【0151】
図11に示した呼吸の基準リズムの表示は一例であって、被測定者が呼吸の基準リズムを視覚によって認識できるものであればどのような報知形態が用いられてもよく、図11に示した例に限定されるものではない。例えば、吸気の開始時期には「息を吸って」という文字情報を表示し、呼気の開始時期には「息を吐いて」といった文字情報を表示してもよく、呼気及び吸気の開始、並びに、呼吸停止及び呼吸再開までの時間を数字でカウントダウンしながら表示してもよい。更に、例えば波形80と棒グラフ84というように、複数の報知形態を組み合わせてもよい。
【0152】
表示ユニット28による呼吸の基準リズムの報知の他、生体情報測定装置10は、音声及び振動を用いて被測定者に呼吸の基準リズムを報知するようにしてもよい。
【0153】
音声による呼吸の基準リズムの報知には、例えばブザー音や人の声が用いられ、生体情報測定装置10は図示しないスピーカーユニットから、呼気及び吸気の開始、並びに、呼吸停止及び呼吸再開に対してそれぞれ異なる音声を通知する。具体的には、ブザー音を用いる場合、例えばブザー音の長さ、音の高さ、及び回数の少なくとも1つを変化させる。人の声を用いる場合、例えば「吸って」、「吐いて」というように、被測定者に呼びかける言葉の内容を変化させる。
【0154】
このように本実施の形態に係る生体情報測定装置10によれば、被測定者の呼吸のリズムが、呼吸状態に応じて測定値が変化する心拍出量のような生体情報の測定に適したリズムに近づくように基準のリズムを報知して、被測定者の呼吸のリズムを誘導する。
【0155】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る生体情報測定装置10は、呼吸状態に応じて測定値が変化する生体情報の測定に適した呼吸の基準リズムを被測定者に報知するが、報知した呼吸の基準リズムに被測定者の呼吸のリズムが近づいているか否かをフィードバックする手段を備えていなかった。
【0156】
第2実施形態では被測定者の呼吸のリズムを検出し、被測定者の呼吸のリズムに応じて、呼吸の基準リズムを調整する生体情報測定装置10Aについて説明する。
【0157】
図12は、生体情報測定装置10Aの構成例を示す図である。図12に示す生体情報測定装置10Aの構成が、図4に示した生体情報測定装置10の構成と異なる点は、検出部19が追加された点であり、その他の構成は生体情報測定装置10と同じである。
【0158】
検出部19は、被測定者の呼吸のリズムを検出し、検出した呼吸のリズムを通知部16に通知する。具体的には、検出部19は、被測定者に装着された呼吸センサのように呼吸のリズムを測定する測定センサのセンサ値を取得して、被測定者の呼吸のリズムを検出する。
【0159】
検出部19から被測定者の呼吸のリズムを受け付けた通知部16は、閾値T1、閾値T2、閾値T3、及び閾値N1といった各種パラメータによって予め規定されている呼吸の基準リズムを被測定者の呼吸のリズムに応じて調整し、調整後の呼吸の基準リズムを被測定者に通知する。
【0160】
なお、生体情報測定装置10Aにおける電気系統の要部構成は、図8に示した生体情報測定装置10における電気系統の要部構成例と同じ構成を備える。
【0161】
次に、図13を用いて、生体情報測定装置10Aの動作について説明する。
【0162】
図13は、被測定者の指先に光電センサ11が取り付けられた状態で、被測定者から入力ユニット27を介して心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU21によって実行される測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0163】
図13に示すフローチャートが、図9に示した生体情報測定装置10の測定処理におけるフローチャートと異なる点は、ステップS42、S44、S72、S74、S76、及びS78が追加された点であり、その他の処理は図9に示したフローチャートと同じである。
【0164】
生体情報測定装置10Aは、心拍出量の測定指示を受け付ける前から被測定者の呼吸のリズムを検出し、心拍出量の測定指示を受け付けると、少なくとも心拍出量の測定が終了するまで被測定者の酸素飽和度を測定し続ける。
【0165】
ステップS40の判定処理で、被測定者の吸気の長さが閾値T1で表される期間に達していないと判定された場合、ステップS42が実行される。
【0166】
ステップS42において、CPU21は、検出した被測定者の呼吸のリズムから得られる被測定者の呼吸の波形80を参照して、ステップS10で被測定者に吸気の開始タイミングを報知した時刻をまたいで予め設定された第1監視期間内に、被測定者が吸気を開始した箇所に対応する極小点が存在するか否かを判定する。
【0167】
第1監視期間に極小点が存在しない場合、被測定者はまだ呼気から吸気に転じていないことからステップS40に移行し、引き続き被測定者の呼吸状態を監視する。
【0168】
一方、第1監視期間に極小値が存在する場合には、被測定者が吸気を開始したことになるため、ステップS44に移行する。
【0169】
ステップS44において、CPU21は、極小値が現れた時刻と、ステップS10で被測定者に吸気の開始タイミングを報知した時刻とのずれ量H1を算出して、ずれ量H1をRAM23に記憶する。なお、第1監視期間は、ステップS10で被測定者に吸気の開始タイミングを報知した時刻をまたいで設定されるため、吸気の開始が指示される前に、被測定者が吸気を開始した場合であっても、ずれ量H1が取得される。したがって、第1監視期間の中央を、被測定者に吸気の開始タイミングを報知した時刻に合わせる場合、第1監視期間を、想定されるずれ量H1の最大値の2倍以上の期間に設定することが好ましい。
【0170】
また、ステップS70の判定処理で、被測定者の呼気の長さが閾値T2で表される期間に達していないと判定された場合、ステップS72が実行される。
【0171】
ステップS72において、CPU21は、検出した被測定者の呼吸のリズムから得られる被測定者の呼吸の波形80を参照して、ステップS50で被測定者に呼気の開始タイミングを報知した時刻をまたいで予め設定された第2監視期間内に、被測定者が呼気を開始した箇所に対応する極大点が存在するか否かを判定する。
【0172】
第2監視期間に極大点が存在しない場合、被測定者はまだ吸気から呼気に転じていないことからステップS70に移行し、引き続き被測定者の呼吸状態を監視する。
【0173】
一方、第2監視期間に極大値が存在する場合には、被測定者が呼気を開始したことになるため、ステップS74に移行する。
【0174】
ステップS74において、CPU21は、極大値が現れた時刻と、ステップS50で被測定者に呼気の開始タイミングを報知した時刻とのずれ量H2を算出して、ずれ量H2をRAM23に記憶する。なお、第2監視期間は、ステップS50で被測定者に呼気の開始タイミングを報知した時刻をまたいで設定されるため、呼気の開始が指示される前に、被測定者が呼気を開始した場合であっても、ずれ量H2が取得される。したがって、第2監視期間の中央を、被測定者に呼気の開始タイミングを報知した時刻に合わせる場合、第2監視期間を、想定されるずれ量H2の最大値の2倍以上の期間に設定することが好ましい。
【0175】
ステップS70の判定処理で、被測定者の呼気の長さが閾値T2で表される期間に達したと判定された場合、ステップS76が実行される。
【0176】
ステップS76において、CPU21は、ステップS44で算出したずれ量H1と、ステップS74で算出したずれ量H2の合計(以降、「呼吸のずれ量」という)が、規定ずれ量Hより大きいか否かを判定する。すなわち、CPU21は、被測定者の呼吸のリズムが基準リズムに近づいているか否かを、呼吸のずれ量から判定する。規定ずれ量Hは、呼吸のずれ量が当該値以下の場合、生体情報測定装置10AにおけるLFCTの測定精度が予め定めた精度以上となるような値に設定される。
【0177】
呼吸のずれ量が規定ずれ量Hより大きい場合、すなわち、被測定者の呼吸のリズムが基準リズムからずれている場合には、ステップS78に移行する。
【0178】
被測定者の呼吸のリズムが基準リズムからずれている場合、被測定者が呼吸を閾値N1繰り返し行ったとしても、被測定者の呼吸のリズムが基準リズムに近づいている場合と比較して、心拍出量の測定に伴って被測定者に生じる緊張がほぐれないことがある。
【0179】
したがって、ステップS78において、CPU21は、閾値N1の値を現在の値よりも大きく設定する。この場合、CPU21は、規定ずれ量Hと呼吸のずれ量の差分が大きくなるに従って、閾値N1に加算する値を大きくしてもよい。すなわち、被測定者の呼吸のリズムと、基準リズムとのずれが大きくなるに従って、呼吸の基準リズムを報知し始めてから被測定者に呼吸の停止を報知するまでの期間が長くなるように、被測定者の呼吸の回数を調整する。
【0180】
一方、呼吸のずれ量が規定ずれ量H以下の場合、すなわち、被測定者の呼吸のリズムが基準リズムに近づいている場合には、ステップS78の処理を実行することなく、ステップS80に移行する。
【0181】
以降は既に説明したように、被測定者の呼吸の回数が閾値N1に達した場合、被測定者に呼吸の停止、及び呼吸の再開を報知してLFCTを取得した後、心拍出量を測定して、図13に示す測定処理を終了する。
【0182】
ここでは一例として、呼吸のずれ量をずれ量H1とずれ量H2の合計としたが、被測定者の呼吸のリズムと基準リズムとのずれを定量的に表す他の値を用いてもよい。例えばずれ量H1及びずれ量H2の何れか一方を呼吸のずれ量としてもよく、また、ずれ量H1及びずれ量H2の累積値を呼吸のずれ量としてもよい。
【0183】
更には、呼吸のずれ量が規定ずれ量Hを超えた後に、規定ずれ量Hと呼吸のずれ量の差分が小さくなっていった場合には、閾値N1の値が現在の値よりも小さくなるように、閾値N1の値を調整してもよい。
【0184】
また、CPU21は、規定ずれ量Hと呼吸のずれ量の差分が予め定めた許容範囲を超えた場合、被測定者に呼吸を基準リズムに合わせるように注意喚起する指示を報知してもよい。
【0185】
このように本実施の形態に係る生体情報測定装置10Aによれば、被測定者の呼吸のリズムを検出し、被測定者の呼吸のリズムに応じて調整した呼吸の基準リズムを被測定者に報知する。
【0186】
以上、各実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は各実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で各実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0187】
また、各実施の形態では、一例として測定処理をソフトウエアで実現する形態について説明したが、図9及び図13に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)に実装し、ハードウエアで処理させるようにしてもよい。この場合、検出処理の高速化が図られる。
【0188】
また、上述した実施の形態では、生体情報測定プログラムがROM22にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る生体情報測定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、実施の形態に係る生体情報測定プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、実施の形態に係る生体情報測定プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びフラッシュメモリ等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。更に、生体情報測定装置10、10Aは通信ユニット29を介して、通信回線に接続された外部装置から実施の形態に係る生体情報測定プログラムを取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0189】
1(1A、1B) 発光素子
3 受光素子
4 動脈
5 静脈
6 毛細血管
8 生体
10(10A) 生体情報測定装置
11 光電センサ
12 脈波処理部
13 受付部
14 酸素飽和度測定部
15 タイマ
16 通知部
17 酸素循環時間測定部
18 心拍出量測定部
19 検出部
20 コンピュータ
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 不揮発性メモリ
27 入力ユニット
28 表示ユニット
29 通信ユニット
98 赤色領域
99 赤外線領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図13