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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ショーケース
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20221220BHJP
   F25D 23/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A47F3/04 E
F25D23/02 302
F25D23/02 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018194331
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020062083
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 晃
(72)【発明者】
【氏名】江口 千尋
(72)【発明者】
【氏名】川島 充
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127354(JP,A)
【文献】実開昭57-2858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 1/00-3/14
A47F 11/00-11/10
F25D 23/02
F25D 23/06-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気より重い冷媒が封入された冷媒配管を内部に収容し、少なくとも前面に開口が形成された貯蔵室が形成された筐体と、
前記貯蔵室の前記開口を開閉する扉と、
前記扉の周縁と前記開口の周縁との間に設けられたパッキン部と、を備え、
前記パッキン部は、
前記貯蔵室内の圧力が第1の圧力の時に、全周において前記扉の周縁及び前記開口の周縁の両方と接触し、
前記貯蔵室内の圧力が前記第1の圧力より大きい第2の圧力の時に、上下方向の中央よりも下側において前記扉の周縁及び前記開口の周縁の両方と接触し、かつ、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部において前記扉の周縁又は前記開口の周縁と接触しないショーケース。
【請求項2】
前記扉は、予め設定された開閉方向に移動可能な引き戸式であり、前記開口の上縁部に形成された上側溝部内に前記扉の上端部が配置され、前記開口の下縁部に形成された下側溝部内に前記扉の下端部が配置される請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記上側溝部の溝幅は、前記下側溝部の溝幅よりも大きい請求項2に記載のショーケース。
【請求項4】
前記扉の上端部の前記開閉方向に直交する方向の幅は、前記扉の下端部の前記開閉方向に直交する方向の幅よりも小さい請求項2又は請求項3に記載のショーケース。
【請求項5】
前記パッキン部は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の厚みが、上下方向の中央よりも下側における厚みよりも小さい請求項2に記載のショーケース。
【請求項6】
前記パッキン部は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部に切り込み溝が形成された請求項2に記載のショーケース。
【請求項7】
前記扉は、開き戸式であり、
前記パッキン部は、
前記扉の周縁又は前記開口の周縁に固着されたパッキン材と、
前記パッキン材の内部に設けられた磁石と、を備えた請求項1に記載のショーケース。
【請求項8】
前記磁石は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部における磁力が、上下方向の中央よりも下側における磁力よりも小さい請求項7に記載のショーケース。
【請求項9】
前記パッキン材は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の幅が、上下方向の中央よりも下側における幅よりも小さい請求項7に記載のショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショーケースにおいては、前面に開口が形成されるとともに内部に商品陳列室が形成されたショーケース本体と、開口を開閉可能とする透明扉体と、ショーケース本体内の空気をダクト内を通して循環させる送風ファンと、送風ファンにより送風された空気を冷却して冷気を生成する冷却器と、を有する冷気循環式のリーチインショーケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-181762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1に示されるショーケースにおいては、冷却器は冷媒を用いた冷凍サイクルの一部であることが通常である。冷却器において冷媒の漏洩が発生すると、漏洩した冷媒が商品陳列室(貯蔵室)に充満していく。そして、貯蔵室内の圧力が一定以上になると、透明扉体とショーケース本体(筐体)の開口との隙間から冷媒がショーケースの外部へと漏れ出す。ここで、冷凍サイクルで使用される冷媒が空気より重い場合、ショーケースの外部へと漏れ出した冷媒が床面の近くに滞留し、冷媒濃度が上昇してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、冷凍サイクルから漏洩した冷媒が貯蔵室内に充満した場合に、貯蔵室内からショーケースの外部へと漏れ出した冷媒が床面の近くに滞留し、冷媒濃度が上昇してしまうことを抑制できるショーケースを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るショーケースは、空気より重い冷媒が封入された冷媒配管を内部に収容し、少なくとも前面に開口が形成された貯蔵室が形成された筐体と、前記貯蔵室の前記開口を開閉する扉と、前記扉の周縁と前記開口の周縁との間に設けられたパッキン部と、を備え、前記パッキン部は、前記貯蔵室内の圧力が第1の圧力の時に、全周において前記扉の周縁及び前記開口の周縁の両方と接触し、前記貯蔵室内の圧力が前記第1の圧力より大きい第2の圧力の時に、上下方向の中央よりも下側において前記扉の周縁及び前記開口の周縁の両方と接触し、かつ、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部において前記扉の周縁又は前記開口の周縁と接触しない。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るショーケースによれば、冷凍サイクルから漏洩した冷媒が貯蔵室内に充満した場合に、貯蔵室内からショーケースの外部へと漏れ出した冷媒が床面の近くに滞留し、冷媒濃度が上昇してしまうことを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係るショーケースの外観斜視図である。
図2】この発明の実施の形態1に係るショーケースの構成を模式的に示す断面図である。
図3】この発明の実施の形態1に係るショーケースが備える冷媒回路の構成を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係るショーケースの扉部分の構成を模式的に示す正面図である。
図5】この発明の実施の形態1に係るショーケースの扉部分の構成例を模式的に示す断面図である。
図6】この発明の実施の形態1に係るショーケースの扉の構成を模式的に示す正面図である。
図7】この発明の実施の形態1に係るショーケースの扉の要部の構成例を模式的に示す断面図である。
図8】この発明の実施の形態1に係るショーケースの扉の上部パッキンの構成例を模式的に示す断面図である。
図9】この発明の実施の形態2に係るショーケースの外観斜視図である。
図10】この発明の実施の形態2に係るショーケースの扉の構成を模式的に示す正面図である。
図11】この発明の実施の形態2に係るショーケースの扉に設けられた磁石の要部の構成例を模式的に示す拡大図である。
図12】この発明の実施の形態2に係るショーケースの扉の構成例を模式的に示す正面図である。
図13】この発明の実施の形態2に係るショーケースの扉に設けられたパッキンの要部の構成例を模式的に示す拡大図である。
図14】この発明の実施の形態2に係るショーケースの扉の要部の構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1から図8は、この発明の実施の形態1に係るものである。図1はショーケースの外観斜視図である。図2はショーケースの構成を模式的に示す断面図である。図3はショーケースが備える冷媒回路の構成を示す図である。図4はショーケースの扉部分の構成を模式的に示す正面図である。図5はショーケースの扉部分の構成例を模式的に示す断面図である。図6はショーケースの扉の構成を模式的に示す正面図である。図7はショーケースの扉の要部の構成例を模式的に示す断面図である。そして、図8はショーケースの扉の上部パッキンの構成例を模式的に示す断面図である。
【0011】
この実施の形態に係るショーケースは、スーパー、コンビニエンスストア等に設置されて飲料や食品等を貯蔵陳列する戸開閉型のリーチインショーケース100である。このリーチインショーケース100は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによる冷凍装置を備えている。
【0012】
この実施の形態に係るショーケースは、図1及び図2に示すように、筐体110を備えている。筐体110は、全体として直方体の箱状を呈する。図2に示すように、リーチインショーケース100は、ショーケース本体101と機械室102とを備えている。筐体110の上部側がショーケース本体101の外殻になっている。また、筐体110の下部側が機械室102の外殻になっている。
【0013】
ショーケース本体101内には冷却器としての蒸発器6が収容されている。機械室102内には圧縮機1、3及び放熱器2、4が収容されている。これらの蒸発器6、圧縮機1、3及び放熱器2、4の機器が接続されることで後述する冷媒回路が構成される。そして、この冷媒回路の内部に充填された冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが実現される。
【0014】
筐体110には、貯蔵室10が形成されている。貯蔵室10は、筐体110のショーケース本体101部分に配置されている。貯蔵室10は、その内部には冷却対象となる飲料、生鮮食品等を収納可能な空間である。この貯蔵室10には、生鮮食品等を陳列するための複数の陳列棚11が、上下方向に配列されて取り付けられている。貯蔵室10の少なくとも前面には開口9が形成されている。
【0015】
貯蔵室10の上側の内壁面の前端部には、吹出口12が形成されている。貯蔵室10の下側の内壁面の前端部には、吸込口16が形成されている。吹出口12は、貯蔵室10に臨むようにして、下側に向かって開口している。吸込口16は、貯蔵室10に臨むようにして、上側に向かって開口している。つまり、吹出口12と吸込口16は、開口9の内側において、互いに向かい合うように形成されている。
【0016】
ショーケース本体101には、吸込口16から吹出口12に至る循環風路14が設けられている。循環風路14は、貯蔵室10とは区画された通風路である。この実施の形態では、循環風路14は、貯蔵室10を囲む下側壁面、後側壁面及び上側壁面に沿うようにして設けられている。循環風路14内には、蒸発器6と庫内ファン15が設けられている。庫内ファン15が駆動されると、蒸発器6を通過して生成された冷気が吹出口12から下方に吹き出される。吹出口12から吹き出された冷気は、開口9に沿って降下した後に吸込口16から吸い込まれる。これにより、ショーケース本体101の開口9には、冷気のエアカーテンが形成される。
【0017】
次に、リーチインショーケース100の冷媒回路について説明する。図3は、この実施の形態に係るリーチインショーケースの冷媒回路図である。図3に示すように、冷媒回路は、低段側圧縮機1、補助放熱器2、高段側圧縮機3、高段側放熱器4、減圧装置としての膨張弁5、冷却器としての蒸発器6が、冷媒配管20により順次接続されることにより構成されている。したがって、筐体110の内部には冷媒配管20が収容される。冷媒配管20内には冷媒が封入されている。
【0018】
冷媒配管20内に封入される冷媒は、地球温暖化係数(GWP)の小さいものを用いることが地球環境保護上の観点からいって望ましい。また、冷媒配管20内に封入される冷媒は可燃性である。この冷媒は空気よりも平均分子量が大きい。すなわち、冷媒は、空気よりも密度が大きく、大気圧下で空気より重い。したがって、冷媒は、空気中では重力方向の下方へと沈んでいく性質を持っている。
【0019】
このような冷媒として、具体的に例えば、テトラフルオロプロペン(CF3CF=CH2:HFO-1234yf)、ジフルオロメタン(CH2F2:R32)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、エタン(R170)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、1.1.1.2-テトラフルオロエタン(C2H2F4:R134a)、ペンタフルオロエタン(C2HF5:R125)、1.3.3.3-テトラフルオロ-1-プロペン(CF3-CH=CHF:HFO-1234ze)、二酸化炭素(CO2:R744)等の中から選ばれる1つ以上の冷媒からなる(混合)冷媒を用いることができる。
【0020】
低段側圧縮機1は、冷媒を圧縮して吐出する。補助放熱器2は、低段側圧縮機1から吐出された冷媒と周囲空気とを熱交換させ、冷媒を放熱させる。高段側圧縮機3は、補助放熱器2で放熱された冷媒を圧縮して吐出する。高段側放熱器4は、高段側圧縮機3から吐出された冷媒と周囲空気とを熱交換させ、冷媒を放熱(凝縮)させる。膨張弁5は、高段側放熱器4で放熱された冷媒を減圧する。蒸発器6は、膨張弁5で減圧された冷媒を蒸発させる。
【0021】
高段側放熱器4及び補助放熱器2は、一体型放熱器7として構成されている。一体型放熱器7には放熱器ファン8が設けられている。放熱器ファン8は、一体型放熱器7に周囲空気を通過させ、一体型放熱器7の伝熱管を通過する冷媒と熱交換させた後、熱交換後の空気を一体型放熱器7外に排気させる。
【0022】
図1及び図2に示すように、ショーケース本体101には扉200が設けられている。扉200は、貯蔵室10の開口9を開閉するものである。扉200はガラス戸になっており、扉200が閉じている状態でも扉200の外から貯蔵室10の中が視認できるようになっている。この実施の形態では、扉200は、予め設定された開閉方向に移動可能な引き戸式である。扉200の開閉方向は、開口9が設けられている前面に向かって左右方向である。
【0023】
図1及び図4に示すように、この実施の形態の構成例では、2枚の扉200が左右に並べて配置されている。筐体110の前面における開口9の上縁部には、上部レール310が設けられている。また、筐体110の前面における開口9の下縁部には、下部レール320が設けられている。
【0024】
図5に示すように、上部レール310には、2本の上側溝部311が形成されている。2本の上側溝部311は、前後に並列され、前述した開閉方向すなわち左右方向に平行に延びて設けられている。下部レール320には、2本の下側溝部321が形成されている。2本の下側溝部321は、前後に並列され、前述した開閉方向すなわち左右方向に平行に延びて設けられている。
【0025】
上側溝部311内に扉200の上端部が配置される。そして、下側溝部321内に扉200の下端部が配置される。2枚の扉200のうちの一方は、前側の上側溝部311及び前側の下側溝部321に係合している。そして、他方の扉200は、後側の上側溝部311及び後側の下側溝部321に係合している。このようにして、上部レール310及び下部レール320に案内されて、前述した開閉方向すなわち左右方向に移動可能に設けられている。
【0026】
図6に示すように、扉200の左右方向の一側には、取っ手201が設けられている。また、それぞれの扉200の上下左右の周縁には、パッキン部400が設けられている。パッキン部400は、例えば弾性体からなる。
【0027】
この実施の形態の構成例では、パッキン部400は、扉200の周縁に固着されている。すなわち、パッキン部400は扉200の周縁に接触している。なお、パッキン部400は、扉200の周縁に固着されるのではなく、開口9の周縁に固着されていてもよい。
【0028】
扉200を閉じた状態において、パッキン部400は、開口9の周縁と接触する。そして、パッキン部400により、扉200と開口9との間の隙間が塞がれる。このようにして、パッキン部400により、扉200を閉じた際に貯蔵室10が密閉され、貯蔵室10内の冷気が外に漏れないようになっている。すなわち、貯蔵室10内が通常の圧力の場合、パッキン部400は、全周において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触する。
【0029】
なお、ここで説明する構成例では、図4に示すように、扉200を閉じた状態において、2つの扉200は、扉合わせ部202において前後に重なり合う。この扉合わせ部202においては、前側の扉200のパッキン部400が、後側の扉200の前面に接触している。前述した扉200の「全周」というのは、左右2つの扉200を合わせた全体における全周という意味である。
【0030】
貯蔵室10内の圧力が上昇すると、パッキン部400は内側から押圧される。パッキン部400は、前述したように弾性体であるため、貯蔵室10内の圧力が、ある限界圧力以上となるとパッキン部400が変形して開口9の周縁と接触しなくなる。ここで、パッキン部400が変形してパッキン部400と開口9の周縁とが接触しなくなる限界圧力は、パッキン部400の部位に応じて異なるようになっている。
【0031】
具体的には、上下方向の中央よりも下側と、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部とについて、前述の限界圧力が異なっている。さらに詳しくは、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の限界圧力(以下「上部限界圧力」ともいう)は、上下方向の中央よりも下側における限界圧力(以下「下部限界圧力」ともいう)よりも小さい。
【0032】
貯蔵室10の内圧が上部限界圧力より小さい第1の圧力のとき、パッキン部400は全周において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触している。そして、貯蔵室10の内圧が上部限界圧力以上で下部限界圧力より小さい第2の圧力にまで上昇すると、パッキン部400は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部において開口9の周縁と接触しなくなる。一方、貯蔵室10の内圧が前述の第2の圧力のとき、パッキン部400は、下方向の中央よりも下側において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触したままである。なお、以上の説明から分かるように、第2の圧力は第1の圧力より大きい。
【0033】
次に、以上のような上部限界圧力及び下部限界圧力を有するような扉200部分の構成例として、第1の構成例から第3の構成例を説明する。まず、第1の構成例では、図5に示すように、上側溝部311の溝幅D1は、下側溝部321の溝幅D2よりも大きい。このようにすることで、扉200の上端側の前後方向の遊び寸法の方が、扉200の下端側の前後方向の遊び寸法よりも大きくなる。
【0034】
このため、扉200の上端側の方が扉200の下端側よりも前後方向に動きやすくなる。したがって、貯蔵室10の内圧が上昇した場合、扉200の上端側の方が扉200の下端側よりも大きく前後に動き、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部のパッキン部400が、上下方向の中央よりも下側のパッキン部400よりも先に開口9の周縁と接触しなくなる。つまり、上部限界圧力を下部限界圧力よりも小さくできる。
【0035】
なお、扉200の上端部の前述した開閉方向に直交する方向の幅を、扉200の下端部の前述した開閉方向に直交する方向の幅よりも小さくしてもよい。このようにしても、扉200の上端側の前後方向の遊び寸法の方を、扉200の下端側の前後方向の遊び寸法のよりも大きくできるため、同様の作用を得られる。
【0036】
次に、図7を参照しながら、第2の構成例について説明する。図7は、扉200の上端部を含む拡大断面図である。この第2の構成例では、パッキン部400は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の厚みが、上下方向の中央よりも下側における厚みよりも小さい。同図に示す構成例は、パッキン部400のうちの上部パッキン410の厚みが、側部パッキン420の厚みよりも小さい場合である。
【0037】
なお、上部パッキン410とは、上下左右の4辺のパッキン部400のうち上辺に設けられたパッキンである。また、側部パッキン420とは、上下左右の4辺のパッキン部400のうち左右の両側辺に設けられたパッキンである。
【0038】
以上のような第2の構成例においては、扉200が閉じた状態での、上部パッキン410が開口9の周縁に押し付けられる力は、側部パッキン420が開口9の周縁に押し付けられる力よりも弱くなる。このため、貯蔵室10の内圧が上昇した場合、上部パッキン410が側部パッキン420よりも先に開口9の周縁と接触しなくなる。つまり、上部限界圧力を下部限界圧力よりも小さくできる。
【0039】
次に、図8を参照しながら、第3の構成例について説明する。図8は、上部パッキン410の断面図である。この第3の構成例では、パッキン部400は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部に切り込み溝411が形成されている。同図に示す構成例は、パッキン部400のうちの上部パッキン410に切り込み溝411が形成されている。切り込み溝411は、例えば、上部パッキン410の上端面から下方に向けて切り込まれて形成されている。また、切り込み溝411は、上部パッキン410における左右方向にわたって配置されている。
【0040】
以上のような第3の構成例においては、切り込み溝411があることで、上部パッキン410は他のパッキン部400(側部パッキン420)等と比較して、厚み方向(前後方向)につぶれやすくなる。このため、貯蔵室10の内圧が上昇した場合、上部パッキン410が他のパッキン部400よりも先に厚み方向につぶれて、開口9の周縁と接触しなくなる。つまり、上部限界圧力を下部限界圧力よりも小さくできる。
【0041】
以上で説明した具体的な各構成例のいずれにおいても、上部限界圧力を下部限界圧力よりも小さくできる。すなわち、パッキン部400は、貯蔵室10内の圧力が第1の圧力の時に、全周において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触している。そして、貯蔵室10内の圧力が前述した第1の圧力より大きい第2の圧力の時に、上下方向の中央よりも下側において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触し、かつ、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部において扉200の周縁又は開口9の周縁と接触しない。
【0042】
ここで、筐体110内には冷媒配管20が収容されている。このため、冷媒配管20等で冷媒漏洩が発生した場合、漏洩した冷媒が貯蔵室10内にも侵入して充満していく。そして、貯蔵室10内に冷媒が充満していくことで、貯蔵室10内の圧力が上昇する。
【0043】
貯蔵室10内の圧力が上昇していくと、貯蔵室10内の圧力が前述した上部限界圧力に到達する。すると、上下方向の中央よりも下側においてはパッキン部400により扉200の周縁と開口9の周縁との間の隙間が塞がれたまま、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部においては、パッキン部400と開口9の周縁との間に隙間が生じる。したがって、貯蔵室10内に充満していた冷媒は、この隙間からリーチインショーケース100の外部へと漏れ出す。
【0044】
リーチインショーケース100の外部へと冷媒が漏れ出す箇所は、扉200における上下方向の中央よりも上側である。すなわち、扉200の下縁から漏れ出す場合と比較して、少なくとも扉200の高さ寸法の半分は高い位置から冷媒が漏れ出すことになる。よって、リーチインショーケース100が載置される床面から、より離れた位置から冷媒をリーチインショーケース100の貯蔵室10外部に逃がすことができる。したがって、貯蔵室10内からショーケースの外部へと漏れ出した、空気より重い冷媒が、床面の近くに滞留して冷媒濃度が上昇してしまうことを抑制できる。
【0045】
実施の形態2.
図9から図14は、この発明の実施の形態2に係るものである。図9はショーケースの外観斜視図である。図10はショーケースの扉の構成を模式的に示す正面図である。図11はショーケースの扉に設けられた磁石の要部の構成例を模式的に示す拡大図である。図12はショーケースの扉の構成例を模式的に示す正面図である。図13はショーケースの扉に設けられたパッキンの要部の構成例を模式的に示す拡大図である。そして、図14はショーケースの扉の要部の構成例を模式的に示す断面図である。
【0046】
前述した実施の形態1は、引き戸式の扉を有するものであった。これに対し、ここで説明する実施の形態2は、開き戸式の扉を有するものである。以下、この実施の形態2に係るショーケースについて、実施の形態1との相違点を中心に説明する。説明を省略した構成については実施の形態1と基本的に同様である。
【0047】
この実施の形態に係るリーチインショーケース100は、図9に示すように、筐体110及び扉200を備えている。筐体110には、貯蔵室10が形成されている。貯蔵室10の少なくとも前面には開口9が形成されている。扉200は、貯蔵室10の開口9を開閉するものである。扉200はガラス戸になっており、扉200が閉じている状態でも扉200の外から貯蔵室10の中が視認できるようになっている。
【0048】
この実施の形態の構成例では、扉200は観音開き(両開き)の開き戸式である。すなわち、2枚の扉200が左右に並べて配置されている。2枚の扉200のそれぞれは、左右方向において互いに遠い方の側辺部において、筐体110に対して回転可能に軸支されている。また、それぞれの扉200、左右方向において互いに近い方の側辺部には、取っ手201が取り付けられている。
【0049】
また、図示は省略しているが、リーチインショーケース100は、実施の形態1と同様、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによる冷凍装置を備えている。すなわち、空気より重い冷媒が封入された冷媒配管が筐体110内に収容されている。
【0050】
図10に示すように、それぞれの扉200の上下左右の周縁には、パッキン部400が設けられている。パッキン部400は、パッキン部400は、パッキン材500と磁石600とを有する。パッキン材500は、例えば弾性体からなる。パッキン材500は、扉200の周縁に固着されている。磁石600は、パッキン材500の内部に設けられている。磁石600は、扉200の上下左右の周縁を囲むようにして配置される。扉200を閉じた際に、磁石600と対向する開口9の周縁部は、磁石600に吸引される金属等の磁性体からなる。
【0051】
扉200を閉じた状態において、パッキン部400のパッキン材500は、開口9の周縁と接触する。そして、パッキン部400のパッキン材500により、扉200と開口9との間の隙間が塞がれる。この際、磁石600の吸引力により、パッキン材500が開口9の周縁に密着される。このようにして、パッキン部400のパッキン材500により、扉200を閉じた際に貯蔵室10が密閉され、貯蔵室10内の冷気が外に漏れないようになっている。すなわち、貯蔵室10内が通常の圧力の場合、パッキン部400は、全周において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触する。
【0052】
なお、パッキン材500は、扉200の周縁に固着されるのではなく、開口9の周縁に固着されていてもよい。パッキン材500が開口9の周縁に固着されている場合、扉200を閉じた際に、磁石600と対向する扉200の周縁部は、磁石600に吸引される金属等の磁性体からなる。
【0053】
この実施の形態においても、実施の形態1と同様に、パッキン部400の上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部における限界圧力すなわち上部限界圧力は、パッキン部400の上下方向の中央よりも下側における限界圧力すなわち下部限界圧力よりも小さい。次に、このような上部限界圧力及び下部限界圧力を有する扉200部分の構成例として、第4の構成例から第7の構成例を説明する。
【0054】
第4の構成例及び第5の構成例は、パッキン部400の磁石600について、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部における磁力を、上下方向の中央よりも下側における磁力よりも小さくしたものである。このようにすることで、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部においてパッキン材500が開口9の周縁に密着しようとする力を、上下方向の中央よりも下側においてパッキン材500が開口9の周縁に密着しようとする力よりも弱くできる。このため、上部限界圧力は下部限界圧力よりも小さくなる。
【0055】
図11は、図10中のA部における磁石600を拡大したものである。第4の構成例では、図11に示すように、磁石600は、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の幅が、上下方向の中央よりも下側における幅よりも小さい。同図に示す構成例は、パッキン部400のうちの上部磁石610の幅が、側部磁石620の幅よりも小さい場合である。
【0056】
なお、上部磁石610とは、上下左右の4辺の磁石600のうち上辺に設けられた磁石である。また、側部磁石620とは、上下左右の4辺の磁石600のうち左右の両側辺に設けられた磁石である。このようにすることで、上部磁石610の吸引力を側部磁石620の吸引力よりも弱くできる。
【0057】
次に、第5の構成例では、図12に示すように、上部磁石610の一部において、磁石がない磁力空白部611を形成したものである。この構成例によっても、上部磁石610の吸引力を側部磁石620の吸引力よりも弱くできる。
【0058】
図13は、図10中のA部におけるパッキン材500を拡大したものである。第6の構成例では、図13に示すように、パッキン材500について、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部の幅が、上下方向の中央よりも下側における幅よりも小さい。同図に示す構成例は、上部パッキン材510の幅が、側部パッキン材520の幅よりも小さい場合である。
【0059】
なお、上部パッキン材510とは、上下左右の4辺のパッキン材500のうち上辺に設けられたパッキン材である。また、側部パッキン材520とは、上下左右の4辺のパッキン材500のうち左右の両側辺に設けられたパッキン材である。このようにすることで、貯蔵室10の内圧が高まった場合に、上部パッキン材510の方が側部パッキン材520よりも扉200の外側へとめくれやすくできる。このため、上部限界圧力は下部限界圧力よりも小さくなる。
【0060】
なお、図14に示す第7の構成例のように、上部パッキン材510の前後方向の厚みを側部パッキン材520の前後方向の厚みよりも大きくしてもよい。図14は、扉200の上端部を含む拡大断面図である。このようにすることで、上部限界圧力を下部限界圧力よりも小さくしつつ、貯蔵室10の内圧が上部限界圧力より小さい状態において、上部パッキン材510を、より確実に開口9の周縁に密着させることができる。
【0061】
以上のように構成されたショーケースにおいても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。すなわち、パッキン部400は、貯蔵室10内の圧力が第1の圧力の時に、全周において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触している。第1の圧力は、上部限界圧力よりも小さい圧力である。そして、貯蔵室10内の圧力が前述した第1の圧力より大きい第2の圧力の時に、上下方向の中央よりも下側において扉200の周縁及び開口9の周縁の両方と接触し、かつ、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部において扉200の周縁又は開口9の周縁と接触しない。第2の圧力は、上部限界圧力以上で、下部限界圧力よりも小さい圧力である。
【0062】
筐体110内の冷媒配管20等で冷媒漏洩が発生し、漏洩した冷媒が貯蔵室10内に充満していくと、貯蔵室10内の圧力が上昇する。貯蔵室10内の圧力が上昇していくと、貯蔵室10内の圧力が前述した上部限界圧力に到達する。すると、上下方向の中央よりも下側においてはパッキン部400により扉200の周縁と開口9の周縁との間の隙間が塞がれたまま、上下方向の中央よりも上側の少なくとも一部においては、パッキン部400と開口9の周縁との間に隙間が生じる。したがって、貯蔵室10内に充満していた冷媒は、この隙間からリーチインショーケース100の外部へと漏れ出す。
【0063】
リーチインショーケース100の外部へと冷媒が漏れ出す箇所は、扉200における上下方向の中央よりも上側である。すなわち、扉200の下縁から漏れ出す場合と比較して、少なくとも扉200の高さ寸法の半分は高い位置から冷媒が漏れ出すことになる。よって、リーチインショーケース100が載置される床面から、より離れた位置から冷媒をリーチインショーケース100の貯蔵室10外部に逃がすことができる。したがって、貯蔵室10内からショーケースの外部へと漏れ出した、空気より重い冷媒が、床面の近くに滞留して冷媒濃度が上昇してしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0064】
1 低段側圧縮機
2 補助放熱器
3 高段側圧縮機
4 高段側放熱器
5 膨張弁
6 蒸発器
7 一体型放熱器
8 放熱器ファン
9 開口
10 貯蔵室
11 陳列棚
12 吹出口
13 吸込口
14 循環風路
15 庫内ファン
16 吸込口
20 冷媒配管
72 伝熱管
100 リーチインショーケース
101 ショーケース本体
102 機械室
110 筐体
200 扉
201 取っ手
202 扉合わせ部
310 上部レール
311 上側溝部
320 下部レール
321 下側溝部
400 パッキン部
410 上部パッキン
411 切り込み溝
420 側部パッキン
500 パッキン材
510 上部パッキン材
520 側部パッキン材
600 磁石
610 上部磁石
611 磁力空白部
620 側部磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14