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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20221220BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20221220BHJP
   B65H 1/04 20060101ALI20221220BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 A
H04N1/00 567J
B65H7/02
B65H1/04 324
G03B27/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018209830
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020077968
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】木付 寛道
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001795(JP,A)
【文献】特開2010-105755(JP,A)
【文献】特開2016-015589(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097814(WO,A1)
【文献】特開2007-230681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 - 1/207
H04N 1/00
G06T 1/00
B65H 7/02
B65H 1/04
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置する原稿載置部と、
前記原稿載置部から原稿を給送する給送ローラーと、
前記給送ローラーの下流に設けられ、原稿を下流に送る搬送ローラーと、
前記搬送ローラーの駆動源である搬送モーターと、
前記搬送ローラーの下流に設けられ、原稿を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段及び前記搬送モーターを制御する制御手段と、
原稿給送方向と交差する方向である幅方向に間隔を空けて設けられ、前記原稿載置部に載置される原稿の前記幅方向のエッジをガイドするエッジガイドと、を備え、
前記制御手段は、原稿種類に関する情報、及び前記原稿種類に応じて設定された、前記読み取り手段から得られた画像データの傾きに対する傾き検出基準値を取得可能であり、前記画像データの傾きが前記原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止
前記原稿種類は、前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端より上流に外れて位置する長さである第1の原稿と、前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端から下流に位置する長さである第2の原稿と、を含み、
前記第2の原稿に対する前記傾き検出基準値は、前記第1の原稿に対する前記傾き検出基準値より大きい、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記傾き検出基準値は、原稿の搬送方向長さが短いほど大きい、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の画像読取装置において、前記制御手段は、前記傾き検出基準値に加え、前記原稿種類に応じて設定された、前記搬送モーターの負荷トルクに対する負荷検出基準値を取得可能であり、
前記画像データの傾きが前記原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えるか、或いは前記負荷トルクが前記原稿種類に応じた前記負荷検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項に記載の画像読取装置において、前記負荷検出基準値は、原稿の剛性が高いほど大きい、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項または請求項に記載の画像読取装置において、ユーザーからの指示入力を受け付ける入力受け付け部を備え、
前記制御手段は、前記入力受け付け部を介して設定された情報をもとに、前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行う異常判定実行モードと、
前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行わない異常判定保留モードと、を切り換える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項に記載の画像読取装置において、前記制御手段は、前記異常判定実行モードにおいて原稿の読み取り実行指令を受けると、前記原稿種類を設定するためのユーザインタフェースを前記入力受け付け部に表示する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、超音波を発信する送信部、及び前記送信部から発信された超音波を受信して、受信した前記超音波に応じた出力値を前記制御手段に出力する受信部を備えて構成される媒体検出部を、原稿搬送経路において前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に備え、
前記制御手段は、前記出力値に応じて、前記負荷検出基準値を調整する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、画像読取装置の一例であるスキャナーを例に説明する。スキャナーには、原稿を自動送りする原稿給送装置が設けられ、複数枚の原稿の自動送りと読み取りとを行える様に構成されたものがある。この原稿給送装置は、ADF(Auto Document Feeder)とも呼ばれる場合がある。
【0003】
原稿給送装置は、複数枚の原稿を載置面に載置する原稿トレイと、原稿トレイにセットされた原稿に接触して回転することにより、原稿トレイから原稿を送り出す給送ローラーと、給送ローラーに接して原稿を分離する分離ローラーと、を備えて構成される。
原稿給送装置の下流には、原稿を精密送りする搬送ローラーが設けられ、更に搬送ローラーの下流には、原稿の画像を読み取る読み取り部が設けられている。
【0004】
ここで、スキャナーの原稿搬送経路では搬送異常、具体的にはジャムが発生する場合があり、従来から種々の方法でジャムの検出が行われている。その一例として特許文献1には、読み取った画像データに基づいて原稿の傾きを検出し、ひいてはジャムを防止する技術の一例が開示されている。以下、原稿の傾きを検出してジャムを防止する方式を傾き検出方式と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-11363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原稿トレイには通常、原稿の両サイドをガイドするエッジガイドが設けられている。原稿が傾くと、原稿の一方側のエッジがエッジガイドに押し当たり、変形してジャムになる場合がある。この様なジャムは、原稿の種類によって発生する場合としない場合とがあり、そして従来の傾き検出方式では基準値つまり閾値が原稿種類によらず一律であるため、本来ジャムが発生し難い原稿であっても異常と判定してしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為の、本発明の画像読み取り装置は、原稿を載置する原稿載置部と、前記原稿載置部から原稿を給送する給送ローラーと、前記給送ローラーの下流に設けられ、原稿を下流に送る搬送ローラーと、前記搬送ローラーの駆動源である搬送モーターと、前記搬送ローラーの下流に設けられ、原稿を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段及び前記搬送モーターを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、原稿種類に関する情報、及び原稿種類に応じて設定された、前記読み取り手段から得られた画像データの傾きに対する傾き検出基準値を取得可能であり、前記画像データの傾きが原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スキャナーの外観斜視図。
図2】スキャナーにおける原稿搬送経路を示す側断面図。
図3】スキャナーにおける原稿搬送経路を示す平面図。
図4】スキャナーの制御系統を示すブロック図。
図5】異常判定処理の流れを示すフローチャート。
図6】原稿種類毎の負荷検出と傾き検出の基準値設定を示す表。
図7】原稿搬送経路における原稿の傾きの様子を示す平面図。
図8】原稿種類毎の負荷検出の基準値と超音波の出力値との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る画像読取装置は、原稿を載置する原稿載置部と、前記原稿載置部から原稿を給送する給送ローラーと、前記給送ローラーの下流に設けられ、原稿を下流に送る搬送ローラーと、前記搬送ローラーの駆動源である搬送モーターと、前記搬送ローラーの下流に設けられ、原稿を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段及び前記搬送モーターを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、原稿種類に関する情報、及び原稿種類に応じて設定された、前記読み取り手段から得られた画像データの傾きに対する傾き検出基準値を取得可能であり、前記画像データの傾きが原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記制御手段は、原稿種類に関する情報、及び原稿種類に応じて設定された、前記読み取り手段から得られた画像データの傾きに対する傾き検出基準値を取得可能であり、前記画像データの傾きが原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止するので、原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を利用することで本来搬送異常が発生し難い原稿であっても異常と判定してしまう誤判定を抑制できる。
尚、以降において単に「誤判定」と言う場合は、原稿を搬送しても差し支えない状況であるにも拘わらず搬送異常と判定してしまうことを意味する。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記傾き検出基準値は、原稿の搬送方向長さが短いほど大きいことを特徴とする。
原稿の搬送方向長さが短いと、原稿のエッジはエッジガイド或いは経路側壁に接触する時間が短いため、搬送異常は生じ難い。本態様によれば、前記傾き検出基準値は、原稿の搬送方向長さが短いほど大きいので、搬送異常が生じ難い原稿に対する誤判定を抑制でき、ユーザーの便宜に資すことができる。
【0012】
第3の態様は、第1の態様において、原稿給送方向と交差する方向である幅方向に間隔を空けて設けられ、前記原稿載置部に載置される原稿の前記幅方向のエッジをガイドするエッジガイドを備え、前記原稿種類は、前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端より上流に外れて位置する長さである第1の原稿と、前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端から下流に位置する長さである第2の原稿と、を含み、前記第2の原稿に対する前記傾き検出基準値は、前記第1の原稿に対する前記傾き検出基準値より大きいことを特徴とする。
【0013】
前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端より上流に外れて位置する長さである第1の原稿は、前記エッジガイドに接触する時間が長いため、搬送異常が生じ易い。逆に前記原稿載置部に載置された際に搬送方向後端が前記エッジガイドの搬送方向後端から下流に位置する長さである第2の原稿の場合は、前記第1の原稿よりも前記エッジガイドに接触する時間が短く、搬送異常が生じ難い。
本態様によれば、前記第2の原稿に対する前記傾き検出基準値は、前記第1の原稿に対する前記傾き検出基準値より大きいので、前記第1の原稿よりも相対的に搬送異常が生じ難い前記第2の原稿に対する誤判定を抑制でき、ユーザーの便宜に資すことができる。
【0014】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記傾き検出基準値に加え、原稿種類に応じて設定された、前記搬送モーターの負荷トルクに対する負荷検出基準値を取得可能であり、前記画像データの傾きが原稿種類に応じた前記傾き検出基準値を超えるか、或いは前記負荷トルクが原稿種類に応じた前記負荷検出基準値を超えると、前記搬送モーターを停止することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、搬送異常の検出に際し、傾き検出方式に加え、前記搬送モーターの負荷トルクを利用して搬送異常を判定する負荷検出方式を併用するので、原稿の傾きを伴わないで搬送異常に至るケースに対して対応することができ、搬送異常に伴う原稿へのダメージ付与をより確実に抑制できる。
【0016】
第5の態様は、第4の態様において、前記負荷検出基準値は、原稿の剛性が高いほど大きいことを特徴とする。
原稿の剛性が高いほど、正常搬送時の前記負荷トルクは大きくなり易い。本態様によれば、原稿の剛性が高いほど前記負荷検出基準値が大きいので、剛性の高い原稿に対する誤判定を抑制できる。
【0017】
第6の態様は、第4のまたは第5の態様において、ユーザーからの指示入力を受け付ける入力受け付け部を備え、前記制御手段は、前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行う異常判定実行モードと、前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行わない異常判定保留モードと、を切り換えることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、ユーザーからの指示入力に応じ、前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行う異常判定実行モードと、前記画像データの傾き及び前記負荷トルクに応じて前記搬送モーターの停止制御を行わない異常判定保留モードと、を切り換えるので、異常判定が必要ないニーズに対応することができ、ユーザーの利便性が向上する。
【0019】
第7の態様は、第6の態様において、前記制御手段は、前記異常判定実行モードにおいて原稿の読み取り実行指令を受けると、原稿種類を設定するためのユーザインタフェースを前記入力受け付け部に表示することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記制御手段は、前記異常判定実行モードにおいて原稿の読み取り実行指令を受けると、原稿種類を設定するためのユーザインタフェースを前記入力受け付け部に表示するので、その結果前記制御手段は原稿種類に関する情報を正しく取得することができ、より確実に誤判定を抑制できる。
【0021】
第8の態様は、第4から第6の態様のいずれかにおいて、超音波を発信する送信部、及び前記送信部から発信された超音波を受信して、受信した前記超音波に応じた出力値を前記制御手段に出力する受信部を備えて構成される媒体検出部を、原稿搬送経路において前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に備え、前記制御手段は、前記出力値に応じて、前記負荷検出基準値を調整することを特徴とする。
【0022】
原稿の厚みが厚いほど、原稿の剛性は高くなり、そして原稿の厚みの違いは、超音波を利用して検出することができる。本態様ではこの様な性質を利用し、前記超音波に応じた出力値に応じて、前記負荷検出基準値を調整するので、原稿種類に関する情報をユーザーが入力することなく、誤判定を抑制でき、ユーザーの利便性が向上する。
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
本実施形態に係る画像読取装置の一実施形態について、図面に基づき説明する。本実施形態では画像読取装置の一例として、原稿Pの表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー(以下、単にスキャナー1Aと称する)を例に挙げる。
【0024】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系はX方向が装置幅方向であり、また、原稿給送方向(搬送方向)と交差する方向である原稿幅方向である。また、Y方向が原稿給送方向(搬送方向)である。Z方向はY方向と交差する方向であって、概ね搬送される原稿Pの面と直交する方向を示している。また、+Y方向を装置背面から前面に向かう方向とし、-Y方向を装置前面から背面に向かう方向とする。また、装置前面から見て左方向を+X方向、右方向を-X方向とする。また、+Z方向を装置上方とし、-Z方向を装置下方とする。また、原稿Pが給送されていく方向(+Y方向)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y方向)を「上流」という。
【0025】
図1は本発明に係るスキャナー1Aを示す外観斜視図である。
スキャナー1Aは、原稿Pの画像を読み取る読取部20(図2)を内部に備える装置本体2を備えている。
装置本体2は、下部ユニット3及び上部ユニット4を備えて構成されている。上部ユニット4は下部ユニット3に対して原稿搬送方向下流を回動支点として開閉可能に設けられており、上部ユニット4を装置前面方向に回動して開き、原稿Pの原稿搬送経路を露呈させて原稿Pのジャムの処理を容易に行うことができる様に構成されている。
【0026】
装置本体2の装置背面寄りには、給送される原稿Pを載置する載置面11aを有する原稿載置部11が設けられている。原稿載置部11は、装置本体2に対して着脱可能に設けられている。
また、原稿載置部11には、原稿Pの給送方向(Y軸方向)と交差する幅方向(X軸方向)の側縁をガイドする一対のエッジガイド、具体的には第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bが設けられている。第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bは、原稿Pの側縁をガイドするガイド面U1、U2をそれぞれ備えている。
尚、以降において第1エッジガイド12Aと第2エッジガイド12Bを特に区別する必要の無い場合は単に「エッジガイド12」或いは「一対のエッジガイド12」と称する場合がある。
【0027】
原稿載置部11は、第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9を備えている。第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9は、原稿載置部11の内部に収納可能であり、且つ、図1に示す様に原稿載置部11から引き出し可能に構成され、載置面11aの長さを調整可能になっている。
【0028】
装置本体2は、上部ユニット4の装置前面に、各種読み取り設定や読み取り実行の操作を行ったり、読み取り設定内容等を示すユーザインタフェース(UI)が実現される操作パネル7を備えている。操作パネル7は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種操作を行う為の操作部と、各種情報を表示する為の表示部とを兼用する。
上部ユニット4の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、原稿載置部11に載置される原稿Pは、給送口6から装置本体2内部に設けられる読取部20に向けて送られる。
また、下部ユニット3の装置前面側には、排出される原稿Pを受ける排紙トレイ5が設けられている。
【0029】
次に、主として図2及び図3を参照して、スキャナー1Aにおける原稿給送経路について説明する。図2は本発明に係るスキャナー1Aにおける原稿給送経路を示す側断面図であり、図3は同平面図である。
スキャナー1Aは、原稿給送装置1Bを備えている。図2において符号Tで示す実線は、原稿給送経路、換言すれば原稿Pの通過軌跡を示している。原稿給送経路Tは、下部ユニット3と、上部ユニット4とによって挟まれた空間である。尚、原稿給送経路Tは、原稿載置部11から搬送ローラー対16に至る経路と定義することができる為、図2では搬送ローラー対16より下流の原稿の経路は破線で示している。この破線の経路、即ち搬送ローラー対16より下流の経路は、以下では下流経路Qと言う。
【0030】
原稿給送経路Tの最も上流側には、原稿載置部11が設けられており、原稿載置部11の下流側には、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pを読取部20に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿Pをニップして分離する分離ローラー15が設けられている。原稿載置部11には、上述した通りエッジガイド12が設けられている。
【0031】
給送ローラー14は、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pのうち、最下位のものと接する。従って、スキャナー1Aにおいて複数枚の原稿Pを原稿載置部11にセットした場合には、載置面11a側の原稿Pから順に下流側に向けて給送される。
尚、原稿載置部11には、原稿載置部11上に原稿Pが存在するか否かを検出する為の載置検出手段としての載置検出部35が設けられている。
【0032】
給送ローラー14は、本実施形態では図3に示す様に、原稿幅方向の中心位置CLに対して対称となる様に2つ配置されている。図3では中心位置CLに対し左側の給送ローラー14を符号14Aで、中心位置CLに対し右側の給送ローラーを符号14Bで、それぞれ示している。同様に分離ローラー15も、図3では図示を省略するが中心位置CLに対して対称となる様に2つ配置されている。
【0033】
給送ローラー14は、給送ローラー用モーター45(図4)により回転駆動される。給送ローラー用モーター45から回転トルクを得て、給送ローラー14は図2において反時計回り方向に回転する。
分離ローラー15には、搬送ローラー用モーター46(図4)から、不図示のトルクリミッタを介して回転トルクが伝達される。
【0034】
給送ローラー14と分離ローラー15との間に原稿Pが介在しない場合、或いは1枚のみ介在する場合、分離ローラー15は、不図示のトルクリミッタにおいて滑りが生じることにより、搬送ローラー用モーター46から受ける回転トルクに拘わらず従動回転する(図2において時計回り方向)。
給送ローラー14と分離ローラー15との間に、給送されるべき原稿Pに加えて更に2枚目以降の原稿Pが入り込むと、原稿間で滑りが生じることにより、分離ローラー15は搬送ローラー用モーター46から受ける回転トルクにより、図2の反時計回り方向に回転する。これにより、原稿Pの重送が防止される。
【0035】
給送ローラー14の下流側には、搬送ローラーとしての搬送ローラー対16と、画像を読み取る読取部20と、排出ローラー対17とが設けられている。搬送ローラー対16は、搬送モーターとしての搬送ローラー用モーター46(図4)により回転駆動される搬送駆動ローラー16aと、従動回転する搬送従動ローラー16bとを備えて成る。搬送駆動ローラー16aは、本実施形態では図3に示す様に中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。搬送従動ローラー16bも図3では図示を省略するが同様に中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流側に給送された原稿Pは搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流側に位置する読取部20に搬送される。
【0036】
尚、給送ローラー14の下流側には、第1原稿検出部31が設けられている。第1原稿検出部31は、一例として光学式センサーとして構成され、原稿給送経路Tを挟んで対向配置される発光部31aと、受光部31bとを備えて成り、受光部31bが制御部40(図4)に検出光の強度を示す電気信号を送信する。搬送される原稿Pが発光部31aから発せられる検出光を遮ることにより、前記検出光の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40(図4)は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
【0037】
また、第1原稿検出部31の下流側には、原稿Pの重送を検出する重送検出部30が配置されている。重送検出部30は、原稿給送経路Tを挟んで対向配置される超音波発信部30aと、超音波を受信する超音波受信部30bとを備えて成り、超音波受信部30bが制御部40(図4)に検出した超音波の強度に応じた出力値を送信する。原稿Pの重送が生じると、前記超音波の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40(図4)は、原稿Pの重送を検知できる。
【0038】
また、重送検出部30の下流側には、第2原稿検出部32が設けられている。第2原稿検出部32は、レバーを有する接触式センサーとして構成されており、原稿Pの先端或いは後端の通過に伴いレバーが回動すると、第2原稿検出部32から制御部40(図4)に送られる電気信号が変化し、これにより制御部40(図4)は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
制御部40(図4)は、上述した第1原稿検出部31及び第2原稿検出部32により、原稿給送経路Tにおける原稿Pの位置を把握することができる。
【0039】
次に、第2原稿検出部32の下流側に設けられた読取部20は、上部ユニット4側に設けられた上部読取センサー20aと、下部ユニット3側に設けられた下部読取センサー20bとを備えている。本実施形態において、上部読取センサー20a及び下部読取センサー20bは一例として密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。
【0040】
原稿Pは、読取部20において原稿Pの表面及び裏面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、読取部20の下流側に位置する排出ローラー対17にニップされて、下部ユニット3の装置前面側に設けられた排出口18から排出される。
排出ローラー対17は、搬送ローラー用モーター46(図4)により回転駆動される排出駆動ローラー17aと、従動回転する排出従動ローラー17bとを備えて成る。排出駆動ローラー17aは、図3に示す様に本実施形態では中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。排出従動ローラー17bも同様に、図3では図示を省略するが中心位置CLに対して対称位置となるように2つ配置されている。
【0041】
続いて、エッジガイド12の位置について図3を参照しつつ説明する。第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bは、原稿幅方向の中心位置CLに対して左側と右側にそれぞれ設けられている。本実施形態では、第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bは、不図示のラックピニオン機構により、常に中心位置CLに対して対称となる位置に変位できる様に構成されている。そしてまた、不図示の保持手段、例えば摩擦部材や鋸状歯の噛み合い手段によって、変位した位置を保持可能に設けられている。
【0042】
図3において符号D1、D2は、それぞれ媒体給送経路Tの媒体幅方向における最端部を形成する経路部材のガイド面である。本実施形態において中心位置CLからガイド面D1までの距離と、中心位置CLからガイド面D2までの距離とは同じである。
本実施形態において第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bの間隔を最も拡げた際、ガイド面U1とガイド面D1はほぼ面一となり、ガイド面U2とガイド面D2はほぼ面一となる。
【0043】
本実施形態において第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bの間隔を最も拡げた状態は、ガイド面U1及びガイド面U2の間隔が、装置設計上想定される最も大きい原稿Pの短辺サイズよりも大きくなる構成である。
尚、本実施形態において装置設計上想定される最も大きい原稿Pはレターサイズであり、このレターサイズとは、ANSI(米国国家規格協会)Aで規定されるレターサイズであって、短辺が216mm、長辺が279mmである。そして本実施形態においてエッジガイド12が最大ガイド位置にある際の第1エッジガイド12A及び第2エッジガイド12Bの間隔は225mmに設定されている。従ってガイド面D1及びガイド面D2の間隔も、225mmとなる。
尚、装置設計上想定される最も大きい原稿Pとして、レターサイズに代えて、ISO(国際標準化機構)216で規定されるA4サイズを採用しても良い。A4サイズ用紙は、短辺が210mm、長辺が297mmとなる。
【0044】
尚、エッジガイド12の背面側には、各エッジガイドの現在位置を検出する為のセンサーが設けられており、後述する制御部40は、このセンサーから受信する信号により、エッジガイド12の位置を検知することができる。尚、上記センサーは、例えばエッジガイド12の変位方向に延設されたリニアスケールと、エッジガイド12に設けられた、前記リニアスケールを検出するセンサーとを備えて成る光学式センサーを採用できる。
【0045】
以下、図4を参照しつつスキャナー1Aにおける制御系統について説明する。図4は本発明に係るスキャナー1Aの制御系統を示すブロック図である。
図4において、制御手段としての制御部40は原稿Pの給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1Aの各種制御を行う。制御部40には操作パネル7からの信号が入力され、また、操作パネル7の表示、特にユーザインタフェース(UI)を実現する為の信号が制御部40から操作パネル7に送信される。
【0046】
制御部40は、給送ローラー用モーター45と搬送ローラー用モーター46を制御する。上述したように給送ローラー用モーター45は、図2に示した給送ローラー14の駆動源であり、搬送ローラー用モーター46は、図2に示した分離ローラー15、搬送ローラー対16、排出ローラー対17、のこれらの駆動源である。給送ローラー用モーター45と搬送ローラー用モーター46は、本実施形態ではいずれもDCモーターである。
制御部40には、読取部20からの読み取りデータが入力され、また、読取部20を制御する為の信号が制御部40から読取部20に送信される。
制御部40には、重送検出部30、第1原稿検出部31、第2原稿検出部32、載置検出部35、のこれら検出手段からの信号も入力される。
【0047】
制御部40は、CPU41、ROM42、メモリ43を備えている。CPU41はROM42に格納されたプログラム44に従って各種演算処理を行い、スキャナー1A全体の動作を制御する。尚、記憶部の一例であるメモリ43は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、後述する異常判定に必要なデータ等が格納されている。本明細書において特に記載しない場合は、後述する異常判定に必要なデータや、制御に必要なパラメータ等は全てメモリ43に記憶され、また、必要に応じてその値が制御部40によって更新されるものとする。また操作パネル7を介してユーザーが入力した各種設定情報も、メモリ43に記憶される。
ROM42に格納されたプログラム44は、必ずしも一つのプログラムを意味するものではなく、複数のプログラムで構成され、それには原稿給送経路Tにおける異常を判定する為のプログラム、後述する閾値を変更するプログラム、操作パネル7に表示するUIを制御するプログラム、原稿Pの搬送及び読み取りに必要な各種制御プログラム、などが含まれる。
【0048】
またスキャナー1Aは外部コンピュータ60と接続可能に構成されており、制御部40には、外部コンピュータ60から情報が入力される。外部コンピュータ60は、表示部62を備えている。表示部62には、外部コンピュータ60が備える不図示の記憶手段に格納された制御プログラムによりユーザインタフェース(UI)が実現される。
【0049】
続いて図5以降を参照しつつ、原稿Pの搬送に係る異常判定について説明する。本実施形態に係るスキャナー1Aは、原稿Pの搬送に係る異常判定を、負荷検出と傾き検出の2つの検出方法を組み合わせて行い、いずれか一方において検出値が基準値を越えた場合に、異常発生として原稿Pの搬送を停止する。
ここで負荷検出は、原稿Pのジャムにより搬送ローラー対16を駆動する為のトルク、即ち搬送ローラー用モーター46(図4)の負荷トルクが上昇する性質に鑑み、搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動電流を検出するものである。この駆動電流は、一例としてPWM制御のデューティー値で表される。
また傾き検出は、原稿Pが既にジャムしたか或いは将来的にジャムを招く可能性が高い場合に原稿Pが搬送経路に対して傾く性質に鑑み、原稿Pが読取部20(図2図3)に到達した際に、原稿Pの先端領域(例えば搬送方向長さ10mm程度)の読み取りデータを解析して原稿Pの傾きを検出するものである。本実施形態において原稿Pの傾きは、図7に示す様に搬送方向に対する傾き角θで表される。
【0050】
以下、異常検出の全体的な流れについて図5を参照しつつ説明する。
制御部40は、スキャン実行指令を受けると、異常検出機能がオンか否かを判断する(ステップS101)。異常検出機能のオンオフ設定は、操作パネル7(図1図4)を介してユーザーが設定できる様に構成されている。従って異常検出機能がオフに設定されていれば(ステップS101においてNo)、異常検出処理は終了する。
異常検出機能がオンに設定されていれば(ステップS101においてYes)、原稿種類設定UIを操作パネル7に表示する(ステップS102)。
【0051】
原稿設定UIでは、本実施例では図6のUI表示に示される様に「一般原稿」、「薄手の一般原稿」、「横長伝票類」、「縦長申請書・証明書類」の4種類から原稿種類を選択できる。そして図6に示される様に、原稿種類に応じて負荷検出基準値と傾き検出基準値が設定されている。
「一般原稿」は、普通紙や厚紙を想定したものであり、異常検出の感度としても最も低く設定されている。「薄手の一般原稿」は、薄手の用紙を想定したものであり、異常検出の感度として下から2番目に設定されている。
「横長伝票類」は、A5サイズ横の様な横長の薄手用紙、例えば宅配伝票や銀行の申請書類等を想定したものであり、異常検出の感度として上から2番目に設定されている。「縦長申請書・証明書類」は、A4サイズ縦の様な縦長の薄手用紙、例えば役所、病院等の申請書類等を想定したものであり、異常検出の感度として最も高く設定されている。
【0052】
図5に戻り、ステップS102において原稿種類が設定されると、制御部40は原稿の給送動作を開始する(ステップS103)。尚、原稿給送動作開始後、以降説明する負荷検出及び傾き検出のほか、一般的なジャム判定も並行して行われる。このジャム判定は、給送ローラー14の駆動開始後、給送ローラー14を所定量回転させても第1原稿検出部31(図2図3)が原稿先端を検出しない場合にジャムと判定するものであり、また、給送ローラー14を所定量回転させても第2原稿検出部32(図2図3)が原稿先端を検出しない場合にジャムと判定するものである。
【0053】
尚、図3において破線S1は、原稿載置部11に載置された原稿Pの、給送開始前の先端位置を示している。原稿載置部11に載置された原稿Pの先端は、不図示の規制部材により先端位置が位置S1に規制される。この規制部材は、給送動作が開始すると退避位置に移動する。
また、図3において破線S2は、エッジガイド12のガイド面U1、U2の上流側端部位置である。この上流側端部位置S2については後に説明する。
【0054】
続いて、制御部40は原稿の給送動作を開始すると(ステップS103)、負荷検出(ステップS104~S106)と傾き検出(ステップS110、S111)を並行して行う。
負荷検出(ステップS104)は、搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動電流を取得する処理であり、例えば所定の時間間隔を空けて実行することができる。制御部40は、搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動電流を取得すると、それが基準値を超えているか否かを判断する(ステップS105)。この基準値は、図6を参照しつつ説明したように、ユーザーにより設定された原稿種類に応じた値である。
【0055】
制御部40は、搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動電流が基準値を超えていれば(ステップS105においてYes)、全てのモーターを停止し(ステップS107)、搬送異常が生じた旨のアラートを操作パネル7(図1図4)に表示する(ステップS102)。尚、スキャン指示が外部コンピュータ90(図4)で動作するスキャナドライバから出されている場合には、外部コンピュータ90(図4)のUIにアラートを出す。
搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動電流が基準値未満であれば(ステップS105においてNo)、ステップS104、S105の処理を1枚の原稿スキャンが終了するまで繰り返す(ステップS106においてNo)。
1枚の原稿スキャンが終了すると(ステップS106においてYes)、次ページがあるか否かを判断し(ステップS109)、次ページがあれば(ステップS109においてYes)、記号Aで示す様にステップS103に戻る。次ページがなければ(ステップS109においてNo)、異常検出処理を終了する。
【0056】
一方、負荷検出と並行して行われる傾き検出においては、原稿Pの傾き角θを取得し(ステップS110)、それが基準値を超えているか否かを判断する(ステップS111)。この基準値は、図6を参照しつつ説明したように、ユーザーにより設定された原稿種類に応じた値である。
傾き角θが基準値未満であれば(ステップS111においてNo)、1枚の原稿Pについての傾き検出は終了し、上述したステップS109に移行する。傾き角θが基準値を超えていれば(ステップS111においてYes)、制御部40は全てのモーターを停止し(ステップS112)、搬送異常が生じた旨のアラートを操作パネル7(図1図4)に表示する(ステップS113)。
【0057】
尚、上記実施例では、傾き検出は原稿先端領域の読み取りデータに基づき1回のみ行うが、原稿搬送が進むに伴い繰り返し実行しても構わない。
【0058】
以下、図6に示した負荷検出基準値及び傾き検出基準値について更に説明する。図6に示す負荷検出基準値の「大」、「小」は相対的な大きさを意味するものであり、負荷検出基準値が相対的に小さいということは、相対的に大きい場合よりも、搬送ローラー用モーター46(図4)の少しの負荷上昇で異常と判断されることを意味し、即ち検出感度が高いことを意味する。
尚、負荷検出基準値は絶対値であっても良いし、所定の状態からの上昇値であっても良い。この場合の所定の状態としては、例えば原稿Pを搬送していない状態での搬送ローラー用モーター46(図4)の駆動状態を採用できる。
【0059】
傾き検出基準値も同様に、「大」、「中」、「小」は相対的な大きさを意味するものであり、傾き検出基準値が相対的に小さいということは、相対的に大きい場合よりも、原稿Pの少しの傾きで異常と判断されることを意味し、即ち検出感度が高いことを意味する。
尚、傾き検出基準値はエッジガイド12が原稿サイズに合った位置に位置決めされた状態を基準にして設定することができ、或いはエッジガイド12が最も外側に位置決めされた状態、即ちフルオープン状態を基準にして設定することもできる。
【0060】
傾き検出基準値は、一例として一対のエッジガイド12の間隔と、傾いた際の原稿PのX方向占有幅に基づいて求めることができる。図7において幅Xhは、一対のエッジガイド12の間隔に対し、傾いた原稿Pがはみ出す量を示している。幅Xhが大きくなると、原稿Pに皺が生じ、搬送異常が生じやすくなる。この幅XhがXhmaxを越えると搬送異常が生じる虞のある原稿Pでは、傾き検出基準値θsは、以下の式(1)で表すことができる。
[Xp]cosθs+[Yp]sinθs=[Xg]+[Xhmax] ・・・(1)
尚、Xpは傾いていない状態での原稿PのX方向長さ、Ypは傾いていない状態での原稿PのY方向長さ、Xgはエッジガイド12のX方向間隔である。
例えばエッジガイド12がフルオープンでXg=225mmを前提とし、Xhmaxを6mmとすると、A4サイズ縦セットの場合には傾き検出基準値θsは4°となり、A5サイズ横セットの場合には9°、B5サイズ縦セットの場合には12°、A5サイズ縦セットの場合には20°となる。
【0061】
以上説明したように本実施形態に係るスキャナー1Aの制御部40は、原稿種類に関する情報、及び原稿種類に応じて設定された、読取部20から得られた画像データの傾きに対する傾き検出基準値を取得可能であり、画像データの傾き角θが原稿種類に応じた傾き検出基準値を超えると、搬送ローラー用モーター46を停止するので、原稿種類に応じた傾き検出基準値を利用することで本来搬送異常が発生し難い原稿であっても搬送異常と判定してしまう誤判定を抑制できる。尚「誤判定」とは、原稿Pを搬送しても差し支えない状況であるにも拘わらず異常と判定してしまうことを意味する。
【0062】
また本実施形態において傾き検出基準値は、原稿Pの搬送方向長さが短いほど大きく設定されている。これは、図6の「横長伝票類」と「縦長申請書・証明書類」の傾き検出基準値の相違に現れている。
即ち、原稿Pの搬送方向長さが短いと、エッジガイド12に接触する時間が短いため、搬送異常は生じ難い。従って傾き検出基準値を、原稿Pの搬送方向長さが短いほど大きくすることで、搬送異常が生じ難い原稿Pに対する誤判定を抑制でき、ユーザーの便宜に資すことができる。
【0063】
尚、原稿載置部11に載置された際に原稿Pの搬送方向後端がエッジガイド12の搬送方向後端(図3において符号12c)より上流に外れて位置する長さである第1の原稿は、エッジガイド12に接触する時間が長いため、搬送異常が生じ易い。逆に原稿載置部11に載置された際に搬送方向後端がエッジガイド12の搬送方向後端12cから下流に位置する長さである第2の原稿の場合は、第1の原稿よりもエッジガイド12に接触する時間が短く、搬送異常が生じ難い。従って上記第2の原稿に対する傾き検出基準値を、上記第1の原稿に対する傾き検出基準値より大きくすることも好適である。これにより、上記第1の原稿よりも相対的に搬送異常が生じ難い上記第2の原稿に対する誤判定を抑制でき、ユーザーの便宜に資すことができる。
【0064】
また本実施形態では、制御部40は傾き検出基準値に加え、原稿種類に応じて設定された、搬送ローラー用モーター46の負荷トルクに対する負荷検出基準値を取得可能であり、画像データの傾きが原稿種類に応じた傾き検出基準値を超えるか、或いは上記負荷トルクが原稿種類に応じた負荷検出基準値を超えると、搬送ローラー用モーター46を停止するので、原稿Pの傾きを伴わないで搬送異常に至るケースに対して対応することができ、搬送異常に伴う原稿Pへのダメージ付与をより確実に抑制できる。
【0065】
また本実施形態では、負荷検出基準値は、原稿Pの剛性が高いほど大きく設定されている。これは、図6の「一般原稿」と「薄手の一般原稿」の負荷検出基準値の相違に現れている。即ち、原稿Pの剛性が高いほど、正常搬送時の搬送ローラー用モーター46の負荷トルクは大きくなり易い。そこで負荷検出基準値を、原稿Pの剛性が高いほど大きく設定することで、剛性の高い原稿Pに対する誤判定を抑制できる。
【0066】
またスキャナー1Aは、ユーザーからの指示入力を受け付ける入力受け付け部としての操作パネル7(図1図4)を備え、制御部40は操作パネル7を介して設定された情報をもとに、画像データの傾き及び搬送ローラー用モーター46の負荷トルクに応じて搬送ローラー用モーター46の停止制御を行う異常判定実行モード(図5のステップS101においてYesの場合)と、画像データの傾き及び負荷トルクに応じて搬送ローラー用モーター46の停止制御を行わない異常判定保留モード(図5のステップS101においてNoの場合)と、を切り換えるので、異常判定が必要ないニーズに対応することができ、ユーザーの利便性が向上する。
【0067】
また制御部40は、上記異常判定実行モードにおいて原稿Pの読み取り実行指令を受けると、原稿種類を設定するためのUIを操作パネル7に表示するので(図5のステップS102)、その結果制御部40は原稿種類に関する情報を正しく取得することができ、より確実に誤判定を抑制できる。
【0068】
尚、以上説明した実施形態では、原稿種別をユーザーが操作パネル7を介して設定したが、各種センサーを用いて制御部40が自動で原稿種別を取得する様にしても良い。例えば、スキャナー1Aは図2図4に示す様に媒体検出部として重送検出部30を備えている。重送検出部30が出力する、超音波の強度に応じた出力値は、原稿Pの厚みに応じて変化する。そして原稿Pの厚みが厚いほど、原稿Pの剛性は高くなるので、原稿Pの剛性は重送検出部30の出力値で把握することができる。従って重送検出部30の出力に応じて、負荷検出基準値を変更することができる。
【0069】
図8はその一例を示しており、縦軸Wは負荷検出基準値、横軸Vは重送検出部30の出力値を示している。図8においてプロットP1は厚紙、プロットP2は普通紙、プロットP3は薄紙、をそれぞれ示している。
図示するように負荷検出基準値Wと重送検出部30の出力値Vは線形関係になるので、計算式を設定し、そして実際に原稿Pを給送した際の重送検出部30の出力値Vを当てはめることで、原稿Pの給送の都度、実際に給送されている原稿Pに応じた適切な負荷検出基準値Wを取得することができる。
加えて原稿種類に関する情報をユーザーが入力することなく、誤判定を抑制でき、ユーザーの利便性が向上する。
【0070】
尚、上記実施形態では、傾き検出基準値及び負荷検出基準値のいずれも、各原稿種類で1つ設定されているが、例えば第1基準値とそれより小さい第2基準値を設定し、検出値が先ず第1基準値を超えたら第1アラートを出し、次に第2基準値を超えたら第2アラートを出すようにしても良い。例えば、第1アラートでは原稿の搬送即ちスキャン動作を一旦停止するが、スキャン動作を継続するか中止するかをユーザーに選択させるUIを表示する。そのUIでスキャン継続が選択されると、スキャン動作を再開し、その後に検出値が第2基準値を超えたら、スキャン動作を中止するとともに、ジャム処理を促すアラートをUIに表示する。
【0071】
上記実施形態は、本発明に係る媒体給送装置を画像読取装置の一例であるスキャナーに適用した場合を説明したが、プリンターに代表される、媒体へ記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1A…スキャナー(画像読取装置)、1B…原稿給送装置、2…装置本体、3…下部ユニット、4…上部ユニット、5…排紙トレイ、6…給送口、7…操作パネル、8…第1ペーパーサポート、9…第2ペーパーサポート、11…原稿載置部、12A、12B…エッジガイド、14…給送ローラー、15…分離ローラー、16…搬送ローラー対、16a…搬送駆動ローラー、16b…搬送従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出駆動ローラー、17b…排出従動ローラー、18…排出口、20…読取部、20a…上部読取センサー、20b…下部読取センサー、30…重送検出部、30a…超音波発信部、30b…超音波受信部、31…第1原稿検出部、31a…発光部、31b…受光部、32…第2原稿検出部、35…載置検出部、40…制御部、41…CPU、42…ROM、43…メモリ、44…プログラム、45…給送ローラー用モーター、46…搬送ローラー用モーター、90…外部コンピュータ、P…原稿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8