(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の走行距離演算方法及び走行距離演算装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20221220BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20221220BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221220BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20221220BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20221220BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20221220BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20221220BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20221220BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20221220BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221220BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221220BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20221220BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221220BHJP
【FI】
B60L3/00 S ZHV
B60K6/46
B60L15/20 J
B60L50/61
B60L58/12
B60W10/26 900
B60W20/12
G01C21/26 A
H01M8/04 Z
H01M8/04313
H01M8/04537
H01M10/44 A
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H01M8/00 Z
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2018195967
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 武昭
(72)【発明者】
【氏名】筑後 隼人
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60K 6/46
B60L 15/20
B60L 50/61
B60L 58/12
B60W 10/26
B60W 20/12
G01C 21/26
H01M 8/04
H01M 8/04313
H01M 8/04537
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
H01M 8/00
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力と発電機で発電した電力とを負荷に供給するハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
走行中に前記発電機による充電が可能な区間である充電可能区間の有無を判別し、
当該判別の結果に基づいて前記
充電可能区間を走行中に前記発電機の発電により充電される電力量である充電増加量を算出し、
前記バッテリの現在の残充電量に前記充電増加量を加算して総バッテリ充電量を算出し、
車両要求出力に対する前記発電機の発電出力の不足分と、前記総バッテリ充電量と、に基づいて総走行可能距離を算出する、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
前記充電増加量を、前記発電機の発電出力から前記充電可能区間における前記車両要求出力を減算した値を積算することにより算出する、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
前記車両要求出力が前記発電機の発電出力より小さい場合にのみ、前記充電増加量の算出を行なう、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
道路地図情報と自車の位置情報と目的地までの走行ルート情報とを取得し、
前記目的地までの走行ルート上の、前記車両要求出力が前記発電機の発電電力を超えない低負荷走行区間を前記充電可能区間として予測し、
前記充電可能区間における前記車両要求出力を算出し、
算出した前記車両要求出力と前記発電機の発電電力とに基づいて前記充電可能区間における前記発電機の発電によるバッテリ充電量を算出する、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
道路地図情報と自車の位置情報とを取得し、
現在位置から、前記車両要求出力が前記発電機の発電電力を超える高負荷走行を開始する地点までを前記充電可能区間として予測し、
前記充電可能区間における前記車両要求出力を算出し、
算出した前記車両要求出力と前記発電機の発電電力とに基づいて前記充電可能区間における前記発電機の発電によるバッテリ充電量を算出する、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
道路地図情報及び目的地までの走行ルート情報がない場合には、前記充電可能区間における前記車両要求出力として直近の前記車両要求出力の平均値を用いる、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項7】
請求項6に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
現在位置から、前記バッテリが満充電になるまで又は前記発電機の燃料がなくなるまでの区間を前記充電可能区間とする、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
前記発電機の発電出力を、前記発電機の最大発電出力とする、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行距離演算方法において、
前記車両要求出力を、車両の走行に必要な電力と、車両補機の消費電力とに基づいて算出する、ハイブリッド車両の走行距離演算方法。
【請求項10】
バッテリの電力と発電機で発電した電力とを負荷に供給するハイブリッド車両の走行距離演算装置において、
総走行可能距離を算出する総走行可能距離算出部を備え、
前記総走行可能距離算出部は、
走行中に前記発電機による発電が可能な区間である充電可能区間の有無を判別し、
当該判別の結果に基づいて前記
充電可能区間を走行中に前記発電機の発電により充電される電力量である充電増加量を算出し、
前記バッテリの現在の残充電量に前記充電増加量を加算して総バッテリ充電量を算出し、
車両要求出力に対する前記発電機の発電出力の不足分と、前記総バッテリ充電量と、に基づいて総走行可能距離を算出するようプログラムされている、ハイブリッド車両の走行距離演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力と発電機で発電した電力とを負荷に供給する、いわゆるシリーズハイブリッド車両の走行可能距離の演算に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリの電力で負荷としてのモータを駆動することによって走行する電動車両に、いわゆるレンジエクステンダーとして、バッテリを充電し又は直接モータへ電力を供給する発電機を付加したハイブリッド車両が知られている。特許文献1には、発電機を内燃機関で駆動するシリーズハイブリッド車両が開示されている。そして、上記文献では、バッテリの現在の残充電量に基づいて算出される走行可能距離と、燃料タンクの燃料残量の全てを内燃機関の駆動に用いて発電させることによって得られる電力に基づいて算出される走行可能距離との加算値を総走行可能距離としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリーズハイブリッド車両では、バッテリの電力がなくなると、発電機で発電した電力で直接モータを駆動することとなる。したがって、発電機の発電出力が要求走行出力より小さい場合には、バッテリの電力を使い果たすと、発電機を駆動するための燃料が残っていたとしても、運転者の要求に応じた走行ができなくなる。その一方で、発電機の発電出力が要求走行出力より大きい場合には、走行中に余剰の電力をバッテリに充電することができる。
【0005】
しかし、上記文献の総走行可能距離の演算では、単純に、演算時点における燃料残量に基づく走行可能距離と、演算時点におけるバッテリの残充電量に基づく走行可能距離とを加算している。このため、演算後の走行中に実際に消費される電力の大きさいかんによっては、算出された総走行可能距離と実際の総走行可能距離との差が大きくなる。
【0006】
そこで本発明では、実際に走行可能な距離をより精度良く算出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、バッテリの電力と発電機で発電した電力とを負荷に供給するハイブリッド車両の走行距離演算方法が提供される。この走行距離演算方法では、走行中に発電機による充電が可能な区間である充電可能区間の有無を判別し、当該判別の結果に基づいて充電可能区間を走行中に発電機の発電により充電される電力量である充電増加量を算出し、バッテリの現在の残充電量に充電増加量を加算して総バッテリ充電量を算出し、車両要求出力に対する発電機の発電出力の不足分と、総バッテリ充電量と、に基づいて総走行可能距離を算出する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、総走行距離の算出に用いるパラメータの一つであるバッテリの充電量が、充電可能区間の有無の判別結果に基づいて算出されるので、現時点におけるバッテリの充電残量のみをパラメータとして総走行距離を算出するよりも、算出結果の精度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ハイブリッド車両のシステム構成図である。
【
図2A】
図2Aは、燃料電池システムから外部負荷への電力供給の類型を説明する第1の図である。
【
図2B】
図2Bは、燃料電池システムから外部負荷への電力供給の類型を説明する第2の図である。
【
図2C】
図2Cは、燃料電池システムから外部負荷への電力供給の類型を説明する第3の図である。
【
図2D】
図2Dは、燃料電池システムから外部負荷への電力供給の類型を説明する第4の図である。
【
図3】
図3は、要求出力と総走行可能距離との関係を説明する為の図である。
【
図4】
図4は、総走行距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の走行可能距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、走行パターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、車速と当該車速における車両要求出力との関係をまとめた表である。
【
図8】
図8は、バッテリ容量と燃料電池スタックの最大発電電力と、バッテリSOCと、当該SOCでの走行可能距離とについてまとめた表である。
【
図9】
図9は、充電可能区間における充電増加量での走行可能距離の試算結果をまとめた表である。
【
図10】
図10は、充電増加量を算出するための第2実施形態にかかる制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の走行可能距離を算出するための制御ルーチンの第1変形例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1の走行可能距離を算出するための制御ルーチンの第2変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を適用するハイブリッド車両のシステム構成図である。このハイブリッド車両は、バッテリの電力と発電機で発電した電力とを負荷としての駆動モータ1に供給することによって走行する、いわゆるシリーズハイブリッド車両である。
【0012】
このハイブリッド車両は、駆動モータ1及びバッテリ2からなる外部負荷100と、発電機としての燃料電池システム200と、コントローラ8と、を含んで構成されている。
【0013】
燃料電池システム200は、燃料電池スタック3と、燃料電池スタック3にカソードガスを供給するコンプレッサ6と、燃料電池スタック3に供給する燃料を貯留する燃料タンク7と、燃料電池スタック3の発電電力を昇圧するDC-DCコンバータ4と、を含んで構成される。
【0014】
燃料電池スタック3は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid oxide fuel Cell)である。
【0015】
燃料タンク7には、例えばエタノールと水を混合させた液体からなる改質用の燃料が蓄えられる。なお、
図1の燃料電池システム200は、改質器、燃料ポンプ、蒸発器、熱交換器等を省略して簡略化したものである。
【0016】
DC-DCコンバータ4は、駆動モータ1とバッテリ2との電圧に対し、燃料電池スタック3の電圧を昇圧して、燃料電池スタック3の発電電力を駆動モータ1やバッテリ2へ取り出せるようにする電力制御器である。DC-DCコンバータ4は、燃料電池スタック3に並列に接続され、1次側の燃料電池スタック3の出力電圧を昇圧して2次側の外部負荷100に発電電力を供給する。DC-DCコンバータ4は、例えば、外部負荷100に電力が供給されるように、燃料電池スタック3から出力される数十Vの電圧を数百Vの電圧レベルまで上昇させる。
【0017】
駆動モータ1は、不図示のインバータを介してバッテリ2とDC-DCコンバータ4とにそれぞれ接続される。駆動モータ1は、車両を駆動する動力源である。また、駆動モータ1は、車両を制動する場合に必要となる制動力を用いて回生電力を発生させ、この回生電力をバッテリ2に充電させることができる。
【0018】
バッテリ2は、蓄えられた電力を駆動モータ1に供給する電力供給源である。本実施形態では、バッテリ2がメインの電力供給源であり、燃料電池スタック3は、バッテリ2の充電量が低くなったときに、バッテリ2を充電するために主に用いられる。また、燃料電池スタック3の電力を駆動モータ1に供給しても良い。
【0019】
コントローラ8は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と周辺機器から構成され、特定のプログラムを実行することにより燃料電池システム200及び外部負荷100を制御するための処理を実行する。
【0020】
コントローラ8は、電流センサ9、アクセル開度センサ10及びその他の各種センサから出力される信号を受信し、これらの信号に応じてバッテリ2の残充電量を取得したり、後述する走行可能距離を算出したり、要求走行出力を取得したりする。そしてコントローラ8は、これら取得または算出した値に基づいて駆動モータ1及び燃料電池システム200等の各々の作動状態を制御する。
【0021】
コントローラ8には、燃料電池システム200の起動指令信号又は停止指令信号を出力する不図示の操作部が接続されている。操作部は、EVキーを含み、乗員によりEVキーがONに操作されると起動指令信号をコントローラ8に出力し、EVキーがOFFに操作されると停止指令信号をコントローラ8に出力する。
【0022】
コントローラ8は、操作部から起動指令信号を受信した場合には、燃料電池システム200を起動させる起動運転を実施し、起動運転終了後は、外部負荷100の作動状態に応じて燃料電池スタック3の発電を制御する発電運転を実施する。なお、燃料電池システム200は、バッテリ2の充電量が充電を必要とする所定値以下となったときに、起動しても良い。
【0023】
発電運転では、コントローラ8は、外部負荷100の作動状態に応じて燃料電池スタック3に要求される電力を求める。そして、コントローラ8は、その要求電力に基づいて、燃料電池スタック3の発電に必要となるカソードガス及びアノードガスの供給流量を算出し、算出した供給流量のアノードガス及びカソードガスを燃料電池スタック3に供給する。そして、コントローラ8は、DC-DCコンバータ4をスイッチング制御して燃料電池システム200から出力される電力を外部負荷100に供給する。
【0024】
すなわち、コントローラ8は、燃料電池スタック3に対する要求電力に基づいてカソードガス及びアノードガスの流量を制御して、燃料電池スタック3の発電量を制御する。例えば、燃料電池スタック3に対する要求電力は、アクセルペダルの踏込み量が大きくなるほど大きくなる。このため、アクセルペダルの踏込み量が大きくなるほど、燃料電池スタック3に供給されるカソードガス及びアノードガスの供給流量は大きくなる。なお、燃料電池スタック3に供給されるカソードガスは、燃料電池スタック3の目標温度と実温度との偏差に基づき制御されても良い。目標温度より実温度が高い場合であって、偏差が大きい時は、偏差が小さい時に比して、カソードガスの供給量を増加させる。
【0025】
また、EVキーがON状態で燃料電池システム200から外部負荷100への電力供給が停止されたシステム状態においては、コントローラ8は、燃料電池スタック3の発電を抑制するとともに燃料電池を発電に適した状態に維持する自立運転を実施する。以下では、燃料電池システム200から外部負荷100への電力供給が停止されたシステム状態のことを「アイドルストップ(IS)状態」と称し、自立運転のことを「IS運転」と称する。
【0026】
燃料電池スタック3に対する要求電力が所定の値、例えばゼロになった場合には、燃料電池システム200の運転状態が発電運転からIS運転に遷移する。そして、コントローラ8がDC-DCコンバータ4を制御して、燃料電池システム200から外部負荷100への電力供給を停止する。
【0027】
そのため、IS運転中は、燃料電池システム200に設けられた補機に対して、燃料電池スタック3の発電電力を供給してもよいし、燃料電池スタック3から補機に電力供給をしなくてもよい。
【0028】
操作部から停止指令信号を受信した場合には、コントローラ8は、燃料電池システム200の作動を停止させる停止運転を実施する。
【0029】
図2A-
図2Dは、EVキーがON状態の燃料電池システム200における外部負荷100への電力供給の類型を説明する図である。
【0030】
図2Aは、駆動モータ1が停止状態であって燃料電池システム200からバッテリ2に電力を供給している状態を示す観念図である。
図2Aに示した状態は、車両が停止状態であり、かつ、バッテリ2の充電量が少ないような場合に起り得る。
【0031】
図2Bは、駆動モータ1が力行状態であって燃料電池システム200及びバッテリ2の両者から駆動モータ1に電力を供給している状態を示す観念図である。
図2Bに示した状態は、車両が加速状態であり、駆動モータ1の負荷(出力)が高いような場合に起り得る。
【0032】
図2Cは、駆動モータ1が力行状態又は回生状態であって燃料電池システム200から駆動モータ1及びバッテリ2の両者への電力供給を停止している状態を示す観念図である。
図2Cに示した状態は、車両の走行中に駆動モータ1が低負荷又は中負荷で駆動しているような状態であり、かつ、バッテリ2が満充電となっている場合に起り得る。また、車両が減速状態であり、かつ、バッテリ2の容量に充電する余裕がある場合にも起り得る。
【0033】
図2Dは、駆動モータ1が停止状態であってバッテリ2が満充電になっている状態を示す観念図である。
図2Dに示した状態は、車両が停止状態であり、かつ、バッテリ2が満充電となっている場合に起り得る。
【0034】
このように、
図2Aから
図2Dまでに示した状態のうち、
図2C及び
図2Dに示した状態、すなわち燃料電池システム200から駆動モータ1及びバッテリ2の両者への電力供給が停止されたシステム状態が燃料電池システム200のIS状態に該当する。外部負荷100は、IS状態になると、燃料電池システム200に対してIS運転要求を送信する。
【0035】
したがって、車両の走行中に駆動モータ1の回生動作によってバッテリ2が満充電になった場合や、バッテリ2が満充電状態で車両が走行又は停止している場合などに、燃料電池システム200がIS状態になり得る。このような場合には、燃料電池スタック3への要求電力はゼロとなり、IS運転が実施される。
【0036】
次に、現時点からの走行可能な距離、つまり総走行可能距離の算出方法について説明する。
【0037】
図3は、後述する車両要求出力と総走行可能距離との関係を説明するための図である。図中の「バッテリSOC分」はバッテリ2の電力での走行可能距離であり、「燃料分」は燃料電池スタック3で発電した電力での走行可能距離である。
【0038】
本実施形態にかかるハイブリッド車両において、車両走行に使える電力は、バッテリ2の電力と、燃料電池スタック3で発電した電力である。そして、車両要求出力が大きくなるほど電力消費量が多くなるので、バッテリSOC分及び燃料分は短くなる。したがって、バッテリSOC分と燃料分とを加算すれば、総走行可能距離を精度良く算出できるようにも思われる。
【0039】
しかし、以下に説明するように、上記算出方法では算出した値は総走行可能距離の推定値として適切でない場合がある。
【0040】
燃料電池スタック3として使用するSOFCは、運転中の発熱量が大きいという特性を有する。燃料電池スタック3の発電に伴う積層セルの熱膨張の抑制等を考慮すると、セルの積層枚数をあまり多くすることは望ましくない。このため、本実施形態で用いる燃料電池スタック3は、発電出力が10-20kW程度の低出力のものである。
【0041】
一方、車両が走行する際に必要となる出力(「車両要求出力」ともいう)は、車両の走行に必要な駆動力としての電力と車両補機の消費電力とを加算したものであり、市街地を走行する場合のような低負荷走行では上記の発電電力と同等またはそれ以下である。しかし、高速道路を走行する場合のような高負荷走行では、車両要求出力は燃料電池スタック3の発電出力よりも大きくなる。なお、ここでいう車両補機とは、空調装置や灯火類等の電装品のことをいう。
【0042】
このため、例えば高負荷走行をしている最中にバッテリ2の電力を使いきると、燃料電池スタック3だけでは車両要求出力を発生することができないので、高負荷走行を継続できなくなる。つまり、
図3における車両要求出力がSOFC最大出力より大きい領域では、破線で示した燃料分の走行可能距離は車両要求出力よりも小さい出力での走行可能距離となる。したがって、バッテリSOC分と燃料分とを単純に加算した値は、車両要求出力での走行が可能な実際の距離とは乖離した値となってしまうので、総走行可能距離の推定値として適切ではない。
【0043】
なお、上記説明ではバッテリテリSOC分の走行可能距離と燃料分の走行可能距離とを加算した総走行可能距離が適切でない運転状態として高負荷走行時を例示したが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池スタック3が冷機状態のときのように、発電出力が制限されることによって、高負荷走行でなくても燃料電池スタック3だけでは車両要求出力を満足することができない場合が生じる。
【0044】
また、上記算出方法では、算出に用いるバッテリSOC及び燃料残量はいずれも総走行可能距離を算出するタイミングにおける値である。しかし、総走行可能距離を算出するタイミングより後に、車両要求出力がSOFC最大出力より小さい走行区間(以下、低負荷走行区間ともいう)があれば、その走行区間を走行中に発電してバッテリSOCを増大させることが可能である。すなわち、上記算出方法では、低負荷走行区間におけるバッテリSOCの増大が考慮されていないため、総走行可能距離の推定値が実際に走行可能な距離よりも短くなるおそれがある。
【0045】
そこで本実施形態では、総走行可能距離を精度良く算出するために、以下の制御を実行する。
【0046】
図4は、本実施形態における総走行距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンは、総走行可能距離算出部としてのコントローラ8にプログラムされており、例えば数ミリ秒程度の間隔で繰り返し実行される。なお、この制御ルーチンが実行されるのは、燃料電池スタック3の起動運転が完了している状態である。
【0047】
ステップS100で、コントローラ8はバッテリSOC及び燃料残量を取得する。バッテリSOCは、例えばバッテリ2に出入力される電流値を電流センサ9により検出して積算することによって取得してもよいし、その他の既存の手法によって取得してもよい。燃料残量は、例えば燃料タンク7に設けた燃料計の検出値に基づいて取得してもよいし、その他の既存の手法によって取得してもよい。
【0048】
ステップS110で、コントローラ8は自車の現在位置、地図情報及び今後の走行ルートを取得する。これらの情報はナビゲーションシステム(不図示)から取得する。なお、地図情報はあるが走行ルートが設定されていない場合、及び走行ルートが設定されておらず地図情報もない場合については後述する。
【0049】
ステップS120で、コントローラ8は、現在の燃料状態(バッテリSOCおよび燃料残量)によって走行可能な距離(第1の走行可能距離)を算出する。具体的な算出方法は
図5を参照して説明する。
【0050】
図5は
図4のステップS120において実行する処理であって、第1の走行可能距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、この制御ルーチンが実行されるのは、燃料電池スタック3の起動運転が完了している状態である。
【0051】
本実施形態では、以下に説明する通り、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力より大きい場合と小さい場合とで、異なる方法で総走行可能距離を算出する。
【0052】
ステップS10で、コントローラ8は車両要求出力を取得する。車両要求出力の取得方法は、下記のいずれでもよい。
【0053】
第1の方法は、蓄積しておいた過去の走行データに基づいて算出した平均値を用いる方法である。例えば、今回の走行ルートを過去に走行した際の車両要求出力の推移を走行データとして蓄積しておき、これらの平均値を車両要求出力とする。
【0054】
第2の方法は、予め設定しておいた値を用いる方法である。例えば、路面勾配や制限速度等といった条件毎の代表的な車両要求出力を予め設定しておき、今回の走行ルートの条件に基づいて、使用する車両要求出力を決定する。
【0055】
なお、第1、第2のいずれの方法を用いるのかを運転者が選択するようにしてもよい。
【0056】
ステップS20で、コントローラ8は、バッテリ2の残充電量で出力可能な電力量であるバッテリ出力可能電力量を算出する。算出方法は、バッテリ2のSOCをパラメータとする数式を用いて演算する方法でも、バッテリ2のSOCと出力可能電力量との関係を予めマップ化しておき、これを検索する方法でもよい。
【0057】
ステップS30で、コントローラ8は、平均車速を取得する。ここでいう平均車速とは、ステップS10で取得した車両要求出力で走行する場合の車速の平均値である。車両要求出力をパラメータとする数式を用いた演算を実行してもいいし、車両要求出力と平均車速との関係を予めマップ化しておき、これを検索してもよい。
【0058】
ステップS40で、コントローラ8は、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力より大きいか否かを判定する。ここで用いる発電出力は、基本的には燃料電池スタック3の最大発電出力とするが、例えば冷機状態である等の理由により燃料電池スタック3の発電出力が制限される場合には、制限された値を用いる。
【0059】
コントローラ8は、判定結果がyesの場合はステップS50で走行可能距離演算Aを実行し、判定結果がnoの場合はステップS60で走行可能距離演算Bを実行する。
【0060】
走行可能距離演算Aについて説明する。
【0061】
上述した通り、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力より大きい場合には、バッテリ2の残充電量がなくなると、つまりバッテリ2の出力可能電力量を使いきると、たとえ燃料が残っていても車両要求出力での走行ができなくなる。換言すると、燃料電池スタック3の発電出力に対する車両要求出力の超過分をバッテリ2の出力可能電力量で賄える間は車両要求出力での走行が可能である。つまり、バッテリ2の出力可能電力量を燃料電池スタック3の発電出力に対する車両要求出力の超過分で使いきるまでの走行距離が走行可能距離となる。これを式で表すと式(1)になる。なお、走行可能距離演算Aを算出する式1は、当該距離を走行する期間中は燃料電池スタック3に燃料が供給され続けることを前提とする。当該距離を走行するのに燃料電池が不足する場合の処理については第2実施形態において後述する。
【0062】
L_A=Wbat[kWh]÷(F[kW]-P[kW])×Vave[km/h] ・・・(1)
【0063】
L_A:走行可能距離、Wbat:バッテリ出力可能電力量、F:車両要求出力、P:燃料電池発電出力、Vave:平均車速
【0064】
なお、本ステップにおける式(1)のWbat:バッテリ出力可能電力量は、現在の燃料状態に基づくものである。例えば、車両要求出力が20[kW]、燃料電池発電出力が15[kW]、現在のバッテリ出力可能電力量が10[kWh]、車両要求出力が20[kW]のときの平均車速が100[km/h]とすると、式(1)は下記の通りになる。
【0065】
L_A=10[kWh]÷(20[kW]-15[kW])×100[km/h]
【0066】
=2[h]×100[km/h]
=200[km]
【0067】
なお、燃料電池発電出力は燃料電池スタック3の仕様によって定まるものであり、車両要求出力が決まれば平均車速も決まる。そこで、予めバッテリ出力可能電力量と車両要求出力に様々の値を代入して式(1)の演算を行い、その演算結果に基づいて走行可能距離のマップを作成しておき、取得したバッテリ出力可能電力量と車両要求出力でマップ検索することによって走行可能距離を求めることもできる。マップ検索によって走行可能距離を求めることも、「算出する」に含まれることとする。以下の説明においては、走行可能距離演算Aで算出された走行可能距離を「走行可能距離A」ともいう。
【0068】
次に、走行可能距離演算Bについて説明する。
【0069】
走行可能距離演算Bは上述した文献の算出方法である。つまり、バッテリ2の残充電量に基づいて算出される走行可能距離と、燃料タンクの現在の燃料残量の全てを燃料電池スタック3の駆動に用いて発電させることによって得られる電力(以下、「残燃料電力量」ともいう)に基づいて算出される走行可能距離とを加算する方法である。これを式にすると式(2)になる。
【0070】
L_B=(Wbat[kWh]+Wfuel[kWh])÷F[kW]×Vave[km/h] ・・・(2)
【0071】
L_B:走行可能距離、Wbat:バッテリ出力可能電力量、Wfuel:残燃料電力量、
【0072】
F:車両要求出力、Vave:平均車速
【0073】
車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力と同等またはそれ以下であれば、バッテリ2の電力を使い果たした後も車両要求出力に応じた走行が可能なので、上述した文献の算出方法でも適切な総走行可能距離を算出できる。そこで、走行可能距離演算Bとして、上述した文献の算出方法を用いる。
【0074】
走行可能距離演算Bも、走行可能距離Aと同様にマップ検索によって算出してもよい。この場合、マップ検索に用いるパラメータは、バッテリ出力可能電力量、車両要求出力及び残燃料電力量である。なお、以下の説明においては、走行可能距離演算Bで算出された走行可能距離を「走行可能距離B」ともいう。
【0075】
このようにして走行可能距離A、あるいは走行可能距離Bが演算されると、コントローラ8は、演算結果を記憶して、
図4のフローチャートに戻り、続くステップS130の処理を実行する。なお、以下では、
図4のフローのステップS120で算出された走行可能距離A、あるいは総走行可能距離Bを「第1の走行可能距離」という。
【0076】
ステップS130で、コントローラ8は充電可能区間の予測を行なう。充電可能区間とは、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電電力により得られる出力よりも小さい走行区間のことをいう。本処理では、ステップS110で取得した情報に基づいて、この先の走行ルートに充電可能区間があるか否かを判断する。
【0077】
ステップS140で、コントローラ8は充電可能区間を走行中に燃料電池スタック3により発電を行なうことで生じる電力量(以下、充電増加量ともいう)により走行可能な距離である第2の走行可能距離を算出する。ここで、第2の走行可能距離の算出方法について説明する。
【0078】
充電増加量は、上記の通り充電可能区間を走行中に充電される電力量である。換言すると、充電可能区間を走行する際における、車両要求出力を満足するのに必要な電力に対する燃料電池スタック3の発電電力の余剰分の電力(以下、燃料電池余剰電力ともいう)により充電される電力である。燃料電池余剰電力は、燃料電池スタック3の発電電力から充電可能区間における車両要求出力を満足するのに必要な電力を減算したものである。なお、減算した結果が負の値になる場合は、燃料電池余剰電力はゼロとする。また、当該計算で用いる燃料電池スタック3の発電出力は、燃料電池スタック3の最大発電出力とする。
【0079】
上記のように算出した燃料電池余剰電力に、充電可能区間を走行する時間(以下、余剰電力充電時間ともいう)を乗算したものが、充電増加量である。余剰電力充電時間は、例えば充電可能区間の距離と当該区間の制限速度とに基づいて算出してもよい。また、当該区間の制限速度に代えて、過去の走行データから算出した当該区間の平均車速を用いてもよい。なお、充電可能区間を走行中に燃料電池余剰電力は変化し続けるので、実際には余剰電力充電時間の開始から終了まで燃料電池余剰電力を積分することになる。
【0080】
充電増加量を算出したら、コントローラ8は、ステップS120で用いた式(1)または式(2)のバッテリ出力可能電力量Wbatを充電増加量に置き換えることにより、走行可能距離を算出する。第1の走行可能距離が走行可能距離Aの場合は式(1)を用い、走行可能距離Bの場合は式(2)を用いる。
【0081】
ステップS150で、コントローラ8はステップS120で算出した第1の走行可能距離とステップS140で算出した第2の走行可能距離とを合算し、これを総走行可能距離の推定値とする。
【0082】
ステップS160で、コントローラ8は、ステップS150で算出した総走行可能距離を運転者に対して表示する。表示場所は、運転者が視認可能な場所であればよい。
【0083】
なお、
図5のステップS40において車両要求出力が燃料電池発電出力より大きい場合に、ステップS50で走行可能距離演算Aを行なわず、かつ、
図4のステップS140で充電増加量のみを算出して、ステップS150で次の式(1)´により総走行可能距離を算出してもよい。
【0084】
L_total=(Wbat[kWh]+Wcharge)÷(F[kW]-P[kW])×Vave[km/h]・・・(1)´
【0085】
L_total:総走行可能距離、Wbat:バッテリ出力可能電力量、Wcgarge:充電増加量、F:車両要求出力、P:燃料電池発電出力、Vave:平均車速
【0086】
すなわち、車両要求出力に対する燃料電池スタック3(発電機)の発電出力の不足分と、バッテリ2の現在の残充電量に充電増加量を加算した総バッテリ充電量と、に基づいて総走行可能距離を算出してもよい。
【0087】
なお、ステップS130において充電可能区間がないと予測された場合は、ステップS140の処理で算出される第2の走行可能距離はゼロ[km]になる。そこで、ステップS130において充電可能区間があると予測された場合にだけステップS140の処理を実行するようにしてもよい。
【0088】
次に、上記のように総走行可能距離を算出することによる効果について
図6から
図9を参照して説明する。
【0089】
図6は、走行パターンの一例を示すタイミングチャートである。
図6の縦軸は出力[kW]である。図中の実線は車両要求出力を示す。図中の破線は燃料電池スタック3の最大出力、つまり燃料電池スタック3が最大発電電力を発生した場合に得られる駆動モータ1の出力を示す。
【0090】
図6に示す走行パターンは、タイミング0からタイミングT1までは充電可能区間を走行し、タイミングT1以降は高負荷走行領域を走行するものである。この走行パターンで走行する場合、本実施形態ではタイミング0からタイミングT1までが余剰電力充電時間となり、この間に充電される充電増加量(斜線領域Aの面積)を考慮して総走行可能距離を算出する。
【0091】
充電増加量を考慮しない場合には、高負荷走行時における車両要求出力と燃料電池スタック3の最大出力との差を、タイミング0におけるバッテリSOCに基づいて定まるバッテリ出力可能電力量(斜線領域Bの面積)で賄える時間、つまりタイミングT1からタイミングT2までが高負荷状態での走行可能時間となり、この走行可能時間に車速を乗算したものが総走行可能距離となる。つまり、実際には高負荷走行に入る前に充電した電力(充電増加量)による走行が可能であるのに、タイミング0におけるバッテリSOCに基づいて定まるバッテリ出力可能電力量による走行可能距離しか算出されない。
【0092】
これに対し本実施形態では、高負荷走行時における車両要求出力と燃料電池スタック3の最大出力との差を、タイミング0におけるバッテリSOCに基づいて定まるバッテリ出力可能電力量(斜線領域Bの面積)と充電増加量(斜線領域C=斜線領域A)により賄える時間が高負荷状態での走行可能時間となる。そして、この走行可能時間に車速を乗算したものが総走行可能距離となる。
【0093】
上記の通り、総走行可能距離を算出する際に充電増加量を考慮することで、精度良く総走行可能距離を算出することが可能となる。
【0094】
図7から
図9は、具体的な数値を用いた試算の為のデータ及び試算結果を表にまとめたものである。
【0095】
図7は、試算に用いる車両の、車速と当該車速における車両要求出力との関係をまとめた表である。
【0096】
図8は、試算に用いる車両に搭載するバッテリ2の容量と燃料電池スタック3の最大発電電力と、走行可能距離の推定演算時点におけるSOCと、当該SOCの状態で100[km/h]で走行する場合の走行可能距離(第1の走行可能距離)とについての表である。
【0097】
図9は充電可能区間における充電増加量での走行可能距離(上記の第2の走行可能距離)の試算結果をまとめた表である。
【0098】
なお、
図8及び
図9の走行可能距離は、燃料電池スタック3の発電出力を最大として試算したものである。
【0099】
バッテリ2の容量が20[kWh]で、燃料電池スタック3の最大出力が20[kW]の場合、
図7から明らかなように、80[km/h]より低速であれば低負荷走行となる。また、バッテリSOCが25[%]の場合には、バッテリ出力可能電力は5[kWh]となり、この電力だけで高負荷走行(100[km/h]での走行)をする場合の走行可能距離は、上記式(1)により50[km]と算出される。バッテリSOCが50[%]の場合は、バッテリ出力可能電力が10[kW]となり、高負荷走行での走行可能距離の算出結果は100[km]となる。
【0100】
つまり、充電可能区間での充電増加量を考慮しないと、バッテリSOCが25[%]であれば総走行可能距離は50[km]となり、バッテリSOCが50[%]であれば総走行可能距離は100[km]となる。
【0101】
しかし、本実施形態では総走行可能距離の算出にあたり、充電増加量での走行可能距離も考慮する。そこで、充電可能区間での車速については20[km/h]、40[km/h]、及び60[km/h]の3パターン、充電可能区間の走行時間については15[min]及び30[min]の2パターンとして、充電増加量及びその充電増加量での走行可能距離を算出し、その結果を
図9にまとめた。
【0102】
充電増加量及び第2の走行可能距離の算出方法について、走行時間が15[min]で車速20[km/h]という走行条件を例として説明する。
【0103】
車速20[km/h]での走行に必要な出力は、
図7に示す通り2[kW]である。したがって、燃料電池スタック3の出力が最大発電出力であれば、燃料電池余剰電力は18[kW]となる。この燃料電池余剰電力での走行時間が15[min]とすれば、充電増加量は18[kW]×15[min]÷60で4.5[kWh]となる。
【0104】
そして、第2の走行可能距離は、上記式(1)のバッテリ出力可能電力量Wbatを充電増加量に置き換え、車両要求出力Fを100[km/h]での走行に必要な出力である30[kW]、燃料電池発電出力Pを最大発電出力である20[kW]、平均車速Vaveを100[km/h]として算出される。その結果、第2の走行可能距離は45[km]になる。他の走行条件についても同様の方法で算出可能である。
【0105】
図9に示す通り、充電可能区間の走行時間が15[min]の場合には、20~45[km]の走行が可能となり、30[min]の場合には40~90[km]の走行が可能となる。
【0106】
以上の通り本実施形態では、コントローラ8は、走行中に燃料電池スタック3(発電機)による充電が可能な区間である充電可能区間の有無を判別し、当該判別の結果に基づいてバッテリ2の充電量を算出し、バッテリ2の充電量と燃料電池スタック3の燃料残量とを含むパラメータに基づいて総走行可能距離を算出する。このように、総走行距離の算出に用いるパラメータの一つであるバッテリ2の充電量を、充電可能区間の有無の判別結果に基づいて算出するので、現時点におけるバッテリ2の充電残量のみをパラメータとして総走行距離を算出するよりも、算出結果の精度が高くなる。
【0107】
本実施形態では、コントローラ8は充電可能区間を走行中に燃料電池スタック3の発電により充電される電力量である充電増加量を算出し、バッテリ2の現在の残充電量に充電増加量を加算して総バッテリ充電量を算出する。そして、コントローラ8は車両要求出力に対する燃料電池スタック3の発電出力の不足分と、総バッテリ充電量と、に基づいて総走行可能距離を算出する。これにより、燃料電池スタック3の発電出力が比較的小さい場合であっても、コントローラ8は、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力を超える高負荷走行における総走行可能距離を精度良く算出できる。
【0108】
本実施形態によれば、コントローラ8は、充電増加量を燃料電池スタック3の発電出力から充電可能区間における車両要求出力を減算した値を積算することにより算出する。これにより、コントローラ8は、車両要求出力や発電電力の変化に応じて充電増加量を適切に算出できる。
【0109】
本実施形態では、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力より小さい場合にのみ、充電増加量の算出を行なう。これにより、コントローラ8の演算負荷を軽減できる。
【0110】
本実施形態では、コントローラ8は、道路地図情報と自車の位置情報と目的地までの走行ルート情報とを取得し、目的地までの走行ルート上の、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電電力を超えない低負荷走行区間を充電可能区間として予測する。そして、コントローラ8は、充電可能区間における車両要求出力を算出し、算出した車両要求出力と燃料電池スタック3の発電電力とに基づいて充電可能区間における充電増加量を算出する。道路地図情報と走行ルート情報とが取得できる場合には、この先の走行ルート中の車両要求出力及び走行距離を精度良く算出できる。したがって、充電増加量も精度良く算出できる。
【0111】
本実施形態では、コントローラ8は、上記演算に用いる燃料電池スタック3の発電出力を、燃料電池スタック3の最大発電出力とする。これにより、充電可能区間における充電増加量をより大きくすることができる。
【0112】
本実施形態では、コントローラ8は、車両要求出力を、車両の走行に必要な電力と、車両補機の消費電力とに基づいて算出する。これにより、総走行可能距離をより精度良く算出できる。
【0113】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態を適用するハイブリッド車両は第1実施形態のものと同じである。また、本実施形態の総走行可能距離の算出方法も基本的には第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態は走行ルートが設定されていない点で第1実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
【0114】
走行ルートが設定されていないと、コントローラ8は
図4のステップS110において走行ルートを取得できない。走行ルートが定まっていない場合には、コントローラ8は
図4のステップS130において第1実施形態のように充電可能区間を予測することはできない。
【0115】
そこで、コントローラ8は
図4のステップS130において、以下の方法で充電可能区間を予測する。
【0116】
本実施形態では、走行ルートは設定されていないものの、自車の位置情報及び地図情報は取得可能である。そこでコントローラ8は、これら取得可能な情報に基づいて、自車の周辺にある高速道路入口及び登坂路開始地点等といった高負荷走行の開始地点を検索し、現在位置から最も近い高負荷走行の開始地点を特定する。そして、現在位置から高負荷走行の開始地点までを充電可能区間と予測する。
【0117】
充電可能区間が予測されれば、第2の走行可能距離の算出(
図4のS140)は第1実施形態と同様の方法で行なうことができる。
【0118】
上記の通り本実施形態では、コントローラ8は、道路地図情報と自車の位置情報とを取得し、現在位置から、車両要求出力が燃料電池スタック3の発電電力を超える高負荷走行を開始する地点までを充電可能区間として予測する。そして、コントローラ8は、充電可能区間における車両要求出力を算出し、算出した車両要求出力と発電機の発電電力とに基づいて充電可能区間における発電機の発電によるバッテリ充電量を算出する。これにより、走行ルートが設定されていなくても、充電可能区間がどこまで、どのような負荷で継続するのかを推定して充電増加量を精度良く算出することができる。
【0119】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態を適用するハイブリッド車両は第1実施形態のものと同じである。また、本実施形態の総走行可能距離の算出方法も基本的には第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態は、地図情報がない点で第1実施形態と相違する。なお、地図情報がなければ、当然、走行ルートも設定されていない。つまり、本実施形態では、
図4のステップS110において取得する情報がない。以下、この相違点を中心に説明する。
【0120】
地図情報がなければ、コントローラ8は
図4のステップS110において地図情報及び走行ルートを取得できないので、コントローラ8は
図4のステップS130において第1実施形態のように充電可能区間を予測することができない。そして、充電可能区間が予測できなければ、充電増加量を算出することもできない。
【0121】
そこで本実施形態では、コントローラ8は
図4のステップS130の処理行なわずに、以下の方法で充電増加量を算出する。
【0122】
図10は、本実施形態における、充電増加量を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはコントローラ8にプログラムされている。
【0123】
ステップS200で、コントローラ8は過去の走行状態のデータに基づいて車両要求出力の平均値を算出する。過去の走行状態のデータとしては、出発から目的地到着までの1トリップのデータや所定走行時間のデータ等、種々のデータを用いることができるが、長時間のデータに基づいて算出した平均値では、現在の走行状態を適切に表すことができないおそれがある。そこで本実施形態では、車両要求出力のレベルを複数の範囲に分割して、車両の走行状態が現在の車両要求出力のレベルの範囲に入ってから後のデータに基づいて、車両要求出力の平均値を算出する。例えば、車両要求出力を低負荷レベル(0kW以上10kW未満)、中負荷レベル(10kW以上20kW未満)、高負荷レベル(20kW以上)に分割し、現在の走行状態が中負荷レベルであるなら、中負荷レベルに入ってから現在までのデータに基づいて車両要求出力の平均値を算出する。これにより、現在の走行状態を適切に反映した平均値を算出することができる。
【0124】
ステップS210で、コントローラ8は燃料電池余剰電力を算出する。具体的には、燃料電池最大発電出力からステップS200で算出した車両要求出力の平均値を減算する。なお、燃料電池最大発電出力より車両要求出力の平均値の方が大きい場合は、燃料電池余剰発電電力はゼロとする。
【0125】
ステップS220で、コントローラ8は発電電力に応じた燃料消費量と、燃料タンク7の燃料残量とに基づいて、発電継続可能時間を算出する。発電継続可能時間は、現在の燃料残量で発電し続けられる時間、換言すれば、燃料がなくなるまでの時間である。具体的には、コントローラ8は燃料タンク7の燃料残量を発電電力に応じた燃料消費量で除算する。
【0126】
ステップS230で、コントローラ8は充電増加量を算出する。具体的には、ステップS210で算出した燃料電池余剰発電出力とステップS220で算出した発電継続時間とを乗算する。
【0127】
なお、バッテリ2の劣化防止等のために、バッテリ2の充電量には上限が設けられている。このため、充電増加量はバッテリ2の充電量が上限に達するまでの範囲に制限される。
【0128】
コントローラ8は、上記の方法で充電増加量を算出したら、
図4のステップS140~S160の処理を実行する。これにより、走行ルートが設定されておらず、かつ地図情報がない場合でも、高負荷走行に入る前の充電増加量による第2の走行可能距離を算出することができる。
【0129】
上記の通り本実施形態では、コントローラ8は、道路地図情報及び目的地までの走行ルート情報がない場合には、充電可能区間における車両要求出力として直近の車両要求出力の平均値を用いる。これにより、道路地図情報がなく、かつ走行ルートが設定されていない場合でも、充電可能区間における車両要求出力の算出が可能となる。
【0130】
本実施形態では、コントローラ8は、現在位置から、バッテリ2が満充電になるまで又は燃料電池スタック3の燃料がなくなるまでの区間を充電可能区間とする。これにより、道路地図情報がなく、かつ走行ルートが設定されていない場合でも、充電可能区間がどこまで継続するのかを推定できる。
【0131】
次に、
図4のステップS120における第1の走行可能距離の算出方法の変形例について説明する。下記のいずれの変形例も本発明の範囲に含まれる。
【0132】
(第1変形例)
図11は、第1の走行可能距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンは、コントローラ8にプログラムされており、例えば数ミリ秒程度の間隔で繰り返し実行される。
図11の制御ルーチンは、コントローラ8が走行可能距離演算A(ステップS50)の後に、燃料タンクの燃料残量が走行可能距離Aを走行するのに必要な量に対して不足しているか否かの判定(ステップS55)を実行する点が
図5の制御ルーチンと相違する。
【0133】
図5の制御ルーチンは、当該距離を走行する期間中は燃料電池スタック3に燃料が供給され続けることが前提となっている。例えば、車両要求出力が30[kW]、燃料電池発電出力が20[kW]、現在のバッテリ出力可能電力量が10[kWh]、車両要求出力が30[kW]のときの平均車速が100[km/h]の場合を考える。この場合、平均車速100[km/h]で1時間の走行が可能なので総走行可能距離Aは100[km]という結果になる。つまり、100[km]という走行可能距離Aは、燃料が1時間もつことを前提とした値である。
【0134】
しかし、例えば、式(1)における燃料電池スタック3の発電出力を発生する際の燃料消費率が10[L/h]で燃料残量が5[L]の場合には、燃料は30分でなくなるので100[km]を走行することができない。
【0135】
そこでコントローラ8は、ステップS55において燃料タンクの燃料残量が走行可能距離Aを走行するのに必要な量に対して不足しているか否かを判定する。具体的には、まず、コントローラ8は燃料電池スタック3の燃料消費率と燃料残量とから、燃料残量がなくなるまでの時間を算出する。なお、コントローラ8は燃料電池スタック3の発電出力毎の燃料消費率を予め記憶している。また、燃料残量は公知の手法で検出する。例えば燃料タンク7に燃料センサを設けて検出する。
【0136】
そして、コントローラ8は、燃料がなくなるまでの時間と走行可能距離演算Aの過程において算出される走行可能時間とを比較し、燃料がなくなるまでの時間の方が短い場合に燃料不足であると判断する。
【0137】
車両要求出力が燃料電池スタック3の発電出力より大きい場合には、走行可能距離演算Bよりも走行可能距離演算Aの方が実際に走行可能な距離に近い値を算出できる。しかし、燃料が不足する場合には、走行可能距離演算Aの前提が崩れるため、走行可能距離Aの精度は走行可能距離Bよりも悪化する。
【0138】
そこで、コントローラ8は、ステップS55の判定結果がyesの場合はステップS60で走行可能距離演算Bを実行する。
【0139】
判定結果がnoの場合は、走行可能距離Aを走行可能ということなので、コントローラ8はステップS50で算出した走行可能距離Aを第1の走行可能距離に設定する。
【0140】
以上のように本変形例では、車両要求出力が燃料電池スタック3の最大発電出力より小さい場合、および、走行に使用可能なバッテリ2の電力がなくなるまでの時間が燃料電池スタック3の発電に用いる燃料が無くなるまでの時間よりも長い場合のいずれか一方の場合には、バッテリ2の充電残量から定まる走行可能距離と、燃料の残量の全てを用いて発電することによって得られる電力量から定まる走行可能距離と、を加算して走行可能距離が算出される。また、車両要求出力が燃料電池の最大発電出力より大きい場合であって、走行に使用可能なバッテリ2の電力がなくなるまでの時間が燃料電池スタック3の発電に用いる燃料が無くなるまでの時間以下である場合には、走行出力に対する発電機の発電出力の不足分と、バッテリの残充電量から定まる走行可能距離が算出される。これによれば、バッテリ2の電力よりも先に燃料が無くなるために実際には走行可能距離Aを走行できない場合に、走行可能距離Aよりも精度の高い走行可能距離Bを算出できる。
【0141】
(第2変形例)
第1実施形態、第2実施形態及び第1変形例では、燃料電池スタック3の起動運転が完了している状態で総走行可能距離を算出する制御ルーチンについて説明したが、本変形例では燃料電池スタック3が稼働していない状態でも精度よく総走行可能距離を算出できる制御ルーチンについて説明する。
【0142】
本変形例を適用するハイブリッド車両のシステム構成は第1実施形態の構成と同様である。このハイブリッド車両では、燃料電池スタック3が稼働していない状況ではバッテリ2の電力だけで走行することになる。また、本変形例で使用する燃料電池スタック3はSOFCであり、SOFCは起動運転開始から起動運転終了までに数十分以上の時間を要する。
【0143】
したがって、燃料電池スタック3の起動運転が終了していない状態で総走行可能距離を算出する場合には、バッテリ2のSOCや燃料残量が起動運転開始から起動運転終了までに変化することを考慮する必要がある。そこで本実施形態では、上記の変化を考慮して総走行可能距離を算出する。
【0144】
図12は、本変形例における総走行距離を算出するための制御ルーチンを示すフローチャートである。以下に説明する通り、燃料電池スタック3が稼働していない場合には、コントローラ8は起動運転終了までの走行距離と、起動運転終了後の走行可能距離とを加算して総走行可能距離を算出する。なお、この制御ルーチンは、コントローラ8にプログラムされており、例えば数ミリ秒程度の間隔で繰り返し実行される。ステップS10、S30、S40-S70は、
図11の制御ルーチンと同じである。
【0145】
図12ではステップS10の処理の後にステップS30を実行し、その後に以下に説明するステップS32-S38の処理を実行する。そして、ステップS38の処理の後に
図11のステップS20と同様の処理であるステップS39の処理を実行する。
【0146】
ステップS32で、コントローラ8は、燃料電池スタック3が稼働しているか否かを判定し、稼働している場合にはステップS39以下の処理を実行する。
【0147】
コントローラ8は、ステップS32で燃料電池スタック3が稼働していないと判定した場合には、ステップS34にて起動運転終了までの走行距離を算出する。具体的には、コントローラ8は、燃料電池スタック3の起動運転開始から起動運転終了までに要する時間を予め記憶しておき、この時間と平均車速とから起動運転終了までの走行距離を算出する。
【0148】
ステップS36で、コントローラ8は、起動運転終了時のバッテリ2のSOCを算出する。具体的には、コントローラ8は、ステップS2で算出した距離を走行することで消費する電力量を算出し、この電力量と現在のバッテリ2のSOCとから、起動運転終了時におけるバッテリ2のSOCを算出する。
【0149】
ステップS38で、コントローラ8は起動運転終了時の燃料残量を算出する。具体的には、コントローラ8は起動運転開始から起動運転終了までに消費する燃料量を算出し、この燃料量と現在の燃料残量とから、起動運転終了時における燃料残量を算出する。
【0150】
コントローラ8は、ステップS38の処理が終了したら、ステップS39以降の処理を実行する。その際、ステップS39では、コントローラ8はステップS36で推定したバッテリSOCで出力可能な電力量であるバッテリ出力可能電力量を算出する。ステップS50では、コントローラ8は上述した第1の走行可能距離演算で算出した値に、起動運転終了までの走行距離を加算したものを走行可能距離Aとする。ステップS60では、コントローラ8は式(2)の残燃料電力量Wfuelを起動運転終了時の燃料残量での電力量として走行可能距離を算出し、この算出値に起動運転終了までの走行距離を加算したものを走行可能距離Bとする。
【0151】
また、本変形例では、充電増加量の算出においても、起動運転の開始から終了までの時間を余剰電力充電時間から除く。
【0152】
以上のように本変形例では、燃料電池スタック3が稼働していない場合にコントローラ8は、車両要求出力に基づいて、燃料電池スタック3の起動運転が終了するまでの走行距離と、起動運転が終了した時点におけるバッテリ2の残充電量及び燃料残量と、を推定する。そして、コントローラ8は起動運転が終了した時点におけるバッテリ2の残充電量の推定値及び燃料残量の推定値に基づいて走行可能距離演算Aまたは走行可能距離演算Bを行うことによって、起動運転終了後の走行可能距離を算出する。コントローラ8は、起動運転終了後の走行可能距離と、起動運転が終了するまでの走行距離とを加算したものを第1の走行可能距離とする。これにより、燃料電池スタック3が稼働していない場合に、起動運転の終了を待つ間のバッテリ2のSOCの変化や燃料残量の変化に応じた適切な総走行可能距離を算出することができる。
【0153】
なお、上記の各実施形態及び各変形例では、発電機が燃料電池システム200である場合について説明したが、これに限られるわけではない。例えば、燃料電池システム200に代えて、内燃機関と内燃機関で駆動されて発電する発電機とからなるシステムを用いる場合にも各実施形態及び各変形例を適用できる。内燃機関で発電する発電機の発電出力が車両要求出力より低い場合には、各実施形態及び各変形例で解決する課題と同様の課題が生じるからである。また、内燃機関は起動運転の開始から終了までに要する時間がSOFCに比べて大幅に短く、起動運転の開始から終了までの間のバッテリ2のSOC変化量や燃料残量の変化は無視し得る。
【0154】
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0155】
1 駆動モータ
2 バッテリ
3 燃料電池スタック
8 コントローラ
100 外部負荷
200 燃料電池システム