(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光検出素子、光センサ、及び光検出素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20221220BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20221220BHJP
H01L 27/30 20060101ALI20221220BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20221220BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H01L27/144 K
H01L27/146 F
H01L27/30
B82Y20/00
G01J1/02 C
(21)【出願番号】P 2018210630
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】西野 弘師
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
(72)【発明者】
【氏名】林 賢二郎
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058531(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145299(WO,A1)
【文献】特開2016-127238(JP,A)
【文献】特開2017-157630(JP,A)
【文献】特開2014-017468(JP,A)
【文献】特開2017-011209(JP,A)
【文献】TONG, Jiayue et al.,Antenna Enhanced Graphene THz Emitter and Detector,NANO LETTERS,2015年,Vol. 15,pp. 5295-5301,<DOI: 10.1021/acs.nanolett.5b01635>
【文献】WANG, L. et al.,One-Dimensional Electrical Contact to a Two-Dimensional Material,SCIENCE,2013年,Vol. 342,pp. 614-617,<DOI: 10.1126/science.1242603>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 27/144
H01L 27/30
B82Y 20/00
G01J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成され、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とが交互に複数積層され
、複数の第1のホールが形成された第1の領域と複数の第2のホールが形成された第2の領域とを有する受光層と、
前記受光層に接
して前記複数の第1のホール内に形成された第1の電極と、
前記受光層に接し
て前記複数の第2のホール内に形成され、前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極と、
を有することを特徴とする光検出素子。
【請求項2】
前記スペーサ層の材料は、六方晶窒化ホウ素であることを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項3】
前記受光層は、前記基板の法線方向に対して傾斜した第1の側面と、前記法線方向に対して傾斜した第2の側面とを有し、
前記第1の側面に前記第1の電極が形成され、かつ前記第2の側面に前記第2の電極が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項4】
前記受光層の最下層は前記スペーサ層であることを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項5】
基板の上に、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とを交互に複数積層
し、複数の第1のホールが形成された第1の領域と複数の第2のホールが形成された第2の領域とを有する受光層を形成する工程と、
前記受光層に接
して前記複数の第1のホール内に形成された第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極を前記受光層に接するように
前記複数の第2のホール内に形成する工程と、
を有することを特徴とする光検出素子の製造方法。
【請求項6】
平面内に間隔をおいて複数形成され、入射光の強度に応じた出力電圧を出力する画素と、
前記出力電圧を増幅する増幅回路とを備え、
前記画素は、
基板と、
前記基板の上に形成され、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とが交互に複数積層され
、複数の第1のホールが形成された第1の領域と複数の第2のホールが形成された第2の領域とを有する受光層と、
前記受光層に接
して前記複数の第1のホール内に形成された第1の電極と、
前記受光層に接し
て前記複数の第2のホール内に形成され、前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極とを有することを特徴とする光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出素子、光センサ、及び光検出素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出素子は、その原理により二種類に大別される。一つ目の光検出素子は、半導体層を受光層に使用した素子である。特に、バンドギャップが小さな半導体層を利用した光検出素子は赤外領域に感度を有し、高感度で高速応答が可能であるという特徴を有する。但し、このタイプの光検出素子は、ノイズを低減する等の目的で半導体層を冷却する必要がある。
【0003】
もう一つの光検出素子は、光が照射された薄膜の温度変化を検知する素子であって、ボロメータや熱型素子とも呼ばれる。このタイプの光検出素子は、薄膜の温度変化に基づいて光を検知するため、薄膜を冷却する必要がなく、室温で動作可能であるという特徴を有する。但し、このタイプの光検出素子は、感度や応答速度に関しては上記の半導体層を利用した光検出素子よりも劣る。
【0004】
これに対し、グラフェンの光熱電効果を利用して光を検出する光検出素子も報告されている。この光検出素子によれば、室温下において、近赤外やテラヘルツ領域の光を1ナノ秒以下の応答速度で検出することができる。
しかしながら、グラフェンを利用した光検出素子は、感度が最も高いテラヘルツ領域でも10V/W程度の感度しかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-522321号公報
【文献】特表2018-519664号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Cai, Xinghan et al. “Sensitive room-temperature terahertz detection via the photothermoelectric effect in graphene”, Nature Nanotechnology, 2014/09/07, vol. 9, p814
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、高感度化を実現することが可能な光検出素子、光センサ、及び光検出素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点によれば、基板と、前記基板の上に形成され、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とが交互に複数積層され、複数の第1のホールが形成された第1の領域と複数の第2のホールが形成された第2の領域とを有する受光層と、前記受光層に接して前記複数の第1のホール内に形成された第1の電極と、前記受光層に接して前記複数の第2のホール内に形成され、前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極とを有する光検出素子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以下の開示によれば、グラフェンとスペーサ層とを交互に積層することで、グラフェンがグラファイト化するのをスペーサ層で抑制しつつ、複数のグラフェンで光を検出して高感度化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、光検出素子で使用するグラフェンの分子構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2Aはグラフェンのバンド構造を示す図であり、
図2Bはグラファイトのバンド構造を示す図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その1)である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その2)である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その3)である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その4)である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その5)である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その6)である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、第1実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その7)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る受光層におけるグラフェンとスペーサ層の各々の分子構造を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る光検出素子の平面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の別の例に係る光検出素子の断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図(その3)である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る光検出素子の平面図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態に係る光検出素子の平面図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る光検出素子の平面図である。
【
図21】
図21は、第5実施形態に係る光センサの斜視図である。
【
図22】
図22は、第5実施形態に係る光センサの等価回路図である。
【
図23】
図23は、第5実施形態に係る撮像装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が調査した事項について説明する。
図1は、光検出素子で使用するグラフェンの分子構造を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、グラフェンは、六角形のセルの各頂点に炭素原子が位置する単原子層の物質である。
【0012】
前述のように、このグラフェンの光熱電効果を利用して光を検出する光検出素子では感度が10V/W程度と低い。これはグラフェンの光吸収率が低いことに原因があると考えられる。グラフェンの光吸収率は、波長によらず2.3%程度しかないため、残りの97%以上の光は捨てられることになる。更に、この光検出素子では、一層のグラフェンのみで光を検出するため、感度の向上を図ることができない。
感度を向上させるには、グラフェンを複数積層し、各々のグラフェンの光熱電効果を利用すればよいとも考えられる。
しかしながら、このように単純にグラフェンを積層すると、グラフェンとはバンド構造が異なるグラファイトが得られてしまう。
【0013】
図2Aはグラフェンのバンド構造を示す図であり、
図2Bはグラファイトのバンド構造を示す図である。なお、
図2A及び
図2Bにおいて、横軸は、aをグラフェンの格子長(0.249nm)としたときの逆格子空間におけるK点からの距離を示す。また、縦軸は電子のエネルギ(eV)を示す。
【0014】
図2Aに示すように、グラフェンのバンド曲線は、逆格子空間のK点付近において線型となる。これにより、光吸収率が波長に依存しないという性質や、K点付近で電子の移動度が高い等のグラフェンの特徴が導かれる。
【0015】
一方、
図2Bに示すように、グラファイトにおいては、バンド曲線の傾きがK点付近において0となり、これによりK点付近で電子の移動度が低下する。また、バンド曲線が線型ではないため、グラファイトの光吸収率は光の波長によって変わることになる。
【0016】
よって、高移動度や波長に依存しない光吸収率等のグラフェンの特徴を活かしつつ、光検出素子の高感度化を実現するには、グラフェンがグラファイト化するのを抑制しながらグラフェンを積層するのが好ましい。
以下に、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0017】
本実施形態に係る光検出素子について、その製造工程を追いながら説明する。この光検出素子は、グラフェンの光熱電効果を利用して光を検出する素子であり、以下のようにして製造される。
図3A~
図9Bは、本実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図である。
【0018】
まず、
図3Aに示すように、触媒金属層10として銅箔を用意し、不図示の熱CVD(Chemical Vapor Deposition)炉に触媒金属層10を入れる。そして、触媒金属層10を1000℃程度に加熱しながら炉の中にメタン、水素、及びアルゴンの混合ガスを供給する。この状態を30分程度維持することにより、触媒金属層10の触媒作用によってその上に単原子層のグラフェン11が成長する。
【0019】
次に、
図3Bに示すように、グラフェン11の上にPMMA(Polymethyl methacrylate)等のポリマをスピンコート法で0.1μm~100μm程度の厚さに塗布し、そのポリマの塗膜を第1の支持層13とする。なお、ポリマに代えてレジストの塗膜を第1の支持層13として形成してもよい。
【0020】
その後、第1の支持層13を加熱して膜中の溶媒成分を除去する。このときの加熱温度は、第1の支持層13の材料にもよるが、例えば室温~200℃程度とする。
そして、
図3Cに示すように、例えば塩化鉄溶液で触媒金属層10を溶解して除去し、第1の支持層13の表面にグラフェン11が形成された構造を得る。
次に、
図4Aに示す工程について説明する。
【0021】
まず、前述の
図3A~
図3Cの工程とは別にサファイア基板15を用意し、その上にスパッタ法で触媒金属層16として銅層を50nm~5000nm程度の厚さ、例えば1000nm程度の厚さに形成する。
【0022】
次いで、
図4Bに示すように、サファイア基板15を不図示の熱CVD炉に入れ、基板温度を1050℃程度に維持しながら炉の中にアンモニア、ジボラン、水素、及びアルゴンの混合ガスを供給する。そして、この状態を30分程度維持することにより、触媒金属層16の触媒作用によってその上に絶縁性のスペーサ層17として六方晶窒化ホウ素(hBN)を単原子層の厚さに成長させる。なお、サファイア基板15に代えてシリコン基板を用いてもよい。
【0023】
続いて、
図4Cに示すように、スペーサ層17の上にPMMA等のポリマをスピンコート法で0.1μm~100μm程度の厚さに塗布し、そのポリマの塗膜を第2の支持層18とする。なお、第1の支持層13と同様に、第2の支持層18としてレジストの塗膜を形成してもよい。その後に、第2の支持層18を室温~200℃程度の温度に加熱して膜中の溶媒成分を除去する。
【0024】
そして、
図5Aに示すように、サファイア基板15をエッチング液に浸漬することにより触媒金属層16を横からエッチングして除去し、第2の支持層18の表面にスペーサ層17が形成された構造を得る。このときのエッチング液は特に限定されないが、エッチング時に気泡が発生しない塩化鉄(III)(FeCl
3)水溶液をそのエッチング液として使用するのが好ましい。
【0025】
なお、この例では触媒金属層16にスペーサ層17を形成したが、触媒金属箔の表面にスペーサ層17を形成してもよい。この場合、触媒金属箔の両面にスペーサ層17が形成されるため、触媒金属箔をウエットエッチングするのがスペーサ層17によって阻害されるおそれがある。よって、この場合は、触媒金属箔の一方の表面のスペーサ層17をヤスリ等で機械的に削り取るのが好ましい。なお、酸素プラズマやアルゴンプラズマでそのスペーサ層17を除去してもよい。そして、触媒金属箔の他方の表面に残るスペーサ層17の上に第2の支持層18を形成した後、第2の支持層18を上にして触媒金属箔をエッチング液に浮かばせ、触媒金属箔を下からエッチングすることで
図5Aと同じ構造が得られる。
【0026】
ここまでの工程により、
図3Cのように第1の支持層13の表面にグラフェン11が形成された構造と、
図5Aのように第2の支持層18の表面にスペーサ層17が形成された構造とが得られたことになる。
この後は、以下のようにしてグラフェン11とスペーサ層17とを交互に複数積層する。
まず、
図5Bに示すように、シリコンウエハ20の上に酸化シリコン層21を形成してなる素子用の基板22を用意する。酸化シリコン層21は、その上に後で形成される電極や受光層等の各要素を電気的に絶縁する絶縁層として機能し、50nm~1000nm程度の厚さに形成される。
次いで、
図6Aに示すように、スペーサ層17を下にして第2の支持層18を基板22側に密着させる。
【0027】
これにより、第2の支持層18に形成されていたスペーサ層17がファンデルワールス力によって酸化シリコン層21に吸着し、酸化シリコン層21にスペーサ層17が転写される。
【0028】
なお、基板22に第2の支持層18を密着させるときに、基板22を室温~300℃程度の温度に加熱してもよい。これにより、スペーサ層17と酸化シリコン層21との界面から水分が除去され、両者の密着力が高められる。
その後に、アセトン等の有機溶剤で第2の支持層18を溶解して除去する。
【0029】
次に、
図6Bに示すように、グラフェン11を下にして第1の支持層13を基板22側に密着させることにより、第1の支持層13に形成されていたグラフェン11をスペーサ層17に転写する。なお、グラフェン11とスペーサ層17とはファンデルワールス力によって互いに吸着した状態となる。
その後に、アセトン等の有機溶剤で第1の支持層13を溶解して除去する。
【0030】
そして、上記したグラフェン11の転写とスペーサ層17の転写とを交互に複数回繰り返すことにより、
図7Aに示すように、グラフェン11とスペーサ層17とが交互に複数積層された受光層23が形成される。この例では、
図6Aに示したように最初にスペーサ層17を基板22側に転写したため、受光層23の最下層はスペーサ層17となる。
受光層23における積層数は特に限定されないが、例えばグラフェン11とスペーサ層17をそれぞれ1層~500層、例えば100層程度積層する。
【0031】
このような受光層23によれば、上下に隣接するグラフェン11の間にスペーサ層17が介在するため、これらのグラフェン11同士がグラファイト化するのを抑制できる。
なお、受光層23の最上層をスペーサ層17とすることで、そのスペーサ層17で大気からグラフェン11を保護してもよい。
また、
図10は、受光層23におけるグラフェン11とスペーサ層17の各々の分子構造を模式的に示す斜視図である。
図10に示すように、スペーサ層17の材料である六方晶窒化ホウ素は、グラフェン11と同様の六角形のセルを有する。
次に、
図7Bに示すように、受光層23の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより島状のマスク層24を形成する。
【0032】
続いて、
図8Aに示すように、マスク層24で覆われていない部分の受光層23を酸素プラズマで等方的にエッチングして、光を受光する受光領域Rのみに受光層23を残す。
このような等方的なエッチングにより、基板22の法線方向nに対して傾斜した第1の側面23aと第2の側面23bとが受光層23に形成されることになる。
その後に、
図8Bに示すように、アセトン等の有機溶剤によりマスク層24を除去する。
【0033】
次に、
図9Aに示すように、第1の側面23aが露出する開口を備えたレジスト層(不図示)を形成し、更に基板22の上側全面に蒸着法によりチタン層を0.02μm~1μm程度の厚さに形成する。その後に、レジスト層を除去することにより、第1の側面23aとその周囲のみにチタン層を第1の電極25として残し、それ以外の不要なチタン層を除去する。
【0034】
続いて、
図9Bに示すように、第2の側面23bが露出する開口を備えたレジスト層(不図示)を形成した後、第1の電極25とは材料が異なる金属層を基板22の上側全面に蒸着法で形成する。上記のように第1の電極25としてチタン層を形成する場合には、その金属層として白金層を0.02μm~1μm程度の厚さに形成する。そして、レジスト層を除去することにより、第2の側面23bとその周囲のみに白金層を第2の電極26として残し、それ以外の不要な白金層を除去する。
【0035】
なお、第1の電極25と第2の電極26の材料の組み合わせは、それぞれのゼーベック係数が異なれば上記に限定されない。例えば、第1の電極25の材料としては、上記のチタンの他にハフニウム、ジルコニウム、及びクロムもある。また、第2の電極26の材料としては、上記の白金の他に、ニッケル、パラジウム、及び金もある。これらの材料のうち、特にハフニウム、ジルコニウム、チタン、及びニッケルは、グラフェン11の端部11aにおいてグラファイト化し易いため、グラフェン11と各電極25、26との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0036】
また、ゼーベック係数が異なる材料の組み合わせとして、熱電対で使用される金属の組み合わせを採用してもよい。そのような組み合わせとしては、例えば、アルメル-クロメル、鉄-コンスタンタン、銅-コンスタンタン、クロメル-コンスタンタン、ナイクロシル-ナイシル、及び白金ロジウム-白金がある。
以上により、本実施形態に係る光検出素子30の基本構造が完成する。
【0037】
この光検出素子30においては、上記のように互いに材料が異なる第1の電極25と第2の電極26とが受光層23のグラフェン11に接するように間隔をおいて形成される。
【0038】
このような構造によれば、受光層23の表面23zに光Cが入射したときにグラフェン11中の電子が励起し、光Cの強度に応じた電子温度の電子がグラフェン11から各電極25、26に供給される。そして、各電極25、26のゼーベック係数の相違に起因して光Cの強度に応じた電位差がこれらの電極25、26の間に生じ、その電位差が出力電圧として外部に出力される。
なお、このようにグラフェン11の光熱電効果を利用するため、この光検出素子30では冷却が不要となり、そのアプリケーションを広げることができる。
図11は光検出素子30の平面図であって、先の
図9Bは
図11のI-I線に沿う断面図に相当する。
図11に示すように、受光層23は一辺の長さが1μm~100μm程度の矩形状であって、その相対する側面23a、23bの各々に電極25、26が形成される。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、
図9Bに示したように、受光層23の各グラフェン11をスペーサ層17で隔てたことにより、各々のグラフェン11が接触してグラファイト化するのを抑制できる。これにより、高移動度や波長に依存しない光吸収率等のグラフェン11の特徴を損なうことなく、複数のグラフェン11の各々で光熱電効果が十分に発揮され、光検出素子30の感度を高めることが可能となる。
【0040】
本願発明者の試算によれば、受光層23におけるグラフェン11の層数を100層とすると、受光層23の光吸収率が95%以上となり、単原子層のグラフェン11のみを形成する場合と比較して感度が約50倍となる。
【0041】
しかも、検出対象の光に対してスペーサ層17が透明であるため、光Cがスペーサ層17で遮られるのを抑えることができ、受光層23の深い部位のグラフェン11にも光Cが到達することが可能となる。
【0042】
特に、スペーサ層17の材料である六方晶窒化ホウ素は、赤外領域で透明であり、かつグラフェン11の移動度を高い状態に維持する性質を有するため、光検出素子30を高感度の赤外線検出素子として使用することができる。
【0043】
なお、検出対象の光に対して透明な絶縁材料であればスペーサ層17の材料は六方晶窒化ホウ素に限定されない。例えば、二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、二セレン化モリブデン(MoSe2)、及び二硫化スズ(SnS2)等の遷移金属ダイカルコゲナイドも、赤外領域に目立った吸収がないため、スペーサ層17の材料として使用し得る。
また、各電極25、26同士が電気的に短絡しない程度の十分な絶縁性がある半導体材料でスペーサ層17を形成してもよい。
更に、スペーサ層17の透光性が損なわれないのであれば、単原子層よりも厚い厚さにスペーサ層17を形成してもよい。
【0044】
また、本実施形態では受光層23の第1の側面23aを基板22の法線方向nから傾斜させたため、グラフェン11の端部11aに第1の電極25の材料が上から付着し易くなる。その結果、端部11aが第1の電極25に確実に接触し易くなり、受光層23と第1の電極25との間のコンタクト抵抗を低減することができる。また、このように各グラフェン11が第1の電極25に接触し易くなるため、グラフェン11の層数の増加と共に受光層23と第1の電極25との間のコンタクト抵抗が低減するようになる。
同様の理由により、第2の側面23bを法線方向nから傾斜させたことで、第2の電極26と受光層23との間のコンタクト抵抗も低減できる。
【0045】
なお、基板22の上にグラフェン11を直接形成すると、そのグラフェン11を走行する電子が酸化シリコン層21の表面極性フォノンによって散乱されてしまい、電子の移動度が低下するおそれがある。そのため、本実施形態のように受光層23の最下層にスペーサ層17を形成し、酸化シリコン層21の表面極性フォノンの影響がグラフェン11に及ぶのをスペーサ層17で抑制するのが好ましい。
また、酸化シリコン層21の表面極性フォノンの影響を更に効果的に排除するために、以下のような構造の受光層23を採用してもよい。
図12は、本実施形態の別の例に係る光検出素子30の断面図である。
【0046】
この例では、受光層23の最下層から途中の厚さTにおいて、上下に隣接するスペーサ層17の間にグラフェン11を介在させずに、複数のスペーサ層17のみを積層する。積層するスペーサ層17の層数は、例えば10層以上とする。これにより、グラフェン11を基板22から大きく離すことができ、酸化シリコン層21の表面極性フォノンによってグラフェン11における電子の移動度が低下するのを効果的に抑制することができる。
特に、酸化シリコン層21は、その表面極性フォノンによってグラフェン11の移動度を大きく低下させてしまうため、このように複数のスペーサ層17のみを積層して移動度の低下を抑制するのが好ましい。
(第2実施形態)
本実施形態では、以下のようにしてグラフェン11と各電極25、26との間のコンタクト抵抗を低減する。
【0047】
図13A~
図15は、本実施形態に係る光検出素子の製造途中の断面図である。なお、
図13A~
図15において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、第1実施形態で説明した
図3A~
図7Bの工程を行うことにより、
図13Aに示すように、受光層23の上にマスク層24が形成された構造を得る。
但し、本実施形態では、後で電極を形成する第1の領域R
1と第2の領域R
2におけるマスク層24に、それぞれ第1の開口24aと第2の開口24bを複数形成する。
【0048】
次に、
図13Bに示すように、各開口24a、24bを通じて受光層23を酸素プラズマで等方的にエッチングする。これにより、第1の領域R
1においては、複数のテーパ状の第1のホール23xと第1の側面23aとが受光層23に形成される。また、第2の領域R
2においては、複数のテーパ状の第2のホール23yと第2の側面23bとが受光層23に形成される。これらのホール23x、23yの直径は、例えば0.02μm~2μm程度である。
その後に、
図14Aに示すように、マスク層24を除去する。
【0049】
次いで、
図14Bに示すように、第1の側面23aと第1のホール23xが露出する開口を備えたレジスト層(不図示)を形成し、更に基板22の上側全面に蒸着法によりチタン層を形成する。その後に、レジスト層を除去することにより、第1のホール23x内と第1の側面23aとにチタン層を第1の電極25として残し、それ以外の不要なチタン層を除去する。
【0050】
続いて、
図15に示すように、第2の側面23bと第2のホール23yとが露出する開口を備えたレジスト層(不図示)を形成する。その後、白金層を基板22の上側全面に蒸着法で形成し、更にレジスト層を除去することにより、第2のホール23y内と第2の側面23bに白金層を第2の電極26として残し、それ以外の不要な白金層を除去する。
以上により、本実施形態に係る光検出素子40の基本構造が完成する。
図16は、光検出素子40の平面図であって、先の
図15は
図16のII-II線に沿う断面図に相当する。
図16に示すように、第1のホール23xと第2のホール23yの各々は、平面視でグリッド状に配される。
【0051】
上記した本実施形態によれば、受光層23に第1のホール23xを形成してその内部にも第1の電極25を形成する。そのため、第1の側面23aだけでなく第1のホール23xにおいても第1の電極25がグラフェン11の端部11aに接するようになり、第1の電極25とグラフェン11との間のコンタクト抵抗を低減できる。
【0052】
しかも、第1のホール23xをテーパ状としたことで、グラフェン11の端部11aに第1の電極25の材料が上から付着し易くなるため、第1の電極25とグラフェン11との間のコンタクト抵抗を更に低減できる。同様に、第2のホール23yにおいても第2の電極26とグラフェン11との間のコンタクト抵抗を低減することが可能となる。
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態とは別の構造を採用することにより、グラフェン11と各電極25、26との間のコンタクト抵抗を低減する。
【0053】
図17は、本実施形態に係る光検出素子50の平面図である。なお、
図17において、第1及び第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0054】
図17に示すように、本実施形態における第1の電極25は、平面視で櫛歯状であって、第1の方向Xに沿って延びる複数の第1の歯25aを有する。同様に、第2の電極26も平面視で櫛歯状であって、第1の方向Xに沿って延びる複数の第2の歯26aを有する。
これらの歯25a、26aの長さと幅は特に限定されないが、例えば各歯25a、26aを第1の方向Xに沿って1μm~100μm程度の長さに形成し、各歯25a、26aの幅を0.02μm~5μm程度とする。また、各歯25a、26aは、第1の方向Xに交差する第2の方向Yに沿って間隔をおいて設けられる。第2の方向Yに沿って隣接する第1の歯25a同士の間隔は例えば1μm~20μm程度である。これについては第2の歯26aでも同様である。
図18Aは
図17のIII-III線に沿う断面図であり、
図18Bは
図17のIV-IV線に沿う断面図である。
図18Aに示すように、第1の電極25は、第1実施形態と同様に受光層23の第1の側面23aとその周囲に形成される。
【0055】
また、
図18Bに示すように、受光層23には第1の溝23cと第2の溝23dがそれぞれ複数形成される。これらの溝23c、23dは、第2実施形態の
図13Bの工程と同様に、マスク層24で覆われていない部分の受光層23を等方的にエッチングすることで形成され得る。そして、これらの溝23c、23dに、第1の歯25aと第2の歯26aの各々が埋め込まれる。
【0056】
これにより、第1の溝23cにおいて第1の歯25aがグラフェン11の端部11aに接するようになり、第1の溝23cがない場合と比較して第1の電極25とグラフェン11との間のコンタクト抵抗を低減できる。同様に、第2の溝23dに第2の歯26aを形成することにより、第2の電極26とグラフェン11との間のコンタクト抵抗も低減できる。
【0057】
しかも、
図17のように各電極25、26を櫛歯状としたことにより、受光層23が光を受光するスペースSを各歯25a、26aの間に確保でき、受光層23の受光面積が低減するのを抑制できる。
(第4実施形態)
本実施形態では、以下のようにして光検出素子から出力される出力電圧を高める。
【0058】
図19は、本実施形態に係る光検出素子60の平面図である。なお、
図19において、第1~第3実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0059】
図19に示すように、本実施形態では、第1の方向Xに沿って延びる素子分離溝23eを受光層23に形成し、その素子分離溝23eで受光層23を第1~第4の受光部D
1~D
4に分離する。これらの受光部D
1~D
4は、平面視で矩形状であって、第1の方向Xと交差する第2の方向Yに沿って間隔をおいて配される。なお、素子分離溝23eの幅は0.02μm~5μm程度である。
【0060】
そして、第1の電極25と第2の電極26とを受光部D
1~D
4ごとに設け、隣接する受光部の各電極25、26同士を電気的に接続する。なお、両端の第1の電極25と第2の電極26の各々には、受光層23の出力電圧を取り出すための出力パッド25p、26pが設けられる。
このような構造によれば、各受光部D
1~D
4が直列に接続されるため、光検出素子60から出力される出力電圧を高めることが可能となる。
図20Aは
図19のVI-VI線に沿う断面図であり、
図20Bは
図19のV-V線に沿う断面図である。
図20Aに示すように、VI-VI線に沿う断面には第2の電極26が現れず、第1の電極25が現れる。
【0061】
また、
図20Bに示すように、各電極25、26は、素子分離溝23eの側面に形成される。素子分離溝23eは、第2実施形態の
図13Bの工程と同様に、マスク層24で覆われていない部分の受光層23を等方的にエッチングすることで形成され得る。
このような構造によれば、素子分離溝23eにおいて各電極25、26とグラフェン11の端部11aとを接続することができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態で説明した光検出素子を備えた光センサについて説明する。
図21は、本実施形態に係る光センサの斜視図である。なお、
図21において、第1~第4実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
この光センサ70は、画像を取得するためのイメージセンサであって、撮像素子71とそれを駆動する駆動素子72とを有する。
【0062】
このうち、撮像素子71は、平面内に間隔をおいて複数形成された画素73を備える。各画素73は、第1実施形態に係る光検出素子30を有し、入射光に応じた出力電圧を出力する。なお、この光検出素子30に代えて、第2~第4実施形態に係る光検出素子を使用してもよい。
【0063】
一方、駆動素子72は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造の複数のトランジスタが形成されたシリコン基板を備える。これらのトランジスタには、光検出素子30を含む各画素73を選択する選択トランジスタや、画素73の出力電圧を増幅するアンプ等の増幅回路用のトランジスタ等が含まれる。また、駆動素子72には入出力用のパッド74が設けられる。撮像素子71を駆動するための駆動電圧はそのパッド74から入力される。そして、増幅回路で増幅された出力電圧はパッド74から出力される。
なお、撮像素子71と駆動素子72の各々は、バンプ75によって機械的かつ電気的に接続される。
図22は、この光センサ70の等価回路図である。
【0064】
図22に示すように、光センサ70は、水平走査シフトレジスタ81、垂直走査シフトレジスタ82、列選択トランジスタ83、ソースフォロア電流設定トランジスタ86、及び出力アンプ89を備える。
【0065】
このうち、水平走査シフトレジスタ81は、複数の列選択トランジスタ83のうちの一つのゲートに列選択電圧Vcol_selを印加し、その列選択トランジスタ83をオン状態にする。
【0066】
また、垂直走査シフトレジスタ82は、複数のアドレス線91のうちの一つに行選択電圧Vrow_selを印加する。これにより、そのアドレス線91に繋がる画素73の行選択トランジスタ84がオン状態になる。
一方、画素73は、光検出素子30、行選択トランジスタ84、増幅トランジスタ85、入力アンプ87、及び電源88を有する。
【0067】
光検出素子30に光が入射すると、その光の強度に応じた出力電圧Voutが光検出素子30から入力アンプ87に出力される。その入力アンプ87には、電源88の電圧が基準電圧Vrefとして入力されており、基準電圧Vrefと出力電圧Voutとの電圧差を増幅した増幅電圧Vampが入力アンプ87から出力される。
【0068】
基準電圧Vrefの値は特に限定されない。例えば、光検出素子30の平均的な出力電圧に応じて基準電圧Vrefの値を適宜調節することにより、増幅電圧Vampが後段の各回路に適合するようにすればよい。
【0069】
増幅電圧Vampは、増幅トランジスタ85のゲートに印加される。増幅トランジスタ85はソースフォロワ型のアンプとして機能し、増幅電圧Vampに対応した電圧が増幅トランジスタ85のソースに出力される。
【0070】
増幅トランジスタ85のソースには行選択トランジスタ84が接続されており、行選択トランジスタ84がオン状態のときに、増幅電圧Vampに応じた大きさの画素電圧Vpixelが垂直バス線92に出力される。
【0071】
このように、この光センサ70においては、水平走査シフトレジスタ81と垂直走査シフトレジスタ82によって選択した一つの画素73から画素電圧Vpixelを取り出すことができる。
【0072】
そして、選択する画素73を時間と共に切り替えていくことにより、水平バス線93に画素電圧Vpixelが順次出力される。なお、水平バス線93の電流量はソースフォロア電流設定トランジスタ86によって設定される。また、画素電圧Vpixelは、水平バス線93を介して出力アンプ89に入力される。出力アンプ89は、各々の画素電圧Vpixelを増幅してアナログ値の画像信号Soutを外部に出力する。
【0073】
このような光センサ70によれば、第1実施形態で説明したように、グラフェン11とスペーサ層17とを積層することで光検出素子30の感度が高められているため、微弱な光であっても画像を取得することができる。
次に、この光センサ70を備えた撮像装置について説明する。
図23は、本実施形態に係る撮像装置100の構成図である。
【0074】
図23に示すように、この撮像装置100は、光センサ70を収容した筐体101を備える。その筐体101には、撮像レンズ102、フィルタ103、A/D変換部104、感度補正部105、表示調整部106、補正係数メモリ107、及び光センサ・ドライバ部108が設けられる。
この例では、撮像レンズ102の焦点に光センサ70の各光検出素子30を配置し、光センサ・ドライバ部108で光センサ70を制御しながら、前述の駆動素子72で撮像素子71からの出力を取り出す。
【0075】
また、フィルタ103は、波長が例えば1000nm以上の赤外光を透過する赤外線透過フィルタであって、撮像レンズ102と光センサ70との間に設けられる。そのフィルタ103により、光センサ70において赤外線画像が取得されることになる。
また、A/D変換部104は、光センサ70から出力された画像信号Soutをデジタル信号に変換し、それを後段の感度補正部105に出力する。
【0076】
感度補正部105は、複数の画素73の感度のばらつきを加味して画像信号Soutを補正する回路である。この例では、各画素73の感度を補正するための補正係数を補正係数メモリ107に予め記憶させておく。そして、その補正係数メモリ107を感度補正部105が参照することにより、感度補正部105が画像信号Soutを補正する。
【0077】
補正後の画像信号Soutは、表示調整部106に入力される。表示調整部106は、画像信号Soutのゲインやオフセットを調整して画像のコントラストを最適化する回路であり、調整後の最終的な画像信号Soutを外部に出力する。
このような撮像装置によれば、前述のように光センサ70における光検出素子30の感度が高められているため、撮像対象から出る赤外光が微弱な場合であっても明瞭な赤外像を取得することができる。
【0078】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 基板と、
前記基板の上に形成され、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とが交互に複数積層された受光層と、
前記受光層に接する第1の電極と、
前記受光層に接し、前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極と、
を有することを特徴とする光検出素子。
(付記2) 前記スペーサ層の材料は、六方晶窒化ホウ素であることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記3) 前記スペーサ層の材料は、遷移金属ダイカルコゲナイドであることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記4) 前記受光層は、前記基板の法線方向に対して傾斜した第1の側面と、前記法線方向に対して傾斜した第2の側面とを有し、
前記第1の側面に前記第1の電極が形成され、かつ前記第2の側面に前記第2の電極が形成されたことを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記5) 前記受光層は、第1の領域と第2の領域とを有し、
前記第1の領域における前記受光層に複数の第1のホールが形成され、
前記第2の領域における前記受光層に複数の第2のホールが形成され、
前記第1の電極が複数の前記第1のホール内に形成され、
前記第2の電極が複数の前記第2のホール内に形成されたことを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記6) 前記第1のホールと前記第2のホールの各々は、断面視でテーパ状であることを特徴とする付記5に記載の光検出素子。
(付記7) 前記受光層に、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、
前記第1の電極は、複数の前記第1の溝の各々に埋め込まれた複数の第1の歯を備えた櫛歯状であり、
前記第2の電極は、複数の前記第2の溝の各々に埋め込まれた複数の第2の歯を備えた櫛歯状であることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記8) 前記受光層は、素子分離溝によって第1の受光部と第2の受光部とに分離され、
前記第1の受光部と前記第2の受光部ごとに、前記第1の電極と前記第2の電極とが設けられ、
前記第1の受光部の前記第1の電極と、前記第2の受光部の前記第2の電極とが電気的に接続されたことを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記9) 前記受光層の最下層は前記スペーサ層であることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記10) 前記受光層の最上層は前記スペーサ層であることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記11) 前記受光層の最下層から途中の厚さにおいて、上下に隣接する前記スペーサ層の間に前記グラフェンが介在せずに、複数の前記スペーサ層が積層されたことを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記12) 基板の上に、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とを交互に複数積層することにより受光層を形成する工程と、
前記受光層に接する第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極を前記受光層に接するように形成する工程と、
を有することを特徴とする光検出素子の製造方法。
(付記13) 前記受光層を形成する工程は、第1の支持層の上に形成された前記グラフェンを前記基板側に転写する工程と、第2の支持層の上に形成された前記スペーサ層を前記基板側に転写する工程とを交互に繰り返すことにより行われることを特徴とする付記12に記載の光検出素子の製造方法。
(付記14) 触媒金属層の上に前記グラフェンを形成する工程と、
前記グラフェンの上に前記第1の支持層を形成する工程と、
前記第1の支持層を形成した後、前記触媒金属層を溶解して除去する工程と、
前記グラフェンを前記基板側に転写する工程の後に、前記第1の支持層を溶解して除去する工程とを更に有することを特徴とする付記13に記載の光検出素子の製造方法。
(付記15) 触媒金属層の上に前記スペーサ層を形成する工程と、
前記スペーサ層の上に前記第2の支持層を形成する工程と、
前記第2の支持層を形成した後、前記触媒金属層を溶解して除去する工程と、
前記スペーサ層を前記基板側に転写する工程の後に、前記第2の支持層を溶解して除去する工程とを更に有することを特徴とする付記13に記載の光検出素子の製造方法。
(付記16) 前記第2の支持層の上に形成された前記スペーサ層を前記基板側に転写する工程において、前記基板を加熱することを特徴とする付記13に記載の光検出素子の製造方法。
(付記17) 平面内に間隔をおいて複数形成され、入射光の強度に応じた出力電圧を出力する画素と、
前記出力電圧を増幅する増幅回路とを備え、
前記画素は、
基板と、
前記基板の上に形成され、グラフェンと、光を透過する絶縁性のスペーサ層とが交互に複数積層された受光層と、
前記受光層に接する第1の電極と、
前記受光層に接し、前記第1の電極とは材料が異なる第2の電極とを有することを特徴とする光センサ。
(付記18) 前記光は赤外光であることを特徴とする付記1に記載の光検出素子。
(付記19) 前記光は赤外光であることを特徴とする付記12に記載の光検出素子の製造方法。
(付記20) 前記光は赤外光であることを特徴とする付記17に記載の光センサ。
【符号の説明】
【0079】
10…触媒金属層、11…グラフェン、11a…端部、13…第1の支持層、15…サファイア基板、16…触媒金属層、17…スペーサ層、18…第2の支持層、20…シリコンウエハ、21…酸化シリコン層、22…基板、23…受光層、23a…第1の側面、23b…第2の側面、23c…第1の溝、23d…第2の溝、23e…素子分離溝、23x…第1のホール、23y…第2のホール、23z…表面、24…マスク層、24a…第1の開口、24b…第2の開口、25…第1の電極、25a…第1の歯、25p…出力パッド、26…第2の電極、26a…第2の歯、26p…出力パッド、30…光検出素子、40、50、60…光検出素子、70…光センサ、71…撮像素子、72…駆動素子、73…画素、74…パッド、75…バンプ、81…水平走査シフトレジスタ、82…垂直走査シフトレジスタ、83…列選択トランジスタ、84…行選択トランジスタ、85…増幅トランジスタ、86…ソースフォロア電流設定トランジスタ、87…入力アンプ、88…電源、89…出力アンプ、91…アドレス線、92…垂直バス線、93…水平バス線、100…撮像装置、101…筐体、102…撮像レンズ、103…フィルタ、104…変換部、105…感度補正部、106…表示調整部、107…補正係数メモリ、108・・・光センサ・ドライバ部。