(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電力供給回路及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221220BHJP
G05F 1/56 20060101ALI20221220BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02M3/155 U
H02M3/155 C
G05F1/56 310U
G05F1/56 320C
H02H7/12 G
(21)【出願番号】P 2018187186
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英男
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-252035(JP,A)
【文献】特開2012-14879(JP,A)
【文献】特開2016-167918(JP,A)
【文献】特開2010-252314(JP,A)
【文献】米国特許第6301133(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02M 7/00-7/40
G05F 1/00-1/70
H02H 7/00-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の直流電源回路のうち一部である第一の電源回路と、
前記複数の直流電源回路の一部であり、前記第一の電源回路よりも後段に位置する第二の電源回路と、
前記第二の電源回路に対して並列に設けられ、ツェナーダイオード及びトランジスタを含む起動部であって、前記第二の電源回路の出力側における異常を前記第一の電源回路に伝え、前記第一の電源回路の出力に基づいて保護動作を起動させる起動部と、
を備え、
前記ツェナーダイオードは、カソードが前記第二の電源回路の出力端に接続され、
前記トランジスタは、前記ツェナーダイオードのアノード電圧に応じて前記第一の電源回路の出力端と接地面との間の電流が制限されるように接続されている
ことを特徴とする電力供給回路。
【請求項2】
前記ツェナーダイオードのアノードと前記トランジスタのベースとが接続され、
前記トランジスタのコレクタと前記第一の電源回路の出力端とが接続され、
当該トランジスタのエミッタが接地されている
ことを特徴とする請求項1記載の電力供給回路。
【請求項3】
前記第一の電源回路には、前記複数の直流電源回路のうち最前段のものが含まれる
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電力供給回路。
【請求項4】
前記第二の電源回路には、前記複数の直流電源回路のうち最後段のものが含まれる
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の電力供給回路。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の電力供給回路を備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給回路及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、バッテリや外部電源から供給された電力が電力供給回路で適宜な電圧に変換されて必要な電流が各部に出力されている。この電力供給回路において、複数のレギュレータなどの電源回路を直列に設けて所望の電圧を生成する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力供給回路では、異常な電流や電圧が出力されないように出力電流を遮断したり、出力電流を制限して過剰な発熱を防いだりする保護動作に係る回路が設けられているものもあるが、特許文献1のように、複数の電源回路が設けられた回路構成では、いずれかの電源回路やその入出力配線などで異常が生じた場合に、この保護動作に係る回路が動作しない場合があった。
【0005】
この発明の目的は、異常に対してより適切に保護動作を行うことのできる電力供給回路及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
直列に接続された複数の直流電源回路のうち一部である第一の電源回路と、
前記複数の直流電源回路の一部であり、前記第一の電源回路よりも後段に位置する第二の電源回路と、
前記第二の電源回路に対して並列に設けられ、ツェナーダイオード及びトランジスタを含む起動部であって、前記第二の電源回路の出力側における異常を前記第一の電源回路に伝え、前記第一の電源回路の出力に基づいて保護動作を起動させる起動部と、
を備え、
前記ツェナーダイオードは、カソードが前記第二の電源回路の出力端に接続され、
前記トランジスタは、前記ツェナーダイオードのアノード電圧に応じて前記第一の電源回路の出力端と接地面との間の電流が制限されるように接続されている
ことを特徴とする電力供給回路である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従うと、異常に対してより適切に保護動作を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電力供給回路を含む電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】電力供給回路の構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電力供給回路20を有する電子機器1の機能構成を示すブロック図である。
【0010】
電子機器1は、電力供給アダプタ10と、電力供給回路20と、機能動作部30などを備える。電力供給アダプタ10は、外部電源から入力された交流電流を直流の所定電圧に変換して出力する。携帯型電子機器などでバッテリにより駆動する場合には、当該電力供給アダプタを介さずにバッテリから電力供給回路20に当該バッテリの出力電圧で直流電流が供給されてもよい。バッテリは着脱可能であってもよく、また、電力供給アダプタから供給される電力により充電可能であってもよい。
【0011】
機能動作部30は、電子機器1の各機能に係る動作を行う。機能動作部30としては、例えば、CPUやRAMを含む制御部、表示動作を行う表示部、音声などを出力する音声出力部、外部からの入力操作を受け付ける操作受付部、各種物理量を計測する計測部、他の電子機器との通信を制御する通信部の一部又は全部が含まれていてもよい。
【0012】
電力供給回路20は、電力供給アダプタ10やバッテリから供給された電圧を機能動作部30に適合した電圧に変換して出力する。
【0013】
図2は、電力供給回路20の構成について説明する図である。
【0014】
図2(a)に示すように、本実施形態の電力供給回路20では、複数、ここでは2個の直流電源回路が直列に接続されて配置されている。直列に配置されている第一電源回路21(第一の電源回路)及び第二電源回路22(第二の電源回路)は、それぞれ入力電圧を変更して出力する降圧回路や昇圧回路である。電力供給アダプタ10やバッテリからの電力が入力電圧Vinで第一電源回路21に入力されて、その出力電力が当該第一電源回路21よりも後段に位置する第二電源回路22に送られる。第二電源回路22の出力電圧が機能動作部30への出力電圧Voutとなる。
【0015】
第一電源回路21は、保護回路25を有している。保護回路25は、第一電源回路21の出力側における電圧や電流を検出し、これら出力電流や出力電圧に基づいて、第一電源回路21の電力出力を遮断(又は発熱などが十分に抑制されるレベルに制限。以下同様)する保護動作が起動される。出力電流や出力電圧の異常には、第一電源回路21が生成する電流電圧の異常だけでなく、出力端が接続された外部の異常、主に短絡も含まれる。また、入力電圧Vinに異常がある場合には、出力電圧又は出力電流にも異常が生じるので、この保護回路25により電力供給回路20からの出力が遮断される。
【0016】
伝達部26(起動部)は、第二電源回路22に対して並列に設けられている。第二電源回路22自体は、完全な保護回路を有していない。伝達部26は、第二電源回路22の出力に異常が生じた場合にその状態を第二電源回路22の入力側、すなわち、第一電源回路21の出力に伝えることで、保護回路25を起動させる。
【0017】
図2(b)は、電力供給回路20の具体例である。
第一電源回路21として降圧回路211が設けられ、第二電源回路22として、小幅(小電位差)な降圧のためのLDO221(Low Dropout)が設けられている。伝達部26としては、ダイオード261が用いられている。ダイオード261は、アノードが降圧回路211の出力端(LDO221の入力側)に接続され、カソードがLDO221の出力端に接続されている。ダイオード261は、その動作電圧がLDO221の降下電圧よりも大きいものが用いられる。これにより、LDO221から機能動作部30に対して正常に電力が出力されている場合には、ダイオード261には電流が流れず、動作しない。なお、LDO221の出力電圧は、出力電流に依存するが、LDO221の入出力電圧差と降下電圧との関係を適切に定めておくことで、機能動作部30の負荷が急激に増大するように動作して、一時的な電圧低下が生じた場合に、一時的にダイオード261から電力供給が可能になる。これにより、正常な動作範囲内での大電流によるLDO221の電圧低下も適宜な範囲に抑制される。
【0018】
LDO221から機能動作部30への電力出力時に短絡側で短絡が生じ、出力電圧Voutが接地電圧などに低下した場合、当初、LDO221の上端側の電圧は、大きく低下しないので、LDO221の入出力電圧差がダイオード261の動作電圧より大きくなる。これにより、電流がダイオード261を経て流れ、この電流によって降圧回路211の出力電圧が低下する。このようにLDO221の上流側に伝えられた電圧低下が保護回路25に検出されることで保護回路25が動作し、降圧回路211、すなわち、電力供給回路20への電力供給が遮断される。
【0019】
図2(c)は、電力供給回路20の他の具体例である。
ここでは、第二電源回路22として昇圧回路222が設けられている。第一電源回路21は、特には限られないが、例えば、昇圧回路である。
【0020】
伝達部26は、ツェナーダイオード262と、トランジスタ263とを有する。トランジスタ263は、バイポーラトランジスタであり、そのコレクタが第一電源回路21の出力端(昇圧回路222の入力側)に接続され、エミッタが接地されている。ツェナーダイオード262のカソードが昇圧回路222の出力端に接続され、アノードがトランジスタ263のベースと接続されている。
【0021】
ここでは、ツェナーダイオード262は、降伏電圧が昇圧回路222の正常な出力電圧Voutよりも大きいものが用いられる。したがって、昇圧回路222が正常に動作している場合には、ツェナーダイオード262のカソードからアノードに電流が流れず、これに応じてトランジスタ263のベース電流も流れない。昇圧回路222が異常動作して出力電圧Voutが上昇し過ぎると、ツェナーダイオード262の降伏電圧を超えて、ツェナーダイオード262のカソードからアノードを経てトランジスタ263のエミッタから接地面へベース電流が流れる。これに応じて、トランジスタ263にコレクタ電流が流れて第一電源回路21の出力電圧が低下する。その結果、保護回路25が動作して、第一電源回路21への電力供給が遮断される。
【0022】
なお、昇圧回路222から機能動作部30への出力に短絡が生じて電圧が低下した場合には、昇圧回路222のコイルとキャパシタの時定数に応じて昇圧回路222の入力側の電圧が下がるので、保護回路25が動作する。
【0023】
図3は、伝達部26の他の例を示す図である。
図3(a)に示すように、伝達部26は、
図2(b)に示した伝達部26におけるダイオード261の代わりにキャパシタ264が並列に設けられている。短絡によりVoutが低下すると、これに応じてキャパシタ264に降圧回路211から大電流が流れ、一時的に降圧回路211の出力端の電圧が低下する。これにより保護回路25が作動して、降圧回路211への電力供給が遮断される。
【0024】
また、
図3(b)に示すように、第二電源回路22であるLDO221がUVLO251(Under Voltage Lockout:低電圧誤動作防止機能)に係る回路を有している場合、伝達部26は、LDO221の入力側(第一電源回路である降圧回路211の出力側)に各電源回路と直列に設けられるインピーダンス素子とされてよい。ここでは、インピーダンス素子は、抵抗素子265である。
【0025】
抵抗素子265は、LDO221の入力電圧が、通常のLDO221の出力設定電圧に対して必要な電圧より小さくならないように、すなわち、UVLO251の基準電圧以下とならないように十分に小さい抵抗値のものが用いられる。LDO221の出力側の短絡により、出力電圧Voutが低下しても、上述のように、当初、降圧回路211の出力端側で保護回路25が作動するほどの電圧低下は起きない。しかし、降圧回路211とLDO221との間に抵抗素子265を挟むことで、短絡により増加したLDO221の入出力電流により抵抗素子265による電圧低下が大きくなり、UVLO251への入力電圧が基準電圧以下となる。これにより、UVLO251が動作して(起動されて)、LDO221からの電力の出力が遮断される。
【0026】
図4は、電力供給回路の変形例を示す図である。
図4(a)~
図4(c)に示すように、電力供給回路に含まれる電源回路の数は、2個に限られない。
【0027】
図4(a)に示すように、保護回路25を有する降圧回路211の後段にLDO221、223が直列で接続されている場合、最後段のLDO223の出力端と降圧回路211の出力端とが伝達部26で接続されることで、電力供給回路20a、20bの出力異常が保護回路に伝達される。
【0028】
図4(b)は、伝達部26の具体例であり、電力供給回路20bにおいて、最後段の電源回路であるLDO223の出力端とともに、LDO221の出力端が、伝達部、ここではダイオード261により降圧回路211の出力端と接続されていてもよい。また、ここでは、LDO223に対しては、伝達部として二個のダイオード267、268が接続されている。LDO221、223における通常の降下電圧の和よりもダイオード267、268の個々の動作電圧が低い場合には、複数のダイオード267、268を直列に配置することで、通常では、動作せず、LDO223の出力電圧が異常に低下した場合にのみ動作するように定めることができる。動作電圧がLDO221、223の通常の降下電圧の和よりも高いダイオード267を用いる場合には、複数を直列配置する必要はない。
【0029】
また、LDO221の出力端とLDO223の入力端との間にダイオード261のカソードを接続することで、LDO221、223の間で短絡などが生じた場合に、LDO223が動作せずにその出力に異常が伝わらなかったとしても、当該短絡の影響を降圧回路211の出力端に伝えて保護回路25を動作させることができる。
【0030】
また、
図4(c)に示すように、保護回路を有する電源回路(第一の電源回路)は、直列に接続された複数の電源回路のうち最前段のものに限られない。ここでは、三段の電源回路のうち、中間の電源回路である降圧回路211が保護回路25を有し、最前段の電源回路である降圧回路212は、完全な保護回路を有しない(通常の過電圧防止回路程度を備えていてもよい)。この場合、最後段のLDO221の出力側における異常は、伝達部26により降圧回路211の保護回路25に伝達される。降圧回路212に異常が生じた場合には、この異常は下流の降圧回路211に伝わって保護回路25を動作させる。
【0031】
以上のように、本実施形態の電力供給回路20は、直列に接続された複数の直流電源回路である第一電源回路21及び第二電源回路22と、第二電源回路22の出力側における異常を、この第二電源回路22よりも上流側に伝えることで、直流電源回路のうちいずれかの保護動作を起動させる伝達部26と、を備える。これにより、直接保護回路25を有していない第二電源回路22の出力側における異常を、保護回路25を有する第一電源回路21に伝えて、保護回路25を起動させることができる。よって、この電力供給回路では、発生した異常に対してより適切に、保護回路25により保護動作を行わせることができる。
【0032】
また、保護動作は、複数の直流電源回路のうち一部の第一電源回路21の出力に基づいて起動され、伝達部26は、複数の直流電源回路のうち第一電源回路21よりも後段に位置する第二電源回路22の出力側における異常を第一電源回路21に伝える。これにより、後段における異常が前段の直流電源回路に係る保護回路25に遡及して伝わらずに、不完全な対応状況のまま負荷に出力され続けるのを防ぎ、適切に保護動作を行わせることができる。これにより、発熱の抑制、電力消費の増大、機能動作部30の異常動作などを適切に防ぐことができる。
【0033】
また、第一電源回路21には、複数の直流電源回路のうち最前段のものが含まれる。保護回路25が最前段の直流電源回路に設けられることで、入力異常を速やかに検出して電力供給回路20の電力供給動作を速やかに中止させることができる。また、このような電力供給回路20において、後段の第二電源回路22の出力側における異常を第一電源回路21に伝達する伝達部26を設けることで、より多くの保護回路を有さずとも最小限の構成で効率的に異常に対する保護動作を起動させることができる。
【0034】
また、第二電源回路22には、複数の直流電源回路のうち最後段のものが含まれる。保護回路を有しない最後段の第二電源回路22の出力側における異常を第一電源回路21に伝えて保護動作を起動させることで、確実かつ迅速に負荷への出力異常を遮断し、電子機器1におけるトラブルの発生を防ぐことができる。
【0035】
また、伝達部26は、第二電源回路22に対して並列に設けられていてよい。これにより、電力供給回路20における各直流電源回路の並びを維持したまま、容易かつ柔軟に第二電源回路22の出力側を第一電源回路21の出力端に接続させることができる。
【0036】
また、この場合、伝達部26は、ダイオード261であり、当該ダイオード261のアノードが第一電源回路21の出力端に接続され、カソードが第二電源回路22の出力端に接続されている。これにより、第二電源回路22の出力側の異常を迅速かつ確実に第一電源回路21に伝え、保護回路25を動作させることができる。
【0037】
あるいは、伝達部26は、ツェナーダイオード262とトランジスタ263とで構成され、ツェナーダイオード262は、カソードが第二電源回路22の出力端に接続され、トランジスタ263は、ツェナーダイオード262のアノード電圧に応じて第一電源回路21の出力端と接地面との間の電流が制限されるように接続されている。これにより、第二電源回路22の出力電圧が異常に上昇した場合に、ツェナーダイオード262の降伏電圧を超えたか否かに応じてアノード側の電圧に応じたトランジスタ263の動作が切り替えられ、すなわち、第一電源回路21の出力端から接地面への電流の有無が切り替えられることになる。よって、この電力供給回路20では、異常な昇圧に対しても、保護回路25を適切に動作させることができる。なお、第一電源回路21に用いられ得る周知の昇圧回路は、内部にダイオードを含み、このダイオードが上述のダイオード261と同様に働く。したがって、この場合には、第二電源回路22の出力側における短絡に伴う異常に対する伝達部26を別途設けずとも第一電源回路21に異常が伝達される。
【0038】
また、特に、ツェナーダイオード262のアノードとトランジスタ263のベースとが接続され、トランジスタ263のコレクタと第一電源回路21の出力端とが接続され、トランジスタ263のエミッタが接地されていることで、上述のように、容易な構成で昇圧異常を電圧低下に変換して保護回路25を起動させることができる。
【0039】
また電力供給回路20は、直流電源回路に、UVLO251を有するLDO221が含まれ、伝達部26はインピーダンス素子、ここでは、抵抗素子265であり、インピーダンス素子は、LDO221の入力側に複数の直流電源回路と直列に接続され、LDO221の入出力電流が異常に増大した場合にLDO221への入力電圧を低下させて、UVLO251を起動させるものであってもよい。
出力側に異常が生じた直流電源回路がUVLO251を有するLDO221である場合、前段側の保護回路25ではなく、UVLO251を動作させることで電力供給回路20の異常動作を停止させることとしてもよい。UVLO251は、入力電圧に応じて動作するので、同様に、LDO221の出力側の異常を入力側に伝達することで、動作させる。電圧低下は、上記の構成のほか、直列に抵抗を設けることで非常に容易に生じさせることができる。このインピーダンス素子は、過大な電流が流れる場合にのみUVLO251が動作する程度の小さい抵抗値でよいので、非常に小型サイズのものを用いることができ、場所をとらない。
【0040】
また、上述のインピーダンス素子は、抵抗素子265である。これにより、場所をとらずに適切な抵抗値を容易に定めて電力供給回路20を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態の電子機器1は、上述の電力供給回路20を備える。よって、電子機器1は、複数の直流電源回路の組み合わせにより効率よく適切な電圧で電力を得ることができ、かつ、電力供給の異常をより適切に検出して保護動作を行うことができる。これにより、電子機器1では、電力供給の異常による機能動作部30の動作異常、異常な発熱や不要な電力消費をより確実に防ぐことができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、LDOにおける小さな電圧低下に対応してダイオードを設ける場合を示したが、LDO以外の降圧回路でもよく、当該降圧回路における電圧低下が大きい場合には、例えば、複数のダイオードを直列につなぐなどにより、全体として、通常の電圧低下以上の動作電圧を得てもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、保護回路25を有する直流電源回路が一つであるものとして説明したが、複数の直流電源回路のうち一部が有していれば、一つであるものに限られない。
【0044】
また、上記実施の形態では、最後段は、保護回路25を有しない直流電源回路であるものとして説明したが、最後段の直流電源回路が保護回路25を有していてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では、全ての直流電源回路が直列に接続される場合を説明したが、複数種類の電圧をする電力供給回路などでは、共通の入力と各出力との間で各々直列に直流電源回路が接続されていればよく、すなわち、途中で複数列に分離してもよい。
【0046】
また、
図2(c)に示した実施形態において、昇圧回路222の構成により、出力端側の短絡を伝える伝達部は不要であるとして説明したが、昇圧回路222に応じて、昇圧異常を伝える伝達部と並列に設けられていてもよい。
【0047】
また、上記
図3(b)に示した変形例において、UVLOを有するLDOの入力側にインピーダンス素子として抵抗素子を直列に接続したが、適宜な大きさの抵抗値が得られるものであれば、抵抗素子を用いずとも適宜な材質のものが設けられていてもよい。また、例えば、サーミスタなどを挟んで温度計測の動作と兼用させてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、機能動作部30を動作させる電子機器1が有する電力供給回路を例に挙げて説明したが、単独の電源装置であって、適宜な電子機器が外部接続されるものであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した構成や保護回路の起動方法などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0050】
[付記]
<請求項1>
直列に接続された複数の直流電源回路と、
前記直流電源回路のうちいずれかの出力側における異常を、当該出力側で異常が生じている直流電源回路よりも上流側に伝えることで、前記直流電源回路のうちいずれかの保護動作を起動させる起動部と、
を備えることを特徴とする電力供給回路。
<請求項2>
前記保護動作は、前記複数の直流電源回路のうち一部の第一の電源回路の出力に基づいて起動され、
前記起動部は、前記第一の電源回路よりも後段に位置する第二の電源回路の出力側における異常を前記第一の電源回路に伝える
ことを特徴とする請求項1記載の電力供給回路。
<請求項3>
前記第一の電源回路には、前記複数の直流電源回路のうち最前段のものが含まれることを特徴とする請求項2記載の電力供給回路。
<請求項4>
前記第二の電源回路には、前記複数の直流電源回路のうち最後段のものが含まれることを特徴とする請求項2又は3記載の電力供給回路。
<請求項5>
前記起動部は、前記第二の電源回路に対して並列に設けられていることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の電力供給回路。
<請求項6>
前記起動部はダイオードであり、当該ダイオードのアノードが前記第一の電源回路の出力端に接続され、カソードが前記第二の電源回路の出力端に接続されていることを特徴とする請求項5記載の電力供給回路。
<請求項7>
前記起動部は、ツェナーダイオードとトランジスタとで構成され、
前記ツェナーダイオードは、カソードが前記第二の電源回路の出力端に接続され、
前記トランジスタは、前記ツェナーダイオードのアノード電圧に応じて前記第一の電源回路の出力端と接地面との間の電流が制限されるように接続されている
ことを特徴とする請求項5記載の電力供給回路。
<請求項8>
前記ツェナーダイオードのアノードと前記トランジスタのベースとが接続され、
前記トランジスタのコレクタと前記第一の電源回路の出力端とが接続され、
当該トランジスタのエミッタが接地されている
ことを特徴とする請求項7記載の電力供給回路。
<請求項9>
前記直流電源回路には、低電圧誤動作防止機能に係る回路を有するLDOが含まれ、
前記起動部はインピーダンス素子であり、
前記インピーダンス素子は、前記LDOの入力側に前記複数の直流電源回路と直列に接続され、前記LDOの入出力電流が異常に増大した場合に前記LDOへの入力電圧を低下させて、前記低電圧誤動作防止機能に係る回路を起動させる
ことを特徴とする請求項1記載の電力供給回路。
<請求項10>
前記インピーダンス素子は、抵抗素子であることを特徴とする請求項9記載の電力供給回路。
<請求項11>
請求項1~10のいずれか一項に記載の電力供給回路を備える電子機器。
【符号の説明】
【0051】
1 電子機器
10 電力供給アダプタ
20、20a、20b 電力供給回路
21 第一電源回路
211、212 降圧回路
22 第二電源回路
221、223 LDO
222 昇圧回路
25 保護回路
251 UVLO
26 伝達部
261、267、268 ダイオード
262 ツェナーダイオード
263 トランジスタ
264 キャパシタ
265 抵抗素子
30 機能動作部
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧