(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像形成装置、給紙機構劣化判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20221220BHJP
B65H 7/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H7/12
(21)【出願番号】P 2018198938
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】日高 真聡
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-085671(JP,A)
【文献】特開2001-341894(JP,A)
【文献】特開2010-208736(JP,A)
【文献】特開2015-206877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートを格納するトレイと、
前記トレイに格納されたシートを給紙する給紙手段と、
前記給紙手段によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定手段と、
前記速度測定手段によって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定手段と、
前記連れ送り判定手段によって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合、該搬送速度を補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された搬送速度に基づき、前記給紙手段の摩耗状態を検知する摩耗検知手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記給紙手段は、
シートの上面に当接して該シートを下流側に搬送する給紙ローラと、
前記給紙ローラに対向して配置され、前記給紙ローラと協働して最上面のシートと共に連れ送りされるシートを分離する捌きローラと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記給紙手段は、さらに、
前記トレイに格納されたシートをピックアップするピックアップローラ
を備え、
前記給紙ローラは、前記ピックアップローラの下流側に位置し、前記ピックアップローラによって搬送されるシートを更に下流側に搬送することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記連れ送り判定手段は、前記給紙手段によって次のシートの給紙が開始された後、当該次のシートが前記給紙手段の下流側の所定位置を通過するまでの時間が所定時間未満である場合、前記速度測定手段によって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けていると判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記摩耗検知手段は、前記給紙手段によって所定枚数のシートが給紙された後、前記所定枚数のシートの搬送速度の平均値を算出し、該平均値に基づいて前記給紙手段の摩耗状態を検知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記補正手段は、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記補正手段は、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を所定の記憶手段から読み出して取得し、前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記給紙手段による給紙枚数をカウントする給紙枚数カウント手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記給紙枚数カウント手段によって所定の給紙枚数がカウントされた場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記給紙手段によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記シート種類検知手段によってシートの種類の変更が検知された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記給紙手段によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記シート種類検知手段によってシートの種類の変更が検知されたとき、前記給紙枚数カウント手段によってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該種類のシートについて以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記給紙手段に対してシートの給紙速度を設定する速度設定手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記速度設定手段によって前記給紙速度の設定が変更された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記給紙手段に対してシートの給紙速度を設定する速度設定手段、
を更に備え、
前記補正手段は、前記速度設定手段によってシートの給紙速度の設定が変更されたとき、前記給紙枚数カウント手段によってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該給紙速度について以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項13】
シートを給紙する給紙機構を備えた画像形成装置において前記給紙機構の劣化を判定する給紙機構劣化判定方法であって、
前記給紙機構によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定ステップと、
前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定ステップと、
前記連れ送り判定ステップによって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合に該搬送速度を補正する補正ステップと、
前記補正ステップによって補正された搬送速度に基づき、前記給紙機構の摩耗状態を検知する摩耗検知ステップと、
を有することを特徴とする給紙機構劣化判定方法。
【請求項14】
前記連れ送り判定ステップは、前記給紙機構によって次のシートの給紙が開始された後、当該次のシートが前記給紙機構の下流側の所定位置を通過するまでの時間が所定時間未満である場合、前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けていると判定することを特徴とする請求項13に記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項15】
前記摩耗検知ステップは、前記給紙機構によって所定枚数のシートが給紙された後、前記所定枚数のシートの搬送速度の平均値を算出し、該平均値に基づいて前記給紙機構の摩耗状態を検知することを特徴とする請求項13又は14に記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項16】
前記補正ステップは、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項17】
前記補正ステップは、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を所定の記憶手段から読み出して取得し、前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項18】
前記給紙機構による給紙枚数をカウントする給紙枚数カウントステップ、
を更に有し、
前記補正ステップは、前記給紙枚数カウントステップによって所定の給紙枚数がカウントされた場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項16又は17に記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項19】
前記給紙機構によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知ステップ、
を更に有し、
前記補正ステップは、前記シート種類検知ステップによってシートの種類の変更が検知された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項20】
前記給紙機構によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知ステップ、
を更に有し、
前記補正ステップは、前記シート種類検知ステップによってシートの種類の変更が検知されたとき、前記給紙枚数カウントステップによってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該種類のシートについて以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項18に記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項21】
前記給紙機構に対してシートの給紙速度を設定する速度設定ステップ、
を更に有し、
前記補正ステップは、前記速度設定ステップによって前記給紙速度の設定が変更された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項22】
前記給紙機構に対してシートの給紙速度を設定する速度設定ステップ、
を更に有し、
前記補正ステップは、前記速度設定ステップによってシートの給紙速度の設定が変更されたとき、前記給紙枚数カウントステップによってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該給紙速度について以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする請求項18に記載の給紙機構劣化判定方法。
【請求項23】
シートを給紙する給紙機構を備えた画像形成装置において実行されるプログラムであって、前記画像形成装置に、
前記給紙機構によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定ステップと、
前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定ステップと、
前記連れ送り判定ステップによって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合に該搬送速度を補正する補正ステップと、
前記補正ステップによって補正された搬送速度に基づき、前記給紙機構の摩耗状態を検知する摩耗検知ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、給紙機構劣化判定方法及びプログラムに関し、特に、シートを給紙する給紙機構の摩耗劣化を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやMFP(Multifunction Peripherals)などの画像形成装置は、印刷用紙などのシートを給紙する給紙機構を備えている。給紙機構は、シートを送り出すための給紙ローラを備えており、その給紙ローラを所定方向に回転させることでシートを所定の搬送路に向かって給紙する。画像形成装置において給紙動作が繰り返し行われると、給紙ローラなどが摩耗劣化していき、給紙機構によるシートの搬送能力が低下する。これを放置すると、給紙時にジャムが発生しやすくなるという問題が発生する。
【0003】
一方、従来、給紙機構の摩耗劣化を検知できるようにした画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1)。この従来の画像形成装置は、シートの搬送路の所定位置にセンサーを設け、シートの給紙を開始してからそのシートがセンサー位置を通過するまでの給送時間を測定することで給紙機構の摩耗劣化を検知するようにしている。
【0004】
ところで、給紙機構は、一般に、ピックアップローラと、給紙ローラと、捌きローラとを備えて構成される。ピックアップローラは、給紙トレイに格納されるシートの上面に当接しており、給紙開始と共に所定方向に回転してシートを送り出す。このピックアップローラは、必ずしも1枚のシートだけを送り出すのはなく、複数枚のシートを同時に下流側へ送り出してしまうことがある。このようにピックアップローラによって複数枚のシートが同時に送り出されることを「連れ送り」と言う。
【0005】
給紙ローラと捌きローラは、そのような連れ送りが発生した場合に複数枚のシートを分離する機能を有している。すなわち、給紙ローラと捌きローラは、ピックアップローラの下流側においてシートの搬送路を挟んで互いに対向するように配置され、連れ送りされる複数枚のシートのうちの最上面に位置する1枚目のシートだけを下流側の搬送路へ給紙し、2枚目以降のシートの進行を捌きローラが停止させるようにしている。
【0006】
このように連れ送りが発生した場合に2枚目以降のシートを捌きローラの位置で停止させる給紙機構の場合、従来技術のようにシートの給紙を開始してからシートがセンサー位置を通過するまでの給送時間を測定するだけでは正確に給紙機構の摩耗劣化を検知することができない。なぜなら、連れ送りが発生した場合と連れ送りが発生していない場合とで給紙ローラから下流側の搬送路に送り出されるシートの速度が変わるからである。
【0007】
連れ送りが発生していない場合、ピックアップローラによって送り出された1枚のシートの上面が給紙ローラに接し、下面が捌きローラに接する状態となる。このとき、シートには、捌きローラから下流側への進行を停止させようとする抵抗(摩擦力)が作用するものの、回転駆動される給紙ローラからその抵抗よりも大きな搬送力が作用する。そのため、シートは、捌きローラから抵抗に抗しつつ、給紙ローラからの搬送力によって下流側の搬送路へ送り出される。
【0008】
これに対し、例えば2枚のシートの連れ送りが発生した場合、ピックアップローラによって送り出された1枚目のシートの上面が給紙ローラに接し、2枚目のシートの下面が捌きローラに接する状態となり、2枚目のシートに捌きローラからの抵抗だけが作用するので2枚目のシートを下流側へ進行させない状態となる。このとき、1枚目のシートには給紙ローラによる搬送力だけが作用し、捌きローラからの抵抗を受けない。そのため、連れ送りが発生していない場合と比較すると、1枚目のシートに作用する搬送力が大きくなり、給紙ローラから下流側に送り出されるときのシートの速度が速くなるのである。
【0009】
このように給紙開始時に連れ送りが発生している場合と発生していない場合とで給紙ローラの下流側におけるシートの速度が変わるため、従来技術のように単にシートがセンサー位置を通過するまでの給送時間を測定するだけでは給紙機構の摩耗劣化を正確に検知することができないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、給紙時に連れ送りが発生しているか否かを考慮して測定値を補正することにより、従来よりも正確に給紙機構の摩耗劣化を判定できるようにした画像形成装置、給紙機構劣化判定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、画像形成装置であって、複数枚のシートを格納するトレイと、前記トレイに格納されたシートを給紙する給紙手段と、前記給紙手段によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定手段と、前記速度測定手段によって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定手段と、前記連れ送り判定手段によって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合、該搬送速度を補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された搬送速度に基づき、前記給紙手段の摩耗状態を検知する摩耗検知手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記給紙手段は、シートの上面に当接して該シートを下流側に搬送する給紙ローラと、前記給紙ローラに対向して配置され、前記給紙ローラと協働して最上面のシートと共に連れ送りされるシートを分離する捌きローラと、を備えることを特徴とする構成である。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、前記給紙手段は、さらに、前記トレイに格納されたシートをピックアップするピックアップローラを備え、前記給紙ローラは、前記ピックアップローラの下流側に位置し、前記ピックアップローラによって搬送されるシートを更に下流側に搬送することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記連れ送り判定手段は、前記給紙手段によって次のシートの給紙が開始された後、当該次のシートが前記給紙手段の下流側の所定位置を通過するまでの時間が所定時間未満である場合、前記速度測定手段によって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けていると判定することを特徴とする構成である。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記摩耗検知手段は、前記給紙手段によって所定枚数のシートが給紙された後、前記所定枚数のシートの搬送速度の平均値を算出し、該平均値に基づいて前記給紙手段の摩耗状態を検知することを特徴とする構成である。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記補正手段は、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記補正手段は、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を所定の記憶手段から読み出して取得し、前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に記載の画像形成装置において、前記給紙手段による給紙枚数をカウントする給紙枚数カウント手段、を更に備え、前記補正手段は、前記給紙枚数カウント手段によって所定の給紙枚数がカウントされた場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の画像形成装置において、前記給紙手段によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知手段、を更に備え、前記補正手段は、前記シート種類検知手段によってシートの種類の変更が検知された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の画像形成装置において、前記給紙手段によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知手段、を更に備え、前記補正手段は、前記シート種類検知手段によってシートの種類の変更が検知されたとき、前記給紙枚数カウント手段によってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該種類のシートについて以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項6乃至9のいずれかに記載の画像形成装置において、前記給紙手段に対してシートの給紙速度を設定する速度設定手段、を更に備え、前記補正手段は、前記速度設定手段によって前記給紙速度の設定が変更された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0023】
請求項12に係る発明は、請求項8に記載の画像形成装置において、前記給紙手段に対してシートの給紙速度を設定する速度設定手段、を更に備え、前記補正手段は、前記速度設定手段によってシートの給紙速度の設定が変更されたとき、前記給紙枚数カウント手段によってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該給紙速度について以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定手段によって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0024】
請求項13に係る発明は、シートを給紙する給紙機構を備えた画像形成装置において前記給紙機構の劣化を判定する給紙機構劣化判定方法であって、前記給紙機構によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定ステップと、前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定ステップと、前記連れ送り判定ステップによって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合に該搬送速度を補正する補正ステップと、前記補正ステップによって補正された搬送速度に基づき、前記給紙機構の摩耗状態を検知する摩耗検知ステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0025】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載の給紙機構劣化判定方法において、前記連れ送り判定ステップは、前記給紙機構によって次のシートの給紙が開始された後、当該次のシートが前記給紙機構の下流側の所定位置を通過するまでの時間が所定時間未満である場合、前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けていると判定することを特徴とする構成である。
【0026】
請求項15に係る発明は、請求項13又は14に記載の給紙機構劣化判定方法において、前記摩耗検知ステップは、前記給紙機構によって所定枚数のシートが給紙された後、前記所定枚数のシートの搬送速度の平均値を算出し、該平均値に基づいて前記給紙機構の摩耗状態を検知することを特徴とする構成である。
【0027】
請求項16に係る発明は、請求項13乃至15のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法において、前記補正ステップは、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を算出し、前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0028】
請求項17に係る発明は、請求項13乃至15のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法において、前記補正ステップは、次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度を次に給紙されるシートの影響を受けていない搬送速度に補正するための補正係数を所定の記憶手段から読み出して取得し、前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0029】
請求項18に係る発明は、請求項16又は17に記載の給紙機構劣化判定方法において、前記給紙機構による給紙枚数をカウントする給紙枚数カウントステップ、を更に有し、前記補正ステップは、前記給紙枚数カウントステップによって所定の給紙枚数がカウントされた場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0030】
請求項19に係る発明は、請求項16乃至18のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法において、前記給紙機構によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知ステップ、を更に有し、前記補正ステップは、前記シート種類検知ステップによってシートの種類の変更が検知された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0031】
請求項20に係る発明は、請求項18に記載の給紙機構劣化判定方法において、前記給紙機構によって給紙されるシートの種類を検知するシート種類検知ステップ、を更に有し、前記補正ステップは、前記シート種類検知ステップによってシートの種類の変更が検知されたとき、前記給紙枚数カウントステップによってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該種類のシートについて以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0032】
請求項21に係る発明は、請求項16乃至19のいずれかに記載の給紙機構劣化判定方法において、前記給紙機構に対してシートの給紙速度を設定する速度設定ステップ、を更に有し、前記補正ステップは、前記速度設定ステップによって前記給紙速度の設定が変更された場合に、前記補正係数を更新することを特徴とする構成である。
【0033】
請求項22に係る発明は、請求項18に記載の給紙機構劣化判定方法において、前記給紙機構に対してシートの給紙速度を設定する速度設定ステップ、を更に有し、前記補正ステップは、前記速度設定ステップによってシートの給紙速度の設定が変更されたとき、前記給紙枚数カウントステップによってカウントされる給紙枚数が所定の給紙枚数に満たない場合には、当該給紙速度について以前に用いられていた前記補正係数を用いて前記速度測定ステップによって測定された搬送速度を補正することを特徴とする構成である。
【0034】
請求項23に係る発明は、シートを給紙する給紙機構を備えた画像形成装置において実行されるプログラムであって、前記画像形成装置に、前記給紙機構によって給紙されるシートの搬送速度を測定する速度測定ステップと、前記速度測定ステップによって測定された搬送速度が次に給紙されるシートの影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定ステップと、前記連れ送り判定ステップによって次に給紙されるシートの影響を受けた搬送速度であると判定された場合に該搬送速度を補正する補正ステップと、前記補正ステップによって補正された搬送速度に基づき、前記給紙機構の摩耗状態を検知する摩耗検知ステップと、を実行させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シートの給紙時に連れ送りが発生している場合には、連れ送り発生時測定した搬送速度を補正して給紙機構の摩耗状態を判定するため、連れ送りの影響を受けない正確な判定を行うことが可能であり、従来よりも正確に給紙機構の摩耗劣化状態を検知することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】給紙ローラ及び捌きローラから下流側へ送り出されるシートを示す図である。
【
図4】コントローラのハードウェア構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】コントローラにおいて行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】時間測定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】連れ送り判定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】補正係数算出処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】摩耗検知処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】補正係数リセット処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】補正係数に関する情報の一例を示す図である。
【
図13】給紙枚数と通紙時間の平均値との関係を示す図である。
【
図14】補正係数に関する情報の他の例を示す図である。
【
図15】第2実施形態におけるコントローラのハードウェア構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図17】第2実施形態における連れ送り判定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図18】シートの種類ごとに補正係数が登録された補正係数登録情報の一例を示す図である。
【
図19】シートの種類と搬送速度との関係の例を示す図である。
【
図20】搬送速度と補正係数とを関連付けた情報の一例を示す図である。
【
図21】搬送速度ごとに補正係数が登録された補正係数登録情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の概念的構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、タンデム方式でカラー画像を形成することが可能なプリンタ装置である。画像形成装置1は、装置本体の内部に、給紙搬送部2と、画像形成部3と、定着部4とを備えており、印刷用紙などのシート9にカラー画像又はモノクロ画像を形成し、装置本体の上部に設けられた排出口5から排紙トレイ6上にシート9を排出する構成である。また画像形成装置1は、装置本体の内部にコントローラ7を備えており、このコントローラ7が給紙搬送部2、画像形成部3及び定着部4といった各部の動作を制御する。
【0039】
給紙搬送部2は、給紙トレイ8と、給紙機構2a、搬送路11と、レジストローラ15と、二次転写ローラ25とを有している。
【0040】
給紙トレイ8は、印刷用紙などの複数枚のシート9を格納する容器である。給紙トレイ8に格納できるシート9は、多種多様であり、例えば薄紙、厚紙、普通紙、再生紙、コート紙、OHPフィルムなどがある。尚、
図1では、画像形成装置1に1つの給紙トレイ8が設けられる構成例を示しているが、これに限られるものではなく、複数の給紙トレイ8が多段に配置される構成であっても構わない。
【0041】
給紙機構2aは、給紙トレイ8に格納されているシート9をピックアップして搬送路11へ送り出す機構である。給紙機構2aの詳細な構成については後述する。搬送路11は、画像形成装置1がシート9に対して画像形成を行う際にシート9を矢印F1方向へ搬送するための経路である。例えば、給紙搬送部2は、搬送路11に沿って搬送中のシート9の先端がレジストローラ15に到達すると、そこでシート9を一旦停止させる。そして画像形成部3において中間転写ベルト24に形成されるトナー像が二次転写ローラ25の位置に到達するタイミングに合わせてレジストローラ15を駆動し、シート9を二次転写ローラ25の位置へ搬送する。これにより、シート9は、二次転写ローラ25の位置を通過するときにその表面にトナー像が転写される。その後、シート9は、定着部4に導かれてトナー像の定着処理が施され、排出口5から排出される。尚、
図1に示す搬送路11は、シート9の表面のみに画像形成を行う搬送路を示しているが、これに限られない。すなわち、搬送路11は、シート9の裏面にも画像形成を行うためのシート反転路をさらに備える構成であっても構わない。
【0042】
画像形成部3は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のトナー像を形成し、二次転写ローラ25の位置を通過するシート9に対してそれら4色のトナー像を同時に転写することが可能な構成である。画像形成部3は、露光ユニット20と、各色のトナーごとに設けられる現像ユニット21と、各現像ユニット21に対応して設けられる一次転写ローラ22と、中間転写ベルト24と、各色のトナーボトル23とを備えている。4つの現像ユニット21Y,21M,21C,21Kは中間転写ベルト24の下方位置に設けられており、露光ユニット20はそれら4つの現像ユニット21Y,21M,21C,21Kのさらに下方位置に設けられている。トナーボトル23Y,23M,23C,23Kは、4つの現像ユニット21Y,21M,21C,21Kのそれぞれに対して各色のトナーを供給する。
【0043】
露光ユニット20は、各現像ユニット21Y,21M,21C,21Kに設けられる像担持体(感光体ドラム)を露光することにより、各現像ユニット21Y,21M,21C,21Kの像担持体に潜像を形成する。各現像ユニット21Y,21M,21C,21Kは、その潜像をトナーで現像することにより、像担持体の表面にトナー像を形成する。そして各現像ユニット21Y,21M,21C,21Kは、矢印F2方向に循環移動する中間転写ベルト24に対して各色のトナー像を順次重畳させながら一次転写していく。したがって、中間転写ベルト24が最下流の現像ユニット21Kの位置を通過すると、中間転写ベルト24の表面には、4色のトナー像が重畳されたカラー画像が形成される。そして中間転写ベルト24に形成されるトナー像は、二次転写ローラ25と対向する位置を通過するときに、給紙搬送部2によって搬送されるシート9と接触し、シート9の表面に二次転写される。
【0044】
定着部4は、加熱ローラ4aと加圧ローラ4bとを備えており、トナー像が転写されたシート9を加熱ローラ4aと加圧ローラ4bとの間に通すことで、シート9に対する加熱処理及び加圧処理を施し、トナー像をシート9に定着させる。加熱ローラ4aにはヒーター4cが設けられており、ヒーター4cの加熱によって加熱ローラ4aが昇温する。このような定着部4においてトナー像が定着したシート9は、その後、搬送路11を通って排出口5から排紙トレイ6上に排出される。
【0045】
次に給紙機構2aの詳細について説明する。
図2は、給紙機構2aを拡大して示す図である。給紙機構2aは、
図2に示すように、シート9の搬送路11に沿って、ピックアップローラ10と、給紙ローラ12、捌きローラ13と、搬送ローラ14と、給紙センサー16と、通紙センサー17とを備えている。
【0046】
ピックアップローラ10は、給紙トレイ8に格納されているシート9の束の上部からシート9を取り出して搬送路11へ向けて送り出すローラである。例えばピックアップローラ10は、シート9の束の最上面に位置するシート9と接触しており、図示しないモータによって
図2の矢印で示す方向(反時計回り方向)へ回転駆動される。すなわち、ピックアップローラ10は、画像形成装置1において給紙動作が開始されることに伴って回転駆動され、最上面に位置するシート9を下流側へ送り出す。このとき、最上面に位置する1枚目のシート9に後続する2枚目のシート9が1枚目のシート9と共に下流側に向かって連れ送りされることがある。
【0047】
給紙ローラ12及び捌きローラ13は、ピックアップローラ10の下流側に配置されている。給紙ローラ12及び捌きローラ13は、互いに対を成すローラであり、ピックアップローラ10によって2枚以上のシート9が連れ送りされた場合に、互いに協働して最上面の1枚目のシート9だけを分離して下流側へ送り出す機能を有している。すなわち、給紙ローラ12及び捌きローラ13は、搬送路11を挟んで互いに対向するように配置され、ピックアップローラ10によって給紙トレイ8から同時に送り出される複数枚のシート9のうち、2枚目以降のシート9の進行を停止させると共に、最上面の1枚目のシート9だけを下流側へ搬送する。
【0048】
給紙ローラ12は、搬送路11の上側に位置し、ピックアップローラ10と同様に図示しないモータによって
図2の矢印で示す方向(反時計回り方向)へ回転駆動される。捌きローラ13は、搬送路11の下側に位置し、給紙ローラ12の回転によって従動回転する。ただし、捌きローラ13は、その回転軸が軸受に対して一定の摩擦力を生じるように構成されている。そのため、給紙ローラ12が捌きローラ13を従動回転させるときにはその摩擦力に抗して捌きローラ13を従動回転させることになる。
【0049】
搬送路11は、給紙ローラ12及び捌きローラ13から横方向に送り出されるシート9を受け入れると、そのシート9を縦方向に搬送する。搬送ローラ14は、その縦方向の搬送路11に設けられる。搬送ローラ14は、搬送路11を挟んで配置される一対のローラによって構成され、図示しないモータによって回転駆動されることによりシート9を上方向に搬送する。
【0050】
給紙センサー16は、給紙ローラ12及び捌きローラ13の下流側に設けられる。給紙センサー16は、給紙ローラ12の下流側に送り出されるシート9を所定位置で検知するセンサーである。
【0051】
通紙センサー17は、給紙センサー16のさらに下流側に設けられる。本実施形態では、通紙センサー17は、搬送ローラ14の下流側であって、上述したレジストローラ15の上流側の所定位置に設けられる。通紙センサー17は、給紙センサー16と同様に、給紙ローラ12及び搬送ローラ14によって下流側に送り出されるシート9を所定位置で検知するセンサーである。
【0052】
次に給紙ローラ12及び捌きローラ13から下流側へ送り出されるシート9について説明する。
図3は、給紙ローラ12及び捌きローラ13から下流側へ送り出されるシート9を示す図である。まず
図3(a)は、連れ送りが発生していない場合を示している。
図3(a)に示すように、ピックアップローラ10によって1枚のシート9が送り出された場合、給紙ローラ12と捌きローラ13は、その1枚のシート9を挟み込んで下流側へ送り出す。給紙ローラ12は、シート9の上面に接触してR方向に回転することにより、シート9に対して下流側に向かう搬送力を作用させ、シート9を下流側へ搬送する。このとき、捌きローラ13は、シート9の裏面に接触しており、シート9に対して摩擦力Faを作用させる。ただし、給紙ローラ12による搬送力は捌きローラ13の摩擦力Faよりも大きいため、捌きローラ13は、シート9の通過に伴って従動回転することになる。このようにして給紙ローラ12の下流側に送り出されるシート9の搬送速度はV1となる。
【0053】
次に
図3(b)は、連れ送りが発生している場合を示している。
図3(b)に示すように、ピックアップローラ10によって2枚以上のシート9が連れ送りされた場合、給紙ローラ12は、最上面の1枚目のシート9の上面に接触した状態となり、1枚目のシート9だけを下流側へ送り出す。一方、2枚目以降のシート9は、下面が捌きローラ13に接触することにより、捌きローラ13からの摩擦力Faを受けて停止する。このとき、1枚目のシート9は、給紙ローラ12からの搬送力のみを受けて下流側へ搬送され、捌きローラ13からの摩擦力Faの影響を受けない。また、1枚目のシート9の下面は2枚目のシートの上面と接しているものの、1枚目のシート9が2枚目のシート9から受ける摩擦力は極めて小さく、捌きローラ13の摩擦力Faと比較すると無視できる程度である。したがって、連れ送りが発生しているときに給紙ローラ12の下流側へ送り出されるシート9の搬送速度V2は、連れ送りが発生していないときの搬送速度V1と比較すると、大きくなる。
【0054】
上記のように連れ送りが発生している場合と、そうでない場合とで、給紙ローラ12の下流側に送り出されるシート9の搬送速度V1が変わる。そのため、本実施形態のコントローラ7は、シート9の給紙時に連れ送りが発生したか否かを検知し、その検知結果に基づいて給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定するための測定値を補正することで、従来よりも正確に給紙機構2aの摩耗劣化を検知できるようにしている。以下、そのようなコントローラ7について詳しく説明する。
【0055】
図4は、コントローラ7のハードウェア構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、コントローラ7は、主として、CPU30と、ROM31と、RAM32とを備えて構成される。このコントローラ7は、ユーザーが各種の設定操作を行うことができる操作パネル33に接続されており、ユーザーの操作に基づいて各種の設定を行うことができる。また、コントローラ7には、上述した給紙搬送部2、画像形成部3及び定着部4のそれぞれに対して信号の入出力を行うための入出力インタフェース34と、LAN(Local Area Network)などのネットワークに接続されている外部機器と通信を行うための通信インタフェース35と、上述した給紙センサー16と、上述した通紙センサー17とが接続されている。
【0056】
CPU30は、プログラムを実行する演算処理ユニットである。ROM31は、不揮発性のメモリであり、予めプログラム36を記憶している。RAM32は、例えば書き換え可能なメモリであり、CPU30が一時的なデータなどを記憶しておくために利用されるメモリである。例えばRAM32には、給紙枚数カウント値38が記憶される。給紙枚数カウント値38は、給紙機構2aが給紙したシート9の枚数をカウントした値である。例えば、給紙枚数カウント値38は、給紙機構2aを構成する部品が新品に交換されると、0にリセットされる。また、RAM32には、一時保存領域60と、第1データ記憶領域61と、第2データ記憶領域62とが設けられる。尚、RAM32には、この他にも様々な情報を記憶することができる。
【0057】
CPU30は、ROM31からプログラム36を読み出して実行することにより、ジョブ制御部37として機能する。ジョブ制御部37は、画像形成装置1における印刷ジョブの実行を制御するものである。例えば通信インタフェース35を介して印刷ジョブを受信すると、ジョブ制御部37は、その印刷ジョブの実行を制御する。すなわち、ジョブ制御部37は、入出力インタフェース34を介して給紙搬送部2、画像形成部3及び定着部4の動作を制御し、受信した印刷ジョブに基づく印刷出力を行う。このジョブ制御部37は、給紙制御部40を備えている。
【0058】
給紙制御部40は、印刷ジョブの実行に伴って給紙機構2aの動作を制御することにより、給紙トレイ8に格納されているシート9を搬送路11へ搬送させる制御部である。具体的説明すると、給紙制御部40は、ジョブ制御部37によって給紙タイミングであることが検知されると、ピックアップローラ10及び給紙ローラ12を回転させるモータを駆動し、給紙トレイ8から搬送路11へシート9を供給する。例えば、印刷ジョブが複数枚のシート9に対して画像形成を連続的に行うジョブである場合、給紙制御部40は、給紙機構2aを所定の時間間隔で断続的に駆動することにより、給紙トレイ8から複数枚のシート9を連続給紙させる。これにより、複数枚のシート9に対する画像形成が順次行われるようになる。このような給紙制御部40は、給紙枚数カウント部41と、シート種類検知部42と、速度設定部43とを備えている。
【0059】
給紙枚数カウント部41は、給紙機構2aによる給紙枚数をカウントする処理部である。給紙枚数カウント部41は、給紙機構2aが駆動され、1枚のシート9が搬送路11へ給紙される度に、カウント値に1を加算し、RAM32の給紙枚数カウント値38を更新する。また、給紙枚数カウント部41は、給紙機構2aの部品が交換されると、カウント値を0に初期化し、RAM32の給紙枚数カウント値38を更新する。したがって、給紙枚数カウント値38には、現在実装されている給紙機構2aによって給紙されたシート9の合計枚数が記録されることになる。
【0060】
シート種類検知部42は、給紙機構2aによって給紙されるシート9の種類を検知する処理部である。例えば、ユーザーは、給紙トレイ8にシート9を格納すると、操作パネル33に対してシート9の種類を設定する操作を行う。操作パネル33には複数種類のうちから一の種類を選択するメニュー画面が表示され、ユーザーは、そのメニュー画面に対して選択操作を行うことにより、給紙トレイ8に格納したシート9の種類を設定する。シート種類検知部42は、ユーザーによって設定されたシート9の種類を読み出し、印刷ジョブの実行開始時に給紙対象となるシート9の種類を検知する。
【0061】
速度設定部43は、印刷ジョブの実行開始時に給紙機構2aによるシート9の搬送速度(給紙速度)を設定する処理部である。例えば、速度設定部43は、給紙対象であるシート9がどのような種類であっても給紙機構2aによるシート9の搬送速度を常に一定の速度に設定するようにしても構わない。ただし、その場合は、シート9の種類が仮に厚紙であってもジャムを発生させないことが必要である。そのため、速度設定部43は、厚紙に対応できるようにするため、シート9の搬送速度を比較的遅い速度に設定する。
【0062】
また、速度設定部43は、シート種類検知部42によって検知されるシート9の種類に応じた搬送速度を設定するようにしても構わない。この場合、速度設定部43は、シート種類検知部42によって検知されたシート9の種類に最適な搬送速度を設定することができる。例えば、シート9の種類が厚紙である場合、速度設定部43は、比較的遅い搬送速度を設定する。これに対し、シート9の種類が普通紙である場合、速度設定部43は、比較的速い搬送速度を設定する。このようにシート9の種類に応じた最適な搬送速度を設定することにより、シート9の種類に応じて印刷ジョブ実行時のスループットを最大限に向上させることができるという利点がある。
【0063】
そして給紙制御部40は、印刷ジョブの実行開始に伴い、速度設定部43によって設定された搬送速度でシート9が搬送されるように給紙機構2aの動作を制御する。また、画像形成装置1に複数の給紙トレイ8が設けられており、各給紙トレイ8に種類の異なるシート9が格納されている場合には、印刷ジョブの実行途中でシート9の種類を変更することが可能である。そのような場合、速度設定部43は、印刷ジョブの実行途中でシート9の種類が切り替わるときにシート9の搬送速度も切り替えるようにしても良い。
【0064】
またジョブ制御部37は、給紙機構劣化判定部50を備えている。給紙機構劣化判定部50は、給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定する処理部である。給紙機構劣化判定部50は、給紙機構2aによってシート9の給紙が行われる都度、シート9の搬送速度を測定し、その搬送速度に基づいて給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定する。すなわち、シート9の給紙動作が繰り返し行われると、ピックアップローラ10、給紙ローラ12及び捌きローラ13が次第に摩耗劣化していく。給紙機構2aの摩耗劣化が進行すると、給紙機構2aによって送り出されるシート9の搬送速度が次第に低下する。そのため、給紙機構劣化判定部50は、給紙ローラ12から下流側に送り出されるシート9の搬送速度を測定し、シート9の搬送速度がどの程度低下したか否かによって給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定するようにしている。このような給紙機構劣化判定部50は、速度測定部51と、連れ送り判定部52と、補正部53と、摩耗検知部54とを備えている。
【0065】
速度測定部51は、給紙機構2aによるシート9の給紙が行われることに伴い、そのシート9の搬送速度を測定する処理部である。例えば、シート9の搬送速度は、搬送路11に沿って設けられる2点間の距離をシート9が移動するのに要する時間と相関がある。そのため、本実施形態の速度測定部51は、便宜上、搬送路11における2点間の距離をシート9が移動するのに要する時間(通紙時間)を測定するように構成される。すなわち、速度測定部51は、給紙機構2aによる給紙が開始された後、給紙ローラ12によって搬送路11の下流側へ送り出されるシート9の先端が給紙センサー16によって検知されてから通紙センサー17によって検知されるまでの通紙時間を測定する。搬送路11における給紙センサー16の位置と通紙センサー17の位置との間の距離が既知であり、しかもその距離は変動することがないため、シート9がその距離を移動するのに要する通紙時間を測定することは、シート9の搬送速度を測定することと等価である。そのため、本実施形態では、シート9の搬送速度に代えて、シート9の通紙時間を測定する。
【0066】
ところで、上述したようにピックアップローラ10によって連れ送りが発生した場合に給紙ローラ12から下流側に送り出されるシート9の搬送速度は、連れ送りが発生していない場合の搬送速度よりも速くなる。そのため、仮に給紙機構2aが摩耗劣化している場合であっても連れ送りが発生すれば、そのときの搬送速度は、正常値に近い搬送速度となる。つまり、ピックアップローラ10によって連れ送りが発生すると、速度測定部51によって測定される通紙時間は、連れ送りが発生しない場合に比較して短くなり、給紙機構2aの摩耗劣化状態を正確に検知することができなくなる。
【0067】
そこで給紙機構劣化判定部50は、連れ送り判定部52と補正部53とを備えており、速度測定部51によってシート9が給紙センサー16の位置から通紙センサー17の位置まで移動するのに要する通紙時間が測定されたときに連れ送りが発生しているか否かを判定し、連れ送りが発生していると判定した場合には、速度測定部51によって測定された通紙時間を連れ送りが発生していない状態と同様の時間に補正するようにしている。
【0068】
連れ送り判定部52は、シート9の連れ送りが発生しているか否かを判定する処理である。連れ送り判定部52は、ピックアップローラ10によって給紙されたシート9が連れ送りされているか否かを判定するため、次のシート9の給紙が開始されたタイミングから給紙センサー16によって次のシート9の先端が検知されるまでの時間(判定時間)を測定する。そして連れ送り判定部52は、給紙開始後に給紙センサー16によって次のシート9の先端が検知されるまでの判定時間に基づいて先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していたか否かを判定する。
【0069】
ピックアップローラ10による連れ送りが発生していない場合、給紙トレイ8から次に送り出されるシート9は、捌きローラ13の位置までは進行しておらず、給紙トレイ8に格納されているシート9の束の位置に留まっている。この状態で次のシート9の給紙を開始すると、次のシート9は、まず給紙ローラ12及び捌きローラ13が設けられた位置まで進行し、その後、給紙ローラ12の下流側の給紙センサー16が設けられた位置まで進行する。そのため、ピックアップローラ10による連れ送りが発生していない場合には、次のシート9の給紙開始後に給紙センサー16が次のシート9の先端を検知するまでには一定の時間を要する。
【0070】
これに対し、ピックアップローラ10によって連れ送りが発生した場合、次に給紙される2枚目のシート9の先端は既に捌きローラ13と接する位置まで到達している。この状態で次のシート9の給紙を開始すると、次のシート9は、給紙ローラ12及び捌きローラ13が設けられた位置から下流側への進行を開始するので、比較的直ぐに給紙センサー16が設けられた位置まで到達する。そのため、ピックアップローラ10による連れ送りが発生している場合、次のシート9の給紙開始後に給紙センサー16が次のシート9の先端を検知するまでの判定時間は、連れ送りが発生していない場合よりも短くなる。
【0071】
そこで、連れ送り判定部52は、次のシート9の給紙を開始してから給紙センサー16によって次のシート9の先端が検知されるまでの判定時間が所定時間(例えば200ms)以上である場合には先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していないと判定する。また、連れ送り判定部52は、次のシート9の給紙を開始してから給紙センサー16によって次のシート9の先端が検知されるまでの判定時間が所定時間未満である場合には、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生しており、先のシート9の給紙時に測定された通紙時間が連れ送りの影響を受けていると判定する。
【0072】
このように連れ送り判定部52は、先のシート9が給紙された後、次のシート9が給紙されるときに先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していたか否かを判定する。つまり、速度測定部51によって測定されるシート9の通紙時間は、次のシート9の給紙が行われるまで補正を行うことが必要であるか否かを決定することができない。そのため、速度測定部51は、シート9の通紙時間を測定すると、RAM32の一時保存領域60に保存するようにしている。
【0073】
図5は、一時保存領域60の一構成例を示す図である。一時保存領域60には、先に給紙されるシート9の通紙時間(第1の通紙時間)を記憶するための記憶領域60aと、次に給紙されるシート9の通紙時間(第2の通紙時間)を記憶するための記憶領域60bと、次のシート9の給紙時に測定される判定時間を記憶するための記憶領域60cとが設けられている。例えば、速度測定部51は、先のシート9の給紙時に測定した通紙時間を記憶領域60aに一時的に保存し、次のシート9の給紙時に測定した通紙時間を記憶領域60bに一時的に保存する。また、連れ送り判定部52は、次のシート9の給紙時に測定した判定時間を記憶領域60cに一時的に保存し、記憶領域60cに保存した判定時間に基づいて先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していたか否かを判定する。
【0074】
連れ送り判定部52は、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していると判定した場合、連れ送り発生時の通紙時間を連れ送りが発生していない状態の通紙時間に補正するための補正係数Cが既に算出されているか否かを判断する。その結果、補正係数Cが未算出である場合、連れ送り判定部52は、一時保存領域60に保存している先のシート9の通紙時間を第1データ記憶領域62へ移動させる。そして第1データ記憶領域62に保存されている通紙時間のデータ数が所定数を超えると、連れ送り判定部52は、補正部53を機能させ、補正部53に補正係数Cを算出させる。これに対し、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していると判定したときに補正係数Cが既に算出されている場合、連れ送り判定部52は、補正部53を機能させ、先のシート9の通紙時間を補正係数Cに基づいて補正する処理を行わせる。
【0075】
また、連れ送り判定部52は、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していないと判定した場合、一時保存領域60に保存している先のシート9の通紙時間を第2データ記憶領域62へ移動させる。この場合、補正部53は機能しない。これにより、第2データ記憶領域62には、連れ送りが発生していない状態の通紙時間が蓄積されていくことになる。
【0076】
次に補正部53について説明する。補正部53は、補正係数Cが未算出であるときに第1データ記憶領域61に保存されている通紙時間のデータ数が所定数を超えると、補正係数Cを算出する。例えば、補正部53は、第1データ記憶領域61に保存されている所定数のデータ(通紙時間)の平均値Aを算出すると共に、その時点で第2データ記憶領域62に保存されているデータ(通紙時間)の平均値Bを算出する。そして補正部53は、平均値Bを平均値Bで除することにより、補正係数C(=B/A)を算出する。このように、連れ送りが発生した場合の複数のデータ(通紙時間)の平均値Aと、連れ送りが発生していない場合の複数のデータ(通紙時間)の平均値Bとを用いて補正係数Cを算出することにより、補正係数Cのばらつきを抑えることができるという利点がある。
【0077】
また補正部53は、補正係数Cが既に算出済みであるときに先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していると判定された場合、一時保存領域60から先のシート9の通紙時間を読み出し、その通紙時間に対して補正係数Cを乗算する。これにより、連れ送り発生時の通紙時間が連れ送りの発生していない状態の通紙時間に補正される。そして補正部53は、補正後の通紙時間を第2データ記憶領域62へ保存する。その結果、第2データ記憶領域62には、補正部53によって補正された通紙時間も蓄積されていくことになる。
【0078】
また補正部53は、補正係数Cを算出した後、給紙機構2aによる給紙枚数が所定枚数を超えると、補正係数Cを破棄する。その後、補正部53は、新たに補正係数Cの算出処理を行う。このように補正部53は、給紙枚数が所定枚数を超える度に補正係数Cを算出し直すことで、一定周期で画像形成装置1の状態を反映させた補正係数Cに更新することができる。
【0079】
次に、摩耗検知部54は、速度測定部51によって測定された通紙時間、又は、補正部53によって補正された通紙時間に基づき、給紙機構2aの摩耗劣化状態を検知する処理部である。すなわち、摩耗検知部54は、第2データ記憶領域62に所定数のデータ(通紙時間)が溜まる度に、給紙機構2aの現在の摩耗劣化状態を検知し、部品の交換時期が近づいているか否かを判断する。その結果、部品の交換時期が近づいている場合、摩耗検知部54は、ユーザーに部品の交換時期を通知する。例えば、摩耗検知部54は、操作パネル44に部品の交換時期を表示することにより、ユーザーに対する通知を行う。また、摩耗検知部54は、通信インタフェース35を介して外部のサーバーに部品の交換時期を通知するようにしても良い。
【0080】
摩耗検知部54は、第2データ記憶領域62のデータに基づいて給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定した後、第2データ記憶領域62のデータを消去するようにしても良い。第2データ記憶領域62のデータを消去しておけば、次回の判定時に古いデータを参照する必要がなくなるため、効率的な判定を行うことができると共に、その判定時における給紙機構2aの摩耗劣化状態を正確に検知することができるようになる。
【0081】
次にコントローラ7において給紙機構2aの摩耗劣化状態を判定するために行われる処理の詳細について説明する。
図6乃至
図11は、コントローラ7において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、コントローラ7のCPU30がプログラム36を実行することによって行われる処理である。またこの処理は、コントローラ7において一定時間ごとに繰り返し行われる処理である。
【0082】
コントローラ7は、
図6のフローチャートに基づく処理を開始すると、まず給紙機構2aによる給紙が行われる給紙タイミングであるか否かを判断する(ステップS1)。給紙タイミングでない場合(ステップS1でNO)、コントローラ7による処理は終了する。また給紙タイミングである場合(ステップS1でYES)、コントローラ7は、給紙枚数カウント値38をカウントアップし(ステップS2)、給紙機構2aを駆動することによりシート9の給紙を開始する(ステップS3)。このとき、コントローラ7は、シート9の種類を検知し、シート9の種類に応じた搬送速度を設定する。コントローラ7は、シート9の給紙を開始すると、時間測定処理を開始する(ステップS4)。
【0083】
図7は、時間測定処理(ステップS4)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、時間測定処理を開始すると、まず先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していたか否かを判定するための判定時間の測定を開始する(ステップS10)。すなわち、判定時間の測定は、給紙機構2aによる給紙動作の開始と同時に開始される。その後、コントローラ7は、給紙センサー16がシート9の先端を検知するまで待機し(ステップS11)、給紙センサー16がシート9の先端を検知すると、判定時間の測定を終了し、その判定時間を一時保存領域60へ保存する(ステップS12)。
【0084】
またコントローラ7は、給紙センサー16がシート9の先端を検知することに伴い、通紙時間の測定を開始する(ステップS13)。その後、コントローラ7は、通紙センサー17がシート9の先端を検知するまで待機し(ステップS14)、通紙センサー17がシート9の先端を検知すると、通紙時間の測定を終了し、その通紙時間を一時保存領域60へ保存する(ステップS15)。以上で、時間測定処理が終了する。
【0085】
図6のフローチャートに戻り、コントローラ7は、時間測定処理が終了すると、次に連れ送り判定処理を実行する(ステップS5)。
【0086】
図8は、連れ送り判定処理(ステップS5)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、連れ送り処理を開始すると、一時保存領域60から判定時間を読み出し(ステップS20)、その判定時間が所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS21)。判定時間が所定時間以上である場合(ステップS21でYES)、先のシート9の給紙時に連れ送りは発生していないことになる。この場合、コントローラ7は、一時保存領域60に記憶されている先のシート9の通紙時間を第2データ記憶領域62へ移動させる(ステップS22)。
【0087】
一方、判定時間が所定時間未満である場合(ステップS21でNO)、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していることになる。この場合、コントローラ7は、補正係数Cが既に算出済みであるか否かを判断する(ステップS23)。その結果、補正係数Cが未算出である場合(ステップS23でNO)、コントローラ7は、一時保存領域60に保存されている先のシート9の通紙時間を第1データ記憶領域61へ移動させ(ステップS24)、第1データ記憶領域61のデータ数N1の値に1を加算する(ステップS25)。
【0088】
その後、コントローラ7は、第1データ記憶領域61のデータ数N1が所定数(
図8では10個)以上となったか否かを判断する(ステップS26)。ここで、データ数N1が所定数未満である場合(ステップS26でNO)、補正係数Cを算出するのに必要なデータ数に満たないため、コントローラ7は、連れ送り判定処理を終了させる。これに対し、データ数N1が所定数以上である場合(ステップS26でYES)、補正係数Cを算出するのに必要なデータ数が揃ったことになるため、コントローラ7は、補正係数算出処理を実行する(ステップS27)。
【0089】
図9は、補正係数算出処理(ステップS27)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、補正係数算出処理を開始すると、まず第1データ記憶領域61に保存されている所定数のデータ(通紙時間)を全て読み出し、所定数のデータの平均値Aを算出する(ステップS40)。この平均値Aは、連れ送りが発生している状態で測定された通紙時間の平均値である。次に、コントローラ7は、その時点で第2データ記憶領域62に保存されているデータ(通紙時間)を全て読み出し、それらのデータの平均値Bを算出する(ステップS41)。この平均値Bは、連れ送りが発生していない状態の通紙時間の平均値である。尚、コントローラ7は、平均値Bを算出するとき、第2データ記憶領域62に保存されているデータの中に、補正されたデータ(通紙時間)が含まれていれば、そのような補正されたデータを除外し、速度測定部51によって実際に測定されたデータ(通紙時間)だけを用いて平均値Bを算出するようにしても良い。そしてコントローラ7は、2つの平均値A,Bに基づいて補正係数Cを算出する(ステップS42)。以上で、補正係数算出処理が終了する。
【0090】
図8のフローチャートに戻り、コントローラ7は、補正係数Cを算出すると、現在の給紙枚数カウント値38を読み出し、そのカウント値を補正係数Cに関連付けてRAM32に保存する(ステップS28)。
図12は、このとき、RAM32に保存される情報の一例を示す図である。コントローラ7は、
図12に示すように、ステップS27で算出した補正係数Cと、補正係数算出時の給紙枚数カウント値とを相互に関連付けて管理する。尚、
図12では、補正係数Cが「1.067」であり、給紙枚数カウント値が「10,003枚」である場合を例示している。
【0091】
その後、コントローラ7は、第1データ記憶領域61をクリアする(ステップS29)。すなわち、コントローラ7は、第1データ記憶領域61に保存されていたデータ(通紙時間)を全て削除する。また、コントローラ7は、第1データ記憶領域61のデータ数N1を0に初期化し、連れ送り判定処理を終了する。このように本実施形態では、補正係数Cが未算出である状態において第1データ記憶領域61に所定数(例えば10個)のデータ(通紙時間)が保存された場合に、それら所定数のデータを用いて補正係数Cを算出するようにしている。
【0092】
一方、ステップS23において補正係数Cが既に算出済みであった場合(ステップS23でYES)、コントローラ7は、RAM32から補正係数Cを読み出すと共に、一時保存領域60から先のシート9の通紙時間を読み出す。そしてコントローラ7は、補正係数Cに基づいて先のシート9の通紙時間を補正する(ステップS31)。これにより、コントローラ7は、速度測定部51によって測定された先のシート9の通紙時間を、連れ送りが発生していない状態で給紙された場合と同様の通紙時間に補正することができる。そしてコントローラ7は、補正後の通紙時間を第2データ記憶領域62へ保存する(ステップS32)。
【0093】
コントローラ7は、ステップS22又はS32において第2データ記憶領域62へ先のシート9の通紙時間を保存すると、第2データ記憶領域62に保存されているデータ数N2の値に1を加算し、データ数N2を更新する(ステップS34)。以上で、連れ送り判定処理が終了する。
【0094】
図6のフローチャートに戻り、コントローラ7は、連れ送り判定処理が終了すると、次に摩耗検知処理を実行する(ステップS6)。
【0095】
図10は、摩耗検知処理(ステップS6)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、この処理を開始すると、まず第2データ記憶領域62のデータ数N2が所定数(
図10では100個)以上となったか否かを判断する(ステップS50)。データ数N2が所定数未満である場合(ステップS50でNO)、摩耗劣化状態を判定するために必要なデータ数に満たないため、コントローラ7は、摩耗検知処理を終了させる。これに対し、データ数N2が所定数以上である場合(ステップS50でYES)、コントローラ7は、摩耗劣化状態を判定するための処理を開始する。
【0096】
コントローラ7は、第2データ記憶領域62に保存されている所定数のデータ(通信時間)を全て読み出し、通紙時間の平均値Dを算出する(ステップS51)。このとき、コントローラ7は、第2データ記憶領域62に保存されているデータの中に、補正されたデータ(通紙時間)が含まれているとしても、そのような補正されたデータを含む全てのデータに基づいて平均値Dを算出する。この平均値Dは、シート9が給紙センサー16の位置から通紙センサー17の位置まで移動するのに要する通紙時間の平均値であって、連れ送りによる影響が取り除かれた通紙時間の平均値である。
【0097】
コントローラ7は、平均値Dを算出すると、その平均値Dを所定値と比較し(ステップS52)、給紙機構2aの部品の交換時期であるか否かを判断する(ステップS53)。給紙機構2aの部品(ピックアップローラ10、給紙ローラ12、捌きローラ13など)は、給紙機構2aによる給紙枚数の増加に伴って摩耗劣化が進行し、やがて交換時期を迎える。コントローラ7は、そのような交換時期を通紙時間の平均値Dに基づいて判断するのである。
【0098】
図13は、給紙枚数と通紙時間の平均値Dとの関係を示す図である。
図13に示すように、通紙時間の平均値Dは、給紙枚数が増えることに伴い、次第に増加していく。そして通紙時間の平均値Dが所定値Vaを超えると給紙機構2aの部品の交換時期となり、さらに平均値Dが所定値Vbを超えると画像形成装置1においてジャムが多発するようになる。部品の交換時期を示す所定値Vaは、ジャムの多発することを示す所定値Vbよりも小さい値に設定されており、画像形成装置1においてジャムが多発し始める前に部品の交換時期であることを検知できるようにしている。そしてコントローラ7は、通紙時間の平均値Dを、所定値Vaと比較し、給紙機構2aの部品の交換時期であるか否かを判断する。
【0099】
部品の交換時期であると判断した場合(ステップS53でYES)、コントローラ7は、交換時期通知処理を行う(ステップS54)。例えば、コントローラ7は、操作パネル33に対して給紙機構2aの部品の交換時期であることを表示することでユーザーに交換時期を通知する。また、この他にも、コントローラ7は、通信インタフェース35を介して外部のサーバーなどに対して部品の交換時期であることを通知するようにしても良い。例えば外部のサーバーが画像形成装置1のメンテナンス作業を行う組織のサーバーである場合、サーバーは、作業員に適切なメンテナンス時期を通知することが可能であり、画像形成装置1においてジャムが多発する前に部品の交換などを行うことができるようになる。一方、未だ部品の交換時期には達していないと判断した場合(ステップS53でNO)、コントローラ7は、ステップS54の処理は行わない。
【0100】
今回の判定タイミングにおいて部品の交換時期であるか否かを判断すると、コントローラ7は、第2データ記憶領域62をクリアし、第2データ記憶領域62のデータを削除する(ステップS55)。そしてコントローラ7は、第2データ記憶領域62のデータ数N2の値を0に初期化する(ステップS56)。これにより、次回の摩耗検知処理は、第2データ記憶領域62に再び所定数(例えば100個)のデータが格納されたときに行われるようになる。以上で、摩耗検知処理が終了する。
【0101】
再び
図6のフローチャートに戻り、コントローラ7は、摩耗検知処理が終了すると、次に補正係数リセット処理を実行する(ステップS7)。すなわち、給紙機構2aによる給紙枚数が増加していくと、給紙機構2aの摩耗劣化が進行していくため、補正係数Cの精度が次第に低下していく。そのため、コントローラ7は、定期的に補正係数Cをリセットするために補正係数リセット処理を実行する。
【0102】
図11は、補正係数リセット処理(ステップS7)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、この処理を開始すると、現在の給紙枚数カウント値38を読み出す(ステップS60)。続いてコントローラ7は、
図12に示したように、RAM32において補正係数Cと関連付けて管理されている、補正係数C算出時の給紙枚数カウント値を読み出す(ステップS61)。そしてコントローラ7は、ステップS60,S61で読み出した2つの値に基づき、補正係数Cを算出してから現在までに給紙されたシート9の給紙枚数Mを算出する(ステップS62)。
【0103】
補正係数C算出後の給紙枚数Mを算出すると、コントローラ7は、その給紙枚数Mが所定数(
図11では5000枚)を超えているか否かを判断する(ステップS63)。給紙枚数Mが所定数を超えていない場合(ステップS63でNO)、コントローラ7は、さらにシート9の種類が変更されたか否かを判断する(ステップS64)。シート9の種類が変更されると、シート9の搬送速度が変わることがあるため、補正係数Cをリセットするためのひとつの条件として判断される。つまり、ステップS63,S64において、コントローラ7は、補正係数Cをリセットするタイミングであるか否かを判断する。補正係数Cをリセットするタイミングである場合(ステップS63でYES、又は、ステップS64でYES)、コントローラ7は、現在の補正係数Cをクリアし、未算出の状態へ戻す(ステップS65)。これにより、上述した連れ送り判定処理(ステップS5、
図8)において再び補正係数Cを算出するための処理が行われるようになる。
【0104】
一方、補正係数Cをリセットするタイミングでない場合(ステップS63でNO、且つ、ステップS64でNO)、コントローラ7は、補正係数Cをクリアすることなく、補正係数リセット処理を終了する。尚、この処理を開始する時点において補正係数Cが算出されていないときは、リセットを行う必要がないため、補正係数リセット処理が終了する。
【0105】
上記のような補正係数リセット処理により補正係数Cのリセットが定期的に行われるため、給紙機構2aの摩耗劣化状態の進行に合わせて最適な補正係数Cにその都度更新することが可能となり、給紙機構2aが劣化していく過程において連れ送りが発生した場合の通紙時間を適切に補正することができるようになる。
【0106】
このように本実施形態の画像形成装置1は、給紙機構2aによって給紙されるシート9の通紙時間を測定する速度測定部51と、速度測定部51によって測定された通紙時間が次に給紙されるシート9の影響を受けたか否かを判定する連れ送り判定部52と、連れ送り判定部52によって次に給紙されるシート9の影響を受けた通紙時間であると判定された場合にその通紙時間を補正する補正部53と、速度測定部51によって測定された通紙時間又は補正部53によって補正された通紙時間に基づき、給紙機構2aの摩耗状態を検知する摩耗検知部54と、を備える構成である。このような構成によれば、シート9の給紙時に連れ送りが発生しているか否かに応じて通紙時間を補正することが可能であり、測定した通紙時間に連れ送りの影響がある場合には、連れ送りの影響のない通紙時間に変換して給紙機構2aの摩耗状態を検知することができる。そのため、本実施形態の画像形成装置1は、従来よりも正確に給紙機構2aの摩耗劣化を判定することができるという利点がある。
【0107】
ところで、上記においては、シート9の種類が変更されたことを検知すると、補正係数Cをリセットする場合を説明した。しかし、これに限られるものではなく、コントローラ7は、シート9の種類ごとに複数の補正係数Cを保持しておくようにしても良い。
図14は、その場合にRAM32に保存される補正係数Cに関する情報の一例を示す図である。コントローラ7は、シート種類検知部42によってシート9の種類の変更が検知される度に、その種類に対応する補正係数Cを算出し、
図14に示すように、シート9の種類と、補正係数Cと、補正係数C算出時の給紙枚数カウント値とを相互に関連付けてRAM32に保存して管理する。
図14では、普通紙、厚紙1及び厚紙2の3種類のシート9について補正係数Cを登録可能な情報の例を示している。
【0108】
そしてコントローラ7は、シート9の種類の変更が検知されたときに、既にそのシート9の種類に対応する補正係数Cが算出済みであれば、
図14に示す情報からそのシート9に対応する補正係数Cを読み出し、連れ送りが発生した場合の通紙時間を補正する。また、コントローラ7は、各補正係数Cの算出時の給紙枚数カウント値に基づき、各補正係数Cが算出された後の給紙枚数が所定数(例えば5000枚)を超えているか否かを判断し、所定数を超えていればその補正係数Cをリセットする。換言すると、コントローラ7は、シート9の種類の変更が検知されたときに、既にそのシート9の種類に対応する補正係数Cが算出済みであり、且つ、その補正係数Cが算出された後の給紙枚数が所定数(例えば5000枚)以下であれば、それ以前に用いられていた補正係数Cを用いて通紙時間を補正するのである。このようにシート9の種類ごとに補正係数Cを保持しておくことにより、シート9の種類の変更が検知されたときに既にその変更後の種類に対応する補正係数Cが算出済みであれば、あらためて算出する必要がないため、処理効率を向上させることができる。
【0109】
また、上記においては、補正係数Cを算出するために、第1データ記憶領域61に所定数のデータを蓄積する一例として、10個のデータを蓄積する場合を例示した。しかし、補正係数Cを算出するためのデータ数は、10個に限られず、11個以上としても良いし、9個以下としても良い。補正係数Cを算出するためのデータ数を多くすれば、それによって算出される補正係数Cのばらつきを小さく抑えることができる反面、補正係数Cを算出するためのデータ収集に時間を要するため、給紙機構2aの摩耗劣化を判定できるようになるまでに時間を要するという欠点がある。逆に、補正係数Cを算出するためのデータ数を少なくすれば、給紙機構2aの摩耗劣化判定を早期に開始できるようになる反面、補正係数Cのばらつきが大きくなるという問題がある。
【0110】
また、上記においては、第1データ記憶領域61に蓄積した所定数のデータを用いて補正係数Cを算出した後、第1データ記憶領域61をクリアしてそれらのデータを破棄する例を説明した。しかし、これに限られるものではなく、補正係数Cを算出した後、その補正係数Cを用いて第1データ記憶領域61に保存されている通紙時間を補正し、第2データ記憶領域62へ移動させるようにしても構わない。この場合、第2データ記憶領域62のデータ数N2を早期に所定数へ到達せしめることが可能となり、給紙機構2aの摩耗劣化判定を早期に開始できるという利点がある。
【0111】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、給紙時に測定したデータ(通紙時間)に基づいて補正係数Cを算出する例を説明した。しかし、給紙機構2aの摩耗劣化の進行度合は給紙機構2aによる給紙枚数と相関があることから、給紙枚数に応じた補正係数Cを予め算出しておき、それをテーブルなどの情報として保持しておくこともできる。そこで、本実施形態では、給紙枚数に応じた補正係数Cを予め保持しておく形態について説明する。
【0112】
図15は、第2実施形態におけるコントローラ7のハードウェア構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。
図15に示すコントローラ7が第1実施形態で説明したものと異なる点は、ROM31に補正係数登録情報39が予め記憶されている点である。
【0113】
図16は、補正係数登録情報39の一例を示す図である。
図16に示すように、補正係数登録情報39は、補正係数Cと、その補正係数Cが適用される給紙枚数の範囲とが関連付けられた情報である。補正係数登録情報39を参照すれば、現在の給紙枚数に対応する補正係数Cを取得することができるようになっている。このような補正係数登録情報39は、例えば製品出荷時にROM31に予め格納される。
【0114】
上記のような補正係数登録情報39が予めROM31に格納されているため、本実施形態では、コントローラ7が、補正係数Cを算出する必要はない。すなわち、連れ送り判定部52によって先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していると判定されると、補正部53は、給紙枚数カウント値38を参照し、補正係数登録情報39から現在の給紙枚数に対応する補正係数Cを読み出す。そして補正部53は、RAM32に一時的に保存されている先のシート9の通紙時間を読み出し、その通紙時間を、補正係数登録情報39から取得した補正係数Cに基づいて補正する。
【0115】
図17は、本実施形態における連れ送り判定処理(
図6のステップS5)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。尚、
図17に示すXの部分が本実施形態に特有の処理である。コントローラ7は、判定時間を判定することにより、先のシート9の給紙時に連れ送りが発生したと判断すると(ステップS21でNO)、給紙枚数カウント値38を読み出し(ステップS70)、補正係数登録情報39を参照することにより(ステップS71)、現在の給紙枚数に対応する補正係数Cを取得する(ステップS72)。そしてコントローラ7は、補正係数登録情報39から取得した補正係数Cに基づいて先のシート9の通紙時間を補正する(ステップS73)。これにより、連れ送りの影響を受けていた通紙時間が、連れ送りの影響のない通紙時間に補正される。そしてコントローラ7は、補正後の通紙時間を第2データ記憶領域62へ保存する(ステップS74)。したがって、第1実施形態と同様に、第2データ記憶領域62には、連れ送りの影響のない通紙時間が蓄積される。
【0116】
このように本実施形態では、補正部53が現在の給紙枚数に対応する補正係数CをROM31から読み出して取得し、その読み出した補正係数Cを用いて連れ送りの影響を受けている通紙時間を補正する。そのため、本実施形態では、補正係数Cを算出するためにデータを収集する必要がなく、連れ送りが発生すれば直ちに通紙時間を補正することが可能である。また、補正係数Cを取得するときのCPU30の負荷を軽減することも可能である。
【0117】
また、上記においては、補正係数登録情報39が、補正係数Cと、その補正係数Cが適用される給紙枚数の範囲とを関連付けた情報である場合を例示した。しかし、補正係数登録情報39は、それに限られるものではない。例えば補正係数登録情報39は、シート9の種類ごとに、補正係数Cと、その補正係数Cが適用される給紙枚数の範囲とを関連付けた情報であっても構わない。
【0118】
図18は、シート9の種類ごとに補正係数Cが登録された補正係数登録情報39の一例を示す図である。
図18に示す補正係数登録情報39では、シート9の種類ごとに補正係数Cが登録されており、各種類の補正係数Cには給紙枚数の範囲が関連付けられている。コントローラ7は、シート9の種類が変更されたことを検知すると、
図18の補正係数登録情報39を参照することにより、変更後のシート9の種類と現在の給紙枚数とに応じた最適な補正係数Cを速やかに取得することができる。したがって、
図18に示すような補正係数登録情報39が予めROM31に保存されていても構わない。
【0119】
尚、本実施形態において上述した構成及び動作以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0120】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上述したように、給紙機構2aによって給紙されるシート9の種類が変更されると、シート9の搬送速度が変わることがある。本実施形態では、シート9の搬送速度(給紙速度)に応じた補正係数Cを保持する形態について説明する。
【0121】
図19は、シート9の種類と搬送速度との関係の例を示す図である。
図19に示すように画像形成装置1には、速度ダウン設定がある。速度ダウン設定は、例えば、画像形成装置1において実行すべき印刷ジョブが複数種類のシート9を使用して印刷出力を行うものである場合に適用される設定である。速度ダウン設定にはオンとオフとがある。速度ダウン設定がオフの場合は、印刷ジョブの実行中にシート9の種類が変更されると、通常通り、変更後のシート9の種類に応じた最適な搬送速度が設定される。そのため、速度ダウン設定がオフの場合には、印刷ジョブ実行時のスループットが最大となるように複数種類のシート9が搬送される。これに対し、速度ダウン設定がオンの場合、シート9の種類に応じた搬送速度が1段階又は複数段階低下させた状態に設定される。そのため、速度ダウン設定がオンの場合には画像形成装置1においてシート9の種類を変更する際の負荷を軽減することができるという利点がある。このような速度ダウン設定は、ユーザーによって画像形成装置1に予め設定される。
【0122】
図19の例では、シート9の種類が普通紙である場合、速度ダウン設定がオフであれば搬送速度が高速となり、速度ダウン設定がオンであれば搬送速度が中速となる。また、シート9の種類が厚紙1である場合、速度ダウン設定がオフであれば搬送速度が中速となり、速度ダウン設定がオンであれば搬送速度が低速となる。またシート9の種類が厚紙1よりも厚い厚紙2の場合も同様であり、速度ダウン設定がオフであれば搬送速度が中速となり、速度ダウン設定がオンであれば搬送速度が低速となる。尚、印刷ジョブが複数種類のシート9を使用するものでない場合、速度ダウン設定がオフの場合と同様の搬送速度が適用される。
【0123】
上記のような速度ダウン設定がある場合、第1実施形態及び第2実施形態で説明したようにシート9の種類に応じた補正係数Cを保持するだけでは、実際のシート9の搬送速度に応じた最適な補正係数Cを適用することができない。そこで、本実施形態の画像形成装置1は、速度設定部43によって設定されるシート9の搬送速度に応じた補正係数Cを保持するように構成される。すなわち、コントローラ7の補正部53は、シート9の搬送速度ごとに補正係数Cを管理するように構成される。
【0124】
例えば、補正部53は、連れ送り判定部52によって先のシート9の給紙時に連れ送りが発生していたと判定された場合、第1実施形態と同様に、先のシート9の通紙時間を第1データ記憶領域61へ格納する。第1データ記憶領域61のデータ数N1が所定数以上になると、補正部53は、所定数のデータ(通紙時間)に基づいて補正係数Cを算出する。このとき、補正部53は、シート9の搬送速度と補正係数Cとを関連付けて管理する。また、補正部53は、シート9の搬送速度の設定が変わる度に、連れ送りが発生した状態のデータ(通紙時間)を収集し、その搬送速度に対応する補正係数Cを算出し、それらを関連付けて管理する。つまり、画像形成装置1において設定可能な搬送速度ごとに補正係数Cを関連付けて管理するのである。
【0125】
図20は、搬送速度と補正係数Cとを関連付けた情報の一例を示す図である。コントローラ7は、
図20に示すように、シート9の搬送速度(給紙速度)と、補正係数Cと、補正係数C算出時の給紙枚数カウント値とを相互に関連付けてRAM32に保存して管理する。
図20では、高速、中速及び低速の3種類の速度について補正係数Cを登録可能な情報の例を示している。
【0126】
そしてコントローラ7は、シート9の搬送速度の設定を変更すると、既にその搬送速度に対応する補正係数Cが算出済みであれば、
図20に示す情報からその搬送速度に対応する補正係数Cを読み出し、連れ送りが発生した場合の通紙時間を補正する。また、コントローラ7は、各補正係数Cの算出時の給紙枚数カウント値に基づき、各補正係数Cが算出された後の給紙枚数が所定数(例えば5000枚)を超えているか否かを判断し、所定数を超えていればその補正係数Cをリセットする。換言すると、コントローラ7は、シート9の搬送速度が変更されたときに、既にその搬送速度に対応する補正係数Cが算出済みであり、且つ、その補正係数Cが算出された後の給紙枚数が所定数(例えば5000枚)以下であれば、それ以前に用いられていた補正係数Cを用いて通紙時間を補正するのである。このようにシート9の搬送速度ごとに補正係数Cを保持しておくことにより、搬送速度が変更されたときに既にその変更後の搬送速度に対応する補正係数Cが算出済みであれば、あらためて補正係数Cを算出する必要がない。
【0127】
また、上記においては、第1実施形態のように補正部53が補正係数Cを算出する場合を例示したが、これに限られず、第2実施形態のように給紙枚数に応じた補正係数Cを予め算出しておき、それをテーブルなどの情報として保持しておくようにしても良い。
【0128】
図21は、搬送速度ごとに補正係数Cが予め登録された補正係数登録情報39の一例を示す図である。
図21に示す補正係数登録情報39では、シート9の搬送速度ごとに補正係数Cが登録されており、各搬送速度の補正係数Cには給紙枚数の範囲が関連付けられている。コントローラ7は、シート9の搬送速度が設定変更されると、
図21の補正係数登録情報39を参照することにより、変更後の搬送速度と現在の給紙枚数とに応じた最適な補正係数Cを速やかに取得することができる。したがって、
図21に示すような補正係数登録情報39が予めROM31に保存されていても構わない。
【0129】
尚、本実施形態において上述した構成及び動作以外については、第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと同様である。
【0130】
また、シート9の搬送速度(給紙速度)が変わる場合には、連れ送り判定部52において判定時間が所定時間以上であるか否かを判定する際の所定時間も搬送速度に応じて変えることが好ましい。例えば、普通紙のように高速搬送される場合には所定時間を200msに設定し、厚紙のように中速搬送される場合には所定時間を220msに設定し、低速搬送される場合には所定時間を240msに設定するなど、搬送速度に応じた設定を行うことが好ましい。
【0131】
(変形例)
以上、本発明に関する幾つかの実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記各実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0132】
例えば上記実施形態では、シート種類検知部42は、ユーザーによって設定されたシート9の種類を読み出して給紙対象となるシート9の種類を検知することを説明した。しかし、シート種類検知部42は、ユーザーによる操作に基づいてシート9の種類を検知するものに限られない。例えば、シート9の搬送路11に光センサーを設け、該光センサーが搬送されるシート9に対して光を照射する。シート種類検知部42は、光センサーによって検出される光の透過率や反射率に基づき、シート9の種類を自動検知するようにしても良い。
【0133】
また上記実施形態では、CPU30によって実行されるプログラム36が予めROM31に格納されている場合を例示した。しかし、プログラム36は、例えば通信インタフェース35などを介して画像形成装置1にインストールされるものであっても構わない。この場合、プログラム36は、インターネットなどを介してダウンロード可能な態様で提供されるものであっても良いし、また、CD-ROMやUSBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された態様で提供されるものであっても構わない。
【0134】
また上記実施形態では、一例として、給紙枚数が5000枚を超える度に補正係数Cを更新する例を説明した。しかし、補正係数Cを更新するタイミングは、給紙枚数が5000枚を超えるタイミングに限られない。例えば、給紙枚数が1000枚を超える度に補正係数Cを更新しても良いし、100枚を超える度に補正係数Cを更新するようにしても良い。
【符号の説明】
【0135】
1 画像形成装置
2 給紙搬送部
2a 給紙機構(給紙手段)
8 給紙トレイ(トレイ)
10 ピックアップローラ
12 給紙ローラ
13 捌きローラ
31 ROM(記憶手段)
36 プログラム
40 給紙制御部
41 給紙枚数カウント部(給紙枚数カウント手段)
42 シート種類検知部(シート種類検知手段)
43 速度設定部(速度設定手段)
50 給紙機構劣化判定部
51 速度測定部(速度測定手段)
52 連れ送り判定部(連れ送り判定手段)
53 補正部(補正手段)
54 摩耗検知部(摩耗検知手段)