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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】無効電力補償システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H02J3/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018196011
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020065366
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】関 孝二郎
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023263(JP,A)
【文献】特開平08-147056(JP,A)
【文献】特開2014-204579(JP,A)
【文献】特開2009-131003(JP,A)
【文献】特開2000-295774(JP,A)
【文献】特開2019-033638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12,3/16,3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無効電力補償装置により電力系統に無効電力を注入して系統電圧の変動を補償する無効電力補償システムであって、電力系統における前記無効電力補償装置の接続点と電力系統の一端に設置された第1の変電所との間に第1の開閉器が接続され、かつ、電力系統の他端に設置された第2の変電所と前記接続点との間に第2の開閉器が接続された無効電力補償システムにおいて、
前記第1の変電所または前記第2の変電所の何れが電源であるかを判定するための所定周波数の変電所方向判定信号を、前記無効電力補償装置から電力系統に注入する判定信号注入手段と、
前記接続点と前記第1の変電所との間、または、前記接続点と前記第2の変電所との間から、電力または電流の変動成分を検出する変動成分検出手段と、
前記変動成分検出手段により検出された前記変動成分の周波数が前記変電所方向判定信号の所定周波数と等しい場合に、前記変動成分が検出された側の変電所が電源であると判定する比較手段と、
を備えたことを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項2】
無効電力補償装置により電力系統に無効電力を注入して系統電圧の変動を補償する無効電力補償システムであって、電力系統における変電所の接続点と前記無効電力補償装置との間に、第1の開閉器を備えた第1の線路と第2の開閉器を備えた第2の線路とが並列に接続された無効電力補償システムにおいて、
前記第1の線路または前記第2の線路の何れが電源としての前記変電所に接続されているかを判定するための所定周波数の変電所方向判定信号を、前記無効電力補償装置から前記第1の線路または前記第2の線路に注入する判定信号注入手段と、
前記第1の線路または前記第2の線路から、電力または電流の変動成分を検出する変動成分検出手段と、
前記変動成分検出手段により検出された前記変動成分の周波数が前記変電所方向判定信号の所定周波数と等しい場合に、前記変動成分が検出された側の線路が前記変電所に接続されていると判定する比較手段と、
を備えたことを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記比較手段による判定結果に応じて、予め設定された制御方法または制御パラメータを切り替える手段を有することを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記比較手段による判定結果に応じて、制御パラメータの更新を外部システムに要求する手段を備えたことを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記無効電力補償装置がスロープ特性付きの電圧制御方法によって制御されると共に、前記制御パラメータが、少なくともスロープリアクタンスまたはその逆数に相当する制御ゲインを含むことを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記比較手段は、前記変動成分の大きさが所定の閾値を超える場合に当該変動成分を有効と判断して前記変電所方向判定信号との比較に用いることを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記無効電力補償装置に与える無効電力指令値を、無効電力目標値に前記変電所方向判定信号を重畳して生成することを特徴とする無効電力補償システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、
前記変電所方向判定信号が無効電力変動成分または無効電流変動成分であることを特徴とする無効電力補償システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば静止型無効電力補償装置(以下、SVC:Static Var Compensatorともいう)により、電力系統の無効電力を補償して電圧を所定値に制御するシステムにおいて、SVCにより系統電源としての変電所の方向を判定可能とした無効電力補償システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のSVCの一例を示す構成図であり、特許文献1に記載されているものである。
図6において、100は配電線または送電線等の線路、101,102は変流器、103は計器用変圧器、104は潮流方向検出手段、105は演算手段、106は目標値設定手段、107は制御手段、108は半導体スイッチング素子、コンデンサ、リアクトル等からなるSVC主回路である。
【0003】
この従来技術では、潮流方向検出手段104が、変流器101及び計器用変圧器103の出力に基づき、有効電力の極性や相電圧と電流との位相差等から線路100の潮流方向を検出する。演算手段105は、検出された潮流方向に応じて、変流器101の出力、または変流器101の反転出力と変流器102の出力との加算値を制御手段107に入力する。制御手段107は、演算手段105の出力と計器用変圧器103の出力とに基づいて潮流方向ごとに力率または無効電力を求め、その値が目標値設定手段106による設定目標値になるように主回路108を動作させて力率一定制御または無効電力一定制御を行っている。
【0004】
一方、非特許文献1には、分散電源が連系される電力系統において、自動電圧調整器(以下、SVR:Step Voltage Regulatorともいう)により系統電圧を所定値に制御するSVR制御方式が開示されている。
図7(a)は、SVRの一次側,二次側に変電所a,b、電線用遮断器FCB,FCB、及び負荷LD,LDがそれぞれ接続されている系統モデルにおいて、変電所a,bの何れが電源になるかという系統接続(変電所aが電源となる順送,変電所bが電源となる逆送)と、SVRを通過する電力の方向としての電力潮流(順潮流,逆潮流)とを場合分けした図であり、図7(b)は、系統接続と電力潮流との4通りの組み合わせを運転モードI~IVとして示した図である。
【0005】
電力潮流のみから系統接続(順送,逆送)を判定する場合、分散電源が連系されていない状態では、図7(b)の運転モードI,IIのように、順潮流時には順送、逆潮流時には逆送と判定でき、SVRはこれらの判定結果に基づいて電圧調整を行うことができる。
しかし、例えば順送(変電所aが電源である)時に、SVRと遮断器FCBとの間に太陽光発電装置や風力発電装置等の分散電源が接続されると、その発電電力がSVRに逆潮流として流れるため運転モードIIIになるはずであるが、SVRは、逆潮流に基づいて逆送(変電所bが電源)と判断してしまい、運転モードIIと誤認することになる。
【0006】
このため、非特許文献1では、SVRの一次側インピーダンスと二次側インピーダンスとの比であるインピーダンス比等に基づいて系統接続(順送,逆送)を判定し、SVRの二次側または一次側のタップを切り替えて電圧調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-135535号公報(段落[0012]~[0015]、図1等)
【非特許文献】
【0008】
【文献】梶田 寛,神部 晃,符川 謙治,角倉 慎哉,「分散電源対応型SVR制御方式の開発」,p.10-16,愛知電機技報,No.26,2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された従来技術によれば、電力系統の潮流方向が切り替わった時でもSVCを継続的に制御することが可能であるが、分散電源が連系された場合に系統接続を誤認するおそれがある。
図8は、特許文献1と同様にSVCが接続された配電系統の構成図である。図8において、11,12は配電系統20の両端に設置された配電用変電所(以下、単に変電所ともいう)、50はSVC、31,32はSVC50と変電所11,12との間にそれぞれ設置された開閉器、51は変流器、52は計器用変圧器、60は負荷、70は分散電源である。
【0010】
いま、通常動作として、変電所11からの電力がON状態の開閉器31を介して負荷60に供給されている場合、SVC50は順潮流を検出し、変電所11が電源である(順送)と判定して無効電力補償動作を行う。しかし、分散電源70が発電を開始すると、図示するように分散電源70の発電電力が配電系統20を逆潮流として流れる。これにより、SVC50は、開閉器32がOFFしているにも関わらず、あたかも他方の変電所12が電源である(逆送)と誤認してしまう。
【0011】
SVC50から各変電所までの系統インピーダンスは異なり、SVC50の最適な制御ゲインは系統インピーダンスに応じて異なるので、系統接続を誤認してしまうとSVC50による適切な制御動作は困難になる。また、特許文献1に記載されたSVCは力率一定または無効電力一定制御を行っており、電圧一定制御を行う場合の系統接続の判定方法については何ら言及されていない。
更に、非特許文献1に記載された技術によれば、SVRが接続された電力系統において系統接続の誤判定を防ぐことができるが、この技術をSVCが接続された系統にそのまま適用することはできない。
【0012】
そこで、本発明の解決課題は、SVCが接続された電力系統に分散電源が連系される場合でも、電源である変電所の方向、すなわち系統接続(順送,逆送)を確実に判定して適切な無効電力補償、電圧補償を可能にした無効電力補償システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、無効電力補償装置により電力系統に無効電力を注入して系統電圧の変動を補償する無効電力補償システムであって、電力系統における前記無効電力補償装置の接続点と電力系統の一端に設置された第1の変電所との間に第1の開閉器が接続され、かつ、電力系統の他端に設置された第2の変電所と前記接続点との間に第2の開閉器が接続された無効電力補償システムにおいて、
前記第1の変電所または前記第2の変電所の何れが電源であるかを判定するための所定周波数の変電所方向判定信号を、前記無効電力補償装置から電力系統に注入する判定信号注入手段と、
前記接続点と前記第1の変電所との間、または、前記接続点と前記第2の変電所との間から、電力または電流の変動成分を検出する変動成分検出手段と、
前記変動成分検出手段により検出された前記変動成分の周波数が前記変電所方向判定信号の所定周波数と等しい場合に、前記変動成分が検出された側の変電所が電源であると判定する比較手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、無効電力補償装置により電力系統に無効電力を注入して系統電圧の変動を補償する無効電力補償システムであって、電力系統における変電所の接続点と前記無効電力補償装置との間に、第1の開閉器を備えた第1の線路と第2の開閉器を備えた第2の線路とが並列に接続された無効電力補償システムにおいて、
前記第1の線路または前記第2の線路の何れが電源としての前記変電所に接続されているかを判定するための所定周波数の変電所方向判定信号を、前記無効電力補償装置から前記第1の線路または前記第2の線路に注入する判定信号注入手段と、
前記第1の線路または前記第2の線路から、電力または電流の変動成分を検出する変動成分検出手段と、
前記変動成分検出手段により検出された前記変動成分の周波数が前記変電所方向判定信号の所定周波数と等しい場合に、前記変動成分が検出された側の線路が前記変電所に接続されていると判定する比較手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した無効電力補償システムにおいて、前記比較手段による判定結果に応じて、予め設定された制御方法または制御パラメータを切り替える手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載した無効電力補償システムにおいて、前記比較手段による判定結果に応じて、制御パラメータの更新を外部システムに要求する手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載した無効電力補償システムにおいて、前記無効電力補償装置がスロープ特性付きの電圧制御方法によって制御されると共に、前記制御パラメータが、少なくともスロープリアクタンスまたはその逆数に相当する制御ゲインを含むことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1~5の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、前記比較手段は、前記変動成分の大きさが所定の閾値を超える場合に当該変動成分を有効と判断して前記変電所方向判定信号との比較に用いることを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1~6の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、前記無効電力補償装置に与える無効電力指令値を、無効電力目標値に前記変電所方向判定信号を重畳して生成することを特徴とする。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項1~7の何れか1項に記載した無効電力補償システムにおいて、前記変電所方向判定信号が無効電力変動成分または無効電流変動成分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、SVCが接続された配電系統などの電力系統に分散電源が連系され、この分散電源による潮流が電力系統を流れる場合でも、順送または逆送を正確に検出して電源である変電所を確実に判定することができる。これにより、適切な制御方法や制御パラメータを用いて系統の無効電力補償、電圧補償を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る無効電力補償システムの概略的な構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る無効電力補償システムの概略的な構成図である。
図3】本発明の各実施形態におけるSVCの制御回路の構成図である。
図4】スロープ特性付き電圧制御型SVCの制御特性を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る無効電力補償システムの概略的な構成図である。
図6】特許文献1に記載された従来技術の構成図である。
図7】非特許文献1に記載された、系統接続及び電力潮流の場合分け(図7(a))、及び運転モード(図7(b))を示す図である。
図8】SVCが接続された配電系統に分散電源が連系される場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1図2は、本発明の第1実施形態に係る無効電力補償システムの概略的な構成図である。これらの図において、図8と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下では図8との相違点を中心に説明する。
【0024】
この第1実施形態では、SVC50が、電源である変電所の方向を判定するための所定周波数の変電所方向判定信号ΔS’を生成して配電系統20に注入する機能を備えている。変電所方向判定信号ΔS’の種類は特に限定されないが、配電系統20には負荷や分散電源等による有効電力や無効電力が存在するため、例えば、所定周波数で変動する無効電力変動成分ΔQ’(または無効電流変動成分)を変電所方向判定信号ΔS’として用いると良い。
以下では、変電所方向判定信号ΔS’=無効電力変動成分ΔQ’として説明を続ける。
【0025】
まず、図1図2に示すように、両端に第1,第2の配電用変電所11,12が設置され、SVC50の接続点と変電所11,12との間に第1,第2の開閉器31,32がそれぞれ設けられた配電系統20を想定する。ここで、第1の開閉器31がON、第2の開閉器32がOFFであって第1の配電用変電所11が電源となっている場合(図1)を順送とし、第1の開閉器31がOFF、第2の開閉器32がONであって、第2の配電用変電所12が電源となっている場合(図2)を逆送と定義する。
なお、開閉器31,32は、一方がONし、他方がOFFするように動作するものとする。
【0026】
図1のように変電所11側の開閉器31をONし、変電所12側の開閉器32をOFFすると、SVC50から注入された無効電力変動成分ΔQ’は変電所11側の配電系統20で検出され、変電所12側では検出されない。また、図2のように変電所12側の開閉器32をONし、変電所11側の開閉器31をOFFすると、無効電力変動成分ΔQ’は変電所11側では検出されず、変電所12側の配電系統20で検出される。
従って、潮流方向に着目するのではなく、配電系統20におけるSVC50の接続点を基準として何れの変電所側で無効電力変動成分ΔQ’が検出されるかに基づいて、電源としての変電所を判定することができる。
【0027】
これにより、例えば、図1の開閉器31,32の間に分散電源(図示せず)が連系され、その発電電力による潮流(ON状態の開閉器31を介して変電所11方向に向かう潮流)をSVC50が検出したとしても、無効電力変動成分ΔQ’ が変電所11側の配電系統20から検出された時には変電所11が電源であること(順送)を判定可能であり、他方の変電所12が電源である(逆送)と誤認するおそれはない。
同様に、図2における開閉器31,32の間に分散電源が連系され、その発電電力による潮流(ON状態の開閉器32を介して変電所12方向に向かう潮流)をSVC50が検出したとしても、無効電力変動成分ΔQ’ が変電所12側の配電系統20から検出された時には変電所12が電源であること(逆送)を判定可能であり、他方の変電所11が電源である(順送)と誤認することはない。
【0028】
図3は、無効電力変動成分ΔQ’を検出して変電所方向を判定するための制御回路の構成図である。
無効電力変動成分ΔQ’は加算手段56に入力されて無効電力目標値Q’と加算され、無効電力指令値QとしてSVC50に与えられる。SVC50は、無効電力指令値Qに従って半導体スイッチング素子を制御することにより、配電系統20に無効電力を注入して系統電圧を所定値に制御する。
【0029】
一方、変流器51及び計器用変圧器52は、図8と同様に、配電系統20上のSVC50の接続点から変電所11側に設置されており、これらによる電流検出値I及び電圧検出値Vが無効電力検出手段53に入力されている。無効電力検出手段53では、電流検出値I及び電圧検出値Vから無効電力Qを求め、この無効電力Qはフィルタ54に入力されて変動成分ΔQが抽出される。上記のフィルタ54は、前述した無効電力変動成分ΔQ’と同じ周波数成分を通過させる特性を持つ。
【0030】
フィルタ54から出力された変動成分ΔQは、比較手段55の一方の入力端に信号Aとして入力される。また、無効電力変動成分ΔQ’は、配電系統20において実際に検出されるまでの時間遅れが遅れ調整手段57により調整され、比較手段55の他方の入力端に信号Bとして入力される。
【0031】
比較手段55は信号A,Bを比較し、A=Bであれば、開閉器31側の変電所11が電源である(順送)と判定する。つまり、検出された無効電力Qに無効電力変動成分ΔQ’と同じ周波数の変動成分ΔQが含まれている時に、開閉器31がON状態であって当該開閉器31側の変電所11が電源であると判定し、その結果を出力する。
また、A≠Bである場合には、無効電力Qから無効電力変動成分ΔQ’と同じ周波数の変動成分ΔQが検出されなかったため、変電所11側の開閉器31がOFF状態、言い換えれば、他方の開閉器32がON状態であって当該開閉器32側の変電所12が電源である(逆送)と判定し、その結果を出力する。
【0032】
なお、配電系統20には負荷や分散電源が接続されており、これらの接続位置によっては変動成分ΔQが電源でない変電所側に流れることがある。すなわち、系統状態が順送であっても、検出される変動成分ΔQの大きさが所定値に達しないためにA≠Bとなり、結果的に逆送と誤認されることもあり得る。
このような事態を防ぐためには、例えば、変動成分ΔQが所定の閾値を超えている場合に、比較手段55が変動成分ΔQによる信号Aを有効と判断して信号Bとの比較に用いると良い。
【0033】
この第1実施形態では、変電所11側の変流器51及び計器用変圧器52により検出した無効電力Qから変動成分ΔQ(信号A)を抽出し、A=Bを順送、A≠Bを逆送と判定しているが、他方の変電所12側に設けた変流器及び計器用変圧器により無効電力Qを検出して変動成分ΔQ(信号A)を抽出し、A=Bを逆送、A≠Bを順送と判定しても良い。
【0034】
前述したように、SVC50から各変電所11,12までの系統インピーダンスは異なり、SVC50の制御パラメータである制御ゲインの最適値は、その逆数に相当する系統インピーダンスによって異なる。
例えば、図1において、順送時の変電所11とSVC50との間の亘長が短い場合、系統インピーダンスは小さいため、SVC50の制御ゲインは大きいことが望ましい。また、図2において、逆送時の変電所12とSVC50との間の亘長が長い場合、系統インピーダンスは大きいため、SVC50の制御ゲインは小さいことが望ましい。
この第1実施形態によれば、開閉器31,32を操作して系統接続(順送,逆送)を切り替えた時にSVC50がこれを判定し、順送または逆送に応じた最適な制御ゲインに切り替えることができる。すなわち、これらの最適な制御ゲインを制御回路のメモリに予め記憶させておき、系統接続の切替時に、自動または手動により所定の制御ゲインをメモリから読み出してSVC50に設定すれば良い。
【0035】
次に、制御ゲインの切替について具体的に説明する。
いわゆるスロープ特性付き電圧制御では、SVCにより補償する無効電力Qと系統電圧Vとの間のスロープ特性に傾き(スロープリアクタンス)を設けて制御の不安定化を防止している。
【0036】
図4は、スロープ特性付き電圧制御型SVCの制御特性を示す図である。
図4から明らかなように、スロープリアクタンスXが大きい場合には、電圧偏差に対する無効電力の変化量が小さいため制御が比較的安定しているが、系統インピーダンスが小さい場合には系統電圧が電圧目標値に近付きにくい。
一方、スロープリアクタンスXが小さい場合には、電圧偏差に対する無効電力の変化量が大きいため、制御がやや不安定になって複数のSVCによる制御動作が干渉しやすくなる反面、系統電圧を電圧目標値に近付け易いという利点がある。
【0037】
従って、前述したように、SVCが順送を判定して系統インピーダンスが小さい場合には、スロープリアクタンスXが小さくなる(制御ゲインが大きくなる)ように制御して系統電圧を電圧目標値に近付き易くし、SVCが逆送を判定して系統インピーダンスが大きい場合には、スロープリアクタンスXが大きくなる(制御ゲインが小さくなる)ように制御することによって無効電力補償を安定的に行うことができる。
【0038】
なお、第1実施形態において、SVC50が配電自動化システム等の外部システムと通信可能である場合には、比較手段55による判定結果に応じて、SVC50に設定する制御パラメータを更新するように外部システムに要求する手段をSVC50の制御回路に備え、外部システムがこの要求に従って制御パラメータを更新するようにしても良い。
【0039】
次に、図5は本発明の第2実施形態に係る無効電力補償システムの概略的な構成図である。
図5において、配電用変電所10と配電系統(母線)20との接続点の両側には、線路21,22がループ状に接続され、線路21,22同士の接続点にSVC50が接続されている。つまり、配電系統20における配電用変電所10の接続点とSVC50との間には、線路21,22が並列に接続されている。また、線路21,22はそれぞれ開閉器31,32を備えており、これらの開閉器31,32は、図1,図2と同様に、一方がONしている時に他方がOFFするように制御される。
【0040】
図5に示す系統構成において、線路21,22の亘長が異なる場合にはそれぞれの系統インピーダンスも異なるので、SVC50の制御パラメータである制御ゲインの最適値も異なってくる。
従って、SVC50に最適な制御パラメータを設定するためには、開閉器31のONにより配電用変電所10が線路21を介してSVC50に接続される場合(便宜的に順送とする)と、開閉器32のONにより配電用変電所10が線路22を介してSVC50に接続される場合(同じく逆送とする)とを判別することが必要になる。
【0041】
そこで、SVC50は、開閉器31,32の何れがONしているか、言い換えれば、線路21側が配電用変電所10に接続されている順送か、或いは、線路22側が配電用変電所10に接続されている逆送かを判別するために、第1実施形態と同様に、所定周波数の変電所方向判定信号ΔS’、例えば無効電力変動成分ΔQ’を生成して線路21または線路22に注入する機能を備えている。
そして、図3に示した制御回路の比較手段55により、線路21または線路22から検出した無効電力Qに無効電力変動成分ΔQ’と同じ周波数の変動成分ΔQが含まれている時に、当該線路側の開閉器がONされていて配電用変電所10までの電路が形成されている(当該線路側が電源である)と判定するものである。
【0042】
これにより、例えば開閉器31,32の間に分散電源(図示せず)が連系され、その発電電力による潮流をSVC50が検出したとしても、無効電力変動成分ΔQ’ が検出された線路側が電源であると判定することによって順送、逆送を誤認するおそれはない。
また、負荷や分散電源の接続位置によっては変動成分ΔQが非電源側の線路の一部に流れることがあり、検出される変動成分ΔQの大きさが所定値に達しない場合には順送、逆送を誤認することもあり得る。これを防止するには、前述したごとく、変動成分ΔQが所定の閾値を超えている場合に、比較手段55が変動成分ΔQによる信号Aを有効と判断して信号Bとの比較に用いるようにしても良い。
更に、SVC50が配電自動化システム等の外部システムと通信可能である場合には、比較手段55による判定結果に応じて、外部システムとの通信によりSVC50に設定する制御パラメータを更新する手段を備えても良い。
【0043】
なお、上記本発明は、特許文献1に記載の分路リアクトル及び調相コンデンサにより構成される他励式SVCにも適用可能であり、また、STATCOM(Static Synchronous Compensator)と呼ばれる自励式SVCに関しても適用することができる。更に、自励式SVC以外の自励式電力変換装置に関しても適用することができる。例えば、分散電源のパワーコンディショナ(PCS)やBTB(Back To Back)装置などは、通常の有効電力出力の制限に加えて、無効電力を供給する能力を持ち、SVC機能を制御に組み込むことができるためである。
【符号の説明】
【0044】
10,11,12:配電用変電所
20:配電系統
21,22:線路
31,32:開閉器
50:静止型無効電力補償装置(SVC)
51:変流器
52:計器用変圧器
53:無効電力検出手段
54:フィルタ
55:比較手段
56:加算手段
57:遅れ調整手段
60:負荷
70:分散電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8