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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両の上部内装構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/213 20110101AFI20221220BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60R21/213
B60R13/02 A
B60R13/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018182052
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050166
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】小野 優司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 将司
(72)【発明者】
【氏名】長井 博
(72)【発明者】
【氏名】門田 勝典
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015087(JP,A)
【文献】特開2018-008633(JP,A)
【文献】特開2002-220024(JP,A)
【文献】特開2008-162437(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146361(WO,A1)
【文献】特開2018-122693(JP,A)
【文献】特開2010-006101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/213
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部を区画するピラーに取り付けられて当該ピラーを車室側から覆うピラートリムと、前記ピラートリムよりも上方に設けられて車室の天井を覆うトップシーリングと、を備える車両の上部内装構造において、
前記トップシーリングの上方に収納されて車室側壁を覆うように展開可能なカーテンエアバッグと、
前記カーテンエアバッグの展開時に当該カーテンエアバッグを車室側に案内する展開ガイド部とを備え、
前記展開ガイド部は、
前記トップシーリングの上方且つ前記カーテンエアバッグの車幅方向の外方に前記ピラートリムの上端部と対向するように配置されるとともに車両前後方向および上下方向に延びる形状を有して前記カーテンエアバッグの車幅方向の外方への展開を規制する第1ガイド部と、
前記第1ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる底壁部と、
前記第1ガイド部と前記トップシーリングとの間に配置されて上下方向に延びる形状を有して前記カーテンエアバッグが前記第1ガイド部と前記ピラートリムの上端部との間の隙間に入り込むのを規制する複数の第2ガイド部とを備え
前記各第2ガイド部は、それぞれ前記底壁部の車幅方向の内側端付近から下方に延びる形状を有するとともに、車両前後方向に互いに離間している、ことを特徴とする車両の上部内装構造。
【請求項2】
請求項に記載の車両の上部内装構造において、
前記展開ガイド部は、それぞれ前記各第2ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる連結片を備え、当該連結片は前記底壁部の車幅方向の外側端と連結されている、ことを特徴とする車両の上部内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開口部を区画するピラーに取り付けられて当該ピラーを車室側から覆うピラートリムと、ピラートリムよりも上方に設けられて車室の天井を覆うトップシーリングとを備える車両の上部内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の上部には、内装部材として、車室の天井を覆うトップシーリングと、車両の開口部分を区画するピラーを車室側から覆うピラートリムとが装備されるようになっている。車両には、さらに、車両の衝突時等に乗員を保護するためのエアバッグ装置が装備される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ピラートリム(Bピラーガーニッシュ)とトップシーリング(ルーフヘッドライニング)とが装備されるとともに、車両の衝突時等にトップシーリングの上方から車室内にカーテンエアバッグが展開して当該カーテンエアバッグが車室側壁を覆うように構成されたエアバッグ装置(いわゆるカーテンエアバッグ装置)が装備された車両が開示されている。
【0004】
特許文献1の車両では、ピラートリムの上方にカーテンエアバッグの車室内への展開を促進するための傾斜部が装備されている。具体的には、この傾斜部は、カーテンエアバッグの下方において下側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜しており、カーテンエアバッグが下斜め外方に展開するのを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-15087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1のような傾斜部を設ければ、カーテンエアバッグをより早期に展開させることができると考えられる。しかし、特許文献1の車両では、前記のように傾斜部がカーテンエアバッグの下方に設けられていることに伴って傾斜部とピラートリムとの間に隙間が形成されている。つまり、特許文献1の車両では、カーテンエアバッグからの膨張力を受けると傾斜部が下方に変位するため、ピラートリムと傾斜部との干渉を回避するべくこれらの間に隙間が形成されている。これより、特許文献1の車両では、カーテンエアバッグの展開時に、ピラートリムと傾斜部との間の隙間にカーテンエアバッグが入り込んでカーテンエアバッグがピラートリム等と引っかかるおそれがある。この引っかかりは、ピラートリムの上端部の形状を工夫することで回避することが可能であるが、この場合には、ピラートリムの形状が限定されてしまいデザインの自由度が低くなる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、カーテンエアバッグの早期展開を実現しつつデザインの自由度を高くできる車両の上部内装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、車両の開口部を区画するピラーに取り付けられて当該ピラーを車室側から覆うピラートリムと、前記ピラートリムよりも上方に設けられて車室の天井を覆うトップシーリングと、を備える車両の上部内装構造において、前記ト
ップシーリングの上方に収納されて車室側壁を覆うように展開可能なカーテンエアバッグと、前記カーテンエアバッグの展開時に当該カーテンエアバッグを車室側に案内する展開ガイド部とを備え、前記展開ガイド部は、前記トップシーリングの上方且つ前記カーテンエアバッグの車幅方向の外方に前記ピラートリムの上端部と対向するように配置されるとともに車両前後方向および上下方向に延びる形状を有して前記カーテンエアバッグの車幅方向の外方への展開を規制する第1ガイド部と、前記第1ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる底壁部と、前記第1ガイド部と前記トップシーリングとの間に配置されて上下方向に延びる形状を有して前記カーテンエアバッグが前記第1ガイド部と前記ピラートリムの上端部との間の隙間に入り込むのを規制する複数の第2ガイド部とを備え、前記各第2ガイド部は、それぞれ前記底壁部の車幅方向の内側端付近から下方に延びる形状を有するとともに、車両前後方向に互いに離間している、ことを特徴とする車両の上部内装構造。を提供する(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、カーテンエアバッグの展開時に当該カーテンエアバッグを車室側に案内する展開ガイド部が設けられているとともに、この展開ガイド部に、カーテンエアバッグの車幅方向の外方に設けられてカーテンエアバッグが車幅方向の外方に展開するのを規制する第1ガイド部に加えて、第1ガイド部とトップシーリングとの間で上下方向に延びてカーテンエアバッグが第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間に入り込むのを規制する第2ガイド部が設けられている。そのため、第1ガイド部によってカーテンエアバッグの車幅方向内方への展開を促進しつつ、第2ガイド部によって第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間にカーテンエアバッグが入り込んでカーテンエアバッグがピラートリム等に引っかかるのを抑制できる。従って、ピラートリムの形状を前記の引っかかりを回避するための形状に限定する必要がなく、ピラートリムひいては車両の内装のデザインの自由度を高くしながら、カーテンエアバッグを早期に車室内に展開させることができる。
【0010】
また、本発明では、前前記第1ガイド部は、車両前後方向および上下方向に延びる形状を有し、前記展開ガイド部は、前記第1ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる底壁部を備えるとともに、複数の前記第2ガイド部を備え、前記各第2ガイド部は、それぞれ前記底壁部から下方に延びる形状を有するとともに、車両前後方向に互いに離間している。
【0011】
これより、本発明によれば、底壁部によって第1ガイド部の剛性を高くでき、第1ガイド部によってカーテンエアバッグの車幅方向外方への展開をより確実に抑制することができる。
【0012】
ここで、第2ガイド部は、第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間にカーテンエアバッグが入り込むのを規制する機能を有していればよく、第1ガイド部に比べてその剛性は低くてもよい。これに対して、この構成では、第1ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる底壁部に各第2ガイド部が車両前後方向に離間するように設けられている。つまり、第2ガイド部は、底壁部の車両前後方向全体ではなく、この底壁部に分散して設けられている。そのため、第2ガイド部によって第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間にカーテンエアバッグが入り込むのを規制しつつ、第2ガイド部ひいては展開ガイド部全体の重量を小さくできる。
【0017】
また本発明は、前記各第2ガイド部が、それぞれ前記底壁部の車幅方向の内側端付近から下方に延びる形状を有している。
【0018】
これより、カーテンエアバッグが第1ガイド部の下方において車幅方向の外方に展開することを効果的に防止でき、第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間に入り込むのをより一層確実に防止できる。
【0019】
前記構成において、好ましくは、前記展開ガイド部は、それぞれ前記各第2ガイド部の下端部から車幅方向の外方に延びる連結片を備え、当該連結片は前記底壁部の車幅方向の外側端と連結されている(請求項)。
【0020】
この構成によれば、第2ガイド部の剛性をある程度高くして、第2ガイド部によってもカーテンエアバッグの車幅方向外方への展開を規制することができる。また、連結片によって第1ガイド部とピラートリムとの間の隙間を車幅方向に沿って塞ぐことができ、この隙間にカーテンエアバッグが入り込むのをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、カーテンエアバッグの早期展開を実現しつつデザインの自由度を高くできる車両の上部内装構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両の側部を車室側から見た概略側面図である。
図2図1のII-II線を通る面における概略断面図である。
図3】トップシーリングが取り外された状態のBピラー周辺を車室側から見た概略図である。
図4図3に示す状態からピラートリムを取り外した状態を示した図である。
図5】ブラケットとピラーインナパネルとの取付け構造を説明するための概略斜視図であって車外側から見た図である。
図6】ブラケットとピラートリムとの取付け構造を説明するための概略斜視図であって車外側から見た図である。
図7】ブラケットを車室側から見た概略斜視図である。
図8】ブラケットを車外側から見た概略斜視図である。
図9図7のIX-IX線を通る面における概略断面図である。
図10】カーテンエアバッグの展開時の様子を示した図であり、(a)はトップシーリングが離脱する前の図、(b)はトップシーリングが離脱した後の図である。
図11】Cピラー周辺を車室側からみた概略図である。
図12図11のXII-XII線を通る面における概略断面図である。
図13】第2実施形態に係るブラケットを示した概略斜視図である。
図14図13のXIV-XIV線を通る面における概略断面図である。
図15】第3実施形態に係るブラケットを示した概略斜視図である。
図16図15のXVI-XVI線を通る面における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。以下では、図1に示すように、本発明の車両の上部内装構造が1列目シート1aと2列目シート1bとを有する2列シートの車両1に適用された場合について説明する。
【0024】
図1は、車両1の側部を車室側から見た概略側面図である。図2は、図1のII-II線を通る面における概略断面図である。以下の説明では、車両前後方向のことを単に前後方向という。各図において、「内」は車幅方向についての内方(内側)つまり車室側を表し、「外」は車幅方向についての外方(外側)つまり車外側を表している。 図1に示すように、車両1の側部には、1列目シート1a用の乗員昇降用の開口部1cと、2列目シート1b用の乗員昇降用の開口部1dとが形成されている。これら開口部1c、1dにはそれぞれ図示しないサイドドアが取り付けられる。車両1は、開口部1c、1dを区画するピラーとして、前から順に、Aピラー2、Bピラー3、Cピラー4を有する。また、車両1は、車室の天井部分の外面を構成するルーフパネル5を有する。各ピラー2、3、4は、車両1の車幅方向の両側にそれぞれ1つずつ設けられている。各ピラーおよびその周辺の構造は、車幅方向について対称である。
【0025】
図1図2に示すように、車両1は、車両の内装部材として、ルーフパネル5を下方から覆い車室の天井を覆うトップシーリング6と、各ピラー2、3、4を車室側から覆うピラートリム20、30、40とを有する。
【0026】
トップシーリング6は、軟質材で形成されており比較的容易に変形可能である。トップシーリング6は、例えば、発砲ウレタン等の表面を不織布で覆ったもの等によって形成される。ピラートリム20、30、40は、硬質の合成樹脂(例えばポリプロピレン)で形成されており容易には塑性変形しないようになっている。
【0027】
トップシーリング6は、鉛直断面において上側に凸の弓状に形成された本体部6bと、本体部6bの車幅方向の端部から略水平方向に延びる延出部6aとを有する。つまり、トップシーリング6の車幅方向の両外端部には、略水平に延びる延出部6aが設けられている。なお、延出部6aは、水平面とのなす角度が0度以上20度以下となるように構成されている。すなわち、本明細書でいう略水平とは、水平面との成す角度0度以上20度以下であるものをいう。
【0028】
車両1は、車両の内装部材として、トップシーリング6を保持するためのブラケットを有する。本実施形態では、車両1は、ブラケットとして、Bピラー3の上端部に設けられたブラケット50を有する。このブラケット50は、請求項の「展開ガイド部」に相当する。
【0029】
車両1は、さらに、カーテンエアバッグ装置70を有する。カーテンエアバッグ装置70は、車両の衝突時に、乗員を保護するための装置である。カーテンエアバッグ装置70は、袋状のカーテンエアバッグ71と、カーテンエアバッグ71に膨張ガスを供給するインフレータ72とを備える。
【0030】
カーテンエアバッグ71は、折り畳まれた状態で、トップシーリング6の上方に、つまり、トップシーリングよりも上側の空間に収納されている。カーテンエアバッグ71は、Aピラー2からCピラー4まで延びる長さを有しており、Aピラー2の上端部からBピラー3の上端部を通ってCピラー4の上端部まで延びている。
【0031】
インフレータ72は、例えば横Gセンサからなる図外の側突センサにより車両の側突が検知された場合に作動し、カーテンエアバッグ71に瞬時に膨張ガスを供給する。カーテンエアバッグ71は、この膨張ガスの供給を受けて膨張し、トップシーリング6の下方つまり車室内に展開する。カーテンエアバッグ71は、サイドドアの内面等からなる車室側壁を覆うように展開して、ドライバーが車室側壁に衝突するのを阻止する。
【0032】
ピラー周辺の構造について説明する。以下では、請求項に係るピラーがBピラー3である場合について説明し、Bピラー3周辺の構造について説明する。以下では、適宜、車幅方向の外側を車外側、車幅方向の内側を車室側という。
【0033】
図3は、Bピラー3の上端部周辺を車室側から見た概略図である。図3は、トップシーリング6が取り外された状態の図である。図4は、図3に示す状態からピラートリム30およびカーテンエアバッグ71が取り外された状態の図である。図5は、Bピラー3とブラケット50との取付け構造を説明するための図であり、車室側からこれらを見た概略図である。図6は、ブラケット50とピラートリム30との取付け構造を説明するための図であり、車外側からこれらを見た概略図である。
【0034】
図2に示すように、Bピラー3は、車外側に配置されるピラーアウタパネル3aと、車室側に配置されてピラーアウタパネル3aとで閉断面を区画するピラーインナパネル3bとを有する。本実施形態では、Bピラー3のピラーインナパネル3bは、Aピラー2の上端部から後方に延びるルーフサイドレール9と一体に形成されている。Bピラー3のピラーインナパネル3bは、ルーフサイドレール9の前後方向中間部から下方に延びている。以下では、Bピラー3のピラーインナパネル3bを、単にピラーインナパネル3bという。
【0035】
(ピラーインナパネル)
ピラーインナパネル3bの上端部には、ブラケット50を固定するためのブラケット固定用孔3cが形成されている。本実施形態では、ピラーインナパネル3bの上縁付近の前後方向に離間する位置に、2つのブラケット固定用孔3cがほぼ同じ高さ位置で形成されるとともに、これら2つのブラケット固定用孔3cよりも下方の位置に1つのブラケット固定用孔3cが形成されている。ピラーインナパネル3bの上下中央付近には、ピラートリム30を固定するためのピラートリム固定用孔3dが形成されている。
【0036】
(ピラートリム)
図6等に示すように、ピラートリム30は、車室側に膨出する形状を有しており、その水平断面は略コ字状となっている。ピラートリム30は、ブラケット50の下部を車室側から覆った状態でピラーインナパネル3aに固定されている。
【0037】
ピラートリム30の車外側の側面の上部には、車外側に突出する突出部31が設けられている。この突出部31には、前後方向に離間した位置に、さらに車外側に突出する2つの位置決め用突起32、32が設けられている。
【0038】
(ブラケット)
図7は、ブラケット50を車室側から見た概略斜視図である。図8は、ブラケット50を車外側から見た概略斜視図である。図9は、図7の概略IX-IX線断面図である。
【0039】
ブラケット50は、ピラーインナパネル3bの上端部付近に取り付けられている。前記のように、ブラケット50の下部はピラートリム30によって覆われており、ブラケット50は、ピラートリム30の上縁33よりも下方の位置からこの上縁33よりも上方の位置まで延びる大きさを有している。
【0040】
ブラケット50は、前後方向および上下方向に延びる第1立壁部110と、第1立壁部110の下縁110a(下端部)から車外側に延びる底壁部120と、底壁部120の車外側の縁から下方に延びる第2立壁部130と、底壁部120の下面から下方に延びる複数の第1挟持片140と、底壁部120の下面から下方に延びる2つの第2挟持片150とを有する。前記の第1立壁部110は、請求項の「第1ガイド部」に相当し、底壁部120は、請求項の「底壁部」に相当し、第1挟持片140は、請求項の「第2ガイド部」に相当する。
【0041】
第1立壁部110のうち前後方向の両端部分を除く部分111(以下、中央パネル部111という)は、概ね車幅方向と直交する鉛直面に沿って上下方向に延びている。つまり、第1立壁部110はその前後方向中央部分に、鉛直面に沿って延びる中央パネル部111を有している。
【0042】
第1立壁部110の前後方向の両端部分は、中央パネル部111から前後方向に離間するほど車外側に位置するように湾曲している。第1立壁部110の前後方向の両端部分には、それぞれ、車外側に突出するブラケット被固定部112が設けられている。これらブラケット被固定部112には、それぞれその車外側の面と車室側の面と貫通するブラケット被固定孔112aが形成されている。これらブラケット被固定孔112aには、ブラケット50をピラーインナパネル3bに固定するためのクリップ90が取り付けられている。
【0043】
中央パネル部111の下縁の高さ位置は、前後方向についてほぼ一定である。一方、第1立壁部110のうち中央パネル部111から前側および後側に延びる部分の下縁は、中央パネル部111から前後方向に離間するほど下方に位置するように湾曲している。つまり、第1立壁部110の下縁110aは、前後方向の中央部分において一定の高さで延びる一方、中央部分から前後方向に離れるほど下方に位置するように湾曲しており、車両の側方から見て、前後方向の中央部分が上方に膨出するような円弧状に形成されている。なお、第1立壁部110の前後方向の最外端部分は、その下縁の高さがほぼ一定の状態で車幅方向に延びている。
【0044】
図8に示すように、第1立壁部110の車外側の面には、当該面から車外側に突出するリブ190が設けられており、第1立壁部110はこのリブ190によって補強されている。つまり、リブ190によって第1立壁部110の剛性は高められており、ブラケット50の上側部分は、リブ190と第1立壁部110とによって剛性の高い高剛性部となっている。本実施形態では、このリブ190は、車両の側方から見て格子状を有している。具体的には、リブ190は、上下方向に延びる複数の縦リブ191とこれらとそれぞれ交差して前後方向に延びるとともに上下に平行に並ぶ2本の横リブ192とを有している。リブ190の大部分は第1立壁部110のうち中央パネル部111の車外側の面に設けられており、中央パネル部111の剛性が特に高められている。
【0045】
底壁部120は、第1立壁部110の下縁110a(詳細には、第1立壁部110のうち前後方向の最外端部分を除く部分の下縁)から車外側に延びる第1底壁部121と、第1底壁部121の車幅方向の外側縁から車外側に延びる第2底壁部122とを有している。
【0046】
第1底壁部121は、車外側ほど下方に位置するように外斜め下方に傾斜している。第2底壁部122は第1底壁部121の車幅方向の外側縁すなわち下縁からほぼ水平に車外側に延びている。第2底壁部122の前後方向の両端部分は、第1立壁部110の前後方向の最外端部分につながっている。
【0047】
本実施形態では、リブ190の一部は第1底壁部121の車外側の面にも位置している。ただし、リブ190は、第1底壁部121の上下方向の中央位置よりも上方に設けられており、底壁部120の剛性は、第1立壁部121の剛性よりも低く抑えられている。
【0048】
第2立壁部130は、第2底壁部122の車外側の縁から下方に延びている。第2立壁部122は、前側に設けられる前側第2立壁部131と、後側に設けられる後側第2立壁部132とを有する。前側第2立壁部131は、後側第2立壁部132よりも下方まで延びている。これら前側第2立壁部131、後側第2立壁部132にはそれぞれ、その車外側の面と車室側の面とを貫通する位置決め用孔130aが形成されている。
【0049】
位置決め用孔130aは、ブラケット50とピラートリム30との相対位置を規定するための孔である。具体的には、図6に示すように、位置決め用孔130a、130aには、ピラートリム30の位置決め用突起32、32が挿入される。位置決め用突起32の外径と位置決め用孔130aの内径とはほぼ同じ寸法に設定されており、位置決め用突起32が位置決め用孔130aに挿入されることで、ピラートリム30はブラケット50に係止されてピラートリム30のブラケット50に対する位置が規定される。
【0050】
前側第2立壁部131には、位置決め用孔130aよりも下方の位置に、ブラケット被固定孔130bが形成されている。このブラケット被固定用孔130bには、第1立壁部110に設けられたブラケット被固定用孔112aと同様に、ブラケット50をピラーインナパネル3bに固定するためのクリップ90が取り付けられている。
【0051】
第1挟持片140は、上下および車幅方向に延びる板状、つまり、車両前後方向に直交する面に沿う板状に形成されている。本実施形態では、1つのブラケット50に4つの第1挟持片140が設けられている。4つの第1挟持片140は、互いに同じ構造を有している。これら第1挟持片140は、前後方向について互いに離間した位置に、互いに平行に配置されている。本実施形態では、4つの挟持片140は、全て、前後方向について第1立壁部110のうち中央パネル部111が形成された領域に設けられており、中央パネル部111の下方に配置されている。
【0052】
第1挟持片140は、第1底壁部121と第2底壁部122とにわたって延びており、これら各底壁部121、122の下面から下方に延びている。第1挟持片140は、第2立壁部130の車室側の面につながっており、この面から車室側に延びている。第1挟持片140は、車幅方向について、中央パネル部111の車室側の端面とほぼ同じ位置まで延びている。第1挟持片140の車幅方向の内側端は、中央パネル部111の車室側の端面とほぼ同じ位置において(車幅方向について)、鉛直方向にほぼまっすぐ延びており、中央パネル部111の車室側の端面と、第1挟持片140の車室側の端面とは、概ね連続して鉛直方向に延びている。
【0053】
第1挟持片140の車外側の部分であって第2底壁部122から下方に延びる部分の高さ寸法は、車幅方向に概ね一定であり、この部分の下縁の高さ位置は車幅方向に概ね一定である。一方、第1挟持片140のうち車室側の部分であって第1底壁部121から下方に延びる部分は、その下縁が車室側ほど上方に位置するように内斜め上方に傾斜している。
【0054】
第2挟持片150は、第2底壁部122の前端部と後端部とにそれぞれ1つずつ設けられており、最も前側の第1挟持片140よりも前側の部分と、最も後側の第1挟持片140よりも後側の部分とに設けられている。第2挟持片150は、第2底壁部122の下面から下方に延びている。第2挟持片150も第1挟持片140と同様に上下方向および車幅方向に延びる板状に形成されているが、第2挟持片150は車幅方向について湾曲している。具体的には、前側の第2挟持片150は前側ほど車外側に位置するように湾曲しており、後側の第2挟持片150は後側ほど車外側に位置するように湾曲している。
【0055】
図2図5に示すように、ブラケット50とピラートリム30とがピラーインナパネル3bに取り付けられた状態において、各第1挟持片140と各第2挟持片150とは、ピラートリム30の上縁33よりも上方においてこの上縁33と対向する。詳細には、第1挟持片140の車室側の部分であって内斜め上方に傾斜する部分とピラートリム30の上縁33とが上下方向に対向し、第2挟持片150は、その全長にわたってピラートリム30の上縁33の前後方向の両端部分と対向する。各挟持片140、150とピラートリム30の上縁33との間には上下方向に隙間が区画されている。トップシーリング6は、これらとピラートリム30の上縁33と挟持片140、150との間の隙間に配置されており、これら挟持片140、150とピラートリム30とによって挟持されている。詳細には、トップシーリング6は、挟持片140、150の下縁とピラートリム30の上縁33とによって挟持されている。
【0056】
ブラケット50と、ピラートリム30とをピラーインナパネル3bに取り付ける手順は、次のとおりである。
【0057】
まず、ブラケット50にクリップ90を取り付ける。具体的には、ブラケット50のブラケット被固定孔112a、112a、130bにそれぞれクリップ90を挿通する。クリップ90は、その先端側の部分(車外側に配置される部分)が径方向に弾性変形可能に構成されており、この先端部分が縮径した状態で孔内に挿通されて挿通後に拡径することで各孔112a、112a、140bに取り付けられる。
【0058】
次に、クリップ90を介してブラケット50をピラーインナパネル3bに取り付ける。具体的には、ピラーインナパネル3bのブラケット固定用孔3c内に、クリップ90のうちブラケット50から車外側に突出している部分を挿通する。このとき、前記のようにクリップ90の先端部分が縮径および拡径することでクリップ90はピラーインナパネル3bに固定される。これにより、ブラケット50は、ピラーインナパネル3bに固定される。
【0059】
本実施形態では、ブラケット50は、ピラーインナパネル3bに車幅方向に相対移動不能に固定される。これに対して、ブラケット50は、クリップ90の径方向つまりピラーインナパネル3bの車室側の側面に沿う移動がある程度許容された状態でピラーインナパネル3bに固定される。具体的には、クリップ90のうちブラケット被固定孔112a、112a、130bに挿通される部分の外径は、ブラケット被固定孔112a、112a、130bの内径よりも小さく設定されており、クリップ90はブラケット50に対してクリップ90の軸方向と直交する面に沿って相対移動可能に取り付けられる。一方、クリップ90のうちブラケット固定用孔3cに挿通される部分の外径と、ブラケット固定用孔3cの内径とはほぼ同じ寸法に設定されているとともに、クリップ90はブラケット被固定孔112a、112a、130bとブラケット固定用孔3cとに挿通された状態でその軸方向の移動が規制されるように構成されている。これより、ブラケット50はクリップ90ひいてはピラーインナパネル3bに対して、車幅方向の相対移動は規制される一方、車室側の側面に沿って相対移動が許容された状態で取り付けられる。
【0060】
次に、ピラートリム30とブラケット50との間にトップシーリング6の車幅方向の両端部を挟み込みつつ、ピラートリム30をピラーインナパネル3bに取り付ける。このとき、図6に示すように、また、前述のように、ブラケット50の位置決め用孔130a、130aにピラートリム30の位置決め用突起32、32を挿入して、ピラートリム30をブラケット50に係止する。そして、ピラートリム40に設けられたクリップ(不図示)をピラーインナパネル3bのピラートリム固定用孔3dに挿入して、ピラートリム30をピラーインナパネル3bに固定する。
【0061】
これにより、ブラケット50とピラートリム30との相対位置が適切に維持された状態で、ピラートリム30は、ブラケット50の下部およびピラーインナパネル3bを車室側から覆うように取り付けられる。また、トップシーリング6は、ピラートリム30とブラケット50とによってピラートリム30の上方に保持される。詳細には、前記のように、ピラートリム30の上縁33と、第1挟持片140の下縁および第2挟持片150の下縁とによって、トップシーリング6は、ピラートリム30の上縁33に当接した状態で保持される。そして、ブラケット50は、その全体がピラートリム30とトップシーリング6によって車室側から覆われることになる。
【0062】
ここで、前記のように、トップシーリング6の車幅方向の両端部には、延出部6aが設けられている。これより、トップシーリング6のうちこの延出部6aがピラートリム30とブラケット50とによって挟持される。
【0063】
このように、本実施形態では、ブラケット50(第1挟持片140、第2挟持片150)とピラートリム30の上縁33とによってトップシーリング6が挟みこむことで、トップシーリング6をピラートリム30の上方に保持することができ、トップシーリング6の取付を容易に行うことができる。 次に、前記のようにしてピラーインナパネル3bに取り付けられたブラケット50、ピラートリム30、トップシーリング6およびカーテンエアバッグ装置70との位置関係について説明する。
【0064】
図2図3等に示すように、カーテンエアバッグ71は、ブラケット50よりも車室側に配置されている。カーテンエアバッグ71は、ブラケット50とトップシーリング6との間を通って前後方向に延びている。ブラケット50とピラートリム30とは、延出部6aの車外側の部分を挟持しており、延出部6aの一部は、ブラケット50およびピラートリム30の上縁33から車室側に延びている。カーテンエアバッグ71は、延出部6aのうちこのブラケット50およびピラートリム30の上縁から車室側に延びる部分、つまり、延出部6aの車室側の部分の上方に配置されている。カーテンエアバッグ71は、延出部6aから上方に離間した位置に配置されており、カーテンエアバッグ71と延出部6aとの間には空間が区画されている。
【0065】
カーテンエアバッグ71は、少なくとも一部が第1立壁部110と対向するように配置されており、第1立壁部110の車室側を通って前後方向に延びている。詳細には、カーテンエアバッグ71は、第1立壁部110の中央パネル部111の車室側の面に沿って前後方向に延びている。本実施形態では、上下方向について、カーテンエアバッグ71は、第1立壁部110の上縁よりも下方の位置から、第1立壁部110の下縁110aよりも下方の位置までの範囲に位置している。図2の例では、上下方向について、カーテンエアバッグ71は、第1立壁部110の上縁から第1立壁部110の高さ寸法の1/3程度下方の位置から、第1挟持片140の上縁から第1挟持片140の最大高さ寸法の1/4程度下方の位置までの領域に配置されている。また、カーテンエアバッグ71のうち上から3/4程度の部分が第1立壁部110の下縁110aよりも上方に配置されている。
【0066】
図3図4に示すように、インフレータ72は、所定の方向に延びる筒状を有しており、その長手方向の一端にカーテンエアバッグ71に向けてガスを噴き出すガス供給部72aを備えている。インフレータ72は、車幅方向について、ブラケット50よりも車室側に配置されているとともに、ガス供給部72aが前側を向く姿勢で、ブラケット50の後端部分の上端部と対向する位置から後方に延びている。つまり、インフレータ72は、前後方向に延び、且つ、ガス供給部72aが前端となる姿勢でトップシーリング6の上方に取り付けられている。そして、インフレータ72のガス供給部72aは、車両側方からみてブラケット50の後端部分と重なる位置に配置されている。カーテンエアバッグ71は、このガス供給部72aから前方に延びた後、分岐部71aにおいて前方および後方に分岐している。
【0067】
また、図2等に示すように、カーテンエアバッグ71は、ピラートリム30の上縁33よりも車室側に配置されている。ここで、ピラートリム30は、上方に向かって車室側に湾曲するような形状を有しており、ピラートリム30は、その上縁33が最も車室側に位置するように構成されている。従って、カーテンエアバッグ71は、車幅方向について、ピラートリム30の各部よりも車室側に位置していることになる。
【0068】
(作用等)
図10(a)、(b)は、カーテンエアバッグ71の展開時の様子を示した図である。
【0069】
車両が側突等するとインフレータ72のガス供給部72aからカーテンエアバッグ71にガスが供給される。カーテンエアバッグ71は、矢印で示すように、下方、車室側および車外側に膨張しようとする。ただし、前記のように、カーテンエアバッグ71は第1立壁部110と対向して配置されている。そのため、第1立壁部110によってカーテンエアバッグ71の車外側への膨張は規制され、第1立壁部110によってカーテンエアバッグ71は下方および車室側に案内される。特に、本実施形態では、第1立壁部110の剛性が高くされている。そのため、第1立壁部110の車外側への変位量が少なく抑えられて、カーテンエアバッグ71の車外側への膨張量が非常に小さく抑えられる。さらに、本実施形態では、第1立壁部110のうち剛性が最も高くされた中央パネル部111に沿うようにカーテンエアバッグ71が配置されていることで、カーテンエアバッグ71の車外側への膨張がより確実に抑制される。また、この中央パネル部111は、鉛直面に沿って延びており、カーテンエアバッグ71は、中央パネル部111に沿って円滑に下方に案内される。
【0070】
カーテンエアバッグ71は、第1立壁部110よりも下方においても車外側に膨出しようとする。しかし、第1立壁部110の下縁110aとトップシーリング6との間には、第1挟持片140が前後方向に並んで配置されている。そのため、第1立壁部110よりも下方においては、第1挟持片140によってカーテンエアバッグ71の車外側への膨張は規制される。つまり、第1挟持片140によってもカーテンエアバッグ71は下方および車室側に案内される。本実施形態では、第1挟持片140は、車幅方向に延びる形状を有している。また、第1挟持片140は、第2立壁部130および底壁部140に連なっている。そのため、第1挟持片140の剛性は、第1立壁部110に比べれば小さいが、ある程度高くされている。従って、第1挟持片140によっても、カーテンエアバッグ71の車幅方向外方への膨張は規制される。
【0071】
また、仮に、第1挟持片140がない場合は、第1立壁部110とピラートリム30との間に前後方向に広がる比較的大きな隙間が形成されることなり、カーテンエアバッグ71がこの隙間に入り込んで、ピラートリム30の上縁33等に引っかかるおそれがある。これに対して、本実施形態では、ピラートリム30の車外側にカーテンエアバッグ71が入り込むのが第1挟持片140によって規制されて、カーテンエアバッグ71がピラートリム30の上縁33等に引っかかるのが抑制される。
【0072】
図10(a)の破線で示すように、下方に膨張したカーテンエアバッグ71は、トップシーリング6に衝突する。ここで、前記のように、カーテンエアバッグ71は、トップシーリング6のうちの延出部6aの上方に配置されている。そのため、カーテンエアバッグ71は、主に延出部6aに衝突する。延出部6aは略水平に延びている。そのため、矢印Y11で示すように下向きに膨張しているカーテンエアバッグ71から延出部6aに加えられる力の向きは延出部6aと略直交することになり、延出部6aにはカーテンエアバッグ71の膨張力が効果的に加えられる。また、膨張前、カーテンエアバッグ71は、延出部6aから上方に離間した位置に配置されている。そのため、延出部6aと衝突する時点でのカーテンエアバッグ71の下向きの膨張速度は比較的大きくなっている。従って、カーテンエアバッグ71は延出部6aに勢いよく衝突し、延出部6aにはより確実に下向きの大きな力が加えられることになる。図10(b)に示すように、カーテンエアバッグ71からの下向きの力を受けて、延出部6aはブラケット50とピラートリム30との間から下方に離脱する。このとき、前記のように延出部6aに対して下向きの大きな力が加えられることで、延出部6aは早期にブラケット50とピラートリム30との間から離脱する。
【0073】
また、カーテンエアバッグ71のうちガス供給部72aに接続された部分は、最初に高圧のガスが加えられることでその膨張力は大きい。これに対して、本実施形態では、ガス供給部72aとブラケット50とが対向しているため、カーテンエアバッグ71のうちブラケット50と対向する部分の膨張力が大きくなる。これより、本実施形態では、トップシーリング6のうちのブラケット50に保持されている部分つまり延出部6aに、さらに確実にカーテンエアバッグ71から大きな力を付与することができ、トップシーリング6をブラケット50とピラートリム30とからより一層早期に離脱させることができる。
【0074】
延出部6aがブラケット50とピラートリム30との間から離脱すると、延出部6aとピラートリム30との間の隙間から、カーテンエアバッグ71は車室内に進入し、車両の側壁に沿って展開する。前記のように、カーテンエアバッグ71は、車幅方向についてピラートリム30よりも車室側に配置されている。そのため、カーテンエアバッグ71は、ピラートリム30と干渉することなくピラートリム30の上縁33よりも下方の領域にすばやく展開する。
【0075】
以上のように、本実施形態では、車両の内装部材としてブラケット50が設けられて、このブラケット50に、トップシーリング6の上方且つカーテンエアバッグ71の車幅方向の外方においてピラートリム30の上縁33(上端部)と対向してカーテンエアバッグ71の車幅方向の外方への展開を規制する第1立壁部110と、第1立壁部110からトップシーリング6の上面まで延びてカーテンエアバッグ71が第1立壁部110とピラートリム30の上縁33との間の隙間に入り込むのを規制する第1挟持片140とが設けられている。そのため、第1立壁部110によってカーテンエアバッグ71の車室側への展開を促進しつつ、第1挟持片140によって第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むこと、および、これに伴いカーテンエアバッグ71がピラートリム30やピラートリム30の車外側に設けられた各種部品に引っかかるのを抑制できる。従って、車室内に展開させるピラートリム30の形状をこの引っかかりを回避するための形状に限定する必要がなく、ピラートリム30ひいては車両の内装のデザインの自由度を高くしながら、カーテンエアバッグを早期に車室内に展開させることができる。また、前記のように、第1挟持片140によってもカーテンエアバッグ71の車室側への展開を促進できる。
【0076】
また、本実施形態では、第1立壁部110が車両前後方向および上下方向に延びる形状を有し、第1立壁部110の下縁110aから車外側に向けて底壁部120が延びるように構成されている。そのため、第1立壁部110の剛性を高くして、第1立壁部110によってカーテンエアバッグ71の車外側への展開をより確実に抑制することができる。さらに、本実施形態では、第1立壁部110がリブ190によって補強されている。特に、第1立壁部110のうちカーテンエアバッグ71が沿うように配置される中央パネル部111の剛性がリブ190によって高められている。また、中央パネル部111は鉛直面に沿うように配設されている。そのため、中央パネル部111によってカーテンエアバグ71の車外側への展開を確実に防止できるとともに、カーテンエアバグ71の下方への展開を一層促進できる。
【0077】
一方、第1立壁部110よりも下方に位置してカーテンエアバッグ71から加えられる力が低くなるとともに、主とした機能が、第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのを規制することである第1挟持片140の剛性は、低くてもよい。これに対して、前記実施形態では、複数の第1挟持片140が底壁部120の下面に前後方向に離間するように設けられている。つまり、第1挟持片140が、底壁部120の前後方向の全体にではなくこの底壁部120に分散して設けられている。そのため、第1挟持片140によって第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのを規制し、且つ、第1挟持片140によってもある程度カーテンエアバグ71の車外側への膨張を規制しつつ、ブラケット50全体の重量を小さくすることができる。
【0078】
ただし、本実施形態では、前記のように、第1挟持片140を前後方向に離間して設けつつ、第1挟持片140を車幅方向に延びる板状(車両前後方向に略直交する板状)としている。そのため、第1挟持片140の剛性を比較的高くすることができ、第1挟持片140によってカーテンエアバッグ71の車外側への展開をより抑制することができる。また、このように構成することで、第1挟持片140によって第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間を車幅方向に沿って塞ぐことができ、この隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのをより確実に防止できる。
【0079】
また、本実施形態では、各第1挟持片140が底壁部120の車室側の端部付近から車外側に延びるように構成されており、第1挟持片140の車室側の縁(端面)が第1立壁部110の車室側の端面に沿って下方に延びている。そのため、カーテンエアバッグ71が第1立壁部110の下方において車外側に展開するのを効果的に防止でき、カーテンエアバッグ71が第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間に入り込むのをより一層確実に防止できる。
【0080】
(変形例)
前記実施形態では、カーテンエアバッグ71が第1立壁部110と第1挟持片140とに跨る領域に配置されて、車両の側方から見てカーテンエアバッグ71からトップシーリング6に向けて下方に延びる部分が第1挟持片140の下部とされた場合について説明したが、カーテンエアバッグ71を第1挟持片140よりも上方に配置して、車両の側方から見て、第1挟持片140全体あるいは第1挟持片140全体と第1立壁部110の下部とが、カーテンエアバッグ71よりも下方に位置するように構成してもよい。
【0081】
前記の車両の上部内装構造は、Bピラー3以外のピラー回りに適用されてもよい。図11は、前記の内装構造がCピラー40回りに適用されたときのCピラー4の周辺部分を車室側からみた概略図である。図11では、トップシーリング6は省略されている。図12は、図11のXII-XII線を通る面における概略断面図である。
【0082】
図11図12の例では、Cピラー4のピラーインナパネル4b(以下、Cピラーインナパネル4bという)にブラケット250(以下、Cブラケット250という)が取り付けられている。Cブラケット250は、Bピラー3に設けられた前記のブラケット50と同様に、鉛直方向に延びる第1立壁部251と、第1立壁部251の下縁251aから車外側に延びる底壁部252と、底壁部252の下面から下方に延びる複数の第1挟持片253を有している。これら第1挟持片253は、前記のブラケット50と同様に、前後方向について互いに平行に並んでいる。そして、この例においても、Cピラー4を車室側から覆うピラートリム40の上縁233と、ブラケット250とによって、トップシーリング6の延出部6aの車外側の部分が挟持され、この延出部6aの車室側の部分の上方にカーテンエアバッグ71が収納されるようになっており、トップシーリング6を容易に車両に取り付けることができる。そして、第1立壁部251および第1挟持片253によってカーテンエアバッグ71の車外側の展開を防止してカーテンエアバッグ71の車室内への展開を促進できるとともに、第1立壁部251とピラートリム40の上縁233との間の隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのを第1挟持片253によって防止できる。
【0083】
また、前記実施形態では、ブラケット50の第1立壁部110の下縁110aが、車両側方から見て、前後方向の中央が上方に膨出するラインに沿って延びるように構成された場合について説明したが、これに代えて、図13および図14図13のXIV-XIV線を通る面における概略断面図)に示すようなブラケット250を用いてもよい。
【0084】
具体的には、図13図14に示す第2実施形態に係るブラケット350は、第1立壁部310の下縁310aの高さがその全体にわたって一定とされており、第1立壁部310の下縁310aから車外側に延びる底壁部320の全体が、第1立壁部310の下縁310aから車外側に略水平に延びている。そして、この略水平に延びる底壁部320の下面から下方に第1挟持片340が延びており、第1挟持片340の高さ寸法が車幅方向にほぼ一定となっている。なお、図13図14において、図7等に示したブラケット50と同様の構造を有する部材については、図7等と同じ符号を付している。
【0085】
また、図15図16図15のXVI-XV線Iを通る面における概略断面図)に示すようなブラケット450が用いられてもよい。具体的には、図15図16に示す第3実施形態に係るブラケット450は、図7等に示したブラケット50と同様に、第1底壁部421および第2底壁部422を含む底壁部420と、第1立壁部110と、第2立壁部130とを有している。一方、第3実施形態に係るブラケット450は、図7等に示した第1挟持片140の代わりに延出片440aと連結片440bとで構成された部材を有し、この部材が前後方向に互いに離間した位置に配置されている。
【0086】
より詳細には、延出片440aは、第1底壁部421の車室側の端部から下方に延びる板状に形成されている。連結片440bは、延出片440aの下縁から車外側に略水平に延びる板状に形成されている。連結片440bは、第3立壁部130の車室側の面から車外側に延びており、第3立壁部130と第2底壁部422の延出片440aの下縁とを連結している。第3立壁部130は第2底壁部422の車外側の端部から下方に延びており、連結片440bは、第3立壁部130を介して、第2底壁部422ひいては底壁部420の車外側の端部と延出片440aの下縁とを連結している。このように構成された第3実施形態に係るブラケット450では、前記の延出片440aが請求項の「第2ガイド部」に相当する。なお、このブラケット450においても、第1立壁部110が請求項の「第1ガイド部」に相当する。
【0087】
この第3実施形態に係るブラケット450では、連結片440bとピラートリム30の上縁33との間でトップシーリング6が挟持される。そして、延出片440aが第1立壁部110とトップシーリング6との間の隙間を塞ぎ、第1立壁部110と延出片440aとによってカーテンエアバッグ71の車外側の展開が防止されるとともに、延出片440aによって第1立壁部110とピラートリム30の上縁33との間の隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのが防止される。また、連結片440bによって、前記隙間が車幅方向に沿って塞がれることによっても、この隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのが防止される。
【0088】
これら延出片440aと連結片440bとは、第1実施形態に係るブラケット50の第1底壁部121および第2底壁部122の一部を押し出すことで形成することができ、第3実施形態に係るブラケット450によれば、第1立壁部110とピラートリム30の上縁33との隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのを規制する機能を有する部分を容易に形成することができる。また、底壁部421、422のうち延出片440aと連結片440bとに対向する部分が抜き取られることになるため、ブラケット450が軽量化される。なお、図13図16において、図7等に示したブラケット50と同様の構造を有する部材については、図7等と同じ符号を付している。
【0089】
また、第3実施形態に係るブラケット450において、連結片440bを省略してもよい。この場合であっても、連結片440bによってピラートリム30の上縁33との隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのを規制することができる。ただし、連結片440bを設けて、延出片440aの下縁と第2底壁部422の車外側の端部とを連結すれば、延出片440aの剛性を高めて、延出片440aによってカーテンエアバッグ71の車外側への展開をより確実に防止できる。また、前記のように、連結片440bによって、第1立壁部110とピラートリム30との間の隙間を車幅方向に沿って塞ぐことができ、この隙間にカーテンエアバッグ71が入り込むのをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0090】
3 Bピラー(ピラー)
3b ピラーインナパネル
6 トップシーリング
30 ピラートリム
50 ブラケット(展開ガイド部)
70 エアバッグ装置
71 カーテンエアバッグ
72 インフレータ
110 第1立壁部(第1ガイド部)
140 第1挟持片(第2ガイド部)
120 底壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16