(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】生体検出方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20221220BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
H04N7/18 K
H04N7/18 N
G06T7/00 300H
(21)【出願番号】P 2018175917
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】手塚 英昭
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208065(JP,A)
【文献】特開2013-041489(JP,A)
【文献】特開2017-194760(JP,A)
【文献】特開平10-124653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像に映っている生体を検出する生体検出方法であって、
赤外線カメラを搭載した飛行体によって動画像を撮影し、
前記動画像から静止画像のフレームを元画像として取り出し、
前記元画像をフーリエ変換することにより空間周波数の分布を解析し、
周波数処理を行って前記空間周波数の分布から所定範囲の空間周波数を除去し、
除去処理後の前記空間周波数の分布に逆フーリエ変換を行って抽出画像を生成し、
前記抽出画像に対して二値化処理を行い、
前記二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最大の値を注目画素の新しい輝度とする最大値フィルタ処理を行い、
最大の輝度の領域を生体に相当する領域として該領域の輪郭を抽出し、
前記生体に相当する領域の輪郭を前記元画像に重畳することによって生体を強調表示することを特徴とする生体検出方法。
【請求項2】
動画像に映っている生体を検出する生体検出方法であって、
赤外線カメラを搭載した飛行体によって動画像を撮影し、
前記動画像から静止画像のフレームを元画像として取り出し、
前記元画像をフーリエ変換することにより空間周波数の分布を解析し、
周波数処理を行って前記空間周波数の分布から所定範囲の空間周波数を除去し、
除去処理後の前記空間周波数の分布に逆フーリエ変換を行って抽出画像を生成し、
前記抽出画像に対して二値化処理を行い、
前記二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最小の値を注目画素の新しい輝度とする最小値フィルタ処理を行い、
最少の輝度の領域の輪郭を生体に相当する領域として該領域の輪郭を抽出し、
前記生体に相当する領域の輪郭を前記元画像に重畳することによって生体を強調表示することを特徴とする生体検出方法。
【請求項3】
前記二値化処理を行った画像に対して、前後のフレームの元画像を用いて時空間メディアンフィルタ処理を行
い、その後に前記最大値フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項
1に記載の生体検出方法。
【請求項4】
前記二値化処理を行った画像に対して、前後のフレームの元画像を用いて時空間メディアンフィルタ処理を行い、その後に前記最小値フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の生体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像に映っている生体を検出する生体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体の行動範囲や生息数の調査を行う際に、飛行体(マルチコプターやドローンとも称される)が用いられている。そして近年、例えばシカやイノシシ、クマなど、人間に危害を加える恐れのある動物や農作物に被害を及ぼす可能性のある動物(害獣)の調査について飛行体を用いることが検討されている。
【0003】
例えば特許文献1では、赤外線サーモグラフィカメラを搭載した飛行体を用いた動物生息状況調査方法が開示されている。特許文献1では、赤外線サーモグラフィカメラを搭載した飛行体を予め設定した飛行ルートに沿って飛行させ、予め定めた撮影位置に到達したときまたは周期的に、赤外線サーモグラフィカメラで撮影し、撮影画像に緯度、経度、高度を含む撮影位置を付して記憶手段に保存している。そして、コンピュータ装置において、記憶手段に保存されている撮影画像から特定の動物を検出し、抽出したある範囲の動物の個体数をもとに対象エリア全体の当該動物の個体数を推定演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、特定動物検出の際に、サーモ画像中の輝度画像をもとにパターンマッチングで個体位置を抽出する。このような手法であると、サーモ画像中の輝度画像がパターン形状と一致するかを照合する処理をするため、処理時の負荷が大きい。また上空からの写真では動物が極めて小さく映るため、パターンマッチングできるほど形状が明確に取得できるわけではない。したがって、特許文献1の技術には更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、生体の検出処理の負荷を軽減しつつ、生体を容易に判別することが可能な生体検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる生体検出方法の代表的な構成は、動画像に映っている生体を検出する生体検出方法であって、赤外線カメラを搭載した飛行体によって動画像を撮影し、動画像から静止画像のフレームを元画像として取り出し、元画像をフーリエ変換することにより空間周波数の分布を解析し、周波数処理を行って空間周波数の分布から所定範囲の空間周波数を除去し、除去処理後の前記空間周波数の分布に逆フーリエ変換を行って抽出画像を生成し、抽出画像に対して二値化処理を行い、生体に相当する領域の輪郭を元画像に重畳することによって生体を強調表示することを特徴とする。
【0008】
上記構成では、動画像から取り出した元画像をフーリエ変換、周波数処理および逆フーリエ変換することにより、抽出画像が生成される。これにより、パターンマッチング処理を行うことなく生体を検出することができ、生体の検出処理に要する負荷を軽減することが可能となる。そして、抽出画像を元画像に重畳して生体を強調表示することにより、生体を容易に判別することが可能となる。
【0009】
上記二値化処理を行った画像に対して、前後のフレームの元画像を用いて時空間メディアンフィルタ処理を行うとよい。かかる構成によれば、逆フーリエ変換後の抽出画像におけるノイズを好適に除去することが可能となる。
【0010】
上記二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最大の値を注目画素の新しい輝度とする最大値フィルタ処理を行い、最大の輝度の領域を生体に相当する領域とするとよい。上記二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最小の値を注目画素の新しい輝度とする最小値フィルタ処理を行い、最少の輝度の領域の輪郭を生体に相当する領域とするとよい。これにより、抽出画像における生体の面積を拡大することができる。したがって、生体をより容易に判別することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体の検出処理の負荷を軽減しつつ、生体を容易に判別することが可能な生体検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態にかかる生体検出方法において用いる装置を説明する図である。
【
図2】本実施形態にかかる生体検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる生体検出方法において用いる装置を説明する図である。本実施形態の生体検出方法では、
図1に示す演算装置100および飛行体200を用いる。飛行体200には、赤外線カメラ210が搭載されていて、かかる赤外線カメラ210によって動画像を撮影する。演算装置100は、赤外線カメラ210によって撮影された動画像を受信し、かかる動画像に対して処理を行い、動画像に映っている生体Lを検出する。演算装置100は、専用の装置であってもよいが、具体的には汎用のコンピュータで構築することができる。
【0015】
図2は、本実施形態にかかる生体検出方法のフローチャートである。
図3-
図6は、処理画像の例を示す図である。本実施形態の生体検出方法では、飛行体200を飛行させて赤外線カメラ210によって撮影した動画像に映っている生体Lを検出する。飛行体200は、山間部や森林等、観測員が容易には立ち入れない場所を飛行して撮影を行うことができるため、見通せない箇所での調査を行うことが可能となる。
【0016】
本実施形態の生体検出方法では、
図2に示すように、演算装置100は、飛行体200の赤外線カメラ210によって撮影された動画像を受信することにより、動画像を取得する(ステップS300)。次に、演算装置100は、動画像から静止画像のフレームを元画像として取り出す(ステップS302)。取り出した元画像は、
図3(a)に示すように、全く加工されていない状態である。
【0017】
続いて演算装置100は、
図3(a)に示す元画像をフーリエ変換する(ステップS304)。これにより、元画像における空間周波数の分布が解析される。そして、演算装置100は、フーリエ変換処理を行った元画像に対して周波数処理を行う(ステップS306)。周波数処理の内容としては、空間周波数の分布から所定範囲の空間周波数を除去する。一例として、樹木の葉は温度差が小さいため空間周波数が低くなる。生体は周辺に対して温度差が大きいので、画像上でも明暗の差が大きくなり、空間周波数が高くなる。したがって生体と周辺を表す帯域の空間周波数を残し、他の帯域を除去することにより、生体の輪郭を強調することが可能となる。
【0018】
その後、演算装置100は、除去処理後の空間周波数の分布に逆フーリエ変換を行う(ステップS306)。これにより、空間周波数から
図3(b)に示すような抽出画像が生成される。
図3(b)を参照して明らかなように、上述したように除去処理を行うことにより、生体以外の背景を大幅に除去可能であることが理解できる。
【0019】
特に本実施形態の生体検出方法では、
図2に示すように、逆フーリエ変換処理を行った後に二値化処理を行い(ステップS310)、二値化処理を行った画像に対して、前後のフレームの元画像を用いて時空間メディアンフィルタ処理を行う(ステップS312)。二値化処理を行うことにより、
図3(b)の抽出画像を、
図4(a)に示すように生体Lとそれ以外の背景とからなるモノクロ画像とすることができる(本実施形態では白黒反転している)。そして、二値化処理に加えて時空間メディアンフィルタ処理を行うことにより、逆フーリエ変換後の抽出画像におけるノイズを好適に除去することが可能となる。
【0020】
上述したように二値化処理および時空間メディアンフィルタ処理を行ったら、処理後の画像に対して最大値フィルタ処理または最小値フィルタ処理を行う(ステップS314)。最大値フィルタ処理では、二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最大の値を注目画素の新しい輝度とし、最大の輝度の領域の輪郭を抽出する。最小値フィルタ処理では、二値化処理を行った画像に対して、注目画素の近傍の輝度のうち最小の値を注目画素の新しい輝度とし、最少の輝度の領域の輪郭を抽出する。
【0021】
本実施形態では、
図4(a)では白黒反転していて、生体が白(輝度が高い)によって表現されているから、最大値フィルタ処理を行う。これにより、
図4(a)に示す画像における生体Lの面積が、
図4(b)に示すように拡大される。したがって、生体Lをより容易に判別することが可能となる。なお生体を黒(輝度が低い)によって表現している場合は、最小値フィルタ処理を用いればよい。
【0022】
そして、
図4(b)に示す最大の輝度の領域、すなわち生体Lに相当する領域の輪郭Cを抽出すると、
図5(a)に示す状態となる。輪郭Cを抽出したら、抽出画像の輪郭Cを元画像(
図3(a)参照)に重畳する(ステップS316)。これにより、
図5(b)に示すように、輪郭Cによって生体Lが強調表示される。輪郭Cは、赤やオレンジ色など、目立つ色に適宜着色することができる。
【0023】
図6(a)では、
図5(a)に示す輪郭Cの太さを太くする処理をしている。そして、
図6(b)では、太くした輪郭Cを元画像に重畳している。これにより、輪郭Cが細い場合に比して、より容易に生体Lを視認しやすくすることが可能となる。
【0024】
上記説明したように、本実施形態の生体検出方法によれば、動画像から取り出した元画像をフーリエ変換、周波数処理および逆フーリエ変換することにより、抽出画像を生成する。これにより、パターンマッチング処理を行うことなく生体を検出することができ、生体の検出処理に要する負荷を軽減することが可能となる。そして、抽出画像を元画像に重畳して生体を強調表示することにより、生体を容易に判別することが可能となる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、動画像に映っている生体を検出する生体検出方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
100…演算装置、200…飛行体、210…赤外線カメラ、C…輪郭、L…生体